(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電動ポンプ装置および電動ポンプ装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
F04C 15/00 20060101AFI20230511BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20230511BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F04C15/00 K
F04B53/16 A
F04B53/00 J
F04C15/00 L
(21)【出願番号】P 2020163804
(22)【出願日】2020-09-29
(62)【分割の表示】P 2019068739の分割
【原出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁
(72)【発明者】
【氏名】樋口 孔二
(72)【発明者】
【氏名】梶田 国博
(72)【発明者】
【氏名】池田 智一
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-165408(JP,A)
【文献】特開2016-223366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 15/00
F04B 53/16
F04B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中心軸に沿って延びるシャフトを有するモータと、
前記モータによって駆動されるポンプ部と、
前記モータおよび前記ポンプ部を収容するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、
有底筒状であり、軸方向に延びるハウジング本体部と、
前記ハウジング本体部の外周面から径方向外側に拡がるフランジ部と、
前記ハウジング本体部の底部から軸方向一方側に延びる突出部と、を有し、
前記突出部の第2中心軸は、前記第1中心軸から径方向にずれた位置に配置され、
前記フランジ部は、前記フランジ部の軸方向一方側を向く端面から軸方向他方側に窪む穴部を有する、
電動ポンプ装置。
【請求項2】
前記ハウジングを軸方向から見て、前記第1中心軸と前記第2中心軸とを通る仮想直線が延びる方向を軸間方向と定義して、
前記穴部は、前記突出部よりも、前記軸間方向のうち前記第2中心軸から前記第1中心軸へ向かう方向に配置される、
請求項1に記載の電動ポンプ装置。
【請求項3】
前記穴部は、前記フランジ部に2つ設けられる、
請求項1から2のいずれか1項に記載の電動ポンプ装置。
【請求項4】
2つの前記穴部は、第1穴部および第2穴部であり、
前記ハウジングを軸方向から見て、
前記第1穴部の第3中心軸を通り、前記突出部の外周面に接する2つの接線は、第1接線および第2接線であり、
前記突出部の外周面と前記第1接線との接点である第1接点を通り、前記第1接線から前記第2中心軸とは反対方向へ延びる前記第1接線の法線は、第1法線であり、
前記突出部の外周面と前記第2接線との接点である第2接点を通り、前記第2接線から前記第2中心軸とは反対方向へ延びる前記第2接線の法線は、第2法線であり、
前記第1中心軸と前記第2中心軸とを通る仮想直線が延びる方向を軸間方向と定義して、
前記第2穴部は、前記第1法線および前記第2法線よりも、前記軸間方向のうち前記第1中心軸から前記第2中心軸へ向かう方向に配置される、
請求項3に記載の電動ポンプ装置。
【請求項5】
前記モータと電気的に接続されるインバータと、
前記インバータを収容するインバータケースと、を備え、
前記インバータケースは、前記ハウジングの軸方向他方側に配置され、
前記穴部は、軸方向から見て、前記インバータケースと重なる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電動ポンプ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動ポンプ装置と、
前記電動ポンプ装置が取り付けられる被取付体と、を備え、
前記被取付体は、
軸方向他方側を向き、前記フランジ部の軸方向一方側を向く端面と接触する取付面と、
前記取付面から軸方向一方側に窪み、前記ハウジング本体部が挿入される凹所と、
前記凹所の底面に開口して軸方向に延び、前記突出部が挿入されるインポートと、を有し、
前記凹所の内周面は、前記ハウジング本体部の外周面と径方向に隙間をあけて対向し、
前記取付面は、前記取付面から軸方向他方側に突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記穴部に挿入される、
電動ポンプ装置の取付構造。
【請求項7】
前記取付面は、
前記取付面の軸方向他方側を向く端面から軸方向一方側に窪む第3穴部と、
前記第3穴部内に嵌合することにより前記取付面と固定され、前記取付面から軸方向他方側に突出するピン部と、を有し、
前記凸部は、前記ピン部のうち前記取付面から軸方向他方側に突出する部分であり、
前記凸部は、前記取付面に少なくとも1つ以上設けられる、
請求項6に記載の取付構造。
【請求項8】
前記インポートに前記突出部が挿入される軸方向の長さよりも、前記穴部に前記凸部が挿入される軸方向の長さが小さい、
請求項6または7に記載の電動ポンプ装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプ装置および電動ポンプ装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電動ポンプユニットは、ポンプとポンプ駆動用電動モータが蓋と一体化されたものである。電動ポンプユニットは、トランスミッションハウジングの縦壁の後面に開口した有底円形穴よりなる凹所内に配置される。蓋の円筒部は、凹所の後部に密にはめられ、外向きフランジはOリングを介して凹所の周囲のハウジング縦壁の後面に当てられ、ボルトなどにより固定される。ポンプの油吐出管は、凹所の底壁に形成された貫通孔に密にはめ止められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、蓋の円筒部を凹所に嵌合させつつ、油吐出管を貫通孔に嵌合させるため、位置合わせが難しく組み立てにくい。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、電動ポンプ装置と被取付体とが組み立てやすい電動ポンプ装置、および電動ポンプ装置の取付構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプ装置の一つの態様は、第1中心軸に沿って延びるシャフトを有するモータと、前記モータによって駆動されるポンプ部と、前記モータおよび前記ポンプ部を収容するハウジングと、を備える。前記ハウジングは、有底筒状であり、軸方向に延びるハウジング本体部と、前記ハウジング本体部の外周面から径方向外側に拡がるフランジ部と、前記ハウジング本体部の底部から軸方向一方側に延びる突出部と、を有する。前記突出部の第2中心軸は、前記第1中心軸から径方向にずれた位置に配置される。前記フランジ部は、前記フランジ部の軸方向一方側を向く端面から軸方向他方側に窪む穴部を有する。
