(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20230511BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230511BHJP
H02K 11/225 20160101ALI20230511BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K11/33
H02K11/225
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2019532660
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2018027805
(87)【国際公開番号】W WO2019022106
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2017147113
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 佳久
(72)【発明者】
【氏名】梶田 国博
(72)【発明者】
【氏名】小長谷 美香
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽介
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-263768(JP,A)
【文献】特開2017-063519(JP,A)
【文献】実開昭58-159868(JP,U)
【文献】特開2011-037438(JP,A)
【文献】特開平04-229047(JP,A)
【文献】特開2013-106366(JP,A)
【文献】特開2016-192832(JP,A)
【文献】特開2000-102221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 11/33
H02K 11/225
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる中心軸に沿って配置されるモータシャフトを有するロータと、
前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、
前記ステータと電気的に接続されるインバータ部と、
筒状の周壁部を有し、前記ステータを収容するステータ収容部と、
前記インバータ部を収容するインバータ収容部と、
前記ステータ収容部および前記インバータ収容部を単一の部材の部分として有するハウジングと、
前記周壁部の軸方向一方側の開口を覆うカバー部と、
前記ロータの回転を検出し、前記ステータよりも軸方向一方側において前記モータシャフトに取り付けられる回転検出部と、
前記モータシャフトの軸方向一方側の端部に連結される減速機構および前記減速機構が収容される筐体を有する減速装置と、
前記回転検出部と前記インバータ部とを電気的に接続するセンサ配線と、
前記カバー部を軸方向に貫通する貫通孔と、を備え、
前記回転検出部は、軸方向一方側から前記筐体により覆われ、
前記インバータ収容部は、前記ステータ収容部の径方向外側に位置し、
前記カバー部は、前記インバータ収容部の軸方向一方側の開口を覆い、
前記貫通孔は、前記インバータ収容部に開口し、
前記回転検出部は、前記カバー部の軸方向一方側に配置され、
前記センサ配線は、前記貫通孔を通り、
前記周壁部は、前記ステータ収容部と前記インバータ収容部との間に位置する仕切り壁部を有し、
前記ハウジングの軸方向他方側の端部に、前記ステータの少なくとも一部、前記仕切り壁部の軸方向他方側の端部、および前記インバータ収容部の少なくとも一部が露出されるハウジング開口部を有し、
前記ハウジング開口部の内側に、前記ステータから延びる三相用コイル線が配置され、
前記三相用コイル線が、前記仕切り壁部の軸方向他方側の端部を通り前記インバータ部に接続される、モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記筐体は、前記減速機構を軸方向他方側から覆う内ケース部を備え、
前記回転検出部は、軸方向一方側から前記内ケース部により覆われる、モータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータであって、
前記内ケース部の径方向内側の端部に、前記モータシャフトに接触するシール部材を備
