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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】測温プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/08 20210101AFI20230511BHJP
【FI】
G01K1/08 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020012062
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021117167
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 克清
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-242601(JP,A)
【文献】実開昭55-097540(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/08,7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が閉塞した有底筒状を有し、焼成体で形成された内部保護管と、
前記内部保護管の内部に配された、測温対象物の温度を測定する測温部を有する温度計と、
前記内部保護管を内部に配する筒状を有し、セラミックスで形成された外部保護管と、
を有し、
前記内部保護管は、軸方向に配列した複数の小管部材と、隣接した2つの前記小管部材を一体に係合する係合手段と、を有し、
前記係合手段が、
軸方向にのびる板状を有するとともに、隣接した2つの前記小管部材の隣接した端部同士をつなぐように前記小管部材の外周に配置された係止板と、
前記係止板を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が一方の前記小管部材に係止する第1ピンと、
前記係止板を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が他方の前記小管部材に係止する第2ピンと、
からなることを特徴とする測温プローブ。
【請求項2】
前記外部保護管は、軸方向に配列した複数の管部材と、隣接した2つの前記管部材を接合する接合材と、を有し、
2つの前記管部材が接合した接合部は、前記測温プローブにおける軸方向での位置が、2つの前記小管部材が係合した係合部と異なっている請求項1記載の測温プローブ。
【請求項3】
先端部が閉塞した有底筒状を有し、焼成体で形成された内部保護管と、
前記内部保護管の内部に配された、測温対象物の温度を測定する測温部を有する温度計と、
前記内部保護管を内部に配する筒状を有し、セラミックスで形成された外部保護管と、
を有し、
前記内部保護管は、軸方向に配列した複数の小管部材と、隣接した2つの前記小管部材を一体に係合する係合手段と、を有し、
前記外部保護管は、軸方向に配列した複数の管部材と、隣接した2つの前記管部材を接合する接合材と、を有し、
2つの前記管部材が接合した接合部は、前記測温プローブにおける軸方向での位置が、2つの前記小管部材が係合した係合部と異なっていることを特徴とする測温プローブ。
【請求項4】
前記係合手段は、
隣接した2つの前記小管部材の近接した端部のそれぞれに形成された雄ネジ部と、
2つの前記雄ネジ部の一方に螺合する雌ネジ部を一方の端部に、2つの前記雄ネジ部の他方に螺合する雌ネジ部を他方の端部に、それぞれ有する筒状の係合筒と、
からなる請求項3記載の測温プローブ。
【請求項5】
前記係合手段は、
軸方向にのびる板状を有するとともに、隣接した2つの前記小管部材の隣接した端部同士をつなぐように前記小管部材の外周に配置された係止板と、
前記係止板を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が一方の前記小管部材に係止する第1ピンと、
前記係止板を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が他方の前記小管部材に係止する第2ピンと、
からなる請求項3記載の測温プローブ。
【請求項6】
隣接した2つの前記小管部材のそれぞれは、軸方向に垂直な面に沿って形成された端面を有し、
対向する2つの前記端面が密着した状態で係合される請求項1~5のいずれか1項に記載の測温プローブ。
【請求項7】
前記係合手段は、