【0007】
また、本発明の電動ポンプ装置の取付構造の一つの態様は、上述の電動ポンプ装置と、前記電動ポンプ装置が取り付けられる被取付体と、を備える。前記被取付体は、軸方向他方側を向き、前記フランジ部の軸方向一方側を向く端面と接触する取付面と、前記取付面から軸方向一方側に窪み、前記ハウジング本体部が挿入される凹所と、前記凹所の底面に開口して軸方向に延び、前記突出部が挿入されるインポートと、を有する。前記凹所の内周面は、前記ハウジング本体部の外周面と径方向に隙間をあけて対向する。前記取付面は、前記取付面から軸方向一方側に窪む挿入穴を有する。前記凸部は、前記挿入穴に挿入され、接触する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様の電動ポンプ装置および電動ポンプ装置の取付構造によれば、電動ポンプ装置と被取付体とが組み立てやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の電動ポンプ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電動ポンプ装置を示す下面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電動ポンプ装置および電動ポンプ装置の取付構造の縦断面図であり、
図2のIII-III断面を示す。
【
図5】
図5は、ハウジング本体部の一部および圧入冶具を示す側面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の電動ポンプ装置および電動ポンプ装置の取付構造の第1変形例を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の電動ポンプ装置および電動ポンプ装置の取付構造の第2変形例を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の電動ポンプ装置および電動ポンプ装置の取付構造の第3変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態の電動ポンプ装置10および電動ポンプ装置の取付構造80について、図面を参照して説明する。図面には、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
図1~
図3に示すように、電動ポンプ装置10は、モータ20と、ポンプ部30と、ハウジング40と、インバータケース60と、回路基板55と、配線部材56と、バスバー58と、インバータ50と、コンデンサ57と、ブリーザ59と、を備える。電動ポンプ装置の取付構造80は、電動ポンプ装置10と、電動ポンプ装置10が取り付けられる被取付体100と、ネジ部材105と、を備える。
【0011】
モータ20は、第1中心軸J1に沿って延びるシャフト22を有し、第1中心軸J1はZ軸方向に沿って延びる。なお第1中心軸J1は、単に中心軸J1と言い換えてもよい。以下の説明においては、第1中心軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。本実施形態において、モータ20の軸方向位置と、インバータ50の軸方向位置とは、互いに異なる。つまりモータ20とインバータ50とは、軸方向において、互いに異なる位置に配置される。軸方向のうち、インバータ50からモータ20へ向かう方向を軸方向一方側(-Z側)と呼び、モータ20からインバータ50へ向かう方向を軸方向他方側(+Z側)と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向である。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向と直交する方向である。Y軸方向は、後述する軸間方向である。
【0012】
第1中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、第1中心軸J1に近づく方向を径方向内側と呼び、第1中心軸J1から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。第1中心軸J1を中心とする周方向、すなわち第1中心軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本実施形態において、「平行な方向」は略平行な方向を含み、「直交する方向」は略直交する方向を含む。
【0013】
本実施形態の電動ポンプ装置10は、例えばオイル等の流体を吸入し、吐出する。電動ポンプ装置10は、例えば、流体を流路に循環させる機能を有する。流体がオイルの場合、電動ポンプ装置10は、電動オイルポンプ装置と言い換えてもよい。本実施形態では電動ポンプ装置10が、車両の駆動装置の筐体である被取付体100に取り付けられる。つまり電動ポンプ装置10は、車両に搭載される。
【0014】
被取付体100は、取付面110と、凹所101と、インポート102と、アウトポート103と、角部104と、を有する。取付面110は、軸方向他方側を向く。凹所101は、取付面110から軸方向一方側に窪む。凹所101は、有底の円穴状である。インポート102は、凹所101の底面101aに開口して軸方向に延びる。インポート102は、円孔状である。アウトポート103は、インポート102と異なる位置において凹所101内に開口する。本実施形態ではアウトポート103が、凹所101の内周面101bに開口する。角部104は、周方向に延びる環状であり、凹所101の内周面101bと取付面110とが接続する部分である。角部104は、円形環状である。電動ポンプ装置10は、ポンプ部30によってインポート102からオイルを吸入し、アウトポート103からオイルを吐出させる。
