(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】駆動装置、および駆動装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20230511BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20230511BHJP
H02K 15/14 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/22
H02K15/14 Z
(21)【出願番号】P 2019075818
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】舘形 和典
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/058478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 5/22
H02K 15/14
F16H 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸を回転させる駆動装置であって、
モータと、
前記モータに接続される減速装置と、
前記減速装置を介して前記モータに接続される差動装置と、
前記モータを内部に収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を内部に収容するギヤ収容部とを有し、内部にオイルが収容されるハウジングと、
前記ハウジングに設けられたブリーザ部と、
を備え、
前記ハウジングは、鉛直方向上側に位置する天壁部を有し、
前記ブリーザ部は、前記天壁部に設けられ前記ハウジングの内部と外部とを繋ぐ通気孔部を有し、
前記通気孔部は、
前記天壁部の鉛直方向上側の面から鉛直方向下側に延びる鉛直延伸部と、
前記天壁部の内側面から、鉛直方向と直交する所定方向の一方側に向かうに従って鉛直方向上側に位置する向きに延びて、前記鉛直延伸部の鉛直方向下側の端部に繋がる第1傾斜部と、
前記天壁部の内側面から、前記所定方向の他方側に向かうに従って鉛直方向上側に位置する向きに延びて、前記鉛直延伸部の鉛直方向下側の端部に繋がる第2傾斜部と、
を有し、
前記第1傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分には、鉛直方向上側に窪む第1凹部が設けられ、
前記第2傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分には、鉛直方向上側に窪む第2凹部が設けられる、駆動装置。
【請求項2】
前記天壁部は、
天壁部本体と、
前記天壁部本体の鉛直方向下側の面から鉛直方向下側に突出する凸部と、
を有し、
前記鉛直延伸部は、前記天壁部本体のうち前記凸部が設けられた部分における鉛直方向上側の面から鉛直方向下側に延び、
前記第1傾斜部は、前記凸部のうち前記所定方向の他方側の面から、前記所定方向の一方側に向かうに従って鉛直方向上側に位置する向きに延びて、前記鉛直延伸部の鉛直方向下側の端部に繋がり、
前記第2傾斜部は、前記凸部のうち前記所定方向の一方側の面から、前記所定方向の他方側に向かうに従って鉛直方向上側に位置する向きに延びて、前記鉛直延伸部の鉛直方向下側の端部に繋がる、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1凹部の内側面は、前記鉛直延伸部の内側面のうち前記所定方向の一方側に位置する部分と繋がる第1接続面を有し、
前記第2凹部の内側面は、前記鉛直延伸部の内側面のうち前記所定方向の他方側に位置する部分と繋がる第2接続面を有し、
前記第1接続面は、前記第2傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分の延長線上に配置され、
前記第2接続面は、前記第1傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分の延長線上に配置される、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1凹部の内側面は、前記第1接続面における前記所定方向の一方側の端部から鉛直方向下側に屈曲して延びて前記第1傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分に繋がる第1屈曲面を有し、
前記第2凹部の内側面は、前記第2接続面における前記所定方向の他方側の端部から鉛直方向下側に屈曲して延びて前記第2傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分に繋がる第2屈曲面を有し、
前記第1屈曲面は、前記第2傾斜部の中心軸を中心とするテーパ面の一部であり、
前記第2屈曲面は、前記第1傾斜部の中心軸を中心とするテーパ面の一部である、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記所定方向に対する前記第1傾斜部の傾き、および前記所定方向に対する前記第2傾斜部の傾きは、1°以上、10°以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1傾斜部の内側面のうち鉛直方向下側に位置する部分と前記第2傾斜部の内側面のうち鉛直方向下側に位置する部分とは、互いに繋がり、鉛直方向上側に凸となる角部を構成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ギヤ収容部の内部にはオイルが収容され、
前記差動装置は、鉛直方向下側の端部が前記ギヤ収容部内のオイルに浸漬されるギヤを有し、
前記ブリーザ部は、前記モータ収容部に設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記モータに電力を供給するインバータを有するインバータユニットをさらに備え、
前記ブリーザ部の鉛直方向上側の端部は、前記インバータユニットの鉛直方向上側の端部よりも鉛直方向下側に位置する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動装置の製造方法であって、
前記ブリーザ部を作る工程を含み、
前記ブリーザ部を作る工程は、前記ハウジングに穴加工を施して前記通気孔部を作る工程を含み、
前記通気孔部を作る工程は、
前記天壁部の鉛直方向上側の面から鉛直方向下側に向かって穴加工を施し、底部を有する鉛直穴を作る工程と、
前記天壁部の内側面から、前記所定方向の一方側斜め上方に向かって穴加工を施し、第1傾斜穴を作る工程と、
前記天壁部の内側面から、前記所定方向の他方側斜め上方に向かって穴加工を施し、第2傾斜穴を作る工程と、
を含み、
前記第1傾斜穴を作る工程においては、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通り、かつ、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通過した先の部分まで穴加工を施し、
前記第2傾斜穴を作る工程においては、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通り、かつ、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通過した先の部分まで穴加工を施し、
