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特許7275439測量システム、スキャナ装置、および測量方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】測量システム、スキャナ装置、および測量方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20230511BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230511BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
G01D5/347 110A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018185898
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020056614
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】安富 敏
(72)【発明者】
【氏名】古明地 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠之
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-079428(JP,U)
【文献】特開2018-128291(JP,A)
【文献】特開2000-221032(JP,A)
【文献】特開2009-285778(JP,A)
【文献】特開2001-013247(JP,A)
【文献】特開2002-174534(JP,A)
【文献】特開平08-043133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00-15/14
G01D 5/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射ターゲット、およびターゲットユニットの中心軸周りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを備えるターゲットユニットと、
測距光を送光し、反射光を受光して測距を行う測距部、前記測距光を測定範囲に回転照射する走査部、および前記測距光の照射方向を検出する角度検出器を備え、点群データを取得し、かつターゲットスキャンを行って前記反射ターゲットの測定座標を取得するスキャナ装置であって、
前記エンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部、およびエンコーダパターン読取結果に基づいて、エンコーダパターン読取角を演算する演算制御部を備えるスキャナ装置と、
前記ターゲットユニットおよび前記スキャナ装置が、択一的に、鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に取り付けられるように構成され、前記ターゲットユニットまたは前記スキャナ装置を取り付けた際の、それぞれとの前記中心軸周りのオフセット角度が既知である整準台とを備え、
前記演算制御部は、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの前記エンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットの前記オフセット角度に基づいて前記整準台の方向角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの反射ターゲットの測定座標に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の座標を算出し、
前記演算制御部は、前記スキャナ装置の前記オフセット角度および前記整準台の方向角に基いて、前記ターゲットユニットに代えて、前記スキャナ装置を前記整準台に取り付けた場合の前記スキャナ装置の方向角を算出できるようにしたことを特徴とする測量システム。
【請求項2】
測距光を送光し、反射光を受光して測距を行う測距部と、
前記測距光を測定範囲に回転照射する走査部と、
前記測距光の照射方向を検出する角度検出器と、
反射ターゲットを備え、整準台に鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に取り付けられたターゲットユニットに設けられた、前記ターゲットユニットの中心軸回りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部と、
演算制御部とを備え、
整準台に、鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に取り付けられるスキャナ装置であって、
前記整準台は、前記スキャナ装置または前記ターゲットユニットを取り付けた際の前記中心軸回りのオフセット角度がそれぞれ既知とされており
前記演算制御部は、
点群データを取得し、かつ前記反射ターゲットをターゲットスキャンして前記反射ターゲットの測定座標を演算し、
前記整準台に取り付けた前記ターゲットユニットの前記エンコーダパターンの読取結果より、前記エンコーダパターン読取角を演算し、
前記エンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットのオフセット角度に基づいて、前記整準台の方向角を演算し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの測定座標に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の座標を算出し、
前記スキャナ装置の前記オフセット角度および前記整準台の方向角に基いて、前記ターゲットユニットに代えて、前記スキャナ装置を前記整準台に取り付けた場合の、前記スキャナ装置の方向角を算出できるようにしたことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項3】
(a)座標及び方向角が既知とされた点Pに設置した整準台に取り付けられたスキャナ装置が、前記スキャナ装置の前記整準台に対する鉛直中心軸周りのオフセット角度θに基づいて、前記スキャナ装置の方向角を算出するステップと、
(b)前記点Pにおいて、次に観測する点Pi+1に設置された整準台に取り付けたターゲットユニットの反射ターゲットをターゲットスキャンし、前記反射ターゲットの測定座標を演算するステップと、
(c)前記スキャナ装置が、前記点Pi+1に設置された前記ターゲットユニットのエンコーダパターンを読取り、読取り結果に基づいてエンコーダパターン読取角θを演算するステップと、