隣接した2つの前記小管部材のうち、一方の前記小管部材の端部に形成された雄ネジ部と、
他方の前記小管部材の端部に形成された、前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部と、
からなる請求項3記載の測温プローブ。
【請求項8】
前記焼成体は、金属とセラミックスの複合材料,Si,サイアロンの少なくとも1種よりなる請求項1~7のいずれか1項に記載の測温プローブ。
【請求項9】
不定形耐火物よりなり、前記外部保護管の外周面を被覆する、保護キャスタブルを有する請求項1~8のいずれか1項に記載の測温プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測温対象物の温度を測定する測温プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼(金属溶湯)のような高温の測温対象物の温度の測定には、測温プローブが用いられる。測温プローブは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の測温プローブは、測温対象物に接触する有底状の先端部及び中空室を形成する筒部をもつ内部保護管と、中空室に挿入され測温対象物の温度を測定する熱電対要素と、筒部の外周壁面を被覆する保護スリーブ(外部保護管)とを有する。この測温プローブは、溶鋼等の測温対象物に先端部を接触(挿入・浸漬)することで、内部保護管の先端部を介して熱電対要素で温度を測定する。
近年、溶鋼(金属溶湯)の湯面(スラグライン)から、より深い位置における温度を測定することが求められている。すなわち、軸方向の長さが長い測温プローブが求められている。
【0004】
しかし、軸方向の長さが長い測温プローブは、その製造が困難となるという問題があった。具体的には、測温プローブの内部保護管は、加熱炉で焼成・焼結して製造される。この製造方法では、加熱炉のサイズより長い内部保護管の製造ができなかった。内部保護管の製造のためだけに大きな加熱炉を製造することは、コストの大幅な上昇を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-169798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、コストの増加を抑えつつ、軸方向の長さが長い測温プローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の測温プローブは、先端部が閉塞した有底筒状を有し、焼成体で形成された内部保護管と、前記内部保護管の内部に配された、測温対象物の温度を測定する測温部を有する温度計と、前記内部保護管を内部に配する筒状を有し、セラミックスで形成された外部保護管と、を有し、前記内部保護管は、軸方向に配列した複数の小管部材と、隣接した2つの前記小管部材を一体に係合する係合手段と、を有し、前記係合手段が、軸方向にのびる板状を有するとともに、隣接した2つの前記小管部材の隣接した端部同士をつなぐように前記小管部材の外周に配置された係止板と、前記係止板を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が一方の前記小管部材に係止する第1ピンと、前記係止板を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が他方の前記小管部材に係止する第2ピンと、からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の測温プローブは、金属とセラミックスとを含有する材料等よりなる焼成体で形成された内部保護管が複数の小管部材を係合手段で係合して形成される。この構成によると、長さが過剰に長い小管部材を用いることなく、全体の長さが長い内部保護管を形成できる。この結果、本発明の測温プローブは、コストの増加を抑えつつ、軸方向の長さが長い測温プローブとなる効果を発揮する。
【0009】
本発明の測温プローブは、先端部が閉塞した有底筒状を有し、焼成体で形成された内部保護管と、前記内部保護管の内部に配された、測温対象物の温度を測定する測温部を有する温度計と、前記内部保護管を内部に配する筒状を有し、セラミックスで形成された外部保護管と、を有し、前記内部保護管は、軸方向に配列した複数の小管部材と、隣接した2つの前記小管部材を一体に係合する係合手段と、を有し、前記外部保護管が、軸方向に配列した複数の管部材と、隣接した2つの前記管部材を接合する接合材と、を有し、2つの前記管部材が接合した接合部は、前記測温プローブにおける軸方向での位置が、2つの前記小管部材が係合した係合部と異なっていることを特徴とする。この構成によると、測温プローブの先端部を測温対象物(金属溶湯)に浸漬してその温度を測定するときに、金属溶湯の流れを受けても、管部材や小管部材の過剰な変位が抑えられ、測温プローブの損傷(折損)が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の測温プローブの構成を示す断面図である。