【0015】
モータ20は、ロータ部21と、ステータ部26と、複数のベアリング11,12と、を有する。ロータ部21は、シャフト22と、ロータコア23と、マグネット24と、マグネットホルダ25と、を有する。
【0016】
シャフト22は、第1中心軸J1を中心として軸方向に延びる。シャフト22は、第1中心軸J1を中心として回転する。シャフト22は、複数のベアリング11,12により第1中心軸J1回りに回転自在に支持される。つまり複数のベアリング11,12は、シャフト22を回転自在に支持する。複数のベアリング11,12は、例えばボールベアリング等である。複数のベアリング11,12のうち、第1のベアリング11は、シャフト22のロータコア23よりも軸方向一方側に位置する部分を支持する。複数のベアリング11,12のうち、第2のベアリング12は、シャフト22のロータコア23よりも軸方向他方側に位置する部分を支持する。
【0017】
ロータコア23は、シャフト22の外周面に固定される。ロータコア23は、第1中心軸J1を中心とする環状である。ロータコア23は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア23は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。
【0018】
マグネット24は、ロータコア23の径方向外端部に配置される。本実施形態ではマグネット24が、埋込磁石タイプである。なおマグネット24は、表面磁石タイプでもよい。マグネット24は、複数設けられる。複数のマグネット24は、ロータコア23の径方向外端部に、互いに周方向に間隔をあけて配置される。なおマグネット24は、例えば、1つの円筒状のリングマグネットでもよい。
【0019】
マグネットホルダ25は、ロータコア23に設けられ、マグネット24を保持する。本実施形態ではマグネットホルダ25が、ロータコア23に対するマグネット24の軸方向への抜け出しを抑える。マグネットホルダ25は、ロータコア23の径方向外側面、軸方向一方側および軸方向他方側を向く面に配置される。
【0020】
ステータ部26は、ロータ部21の径方向外側に配置され、ロータ部21と径方向に隙間をあけて対向する。つまりステータ部26は、ロータ部21と径方向に対向する。ステータ部26は、周方向の全周にわたって、ロータ部21を径方向外側から囲う。ステータ部26は、ステータコア27と、インシュレータ28と、複数のコイル29と、を有する。
【0021】
ステータコア27は、第1中心軸J1を中心とする環状である。ステータコア27は、ロータ部21を径方向外側から囲う。ステータコア27は、ロータ部21の径方向外側に配置されて、ロータ部21と径方向に隙間をあけて対向する。ステータコア27は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。
【0022】
ステータコア27は、コアバック27aと、複数のティース27bと、を有する。コアバック27aは、中心軸を中心とする環状である。コアバック27aは、軸方向に延びる筒状である。コアバック27aの径方向外側面は、ハウジング40の内周面と固定される。コアバック27aは、ハウジング40内に嵌合する。ティース27bは、コアバック27aの径方向内側面から径方向内側に延びる。複数のティース27bは、コアバック27aの径方向内側面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0023】
インシュレータ28は、ステータコア27に装着される。インシュレータ28は、ティース27bを覆う部分を有する。インシュレータ28の材料は、例えば樹脂などの絶縁材料である。
【0024】
複数のコイル29は、インシュレータ28を介してステータコア27に取り付けられる。つまり複数のコイル29は、ステータコア27に取り付けられる。複数のコイル29は、各ティース27bに、インシュレータ28を介して導線が巻き回されることによりそれぞれ構成される。
【0025】
特に図示しないが、複数のコイル29は、第1のコイルと、第2のコイルと、第3のコイルと、を有する。第1のコイルは、第1の導線を有する。第2のコイルは、第1の導線とは異なる第2の導線を有する。第3のコイルは、第1の導線および第2の導線とは異なる第3の導線を有する。第1のコイル、第2のコイルおよび第3のコイルは、互いに相が異なる。本実施形態ではモータ20が、3相モータである。3相とは、U相、V相およびW相である。3相モータの場合、U相、V相およびW相の各コイル29を構成する導線同士は、互いに異なる。すなわち、U相のコイル29の導線と、V相のコイル29の導線と、W相のコイル29の導線とは、互いに異なる。
【0026】
コイル29は、ステータコア27の一部に巻かれる巻き線部29aと、巻き線部29aに繋がり、複数のコイル29間を繋ぐ渡り線部29bと、巻き線部29aに繋がり、コイル29とバスバー58とを繋ぐ引き出し線部29cと、を有する。巻き線部29aは、インシュレータ28を介してティース27bに導線が巻き回されることにより構成される。渡り線部29bは、単一の導線からなる複数の巻き線部29a間を繋ぐ。渡り線部29bは、ステータコア27の軸方向他方側または軸方向一方側に配置される。渡り線部29bは、第1中心軸J1に垂直な仮想平面(図示省略)に沿って延びる部分を有する。引き出し線部29cは、巻き線部29aから軸方向他方側へ引き出され、バスバー58を介して回路基板55と接続される。
【0027】
ポンプ部30は、モータ20によって駆動される。ポンプ部30は、ステータ部26よりも軸方向一方側に配置される。ポンプ部30は、ロータ部21に接続される。本実施形態ではポンプ部30が、トロコイドポンプ構造を有する。ポンプ部30は、インナーロータ30aと、インナーロータ30aの径方向外側に位置するアウターロータ30bと、を有する。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、ポンプギアであり、互いに噛み合う。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ30aは、シャフト22の軸方向一方側の端部に固定される。モータ20は、インナーロータ30aを回転させてポンプ部30を駆動する。
