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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
H02K5/173 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020510989
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013083
(87)【国際公開番号】W WO2019189301
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018064334
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三分一 浩司
(72)【発明者】
【氏名】右田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】青野 真郷
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184421(JP,A)
【文献】特開2009-247167(JP,A)
【文献】特開2004-028169(JP,A)
【文献】特開2014-039420(JP,A)
【文献】特開2012-222939(JP,A)
【文献】実開昭59-025944(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で、軸方向一方の端部に開口を有するとともに、前記開口の内周面に雌ネジ部を有するハウジングと、
前記ハウジングの径方向の内側に設けられたステータと、
前記ステータの径方向内側に設けられ、駆動対象部材が連結されるロータと、
前記ハウジングに支持され、前記ロータを前記ロータの中心軸回りに回転自在に支持するベアリングと、
前記ハウジングから径方向内側に延出し、前記ベアリングに対して前記軸方向の他方の側から突き当たるベアリング保持部と、
前記ハウジングの前記開口に設けられ、外周面に前記雌ネジ部に締結される雄ネジ部を有し、前記ベアリングを前記軸方向他方の側に向かって押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材が前記開口の内側で回転するのを拘束する回転拘束部と、を有し、
前記回転拘束部は、前記ハウジングの軸方向一方の端面において、前記押さえ部材の外周縁と前記開口の内周縁との境界部に跨ぐよう設けられた少なくとも1つのかしめ部からなる、モータ。
【請求項2】
筒状で、軸方向一方の端部に開口を有するとともに、前記開口の内周面に雌ネジ部を有するハウジングと、
前記ハウジングの径方向の内側に設けられたステータと、
前記ステータの径方向内側に設けられ、駆動対象部材が連結されるロータと、
前記ハウジングに支持され、前記ロータを前記ロータの中心軸回りに回転自在に支持するベアリングと、
前記ハウジングから径方向内側に延出し、前記ベアリングに対して前記軸方向の他方の側から突き当たるベアリング保持部と、
前記ハウジングの前記開口に設けられ、外周面に前記雌ネジ部に締結される雄ネジ部を有し、前記ベアリングを前記軸方向他方の側に向かって押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材が前記開口の内側で回転するのを拘束する回転拘束部と、を有し、
前記回転拘束部は、前記ハウジングの軸方向一方の端面において、前記押さえ部材の外周縁と前記開口の内周縁との境界部に跨ぐように設けられた少なくとも1つの溶接部からなる、
モータ。
【請求項3】
前記かしめ部は、
前記押さえ部材の外周縁及び前記開口の内周縁の一方に設けられ、前記押さえ部材の外周縁及び前記開口の内周縁の他方に向かって前記径方向に突出する凸部と、
前記押さえ部材の外周縁及び前記開口の内周縁の他方に設けられ、前記押さえ部材の外周縁及び前記開口の内周縁の一方に向かって窪み、前記凸部の少なくとも一部が収容される凹部と、
を有する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記ハウジングと前記押さえ部材とが、アルミニウム合金からなる、
請求項1~の何れか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ベアリングは、外輪と、前記外輪の径方向内側に設けられた内輪と、前記外輪と前記内輪との間に設けられた複数のボールと、を備えるボールベアリングであり、