えた、モータ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のモータであって、
前記回転検出部は、軸方向一方側から前記内ケース部により支持される、モータ。
【請求項5】
請求項1に記載のモータであって、
前記筐体は、前記減速機構を軸方向一方側から覆う外ケース部を備え、
前記カバー部は、前記筐体のうち前記減速機構を軸方向他方側から覆う部分であり、
前記回転検出部は、軸方向一方側から前記外ケース部により覆われる、モータ。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のモータであって、
前記回転検出部は、前記カバー部に固定部材により固定される、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、モータ駆動装置および車両が記載される。モータ駆動装置の一例であるモータ駆動部は、第1収容部と、第2収容部と、第1カバー部と、第2カバー部と、を備える。第1収容部には、モータおよび巻線切替部が収容される。第2収容部には、インバータ部が収容される。第1収容部は、モータ収容部と、巻線切替部収容部と、を含む。モータ収容部の反負荷側は、開口しており、レゾルバが配置されるレゾルバ収容部が設けられる。第1カバー部は、レゾルバ収容部にネジ部材により取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば上記特許文献1とは異なり、モータのシャフトにおける減速装置に接続される側の部分にレゾルバを取り付ける場合、レゾルバをカバー部で覆い、カバー部の外側に減速装置が設けられる。この場合において、モータの構造を簡素化し、組立工程を削減することに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、構造を簡素化し、組立工程を削減できるモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、一方向に延びる中心軸に沿って配置されるモータシャフトを有するロータと、 前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、前記ステータと電気的に接続されるインバータ部と、筒状の周壁部を有し、前記ステータを収容するステータ収容部と、前記インバータ部を収容するインバータ収容部と、前記ステータ収容部および前記インバータ収容部を単一の部材の部分として有するハウジングと、前記周壁部の軸方向一方側の開口を覆うカバー部と、前記ロータの回転を検出し、前記ステータよりも軸方向一方側において前記モータシャフトに取り付けられる回転検出部と、前記モータシャフトの軸方向一方側の端部に連結される減速機構および前記減速機構が収容される筐体を有する減速装置と、前記回転検出部と前記インバータ部とを電気的に接続するセンサ配線と、前記カバー部を軸方向に貫通する貫通孔と、を備え、前記回転検出部は、軸方向一方側から前記筐体により覆われ、前記インバータ収容部は、前記ステータ収容部の径方向外側に位置し、前記カバー部は、前記インバータ収容部の軸方向一方側の開口を覆い、前記貫通孔は、前記インバータ収容部に開口し、前記回転検出部は、前記カバー部の軸方向一方側に配置され、前記センサ配線は、前記貫通孔を通り、前記周壁部は、前記ステータ収容部と前記インバータ収容部との間に位置する仕切り壁部を有し、前記ハウジングの軸方向他方側の端部に、前記ステータの少なくとも一部、前記仕切り壁部の軸方向他方側の端部、および前記インバータ収容部の少なくとも一部が露出されるハウジング開口部を有し、前記ハウジング開口部の内側に、前記ステータから延びる三相用コイル線が配置され、前記三相用コイル線が、前記仕切り壁部の軸方向他方側の端部を通り前記インバータ部に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、構造を簡素化し、組立工程を削減できるモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のモータの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のモータの一部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における変形例のモータの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図に示すZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする鉛直方向Zである。Y軸方向は、各図に示す一方向に延びる中心軸Jと平行な方向であり、鉛直方向Zと直交する方向である。以下の説明においては、中心軸Jと平行な方向、すなわちY軸方向を「軸方向Y」と呼ぶ。また、軸方向Yの正の側を、「軸方向一方側」と呼び、軸方向Yの負の側を、「軸方向他方側」と呼ぶ。各図に示すX軸方向は、軸方向Yおよび鉛直方向Zの両方と直交する方向である。以下の説明においては、X軸方向を「幅方向X」と呼ぶ。また、幅方向Xの正の側を「幅方向一方側」と呼び、幅方向Xの負の側を「幅方向他方側」と呼ぶ。