前記第1凹部の内側面は、前記第2傾斜穴の内側面の一部であり、
前記第2凹部の内側面は、前記第1傾斜穴の内側面の一部である、駆動装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、および駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケースの内部にオイルが収容される車両の駆動装置が知られる。例えば、特許文献1には、ハイブリッド車両の駆動装置が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の駆動装置は、走行時にはモータが発熱し、ケース内部の圧力が変化する。したがって、ケースの内部の圧力を調整するために、通気孔部を有するブリーザ部が設けられる場合がある。この場合、例えば、ケースの内部に収容されたオイルが、通気孔部内に浸入し、表面張力によって通気孔部内をケースの外部に向かって進む可能性があった。そのため、オイルが通気孔部からケースの外部に漏れる虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、オイルがハウジングの外部に漏れることを抑制できる構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両の車軸を回転させる駆動装置であって、モータと、前記モータに接続される減速装置と、前記減速装置を介して前記モータに接続される差動装置と、前記モータを内部に収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を内部に収容するギヤ収容部とを有し、内部にオイルが収容されるハウジングと、前記ハウジングに設けられたブリーザ部と、を備える。前記ハウジングは、鉛直方向上側に位置する天壁部を有する。前記ブリーザ部は、前記天壁部に設けられ前記ハウジングの内部と外部とを繋ぐ通気孔部を有する。前記通気孔部は、前記天壁部の鉛直方向上側の面から鉛直方向下側に延びる鉛直延伸部と、前記天壁部の内側面から、鉛直方向と直交する所定方向の一方側に向かうに従って鉛直方向上側に位置する向きに延びて、前記鉛直延伸部の鉛直方向下側の端部に繋がる第1傾斜部と、前記天壁部の内側面から、前記所定方向の他方側に向かうに従って鉛直方向上側に位置する向きに延びて、前記鉛直延伸部の鉛直方向下側の端部に繋がる第2傾斜部と、を有する。前記第1傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分には、鉛直方向上側に窪む第1凹部が設けられる。前記第2傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分には、鉛直方向上側に窪む第2凹部が設けられる。
【0007】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両の車軸を回転させる駆動装置であって、ステータおよびロータを有するモータと、前記モータに接続される減速装置と、前記減速装置を介して前記モータに接続される差動装置と、前記モータを内部に収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を内部に収容するギヤ収容部とを有し、前記モータ収容部と前記減速装置の少なくともどちらか一方の内部にオイルが収容されるハウジングと、前記ハウジングに設けられたブリーザ部と、を備える。前記ハウジングは、前記モータ収容部の鉛直方向上側に位置する天壁部を有する。前記ブリーザ部は、前記ハウジングの内部と外部とを繋ぐ通気孔部を有し、前記天壁部のうち前記ステータの径方向外側に位置する部分に設けられる。
【0008】
本発明の駆動装置の製造方法の一つの態様は、上記の駆動装置の製造方法であって、前記ブリーザ部を作る工程を含む。前記ブリーザ部を作る工程は、前記ハウジングに穴加工を施して前記通気孔部を作る工程を含む。前記通気孔部を作る工程は、前記天壁部の鉛直方向上側の面から鉛直方向下側に向かって穴加工を施し、底部を有する鉛直穴を作る工程と、前記天壁部の内側面から、前記所定方向の一方側斜め上方に向かって穴加工を施し、第1傾斜穴を作る工程と、前記天壁部の内側面から、前記所定方向の他方側斜め上方に向かって穴加工を施し、第2傾斜穴を作る工程と、を含む。前記第1傾斜穴を作る工程においては、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通り、かつ、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通過した先の部分まで穴加工を施す。前記第2傾斜穴を作る工程においては、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通り、かつ、前記鉛直穴の鉛直方向下側の端部を通過した先の部分まで穴加工を施す。前記第1凹部の内側面は、前記第2傾斜穴の内側面の一部である。前記第2凹部の内側面は、前記第1傾斜穴の内側面の一部である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置において、オイルがハウジングの外部に漏れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態の駆動装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のブリーザ部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における鉛直穴加工工程の手順の一部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における第1傾斜穴加工工程の手順の一部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における第2傾斜穴加工工程の手順の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、各図に示す実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0012】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0013】
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。本実施形態において軸方向は、鉛直方向と直交する所定方向に相当する。本実施形態において右側は、所定方向の一方側に相当し、左側は、所定方向の他方側に相当する。
【0014】
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
図1に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4と、差動装置5と、ハウジング6と、インバータユニット8と、クーラー97と、オイルポンプ96と、を備える。ハウジング6は、モータ2を内部に収容するモータ収容部81と、減速装置4および差動装置5を内部に収容するギヤ収容部82と、を有する。ギヤ収容部82は、モータ収容部81の左側に位置する。インバータユニット8は、モータ2に電力を供給するインバータ8aを有する。
【0015】