(d)前記エンコーダパターン読取角θ、および前記ターゲットユニットの前記整準台に対する鉛直中心軸周りのオフセット角度θに基づいて、前記点Pi+1における前記整準台の方向角を演算するステップと、
(e)前記点Pi+1における前記整準台の方向角および前記測定座標に基づいて、前記点Pi+1の座標を演算するステップと、
(f)次に観測する点がある場合に、前記スキャナ装置を、前記ステップ(a)~(e)により座標及び方向角が既知となった前記点Pi+1に移動するステップと、
(g)ステップ(f)の後、i=i+1としてステップ(a)~(e)を繰り返すステップとを備え、
前記ターゲットユニットは、前記反射ターゲットと前記エンコーダパターンを備え、
前記エンコーダパターンは、前記ターゲットユニットの中心軸回りの周方向の角度を示し、
前記整準台は、前記ターゲットユニットおよび前記スキャナ装置を、択一的に、鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に構成され、
前記ターゲットユニットの前記オフセット角度および前記スキャナ装置の前記オフセット角度はそれぞれ既知であることを特徴とする測量方法。
【請求項4】
請求項に記載の測量方法を用いて座標及び方向角が既知となった点において、
(h)前記スキャナ装置が、測定範囲の点群データを取得するステップを備えることを特徴とする測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量方法に関し、より詳細には、地上設置型のレーザスキャナを用いた測量システム、スキャナ装置、および測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上設置型のスキャナ装置は、三脚上に設置され、走査部を介してレーザのパルス光を回転照射し、測定対象物を走査して、パルス光ごとに測距、測角を行うことで、測定対象物の三次元点群データを含む三次元観測データを取得して、地形・地物の三次元形状を把握するために用いられている。
【0003】
地上設置型スキャナ装置で得られる点群データは、スキャナを中心とする座標系である。したがって、複数の観測点で得られた点群データを統合するためには、取得した点群データを共通の絶対座標系に変換する必要がある。このため、スキャナ装置の観測点における絶対座標と、方向角とを測定する必要がある(例えば特許文献1、段落0008等)。
【0004】
このためには後方交会による方法や、後視点・器械点による方法があるが、それらの一般的な手順は、以下の通りである。
【0005】
後方交会による場合:
1.2点以上の既知点に、反射ターゲットを設置する。
2.点群データを観測する場所に、地上設置型スキャナを設置する。
3.各反射ターゲットに対してターゲットスキャンを行い、ターゲットまでの距離および方向角を観測する。
4.点群データの観測(フルドームスキャン)を行う。
5.新たに点群データを観測する場所(新点)に地上設置型スキャナを設置する。
6.必要に応じて新たな既知点に反射ターゲットを設置する。
7.上記3~6を繰り返す。
8.後方交会法によって各器械点座標・器械方向角を求め、各点群観測データを既知点に用いられている座標系座標値に変換する。
【0006】
後視点・器械点法による場合:
1.後視点(既知点)に反射ターゲットを設置し、器械点(既知点でかつ点群データを観測する場所)に地上設置型スキャナを設置する。
2.次に点群データを観測する場所(新点)に反射ターゲットを設置する。
3.後視点の反射ターゲットと新点の反射ターゲットに対して、それぞれターゲットスキャンを行い、ターゲットまでの距離および方向角を観測する。
4.点群データの観測(フルドームスキャン)を行う。
5.2の新点に地上設置型スキャナを設置する。
6.直前の器械点に後視点として反射ターゲットを設置する。
7.上記2~6を繰り返す。
8.最初の後視点から器械点座標(既知)、方位角を求め、順次器械点座標・器械方位角を求め、各器械点における点群観測データを既知点に用いられている座標系座標値に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-004401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの方法では、次の観測点(新点)を設置する場合、新点に反射ターゲットを設置するとともに、後方交会法では2点以上の既知点に、後視点・器械点による方法では後視点である既知点に、反射ターゲットを設置し、ターゲットスキャンを行う必要がある。
【0009】
ターゲットスキャンの所要時間は、1つの反射ターゲットに対して約2分であり、観測作業全体の時間を増大させる要因となっていた。
【0010】
さらに、従来の方法では、屋内等の視通を遮る壁などが多く存在する環境では、特に以下のような問題がある。後方交会法では、新たな器械点から見える範囲に既知点を予め2点以上準備する際に、共有できる既知点が少なくなり、既知点設置作業が多くなり、作業が煩雑になる。
【0011】
また、後視点・器械点法では、必ず後視点が見える範囲に次の器械点(新点)を設置しなければならないため、地上設置型スキャナを観測に最適な箇所に設置できない場合が生じ、必要なデータを取得するために観測回数を増やさなければならず、作業が煩雑になる。
【0012】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、地上設置型スキャナを用いた測量において、既知点または後視点の観測を行わずに、新点を決定することができる測量システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様にかかる測量システムは、反射ターゲットおよびターゲットユニットの中心軸周りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを備えるターゲットユニットと、測距光を送光し、反射光を受光して測距を行う測距部、前記測距光を測定範囲に回転照射する走査部、および前記測距光の照射方向を検出する角度検出器を備え、点群データを取得し、かつターゲットスキャンを行って前記反射ターゲットの測定座標を取得するスキャナ装置であって前記エンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部、およびエンコーダパターン読取結果に基づいて、エンコーダパターン読取角を演算する演算制御部を備えるスキャナ装置と、前記ターゲットユニットおよび前記スキャナ装置、択一的に、鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に取り付けられるように構成され、前記ターゲットユニットまたは前記スキャナ装置を取り付けた際の、それぞれとの前記中心軸周りのオフセット角度が既知