前記外輪は、前記ベアリング保持部と前記押さえ部材とに前記軸方向で突き当たる、
請求項1~の何れか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記雌ネジ部の内径、及び前記雄ネジ部の外径は、前記ベアリング保持部の内径よりも大きい、
請求項1~の何れか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記押さえ部材は、少なくとも前記ベアリングに前記軸方向で突き当たる面に、前記押さえ部材を構成する材料よりも硬い材料からなる被膜が設けられている、
請求項1~の何れか一項に記載のモータ。
【請求項8】
前記軸方向において前記押さえ部材と前記ベアリングとの間に、前記押さえ部材よりも硬い材料からなる介在物が設けられ、
前記介在物は、前記ベアリングとの接触面積よりも、前記押さえ部材との接触面積が大きい、
請求項1~の何れか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの中には、ベアリングを、ハウジングとリングなどの固定部材を用いて保持するものがある。例えば、特許文献1、2には、モータのロータを回転自在に支持するベアリング(軸受)を、ハウジングとリング部材とによって軸方向両側で挟持する構成が開示されている。この構成において、リング部材はボルトによりハウジングに固定され、ベアリングを押さえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-197057号公報
【文献】特開平9-331646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータにおいて、ボールネジ等を駆動する場合、ロータを回転させると、ボールネジがロータ及びボールネジの軸方向に沿って作動する。ボールネジが軸方向に作動すると、ボールネジによって駆動する対象物から、ボールネジを介してロータに軸方向の反力が作用する。この反力や外部から加わる外力等により、ロータを介してリング部材が軸方向に押されると、リング部材をハウジングに固定するボルトが緩んでしまう場合がある。すると、ベアリングとハウジング及びリング部材との間に軸方向の隙間が生じ、モータの作動時にベアリングやロータが軸方向に動いてしまう。リング部材を強固に固定するには、ボルトの軸力を高めれば良いが、これには、ボルトが締結されるハウジングの厚みを増やす等して、ハウジングの強度を高める必要がある。すると、ハウジングの大型化、コストの増加等を招いてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ハウジングの大型化やコストの増加を抑えつつ、ベアリングを押さえる部材が緩むのを抑え、ベアリングにガタ付きが生じるのを抑えることができるモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、筒状で、軸方向一方の端部に開口を有するとともに、前記開口の内周面に雌ネジ部を有するハウジングと、前記ハウジングの径方向の内側に設けられたステータと、前記ステータの径方向内側に設けられ、駆動対象部材が連結されるロータと、前記ハウジングに支持され、前記ロータを前記ロータの中心軸回りに回転自在に支持するベアリングと、前記ハウジングから径方向内側に延出し、前記ベアリングに対して前記軸方向の他方の側から突き当たるベアリング保持部と、前記ハウジングの前記開口に設けられ、外周面に前記雌ネジ部に締結される雄ネジ部を有し、前記ベアリングを前記軸方向他方の側に向かって押さえる押さえ部材と、前記押さえ部材が前記開口の内側で回転するのを拘束する回転拘束部と、を有し、前記回転拘束部は、前記ハウジングの軸方向一方の端面において、前記押さえ部材の外周縁と前記開口の内周縁との境界部に跨ぐよう設けられた少なくとも1つのかしめ部からなる。