【0028】
ハウジング40は、モータ20およびポンプ部30を収容する。ハウジング40は、ハウジング本体部41と、突出部44と、シール部43と、ハウジング本体部41の外周面から径方向外側に拡がるフランジ部42と、を有する。
【0029】
ハウジング本体部41には、モータ20およびポンプ部30が収容される。ハウジング本体部41は、筒状であり、軸方向に延びる。ハウジング本体部41は、有底筒状である。ハウジング本体部41は、周壁部41aと、底部41bと、を有する。周壁部41a内には、ステータコア27が嵌合する。底部41bは、周壁部41aの軸方向一方側の端部を塞ぐ。
図3に示すように、被取付体100の凹所101に、ハウジング本体部41が挿入される。凹所101の内周面101bは、ハウジング本体部41の外周面と径方向に隙間をあけて対向する。
【0030】
ハウジング本体部41は、円筒部41cと、段差面41iと、錘状部41dと、ポンプ収容壁部41lと、ポンプ収容穴41eと、ベアリング保持筒部41hと、ポンプカバー41fと、オイルシール41gと、を有する。円筒部41c、段差面41iおよび錘状部41dは、周壁部41aに設けられる。ポンプ収容壁部41l、ポンプ収容穴41e、ベアリング保持筒部41h、ポンプカバー41fおよびオイルシール41gは、底部41bに設けられる。
【0031】
円筒部41cは、ハウジング本体部41の軸方向他方側の端部に配置される。円筒部41cは、第1中心軸J1を中心とする円筒状である。円筒部41cは、軸方向に延びる。円筒部41cの外周面は、フランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aと接続する。段差面41iは、第1中心軸J1を中心とする円環状の面であり、軸方向一方側を向く。段差面41iの外周部は、円筒部41cの軸方向一方側の端部と接続する。
【0032】
錘状部41dは、フランジ部42よりも軸方向一方側に位置する。錘状部41dは、円筒部41cおよび段差面41iよりも軸方向一方側に位置する。錘状部41dの軸方向他方側の端部は、段差面41iの内周部と接続する。錘状部41dは、周壁部41aのうち軸方向他方側の端部以外の部分に配置される。
【0033】
錘状部41dは、軸方向一方側へ向かうに従い外径が小さくなる。本実施形態では
図3に示すように、第1中心軸J1に沿う縦断面視で、錘状部41dのうち軸方向一方側に位置する部分41jの第1中心軸J1に対する傾斜角が、錘状部41dのうち軸方向他方側に位置する部分41kの第1中心軸J1に対する傾斜角よりも大きい。すなわちこの縦断面視で、錘状部41dのうち軸方向一方側に位置する部分41jにおける軸方向に沿う単位長さあたりの径方向への変位量(つまり傾き)が、錘状部41dのうち軸方向他方側に位置する部分41kにおける軸方向に沿う単位長さあたりの径方向への変位量よりも大きい。
【0034】
本実施形態によれば、ハウジング本体部41が錘状部41dを有するので、被取付体100の凹所101の内周面101bと、錘状部41dとの間に隙間を設けることができる。またこの隙間は、凹所101の内周面101bと、円筒部41cとの間の隙間よりも大きい。すなわち本実施形態では、ハウジング本体部41の外周面と凹所101の内周面101bとの間に隙間が設けられ、この隙間にオイルを流すことができるので、オイルによりモータ20を冷却する効果が得られる。
【0035】
ポンプ収容壁部41lは、錘状部41dの軸方向一方側の端部に接続する。ポンプ収容壁部41lは、周壁部41aの軸方向一方側の端部を塞ぐ。ポンプ収容壁部41lは、板面が軸方向を向く円板状である。
【0036】
ポンプ収容穴41eは、ポンプ収容壁部41lの軸方向一方側を向く板面から軸方向他方側に窪む。本実施形態では、ポンプ収容穴41eが有頂の円穴状である。ポンプ収容穴41eには、ポンプ部30が配置される。ベアリング保持筒部41hは、ポンプ収容壁部41lから軸方向他方側に延びる筒状である。ベアリング保持筒部41hは、ポンプ収容壁部41lの軸方向他方側を向く板面から軸方向他方側に突出する。ベアリング保持筒部41hは、第1のベアリング11を保持する。第1のベアリング11は、ベアリング保持筒部41h内に嵌合する。
【0037】
ポンプカバー41fは、ポンプ収容壁部41lの軸方向一方側を向く板面に固定され、ポンプ部30を軸方向一方側から覆う。オイルシール41gは、第1中心軸J1を中心とする環状である。オイルシール41gは、ベアリング保持筒部41h内に配置され、第1のベアリング11よりも軸方向一方側に位置する。
【0038】
突出部44は、軸方向に延びる筒状である。突出部44は、円筒状である。突出部44は、筒部と言い換えてもよい。突出部44は、ハウジング本体部41の底部41bから軸方向一方側に延びる。本実施形態では突出部44が、ポンプカバー41fから軸方向一方側へ突出する。突出部44は、第2中心軸J2を中心として、軸方向に延びる。突出部44の第2中心軸J2は、第1中心軸J1から径方向にずれた位置に配置される。第2中心軸J2と第1中心軸J1とは、互いに平行に延びる。
【0039】
突出部44は、インポート102に挿入され、接触する。つまり突出部44は、インポート102に挿入される。突出部44は、溝部44aと、弾性リング部材45と、を有する。溝部44aは、突出部44の外周面に配置され、第2中心軸J2の軸回りに延びる。溝部44aは、第2中心軸J2を中心とする環状の溝である。弾性リング部材45は、突出部44の外周面に嵌合する環状であり、弾性変形可能である。弾性リング部材45は、例えばOリング等である。弾性リング部材45は、溝部44aに配置される。弾性リング部材45は、第2中心軸J2の軸回りに延びる。
【0040】
本実施形態では
図2に示すように、ハウジング40を軸方向から見て、第1中心軸J1と第2中心軸J2とを通る仮想直線VLが延びる方向を、軸間方向と定義する。
図2において軸間方向は、Y軸に沿って延びる方向である。軸間方向のうち、第2中心軸J2から第1中心軸J1へ向かう方向は、+Y側である。軸間方向のうち、第1中心軸J1から第2中心軸J2へ向かう方向は、-Y側である。
【0041】
シール部43は、周方向に延びる環状である。シール部43は、第1中心軸J1を中心とする円環状である。