図2図1中のII-II線での断面を示した断面図である。
図3】実施形態1の測温プローブの内部保護管の先端部近傍の構成を示した拡大断面図である。
図4】実施形態1の測温プローブの内部保護管の係合部近傍の構成を示した拡大断面図である。
図5】実施形態1の変形形態の測温プローブの内部保護管の係合部近傍の構成を示した拡大断面図である。
図6】実施形態2の測温プローブの内部保護管の係合部近傍の構成を示した拡大断面図である。
図7図6中のVII-VII線での断面を示した断面図である。
図8】実施形態3の測温プローブの内部保護管の係合部近傍の構成を示した拡大断面図である。
図9】実施形態4の測温プローブの構成を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各形態は、本発明を実施するための具体的な例であり、本発明が以下の各形態のみに限定されるものではない。
【0012】
[実施形態1]
本形態の測温プローブ1は、熱電対2,内部保護管3,外部保護管4,保護キャスタブル5,フランジ6を有する。本形態の測温プローブ1は、その構成を図1図4に示す。図1は、本形態の測温プローブ1の構成を示した断面図である。図2は、図1中のII-II線での断面を示した断面図である。図3は、内部保護管3の先端部30(熱電対2の測温部20)近傍の構成を示した拡大断面図である。図4は、内部保護管3の係合部近傍の構成を示した拡大断面図である。
【0013】
本形態の測温プローブ1は、測温対象物としての金属溶湯(例えば、溶鋼)に先端部30を浸漬し、金属溶湯の温度を測定する。例えば、金属溶湯を貯留する容器(例えば、タンディッシュ)の蓋に開口した開口部に測温プローブ1の先端側を挿入し、金属溶湯に先端部30を浸漬して測温する。
【0014】
本形態及び他の形態において、測温対象物(金属溶湯)に浸漬する先端部30側を先端側とし、プローブ頭部23側を基端側とする。軸方向とは、測温プローブ1(並びに内部保護管3及び外部保護管4)の延びている方向(具体的には、図1の上下方向)である。
【0015】
(熱電対)
熱電対2は、測温対象物(金属溶湯)の温度を測定する測温部20を有する温度計である。熱電対2は、測温対象物(金属溶湯)の温度域で温度を測定できる熱電対から適宜選択される。金属溶湯の温度を測定可能な熱電対2としては、例えば、白金ロジウム型,タングステンレニウム型,イリジウムロジウム型,アルメルクロメル型,ニッケルモリブデン型,ナイクロシル型等の熱電対を挙げることができる。
【0016】
本形態の熱電対2は、白金ロジウム型の熱電対である。白金ロジウム型の熱電対は、熱電対2の+側が白金ロジウム合金の導線2Aよりなり、-側が白金ロジウム合金又は白金の導線2Bよりなり、2本の導線2A,2Bの接合点が測温部20となる熱電対である。白金ロジウム型の熱電対の具体的な組成及び構成は、従来公知の組成及び構成とすることができる。
【0017】
熱電対2は、測温部20が内部保護管3の先端部30の内周面3aに当接して組み付けられる。熱電対2(を構成する導線2A,2B)の基端部は、プローブ頭部23(ターミナルヘッドとも称される)を介して指示計(図示せず)に接続されている。熱電対2は、図2図3に示したように、互いに独立して軸方向に並走する一対の通孔22(22A,22B)を有する略円柱状の絶縁管21の一方の通孔22Aに+側の導線2Aを、他方の通孔22Bに-側の導線2Bを挿入し、かつ各導線の2A,2Bの先端部が絶縁管21の先端側の端面21aから突出した状態で組み付けられている。このとき、各導線2A,2Bの先端部が接合した測温部20は、内部保護管3の先端部30の内周面3aに当接している。なお、測温部20は、内部保護管3の内周面3aに当接せず、内周面3aとの間に微少な間隔を隔てていてもよい。
【0018】
絶縁管21は、熱電対2(の各導線2A,2B)と内部保護管3とが電気的に接触することを抑えることができる絶縁性の材料で形成される。絶縁性の材料としては、アルミナ,マグネシア,ムライト等のセラミックスをあげることができる。本形態の絶縁管21は、アルミナセラミックスよりなる。