である整準台とを備え、前記演算制御部は、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの前記エンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットの前記オフセット角度に基づいて前記整準台の方向角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの反射ターゲットの測定座標に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の座標を算出し、前記演算制御部は、前記スキャナ装置の前記オフセット角度および前記整準台の方向角に基いて、前記ターゲットユニットに代えて、前記スキャナ装置を前記整準台に取り付けた場合の前記スキャナ装置の方向角を算出できるようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の別の態様に係るスキャナ装置は、測距光を送光し、反射光を受光して測距を行う測距部と、前記測距光を測定範囲に回転照射する走査部と、前記測距光の照射方向を検出する角度検出器と、反射ターゲットを備え、整準台に鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に取り付けられたターゲットユニットに設けられた、前記ターゲットユニットの中心軸回りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部と、演算制御部とを備え、整準台に、鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に取り付けられるスキャナ装置であって、前記整準台は、前記スキャナ装置または前記ターゲットユニットを取り付けた際の前記中心軸回りのオフセット角度がそれぞれ既知とされており前記演算制御部は、点群データを取得し、かつ前記反射ターゲットをターゲットスキャンして前記反射ターゲットの測定座標を演算し、前記整準台に取り付けた前記ターゲットユニットの前記エンコーダパターンの読取結果より、前記エンコーダパターン読取角を演算し、前記エンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットのオフセット角度に基づいて、前記整準台の方向角を演算し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの測定座標に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の座標を算出し、前記スキャナ装置の前記オフセット角度および前記整準台の方向角に基いて、前記ターゲットユニットに代えて、前記スキャナ装置を前記整準台に取り付けた場合の、前記スキャナ装置の方向角を算出できるようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の別の態様にかかる測量方法は、(a)座標及び方向角が既知とされた点Piに設置した整準台に取り付けられたスキャナ装置が、前記スキャナ装置の前記整準台に対する鉛直中心軸周りのオフセット角度θに基づいて、前記スキャナ装置の方向角を算出するステップと、(b)前記点Piにおいて、次に観測する点Pi+1に設置された整準台に取り付けたターゲットユニットの反射ターゲットをターゲットスキャンし、前記反射ターゲットの測定座標を演算するステップと、(c)前記スキャナ装置が、前記点Pi+1に設置された前記ターゲットユニットのエンコーダパターンを読取り、読取り結果に基づいてエンコーダパターン読取角θを演算するステップと、(d)前記エンコーダパターン読取角θ、および前記ターゲットユニットの前記整準台に対する鉛直中心軸周りのオフセット角度θTに基づいて、前記点Pi+1における前記整準台の方向角を演算するステップと、(e)前記点Pi+1における前記整準台の方向角および前記測定座標に基づいて、前記点Pi+1の座標を演算するステップと、(f)次に観測する点がある場合に、前記スキャナ装置を、前記ステップ(a)~(e)により座標及び方向角が既知となった前記点Pi+1に移動するステップと、(g)ステップ(f)の後、i=i+1としてステップ(a)~(e)を繰り返すステップとを備え、前記ターゲットユニットは、前記反射ターゲットと前記エンコーダパターンを備え、前記エンコーダパターンは、前記ターゲットユニットの中心軸回りの周方向の角度を示し、前記整準台は、前記ターゲットユニットおよび前記スキャナ装置を、択一的に、鉛直方向の中心軸を共有するように着脱可能に構成され、前記ターゲットユニットの前記オフセット角度および前記スキャナ装置の前記オフセット角度はそれぞれ既知であることを特徴とする。
【0017】
上記態様にかかる測量方法を用いて座標及び方向角が既知となった点において、(h)前記スキャナ装置が、測定範囲の点群データを取得するステップを備えることも好ましい。
【0018】
なお、本明細書において、用語「エンコーダパターン」は、基準点を0°とする角度情報を有する模様である。該模様は、自然光により検出可能な模様だけでなく、偏光により検出可能な模様を含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、地上設置型スキャナを用いた測量において、既知点または後視点の観測を行わずに、新点を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかる測量システムの構成概略図である。
図2】同形態にかかるターゲットユニットを整準台に組み付けた状態を示す斜視図である。
図3】(a)は、同形態のターゲットユニットに係るエンコーダパターン部の拡大斜視図であり、(b)は、該エンコーダパターン部のエンコーダパターンを基準点で切り開いて平面に展開した図(一部省略)である。
図4】同形態に係るスキャナ装置の構成ブロック図である。
図5】同形態に係るスキャナ装置の測距部およびエンコーダパターン読取部における、送受光の仕組みを説明する模式図である
図6】(a)は、同実施の形態に係る整準台の斜視図、(b)は、同整準台の平面図である。
図7】同形態のターゲットユニットの整準台との取付構造を説明する図である。
図8】(a)~(c)は、同実施の形態に係る、ターゲットユニット、整準台およびスキャナ装置の水平角方向の関係を示す図である。
図9】同形態の測量システムを用いた点群データの観測の1つの例のフローチャートである。
図10】(a)~(d)は、上記例の点群データの観測におけるスキャナ装置およびターゲットユニット配置を説明する図である。
図11】同点群データの観測における、エンコーダパターンの読取りのフローチャートである。
