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特許7275436ロータ、モータおよび電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ロータ、モータおよび電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20230511BHJP
【FI】
H02K1/278
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020509165
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013098
(87)【国際公開番号】W WO2019189313
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018067714
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018119049
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】児玉 光生
(72)【発明者】
【氏名】一円 明
(72)【発明者】
【氏名】金城 秀幸
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-015458(JP,A)
【文献】特開2004-023864(JP,A)
【文献】国際公開第2014/174572(WO,A1)
【文献】特開2004-248422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有するシャフトと、
前記シャフトと固定されるロータコアと、
前記ロータコアの径方向外側面に設けられるマグネット部と、
を備え、
前記ロータコアは、前記ロータコアの径方向外側面から径方向内側に窪み前記マグネット部と径方向に対向する複数の凹部を有し、
前記複数の凹部は、前記凹部として、軸方向の異なる位置において互いに周方向にずれて配置される第1凹部および第2凹部を含み、
前記ロータコアは、第1部分と、前記第1部分の軸方向一方側に位置する第2部分と、を有し、
前記ロータコアは、軸方向から見て、外形が多角形状であり、
前記ロータコアの径方向外側面は、周方向に並ぶ複数の平面部を有し、
前記マグネット部は、前記平面部ごとに設けられ、
前記複数の平面部は、前記平面部として、前記第1部分の径方向外側面に前記第1凹部が設けられた第1平面部と、前記第2部分の径方向外側面に前記第2凹部が設けられた第2平面部と、を含み、
前記第1平面部と前記第2平面部とは、周方向に沿って交互に設けられる、ロータ。
【請求項2】
前記平面部ごとに設けられる各前記マグネット部は、それぞれ単一の部材であり、前記平面部ごとに設けられた複数の前記凹部と径方向に対向する、請求項に記載のロータ。
【請求項3】
前記ロータコアは、前記ロータコアの径方向外側面から径方向内側に窪み軸方向に延びる溝部を有し、
前記溝部は、前記ロータコアの径方向外側面において、周方向に隣り合う一対の前記平面部同士の間に配置されて径方向外側に開口し、径方向外側に向かうにしたがい溝幅が小さくなる、請求項に記載のロータ。
【請求項4】
前記第1凹部は、前記第1部分における前記第1平面部のうち周方向両側の縁部を除いた全面に設けられ、
前記第2凹部は、前記第2部分における前記第2平面部のうち周方向両側の縁部を除いた全面に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項5】
前記第1部分と前記第2部分とは、形状および軸方向の寸法が互いに同じであり、周方向にずれて積層される、請求項からのいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
前記第1凹部の内部と前記第2凹部の内部とは、互いに繋がる、請求項1からのいずれか一項に記載のロータ。
【請求項7】
前記複数の凹部の形状は、互いに同じ形状である、請求項1からのいずれか一項に記載のロータ。
【請求項8】
前記凹部には、接着剤が充填される、請求項1からのいずれか一項に記載のロータ。
【請求項9】
前記ロータコアは、前記ロータコアを軸方向に貫通する孔部を有し、
前記孔部は、前記ロータコアに周方向に互いに間隔をあけて配置される、請求項1から13のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載のロータと、
前記ロータと径方向に隙間をあけて対向するステータと、
を備える、モータ。
【請求項11】
請求項10に記載のモータを備える、電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、モータおよび電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コギングトルクの低減を目的として、ロータにスキューを掛ける構成が知られる。例えば、国際公開第2011/114574号には、ロータのリング磁石に連続スキューが掛けられた構成が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/114574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような連続スキューを掛ける場合、リング磁石の着磁を斜めにする必要があり、手間が掛かる場合があった。一方、国際公開第2011/114574号に記載される他の例のように、磁石を軸方向に分割して磁極を周方向にずらすことで、ロータに段スキューを掛けることも考えられる。しかし、この場合、複数の磁石を周方向にずらして取り付ける必要があり、手間が掛かる場合があった。以上のように、ロータにスキューを掛ける場合、ロータを製造する手間が増大する場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、コギングトルクを低減でき、かつ、製造する手間が増大することを抑制できる構造を有するロータを提供することを目的の一つとする。