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を備える。ロータ20は、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転可能である。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、減速装置4に伝達される。
【0016】
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
【0017】
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部81とギヤ収容部82とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤ収容部82の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、減速装置4の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
【0018】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータ収容部81の内周面に固定される。図示は省略するが、ステータコア32は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
【0019】
コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
【0020】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
【0021】
ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部81のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部に保持される。
【0022】
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、後述する隔壁61cに保持される。
【0023】
減速装置4は、モータ2に接続される。より詳細には、減速装置4は、シャフト21の左側の端部に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
【0024】
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、中間軸J2に沿って延びる。本実施形態において中間軸J2は、モータ軸J1と平行である。本実施形態において中間軸J2は、モータ軸J1よりも下側に位置する。図示は省略するが、中間軸J2は、例えば、モータ軸J1よりも後側(-X側)に位置する。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。
【0025】
第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。第2のギヤ42の外径は、第3のギヤ43の外径よりも大きい。本実施形態において第2のギヤ42の下側の端部は、減速装置4のうちで最も下側に位置する部分である。
【0026】
モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。より詳細には、モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0027】
差動装置5は、減速装置4に接続される。これにより、差動装置5は、減速装置4を介してモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、車軸55を差動軸J3回りに回転させる。これにより、駆動装置1は、車両の車軸55を回転させる。
【0028】
本実施形態において差動軸J3は、モータ軸J1と平行である。図示は省略するが、本実施形態において差動軸J3は、モータ軸J1よりも後側(-X側)に位置する。差動軸J3は、モータ軸J1よりも下側に位置する。図示は省略するが、差動軸J3は、中間軸J2よりも後側に位置する。なお、
図1では模式的に差動軸J3を中間軸J2よりも下側に記載しているが、差動軸J3は、例えば、鉛直方向において中間軸J2とほぼ同じ位置に位置する。差動軸J3は、例えば、中間軸J2よりも僅かに上側に位置する。
【0029】
図示は省略するが、差動装置5は、ギヤ収容部82の内部において減速装置4の後側(-X側)に位置する。
図1に示すように、差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、差動軸J3回りに回転するギヤである。リングギヤ51は、第3のギヤ43と噛み合う。これにより、リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。リングギヤ51の下側の端部は、減速装置4よりも下側に位置する。本実施形態においてリングギヤ51の下側の端部は、差動装置5のうちで最も下側に位置する部分である。
【0030】
ハウジング6は、駆動装置1の外装筐体である。
図1に示すように、ハウジング6は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを軸方向に区画する隔壁61cを有する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とは、隔壁開口68を介して互いに繋がる。
【0031】
ハウジング6の内部には、オイルOが収容される。より詳細には、モータ収容部81の内部およびギヤ収容部82の内部には、オイルOが収容される。ギヤ収容部82の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPの油面Sは、リングギヤ51の下側の端部よりも上側に位置する。これにより、リングギヤ51の下側の端部は、ギヤ収容部82内のオイルOに浸漬される。オイル溜りPの油面Sは、差動軸J3および車軸55よりも下側に位置する。
【0032】
オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られる。モータ収容部81の内部に送られたオイルOは、モータ収容部81の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部81の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動し、オイル溜りPに戻る。
【0033】
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部81の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部81の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部81の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部82に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部81の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部81の内部に残っていてもよい。
【0034】