図12】(a)は、同形態のスキャナ装置によるエンコーダパターンのスキャン位置を説明する図であり、(b)は、反射したスキャン光を受光光量分布として出力した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、各図において、説明の便宜上構成部品は適宜拡大して模式的に示しており、実際の比率を反映したものではない。
【0022】
実施の形態
1. 測量システムの全体構成
図1は、本発明の実施の形態にかかる測量方法を実施するための測量システム100の概略構成を示す図である。測量システム100は、ターゲットユニット10、スキャナ装置30および整準台70を備える。
【0023】
2. ターゲットユニットの構成
図2に示す通り、ターゲットユニット10は、反射ターゲット11、支持部材12、エンコーダパターン部13、および基盤部14を備え、三脚2に取り付けられた整準台70に着脱可能に取り付けられており、鉛直に保持されている。
【0024】
反射ターゲット11は、例えば、複数の三角錐状のプリズムを放射状に組み合わせて構成された、いわゆる全方位プリズムであり、その全周(360°)から入射する光を、その入射方向と反対の方向に反射する。すなわち、反射ターゲット11は、スキャナ装置30からの測距光を、スキャナ装置30に向けて反射する。反射ターゲット11は、全方位プリズムに限定されず、測量用に用いられる通常のプリズムを使用してもよい。
【0025】
支持部材12は、基盤部14から上方へ一定の長さをもって延びる、例えば、金属製または樹脂製の円柱状の部材である。その中心軸Aが、反射ターゲット11の中心Oおよびエンコーダパターン部13の(ベース13A)中心O図3(a))を通るように、エンコーダパターン部13および反射ターゲット11を固定支持している。また、共通するベース13Aの中心軸と支持部材12の中心軸Aとは、反射ターゲット11の中心Oを通るように構成されている。すなわち支持部材12の中心軸Aが、ターゲットユニット10の中心軸である。
【0026】
エンコーダパターン部13は、短尺円柱形状のベース13Aの側周面に、エンコーダパターン13Bを設けることにより構成されている。ベース13Aは、例えば、支持部材の外周に形成されたねじ部(図示せず)と、ベース13Aの中心に形成されたねじ穴(図示せず)を螺合させる等の手段により、支持部材12と反射ターゲット11との間に固定されている。
【0027】
エンコーダパターン13Bは、角度情報部131と、角度情報部131の上方に隣接する幅情報部132とを備える。
【0028】
図3(a),(b)に示すように、角度情報部131は、例えば、白地に、幅wを有する狭幅の黒の縦線131aと、幅wを有する広幅の黒の縦線131bとを、縦線131aを「0」、縦線131bを「1」として、M系列の循環乱数コードを生成するように、等ピッチpで配置したバーコード状のパターンである。エンコーダパターン13Bは、エンコーダパターン部13の中心から基準点RPへの方向(以下、「エンコーダパターンの基準方向」という。)RDを0°として、スキャナ装置により読み取ったパターンから算出される角度(以下、「エンコーダパターンの読取角」という。)θが、エンコーダパターン13Bの基準方向RDから、支持部材12の中心軸A回りの時計回りの周方向の絶対角度と対応するように構成されている。
【0029】
角度情報部131は、ビット数を変更することにより、所望の分解能を実現可能に構成されている。
【0030】
なお、ビットパターンは、M系列コードに限らず、グレイコード、純2進バイナリコードなどのビットパターンを用いることができ、これらは、公知の手法により生成することができる。しかし、M系列コードを用いると、トラック数を増やさずにビット数を増大することができ、簡単な構成で、高い分解能を実現することができるため有利である。
【0031】
幅情報部132は、所定の高さhを有する黒色帯132aと、同高の白色帯132bとを備える。黒色帯132aと白色帯132bとはそれぞれ、エンコーダパターン部13の周方向の全周に亘り延びている。
【0032】
エンコーダパターン13Bは、模様を形成するために用いられる種々の公知の手法によりエンコーダパターン部13に設けることができる。例えば、エンコーダパターン13Bを、インクジェット印刷などの一般的な印刷等の手法により白い紙に印刷し、これをベース13Aの側周面に貼付することにより設けてもよい。このような手法によれば、極めて安価かつ簡便な方法でエンコーダパターン部13を形成することができる。また、エンコーダパターン13Bを、樹脂製のベース13Aに直接印刷することにより設けてもよい。また、エンコーダパターン13Bを、金属製のベース13Aに、塗装または蒸着等の手法により設けてもよい。
【0033】
なお、図示の例では、幅情報部132は角度情報部131の上方に隣接して配置されている。しかし、角度情報部131と幅情報部132の位置関係は、これに限定されず、幅情報部132が角度情報部131の下方に配置されていてもよい。
【0034】
また、エンコーダパターン部13は、反射ターゲット11の下方に隣接して配置されている。しかし、エンコーダパターン部13と反射ターゲット11との位置関係は、これに限定されず、エンコーダパターン部13が反射ターゲット11の中心Oを通る支持部材12の中心軸Aと同軸となるように配置されていれば、他の配置であってもよい。
【0035】
すなわち、エンコーダパターン部13が反射ターゲット11の上方に配置されていてもよい。また、エンコーダパターン部13と反射ターゲット11とが離間して配置されていてもよい。
【0036】
基盤部14は、支持部材12と同軸に設けられた、支持部材12よりも太径の、例えば金属製または樹脂製の円柱状の部材であり、整準台70の基盤取付穴74と整合する寸法を有する。基盤部14の底面には、後述するように整準台70の係合孔76a,76b,76cとそれぞれ係合する係合突起15a,15b、15c(図7)が、支持部材12の中心軸Aに対して周方向等間隔に3か所設けられている。
【0037】
また、基盤部14の側周面には、位置決め突起16が径方向に突出するように設けられている。
【0038】
3. スキャナ装置の構成
図4は、スキャナ装置30の構成ブロック図である。スキャナ装置30は、いわゆるレーザスキャナであり、測距部31、エンコーダパターン読取部32、回動ミラー33、鉛直回転駆動部34、鉛直角検出器35、水平回転駆動部36、水平角検出器37、記憶部38、表示部39、操作部41、演算制御部42および外部記憶装置43を備える。
【0039】
また、スキャナ装置30は、外観上、図1に示すように、ターゲットユニット10と同様に、三脚2に取り付けられる整準台70を介して設置される。スキャナ装置30は、整準台70に着脱可能に取り付けられる基盤部6aと、基盤部6aに軸H-H回りに360°水平回転可能に設けられた托架部6bと、托架部6bの凹部8に、軸V-V回りに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡部6cとを備える。