また、そのようなロータを備えるモータを提供することを目的の一つとする。また、そのようなモータを備える電動パワーステアリング装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータの一つの態様は、中心軸を有するシャフトと、前記シャフトと固定されるロータコアと、前記ロータコアの径方向外側面に設けられるマグネット部と、を備える。前記ロータコアは、前記ロータコアの径方向外側面から径方向内側に窪み前記マグネット部と径方向に対向する複数の凹部を有する。前記複数の凹部は、前記凹部として、軸方向の異なる位置において互いに周方向にずれて配置される第1凹部および第2凹部を含む。前記ロータコアは、第1部分と、前記第1部分の軸方向一方側に位置する第2部分と、を有する。前記ロータコアは、軸方向から見て、外形が多角形状である。前記ロータコアの径方向外側面は、周方向に並ぶ複数の平面部を有する。前記マグネット部は、前記平面部ごとに設けられる。前記複数の平面部は、前記平面部として、前記第1部分の径方向外側面に前記第1凹部が設けられた第1平面部と、前記第2部分の径方向外側面に前記第2凹部が設けられた第2平面部と、を含む。前記第1平面部と前記第2平面部とは、周方向に沿って交互に設けられる。
【0007】
本発明のモータの一つの態様は、上述のロータと、前記ロータと径方向に隙間をあけて対向するステータと、を備える。
【0008】
本発明の電動パワーステアリング装置の一つの態様は、上述のモータを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、ロータにおけるコギングトルクを低減でき、かつ、ロータを製造する手間が増大することを抑制できる。また、ロータにおけるコギングトルクが低減されるため、モータおよび電動パワーステアリング装置の振動、騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態のモータを示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のロータコアの一部を示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態のロータの一部を示す図であって、図1におけるIII-III断面図である。
図4図4は、第1実施形態のモータにおけるコギングトルクの波形の一例を示すグラフである。
図5図5は、第1実施形態の変形例であるロータコアの一部を示す斜視図である。
図6図6は、第2実施形態のロータコアの一部を示す斜視図である。
図7図7は、第2実施形態のロータの一部を示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態のモータにおけるコギングトルクの波形の一例を示すグラフである。
図9図9は、第2実施形態のモータにおけるモータトルクの波形の一例を示すグラフである。
図10図10は、本実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各図に適宜示すZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向とする。また、各図に適宜示す中心軸Jは、上下方向と平行な方向に延びる仮想線である。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向、すなわち上下方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。各図においては、適宜、周方向を矢印θで示す。
【0012】
周方向における上側から下側に向かって見て反時計回りに進む側、すなわち矢印θの向きに進む側を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向における上側から下側に向かって見て時計回りに進む側、すなわち矢印θの向きと逆に進む側を「周方向他方側」と呼ぶ。本実施形態において、上側は、軸方向一方側に相当する。なお、上下方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0013】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態のモータ10は、ロータ20と、ステータ30と、ハウジング11と、複数のベアリング15,16と、ベアリングホルダ40と、を備える。ロータ20は、中心軸Jを有するシャフト21と、ロータコア22と、複数のマグネット部23と、を備える。
【0014】
シャフト21は、中心軸Jに沿って上下方向に延びる。本実施形態の例では、シャフト21が、軸方向に延びる円柱状である。シャフト21は、複数のベアリング15,16により、中心軸J回りに回転自在に支持される。複数のベアリング15,16は、軸方向に互いに間隔をあけて配置され、ハウジング11に支持される。ベアリング15は、ベアリングホルダ40に保持され、ベアリングホルダ40を介してハウジング11に支持される。ハウジング11は、筒状である。
【0015】
シャフト21は、ロータコア22に対して、圧入または接着などによって固定される。つまりロータコア22は、シャフト21と固定される。なお、シャフト21は、ロータコア22に対して、樹脂部材などを介して固定されてもよい。すなわち、シャフト21は、ロータコア22と直接または間接的に固定される。シャフト21は、上記円柱状に限らず、例えば筒状でもよい。
【0016】
ロータコア22は、磁性部材である。ロータコア22は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。ロータコア22は、筒状である。図2および図3に示すように、ロータコア22は、軸方向から見て、外形が多角形状である。ロータコア22の径方向外側面は、周方向に並ぶ複数の平面部22aを有する。図示は省略するが、本実施形態の例では、ロータコア22の外形が、8角形状である。ロータコア22の径方向外側面は、周方向に並ぶ8つの平面部22aを有する。平面部22aは、径方向に垂直な方向に広がる平面状である。平面部22aは、ロータコア22の径方向外側面において、軸方向に延びる。平面部22aは、ロータコア22の径方向外側面に、軸方向全長にわたって配置される。本実施形態の例では、平面部22aの軸方向の長さが、平面部22aの周方向の長さよりも大きい。平面部22aは、径方向外側から見て、矩形状である。