【0019】
(内部保護管)
内部保護管3は、その内部に熱電対2を配することができる、先端が閉じた有底筒状をなしている部材である。内部保護管3は、図1及び図4に示すように、先端側小管部材31,基端側小管部材32及び係合筒33からなる。先端側小管部材31及び基端側小管部材32は、請求項の小管部材に相当する。内部保護管3は、全体の形状が、先端部30が滑らかな湾曲形状、より具体的には略半球形状をなすように閉じた形状の有底円筒形状の部材である。
熱電対2は、内部保護管3の内部に配され、測温部20以外は内部保護管3に接触しない。
【0020】
先端側小管部材31は、内部保護管3の先端部30を形成する部材であり、先端部30が閉じた円筒形状の部材である。先端側小管部材31は、先端部30が上記の略半球状をなし、その基端側は円筒形状をなしている。先端側小管部材31は、基端側の端部の外周面にネジ山が形成された雄ネジ部310を有している。先端側小管部材31は、径方向厚さがほぼ均一な厚さで形成されている。先端側小管部材31は、基端側の端面が、軸方向に垂直な面に沿うように形成されている。
【0021】
基端側小管部材32は、内部保護管3の基端側の端部であって、プローブ頭部23やフランジ6と接続する端部を形成する部材である。基端側小管部材32は、先端側小管部材31の先端部30以外の円筒形状の部分と同径の円筒形状をなしている。基端側小管部材32は、先端側の端部の外周面にネジ山が形成された雄ネジ部320を有している。基端側小管部材32は、先端側の端面が軸方向に垂直な面に沿って形成されている。先端側小管部材31の基端側の端面と、基端側小管部材32の先端側の端面と、が同軸で当接した場合、対向する2つの端面はすき間なく全面で密着する。
【0022】
係合筒33は、先端側小管部材31及び基端側小管部材32を係合固定する円筒形状の部材である。係合筒33は、先端側小管部材31の雄ネジ部310及び基端側小管部材32の雄ネジ部320と螺合するネジ山が内周面に形成された雌ネジ部330,331を有する。係合筒33は、円筒形状の内周面の全面に(すなわち、係合筒33の全長にわたって)、雄ネジ部310,320と螺合するネジ山が形成されている。係合筒33は、先端側の端部側に先端側小管部材31の雄ネジ部310と螺合するネジ山が形成された雌ネジ部330が、基端側の端部側に基端側小管部材32の雄ネジ部320と螺合するネジ山が形成された雌ネジ部331が、それぞれ形成されている。雌ネジ部330と雌ネジ部331のそれぞれは、係合筒33の軸方向長さの半分の長さで形成されている。
【0023】
本形態の内部保護管3は、図4に示すように、係合筒33の先端側から先端側小管部材31が、係合筒33の基端側から基端側小管部材32が、それぞれ雄ネジ部310,320と雌ネジ部330,331とが螺合して組み付けられる。先端側小管部材31と基端側小管部材32は、係合筒33の内部でありかつ軸方向長さの半分の位置で、互いに対向する端面同士が全面で密着して固定される。本形態では、先端側小管部材31と基端側小管部材32の端面同士の当接面を係合部34とする。なお、係合筒33での係合部34の軸方向位置は、限定されない。先端側小管部材31と基端側小管部材32を係合・固定できる位置であれば、本形態よりも先端側又は基端側に位置していてもよい。
内部保護管3(具体的には、先端側小管部材31,基端側小管部材32及び係合筒33のいずれも)は、焼成体で形成される。焼成体とは、加熱炉で熱処理されてなる材料である。
焼成体は、金属とセラミックスを含有する材料(金属-セラミックス複合材料),Si,サイアロン(シリコン・アルミナ窒化物)の少なくとも1種よりなる。
【0024】
本形態の内部保護管3は、サーメットよりなる。サーメットは、金属とセラミックスを含有する材料(金属-セラミックス複合材料)である。サーメットは、測温プローブ1に用いたときに要求される硬度,温度即答性を満たすことができる材料である。内部保護管3を形成する具体的な材料、すなわちサーメットの組成は、測温対象物の温度域で要求される特性により適宜選択される。
【0025】
サーメット(金属-セラミックス複合材)を形成する金属としては、Mo,W,Tiより選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。サーメットを形成するセラミックスとしては、アルミナ,ジルコニア,マグネシア,スピネル,ムライト,炭化珪素,イットリアより選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、サーメットを形成する金属及びセラミックスは、これらのみに限定されない。本形態のサーメットは、高い融点と強度を有するMo-ZrO系のMo-ZrOサーメットである。