【0040】
基盤部6aには、水平回転駆動部36および水平に回転させる軸H-H回りの回転角を検出する水平角検出器37が収納されている。水平回転駆動部36は、例えばモータであり、水平角検出器37は例えばロータリエンコーダである。水平回転駆動部36は、水平に回転させる軸H-Hを中心に托架部6bを回転し、水平角検出器37は、托架部6bの水平に回転させる軸H-Hの基盤部6aに対する回転角を検出し、検出信号を演算制御部42に出力する。
【0041】
また、基盤部6aの底部は、ターゲットユニット10の基盤部14の底部と同様の構成を有する。すなわち、整準台70の基盤取付穴74と整合する円柱形状に成形され、その底面に、整準台70の係合孔76a,76b,76cと整合する形状の係合突起61a,61b,61c(図8(c)参照)が設けられている。また、その側周面には、位置決め突起62が設けられている。
【0042】
托架部6bには、鉛直回転駆動部34、鉛直角検出器35、記憶部38および演算制御部42が設けられている。また、表示部39および操作部41は托架部6bの外部に設けられている。
【0043】
鉛直回転駆動部34は、モータであり、鉛直に回転させる軸V-V上に設けられている。鉛直回転駆動部34の回転により、望遠鏡部6cが鉛直方向に全周回転されるように構成されている。鉛直角検出器35は、例えばロータリエンコーダである。鉛直角検出器35は、鉛直に回転させる軸V-V上に設けられ、該軸V-Vの回りの回転角を検出し、検出信号を演算制御部42に出力する。
【0044】
望遠鏡部6cには、測距部31およびエンコーダパターン読取部32が収容されている。望遠鏡部6cの内部には、回動ミラー33を備える鏡筒(図示せず)が設けられており、この鏡筒を水平に回転させる軸は、托架部6bの水平に回転させる軸H-Hと同軸である。鏡筒は、望遠鏡部6cに適宜の手段で取り付けられている。
【0045】
図5は、本実施の形態の測距部31およびエンコーダパターン読取部32における、測距光3およびエンコーダパターン読取光4の送受光の仕組みを説明する図である。測距部31は、測距光送光部44、測距光受光部45、ビームスプリッタ(図示せず)、測距光用ミラー46、測距光用集光レンズ47および回動ミラー33を有する測距光用送受光光学系48を備える。測距光送光部44は、発光素子(図示せず)を備える。
【0046】
発光素子は、例えば半導体レーザ等であり、測距光としてパルスレーザ光線を出射する。出射された測距光3は、測距光用ミラー46で反射され、さらに回動ミラー33によって反射されて測定対象物に照射される。また、回動ミラー33は、両面ミラーであり、鉛直回転駆動部34により駆動され鉛直回転軸V-V周りに回転する。したがって、回動ミラー33と鉛直回転駆動部34により測距光を走査する走査部63を構成している。また、回動ミラー33は、例えば矩形または円形の板状の孔あき両面ミラーであるが、これに限定されない。
【0047】
ついで、測定対象物により再帰反射された測距光3aは、回動ミラー33、測距光用ミラー46及び測距光用集光レンズ47を経て、測距光受光部45に入射する。測距光受光部45は、例えばフォトダイオードなどの受光素子である。また、測距光受光部45には、先述のビームスプリッタにより分割された測距光の一部が内部参照光(図示せず)として入射するようになっており、反射測距光3aおよび内部参照光に基づいて、演算制御部42により、照射点までの距離を求める。
【0048】
回動ミラー33の鉛直方向の回転と、前記托架部6bの水平方向の回転との協働により、測距光が2次元に走査される。測距部31によりパルス光毎の測距データが取得され、鉛直角検出器35および水平角検出器37によりパルス光ごとの測角データが取得される。鉛直方向に天頂を含む270°、水平方向に360°回転することでフルドームスキャンが実行され、測定範囲の3次元点群データが取得される。
【0049】
一方、エンコーダパターン読取部32は、読取光送光部51、読取光受光部52、読取光用ミラー53および読取光用集光レンズ54を有する読取光用送受光光学系55を備える。読取光送光部51は、発光素子(図示せず)を備え、測距光3とは異なる波長の光線、例えば可視光等をエンコーダパターン読取光4として出射する。出射されたエンコーダパターン読取光4は、読取光用ミラー53によって反射される。さらに回動ミラー33によって反射されてエンコーダパターン13Bに照射される。読取光4を反射するのは、回動ミラー33の測距光3を反射する面の裏面である。
【0050】
ついで、エンコーダパターン13Bで反射された読取光4aは、回動ミラー33、読取光用ミラー53および読取光用集光レンズ54を経て、読取光受光部52に入射する。読取光受光部52は、例えば、アバランシェフォトダイオードなどの受光素子である。読取光受光部52に入力された受光信号は、受光光量分布として演算制御部42に出力される。
【0051】
記憶部38は、例えばハードディスクドライブであり、スキャナ装置30を作動させるための各種プログラムを格納している。例えば、測距および測角を実行するためのシーケンスプログラム、走査部を駆動して測距光を回転照射し、各点について、測距、測角の演算を行って点群データを取得する点群データ測定プログラム、ターゲット周辺をスキャニングし、反射ターゲット11の座標を演算するターゲットスキャンプログラム、エンコーダパターンを読取り、エンコーダパターン読取角θを演算するエンコーダパターン読取角演算プログラム、エンコーダパターン読取角θに基づいて方向角を演算する方向角演算プログラム、反射ターゲット11の測定座標およびスキャナ装置の方向角に基づいて、スキャナ装置30の座標を演算する座標演算プログラム等のプログラムを格納している。また、記憶部38は、エンコーダパターンが示すビットパターンと角度との相関を、例えばテーブルとして格納している。
【0052】
表示部39は、例えば液晶ディスプレイ等であり、演算制御部42により得られた作業状況データや測定結果等を表示する。
【0053】
操作部41は、タッチディスプレイやキーボード等であり、スキャナ装置に対する動作指令の入力を行う。
【0054】
演算制御部42は、例えばCPU、ROM、RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。演算制御部42は、測距部31、エンコーダパターン読取部32、鉛直回転駆動部34、鉛直角検出器35、水平回転駆動部36、水平角検出器37、記憶部38、表示部39、および操作部41と電気的に接続されている。
【0055】
演算制御部42は、鉛直角検出器35、水平角検出器37からの角度検出信号が入力され、また、測距光受光部45、読取光受光部52からの受光信号が入力される。また。作業者の操作による操作部41からの信号が入力される