【0017】
ロータコア22は、貫通孔22hと、孔部22bと、溝部22cと、を有する。軸方向から見て、貫通孔22hは、ロータコア22の中心部に配置される。貫通孔22hは、ロータコア22を軸方向に貫通する。図1に示すように、貫通孔22hには、シャフト21が挿入される。
【0018】
孔部22bは、ロータコア22を軸方向に貫通する。図2および図3に示すように、孔部22bは、ロータコア22に周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。図示は省略するが、本実施形態の例では、孔部22bが、ロータコア22に周方向に等間隔に配列する。複数の孔部22bは、各平面部22aの径方向内側にそれぞれ位置する。軸方向から見て、孔部22bは、円形状である。本実施形態によれば、孔部22bによりロータコア22を肉抜きして、ロータコア22の軽量化および材料費削減を図ることができる。
【0019】
溝部22cは、ロータコア22の径方向外側面から径方向内側に窪み、軸方向に延びる。溝部22cは、ロータコア22の径方向外側面に、軸方向全長にわたって配置される。溝部22cは、ロータコア22の径方向外側面において、周方向に隣り合う一対の平面部22a同士の間に配置され、径方向外側に開口する。溝部22cは、ロータコア22に周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。図示は省略するが、溝部22cは、ロータコア22に周方向に等間隔に配列する。溝部22cは、径方向外側に向かうにしたがい溝幅が小さくなる。軸方向から見て、溝部22cは、くさび形状である。
【0020】
ロータコア22は、複数の凹部24をさらに有する。複数の凹部24は、ロータコア22の径方向外側面から径方向内側に窪む。本実施形態において複数の凹部24は、平面部22aから径方向内側に窪む。図3に示すように、複数の凹部24は、マグネット部23と径方向に対向する。本実施形態において複数の凹部24は、凹部24として、第1凹部24aと、第2凹部24bと、第3凹部24cと、を含む。
【0021】
図2に示すように、第1凹部24a、第2凹部24bおよび第3凹部24cは、それぞれ周方向に沿って複数ずつ設けられる。第1凹部24a、第2凹部24bおよび第3凹部24cは、それぞれ平面部22aごとに設けられる。すなわち、本実施形態では、第1凹部24a、第2凹部24bおよび第3凹部24cは、8つずつ設けられる。第1凹部24a、第2凹部24bおよび第3凹部24cは、径方向外側から見て、矩形状である。
【0022】
第1凹部24a、第2凹部24bおよび第3凹部24cは、軸方向の異なる位置において互いに周方向にずれて配置される。第1凹部24aは、平面部22aの下側部分のうち周方向他方側の端部に位置する。第1凹部24aは、ロータコア22の下側の面に開口する。
【0023】
第2凹部24bは、第1凹部24aよりも上側で、かつ、第1凹部24aよりも周方向一方側に位置する。第2凹部24bは、平面部22aの軸方向の中央部分のうち周方向の中央部分に位置する。第2凹部24bの周方向他方側の端部は、第1凹部24aの周方向一方側の端部と周方向においてほぼ同じ位置に位置する。第2凹部24bの下側の端部は、第1凹部24aの上側の端部と軸方向においてほぼ同じ位置に位置する。
【0024】
第3凹部24cは、第2凹部24bよりも上側で、かつ、第2凹部24bよりも周方向一方側に位置する。第3凹部24cは、平面部22aの上側部分のうち周方向一方側の端部に位置する。第3凹部24cは、ロータコア22の上側の面に開口する。第3凹部24cの周方向他方側の端部は、第2凹部24bの周方向一方側の端部と周方向においてほぼ同じ位置に位置する。第3凹部24cの下側の端部は、第2凹部24bの上側の端部と軸方向においてほぼ同じ位置に位置する。
【0025】
本実施形態において第1凹部24aと第2凹部24bと第3凹部24cとは、各平面部22aにおいて、矩形状の平面部22aの対角線に沿って配置される。第1凹部24aと第3凹部24cとは、平面部22aの角部に配置される。径方向外側から見て、第1凹部24aと第3凹部24cとは、第2凹部24bを中心として点対称となる位置に配置される。本実施形態において第1凹部24aの形状と第3凹部24cの形状とは、互いに同じである。
【0026】
本実施形態において第2凹部24bの周方向の寸法は、第1凹部24aの周方向の寸法および第3凹部24cの周方向の寸法よりも大きい。本実施形態において第1凹部24aの軸方向の寸法と第2凹部24bの軸方向の寸法と第3凹部24cの軸方向の寸法とは、互いに同じである。第1凹部24aの内部と第2凹部24bの内部と第3凹部24cの内部とは、互いに分離される。
【0027】
図3に示すように、凹部24には、接着剤28が充填される。接着剤28は、凹部24の底面とマグネット部23の径方向内側面とに接触し、ロータコア22とマグネット部23とを固定する。これにより、ロータコア22に対するマグネット部23の固定強度を向上できる。
【0028】
図2に示すように、ロータコア22のうち軸方向位置が第1凹部24aと同じ部分を、第1部分27aと呼ぶ。ロータコア22のうち軸方向位置が第2凹部24bと同じ部分を第2部分27bと呼ぶ。ロータコア22のうち軸方向位置が第3凹部24cと同じ部分を第3部分27cと呼ぶ、第1部分27aと第2部分27bと第3部分27cとは、下側から上側に向かって、この順に並んで配置される。第1部分27aは、ロータコア22の下側部分である。第2部分27bは、ロータコア22の軸方向における中央部分である。第3部分27cは、ロータコア22の上側部分である。
【0029】