また、本発明のモータの別の態様は、筒状で、軸方向一方の端部に開口を有するとともに、前記開口の内周面に雌ネジ部を有するハウジングと、前記ハウジングの径方向の内側に設けられたステータと、前記ステータの径方向内側に設けられ、駆動対象部材が連結されるロータと、前記ハウジングに支持され、前記ロータを前記ロータの中心軸回りに回転自在に支持するベアリングと、前記ハウジングから径方向内側に延出し、前記ベアリングに対して前記軸方向の他方の側から突き当たるベアリング保持部と、前記ハウジングの前記開口に設けられ、外周面に前記雌ネジ部に締結される雄ネジ部を有し、前記ベアリングを前記軸方向他方の側に向かって押さえる押さえ部材と、前記押さえ部材が前記開口の内側で回転するのを拘束する回転拘束部と、を有し、前記回転拘束部は、前記ハウジングの軸方向一方の端面において、前記押さえ部材の外周縁と前記開口の内周縁との境界部に跨ぐように設けられた少なくとも1つの溶接部からなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的なモータによれば、ハウジングの大型化やコストの増加を抑えつつ、ベアリングを押さえる部材が緩むのを抑え、ベアリングにガタ付きが生じるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、例示的な一実施形態のモータの断面図である。
図2図2は、例示的な一実施形態のモータの外観を示す斜視図である。
図3図3は、例示的な一実施形態のモータの押さえ部材をハウジングから取り外した状態を示す斜視図である。
図4図4は、例示的な一実施形態のモータの要部の構成を示す断面図である。
図5図5は、例示的な一実施形態の変形例におけるモータの外観を示す斜視図である。
図6図6は、例示的な一実施形態の他の変形例におけるモータの要部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態のモータの断面図である。図2は、本実施形態のモータの外観を示す斜視図である。図3は、本実施形態のモータの押さえ部材をハウジングから取り外した状態を示す斜視図である。図4は、本実施形態のモータの要部の構成を示す断面図である。

図1に示す様に、モータ10は、ハウジング11と、ステータ20と、ロータ30と、ベアリング35と、フランジ部(ベアリング保持部)14と、押さえ部材40と、を備える。
【0010】
ハウジング11は、円筒状をなした筒状部11aと、筒状部11aの中心軸Jに沿った軸方向の一方(図1において右方)の端部において筒状部11aから径方向内側に延びる端板部11bと、を有する。ハウジング11の筒状部11aの軸方向の他方(図1において左方)の端部11cは、モータ10で駆動する駆動対象となる装置等に接続される。筒状部11aの端部11cは、駆動対象部材100を備える装置に向かって開口する。図2に示す様に、筒状部11aの端部11cには、駆動対象となる装置等にハウジング11を接続するため、中心軸Jに対して径方向外側に延びる接続フランジ部13が設けられる。
【0011】
フランジ部14は、ハウジング11の筒状部11aの内周面から径方向内側に延出する。フランジ部14は、後述するベアリング35に対し、軸方向の他方の側に配置される。このフランジ部14は、中心軸J周りの周方向に連続してもよいし、周方向の一部に間欠的に設けてもよい。
【0012】
図3に示す様に、ハウジング11は、端板部11bの中央部に設けられた開口12を有する。開口12の内周面には、雌ネジ部15が設けられる。
【0013】
図1に示す様に、ステータ20は、ハウジング11の筒状部11aの内側に設けられる。ステータ20は、ロータ30の中心軸Jを中心とする径方向の外側に位置する。ステータ20は、ステータコア21と、ティース部22と、コイル23と、を主に備える。
【0014】
ステータコア21は、筒状部11aの内周面に設けられる。ステータコア21は、円環状の鋼板を軸方向に複数積層することで、全体として筒状に構成される。ティース部22は、ステータコア21の径方向に内側に設けられる。
【0015】
ティース部22は、中心軸J周りの周方向に等間隔をあけて設けられた複数のティース22aを有する。コイル23は、樹脂等の絶縁部材を介してティース22aに巻き回される。
【0016】
ハウジング11の筒状部11aの端部11c側には、複数のコイル23に電気的に接続されたバスバー24が設けられる。バスバー24には、ハウジング11の外部に延出する接続端子25が設けられる。バスバー24及び接続端子25は、ステータ20の各相に対応して、例えば3組が設けられる。各接続端子25には、外部からモータ10に電力を供給する配線(図示無し)が接続される。
【0017】
ロータ30は、ステータ20の径方向内側に設けられる。ロータ30は、ロータ本体31と、永久磁石32と、ロータカバー33と、を備える。