【0010】
また、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。なお、鉛直方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1および
図2に示すように、本実施形態のモータ1は、ハウジング10と、蓋部(上蓋部)11と、カバー部(前カバー部)12と、後カバー部材16と、中心軸Jに沿って配置されるモータシャフト21を有するロータ20と、ステータ30と、インバータユニット50と、図示しないコネクタ部と、回転検出部70と、減速装置80と、を備える。
【0012】
ハウジング10は、ロータ20とステータ30とインバータユニット50とを収容する。ハウジング10は、単一の部材である。ハウジング10は、例えば、砂型鋳造で作製される。ハウジング10は、周壁部10bと、角筒部10eと、を有する。
【0013】
周壁部10bは、ロータ20およびステータ30の径方向外側においてロータ20およびステータ30を囲む筒状である。本実施形態において周壁部10bは、中心軸Jを中心とする略円筒状である。
図2に示すように、周壁部10bは、少なくとも軸方向他方側に開口する。周壁部10bは、ステータ30およびインバータユニット50を冷却する冷却部60を有する。冷却部60は、冷却流路と、冷却流路内を流れる冷媒と、を有する。周壁部10bによって、ステータ収容部14が構成される。すなわち、ハウジング10は、周壁部10bを有する筒状のステータ収容部14を有する。
【0014】
角筒部10eは、周壁部10bから上側に延びる角筒状である。角筒部10eは、上側に開口する。角筒部10eは、角筒部10eを構成する壁部のうち軸方向他方側の壁部を軸方向Yに貫通する貫通孔10fを有する。貫通孔10fの下端部は、周壁部10bの軸方向他方側の開口と繋がる。角筒部10eと周壁部10bとによって、インバータ収容部15が構成される。すなわち、ハウジング10は、インバータ収容部15を有する。
【0015】
インバータ収容部15は、ステータ収容部14の径方向外側に位置する。本実施形態においてインバータ収容部15は、軸方向Yと直交する鉛直方向Zにおいて、ステータ収容部14の上側に位置する。ステータ収容部14とインバータ収容部15とは、仕切り壁部10dによって鉛直方向Zに仕切られる。仕切り壁部10dは、周壁部10bの上側の部分である。すなわち、周壁部10bは、ステータ収容部14とインバータ収容部15とを仕切る仕切り壁部10dを有する。仕切り壁部10dは、ステータ収容部14とインバータ収容部15との間に位置する。
【0016】
図2に示すように、モータ1は、ハウジング10の軸方向他方側の端部に、ステータ30の少なくとも一部、仕切り壁部10dの軸方向他方側の端部、およびインバータ収容部15の少なくとも一部が露出されるハウジング開口部10nを有する。ハウジング開口部10nの内側には、ステータ30から延びるコイル線32aが配置される。つまり、コイル線32aは、ハウジング10における軸方向他方側の端部に配置される。コイル線32aについては、別途後述する。
【0017】
蓋部11は、板面が鉛直方向Zと直交する板状である。蓋部11は、角筒部10eの上端部に固定される。蓋部11は、角筒部10eの上側の開口を閉塞する。
【0018】
図1に示すように、カバー部12は、板面が軸方向Yと直交する板状である。カバー部12は、ハウジング10の軸方向一方側の端部に配置される。カバー部12は、周壁部10bおよび角筒部10eの軸方向一方側を塞ぐ。カバー部12は、周壁部10bの軸方向一方側の開口を覆う。カバー部12は、ステータ収容部14の軸方向一方側の開口を覆う。カバー部12は、インバータ収容部15の軸方向一方側の開口を覆う。本実施形態では、ハウジング10が、カバー部12を単一の部材の部分として有する。
【0019】