本実施形態においてマグネット部23は、例えば、永久磁石である。図1および図3に示すように、マグネット部23は、軸方向に延びる柱状である。図3に示すように、マグネット部23の軸方向と直交する断面形状は、周方向に長い略四角形状である。マグネット部23の径方向内側の面は、径方向と直交する平坦面である。マグネット部23の径方向外側の面は、軸方向から見て径方向外側に凸となる湾曲面である。
【0030】
マグネット部23は、ロータコア22の径方向外側面に設けられる。本実施形態においてマグネット部23は、平面部22aごとに設けられる。すなわち、本実施形態においてマグネット部23は、例えば、8つ設けられる。図示は省略するが、複数のマグネット部23は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。平面部22aごとに設けられる各マグネット部23は、それぞれ単一の別部材である。
【0031】
各マグネット部23は、径方向内側面が平面部22aと接触して固定される。マグネット部23の径方向内側面における周方向の寸法は、平面部22aの周方向の寸法よりも小さい。図1に示すように、マグネット部23の軸方向の寸法は、平面部22aの軸方向の寸法と同じである。
【0032】
各マグネット部23は、平面部22aごとに設けられた複数の凹部24と径方向に対向する。本実施形態では、各マグネット部23は、各平面部22aにそれぞれ設けられた第1凹部24a、第2凹部24bおよび第3凹部24cと径方向に対向する。マグネット部23の径方向内側面は、各凹部24の径方向外側の開口を閉塞する。
【0033】
図4は、本実施形態のモータ10におけるコギングトルクCTの波形の一例を示すグラフである。図4において、横軸は、周方向の回転角φを示し、縦軸は、コギングトルクCTを示す。図4においては、第1部分27aにおいて生じるコギングトルクCT1と、第2部分27bにおいて生じるコギングトルクCT2と、第3部分27cにおいて生じるコギングトルクCT3と、ロータ20全体に生じるコギングトルクCTtaと、を示す。ロータ20全体に生じるコギングトルクCTtaは、コギングトルクCT1とコギングトルクCT2とコギングトルクCT3とを足し合わせた値である。
【0034】
図4に示すように、各部分に生じるコギングトルクCT1,CT2,CT3は、互いに位相がずれる。これは、各部分にそれぞれ周方向にずれた凹部24が設けられているためと考えられる。具体的に、第1部分27aにおいては、周方向他方側に第1凹部24aが設けられる。そのため、マグネット部23から径方向外側に出る磁束、またはマグネット部23に径方向外側から入る磁束における磁束密度分布の周方向中心が、平面部22aの周方向中心よりも周方向一方側にずれる。なお、以下の説明においては、「マグネット部23から径方向外側に出る磁束、またはマグネット部23に径方向外側から入る磁束における磁束密度分布」を、単に「磁束密度分布」と呼ぶ。
【0035】
第2部分27bにおいては、平面部22aの周方向の中央に第2凹部24bが設けられる。そのため、磁束密度分布の周方向中心は、平面部22aの周方向中心と一致する。第3部分27cにおいては、周方向一方側に第3凹部24cが設けられている。そのため、磁束密度分布の周方向中心が、平面部22aの周方向中心よりも周方向他方側にずれる。これにより、軸方向位置が互いに異なる第1部分27aと第2部分27bと第3部分27cとの各部分において、磁束密度分布の周方向中心が、互いに周方向にずれて配置される。したがって、各部分に生じるコギングトルクCTの位相が互いにずれて打ち消し合い、ロータ20全体に生じるコギングトルクCTtaを低減できる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、ロータコア22の径方向外側面に、軸方向の異なる位置において互いに周方向にずれて配置される複数の凹部24を設けることで、ロータ20全体に生じるコギングトルクCTtaを低減することができる。そのため、ロータ20にスキューを掛ける必要がない。したがって、ロータ20全体に生じるコギングトルクCTtaを低減でき、かつ、ロータ20を製造する手間が増大することを抑制できる。
【0037】
また、本実施形態によれば、マグネット部23および各凹部24は、平面部22aごとに設けられる。そのため、各平面部22aにおいてコギングトルクCTを低減することができ、ロータ20全体に生じるコギングトルクCTtaをより低減できる。
【0038】
また、本実施形態によれば、平面部22aごとに設けられるマグネット部23は、それぞれ単一の部材であり、平面部22aごとに設けられた複数の凹部24と径方向に対向する。そのため、マグネット部23を軸方向に分割してスキューを掛けるような場合に比べて、マグネット部23の数を少なくできる。これにより、ロータ20の部品点数が増加することを抑制でき、ロータ20を製造する手間が増大することをより抑制できる。
【0039】
このように、本実施形態では、凹部24を設けることによってコギングトルクCTを低減できるため、マグネット部23を分割する必要がなく、マグネット部23の着磁を斜めにする必要もない。よって、マグネット部23の作製およびマグネット部23のロータコア22への取り付けを容易にできる。
【0040】
また、本実施形態によれば、凹部24として、周方向位置が周方向他方側から周方向一方側に順にずれる第1凹部24aと第2凹部24bと第3凹部24cとが設けられる。そのため、磁束密度分布の周方向中心を軸方向に沿って緩やかに変化させることができ、より好適にコギングトルクCTtaを低減できる。
【0041】
平面部22aの軸方向の中央部分において、第2凹部24bの周方向両側の部分を通る磁束の磁束密度は、第2凹部24bを通る磁束の磁束密度よりも大きい。そして、第2凹部24bの周方向両側の部分は、第1凹部24aの周方向一方側の部分と、第3凹部24cの周方向他方側の部分と、それぞれ繋がる。そのため、第2凹部24bの周方向一方側の部分を通る磁束によって、第1凹部24aの周方向一方側の部分における磁束密度分布を周方向一方側に寄せやすい。また、第2凹部24bの周方向他方側の部分を通る磁束によって、第3凹部24cの周方向他方側の部分における磁束密度分布を周方向他方側に寄せやすい。これにより、第1部分27aおよび第3部分27cにおいて、磁束密度分布の周方向中心を好適に周方向にずらすことができる。そのため、各部分におけるコギングトルクCTの位相を好適にずらすことができ、ロータ20全体のコギングトルクCTtaをより低減できる。