また、本明細書において「リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬されればよく、モータが駆動している最中またはモータが停止している間の一部において、リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬されなくてもよい。例えば、オイル溜りPのオイルOが後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られた結果として、オイル溜りPの油面Sが下がり、一時的にリングギヤ51の下側の端部がオイルOに浸漬しない状態となってもよい。
【0035】
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0036】
図1に示すように、ギヤ収容部82の底部82aは、モータ収容部81の底部81aよりも下側に位置する。そのため、ギヤ収容部82内からモータ収容部81内に送られたオイルOが隔壁開口68を介してギヤ収容部82内に流れやすい。
【0037】
ハウジング6は、天壁部81bを有する。天壁部81bは、ハウジング6を構成する壁部のうち上側に位置する壁部である。本実施形態において天壁部81bは、モータ収容部81を構成する壁部のうち上側に位置する壁部である。
図2に示すように、天壁部81bは、天壁部本体81cと、凸部81dと、を有する。天壁部本体81cは、モータ2の上側を覆う壁部分である。凸部81dは、天壁部本体81cの下側の面から下側に突出する。本実施形態において凸部81dは、モータ収容部81の内部に位置する。図示は省略するが、凸部81dは、例えば、直方体状である。
【0038】
図1に示すように、駆動装置1には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とに跨って設けられる。
【0039】
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
【0040】
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容部82内に設けられる。
【0041】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面が高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0042】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、シャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
【0043】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0044】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
【0045】
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPからステータ30の上側まで引き上げられてステータ30に供給される。すなわち、第2の油路92は、オイルOをステータ30の上側からステータ30に供給する。第2の油路92には、オイルポンプ96と、クーラー97と、第2のリザーバ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、を有する。
【0046】
第1の流路92a、第2の流路92bおよび第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、オイルポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97から上側に延びる。第3の流路92cは、モータ収容部81の壁部に設けられる。図示は省略するが、第3の流路92cは、ステータ30の上側においてモータ収容部81の内部に開口する供給口を有する。当該供給口は、モータ収容部81の内部にオイルOを供給する。
【0047】
オイルポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。オイルポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92cおよび第2のリザーバ10を介して、オイルOをモータ2に供給する。
【0048】
クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97には、第1の流路92aおよび第2の流路92bが接続される。第1の流路92aおよび第2の流路92bは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、図示しないラジエータで冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管97jが接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管97jを通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。なお、冷却水用配管97jの経路中には、インバータユニット8が設けられる。冷却水用配管97jを通過する冷却水は、インバータユニット8を冷却する。
【0049】
第2のリザーバ10は、第2の油路92の一部を構成する。第2のリザーバ10は、モータ収容部81の内部に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30の上側に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30によって下側から支持され、モータ2に設けられる。第2のリザーバ10は、例えば、樹脂材料から構成される。
【0050】
本実施形態において第2のリザーバ10は、上側に開口する樋状である。第2のリザーバ10は、オイルOを貯留する。本実施形態において第2のリザーバ10は、第3の流路92cを介してモータ収容部81内に供給されたオイルOを貯留する。第2のリザーバ10は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口10aを有する。これにより、第2のリザーバ10に貯留されたオイルOをステータ30に供給できる。
【0051】
第2のリザーバ10からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
【0052】
駆動装置1は、ハウジング6に設けられたブリーザ部70を備える。ブリーザ部70は、ハウジング6の内部と外部との間で空気を通し、ハウジング6の内部の圧力を調整可能である。ブリーザ部70は、天壁部81bに設けられる。すなわち、本実施形態においてブリーザ部70は、モータ収容部81に設けられる。本実施形態においてブリーザ部70は、天壁部81bのうちステータ30の径方向外側に位置する部分に設けられる。より詳細には、ブリーザ部70は、鉛直方向に沿って視て、モータ2のステータコア32と重なる位置に設けられる。ブリーザ部70は、天壁部81bのうちステータコア32の上側、すなわち径方向外側に位置する部分に設けられる。
【0053】
図2に示すように、ブリーザ部70は、通気孔部71と、パイプ72と、を有する。通気孔部71は、天壁部81bに設けられる。通気孔部71は、天壁部81bの上側の面と天壁部81bの内側面とに開口して、ハウジング6の内部と外部とを繋ぐ孔である。天壁部81bの内側面は、天壁部81bの面のうちハウジング6の内部に面する面である。本実施形態において天壁部81bの内側面は、天壁部本体81cの下側の面と、凸部81dの下側の面と、凸部81dの側面と、を含む。凸部81dの側面は、凸部81dの軸方向両側面と、凸部81dの前後方向両側面と、を含む。本実施形態において通気孔部71は、円形状の孔である。通気孔部71は、鉛直延伸部74と、第1傾斜部75と、第2傾斜部76と、を有する。
