(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】モータ付きギアシステム及び車載用ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2019558216
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2018044506
(87)【国際公開番号】W WO2019111879
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-21
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185909(JP,A)
【文献】特開2001-354119(JP,A)
【文献】特開2018-034584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに接続されるギアシステムであって、
前記モータは、
ステータと、
上下に伸びる中心軸に沿って延びるモータシャフトを有し、前記ステータに対して、中心軸まわりに相対的に回転可能なロータと、
前記ステータおよび前記ロータを内部に収容するモータハウジングと、
前記モータハウジングの底部の軸方向下側に位置するモータフランジと、
を有し、
前記モータハウジングは、軸方向に貫通する第1貫通孔を有し、
前記モータフランジは、軸方向に貫通する第2貫通孔および第3貫通孔を有し、
前記モータシャフトは、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を通って、前記モータフランジの軸方向下側に突出し、
前記ギアシステムは、筐体と固定シャフトと、を有し、
前記筐体は、前記筐体の軸方向上側の部位を覆い、軸方向に貫通する第4貫通孔を有するカバー部材を有し、
前記固定シャフトは、一部が固定されるとともに、前記第4貫通孔を通って、軸方向上側の端部がカバー部材の軸方向上側に位置し、
前記モータシャフトの軸方向下側の端部には、第1ギアが取り付けられ、
前記固定シャフトの軸方向上側の端部には、前記第1ギアと噛み合い、前記固定シャフトに対して回転可能な第2ギアが取り付けられ、
前記固定シャフトの軸方向上側の端部には、さらに、前記モータフランジの前記第3貫通孔内に少なくとも一部が固定されるピボットシャフトが直接または間接的に取り付けられる。
【請求項2】
請求項1に記載のギアシステムであって、
前記固定シャフトの軸方向上側の端部には、軸方向下側に向かって凹む収容凹部が形成され、
前記ピボットシャフトの少なくとも一部は、前記収容凹部内に、直接または間接的に固定される。
【請求項3】
請求項2に記載のギアシステムであって、
前記収容凹部内には、筒状のトレランスリングが収容され、
前記ピボットシャフトの少なくとも一部は、前記トレランスリングを介して、前記収容凹部内に固定される。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のギアシステムであって、
前記収容凹部の開口部は、軸方向上側に向かうにつれて前記固定シャフトの中心との間の距離が徐々に大きくなる傾斜面または湾曲面を有する。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のギアシステムであって、
前記ピボットシャフトの外周面には、前記ピボットシャフトの中心に向かって凹む凹部が形成され、
前記第3貫通孔の内側面には前記ピボットシャフトの中心に向かって突出する凸部が形成され、
前記凸部は、前記凹部内に固定される。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のギアシステムであって、
軸方向において、前記モータフランジと前記カバー部材との間には、前記モータシャフトが通される環状の第1シール部材が配置される。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のギアシステムであって、
軸方向において、前記モータフランジと前記カバー部材との間には、前記固定シャフトが通される環状
の第2シール部材が配置される。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のギアシステムであって、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔内に、前記モータシャフトを回転可能に支持する下側軸受が保持される。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のギアシステムであって、
前記ピボットシャフトの上端部は、前記モータフランジの軸方向上側の面と、面一である。
【請求項10】