【0026】
本形態の内部保護管3を形成するMo-ZrOサーメットは、MoとZrOとの複合材料であり、MoとZrOの含有割合が限定されない。MoがZrOより多く含有した複合材料であることが好ましく、全体を100mass%としたときに、Mo:ZrOが65~90%:35~10%の割合(質量比)で含まれるものであることがより好ましい。
【0027】
内部保護管3を形成するサーメットは、強度及び伝熱性に優れることから、緻密体であることが好ましく、気孔率が小さいことが好ましい。ここで、サーメットの気孔率は、測定方法が限定されない。従来の測定装置を用いることができる。本形態では、JIS R 2205に準拠して、見かけ密度から気孔率を算出する。サーメットは、気孔率が、0~5%(すなわち、5%以下)が好ましく、0~4%(すなわち、4%以下)であることがより好ましく、0~3%(すなわち、3%以下)であることが更に好ましい。
【0028】
内部保護管3は、先端側小管部材31,基端側小管部材32及び係合筒33が全て同じ材料よりなる。内部保護管3が1つの材料で形成されることで、内部保護管3が全体として同一の特性を有するものとなる。特に、熱膨張係数が同じ材料であることで、熱膨張の差による損傷が抑えられる。
【0029】
内部保護管3を形成する先端側小管部材31,基端側小管部材32及び係合筒33は、その軸方向長さが限定されない。先端側小管部材31と基端側小管部材32のそれぞれは、従来の測温プローブの内部保護管より短い長さであることが好ましい。すなわち、先端側小管部材31と基端側小管部材32のそれぞれは、従来の加熱炉で製造できる長さより短い長さであることが好ましい。
【0030】
(外部保護管)
外部保護管4は、両端が開口した円筒形状の部材である。外部保護管4は、内部(軸芯の中空部)に内部保護管3を配置する。外部保護管4は、内部保護管3を内部に配置したときに、その内周面と内部保護管3の外周面との間に環状のすき間(小間隔)を有するように形成されている。外部保護管4の内径は、内部保護管3の外径(最大外径、係合筒33の外径)よりもすき間の分だけ大きい。
【0031】
外部保護管4は、その具体的な形状が限定されない。外部保護管4の厚さも限定されず、従来の測温プローブでの厚さと同等とすることができる。外部保護管4の軸方向長さも限定されず、測温対象物(金属溶湯)の温度を測定するときに、先端側の端部が測温対象物(金属溶湯)に浸漬できる長さである。測温プローブ1の先端部30を金属溶湯に浸漬したときに、測温対象物の湯面(スラグライン)が、外部保護管4の外周面と重なる。
【0032】
外部保護管4は、セラミックスで形成される。外部保護管4を形成する具体的なセラミックスは、測温対象物の温度域で要求される特性(例えば、耐熱性,耐熱衝撃性,強度)により適宜選択される。セラミックスとしては、例えば、アルミナを主成分とするセラミックスをあげることができる。本形態では、アルミナとカーボンとを混合させた混合材料である。
【0033】
アルミナとカーボンの混合材料では、アルミナとカーボンの含有割合が限定されない。アルミナをカーボンより多く含有した複合材料であることが好ましく、混合材料の全体を100mass%としたときに、アルミナが65~90%、カーボンが10~35%の割合で含まれるものであることが好ましい。より好ましくは、アルミナが65~80%、カーボンが20~35%で含まれるセラミックスである。
【0034】
外部保護管4のセラミックスは、複数の細孔をもつ多孔質体であることが好ましく、その気孔率が1~30%程度であることが好ましい。気孔率は、2~25%程度が好ましく、5~20%程度がより好ましい。外部保護管4のセラミックスの気孔率は、内部保護管3のサーメットの気孔率よりも大きいことが好ましい。
【0035】
外部保護管4は、円筒形状の先端側管部材40及び円筒形状の基端側管部材41を同軸状態で接合材により接合してなる。すなわち、外部保護管4は、軸方向に隣接する複数の円筒形状の管部材を接合材で接合してなる。
【0036】
先端側管部材40及び基端側管部材41は、いずれも円筒形状を有する。先端側管部材40及び基端側管部材41は、内径及び外径が同じ円筒形状を有する。先端側管部材40及び基端側管部材41は、同軸で軸方向に隣接して配したときに、内周面及び外周面が連続したなめらかな(接合部42で凹凸がない)表面を形成できる。
【0037】