【0054】
鉛直延伸部74は、天壁部81bの上側の面から下側に延びる。本実施形態において鉛直延伸部74は、天壁部本体81cのうち凸部81dが設けられた部分における上側の面から下側に延びる。鉛直延伸部74は、鉛直方向に沿って直線状に延びる。本実施形態において鉛直延伸部74の下側の端部は、凸部81dに設けられる。鉛直延伸部74の下側の端部は、凸部81dの下側の面よりも上側に位置する。鉛直延伸部74が延びる鉛直方向と直交する断面において、鉛直延伸部74の形状は、例えば、円形状である。
【0055】
第1傾斜部75は、天壁部81bの内側面から、右側(-Y側)に向かうに従って上側に位置する向きに延びて、鉛直延伸部74の下側の端部に繋がる。本実施形態において第1傾斜部75は、凸部81dのうち左側(+Y側)の面から、右側に向かうに従って上側に位置する向きに延びて、鉛直延伸部74の下側の端部に繋がる。
【0056】
本実施形態において第1傾斜部75は、第1傾斜方向TD1に沿って直線状に延びる。第1傾斜方向TD1は、右側(-Y側)に向かうに従って上側に位置する方向である。第1傾斜方向TD1は、前後方向と直交し、軸方向に対して鉛直方向に角度θ1だけ斜めに傾く。角度θ1は、軸方向に対する第1傾斜部75の傾きである。
【0057】
本実施形態において角度θ1は、1°以上、10°以下である。より好ましくは、角度θ1は、4°以上、7°以下である。さらに好ましくは、角度θ1は、5°である。角度θ1をこのような数値とすることで、オイルOを第1傾斜部75内に浸入させにくくでき、かつ、第1傾斜部75内に浸入したオイルOをハウジング6の内部に排出しやすくできる。
【0058】
第1傾斜部75が延びる第1傾斜方向TD1と直交する断面において、第1傾斜部75の形状は、例えば、円形状である。第1傾斜部75の内径は、鉛直延伸部74の内径よりも大きい。第1傾斜部75は、ハウジング6の内部に開口する第1開口部75cを有する。本実施形態において第1開口部75cは、モータ収容部81の内部に開口する。第1開口部75cは、凸部81dのうち左側(+Y側)の面に設けられ、左側に開口する。
【0059】
第2傾斜部76は、天壁部81bの内側面から、左側(+Y側)に向かうに従って上側に位置する向きに延びて、鉛直延伸部74の下側の端部に繋がる。本実施形態において第2傾斜部76は、凸部81dのうち右側(-Y側)の面から、左側に向かうに従って上側に位置する向きに延びて、鉛直延伸部74の下側の端部に繋がる。
【0060】
本実施形態において第2傾斜部76は、第2傾斜方向TD2に沿って直線状に延びる。第2傾斜方向TD2は、左側(+Y側)に向かうに従って上側に位置する方向である。第2傾斜方向TD2は、前後方向と直交し、軸方向に対して鉛直方向に角度θ2だけ斜めに傾く。角度θ2は、軸方向に対する第2傾斜部76の傾きである。
【0061】
本実施形態において角度θ2は、1°以上、10°以下である。より好ましくは、角度θ2は、4°以上、7°以下である。さらに好ましくは、角度θ2は、5°である。角度θ2をこのような数値とすることで、オイルOを第2傾斜部76内に浸入させにくくでき、かつ、第2傾斜部76内に浸入したオイルOをハウジング6の内部に排出しやすくできる。角度θ1と角度θ2とは、例えば、互いに同じである。なお、角度θ1と角度θ2とは、互いに異なってもよい。
【0062】
第2傾斜部76が延びる第2傾斜方向TD2と直交する断面において、第2傾斜部76の形状は、例えば、円形状である。第2傾斜部76の内径は、鉛直延伸部74の内径よりも大きい。第1傾斜部75の内径と第2傾斜部76の内径とは、例えば、互いに同じである。なお、第1傾斜部75の内径と第2傾斜部76の内径とは、互いに異なってもよい。第2傾斜部76は、ハウジング6の内部に開口する第2開口部76cを有する。本実施形態において第2開口部76cは、モータ収容部81の内部に開口する。第2開口部76cは、凸部81dのうち右側(-Y側)の面に設けられ、右側に開口する。
【0063】
第1傾斜部75と第2傾斜部76とは、軸方向に繋がる。より詳細には、第1傾斜部75の右側(-Y側)の端部と第2傾斜部76の左側(+Y側)の端部とが、互いに繋がる。第1傾斜部75の内側面のうち下側に位置する下側部分75bと第2傾斜部76の内側面のうち下側に位置する下側部分76bとは、互いに繋がり、上側に凸となる角部78を構成する。
【0064】
角部78の頂端部78aは、下側部分75bの右側(-Y側)の端部と下側部分76bの左側(+Y側)の端部との接続部である。図示は省略するが、頂端部78aは、前後方向に延びる。頂端部78aは、例えば、下側に凹となる円弧状である。頂端部78aには、鉛直延伸部74の中心を通る中心軸J4が通る。中心軸J4は、鉛直方向に延びる。本実施形態において第1傾斜部75と第2傾斜部76とは、鉛直延伸部74の中心を通る中心軸J4を基準として軸方向に対称に配置される。
【0065】
第1傾斜部75の内側面のうち上側に位置する上側部分75aには、上側に窪む第1凹部77aが設けられる。第2傾斜部76の内側面のうち上側に位置する上側部分76aには、上側に窪む第2凹部77bが設けられる。第1凹部77aは、上側部分75aのうち鉛直延伸部74と繋がる部分、すなわち右側(-Y側)の端部に設けられる。第2凹部77bは、上側部分76aのうち鉛直延伸部74と繋がる部分、すなわち左側(+Y側)の端部に設けられる。
【0066】
第1凹部77aの内側面は、第1接続面77cと、第1屈曲面77dと、を有する。第2凹部77bの内側面は、第2接続面77eと、第2屈曲面77fと、を有する。本実施形態において第1凹部77aの内側面は、第1接続面77cと第1屈曲面77dとからなる。本実施形態において第2凹部77bの内側面は、第2接続面77eと第2屈曲面77fとからなる。
【0067】
第1接続面77cは、鉛直延伸部74の内側面のうち左側(+Y側)に位置する部分と繋がる。第1接続面77cは、鉛直延伸部74の内側面のうち左側に位置する部分の下側の端部から、第2傾斜方向TD2に沿って、左側斜め上方に延びる。第1接続面77cは、第2傾斜部76の中心を通る中心軸J6を中心とし、上側に凹となる円弧状の面である。中心軸J6は、第2傾斜方向TD2に延びる。第1接続面77cは、第2傾斜部76の内側面のうち上側に位置する上側部分76aの延長線上に配置される。中心軸J6の径方向において、中心軸J6から第1接続面77cまでの距離は、中心軸J6から、上側部分76aのうち第2凹部77bが設けられていない部分までの距離と同じである。
【0068】
第1屈曲面77dは、第1接続面77cにおける左側(+Y側)の端部から下側に屈曲して延びて第1傾斜部75の内側面のうち上側に位置する上側部分75aに繋がる。第1屈曲面77dは、第1接続面77cにおける左側の端部から下側斜め左方(+Y方)に延びる。第1屈曲面77dは、第2傾斜部76の中心軸J6を中心とするテーパ面の一部である。より詳細には、第1屈曲面77dは、中心軸J6を中心とし、左側に向かうに従って内径が小さくなるテーパ面の一部である。
【0069】