【0018】
ロータ本体31は、軸方向に延びる筒状の筒状体31aと、筒状体31aの軸方向の一方の端部において、筒状部11aから径方向内側に延びる端板31bと、端板31bの中央部に設けられ、軸方向の一方の側に突出した円柱状のボス部31cと、を有する。ロータ本体31は、軸方向他方の側に向かって開口する接続凹部31sを有する。接続凹部31sには、モータ10で回転駆動する駆動対象部材100が接続される。
【0019】
また、筒状体31aの軸方向の他方の端部には、円筒状のヨーク34が設けられる。
【0020】
永久磁石32は、筒状体31aの外周面に、中心軸J周りの周方向に等間隔で複数個が設けられる。 ロータカバー33は、円筒状をなし、ロータ本体31の筒状体31a及び複数の永久磁石32を径方向外側から覆うように設けられる。なお、永久磁石32は、環状であってもよい。また、ロータ本体31が積層鋼板である場合には、複数の永久磁石32は、ロータ本体31に埋め込まれてもよい。
【0021】
ベアリング35は、ロータ本体31のボス部31cの径方向外側に設けられる。ベアリング35は、ボールベアリングであり、円環状の外輪35aと、外輪35aの径方向内側に設けられた円環状の内輪35bと、外輪35aと内輪35bとの間に設けられた複数のボール35cと、を備える。ベアリング35の内輪35bは、ロータ30のボス部31cの外周面に嵌合される。ベアリング35の外輪35aは、後述するフランジ部14と押さえ部材40とによって軸方向両側から挟持されることで、ハウジング11に固定される。これにより、ベアリング35は、ロータ30を中心軸J周りに回転自在に支持する。ベアリング35は、例えば、軸受用の鋼材(鉄系合金)からなる。
【0022】
図3図4に示す様に、ハウジング11の開口12には、軸方向の他方の側に窪む凹部16が設けられる。ベアリング35は、凹部16内に収容される。これにより、フランジ部14は、凹部16内のベアリング35に対し、軸方向の他方の側に配置される。フランジ部14は、ベアリング35の外輪35aに対し、軸方向の他方の側から突き当たる。
【0023】
押さえ部材40は、ハウジング11の開口12に設けられる。押さえ部材40は、中央部に、押さえ部材40を中心軸J周りに回転させるための工具(図示無し)の工具挿入孔42を有する。押さえ部材40は、外周面に雌ネジ部15に締結される雄ネジ部45を有する。図4に示す様に、押さえ部材40は、雄ネジ部45を雌ネジ部15に締結することで開口12に装着され、ベアリング35を軸方向の他方の側に向かって押さえる。これにより、ベアリング35は、軸方向一方の側に設けられた押さえ部材40と、軸方向他方の側に設けられたフランジ部14とによって、軸方向両側から挟持される。
【0024】
押さえ部材40の外径は、ベアリング35の外径よりも大きい。また、押さえ部材40の工具挿入孔42の内径は、ベアリング35の外輪35aの内径よりも小さい。これにより、押さえ部材40は、ベアリング35の外輪35aに対し、軸方向の一方の側から突き当たる。 また、開口12の雌ネジ部15の内径、及び押さえ部材40の雄ネジ部45の外径は、フランジ部14の内径よりも大きい。
【0025】
押さえ部材40は、回転拘束部50Aにより、開口12の内側で回転して雄ネジ部45が雌ネジ部15から緩むことが拘束される。回転拘束部50Aは、少なくとも1つのかしめ部51からなる。かしめ部51は、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁との境界部に設けられる。本実施形態において、かしめ部51は、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁との境界部に、周方向に等間隔をあけた4個所に設けられる。各かしめ部51は、例えば、ポンチ等の工具を、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁とを跨ぐように当て、ハンマーやプレス機等で打撃することで設けられる。
【0026】
かしめ部51は、凸部51aと、凹部51bと、を有する。凸部51aは、押さえ部材40の外周縁に設けられる。凸部51aは、開口12の内周縁の他方に向かって径方向に突出する。凹部51bは、開口12の内周縁に設けられる。凹部51bは、押さえ部材40の外周縁に向かって窪む。凹部51bには、凸部51aの少なくとも一部が収容される。このように、押さえ部材40側の凸部51aが開口12側の凹部51bに収容されることで、押さえ部材40が開口12の内側で回転することが拘束される。なお、かしめ部51は、押さえ部材40側に凹部51bを設け、開口12側に凸部51aを設けるようにしても良い。