図3および
図4に示すように、シール部43は、ハウジング本体部41の外周面とフランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aとが接続する隅部47に配置される。本実施形態においてシール部43は、径方向に沿う断面が円形状である。シール部43は、例えばOリング等であり、弾性変形可能である。シール部43は、角部104と隅部47とに挟まれて配置される。シール部43は、角部104と隅部47との間を封止する。本実施形態では角部104が、底壁104aと、内周壁104bと、を有する。
【0042】
底壁104aは、取付面110よりも軸方向一方側に位置し、軸方向他方側を向く。底壁104aは、凹所101の中心軸(第1中心軸J1に相当)に垂直な方向に拡がる平面状である。底壁104aは、凹所101の中心軸を中心とする環状である。内周壁104bは、凹所101の内周面101bよりも径方向外側に位置し、径方向内側を向く。内周壁104bは、凹所101の中心軸を中心とする環状である。内周壁104bの軸方向一方側の端部と、底壁104aの外周部とは、互いに繋がる。本実施形態によれば、被取付体100の角部104の底壁104aおよび内周壁104bと、ハウジング40の隅部47との間にシール部43が挟まれて配置される。角部104の加工が簡単であり、かつシール部43によるシール性が安定する。
【0043】
図1~
図4に示すように、フランジ部42は、フランジ部本体42bと、取付部42cと、を有する。フランジ部本体42bは、第1中心軸J1を中心とする円形環状である。取付部42cは、フランジ部本体42bから径方向外側に突出する。本実施形態では取付部42cが、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。各取付部42cは、ネジ部材105によって被取付体100の取付面110に固定される。
【0044】
フランジ部42は、軸方向一方側を向く端面42aと、位置決め部46と、穴部51と、ピン部52と、取付孔48と、を有する。端面42aは、フランジ部本体42bおよび取付部42cにわたって配置される。端面42aは、第1中心軸J1と直交する方向に拡がる平面状である。取付面110は、端面42aと接触する。取付面110は、凹所101の中心軸と直交する方向に拡がる平面状である。
【0045】
図3に示すように、端面42aは、軸方向において、ステータコア27、巻き線部29aおよび渡り線部29bのうち最も軸方向一方側に位置する部分を通り第1中心軸(中心軸)J1と直交する方向に拡がる第1仮想平面VP1と、ステータコア27、巻き線部29aおよび渡り線部29bのうち最も軸方向他方側に位置する部分を通り第1中心軸J1と直交する方向に拡がる第2仮想平面VP2と、の間に配置される。すなわち、端面42aの軸方向位置は、ステータコア27、巻き線部29aおよび渡り線部29bのうち最も軸方向一方側に位置する部分の軸方向位置と、ステータコア27、巻き線部29aおよび渡り線部29bのうち最も軸方向他方側に位置する部分の軸方向位置と、の間である。
【0046】
電動ポンプ装置10の全重量のうち、ステータ部26の重量が占める割合は大きい。このため、例えば本実施形態と異なり、電動ポンプ装置10の被取付体100への固定面、つまりフランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aに対して、ステータ部26の重心が軸方向に離れていると、電動ポンプ装置10が振動しやすくなる。
これに対し、本実施形態の電動ポンプ装置10は、フランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aが、軸方向において、ステータ部26のうちステータコア27、巻き線部29aおよび渡り線部29bが位置する範囲に配置される。ステータコア27、巻き線部29aおよび渡り線部29bのいずれかには、ステータ部26の重心が位置する。すなわち本実施形態によれば、フランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aが、軸方向において、ステータ部26の重心に接近して配置される。これにより、電動ポンプ装置10が振動することを抑制できる。具体的には、電動ポンプ装置10が動作することにより発生する振動を抑制できる。また、本実施形態のように被取付体100が車両の駆動装置の筐体である場合には、駆動装置が動作することによる振動や、車両が走行することで生じる振動が、電動ポンプ装置10を振動(共振)させることが抑制される。
【0047】
端面42aは、軸方向において、ステータコア27よりも軸方向他方側に配置される。本実施形態によれば、フランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aが、軸方向において、巻き線部29aおよび渡り線部29bのうちステータコア27よりも軸方向他方側に位置する部分の範囲に配置される。この場合、上述のように電動ポンプ装置10の振動を抑制する効果が得られつつ、電動ポンプ装置10が被取付体100の取付面110から軸方向他方側に突出する突出量を抑えることができる。これにより、電動ポンプ装置10の軸方向他方側に他の部材の設置スペースを確保できる。 また、電動ポンプ装置10および被取付体100の全体の外形寸法を小さく抑えることができる。
【0048】
なお一般に、ハウジング本体部41の外周面と凹所101の内周面101bとの間に隙間を設ける構成では、電動ポンプ装置10が振動しやすくなる場合があるが、本実施形態によれば、電動ポンプ装置10の被取付体100への固定面つまりフランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aが、軸方向においてステータ部26の重心と接近して配置されるため、電動ポンプ装置10の振動を抑制できる。
【0049】
また本実施形態では、突出部44が被取付体100のインポート102に挿入されている。弾性リング部材45が突出部44の外周面とインポート102との間に介在することで、突出部44とインポート102との間のシール性が確保され、かつ弾性リング部材45が、電動ポンプ装置10と被取付体100との間の緩衝材(振動抑制材)として機能する。このため、振動がより抑制される。
【0050】