車載用ブレーキシステムであって、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のギアシステムを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを備えるギアシステムに関する。本出願は、2017年12月8日に出願された米国仮特許出願第62/596,197に基づく優先権を主張し、その内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
モータが有するシャフトの先端には、ヘリカルギア等のモータギアが取り付けられる。モータギアは、ギアシステムが有するシャフトの先端に取り付けられたシステムギアと、かみ合う。
【0003】
例えば、日本国公開公報特開2016-032418号公報には、モータ70の出力軸70Bにピニオン70Cが取り付けられ、締結部材71に駆動第1軸71Bが設けられ、駆動第1軸71Bにピニオン70Cからの駆動力の伝達を受ける第1ギア74が回転自在に取り付けられる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開公報:特開2016-032418号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、ギアシステムのシステム側のシャフトにおいて、支持されている点からシステムギアが取り付けられた部位までの寸法が比較的長い場合には、モータギアから受ける外力によってシステムギアが径方向に押されると、システム側のシャフトが撓んでしまい、モータ側のシャフトの回転に伴って、システム側のシャフトが径方向に振動する虞がある。その結果、振動や騒音等が発生し、システム側のシャフトなどが破損する虞がある。
【0006】
そのため、モータ側のシャフトから加わる外力によってシステム側のシャフトが振動することを抑制する構造が求められている。
【0007】
本発明の目的は、モータ側のシャフトから加わる外力によってシステム側のシャフトが振動することを抑制する構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
モータに接続されるギアシステムであって、前記モータは、ステータと、上下に伸びる中心軸に沿って延びるモータシャフトを有し、前記ステータに対して、中心軸まわりに相対的に回転可能なロータと、前記ステータおよび前記ロータを内部に収容するモータハウジングと、前記モータハウジングの底部の軸方向下側に位置するモータフランジと、を有する。前記モータハウジングは、軸方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記モータフランジは、軸方向に貫通する第2貫通孔および第3貫通孔を有する。前記モータシャフトは、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を介して、前記モータフランジの軸方向下側に突出する。前記ギアシステムは、筐体と固定シャフトとを有する。前記筐体は、前記筐体の軸方向上側の部位を覆い、軸方向に貫通する第4貫通孔を有するカバー部材する。前記固定シャフトは、一部が固定されるとともに、前記第4貫通孔を通って、軸方向上側の端部が前記カバー部材の軸方向上側に位置する。前記モータシャフトの軸方向下側の端部には、第1ギアが取り付けられる。前記固定シャフトの軸方向上側の端部には、前記第1ギアと噛み合い前記固定シャフトに対して回転可能な第2ギアが取り付けられる。前記固定シャフトの軸方向上側の端部には、さらに、前記モータフランジの第3貫通孔内に少なくとも一部が固定されるピボットシャフトが直接または間接的に取り付けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の例示的な一実施形態によれば、ギアシステムの固定シャフトが比較的長い場合において、モータシャフトに取り付けられたギアとかみ合って、固定シャフトにラジアル方向の力が加わっても、固定シャフトが撓み、振動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるモータおよびギアシステム断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるピボットシャフトの断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態におけるピボットシャフトの固定構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1、
図2および
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータおよびギアシステムについて説明する。
【0012】
なお、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0013】