カバー部12は、カバー部12を軸方向Yに貫通する出力軸孔12aを有する。出力軸孔12aは、例えば、中心軸Jを通る円形状である。カバー部12は、カバー部12の軸方向他方側の面における出力軸孔12aの周縁部から軸方向他方側に突出する筒状のベアリング保持部12bを有する。ベアリング保持部12bは、後述するロータコア22よりも軸方向一方側においてモータシャフト21を支持するベアリング41を保持する。
【0020】
カバー部12は、カバー部12の軸方向一方側から軸方向他方側に窪むセンサ取付け部10gを有する。センサ取付け部10gは、カバー部12において軸方向一方側を向く面から軸方向他方側へ向けて窪む有底の穴状である。センサ取付け部10gは、軸方向Yに沿って見て、例えば、中心軸Jを中心とする円形状である。センサ取付け部10gは、内周面と、底面と、を有する。底面の中央部には、出力軸孔12aが配置される。底面は、軸方向一方側を向く円環状の面である。本実施形態では、底面が、中心軸Jに垂直な平面である。
【0021】
カバー部12は、カバー部12を軸方向Yに貫通する貫通孔(センサ配線通し孔)12cを備える。貫通孔12cは、インバータ収容部15に開口する。
【0022】
図2に示すように、後カバー部材16は、板面が軸方向Yと直交する板状である。後カバー部材16は、ハウジング10の軸方向他方側の端部に設けられる。後カバー部材16は、周壁部10bおよび角筒部10eの軸方向他方側の面に固定される。後カバー部材16は、周壁部10bの軸方向他方側の開口を閉塞する。後カバー部材16は、角筒部10eの軸方向他方側の貫通孔10fを閉塞する。後カバー部材16は、ハウジング10の軸方向他方側の端部に位置するハウジング開口部10nを軸方向他方側から覆う。後カバー部材16は、後述するロータコア22よりも軸方向他方側においてモータシャフト21を支持する図示しないベアリングを保持する。
【0023】
図1および
図2に示すように、ロータ20は、モータシャフト21と、ロータコア22と、マグネット23(
図2参照)と、第1エンドプレート24と、第2エンドプレート25と、を有する。モータシャフト21は、軸方向両側の部分をそれぞれベアリングによって回転自在に支持される。モータシャフト21の軸方向一方側の部分は、ベアリング41により回転自在に支持される。
【0024】
図1に示すように、モータシャフト21の軸方向一方側の端部は、周壁部10bの軸方向一方側の端部よりも軸方向一方側へ向けて突出する。モータシャフト21の軸方向一方側の端部は、出力軸孔12aを通り、カバー部12よりも軸方向一方側に突出する。モータシャフト21の軸方向一方側の端部には、減速装置80の後述する減速機構80aが連結される。
【0025】
ロータコア22は、モータシャフト21の外周面に固定される。マグネット23は、ロータコア22に設けられたロータコア22を軸方向Yに貫通する孔部に挿入される。第1エンドプレート24および第2エンドプレート25は、径方向に拡がる円環板状である。第1エンドプレート24と第2エンドプレート25とは、ロータコア22と接触した状態で、ロータコア22を軸方向Yに挟む。第1エンドプレート24と第2エンドプレート25とは、ロータコア22の孔部に挿入されたマグネット23を軸方向両側から押さえる。
【0026】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。ステータ30は、ロータ20の径方向外側に配置される。ステータ30は、ステータ収容部14に収容される。ステータ30は、ステータコア31と、ステータコア31に装着される複数のコイル32と、を有する。ステータコア31は、中心軸Jを中心とした円環状である。ステータコア31の外周面は、周壁部10bの内周面に固定される。ステータコア31は、ロータコア22の径方向外側に隙間を介して対向する。
【0027】
インバータユニット50は、ステータ30に供給される電力を制御する。インバータユニット50は、インバータ部51と、図示しないコンデンサ部と、を有する。すなわち、モータ1は、インバータ部51と、コンデンサ部と、を備える。インバータ部51は、インバータ収容部15に収容される。インバータ部51は、仕切り壁部10dの上面に固定される。インバータ部51は、回路基板51aを有する。回路基板51aは、板面が鉛直方向Zと直交する板状である。
図2に示すように、回路基板51aには、コネクタ端子53を介してコイル線32aが接続される。コネクタ端子53は、インバータ部51の軸方向他方側の端部に設けられる。これにより、インバータ部51は、ステータ30と電気的に接続される。
【0028】