位置決め部46は、端面42aに設けられる。つまりフランジ部42は、端面42aに位置決め部46を有する。位置決め部46は、フランジ部本体42bに配置される。位置決め部46は、端面42aから軸方向一方側に突出する凸状または端面42aから軸方向他方側に窪む穴状である。本実施形態では位置決め部46が、端面42aから軸方向一方側に突出する凸状である。このため位置決め部46は、凸部46と言い換えてもよい。つまりフランジ部42は、端面42aから軸方向一方側に突出する凸部46を有する。凸部46は、フランジ部42に少なくとも1つ以上設けられる。位置決め部46は、第3中心軸J3を中心として、軸方向に延びる。第3中心軸J3は、第1中心軸J1および第2中心軸J2と平行である。
【0051】
取付面110は、位置決め部46が嵌合する取付面位置決め部111を有する。取付面位置決め部111は、取付面110から軸方向一方側に窪む穴状または取付面110から軸方向他方側に突出する凸状である。本実施形態では取付面位置決め部111が、取付面110から軸方向一方側に窪む穴状である。このため取付面位置決め部111は、挿入穴111と言い換えてもよい。つまり取付面110は、取付面110から軸方向一方側に窪む挿入穴111を有する。位置決め部46(凸部46)は、取付面位置決め部111(挿入穴111)に挿入され、接触する。つまり位置決め部46は、取付面位置決め部111に挿入される。
【0052】
本実施形態の電動ポンプ装置10、および電動ポンプ装置の取付構造80では、シール部43が、ハウジング40の隅部47と、被取付体100の角部104との間に挟まれて配置される。例えば本実施形態と異なり、フランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aまたは被取付体100の取付面110に、軸方向に開口し周方向に延びる環状の収容溝が設けられ、この収容溝にシール部が収容される構成と比べて、本実施形態によれば、フランジ部42の外径を小さく抑えることができる。このため、電動ポンプ装置10を小型化できる。また本実施形態では、被取付体100の角部104の直径が、上述した収容溝の直径よりも小さいため、この角部104を切削加工するときの振れ幅が小さく抑えられて、平面度や直角度などの加工精度が向上し、角部104でのシール性が高められる。
【0053】
また、例えば本実施形態と異なり、ハウジング本体部41の外周面または凹所101の内周面101bに、径方向に開口し周方向に延びる環状の収容溝が設けられ、この収容溝にシール部が収容される構成と比べて、本実施形態ではハウジング40への溝加工が不要であり、かつ被取付体100の角部104への加工は簡単である。このため、製造時の加工時間を短縮でき、製造コストやタクトタイムを削減できる。
【0054】
そして本実施形態では、フランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aに位置決め部46が設けられる。電動ポンプ装置10の位置決め部46が、被取付体100の取付面110の取付面位置決め部111と嵌合することにより、すなわちフランジ部42の凸部46が、取付面110の挿入穴111に挿入されることにより、電動ポンプ装置10のハウジング本体部41と、被取付体100の凹所101とが、互いの中心軸同士が一致して同軸に配置される。つまり、被取付体100の凹所101の内周面101bと、電動ポンプ装置10のハウジング本体部41の外周面とが径方向に隙間をあけつつも、電動ポンプ装置10のハウジング本体部41と、被取付体100の凹所101とが、互いの中心軸同士が一致して同軸に配置されることによって、ハウジング40の隅部47と被取付体100の角部104との間の距離が、周方向に沿って一定となり、シール部43によるシール性が周方向の全周において安定する。したがって、電動ポンプ装置10と被取付体100との間のシール性が周方向および径方向にばらつくことを抑制できる。すなわち、電動ポンプ装置10と被取付体100との間のシール性が、シール部43の周方向の各位置でばらついたり、シール部43の径方向の内端部と外端部とでばらついたりすることを抑制できる。
【0055】
また本実施形態では、上述のようにシール性を安定させつつも、凹所101の内周面101bと、電動ポンプ装置10のハウジング本体部41の外周面とが径方向に隙間があるため、ハウジング本体部41の外周面と凹所101の内周面101bとを嵌合させる必要はなく、被取付体100に電動ポンプ装置10を取り付けるときの、両部材の相対的な移動の自由度が確保されている。すなわち、被取付体100のインポート102にハウジング40の突出部44を挿入し嵌合させつつ、被取付体100の取付面110の取付面位置決め部111(挿入穴111)に、ハウジング40の位置決め部46(凸部46)を挿入し嵌合させることが容易である。したがって、電動ポンプ装置10と被取付体100とが組み立てやすい。また、例えば本実施形態と異なり、ハウジング本体部41の外周面と凹所101の内周面101bとが嵌合する構成では、組み立て時に、ハウジング本体部41内に嵌合されるステータ部26に、内部応力の増加や変位が生じるなどのおそれがあるが、本実施形態では、ステータ部26に応力が生じることを抑えられ、モータ20の性能が良好に維持される。また、ハウジング本体部41の外周面と凹所101の内周面101bとの間に隙間を設けることで、この隙間にオイルを流すことができ、オイルによる冷却効果を得ることができる。
【0056】
図2に示すように、位置決め部46(凸部46)は、突出部44よりも、軸間方向のうち第2中心軸J2から第1中心軸J1へ向かう方向(+Y側)に配置される。本実施形態によれば、位置決め部46が、フランジ部42のうち突出部44から離れた位置に配置される。つまり、突出部44と位置決め部46との間の距離が大きく確保される。このため、突出部44の第2中心軸J2と、位置決め部46の第3中心軸J3との軸間方向の距離が大きく確保された状態で、突出部44がインポート102に嵌合し、位置決め部46が取付面位置決め部111に嵌合する。これにより、電動ポンプ装置10のハウジング40と、被取付体100の凹所101との周方向の位置ずれが抑えられて周方向位置の精度が向上し、ハウジング40と凹所101との同軸度の精度が高められる。ハウジング40の隅部47と被取付体100の角部104との間の距離が周方向の各位置でばらつきにくくなり、シール部43によるシール性がより安定する。
【0057】