【0056】
また、演算制御部42は、測距光送光部44、読取光送光部51、鉛直回転駆動部34、水平回転駆動部36を駆動すると共に、作業状況、測定結果等を表示する表示部39を制御する。
【0057】
また、演算制御部42は、機能部として、反射ターゲットの周辺の範囲に対して、集中的に測距光を照射して測距・測角するターゲットスキャンを実行し、該測距測角データから、反射ターゲットの測定座標を算出するターゲットスキャン実行部56と、測定対象物(範囲)に測距光を回転照射して各点について、測距・測角した結果を演算し、測定範囲の点群データを取得する点群データ取得部57と、エンコーダパターン読取結果から、エンコーダパターン読取角θを演算するエンコーダパターン読取角演算部58と、ターゲットユニット10のオフセット角θおよびスキャナ装置30のオフセット角θおよびエンコーダパターン読取角θに基づいて、方向角を演算する方向角演算部59と、反射ターゲット11の測定座標とスキャナ装置30の方向角、新点の地図座標系の座標を演算する座標演算部60とを備える。
【0058】
外部記憶装置43は、例えばメモリカード、ハードディスクドライブ、USBメモリ等であり、演算制御部42に、固定的に設けられていてもよく、取り外し可能に設けられていてもよい。また、外部記憶装置43は、反射ターゲット測定データ、点群データ、測角データ、エンコーダパターン読取データ等を格納している。
【0059】
4. 整準台の構成
整準台70は、ターゲットユニット10またはスキャナ装置30を択一的に設置するための台座であり、自動整準機能を有する。整準台70は、図6(a)に示すように、三脚を取りつけるための三脚取付座部71と、整準装置本体72と三脚取付座部71と整準装置本体72とを連結する3個の整準ネジ73とから大略構成されている。
【0060】
整準装置本体72は、図示しないチルトセンサ、整準ネジ駆動機構、制御部等を備え、チルトセンサの傾斜姿勢情報に基づいて、整準装置本体72が水平となるように駆動機構を自動的に制御して整準ネジ73を調節するように構成されている。整準装置本体72の自動制御機構としては、公知の構成を適宜用いることができるので、その詳細な説明は省略する。また、整準装置本体72には、水平状態を確認するための水準器77が設けられている。
【0061】
図6(b)に示すように、整準装置本体72の上面には、ターゲットユニット10またはスキャナ装置30を設置するための、基盤取付穴74が開口している。基盤取付穴74には、その中央部に設けられた求心レーザ装置(図示せず)の設置箇所75を中心として、周方向の120°毎に間隔をあけて3個の係合孔76a,76b,76cが設けられている。また、整準装置本体72の外縁部には、1箇所の合わせ溝78が形成されている。
【0062】
図7に示すように、ターゲットユニット10は、係合孔76a,76b,76cおよび合わせ溝78により、周方向に位置決めされて、鉛直方向の中心軸を共有するように整準台70に取り付けられる。また、ターゲットユニット10は、図示しない板バネのロック機構が、1つの係合突起15aを押圧することにより、整準台70に着脱可能にロックされる。
【0063】
スキャナ装置30の整準台70への取付構造も、ターゲットユニット10の取付構造と同様である。
【0064】
この結果、図8(b)に示す状態の整準台70にターゲットユニット10を設置すると、エンコーダパターン部13(すなわち、ターゲットユニット10)の基準方向RDは、整準台70の基準方向D(以下、整準台70の方向D」という。)から、角度θ(以下、「ターゲットユニット10のオフセット角度θ」という。)だけ、周方向反時計回りにずれた方向となる(図8(a))。図8において、符号O、O、Oはそれぞれターゲットユニット10、整準台70、スキャナ装置30の中心を示す。
【0065】
同様に、図8(b)に示す状態の整準台70にスキャナ装置30を設置すると、スキャナ装置30の基準方向D(以下、「スキャナ装置30の方向DS」という。)は、整準台70の方向Dから、所定の角度θ(以下、「スキャナ装置30のオフセット角度θ」という。)だけ周方向反時計回りにずれた方向となる(図8(c))。
【0066】
ここで、ターゲットユニット10の基準方向RD、スキャナ装置30の方向D,整準台70の方向Dの北に対する右回りの角度が、それぞれターゲットユニット10の方向角、スキャナ装置30の方向角、整準台70の方向角である。
【0067】
ターゲットユニット10のオフセット角度θおよびスキャナ装置30のオフセット角度θは、予め測定または設計により既知とされ、記憶部38に記憶されている。スキャナ装置30を、既知の点に設置し、方向角を既知の値αとした状態でエンコーダパターン読取角θを読み取ると、エンコーダパターン読取角θは、αの関数で表せる。したがって、エンコーダパターン読取角θとターゲットユニット10のオフセット角度θとに基づいて整準台70の方向角を求めることができる。さらに、整準台70の方向角が求まれば、スキャナ装置30のオフセット角度θに基づいて、整準台70に取り付けたスキャナ装置30の方向角を求めることができる。
【0068】
上記の整準台70の方向Dおよびスキャナ装置30の方向Dsの設定は、本実施の形態における一例であるが、上記のように整準台70の合わせ溝78および係合孔76a,76b,76cにより、周方向に位置決めし、中心軸Aまわりの水平角を所定の角度とすることにより、エンコーダパターン部13の基準方向RD、整準台70の方向DL、スキャナ装置30の方向Dを一定の関係にすることが可能となる。
【0069】
また、ターゲットユニット10の反射ターゲット11およびスキャナ装置30と整準台70とは、それぞれ、鉛直方向の関係が固定されており、また、鉛直方向の位置関係は、既知とされており、整準台70に取り付けた反射ターゲット11の中心座標を求めることにより、整準台70の座標は求められ、整準台70の座標に基づいて、整準台70に取り付けたスキャナ装置30の座標も求められるようになっている。
【0070】
5. 観測点の測量および点群データの観測
5-1.全体の動作
図9は、本実施の形態に係る測量システム100を用いて、観測点の測量および点群データの観測を行う場合のフローチャートである。
【0071】
例として、図10に示す空間の点群データを観測する場合を説明する。図中、▲は既知点を、○新点である観測点を、●は測定により座標が求められた観測点を示し★は、点群データの取得(フルドームスキャン)が完了した点を示す。各点には、予め三脚に取り付けられた整準台70が取り付けられている。また各点に付した英字T,Sは、それぞれ各点の整準台70に、ターゲットユニット10またはスキャナ装置30のいずれが取り付けられているかを示す。また、矢印は、矢印の始点に設定したスキャナ装置30により、終点に設置した反射ターゲット11をターゲットスキャンしたことを示す。