コイル線32aは、ステータ30のコイル32から上側へ向けて延びる。コイル線32aは、コイル32における軸方向他方側の端部から上側へ延びる。コイル線32aは、仕切り壁部10dの軸方向他方側の端部を通り、インバータ部51に接続される。すなわち、コイル線32aは、ステータ収容部14内から仕切り壁部10dの軸方向他方側を通って、インバータ収容部15内まで延びる。
【0029】
コイル線32aは、U相、V相、W相ごとに複数のコイル線が束ねられた3本の三相用配線束を備える。つまりコイル線32aは、三相用コイル線32aである。またコイル線32aは、複数の中性点用コイル線が束ねられた中性点用配線束を備える。中性点用配線束は、3本の三相用配線束をスター結線で繋ぐための配線束である。
【0030】
コンデンサ部は、インバータ収容部15に収容される。コンデンサ部は、インバータ部51と電気的に接続される。コンデンサ部は、仕切り壁部10dの上面に固定される。
【0031】
コネクタ部は、角筒部10eの壁部に設けられる。コネクタ部には、図示しない外部電源が接続される。コネクタ部に接続された外部電源からインバータユニット50に電源が供給される。
【0032】
図1において、回転検出部70は、ロータ20の回転を検出する。回転検出部70は、ステータ30よりも軸方向一方側においてモータシャフト21に取り付けられる。回転検出部70は、例えば、ハウジング10に対するモータシャフト21の周方向の回転角度位置を検出する。この場合、回転検出部70は、回転角度位置検出センサまたは回転角センサ等と言い換えてもよい。本実施形態において、回転検出部70はレゾルバである。回転検出部70は、例えば、VR(Variable Reluctance)型レゾルバである。
【0033】
回転検出部70は、カバー部12の軸方向一方側に配置される。本実施形態では、回転検出部70が、センサ取付け部10gに配置される。回転検出部70の中心軸は、モータシャフト21の中心軸Jに対して同軸に配置される。回転検出部70は、被検出部71と、センサ部72と、を有する。
【0034】
被検出部71は、周方向に延びる環状である。被検出部71は、ロータ20に取り付けられる。被検出部71は、モータシャフト21に取り付けられる。被検出部71は、モータシャフト21に嵌め合わされて固定される。被検出部71は、モータシャフト21の軸方向一方側の部分に配置される。被検出部71は、磁性体製である。本実施形態では、回転検出部70がレゾルバであり、被検出部71は、レゾルバロータである。被検出部71は、ロータ20とともに回転する回転部である。被検出部71は、センサ部72に対して周方向に回転自在である。
【0035】
センサ部72は、周方向に延びる環状である。センサ部72は、被検出部71の径方向外側に配置される。センサ部72は、被検出部71を径方向外側から囲む。本実施形態では、回転検出部70がレゾルバであり、センサ部72は、レゾルバステータである。センサ部72は、周方向に沿って複数のコイルを有する。センサ部72は、カバー部12に固定されて回転しない非回転部である。
【0036】
回転検出部70は、カバー部12に図示しない固定部材により固定される。すなわち、センサ部72は、カバー部12のセンサ取付け部10gに固定される。固定部材は、例えばネジ部材およびピン部材等である。本実施形態では、固定部材が、カバー部12に対して回転検出部70を取り外し可能に固定する。センサ部72の軸方向他方側を向く面は、センサ取付け部10gの軸方向一方側を向く底面に接触し、または接近して配置される。センサ部72は、この底面によって軸方向他方側から直接的または間接的に支持される。
【0037】
モータシャフト21とともに被検出部71が回転することによって、センサ部72のコイルには、被検出部71の周方向位置に応じた誘起電圧が生じる。センサ部72は、誘起電圧を検出することで、被検出部71の回転を検出する。これにより、回転検出部70は、モータシャフト21の回転を検出して、ロータ20の回転を検出する。回転検出部70が検出したロータ20の回転情報は、後述するセンサ配線73を介してインバータ部51に送られる。
【0038】
モータ1は、回転検出部70とインバータ部51とを電気的に接続するセンサ配線73を備える。センサ配線73は、回転検出部70から延びる。センサ配線73は、回転検出部70のセンサ部72から上側へ向けて延びる。センサ配線73は、回転検出部70に接続する第1端部73aと、インバータ部51に接続する第2端部73bと、を備える。第1端部73aは、センサ部72に接続される。第2端部73bは、回路基板51aに接続される。