第2接続面77eは、鉛直延伸部74の内側面のうち右側(-Y側)に位置する部分と繋がる。第2接続面77eは、鉛直延伸部74の内側面のうち右側に位置する部分の下側の端部から、第1傾斜方向TD1に沿って、右側斜め上方に延びる。第2接続面77eは、第1傾斜部75の中心を通る中心軸J5を中心とし、上側に凹となる円弧状の面である。中心軸J5は、第1傾斜方向TD1に延びる。第2接続面77eは、第1傾斜部75の内側面のうち上側に位置する上側部分75aの延長線上に配置される。中心軸J5の径方向において、中心軸J5から第2接続面77eまでの距離は、中心軸J5から、上側部分75aのうち第1凹部77aが設けられていない部分までの距離と同じである。
【0070】
第2屈曲面77fは、第2接続面77eにおける右側(-Y側)の端部から下側に屈曲して延びて第2傾斜部76の内側面のうち上側に位置する上側部分76aに繋がる。第2屈曲面77fは、第2接続面77eにおける右側の端部から下側斜め右方(-Y方)に延びる。第2屈曲面77fは、第1傾斜部75の中心軸J5を中心とするテーパ面の一部である。より詳細には、第2屈曲面77fは、中心軸J5を中心とし、右側に向かうに従って内径が小さくなるテーパ面の一部である。
【0071】
パイプ72は、鉛直延伸部74に挿し込まれる。パイプ72は、両端が開口し、鉛直延伸部74の内部とハウジング6の外部とを繋ぐ。パイプ72は、第1部分72aと、第2部分72bと、を有する。第1部分72aは、鉛直延伸部74に上側から挿し込まれる部分である。第1部分72aは、中心軸J4を中心として鉛直方向に延び、下側に開口する円筒状である。第1部分72aは、例えば、鉛直延伸部74に圧入されて固定される。第1部分72aの下側の端部は、鉛直延伸部74の下側の端部よりも上側に位置する。第1部分72aの上側部分は、ハウジング6の外部に突出する。
【0072】
第2部分72bは、第1部分72aの上側の端部から、鉛直方向と直交する方向に延びる。第2部分72bは、ハウジング6の外部に位置する。本実施形態において第2部分72bは、第1部分72aの上側の端部から左側(+Y側)に延びる。第2部分72bは、軸方向に延び、左側に開口する円筒状である。
【0073】
パイプ72の先端部には、図示しないホースを設けてもよい。より詳細には、第2部分72bの左側(+Y側)の端部には、図示しないホースを設けてもよい。ホースの全長は、例えば、パイプ72の全長よりも長い。パイプ72より長いホースをパイプ72の先端部に設けることで、パイプ72のうち第2部分72bの左側の開口からホースの内部にオイルOが排出された場合であっても、オイルOがホースの内部から外部に排出されにくくできる。これにより、オイルOが駆動装置1の外部に漏れることを抑制できる。また、図示しないホースの先端にフィルタを設けてもよい。
【0074】
図1に示すように、ブリーザ部70の上側の端部は、インバータユニット8の上側の端部よりも下側に位置する。そのため、ブリーザ部70を設けても、駆動装置1が鉛直方向に大型化することを抑制できる。また、ブリーザ部70に上述した図示しないホースを設けた場合でも、駆動装置1が鉛直方向に大型化することを抑制できる。本実施形態においてブリーザ部70の上側の端部は、パイプ72の上側の端部である。
【0075】
ハウジング6の内部の圧力が上昇すると、ハウジング6の内部の空気は、第1開口部75cおよび第2開口部76cから通気孔部71の内部に流入し、鉛直延伸部74からパイプ72の内部に流入する。パイプ72の内部に流入した空気は、ハウジング6の外部に排出される。これにより、ハウジング6の内部の空気をハウジング6の外部に排出することができ、ハウジング6の内部の圧力を低下させることができる。
【0076】
また、ハウジング6の内部の圧力が低下すると、ハウジング6の外部の空気がパイプ72の内部に流入する。パイプ72の内部に流入した空気は、パイプ72から通気孔部71に流入して、第1開口部75cおよび第2開口部76cからハウジング6の内部に流入する。これにより、ハウジング6の内部の圧力を上昇させることができる。以上のようにして、ブリーザ部70によって、ハウジング6の内部の圧力をハウジング6の外部の圧力と同等の圧力に維持できる。
【0077】
上述した駆動装置1の製造方法は、ブリーザ部70を作る工程を含む。ブリーザ部70を作る工程は、通気孔部加工工程S1と、パイプ挿し込み工程S2と、を含む。通気孔部加工工程S1は、ハウジング6に穴加工を施して通気孔部71を作る工程である。通気孔部加工工程S1は、鉛直穴加工工程S1aと、第1傾斜穴加工工程S1bと、第2傾斜穴加工工程S1cと、を含む。
【0078】
図3に示すように、鉛直穴加工工程S1aは、天壁部81bの上側の面から下側に向かって穴加工を施し、底部を有する鉛直穴79aを作る工程である。作業者等は、例えばドリルを用いて、天壁部本体81cのうち凸部81dが設けられた部分の上側の面から下側に向かって穴加工を施す。鉛直穴79aの下側の端部における内側面は、ドリルの先端によってテーパ面に加工される。
【0079】
なお、本明細書において「作業者等」とは、各作業を行う作業者および装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、装置のみによって行われてもよいし、作業者と装置とによって行われてもよい。
【0080】
図4に示すように、第1傾斜穴加工工程S1bは、天壁部81bの内側面から、右側(-Y側)斜め上方に向かって穴加工を施し、第1傾斜穴79bを作る工程である。本実施形態の第1傾斜穴加工工程S1bにおいて作業者等は、例えばドリルを用いて、凸部81dの左側(+Y側)の面から第1傾斜方向TD1に沿って穴加工を施す。第1傾斜穴加工工程S1bにおいて作業者等は、鉛直穴79aの下側の端部を通り、かつ、鉛直穴79aの下側の端部を通過した先の部分まで穴加工を施す。鉛直穴79aの下側の端部は、第1傾斜穴79bと重なる。第1傾斜穴79bは、底部を有する穴である。第1傾斜穴79bの底部は、鉛直穴79aよりも右側(-Y側)に位置する。第1傾斜穴79bの底部は、ドリルの先端によってテーパ面に加工される。
【0081】
図5に示すように、第2傾斜穴加工工程S1cは、天壁部81bの内側面から、左側(+Y側)斜め上方に向かって穴加工を施し、第2傾斜穴79cを作る工程である。本実施形態の第2傾斜穴加工工程S1cにおいて作業者等は、例えばドリルを用いて、凸部81dの右側(-Y側)の面から第2傾斜方向TD2に沿って穴加工を施す。第2傾斜穴加工工程S1cにおいて作業者等は、鉛直穴79aの下側の端部を通り、かつ、鉛直穴79aの下側の端部を通過した先の部分まで穴加工を施す。
【0082】
ここで、本実施形態では、鉛直穴79aの下側の端部は、第1傾斜穴加工工程S1bにおいて作られた第1傾斜穴79bと重なり、削られた状態となっている。そのため、作業者等は、第1傾斜穴加工工程S1bを行う前において鉛直穴79aの下側の端部が位置した箇所にドリルを通し、穴加工を施す。
【0083】
第2傾斜穴79cは、第1傾斜穴79bと交差する。すなわち、第2傾斜穴79cの一部は、第1傾斜穴79bの一部と重なる。第2傾斜穴79cは、底部を有する穴である。第2傾斜穴79cの底部は、鉛直穴79aよりも左側(+Y側)に位置する。第2傾斜穴79cの底部は、ドリルの先端によってテーパ面に加工される。ここで、本実施形態では、第2傾斜穴79cの底部の一部は、第1傾斜穴79bと重なるため、テーパ面に加工されるのは、第2傾斜穴79cの上側の端部のみである。また、第2傾斜穴79cは、第1傾斜穴79bの一部と重なるため、第1傾斜穴79bのテーパ面は上側の端部を残して削り取られる。
【0084】