以下の説明においては、中心軸Jの延びる方向を上下方向とする。図中の上側を「軸方向上側」または「上側」と呼び、図中の下側を「軸方向下側」または「下側」と呼ぶ。なお、上下方向、上側および下側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0014】
なお、本明細書において、“軸方向に延びる”とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。本明細書において、“径方向に延びる”とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0015】
<モータ>
モータは、ロータ(図示省略)と、ステータ(図示省略)と、モータハウジング20と、モータフランジ23と、を有する。モータハウジング20は、上下に延びる中心軸Jの方向に延びる筒状である。モータハウジング20は、筒部21と、筒部21の軸方向下側を覆う底部22と、を有する。本実施形態において、筒部21と底部22とは、単一の部材である。モータハウジング20の底部22は、モータハウジング20の底部22を軸方向に貫通する第1貫通孔41を有する。モータハウジング20の材料は、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)やステンレスなどである。モータハウジング20の内部には、ロータおよびステータが配置される。言い換えると、モータハウジング20はロータおよびステータを内部に収容する。
【0016】
本実施形態において、モータフランジ23は、板状の部材である。モータフランジ23は、モータハウジング20の底部22の軸方向下側に位置する。より詳細には、モータフランジ23は、モータハウジング20の底部22と軸方向に接触する。モータフランジ23は、底部22と、例えば、カシメ、ネジや溶接などにより、固定される。モータフランジ23は、モータフランジ23を軸方向に貫通する第2貫通孔42と、モータフランジ23を軸方向に貫通する第3貫通孔43と、を有する。第2貫通孔42には、後述のモータシャフト24が通される。第3貫通孔43には、後述のピボットシャフトの少なくとも一部が収容される。
【0017】
軸方向から見たときに、周方向および径方向において、第1貫通孔41の位置は、第2貫通孔42の位置と同じである。言い換えると、第1貫通孔41は、第2貫通孔42と、軸方向に重なる。
第1貫通孔41および第2貫通孔42には、下側軸受Bが保持される。本実施形態において、下側軸受Bは、ボールベアリングである。下側軸受Bの外輪が、第1貫通孔41の内側面および第2貫通孔42の内側面に、圧入などにより、固定される。なお、下側軸受Bの種類は、ボールベアリングに限られず、他の種類の軸受であってもよい。
【0018】
<ロータ>
ロータは、上下に延びる中心軸Jを中心として回転可能である。ロータはステータに対して、中心軸Jまわりに相対的に回転可能である。ロータは、ロータコア(図示省略)と、マグネット(図示省略)と、モータシャフト24と、を有する。ロータコアは、軸方向に延びる筒状の部材である。本実施形態では、ロータコアは、複数の電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板である。ロータコアは、軸方向に貫通する貫通孔を有する。
【0019】
本実施形態において、モータシャフト24は、軸方向に延びる円柱状である。言い換えると、モータシャフト24は、中心軸Jに沿って延びる。モータシャフト24は、ロータコアの貫通孔の内側面に、圧入などにより、直接または間接的に固定される。モータシャフト24は、第1貫通孔41および第2貫通孔42を通される。モータシャフト24の軸方向下側の端部は、モータフランジ23の軸方向下側に位置する。言い換えると、モータシャフト24は、第1貫通孔41および第2貫通孔42を通って、モータフランジ23の軸方向下側に突出する。モータシャフト24は、下側軸受Bに回転可能に支持される。なお、図示は省略するが、モータシャフト24の軸方向上側の部位は、上側軸受により回転可能に保持される。上側軸受は、下側軸受Bと同じ種類の軸受であってもよく、異なる種類の軸受であってもよい。上側軸受のサイズは、下側軸受Bのサイズと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
モータシャフト24の軸方向下側の端部には、第1ギア51が取り付けられる。本実施形態において、第1ギア51は、ヘリカルギアである。なお、第1ギア51は、ヘリカルギア以外の種類のギアであってもよい。
【0021】
なお、モータシャフト24は中空の部材であってもよい。また、第1ギア51は、モータシャフト24の軸方向下側の端部から軸方向上側へ離れた位置に取り付けられてもよい。
【0022】