【0039】
センサ配線73は、貫通孔12cを通る。すなわち、センサ配線73は、カバー部12の軸方向一方側において回転検出部70から上側へ延び、貫通孔12cを軸方向一方側から軸方向他方側へ通り、インバータ収容部15内へ進入する。図示しないが、センサ配線73は、互いに機能が異なる複数種類の配線を含む。センサ配線73に含まれる複数の配線は、例えば、互いに幅方向Xに隣り合って配列される。
【0040】
減速装置80は、ロータ20の回転によりモータ1から出力されるトルクを増大させて、図示しない差動装置等へ伝達する。すなわち、減速装置80は、ロータ20の回転速度を低下させて差動装置等へトルクを伝達することにより、トルクを増大させる機能を有する。
【0041】
減速装置80は、減速機構80aと、減速機構80aが収容される筐体80bと、を有する。減速機構80aは、モータシャフト21の軸方向一方側の端部(出力端)に接続される。減速機構80aは、ドライブギヤおよび中間ギヤ等の複数種類のギヤを有する。減速機構80aの各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、所望の減速比に合わせて適宜選択される。本実施形態の減速装置80は、例えば、減速機構80aの各ギヤの軸芯が互いに平行に配置された平行軸歯車タイプの減速機である。
【0042】
筐体80bは、外ケース部80cと、内ケース部80dと、を有する。外ケース部80cは、頂壁(前壁)80eと周壁80fとを有する有頂筒状である。頂壁80eは、板面が軸方向Yと直交する板状である。頂壁80eは、減速機構80aの軸方向一方側に配置される。頂壁80eは、減速機構80aを軸方向一方側から覆う。すなわち、外ケース部80cは、減速機構80aを軸方向一方側から覆う。
【0043】
周壁80fの軸方向一方側の端部は、頂壁80eにより閉塞される。周壁80fの軸方向他方側の端部は、カバー部12に接触する。周壁80fの軸方向他方側の端部は、カバー部12の軸方向一方側を向く面に接触する。周壁80fの軸方向他方側の開口は、カバー部12により塞がれる。カバー部12の出力軸孔12aおよび貫通孔12cは、周壁80fの軸方向他方側の端部よりも径方向内側に配置される。周壁80fの軸方向他方側の端部には、カバー部12に接触するシール体81が設けられる。シール体81は、周方向に延びる環状である。シール体81は、例えばOリング等である。本実施形態では、周壁80fの外径が、軸方向一方側から軸方向他方側へ向かうにしたがい大きくなる。
【0044】
内ケース部80dは、板面が軸方向Yと直交する板状である。内ケース部80dは、周壁80fの内周面から径方向内側へ向けて突出し、周方向に延びる環状である。モータシャフト21が、内ケース部80dの中央部を軸方向Yに貫通して延びる。内ケース部80dの中央部とは、内ケース部80dにおける径方向の位置が中心軸Jと同じ部分を含む。
【0045】
内ケース部80dは、減速機構80aの軸方向他方側に配置される。内ケース部80dは、減速機構80aを軸方向他方側から覆う。内ケース部80dは、回転検出部70の軸方向一方側に配置される。内ケース部80dの径方向内側の端部には、モータシャフト21に接触するシール部材82が備えられる。シール部材82は、周方向に延びる環状である。シール部材82の外周面は、内ケース部80dの内周面に接触して、固定される。シール部材82の軸方向一方側を向く面は、内ケース部80dの軸方向他方側を向く面に接触して、固定される。シール部材82は、例えば、オイルシールである。
【0046】
筐体80bのうち、頂壁80e、周壁80fおよび内ケース部80dによって囲まれた空間に、減速機構80aが収容される。この空間には、オイル等が入れられる。また、周壁80f、内ケース部80dおよびカバー部12によって囲まれた空間に、回転検出部70およびセンサ配線73の一部が収容される。
【0047】
回転検出部70は、軸方向一方側から筐体80bにより覆われる。本実施形態では、回転検出部70が、軸方向一方側から内ケース部80dにより覆われる。したがって、回転検出部70の外側(軸方向一方側)に、回転検出部70を覆うためのカバー体を別部材として設ける必要がない。すなわち、減速装置80において減速機構80aを収容する筐体80bの一部(内ケース部80d)を、回転検出部70のカバー体としても使用(共用)でき、部品点数を削減できる。これにより、モータ1の構造を簡素化でき、組立工程を削減できる。
【0048】