以上のように、3回の穴加工を行って、鉛直穴79aと第1傾斜穴79bと第2傾斜穴79cとを交差させることで、鉛直延伸部74、第1傾斜部75、および第2傾斜部76が作られ、通気孔部71が作られる。鉛直延伸部74は、鉛直穴79aのうち下側の端部を除いた部分で構成される。第1傾斜部75は、第1傾斜穴79bの左側部分で構成される。第2傾斜部76は、第2傾斜穴79cの右側部分で構成される。
【0085】
第1傾斜穴79bの右側(-Y側)の端部のうち上側の端部は、第2傾斜部76の上側部分76aに残り、第2凹部77bとなる。すなわち、第2凹部77bの内側面は、第1傾斜穴79bの内側面の一部である。より詳細には、第2凹部77bにおける第2接続面77eは、第1傾斜穴79bの内周面の一部である。第2凹部77bにおける第2屈曲面77fは、第1傾斜穴79bの底部に設けられたテーパ面の一部である。
【0086】
第2傾斜穴79cの左側(+Y側)の端部のうち上側の端部は、第1傾斜部75の上側部分75aに残り、第1凹部77aとなる。すなわち、第1凹部77aの内側面は、第2傾斜穴79cの内側面の一部である。より詳細には、第1凹部77aにおける第1接続面77cは、第2傾斜穴79cの内周面の一部である。第1凹部77aにおける第1屈曲面77dは、第2傾斜穴79cの底部に設けられたテーパ面の一部である。
【0087】
このように、本実施形態によれば、第1傾斜穴加工工程S1bと第2傾斜穴加工工程S1cとのそれぞれにおいて、鉛直穴79aの下側の端部を通過した先の部分まで穴加工を施して第1傾斜穴79bおよび第2傾斜穴79cを作ることで、第1凹部77aおよび第2凹部77bが設けられた通気孔部71を容易に作ることができる。したがって、第1凹部77aおよび第2凹部77bを有するブリーザ部70を容易に作ることができる。
【0088】
パイプ挿し込み工程S2は、パイプ72を通気孔部71に挿し込んで固定する工程である。作業者等は、パイプ72を、鉛直延伸部74に上側から挿し込む。本実施形態において作業者等は、例えば、パイプ72を鉛直延伸部74に圧入して固定する。なお、作業者等は、接着剤によって、パイプ72の外周面と鉛直延伸部74の内周面とを固定してもよい。以上の工程により、ブリーザ部70が作られる。
【0089】
本実施形態において、ハウジング6の内部にはオイルOが収容されるため、ハウジング6の内部に収容されたオイルOの一部が、第1開口部75cおよび第2開口部76cから通気孔部71に浸入する場合がある。具体的には、リングギヤ51によってかき上げられてハウジング6の内部を霧状になって漂うオイルO、およびオイルポンプ96によってモータ収容部81内に送られてモータ2に供給された際に飛び跳ねたオイルO等が、通気孔部71に浸入する場合がある。この場合、通気孔部71に浸入したオイルOは、通気孔部71内を塞ぐ膜状となり、表面張力によってハウジング6の外部に向けて進む場合がある。
【0090】
これに対して、本実施形態によれば、第1傾斜部75の内側面のうち上側に位置する上側部分75aには、上側に窪む第1凹部77aが設けられる。そのため、第1凹部77aが設けられた部分においては、第1傾斜部75の内径が部分的に大きくなる。これにより、第1凹部77aが設けられた部分においては、第1傾斜部75内に浸入したオイルOが膜状を維持しにくくなる。したがって、第1開口部75cから第1傾斜部75内に浸入したオイルOが膜状になって鉛直延伸部74に向けて進んでも、第1凹部77aが設けられた位置に到達した際に、オイルOの状態が膜状から液滴状に変わりやすい。そのため、第1傾斜部75内におけるオイルOの進行を抑制できる。液滴状になったオイルOは、第1傾斜部75に沿って左側(+Y側)斜め下方に流れ、第1開口部75cからハウジング6の内部に戻される。
【0091】
また、本実施形態によれば、第2傾斜部76の内側面のうち上側に位置する上側部分76aには、上側に窪む第2凹部77bが設けられる。そのため、第2凹部77bが設けられた部分においては、第2傾斜部76の内径が部分的に大きくなる。これにより、第2凹部77bが設けられた部分においては、第2傾斜部76内に浸入したオイルOが膜状を維持しにくくなる。したがって、第2開口部76cから第2傾斜部76内に浸入したオイルOが膜状になって鉛直延伸部74に向けて進んでも、第2凹部77bが設けられた位置に到達した際に、オイルOの状態が膜状から液滴状に変わりやすい。そのため、第2傾斜部76内におけるオイルOの進行を抑制できる。液滴状になったオイルOは、第2傾斜部76に沿って右側(-Y側)斜め下方に流れ、第2開口部76cからハウジング6の内部に戻される。
【0092】
以上のように、本実施形態によれば、第1凹部77aおよび第2凹部77bが設けられることで、通気孔部71内に浸入したオイルOがハウジング6の外部に向かって進むことを抑制できる。そのため、オイルOが通気孔部71からハウジング6の外部に漏れることを抑制できる。
【0093】
また、本実施形態によれば、第1傾斜部75は、凸部81dのうち左側(+Y側)の面から延びて鉛直延伸部74の下側の端部に繋がる。また、第2傾斜部76は、凸部81dのうち右側(-Y側)の面から延びて鉛直延伸部74の下側の端部に繋がる。そのため、第1傾斜部75の第1開口部75cおよび第2傾斜部76の第2開口部76cは、軸方向両側に開口する。これにより、ハウジング6の内部においてオイルOが上側に飛び跳ねる等しても、オイルOが第1傾斜部75および第2傾斜部76に入りにくい。また、ハウジング6の内部で霧状になったオイルOが上昇しても、第1傾斜部75および第2傾斜部76に入りにくい。これにより、通気孔部71にオイルOが入りにくくできる。
【0094】
また、例えば、軸方向に対する第1傾斜部75の傾きおよび軸方向に対する第2傾斜部76の傾きが大き過ぎる場合、ハウジング6の内部においてオイルOが上側に飛び跳ねた場合に、飛び跳ねたオイルOが第1傾斜部75または第2傾斜部76を通過して、直接的に鉛直延伸部74に浸入する虞もある。また、一方で、軸方向に対する第1傾斜部75の傾きおよび軸方向に対する第2傾斜部76の傾きが小さ過ぎると、第1傾斜部75の内部および第2傾斜部76の内部に浸入したオイルOが、第1傾斜部75および第2傾斜部76に沿って流れず、ハウジング6の内部に戻されない虞がある。
【0095】
これに対して、本実施形態によれば、軸方向に対する第1傾斜部75の傾きである角度θ1および軸方向に対する第2傾斜部76の傾きである角度θ2は、1°以上、10°以下である。そのため、軸方向に対する第1傾斜部75の傾きおよび軸方向に対する第2傾斜部76の傾きを、大き過ぎず、かつ、小さ過ぎない好適な範囲内にすることができる。これにより、ハウジング6の内部において上側に飛び跳ねたオイルOが直接的に鉛直延伸部74に浸入することを抑制しつつ、かつ、第1傾斜部75の内部および第2傾斜部76の内部からオイルOを好適にハウジング6の内部に戻すことができる。
【0096】
また、角度θ1,θ2を4°以上、7°以下にすることで、ハウジング6の内部において上側に飛び跳ねたオイルOが直接的に鉛直延伸部74に浸入することをより抑制しつつ、かつ、第1傾斜部75の内部および第2傾斜部76の内部からオイルOをより好適にハウジング6の内部に戻すことができる。また、角度θ1,θ2を5°にすることで、ハウジング6の内部において上側に飛び跳ねたオイルOが直接的に鉛直延伸部74に浸入することをさらに抑制しつつ、かつ、第1傾斜部75の内部および第2傾斜部76の内部からオイルOをさらに好適にハウジング6の内部に戻すことができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、第1傾斜部75の内側面のうち下側に位置する下側部分75bと第2傾斜部76の内側面のうち下側に位置する下側部分76bとは、互いに繋がり、上側に凸となる角部78を構成する。そのため、下側部分75bと下側部分76bとの接続部分が鉛直方向と直交する平坦な面である場合、および下側部分75bと下側部分76bとの接続部分に下側に窪む凹部が設けられる場合等に比べて、通気孔部71内に浸入したオイルOが通気孔部71内に滞留しにくい。したがって、通気孔部71内に浸入したオイルOを好適にハウジング6の内部に戻すことができる。