【0042】
本実施形態によれば、径方向外側から見て、第1凹部24aと第3凹部24cとは、第2凹部24bを中心として点対称となる位置に配置される。そのため、第1部分27aと第2部分27bと第3部分27cとにおける磁束密度分布の周方向中心を、周方向において等間隔にずらしやすい。これにより、より好適にコギングトルクCTtaを低減できる。第1部分27aの形状と第3部分27cの形状とを軸方向に対称な形状としやすい。そのため、電磁鋼板を積層してロータコア22を作る場合、同じ形状の電磁鋼板を軸方向に反転させて用いることで、第1部分27aと第3部分27cとをそれぞれ作ることができる。したがって、ロータコア22を作製するコストを低減できる。
【0043】
本実施形態によれば、第2凹部24bの周方向の寸法は、第1凹部24aの周方向の寸法および第3凹部24cの周方向の寸法よりも大きい。そのため、第2部分27bの平面部22aにおいて、第2凹部24bの周方向両側の部分をより周方向に離して配置できる。これにより、第2凹部24bの周方向一方側の部分を通る磁束によって、第1凹部24aの周方向一方側の部分における磁束密度分布をより周方向一方側に寄せやすい。第2凹部24bの周方向他方側の部分を通る磁束によって、第3凹部24cの周方向他方側の部分における磁束密度分布をより周方向他方側に寄せやすい。これにより、第1部分27aおよび第3部分27cにおいて、磁束密度分布の周方向中心をより好適に周方向にずらすことができる。そのため、ロータ20全体のコギングトルクCTtaをより低減できる。
【0044】
図3に示すように、ロータ20は、樹脂モールド部26をさらに備える。樹脂モールド部26は、ロータコア22の少なくとも一部およびマグネット部23の少なくとも一部を覆う。樹脂モールド部26は、少なくとも一部が周方向に隣り合うマグネット部23同士の間に位置する。樹脂モールド部26は、ロータコア22およびマグネット部23をインサート部材としたインサート成形により作られる。
【0045】
樹脂モールド部26は、アンカー部26aと、移動抑制部26bと、を有する。アンカー部26aは、各溝部22c内に設けられる部分である。アンカー部26aは、溶融した樹脂を溝部22cに充填し固化することにより作られる。アンカー部26aは、軸方向に延びる。アンカー部26aの周方向の幅は、径方向内側へ向かうにしたがい大きくなる。
【0046】
移動抑制部26bは、アンカー部26aよりも径方向外側に位置して、アンカー部26aと繋がる。移動抑制部26bは、樹脂モールド部26の径方向外側の端部に配置される。移動抑制部26bは、アンカー部26aに対して、周方向の両側に向けてそれぞれ突出する。移動抑制部26bは、板面が径方向を向く板状である。移動抑制部26bは、軸方向に延びる。移動抑制部26bは、平面部22aの径方向外側に、平面部22aとの間に間隔をあけて配置される。径方向から見て、移動抑制部26bと、平面部22aとは、重なって配置される。移動抑制部26bは、マグネット部23の径方向外側面に接触する。
【0047】
本実施形態によれば、ロータコア22の径方向外側面に、くさび状の溝部22cが設けられる。これにより、アンカー部26aを溝部22cに対して径方向に引っ掛けることができる。したがって、樹脂モールド部26がロータコア22に対して径方向外側に抜けることを抑制できる。そして、移動抑制部26bにより、マグネット部23を径方向外側から押さえることができる。したがって、樹脂モールド部26によって、マグネット部23がロータコア22から外れることを抑制できる。
【0048】
図1に示すように、ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ30Zと、複数のコイル30Cと、を有する。ステータコア31は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア31は、ロータ20の径方向外側においてロータ20を囲む。ステータコア31は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。すなわち、ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。ステータコア31は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。
【0049】
ステータコア31は、略環状のコアバック31aと、複数のティース31bと、を有する。図示は省略するが、本実施形態では、コアバック31aは、中心軸Jを中心とする円環状である。ティース31bは、コアバック31aの径方向内側面から径方向内側に延びる。コアバック31aの外周面は、ハウジング11の周壁部の内周面と固定される。複数のティース31bは、コアバック31aの径方向内側面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。図示は省略するが、本実施形態では、複数のティース31bが、周方向に等間隔に配列する。
【0050】
インシュレータ30Zは、ステータコア31に装着される。インシュレータ30Zは、ティース31bを覆う部分を有する。インシュレータ30Zの材料は、例えば樹脂などの絶縁材料である。コイル30Cは、ステータコア31に取り付けられる。複数のコイル30Cは、インシュレータ30Zを介してステータコア31に装着される。複数のコイル30Cは、インシュレータ30Zを介して各ティース31bに導線が巻き回されることで構成される。
【0051】
(第1実施形態の変形例)