【0027】
本実施形態において、ハウジング11、押さえ部材40は、それぞれアルミニウム合金からなる。これにより、ハウジング11の材料の線膨張係数が、押さえ部材40の材料の線膨張係数と近くなる。このため、熱膨張・熱収縮により、押さえ部材40が緩むのを抑えることができる。
【0028】

押さえ部材40の表面には、押さえ部材40を構成する母材の材料(アルミニウム合金)よりも硬い材料からなる被膜61が設けられる。被膜61は、押さえ部材40において、少なくともベアリング35に軸方向で突き当たる部分に設けられていればよい。また、被膜61は、押さえ部材40において、少なくともベアリング35に軸方向で突き当たる面の全体に設けられていてもよい。被膜61は、押さえ部材40の全体の表面を覆ってもよい。このような被膜61としては、例えば、アルマイト処理により形成された酸化アルミニウム被膜が好適である。また、被膜61として、DLC(ダイアモンドライクカーボン)を用いてもよい。このような被膜61は、押さえ部材40を構成する母材(アルミニウム合金)よりも摩擦係数が低いのが好ましい。
【0029】
また、ハウジング11の雌ネジ部15と押さえ部材40の雄ネジ部45との間には、封止材70が設けられる。封止材70としては、嫌気性の樹脂又はシール剤(接着剤)等が好適である。
【0030】
このようなモータ10は、外部の発電機等から接続端子25を介して電流が供給される。供給された電流は、バスバー24を介してコイル23に供給され、コイル23が磁界(交番磁界)を発生する。コイル23で発生した磁界とロータ30の永久磁石32の磁界との相互作用により、ロータ30のロータ本体31が中心軸J周りに回転駆動される。
【0031】
図1に示す様に、モータ10のロータ本体31には、駆動対象部材100が接続される。本実施形態において、駆動対象部材100として、ボールネジ101の端部がロータ本体31に接続される。ボールネジ101は、外周面に螺旋状の溝101aが設けられる。ボールネジ101の径方向外側には、スライド部材102が設けられる。スライド部材102は、筒状で、その内周面に螺旋状の溝102aを有する。ボールネジ101の溝101aとスライド部材102の溝102aとの螺旋状の空間には、複数のボール103が介在する。モータ10によりボールネジ101を中心軸J周りに回転駆動させると、スライド部材102が軸方向に沿ってスライドする。このスライド部材102のスライドにより、駆動対象部材100は軸方向に沿った駆動力を発揮する。
【0032】
上記のように、スライド部材102が軸方向にスライドし、軸方向に沿った駆動力を発揮すると、駆動対象からの反力がスライド部材102に入力される。スライド部材102に入力された軸方向の反力は、ボール103、ボールネジ101、ロータ本体31を介して、ベアリング35に伝達される。 例えば、スライド部材102がロータ本体31から中心軸Jに沿ってロータ本体31から離間する方向にスライドする場合、反力F1は、ベアリング35を押さえ部材40側に押圧する。また、スライド部材102がロータ本体31から中心軸Jに沿ってロータ本体31に接近する方向にスライドする場合、反力F2は、ベアリング35をフランジ部14側に押圧する。
【0033】
押さえ部材40が反力F1によってベアリング35によって繰り返し押圧されても、かしめ部51からなる回転拘束部50Aによって、押さえ部材40が開口12から緩むのを抑える。また、ハウジング11の雌ネジ部15と押さえ部材40の雄ネジ部45との間に設けられた封止材70によって、反力F1でベアリング35が繰り返し押圧されることによる押さえ部材40の緩みの発生が抑えられる。
【0034】
また、押さえ部材40に設けられた被膜61により、反力F1によってベアリング35によって繰り返し押圧されることによる押さえ部材40の摩耗が抑えられる。また、被膜61によって押さえ部材40とベアリング35との間の摩擦係数が低減されることによっても、ベアリング35の押圧による摩耗が抑えられる。
【0035】