位置決め部46(凸部46)は、フランジ部42に2つ設けられる。本実施形態によれば、位置決め部46が2つ設けられるので、電動ポンプ装置10のハウジング40と、被取付体100の凹所101との同軸度の精度がより安定する。具体的に、例えば位置決め部46が1つのみ設けられる構成に比べて、本実施形態では、被取付体100の凹所101に対するハウジング40の径方向位置の精度および周方向位置の精度が高められる。また、例えば位置決め部46が3つ設けられる構成では、3つの位置決め部46のうち、2つは取付面位置決め部111(挿入穴111)に接触するが、1つは取付面位置決め部111に接触しにくくなるため、1つの位置決め部46において位置決め機能が得られにくい。また、3つの位置決め部46をそれぞれ取付面位置決め部111に嵌合させるには、嵌め合い公差を大きくせざるを得ず、その分組み立て後のがたつき(隙間)が大きくなって、位置決め精度が低下する場合がある。
【0058】
本実施形態において2つの位置決め部46(凸部46)は、第1位置決め部46aおよび第2位置決め部46bである。第1位置決め部46aは、第1凸部46aと言い換えてもよい。第2位置決め部46bは、第2凸部46bと言い換えてもよい。すなわち2つの凸部46は、第1凸部46aおよび第2凸部46bである。
図2に示すように、ハウジング40を軸方向から見て、第1位置決め部46aの第3中心軸J3を通り、突出部44の外周面に接する2つの接線は、第1接線T1および第2接線T2である。ハウジング40を軸方向から見て、突出部44の外周面と第1接線T1との接点である第1接点P1を通り、第1接線T1から第2中心軸J2とは反対方向へ延びる第1接線T1の法線は、第1法線N1であり、突出部44の外周面と第2接線T2との接点である第2接点P2を通り、第2接線T2から第2中心軸J2とは反対方向へ延びる第2接線T2の法線は、第2法線N2である。ハウジング40を軸方向から見て、第2位置決め部46bは、第1法線N1および第2法線N2よりも、軸間方向のうち第1中心軸J1から第2中心軸J2へ向かう方向(-Y側)に配置される。すなわち、第2位置決め部46bは、フランジ部42のうち
図2に符号Aで示す範囲に配置される。本実施形態では第2位置決め部46bが、フランジ部42のうち、第1接線T1と第2接線T2との間、第1接線T1上、および第2接線T2上のいずれかに配置される。
【0059】
本実施形態によれば、第1位置決め部46a(第1凸部46a)と第2位置決め部46b(第2凸部46b)とが、軸方向から見て、突出部44を間に挟んで互いに反対側に配置されやすくなる。これにより、電動ポンプ装置10のハウジング40と、被取付体100の凹所101との同軸度の精度がより高められる。したがって、シール部43によるシール性がより安定する。
【0060】
位置決め部46(凸部46)は、軸方向から見て、インバータケース60と重なる。インバータケース60は、ハウジング40の軸方向他方側に配置される。例えば本実施形態と異なり、位置決め部46が、軸方向から見てインバータケース60よりも径方向外側に配置される構成に比べて、本実施形態では、フランジ部42の外径を小さく抑えることができる。このため、電動ポンプ装置10を小型化できる。
【0061】
図3に示すように、インポート102に突出部44が挿入される軸方向の長さL1よりも、位置決め部46と取付面位置決め部111とが嵌合する軸方向の長さL2、つまり挿入穴111に凸部46が挿入される軸方向の長さL2が小さい。本実施形態によれば、電動ポンプ装置10と被取付体100とを組み立てるときに、まず突出部44をインポート102に嵌合させ、次いで位置決め部46と取付面位置決め部111とを嵌合させることができる。このため、電動ポンプ装置10と被取付体100とがより組み立てやすい。
【0062】
図4に示すように、穴部51は、フランジ部本体42bに配置される。穴部51は、フランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aから軸方向他方側に窪む。穴部51は、有頂の円穴状である。ピン部52は、フランジ部本体42bに配置される。ピン部52は、穴部51内に嵌合することによりフランジ部42と固定され、端面42aから軸方向一方側に突出する。つまりピン部52は、穴部51に圧入により固定される。ピン部52は、円柱状である。凸部46(位置決め部46)は、ピン部52のうち端面42aから軸方向一方側に突出する部分である。
図5に示すように、ピン部52は、柱状の圧入冶具200を用いて穴部51に圧入される。圧入冶具200の軸方向の長さは、ハウジング本体部41の軸方向の長さよりも小さい。
【0063】
本実施形態によれば、凸部46が、ピン部52により構成される。ピン部52は、被取付体100の取付面110ではなく、ハウジング40のフランジ部42に圧入されているので、ピン部52を軸方向に沿って精度よく直立させることができる。すなわち、被取付体100に比べて、ハウジング40は外形が小さく重量が軽いため、部材として取り扱いやすく、フランジ部42にピン部52を圧入する作業は容易である。このため、ピン部52の圧入精度を安定して高めることができる。したがって、組み立てがより容易となり、かつ、ハウジング40と凹所101との同軸度が向上する。また、フランジ部42にピン部52を圧入するための圧入冶具200や圧入設備等は、コンパクトに、簡素かつ安価に作製できる。
【0064】
図1~
図4に示すように、取付孔48は、取付部42cに配置される。取付孔48は、フランジ部42を軸方向に貫通する。取付孔48は、複数設けられる。各取付孔48は、各取付部42cに配置される。取付孔48には、ネジ部材105が挿入される。
【0065】
図6は、本実施形態の電動ポンプ装置10および電動ポンプ装置の取付構造80の第1変形例を示す縦断面図である。この第1変形例では、被取付体100の角部104が、軸方向一方側へ向かうに従い径方向内側に位置する傾斜面104cを有する。シール部43は、角部104の傾斜面104cとハウジング40の隅部47との間に挟まれて配置される。この場合、角部104の加工が簡単であり、かつシール部43のシール性が安定する。
【0066】
図7は、本実施形態の電動ポンプ装置10および電動ポンプ装置の取付構造80の第2変形例を示す縦断面図である。この第2変形例においてシール部43は、径方向に沿う断面が四角形状である。この場合、被取付体100の角部104に配置されるシール部43の姿勢が安定する。シール部43と、底壁104aおよび内周壁104bとの接触面積が増大する。したがって、シール部43のシール性が安定する。