図5に示すように、本変形例のロータコア122において、第1凹部124aの形状および第3凹部124cの形状は、第2凹部24bの形状と同じである。すなわち、複数の凹部124の形状は、互いに同じ形状である。この構成によれば、複数の凹部124の作製が容易である。ロータコア122において、周方向にずれて配置される凹部124同士は、周方向位置が同じ部分を有する。第1凹部124aの周方向一方側の部分と第2凹部24bの周方向他方側の部分とは、軸方向から見て、互いに重なる。第2凹部24bの周方向一方側の部分と第3凹部124cの周方向他方側の部分とは、軸方向から見て、互いに重なる。ロータコア122において、第1凹部124aの内部と第2凹部24bの内部とは、互いに繋がる。第2凹部24bの内部と第3凹部124cの内部とは、互いに繋がる。この構成によれば、各凹部124の周方向の寸法をそれぞれ大きくしやすい。そのため、磁束密度分布の周方向中心をより周方向にずらしやすい。
【0052】
<第2実施形態>
図6に示すように、本実施形態のロータコア222は、第1実施形態に対して、凹部224の形状および配置が異なる。ロータコア222は、第1部分227aと、第2部分227bと、を有する。第1部分227aは、ロータコア222の下側部分である。第2部分227bは、ロータコア222の上側部分である。第2部分227bは、第1部分227aの上側に位置する。本実施形態においてロータコア222は、第1部分227aと第2部分227bとのみから構成される。第1部分227aと第2部分227bとは、形状および軸方向の寸法が互いに同じであり、周方向に45°ずれて積層される。そのため、本実施形態によれば、第1部分227aと第2部分227bとのそれぞれを、同形状の電磁鋼板を同じ枚数積層することで作ることができる。これにより、ロータコア222を構成する電磁鋼板を1種類とすることができ、ロータコア222を製造する手間およびコストを低減できる。
【0053】
本実施形態において各平面部222aは、第1部分227aの径方向外側面と第2部分227bの径方向外側面とが軸方向に繋がって構成される。本実施形態の例では、平面部222aの軸方向の長さが、平面部222aの周方向の長さよりも小さい。本実施形態において各平面部222aには、第1凹部224aと第2凹部224bとのうちのいずれかの凹部224が1つのみ設けられる。すなわち、本実施形態において複数の平面部222aは、平面部222aとして、第1凹部224aが設けられた第1平面部222dと、第2凹部224bが設けられた第2平面部222eと、を含む。第1平面部222dと第2平面部222eとは、周方向に沿って交互に設けられる。
【0054】
第1凹部224aは、第1平面部222dのうち第1部分227aの径方向外側面に設けられる。第2凹部224bは、第2平面部222eのうち第2部分227bの径方向外側面に設けられる。これにより、第1凹部224aは、第1部分227aの径方向外側面において、周方向に沿って一周に亘って互いに間隔を空けて複数設けられる。第2凹部224bは、第2部分227bの径方向外側面において、周方向に沿って一周に亘って互いに間隔を空けて複数設けられる。第1凹部224aと第2凹部224bとは、軸方向から見て、周方向に沿って交互に設けられる。すなわち、複数の凹部224を軸方向から見た際において、第1凹部224aの周方向両側に隣り合う凹部224は第2凹部224bであり、第2凹部224bの周方向両側に取り合う凹部224は第1凹部224aである。
【0055】
第1凹部224aおよび第2凹部224bのそれぞれは、径方向外側から見て、周方向に長い矩形状である。第1凹部224aは、下側に開口する。本実施形態において第1凹部224aは、第1部分227aにおける第1平面部222dのうち周方向両側の縁部を除いた全面に設けられる。図7に示すように、第1凹部224aの周方向の寸法は、第1平面部222dに設けられるマグネット部23の周方向の寸法とほぼ同じである。本実施形態において第1凹部224aの周方向の寸法は、第1平面部222dに設けられるマグネット部23の周方向の寸法よりも僅かに小さい。第1凹部224aの径方向の寸法は、第1凹部224aの全体に亘って均一である。
【0056】
第2凹部224bは、上側に開口する。図6に示すように、本実施形態において第2凹部224bは、第2部分227bにおける第2平面部222eのうち周方向両側の縁部を除いた全面に設けられる。図7に示すように、第2凹部224bの周方向の寸法は、第2平面部222eに設けられるマグネット部23の周方向の寸法とほぼ同じである。本実施形態において第2凹部224bの周方向の寸法は、第2平面部222eに設けられるマグネット部23の周方向の寸法よりも僅かに小さい。第2凹部224bの径方向の寸法は、第2凹部224bの全体に亘って均一である。
【0057】
第1凹部224aの周方向の寸法と第2凹部224bの周方向の寸法とは、互いに同じである。第1凹部224aの径方向の寸法と第2凹部224bの径方向の寸法とは、互いに同じである。図6に示すように、第1凹部224aの軸方向の寸法と第2凹部224bの軸方向の寸法とは、互いに同じである。第1凹部224aの上側の端部と第2凹部224bの下側の端部とは、軸方向において、互いに同じ位置に位置する。図7に示すように、本実施形態において第2凹部224bの内部は、空隙である。図示は省略するが、第1凹部224aの内部も、空隙である。
【0058】
図8は、本実施形態のモータにおけるコギングトルクCTの波形の一例を示すグラフである。図8において、横軸は、周方向の回転角φを示し、縦軸は、コギングトルクCTを示す。図8においては、第1部分227aにおいて生じるコギングトルクCT4と、第2部分227bにおいて生じるコギングトルクCT5と、ロータ220全体に生じるコギングトルクCTtbと、を示す。ロータ220全体に生じるコギングトルクCTtbは、コギングトルクCT4とコギングトルクCT5とを足し合わせた値である。
【0059】
図9は、本実施形態のモータにおけるモータトルクMTの波形の一例を示すグラフである。図9において、横軸は、周方向の回転角φを示し、縦軸は、モータトルクMTを示す。図9においては、第1部分227aにおいて生じるモータトルクMT4と、第2部分227bにおいて生じるモータトルクMT5と、ロータ220全体に生じるモータトルクMTtと、を示す。ロータ220全体に生じるモータトルクMTtは、回転角φごとにおけるモータトルクMT4とモータトルクMT5との平均値に相当する。