本実施形態によれば、モータ10は、外周面に雌ネジ部15に締結される雄ネジ部45が設けられた押さえ部材40と、押さえ部材40が開口12の内側で回転するのを拘束する回転拘束部50Aと、を有する。これにより、押さえ部材40がベアリング35から軸方向に離間する方向に緩むのを抑えることができる。したがって、緩み防止のために押さえ部材40の締付力(軸力)を高めることなく、押さえ部材40の緩みを防ぐことができる。これにより、押さえ部材40の雄ネジ部45が締結される雌ネジ部15が設けられた開口12(ハウジング11)の強度を高める必要を抑え、ハウジング11の大型化、コストの増加等を抑えることができる。その結果、ハウジング11の大型化やコストの増加を抑えつつ、ベアリング35を押さえる押さえ部材40が緩むのを抑え、ベアリング35にガタ付きが生じるのを抑えることができる。
【0036】

本実施形態によれば、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁との境界部に設けられた少なくとも1つのかしめ部51により、押さえ部材40が、開口12の内側で回転するのを拘束される。これにより、押さえ部材40がベアリング35から軸方向に離間する方向に緩むのを抑えることができる。
【0037】
本実施形態によれば、かしめ部51は、押さえ部材40の外周縁に設けられ、開口12の内周縁に向かって径方向に突出する凸部51aと、開口12の内周縁に設けられ、押さえ部材40の外周縁に向かって窪み、凸部51aが収容される凹部51bと、を有する。これにより、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁との境界部にかしめ部51が設けられ、押さえ部材40がベアリング35から軸方向に離間する方向に緩むのを抑えることができる。
【0038】
本実施形態によれば、ハウジング11と押さえ部材40とが、アルミニウム合金からなり、ベアリング35は、鉄系合金からなる。このように、押さえ部材40がベアリング35よりも軟らかい材料からなる場合、押さえ部材40の摩耗が生じやすい。これに対し、ベアリング35よりも軟らかい材料で押さえ部材40が構成される場合であっても、回転拘束部50Aによって、押さえ部材40が開口12から緩むのを抑えることができる。
【0039】
本実施形態によれば、ベアリング35の外輪35aは、フランジ部14と押さえ部材40とに軸方向で突き当たる。このような構成によれば、ベアリング35は、軸方向でのガタ付きを抑えつつ、確実に保持される。
【0040】
本実施形態によれば、押さえ部材40に被膜61が設けられる。被膜61は、押さえ部材40の摩耗を抑制し、ベアリング35を押さえる押さえ部材40が緩むのを抑え、ベアリング35にガタ付きが生じるのを抑えることができる。
【0041】
本実施形態によれば、被膜61によって、押さえ部材40の母材よりも摩擦係数が低減されることによって、ベアリング35の押圧による摩耗が抑えられる。したがって、ベアリング35を押さえる押さえ部材40が緩むのを抑え、ベアリング35にガタ付きが生じるのを抑えることができる。
【0042】
本実施形態によれば、被膜61は、押さえ部材40においてベアリング35と接触する部位を少なくとも覆う。これにより、最小限の被膜61を設けることで、押さえ部材40の摩耗が抑えられる。
【0043】
本実施形態によれば、ハウジング11の雌ネジ部15と押さえ部材40の雄ネジ部45との間に、封止材70が設けられている、これにより、押さえ部材40がベアリング35から軸方向に離間する方向に緩むのを抑えることができる。したがって、緩み防止のために押さえ部材40の締付力(軸力)を高めることなく、押さえ部材40の緩みを防ぐことができる。これにより、押さえ部材40の雄ネジ部45が締結される雌ネジ部15が設けられた開口12(ハウジング11)の強度を高める必要を抑え、ハウジング11の大型化、コストの増加等を抑えることができる。その結果、ハウジング11の大型化やコストの増加を抑えつつ、ベアリング35を押さえる押さえ部材40が緩むのを抑え、ベアリング35にガタ付きが生じるのを抑えることができる。
【0044】
(変形例)