【0072】
なお、ターゲットユニット10のオフセット角度θおよびスキャナ装置30のオフセット角度θsの値は、測定または設計により予め既知とされ、記憶部38に記憶されている。また、最初の観測点Pに設置した整準台の座標および方向角は後視点・器械点法により求めるものとする。
【0073】
観測を開始すると、まず、ステップS101で、既知点である最初の観測点P(x,y,z)に設置した整準台70にスキャナ装置30を取り付ける。この時、後視点Aにターゲットユニット10を設置する(図10(a))。
【0074】
次に、ステップS102で、後視点Aの反射ターゲット11を、スキャナ装置30によりターゲットスキャンし、反射ターゲット11の測定座標を取得する。
【0075】
次に、ステップS103では、演算制御部42が、点Pにおけるスキャナ装置の方向角と、地図座標系の座標P(x,y,z)を演算する。
【0076】
ステップS101~S103は従来の方法と同様であり、後視点・器械点に限らず、既知点を2点以上準備し、座標未知の点を最初の観測点として、後方交会法により行ってもよい。この場合はステップS102では既知点のターゲットスキャンを行い、ステップS103で、その結果に基づいて、最初の観測点P(に設置したスキャナ装置30)の方向角を演算し、地図座標系の座標を演算する。
【0077】
次に、ステップS104で、作業者は、次の観測点となる新点Pに設置した整準台70にターゲットユニット10(反射ターゲット11)を取り付け、その旨を操作部より入力する。
【0078】
次に、ステップS105では、点Pに設置した反射ターゲット11を、スキャナ装置30が、ターゲットスキャンを行い、反射ターゲット11中心の測定座標を取得する。
【0079】
次に、ステップS106では、座標演算部60が、点Pのターゲットスキャン結果および点Pの方向角に基づいて、点Pの(ターゲットユニット設置点の)地図座標系の座標(x ,y,z)を演算する。
【0080】
次に、ステップS107では、スキャナ装置30は、エンコーダパターン13Bの読取りを行い、エンコーダパターン読取角θを演算する。エンコーダパターン13Bの読取りの詳細については、後述する。
【0081】
次に、ステップS108では、方向角演算部59が、エンコーダパターン読取角θおよびターゲットユニット10のオフセット角度θ に基づいて、点Pにおける整準台70の方向角を演算する。
【0082】
次にステップS109で、スキャナ装置30が点群データ取得モードを実行し、フルドームスキャンを行う。
【0083】
次に、ステップS110で、スキャナ装置30は、次に測定する点があるか否かを判断する。
【0084】
次に測定する点がある場合(Yes)、ステップS111では、作業者が、点Pの整準台70からターゲットユニット10を取り外し、次の観測点Pの整準台70にターゲットユニット10を取り付ける。点Pのターゲットユニット10は新たなターゲットユニットでもよい。また、この時、スキャナ装置30が、作業者に対して、スキャナ装置の移動を促すメッセージなどを表示部39に表示してもよい。そして、作業者がスキャナ装置30を点P の整準台70から取り外し、点P の整準台70に取り付ける。
【0085】
ステップS111で作業者により、操作部41より移動の完了が入力されると、スキャナ装置30は、器械点の情報をi=として、ステップS112に移行し、ステップS108で取得した整準台70の方向角、およびスキャナ装置30のオフセット角θに基づいて、スキャナ装置の方向角を演算する。この時、ステップS108で、整準台70の方向角を演算するのを省略し、エンコーダパターン読取角θ、ターゲットユニット10のオフセット角度θ 、およびスキャナ装置30のオフセット角度θsから直接的にスキャナ装置30の方向角を演算してもよい。
【0086】
次に、処理は、ステップS104に戻る(図10(b))。ここで、作業者は、点Pの整準台70にターゲットユニット10を取り付けて、スキャナにその旨を入力する。
【0087】
このように、ステップS110で次の観測点がなくなるまで、ステップS111,S112およびステップS104~S110を繰り返し、図10(c)、図10(d)に示すように、点P,Pと測定を進める。
【0088】
そして、ステップS110で次の観測点がない場合(No)、観測を終了する。
【0089】
なお、ターゲットスキャン、フルドームスキャンおよびエンコーダパターンの読取りおよび各種演算により得られる方向角、座標データ等は、観測点の情報に関連付けられて記憶部38に保存されるか、外部記憶装置43に出力される。あるいは、スキャナ装置30に通信部を設けて、これらのデータをパーソナルコンピュータ等の外部データ処理装置に送信するように構成されていてもよい。
【0090】
各観測点における点群データ、観測点の座標データ、およびスキャナ装置30の方向角データを、外部データ処理装置に移行した後、点群データが絶対座標系に変換され、統合処理により3次元形状データが得られる。
【0091】
なお、図10(c)に示すように、点Pにおいて、ターゲットユニット10を複数用い、それぞれ点Pおよび点Pに取り付けて、点Pの座標および方向角の取得を行った後に連続して破線に示すように点Pについて座標および方向角の取得をおこなってもよい。
【0092】
本実施の形態に係る測量システムによれば、座標および方向角が既知となった状態で、ターゲットスキャンにより新点の座標を取得し、エンコーダパターン読取角を取得すれば、後視点または既知点をターゲットスキャンしなくても、新点の整準台の方向角を取得し、整準台に取り付けたスキャナ装置の方向角を取得することができる。したがって、最初の観測点を除き、新点の座標および方向角を求めるために後視点または既知点をターゲットスキャンする必要がないので、測量にかかる時間を短縮することができる。
【0093】
たとえば、図10の空間での測量を仮定した場合、従来の後視点・器械点法によれば、各点での後視点の観測が必要であるため、ターゲットスキャンを11回(点P,P,Pについて各2回、点Pについて3回、点Pについて各1回)行う必要があるが、本実施の形態では、6回行うのみでよい。したがって、ターゲットスキャンにかかる時間を短縮することでき、この結果、観測全体にかかる時間を短縮することができる。
【0094】
また、新点の座標および方向角を求めるために、後視点または既知点のターゲットスキャンをする必要がないので、このことは、特に、図10のような、視通の悪い、屋内などの空間で有利である。
【0095】
というのも、例えば、従来の後方交会法で図10のような空間での測量を仮定した場合、新点ごとに、2点以上の既知点を準備することは困難である。既知点を2点以上準備するためには、観測点を増やす必要があり、観測点の設置が煩雑になり、観測全体にかかる時間が増大する。一方、本実施の形態によれば、新点と次の新点との間に視通があればよく、新点を作成するための制約が少ない。このため、必要以上に既知点設置作業や、観測作業を行う必要がない。