【0060】
図8に示すように、各部分に生じるコギングトルクCT4,CT5は、互いに位相がずれる。これは、第1実施形態と同様に、各部分にそれぞれ周方向にずれた凹部224が設けられているためと考えられる。これにより、各部分に生じるコギングトルクCTの位相が互いにずれて打ち消し合い、ロータ220全体に生じるコギングトルクCTtbを低減できる。そのため、ロータ220にスキューを掛ける必要がない。したがって、ロータ220全体に生じるコギングトルクCTtbを低減でき、かつ、ロータ220を製造する手間が増大することを抑制できる。
【0061】
本実施形態によれば、互いに異なる軸方向位置に設けられた第1凹部224aと第2凹部224bとが、軸方向から見て、周方向に沿って交互に設けられる。そのため、コギングトルクCT4の位相とコギングトルクCT5の位相とが半周期ずれて逆位相となりやすい。これにより、コギングトルクCT4とコギングトルクCT5とが好適に相殺されやすく、ロータ220全体に生じるコギングトルクCTtbをより好適に低減できる。
【0062】
本実施形態によれば、第1凹部224aが設けられた第1平面部222dと第2凹部224bが設けられた第2平面部222eとが、周方向に沿って交互に設けられる。そして、第1凹部224aは、第1部分227aにおける第1平面部222dに設けられ、第2凹部224bは、第2部分227bにおける第2平面部222eに設けられる。そのため、第1部分227aにおいては、第1凹部224aが設けられた部分と、凹部224が設けられない部分とが、周方向に沿って交互に設けられる。ここで、第1凹部224aの内部は、磁性部材であるロータコア222よりも磁束が通りにくい。そのため、第1部分227aにおいて第1凹部224aが設けられる第1平面部222dでは、第1部分227aにおいて凹部224が設けられない第2平面部222eよりも、マグネット部23とステータ30との間を通る磁束が少なくなる。これにより、第1部分227aにおいては、マグネット部23とステータ30との間を通る磁束が、周方向に沿って平面部222aおよびマグネット部23ごとに増減する。したがって、図9に示すように、第1部分227aにおけるモータトルクMT4は、回転角φに応じて周期的に増減する。
【0063】
一方、第2部分227bにおいては、第2凹部224bが設けられた部分と、凹部224が設けられない部分とが、周方向に沿って交互に設けられる。ここで、第2凹部224bの内部は、第1凹部224aの内部と同様に、磁性部材であるロータコア222よりも磁束が通りにくい。そのため、上述した第1部分227aのモータトルクMT4と同様に、第2部分227bのモータトルクMT5も、回転角φに応じて周期的に増減する。
【0064】
第1平面部222dと第2平面部222eとは、周方向に沿って交互に設けられ、第1凹部224aと第2凹部224bとは、軸方向から見て、周方向に沿って交互に設けられる。そのため、第1部分227aにおいてマグネット部23とステータ30との間の磁束が少なくなる部分と、第2部分227bにおいてマグネット部23とステータ30との間の磁束が少なくなる部分とは、軸方向から見て、周方向に沿って交互に設けられる。これにより、モータトルクMT4の位相とモータトルクMT5の位相とは半周期ずれて互いに逆位相となりやすく、モータトルクMT4の変動幅とモータトルクMT5との変動幅が互いに相殺される。よって、ロータ220全体のモータトルクMTtの変動幅を小さくでき、トルクリップルを低減することができる。
【0065】
なお、上述した凹部224が設けられることによるモータトルクMTの低下は、実質的に、凹部224が設けられた部分においてマグネット部23とステータ30との間の径方向の距離が大きくなったことに相当する。言い換えれば、本実施形態によれば、マグネット部23とステータ30との間の径方向の距離を変えることなく、凹部224を適宜設けることによって、マグネット部23とステータ30との径方向の距離を変えたことと同等の効果を得ることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、第1凹部224aは、第1部分227aにおける第1平面部222dのうち周方向両側の縁部を除いた全面に設けられる。そのため、第1部分227aにおいて、第1平面部222dにおける第1凹部224aの周方向の寸法と、凹部224が設けられない第2平面部222eの周方向の寸法と、をほぼ同じにできる。これにより、第1部分227aのモータトルクMT4の波形において、モータトルクMT4が増加する周期幅とモータトルクMT4が減少する周期幅とをほぼ同じにすることができる。
【0067】
また、第2凹部224bは、第2部分227bにおける第2平面部222eのうち周方向両側の縁部を除いた全面に設けられる。そのため、第2部分227bにおいて、第2平面部222eにおける第2凹部224bの周方向の寸法と、凹部224が設けられない第1平面部222dの周方向の寸法と、をほぼ同じにできる。これにより、第2部分227bのモータトルクMT5の波形において、モータトルクMT5が増加する周期幅とモータトルクMT5が減少する周期幅とをほぼ同じにすることができる。したがって、モータトルクMT4の波形とモータトルクMT5の波形とが半周期ずれることで、より互いに逆位相となりやすく、より好適にトルクリップルを低減できる。
【0068】
また、コギングトルクCT4,CT5の波形において、コギングトルクCTが正の値となる周期幅と、コギングトルクCTが負の値となる周期幅とをほぼ同じにすることができる。そのため、コギングトルクCT4の波形とコギングトルクCT5の波形とが半周期ずれることで、より互いに逆位相となりやすく、より好適にコギングトルクCTtbを低減できる。
【0069】
また、第1部分227aにおける第1平面部222dのうち周方向両側の縁部には、第1凹部224aが設けられない。そのため、第1平面部222dに設けられるマグネット部23を、第1凹部224aの周方向両側の縁部によって径方向内側から支持することができる。これにより、マグネット部23をより安定して第1平面部222dに保持できる。