マグネットは、ロータコアの外周面に、周方向に等間隔に配置される。マグネットは、ロータコアに対して、カシメや樹脂部材などの別部材などにより、直接または間接的に固定される。
【0023】
なお、ロータコアは、複数のマグネットに代えて、1つのリング状のマグネットを有してもよい。また、ロータコアが複数のマグネット保持孔を有し、当該マグネット保持孔内に複数のマグネットが配置されてもよい。
【0024】
<ステータ>
ステータは、ステータコア(図示省略)と、複数のコイル(図示省略)と、インシュレータ(図示省略)と、を有する。
【0025】
ステータコアは、軸方向に延びる筒状の部材である。本実施形態では、ステータコアは、複数の電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板である。ステータコアは、環状のコアバック(図示省略)と、複数のティース(図示省略)と、を有する。複数のティースは、コアバックの内側面から径方向内側へ向かって延びる。各ティースは、コアバックの内側面において、周方向に等間隔に配置される。
【0026】
インシュレータは、絶縁性の材料からなる部材である。インシュレータの材料は、例えば、絶縁性の樹脂である。インシュレータは、各ティースの外側面を覆う。
【0027】
各コイルは、各ティースに配置される。各コイルは、各ティースにインシュレータを介して導線を巻き回すことにより、構成される。
【0028】
外部電源(図示省略)から回路基板(図示省略)等を介してステータのコイルに電力が供給されると、ステータとロータのマグネットとの間の磁気的作用により、ロータを周方向に回転させるトルクが発生する。これにより、ロータはステータに対して周方向に相対的に回転することができる。
【0029】
<ギアシステム>
ギアシステム1は、筐体Cと、固定シャフトTGSと、を有する。ギアシステム1は、例えば、車載用のブレーキシステムに用いられる。筐体Cは、筒状の筐体筒部11と、モータフランジ23と軸方向に対向するカバー部材12を有する。本実施形態において、カバー部材12は、板状の部材である。カバー部材12は、モータフランジ23と軸方向に対向する。言い換えると、カバー部材12は、筐体Cの軸方向上側の部位を覆う。カバー部材12は、モータフランジ23と、後述する第1シール部材61および第2シール部材62を介して、例えば、ネジやカシメ等により固定される。カバー部材12は、カバー部材12を軸方向に貫通する第4貫通孔44およびカバー部材12を軸方向に貫通する第5貫通孔45を有する。なお、ギアシステム1は後述するモータ2に接続される。
【0030】
<固定シャフト>
本実施形態において、固定シャフトTGSは、軸方向に伸びる円柱状の部材である。固定シャフトTGSの一部は、ギアシステム1内に固定される。固定シャフトTGSは、第4貫通孔44を通される。固定シャフトTGSの軸方向上側の端部は、カバー部材12の軸方向上側に位置する。固定シャフトTGSの軸方向上側の端部は、モータフランジ23の軸方向下側の面と、軸方向に接触または対向する。
【0031】
固定シャフトTGSは、軸方向上側の端部に、軸方向下側に向かって凹む収容凹部40を有する。収容凹部40の開口部には、傾斜面401が形成される。固定シャフトTGSの中心と傾斜面401との間の径方向における距離は、軸方向上側に向かうにつれて徐々に大きくなっていく。収容凹部40の開口部の傾斜面401における内径は、当該傾斜面401よりも軸方向下側に位置する部位の内径よりも大きい。なお、収容凹部40の開口部には、傾斜面に代えて、湾曲面が構成されてもよい。
【0032】
<第2ギア>
固定シャフトTGSの外側面には、第2ギア52が取り付けられる。言い換えると、固定シャフトTGSの軸方向上側の端部には、第2ギア52が取り付けられる。本実施形態において、第2ギア52は、固定シャフトTGSに対して固定される第2軸受部B2と、歯部(図示省略)と、を有する。歯部は、第2軸受部B2を介して、固定シャフトTGSに対して相対的に回転可能である。言い換えると、第2ギア52は、第2軸受部B2を介して、固定シャフトTGSに対して相対的に回転可能に取り付けられる。モータシャフト24の軸方向下側の端部は、第5貫通孔45を介して、筐体C内に位置する。歯部は、モータシャフト24の軸方向下側の端部に取り付けられた第1ギア51と噛み合う。これにより、モータシャフト24の回転に伴って第1ギア51が回転すると、第2ギア52も回転することができる。図示は省略しているが、第2ギア52には、さらに、別のギア等の動力伝達機構が接続される。
【0033】
<ピボットシャフト>
ピボットシャフト3は、軸方向に伸びる略円柱状の部材である。