図5は、上記実施形態の変形例におけるモータの外観を示す斜視図である。本変形例のモータは、上述のモータと比較して、回転拘束部50Bの構造のみが異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図5に示す様に、押さえ部材40は、回転拘束部50Bにより、開口12の内側で回転し、雄ネジ部45が雌ネジ部15から緩むことが拘束される。回転拘束部50Bは、少なくとも1つの溶接部52からなる。溶接部52は、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁との境界部に設けられる。本実施形態において、溶接部52は、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁との境界部に、周方向に等間隔をあけた4個所に設けられる。各溶接部52は、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁とを跨ぐように点溶接することで設けられる。また、溶接部52は、押さえ部材40の外周縁と開口12の内周縁との境界部に沿って周方向に連続して設けられていてもよい。このような溶接部52により、押さえ部材40が、開口12の内側で回転することが拘束される。
【0046】
本変形例によれば、上述の実施形態と同様に、押さえ部材40が開口12の内側で回転するのを拘束する回転拘束部50Bを有する。これにより、押さえ部材40がベアリング35から軸方向に離間する方向に緩むのを抑えることができる。したがって、緩み防止のために押さえ部材40の締付力(軸力)を高めることなく、押さえ部材40の緩みを防ぐことができる。これにより、押さえ部材40の雄ネジ部45が締結する雌ネジ部15が設けられた開口12(ハウジング11)の強度を高める必要を抑え、ハウジング11の大型化、コストの増加等を抑えることができる。その結果、ハウジング11の大型化やコストの増加を抑えつつ、ベアリング35を押さえる押さえ部材40が緩むのを抑え、ベアリング35にガタ付きが生じるのを抑えることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、押さえ部材40に被膜61を設けるようにしたが、これに限らない。

図6は、上記実施形態の他の変形例におけるモータの要部の構成を示す断面図である。

図6に示す様に、軸方向において、押さえ部材40とベアリング35との間に、押さえ部材40よりも硬い材料からなる介在物62が設けられる。介在物62は、円環状で、いわゆるワッシャ状をなしている。介在物62は、一面62a側がベアリング35の外輪35aに接触し、他面62b側が押さえ部材40に接触する。介在物62は、ベアリング35との接触面積よりも、押さえ部材40との接触面積が大きい。
【0048】
本変形例によれば、押さえ部材40とベアリング35との間に押さえ部材40よりも硬い材料からなる介在物62が設けられる。さらに、介在物62のベアリング35との接触面積よりも、押さえ部材40との接触面積が大きい。これにより、反力F1によってベアリング35によって繰り返し押圧されたときに、ベアリング35の外輪35aから介在物62を介して押さえ部材40に入力される単位面積あたりの圧力が小さくなる。したがって、押さえ部材40が開口12から緩みにくくなる。

なお、上記の介在物62は、上記実施形態の被膜61と併せて備えることも可能である。また、介在物62は、押さえ部材40よりも硬い材料であればよく、例えば、鋼材(鉄系合金)などの金属材料からなるワッシャなどである。

また、介在物62は、円環状に限らず、中心軸J周りの周方向に間隔をあけて複数個を設けるようにしてもよい。
【0049】

上述した実施形態およびその変形例のモータの用途は特に限定されない。
【0050】
また、上述の実施形態又はその変形例において、ベアリング35としてボールベアリングを例示したが、これに限らない。例えば、ベアリング35として、ニードルローラベアリング等を用いることも可能である。
【0051】
また、上述の実施形態又はその変形例において、被膜61、介在物62、封止材70を設けるようにしたが、これらを省略する構成としてもよい。
【0052】
以上に、本発明の一実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0053】
10…モータ、11…ハウジング、12…開口、14…フランジ部(ベアリング保持部)、15…雌ネジ部、20…ステータ、30…ロータ、35…ベアリング、35a…外輪、35b…内輪、35c…ボール、40…押さえ部材、45…雄ネジ部、50A、50B…回転拘束部、51…かしめ部、51a…凸部、51b…凹部、52…溶接部、61…被膜、62…介在物、70…封止材、100…駆動対象部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6