【0070】
また、第2部分227bにおける第2平面部222eのうち周方向両側の縁部には、第2凹部224bが設けられない。そのため、第2平面部222eに設けられるマグネット部23を、第2凹部224bの周方向両側の縁部によって径方向内側から支持することができる。これにより、マグネット部23をより安定して第2平面部222eに保持できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、第1部分227aと第2部分227bとは、形状および軸方向の寸法が互いに同じであり、周方向にずれて積層される。そのため、各部分におけるコギングトルクCTの波形は、周期および振幅が互いにほぼ同じとなる。これにより、コギングトルクCT4の波形とコギングトルクCT5の波形とが逆位相となることで、より好適にコギングトルクCTtbを低減できる。また、同様に、各部分におけるモータトルクMTの波形は、周期および振幅が互いにほぼ同じとなる。これにより、モータトルクMT4の波形とモータトルクMT5の波形とが逆位相となることで、より好適にトルクリップルを低減できる。
【0072】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。軸方向の異なる位置において互いに周方向にずれて配置される第1凹部および第2凹部が少なくとも1つずつ設けられるならば、凹部の構成は特に限定されない。軸方向に異なる位置に配置される凹部同士は、互いに軸方向にずれていればよく、一部の軸方向位置が互いに同じであってもよい。例えば、上述した第1実施形態の例では、第1凹部24a,124aの上側の部分と第2凹部24bの下側の部分とが、軸方向において同じ位置に位置してもよい。第2凹部24bの上側の部分と第3凹部24c,124cの下側の部分とが、軸方向において同じ位置に位置してもよい。
【0073】
また、第1実施形態において、第3凹部24cは、設けられなくてもよい。この場合、例えば、平面部において第1凹部は、周方向他方側に設けられ、第2凹部は、周方向一方側に設けられてもよい。また、例えば、上述した第1実施形態においては、第2凹部24bが設けられず、第1凹部24aと第3凹部24cとのみが設けられてもよい。この場合、例えば、第3凹部24cが、第2凹部に相当する。平面部のうち一部の平面部には、凹部が設けられなくてもよい。平面部ごとに設けられる凹部の数が異なってもよい。
【0074】
複数の凹部の形状は、特に限定されない。凹部の形状は、円形状であってもよいし、四角形状以外の多角形状であってもよい。凹部の内部は、接着剤以外の非磁性部材が充填されてもよいし、空隙であってもよい。例えば、第1実施形態においては、凹部24,124の内部は空隙であってもよい。第2実施形態においては、凹部224の内部に接着剤等の非磁性部材が充填されてもよい。
【0075】
ロータコアは、第1凹部と第2凹部とが設けられるならば、何段構成であってもよい。例えば、第1実施形態においてロータコア22,122は、2段構成であってもよいし、4段以上の構成であってもよい。例えば、第2実施形態においてロータコア222は、3段以上の構成であってもよい。第2実施形態において3段構成の場合、例えば、第2部分227bの上側に、第1部分227aと同様に第1平面部に第1凹部が設けられる部分が積層される。第2実施形態において4段以上の構成の場合、例えば、第2部分227bの上側に、第1部分227aと同様に第1平面部に第1凹部が設けられる部分と、第2部分227bと同様に第2平面部に第2凹部が設けられる部分とが交互に積層される。第2実施形態において3段以上の構成の場合、第1平面部に第1凹部が設けられる部分の軸方向の寸法の合計と、第2平面部に第2凹部が設けられる部分の軸方向の寸法の合計とを同じとすることで、各部におけるコギングトルクCTとモータトルクMTとを好適に相殺することができ、コギングトルクCTおよびトルクリップルを好適に低減できる。
【0076】
各平面部に設けられるマグネット部は、軸方向に複数に分割されてもよい。ロータコアの形状は、特に限定されない。ロータコアは、例えば、円柱状であってもよい。この場合、マグネット部は、円筒状の単一部材であってもよい。また、この場合、例えば、凹部は、マグネット部の各磁極と径方向に対向する位置に複数ずつ設けられてもよい。
【0077】
上述した実施形態のモータの用途は、特に限定されない。上述した実施形態のモータは、例えば、ポンプ、ブレーキ、クラッチ、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機および冷蔵庫などの多様な機器に用いることができる。一例として、上述した実施形態のモータ10を電動パワーステアリング装置に搭載した例について説明する。
【0078】
図10に示すように、電動パワーステアリング装置1は、自動車の車輪の操舵機構に搭載される。電動パワーステアリング装置1は、操舵力を油圧により軽減する装置である。本実施形態の電動パワーステアリング装置1は、モータ10と、操舵軸314と、オイルポンプ316と、コントロールバルブ317と、を備える。操舵軸314は、ステアリング311からの入力を、車輪312を有する車軸313に伝える。オイルポンプ316は、車軸313に油圧による駆動力を伝えるパワーシリンダ315に油圧を発生させる。コントロールバルブ317は、オイルポンプ316のオイルを制御する。電動パワーステアリング装置1において、モータ10は、オイルポンプ316の駆動源として搭載される。本実施形態の電動パワーステアリング装置1は、本実施形態のモータ10を備える。このため、上述のモータ10と同様の効果を奏する電動パワーステアリング装置1が得られる。なお、電動パワーステアリング装置1に搭載されるモータは、図5に示すロータコア122を備えるモータであってもよいし、図6に示すロータコア222を備えるモータであってもよい。
【0079】
上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10