図2に示すとおり、収容凹部40および第3貫通孔43内には、ピボットシャフト3の少なくとも一部がそれぞれ収容される。本実施形態において、ピボットシャフト3は、第1柱部31と、第2柱部32と、第3柱部33と、第4柱部34と、および第5柱部35を有する。第2柱部32は、第1柱部31の軸方向下側に位置する。第3柱部33は、第2柱部32の軸方向下側に位置する。第4柱部34は、第3柱部33の軸方向下側に位置する。第5柱部35は、第4柱部34の軸方向下側に位置する。言い換えると、第1柱部31、第2柱部32、第3柱部33、第4柱部34、および第5柱部35は、軸方向に連続して位置する。さらに言い換えると、ピボットシャフト3の外側面には、複数の段部が設けられる。本実施形態では、第1~第5柱部31~35は、単一の部材である。また、第3~第5柱部33~35は、収容凹部40内に収容される。なお、第1~第5柱部31~35が複数の部材から構成されてもよい。ピボットシャフト3は、中実であってもよく、中空であってもよい。
【0034】
第5柱部35の外径は、第4柱部34の外径よりも大きい。第4柱部34の外径は、第3柱部33の外径よりも小さい。第3柱部33の外径は、第2柱部32の外径よりも小さい。第2柱部32の外径は、第1柱部31の外径よりも小さい。言い換えると、ピボットシャフト3の外径は、軸方向上側から軸方向下側に向かうにつれて徐々に小さくなり、ピボットシャフト3の下端部において外径が大きくなる。ピボットシャフト3のうち収容凹部40に収容される部位(すなわち、第3~第5柱部)の外径は、収容凹部40の内径よりも小さい。
【0035】
収容凹部40には、筒状のトレランスリング53が収容される。より好ましくは、トレランスリング53は、収容凹部40の内側面に、圧入や接着などにより固定される。そして、収容凹部40内に、ピボットシャフトの少なくとも一部が、直接または間接的に固定される。
【0036】
第4柱部34は、トレランスリング53の貫通孔内に、少なくとも一部が収容される。言い換えると、第4柱部34は、トレランスリング53を介して、収容凹部40に収容される。第4柱部34の軸方向下側の端部の外径は、第4柱部34の外径よりも大きく、トレランスリング53の外径よりも小さい。トレランスリング53の軸方向下側の端部は、第5柱部35の軸方向上側の面と軸方向に対向または接触する。これにより、トレランスリング53が軸方向下側へと移動することが抑制される。
【0037】
第4柱部34の軸方向上側には、第3柱部33が位置する。第3凹部の外径は、収容凹部40の傾斜面401における内径よりも、小さい。すなわち、第3柱部33の外側面は、収容凹部40の傾斜面401と径方向に対向する。そのため、ピボットシャフト3を収容凹部40に収容する際に、収容凹部40の傾斜面401に第4柱部34および第3柱部33が接触することを抑制しつつ、ピボットシャフト3を収容凹部40に滑らかに収容することができ、ピボットシャフト3や収容凹部40の内側面に傷がつくことを抑制することができる。
【0038】
上述のように、第3柱部33の外径は、第4柱部34の外径よりも大きい。そのため、トレランスリング53の軸方向上側の開口部は、第3柱部33の軸方向下側の面と軸方向に対向または接触する。本実施形態では、トレランスリング53の軸方向上側の開口部は、第3柱部33の軸方向下側の面と軸方向に接触する。これにより、外部からの衝撃等により、トレランスリング53が軸方向上側に移動して、収容凹部40から抜けることを防止することができる。
【0039】
第2柱部32は、第3柱部33の軸方向上側に位置する。第2柱部32は、第3貫通孔43内に少なくとも一部が収容される。本実施形態では、第2柱部32は、第3貫通孔43の内側面に、圧入などにより固定される。これにより、ピボットシャフト3が、モータフランジ23に対して相対的に位置決めされる。かつ、固定シャフトTGSが、ピボットシャフト3を介して、モータフランジ23に固定される。
【0040】
第2柱部32は、収容凹部40の開口部よりも、軸方向上側に位置する。上述のように、第2柱部32の外径は、第3柱部33の外径よりも大きい。そのため、第2柱部32の軸方向下側の面は、収容凹部40の開口部と、軸方向に対向または接触する。
【0041】
第1柱部31は、第2柱部32の軸方向上側に位置する。上述のように、第1柱部31の外径は、第2柱部32の外径よりも、大きい。また、第3貫通孔43の軸方向上側の開口部の内径は、第3貫通孔43の軸方向下側の部位の内径よりも、大きい。言い換えると、第3貫通孔43の内側面には、段差部430が形成される。
【0042】
第1柱部31は、第3貫通孔43の開口部内に、位置する。第1柱部31の軸方向下側の面は、段差部430の上面と軸方向に対向または接触する。
【0043】
第1柱部31の上面は、モータハウジング20の底部22と、軸方向に対向または接触する。本実施形態では、第1柱部31の上面は、モータフランジ23の軸方向上側の面と、面一である。言い換えると、ピボットシャフト3の上端部は、モータフランジ23の軸方向上側の面と、面一である。そのため、モータハウジング20の底部22を、モータフランジ23および第1柱部31の上面に対して略平行に配置することができ、モータフランジ23が中心軸Jに対して傾斜して配置されることを防止することができる。