【0096】
また、上記のように、本実施の形態に係る測量システムにより、座標および方向角が既知となった観測点に設置されたスキャナ装置により点群データを取得するようにすれば、点群データの観測全体を効率的に行うことができるので特に有利である。
【0097】
5-2. エンコーダパターンの読取り
ここで、ステップS10のエンコーダパターン13Bの読取りについて、図11,12を参照しながら説明する。
【0098】
エンコーダパターンの読取りを開始すると、ステップS201で、演算制御部42の制御により、読取光送光部51は読取光4を送出し、エンコーダパターン部13の周囲を、例えば図12(a)に示すように高さh間隔で走査(スキャン)する。
【0099】
演算制御部42は、ステップS105で取得した、反射ターゲット11の測距データおよび既知であるエンコーダパターン部13の寸法に基づいて、スキャン条件を設定する。
【0100】
例えば、高さhは、例えば幅情報部132の黒色帯132aおよび白色帯132bの高さh図3(b))よりも短くかつ、縦線131a,131bの高さh図3(b))の半分h/2よりも短いと、幅情報部132および角度情報部131の両方を確実にスキャンすることができるので好ましい。
【0101】
次に、ステップS202では、エンコーダパターン13Bで反射された読取光を、読取光受光部52で受光し、受光信号を受光光量分布として、演算制御部42に出力する。エンコーダパターンの黒色部分に反射した光は弱い光として、白色部分に反射した光は強い光として受光されるため、受光光量分布は、黒色部分では値が小さくなり、白色部分では値が大きくなる。したがって、図12(a)におけるI~Vの各位置における受光光量分布は、例えば、図12(b)のようになる。
【0102】
次に、ステップS203では、ステップS202で取得した受光光量分布から、幅情報部132の読取り結果を抽出する。具体的には、所定のしきい値よりも小さな受光光量に対応する領域を黒色部分と判断し、所定のしきい値よりも大きな受光光量に対応する領域を白色部分と判断し、黒色部分と白色部分の少なくとも一方が、ステップS105で取得したターゲットスキャン結果、および既知のエンコーダパターン部の寸法から算出される、エンコーダパターン部の直径Lに相当する長さで連続している領域を幅情報部132と判断する。
【0103】
この結果、図12(b)においては、画素列IおよびIIが幅情報部132に相当することがわかる。そして、検出されたエンコーダパターン13Bの幅(エンコーダパターン部13の直径)Lから、エンコーダパターン13Bの中心位置Aを特定する。
【0104】
次に、ステップS204では、エンコーダパターン読取角演算部58は、ステップS202で取得した受光光量分布から、各位置における受光光量分布の相関を算出し、相関性が所定の値よりも高いものを、角度情報部131の読取り結果として抽出する。
【0105】
図12(b)の例では、スキャン位置III~Vは、受光光量分布のパターンが高い相関性を有している。したがって、スキャン位置III~Vの受光光量分布が角度情報部131の読込み結果であることがわかる。
【0106】
そして、抽出したスキャン位置III~Vの受光光量分布を垂直方向に加算して平均値を算出する。その結果が所定のしきい値よりも小さな場合を黒色部分と判断し、黒色部分の幅を求める。次に、求めた幅の値が、エンコーダパターン13Bの狭幅、広幅のいずれに該当するかを判断し、狭幅と判断されたものをビット「0」すなわち縦線131a、広幅と判断されたものをビット「1」すなわち縦線131bとして読み取る。
【0107】
このように、複数の位置の平均値として受光光量分布を算出すると、例えば、スキャン位置IVのように、受光光量分布の水平位置がずれるといったノイズが生じたとしても、このずれの影響を低減し、読取り精度を向上することができる。
【0108】
なお、エンコーダパターン部13は、円柱状であるため、縦線幅w,wおよびピッチpが、中心から遠ざかるにつれて、実際の幅よりも狭く観察される。例えば、図3(a)において、中央付近の広幅の縦線131bは、その幅w2aが、図3(b)に示す展開図における広幅の縦線131bの幅(実際の幅)wと同様の幅で観察される。一方、中央部から最も遠い広幅の縦線131bは、その幅w2bが、実際の幅wよりも狭く観察される。幅wおよびピッチpについても同様である。従って、幅wおよびwは、配置によって観察される幅が変化するという影響を考慮して幅wと幅wの変化の範囲が重複しないように設定されていることが好ましい。
【0109】
次に、ステップS205では、エンコーダパターン読取角演算部58が、ステップS203で求めたエンコーダパターン13Bの中心位置Aを中央として左右に伸びる所定幅Rに含まれるビットパターン、すなわち所定幅Rの領域に含まれる所定のビット数(例えば、10本。図示の例では「11010010100」のビットパターンを示す。)の縦線で示されるビットパターンと、記憶部38に記憶されたビットパターンと角度との相関とを対比することにより、エンコーダパターンの読取角θを算出する。次に、処理は、ステップS107に移行する。
【0110】
6. 変形例
上記実施の形態については、以下のような変形を加えることも可能である。
例えば、エンコーダパターン13Bを、黒白に限らず、明確なコントラスト有する色彩の組み合わせによりエンコーダパターンを構成してもよい。また、可視光に限らず、偏光により識別可能なエンコーダパターンとして構成し、エンコーダパターン読取光受光部の光路上に偏光フィルタを備えて、パターンを認識できるように構成してもよい。
【0111】
また、エンコーダパターン読取部に代えて、カメラを備え、エンコーダパターン13Bの周辺画像を撮像し、その画素値のパターンから、エンコーダパターンを読み取るように構成してもよい。
【0112】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能である。また、上記の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
10 ターゲットユニット
11 反射ターゲット
13B エンコーダパターン
30 スキャナ装置
31 測距部
32 エンコーダパターン読取部
35 鉛直角検出器(角度検出器)
37 水平角検出器(角度検出器)
42 演算制御部
63 走査部
70 整準台
100 測量システム
図1
図2
図3
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図5
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図12