【0098】
また、本実施形態において差動装置5は、下側の端部がギヤ収容部82内のオイルOに浸漬されるギヤとして、リングギヤ51を有する。そのため、上述したように、リングギヤ51が回転することで、オイルOがかき上げられる。これにより、ギヤ収容部82の内部においては、モータ収容部81の内部に比べて、特にオイルOが飛び跳ねやすく、かつ、霧状になったオイルOが漂いやすい。これに対して、本実施形態によれば、ブリーザ部70は、モータ収容部81に設けられる。そのため、ブリーザ部70がギヤ収容部82に設けられる場合に比べて、通気孔部71内にオイルOが浸入することを好適に抑制できる。
【0099】
また、上述したように本実施形態においては、第1の油路91のロータ内経路91dを介して、ロータ20からステータ30に向けて、オイルOが径方向外側に連続的に飛散される。そのため、モータ収容部81の天壁部81bには、オイルOが飛散してきやすい。したがって、単にブリーザ部70をモータ収容部81の天壁部81bに設けると、ロータ20から飛散されたオイルOがブリーザ部70の通気孔部71内に浸入しやすくなる虞があった。
【0100】
これに対して、本実施形態によれば、ブリーザ部70は、天壁部81bのうちステータ30の径方向外側に位置する部分に設けられる。ステータ30の径方向外側においては、ロータ20から飛散されたオイルOがステータ30によって遮られる。そのため、天壁部81bのうちステータ30の径方向外側に位置する部分には、ロータ20からのオイルOが飛散しにくい。したがって、天壁部81bのうちステータ30の径方向外側に位置する部分にブリーザ部70を設けることで、ブリーザ部70を天壁部81bに設けても、ロータ20から飛散されたオイルOが通気孔部71に浸入することを抑制できる。そのため、オイルOがハウジング6の外部に漏れることを抑制できる。また、天壁部81bにブリーザ部70が設けられることで、飛び石等によりブリーザ部70が破損することを抑制できる。
【0101】
また、本実施形態によれば、ブリーザ部70は、ステータコア32の上側、すなわち径方向外側に位置する。ロータ20からステータ30に向けて飛散されるオイルOは、コイルエンド33a,33bに向けて飛散されるオイルOが多く、ステータコア32に向けては飛散されにくい。また、ステータコア32は、コイルエンド33a,33bに比べてオイルOを遮りやすい。そのため、ステータコア32に飛散されたとしても、ステータコア32の上側においては、飛散されたオイルOがステータコア32によって、より好適に遮られる。そのため、天壁部81bのうちステータ30の径方向外側に位置する部分において、ステータコア32の径方向外側(上側)に位置する部分には、特にロータ20からのオイルOが飛散しにくい。したがって、ステータコア32の径方向外側(上側)にブリーザ部70を設けることで、ブリーザ部70を天壁部81bに設けても、ロータ20から飛散されたオイルOが通気孔部71に浸入することをより抑制できる。
【0102】
また、本実施形態によれば、第1凹部77aの内側面は、第2傾斜部76の内側面のうち上側に位置する上側部分76aの延長線上に配置される第1接続面77cを有する。また、第2凹部77bの内側面は、第1傾斜部75の内側面のうち上側に位置する上側部分75aの延長線上に配置される第2接続面77eを有する。そのため、上述した本実施形態のブリーザ部70を作る工程を採用できる。すなわち、第1傾斜穴加工工程S1bにおいて作られる第1傾斜穴79bによって、第1傾斜部75と第2凹部77bとを作ることができる。また、第2傾斜穴加工工程S1cにおいて作られる第2傾斜穴79cによって、第2傾斜部76と第1凹部77aとを作ることができる。したがって、ブリーザ部70を容易に作ることができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、第1凹部77aの第1屈曲面77dは、第2傾斜部76の中心軸J6を中心とするテーパ面の一部であり、第2凹部77bの第2屈曲面77fは、第1傾斜部75の中心軸J5を中心とするテーパ面の一部である。すなわち、第1屈曲面77dを、ドリルで加工した第2傾斜穴79cの底部のテーパ面によって構成することができ、第2屈曲面77fを、ドリルで加工した第1傾斜穴79bの底部のテーパ面によって構成することができる。したがって、上述した通気孔部加工工程S1において、ドリルを用いた穴加工方法を採用できる。
【0104】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。第1凹部が設けられる箇所は、第1傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分であれば、特に限定されない。第2凹部が設けられる箇所は、第2傾斜部の内側面のうち鉛直方向上側に位置する部分であれば、特に限定されない。第1凹部は、鉛直延伸部から離れた位置に設けられてもよい。第2凹部は、鉛直延伸部から離れた位置に設けられてもよい。第1凹部の形状および第2凹部の形状は、特に限定されない。
【0105】
ハウジングの内部に開口する第1傾斜部の第1開口部は、下側に開口してもよい。ハウジングの内部に開口する第2傾斜部の第2開口部は、下側に開口してもよい。天壁部は、凸部を有しなくてもよい。この場合、第1開口部および第2開口部は、天壁部本体の下側の面に開口する。
【0106】
通気孔部の形状は、特に限定されず、第1凹部および第2凹部が設けられなくてもよいし、第1傾斜部および第2傾斜部が設けられなくてもよい。この場合であっても、ブリーザ部を、天壁部のうちステータの径方向外側に位置する部分に設けることで、上述した実施形態において説明したように、オイルがハウジングの外部に漏れることを抑制できる。
【0107】
ブリーザ部が設けられる天壁部は、ギヤ収容部の壁部のうち上側に位置する壁部であってもよい。すなわち、ブリーザ部は、ギヤ収容部に設けられてもよい。天壁部のうちブリーザ部が設けられる部分は、取り外し可能な別体であってもよい。ブリーザ部は、パイプを有しなくてもよい。ブリーザ部を作る工程は、特に限定されない。通気孔部は、穴加工以外の方法で作られてもよい。
【0108】
本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0109】
1…駆動装置、2…モータ、4…減速装置、5…差動装置、6…ハウジング、8…インバータユニット、8a…インバータ、20…ロータ、30…ステータ、51…リングギヤ(ギヤ)、55…車軸、70…ブリーザ部、71…通気孔部、72…パイプ、74…鉛直延伸部、75…第1傾斜部、76…第2傾斜部、77a…第1凹部、77b…第2凹部、77c…第1接続面、77d…第1屈曲面、77e…第2接続面、77f…第2屈曲面、78…角部、79a…鉛直穴、79b…第1傾斜穴、79c…第2傾斜穴、81…モータ収容部、81b…天壁部、81c…天壁部本体、81d…凸部、82…ギヤ収容部、J5,J6…中心軸、O…オイル