【0044】
ピボットシャフト3の外側面には、ピボットシャフト3の中心に向かって凹む凹部36が形成される。より詳細には、第2柱部32の外側面には、ピボットシャフト3の中心に向かって凹む凹部36が形成される。本実施形態において、凹部36は、周方向に伸びる略環状の溝である。凹部36は、第2柱部32が第1柱部31と接続する部位に位置する。
【0045】
ピボットシャフト3を第3貫通孔43内に通すときに、第1柱状部31および第2柱状部32は第3貫通孔43内に圧入される。これにより、第3貫通孔43の内側面には、ピボットシャフト3の中心に向かって突出する凸部431が形成される。凸部431は、凹部36内に位置する。言い換えると、ピボットシャフト3を第3貫通孔43内に通すときに、凸部431は、凹部36内に、圧入等により固定される。これにより、ピボットシャフト3をモータフランジ23に対して強固に固定することができる。また、外部から衝撃等が加わった際に、ピボットシャフト3が軸方向および径方向に移動することを防止することができる。上述したように、ピボットシャフト3およびピボットシャフト3を支持する構造により、固定シャフトTGSをモータフランジ23に対して位置決めおよび固定することができる。その結果、モータシャフト24から径方向の外力が固定シャフトTGSに加わった場合であっても、固定シャフトTGSが撓み、振動することを抑制することができる。
【0046】
<シール部材>
軸方向において、モータフランジ23とカバー部材12との間には、第1シール部材61と、第2シール部材62と、が配置される。本実施形態では、第1シール部材61と第2シール部材62とは、モータフランジ23とカバー部材12とによって、挟まれる。
【0047】
本実施形態において、第1シール部材61は、例えば、環状のOリングである。第1シール部材61は、第2貫通孔42の開口部の軸方向下側に位置する。第1シール部材61は、第5貫通孔45の開口部の軸方向上側に位置する。第1シール部材61の貫通孔には、モータシャフト24の軸方向下側の端部が通される。
【0048】
本実施形態において、第2シール部材62は、例えば、環状のOリングである。第2シール部材62は、第1シール部材61の径方向外側に隣り合う。第2シール部材62は、第3貫通孔43の開口部および第4貫通孔44の開口部を囲う。第2シール部材62の内径は、第3貫通孔43の内径および第4貫通孔44の内径よりも大きい。第2シール部材62の貫通孔には、固定シャフトTGSの軸方向上側の端部が通される。
【0049】
上述の構成により、外部から粉塵や水等が、筐体Cおよびモータハウジング20の内部に入り込むことを防止することができる。
<その他>
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限られず、様々な変形が可能である。
【0051】
例えば、上述のモータは、いわゆるインナーロータ型のモータであるが、アウターロータ型モータであってもよい。
【0052】
ピボットシャフト3は、第3貫通孔43内に固定が可能であれば、段部を有さない円柱状であってもよく、特に形状は限定されない。また、ピボットシャフト3に、金属製の部材などを介して間接的に固定されてもよい。すなわち、ピボットシャフト3は、第3貫通孔43内に、直接または間接的に固定されてもよい。
【0053】
ピボットシャフト3の少なくとも一部は、トレランスリング53を介さずに、収容凹部40に圧入や接着などにより、直接固定されてもよい。すなわち、ピボットシャフト3の少なくとも一部は、収容凹部40内に直接または間接的に固定されてよい。言い換えると、ピボットシャフト3は、固定シャフトTGSの軸方向上側の端部に直接または間接的に取り付けられればよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の実施形態は、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機、冷蔵庫および電動パワーステアリング装置、電動ブレーキ、電動ポンプなどの、各種モータを備える多様な機器に幅広く利用され得る。
【符号の説明】
【0055】
J 中心軸、C 筐体、TGS 固定シャフト、1 ギアシステム、11 筐体筒部、12 カバー部材、2 モータ、20 モータハウジング、21 筒部、22 底部、23 モータフランジ、24 モータシャフト、3 ピボットシャフト、31 第1柱部、32 第2柱部、33 第3柱部、34 第4柱部、35 第5柱部、36 凹部、40 収容凹部、401 傾斜面、41 第1貫通孔、42 第2貫通孔、43 第3貫通孔、430 段差部、431 凸部、44 第4貫通孔、45 第5貫通孔、B 下側軸受、B2 第2軸受部、51 第1ギア、52 第2ギア、53 トレランスリング、61 第1シール部材、62 第2シール部材