また回転検出部70は、径方向外側からも筐体80bにより覆われる。本実施形態では、回転検出部70が、径方向外側から周壁80fにより覆われる。これにより、例えばモータ1の外部に浮遊する塵等が回転検出部70に付着することを抑えられ、回転検出部70の機能が良好に維持される。また本実施形態では、周壁80fとカバー部12との接触部分にシール体81が設けられる。このため、回転検出部70への塵等の付着をより抑制できる。
【0049】
また本実施形態では、カバー部12が、軸方向一方側から筐体80bにより覆われる。カバー部12は、軸方向一方側から内ケース部80dにより覆われる。したがって、カバー部12の例えば出力軸孔12aおよび貫通孔12c等を通して、オイルおよび塵等がハウジング10内に進入することを抑えられる。
【0050】
また本実施形態のモータ1は、内ケース部80dの径方向内側の端部に、モータシャフト21に接触するシール部材82を備える。このため、筐体80bの内部のオイル等が、モータシャフト21の外周面と内ケース部80dの内周面との間を通して、軸方向他方側へ流れ出ることを抑制できる。したがって、オイル等がハウジング10の内部に進入することをより抑えられる。
【0051】
また回転検出部70は、軸方向一方側から内ケース部80dにより支持されてもよい。この場合、例えば、内ケース部80dとカバー部12との間において、軸方向Yの両側から回転検出部70を保持できる。
【0052】
また本実施形態では、センサ配線73が、インバータ収容部15に開口する貫通孔12cを通る。このため、センサ配線73を引き回しやすい。すなわちこの場合、センサ配線73をステータ収容部14内で引き回す必要がないので、例えば、センサ配線73がステータ30のコイル32等に接触したり、センサ配線73を引き回す経路を複雑にしたりすることがない。本実施形態では、カバー部12の軸方向一方側かつ内ケース部80dの軸方向他方側に、センサ配線73の引き回しを阻害する部材は配置されない。したがって、センサ配線73を単純な経路で容易に引き回すことができる。これにより、センサ配線73の最適な引き回しが可能となる。また、センサ配線73の長さを短くすることができる。
【0053】
また、センサ配線73のうち回転検出部70から貫通孔12cまでの間の部分が、軸方向一方側から筐体80bによって覆われる。本実施形態では、センサ配線73のうち回転検出部70と貫通孔12cとの間に位置する部分が、内ケース部80dにより軸方向一方側から覆われる。また、センサ配線73のうち回転検出部70から貫通孔12cまでの間の部分が、径方向外側から筐体80bによって覆われる。本実施形態では、センサ配線73のうち回転検出部70と貫通孔12cとの間に位置する部分が、周壁80fにより径方向外側から覆われる。このため、センサ配線73を保護できる。よって、例えばセンサ配線73を保護するための配線カバーを別部材として設ける必要がない。これにより、部品点数を削減でき、モータ1の構造を簡素化できる。
【0054】
上述のようにセンサ配線73が引き回しやすく、モータ1の構造が簡素化されることによって、モータ1の組立容易性が向上する。本実施形態のモータ1は、いわゆる機電一体型のモータとして好適である。
【0055】
また、カバー部12の貫通孔12cは、例えば溝とは異なり周囲が閉じている。したがって、貫通孔12cにセンサ配線73が通されることにより、センサ配線73の揺れ(ぶらつき)等による移動の範囲が抑制される。これにより、センサ配線73が傷付くことを抑えられる。
【0056】
図2に示すように、本実施形態では、ハウジング10のハウジング開口部10nの内側に、ステータ30から延びる三相用コイル線32aが配置される。三相用コイル線32aは、仕切り壁部10dの軸方向他方側の端部を通りインバータ部51に接続される。すなわち、センサ配線73が、ハウジング10において軸方向一方側の端部に位置するカバー部12の貫通孔12cを通るのに対し、三相用コイル線32aは、ハウジング10において軸方向他方側の端部に位置するハウジング開口部10nの内部を通る。
【0057】
この場合、ステータ30から引き出した三相用コイル線32aとインバータ部51とを直接接続できる。すなわち、ステータ30とインバータ部51とを接続するためのバスバーが不要であり、部品点数を削減できる。
【0058】
また、バスバーを使用しないステータ30をステータ収容部14に取り付ける際には、周壁部10bの開口からカバー部12へ向けて、ステータ30を挿入する必要がある。つまりステータ30は、軸方向他方側から軸方向一方側へ向けて周壁部10b内に挿入される。また、バスバーを使用しないステータ30においては、三相用コイル線32aが剛性の高い配線であり、センサ配線73のように容易に曲げることができない。したがって、三相用コイル線32aを、例えば、周壁部10bの仕切り壁部10dの軸方向一方側の端部に設けた図示しない仕切り壁部貫通孔等に通すことは困難な作業となる。