【0067】
図8は、本実施形態の電動ポンプ装置10および電動ポンプ装置の取付構造80の第3変形例を示す縦断面図である。この第3変形例では、シール部49が、板状であり、一対の板面が軸方向を向く。シール部49は、第1中心軸J1を中心とする円環板状である。シール部49は、ハウジング本体部41の外周面とフランジ部42の軸方向一方側を向く端面42aとが接続する隅部47に配置される。シール部49は、角部104と隅部47とに挟まれて配置される。シール部49は、角部104と隅部47との間を封止する。この場合、シール部49を配置するための被取付体100の角部104の加工が不要である。
【0068】
図3に示すように、インバータケース60は、インバータ50を収容する。インバータケース60は、バスバーホルダ61と、カバー62と、を有する。バスバーホルダ61は、ハウジング40の軸方向他方側に固定される。バスバーホルダ61は、配線部材56およびバスバー58を保持する。バスバーホルダ61は、例えば、配線部材56およびバスバー58をインサート部材とするインサート成形によって作られる。バスバーホルダ61は、底壁部61aと、ベアリングホルダ61eと、環状部61bと、支持部61cと、コネクタ部61dと、を有する。
【0069】
底壁部61aは、第1中心軸J1と直交する方向に拡がる板状である。底壁部61aは、ハウジング40の軸方向他方側を向く面に固定される。ベアリングホルダ61eは、筒状であり、底壁部61aに固定される。ベアリングホルダ61eは、金属製である。ベアリングホルダ61eは、第2のベアリング12を保持する。第2のベアリング12は、ベアリングホルダ61e内に嵌合する。環状部61bは、底壁部61aの径方向外縁部から軸方向他方側に突出する。環状部61bは、第1中心軸J1を囲む環状である。支持部61cは、環状部61bの径方向内側に配置され、底壁部61aから軸方向他方側に突出する。支持部61cは、複数設けられる。コネクタ部61dは、環状部61bの径方向外側面に設けられる。
図2に示すようにコネクタ部61dは、環状部61bから、軸間方向のうち第2中心軸J2から第1中心軸J1へ向かう方向(+Y側)に突出する。コネクタ部61dには、例えば、ステータ部26に電力を供給する外部電源が接続される。
【0070】
図3に示すように、カバー62は、バスバーホルダ61の軸方向他方側に固定される。カバー62は、複数のフィン62aを有する。
【0071】
回路基板55は、板面が軸方向を向く板状である。回路基板55は、ステータ部26の軸方向他方側に位置する。回路基板55は、複数の支持部61cによって軸方向一方側から支持され、ネジによって複数の支持部61cにそれぞれ固定される。これにより回路基板55は、バスバーホルダ61に支持される。回路基板55の軸方向他方側の面は、環状部61bよりも軸方向他方側に位置する。
【0072】
回路基板55には、配線部材56およびバスバー58が接続される。配線部材56は、一部がバスバーホルダ61に埋め込まれて保持される。配線部材56は、細長い板状の部材である。配線部材56は、複数設けられる。配線部材56は、コネクタ部61dの内部を通る。配線部材56は、コネクタ部61dからインバータケース60の外部に露出する端子部(図示省略)を有する。配線部材56は、端子部を介して、コネクタ部61dに接続される外部電源と電気的に接続される。
【0073】
バスバー58は、一部がバスバーホルダ61に埋め込まれて保持される。バスバー58は、細長い板状の部材である。バスバー58は、複数設けられる。バスバー58は、コイル29から軸方向他方側に延びる引き出し線部29cと接続される。これにより、配線部材56は、回路基板55およびバスバー58を介して、ステータ部26と電気的に接続される。
【0074】
インバータ50は、モータ20と電気的に接続される。インバータ50は、回路基板55に取り付けられる。本実施形態においてインバータ50は、回路基板55の軸方向一方側の面に取り付けられる。インバータ50は、複数のトランジスタ50aを有する。トランジスタ50aは、例えば、電界効果トランジスタである。インバータ50は、回路基板55に接続されるバスバー58を介して、ステータ部26と電気的に接続される。
【0075】
コンデンサ57は、回路基板55の軸方向他方側の面に取り付けられる電子部品である。コンデンサ57は、回路基板55から軸方向他方側に突出する。コンデンサ57は、第1中心軸J1に垂直な仮想平面(図示省略)に沿って延びる円柱状である。コンデンサ57は、回路基板55を介してインバータ50と電気的に接続される。これによりコンデンサ57は、回路基板55、インバータ50およびバスバー58を介して、ステータ部26と電気的に接続される。
【0076】
図1に示すようにブリーザ59は、カバー62に設けられる。ブリーザ59は、呼吸孔(図示省略)を有する。ブリーザ59は、呼吸孔を通してインバータケース60の内部の空気を外部に抜く機能を有する。
【0077】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0078】
前述の実施形態では、ピン部52が穴部51に圧入により固定され、ピン部52のうち端面42aから軸方向一方側に突出する部分が、凸部46(位置決め部46)とされる例を挙げたが、これに限らない。凸部46とフランジ部42とが、単一の部材の部分であってもよい。この場合、凸部46は、例えばハウジング本体部41を鋳造するときに、フランジ部42と一体に設けられる。
【0079】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0080】
10…電動ポンプ装置、20…モータ、22…シャフト、30…ポンプ部、40…ハウジング、41…ハウジング本体部、41b…底部、42…フランジ部、42a…端面、44…突出部、46…凸部、46a…第1凸部、46b…第2凸部、50…インバータ、51…穴部、52…ピン部、60…インバータケース、80…電動ポンプ装置の取付構造、100…被取付体、101…凹所、101a…底面、101b…内周面、102…インポート、110…取付面、111…挿入穴、J1…第1中心軸、J2…第2中心軸、J3…第3中心軸、L1,L2…長さ、N1…第1法線、N2…第2法線、P1…第1接点、P2…第2接点、T1…第1接線、T2…第2接線、VL…仮想直線