【0059】
そこで本実施形態のように、センサ配線73とは軸方向Yの反対側に、三相用コイル線32aを配置することが好ましい。開口が広く作業性のよいハウジング開口部10nの内側に三相用コイル線32aを配置することで、上述したセンサ配線73のみならず、三相用コイル線32aについても配線を引き回しやすくでき、組立容易性が向上する。
【0060】
また本実施形態では、ハウジング10のハウジング開口部10nが後カバー部材16で覆われる。この場合、ハウジング開口部10nが1つの後カバー部材16で塞がれるため、ハウジング10の構造が簡素になり、組み立ての作業性にも優れる。
【0061】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
(変形例)
図3に示す本変形例のモータ2のように、筐体80bが、内ケース部80dを備えなくてもよい。本変形例では、カバー部12が、筐体80bのうち減速機構80aを軸方向他方側から覆う部分である。つまりカバー部12は、筐体80bの一部を構成する。また、回転検出部70は、軸方向一方側から外ケース部80cにより覆われる。回転検出部70は、軸方向一方側から頂壁80eにより覆われる。この場合、カバー部12が減速機構80aのケースを兼ねることができるため、モータ2の構造をより簡素化できる。
【0063】
本変形例のモータ2は、カバー部12の出力軸孔12aに、モータシャフト21に接触する第1ハウジングシール部83を備える。第1ハウジングシール部83の外周面は、出力軸孔12aの内周面に接触して、固定される。第1ハウジングシール部83の内周面は、モータシャフト21の外周面に接触する。この場合、筐体80b内のオイル等が、出力軸孔12aを通してハウジング10内に進入することが抑えられる。第1ハウジングシール部83は、例えば、オイルシールである。
【0064】
本変形例のモータ2は、カバー部12の貫通孔12cを塞ぐ第2ハウジングシール部84を備える。センサ配線73は、第2ハウジングシール部84内を軸方向Yに貫通して延びる。第2ハウジングシール部84とセンサ配線73とは、センサ配線73を中心とした周方向全体に隙間なく接触する。この場合、筐体80b内のオイル等が、貫通孔12cを通してハウジング10内に進入することが抑えられる。また
図3において、シール体81は、筐体80bの内部のオイル等が、周壁80fとカバー部12との間を通して外部に漏れ出ることを抑える。
【0065】
本変形例において、カバー部12は、ハウジング10とは別部材である。つまりハウジング10は、単一の部材の部分としてカバー部12を備えない。カバー部12は、周壁部10bおよび角筒部10eの軸方向一方側の面に固定される。カバー部12は、周壁部10bの軸方向一方側の開口を閉塞する。カバー部12は、角筒部10eの軸方向一方側の開口を閉塞する。この場合、例えばモータ2の組立時において、周壁部10bの軸方向一方側の開口から軸方向他方側へ向けてステータ30を挿入してもよい。
【0066】
また、前述の実施形態では、回転検出部70がレゾルバであるとしたが、これに限定されない。回転検出部70は、例えば、MR(Magnetic Resistance)素子を有するMRセンサ等の磁気センサであってもよい。この場合、被検出部71は、MRセンサ用マグネットである。また、センサ部72は、MRセンサ実装基板である。
【0067】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0068】
本出願は、2017年7月28日に出願された日本出願である特願2017-147113号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【符号の説明】
【0069】
1,2…モータ、10…ハウジング、10b…周壁部、10d…仕切り壁部、12c…貫通孔、10n…ハウジング開口部、12…カバー部、14…ステータ収容部、15…インバータ収容部、20…ロータ、21…モータシャフト、30…ステータ、32…コイル、32a…コイル線(三相用コイル線)、51…インバータ部、70…回転検出部、73…センサ配線、80…減速装置、80a…減速機構、80b…筐体、80c…外ケース部、80d…内ケース部、82…シール部材、J…中心軸、Y…軸方向