外部保護管4において、先端側管部材40と基端側管部材41が接合した接合部42の軸方向位置が、内部保護管3の先端側小管部材31と基端側小管部材32の係合部34の軸方向位置とは異なる位置となっている。具体的には、外部保護管4の先端側管部材40と基端側管部材41との接合部42の軸方向位置は、測温プローブ1で金属溶湯の測温を行うときの金属溶湯の湯面(スラグライン)よりも基端側(図1で上方側)に位置する。外部保護管4の先端側管部材40と基端側管部材41の接合部42の軸方向位置は、内部保護管3の先端側小管部材31と基端側小管部材32の係合部34の軸方向位置より先端側(図1で下方側)に位置する。すなわち、測温プローブ1で金属溶湯の測温を行うときに、基端側から先端側に進むにつれて、係合部34、接合部42、金属溶湯の湯面がこの順序で位置する。
係合部34と接合部42との間隔(軸方向位置の間隔)は限定されない。50mm以上であることが好ましく、50~100mmがより好ましく、60~90mmが更に好ましい。
【0038】
外部保護管4の先端側管部材40と基端側管部材41を接合する接合材は、2つの管部材40,41を接合できる接合材を用いることができる。この接合材としては、例えば、セラミックスを含むセメントを挙げることができる。
【0039】
本形態では、外部保護管4が先端側管部材40と基端側管部材41を接合材で接合しているが、3本以上の管部材から形成していてもよい。さらに、各管部材40,41も、軸方向に延びる柱状の部材を周方向で接合して形成したものでもよい。
【0040】
外部保護管4は、その内部(軸芯の中空部)に内部保護管3を収容する。このとき、外部保護管4の内周面と内部保護管3の外周面との間のすき間には、充填材43が充填している。充填材43としては、外部保護管4の接合材と同じ材料を挙げることができる。本形態では、充填材43にセメントを用いた。
【0041】
(保護キャスタブル)
保護キャスタブル5は、外部保護管4の基端側で、その外周面を覆うように、全体が円筒形状をなすように形成されている。保護キャスタブル5は、その内周面が外部保護管4の外周面に密着した状態で一体に形成されている。保護キャスタブル5は、外部保護管4の外周面が露出しないように形成される。保護キャスタブル5は、その下端の端部が、測温プローブ1で金属溶湯の測温を行うときの金属溶湯の湯面(スラグライン)よりも下方に位置する。
【0042】
保護キャスタブル5は、不定形耐火物を成型して形成されている。保護キャスタブル5を形成する不定形耐火物の具体的な材料は限定されない。従来の測温プローブの外周面を形成するキャスタブルを用いることができる。本形態では、キャスタブルセメントを用いている。
保護キャスタブル5は、不定形耐火物を成型して形成されており、不定形耐火物の材料粒子が未焼結で形成されている。保護キャスタブル5は、外部保護管4よりも大きな気孔率を有する。
【0043】
(フランジ)
フランジ6は、本体部60、内側筒部62,外側筒部63を一体に備える。
本体部60は、軸方向に垂直な方向に広がる、略円環形状の板状を有する。本体部60は、略円環形状の軸芯部に、内部保護管3が挿通する挿通孔61が形成されている。挿通孔61は、内部保護管3が挿入可能な径で形成されている。本形態では、挿通孔61の内周形状(内径)が、内部保護管3の外周形状(外径)と略一致する。挿通孔61に内部保護管3を挿入したときに、挿通孔61の内周面と内部保護管3の外周面とが全周にわたって密着する。
【0044】
内側筒部62は、本体部60の表面60a(基端側に向いた面)から基端側に立設する筒状の部分である。内側筒部62は、挿通孔61の開口形状と一致する内径をもつ円筒形状を有する。内側筒部62は、その内部に内部保護管3が挿通(あるいは嵌入)する。
【0045】
内側筒部62は、その軸方向長さが限定されない。すなわち、本体部60の表面60aから立設する立設高さが限定されない。内側筒部62の軸方向長さは、内側筒部62及び挿通孔61に挿通した内部保護管3を保持(支持又は固定)できる長さであればよい。内側筒部62は、内側筒部62に内部保護管3を保持(支持又は固定)する保持手段を設けてもよい。本形態では、内側筒部62と内部保護管3との間に、接合材を配して接合(保持)している。本形態の接合材は、外部保護管4と内部保護管3とを接合する接合材を用いた。
内側筒部62の基端側の端部は、プローブ頭部23に接続する。
【0046】
外側筒部63は、本体部60の裏面60bから先端側に立設する筒状の部分である。外側筒部63は、本体部60の外周形状と一致する内径をもつ円筒形状を有する。外側筒部63は、その内部に内部保護管3が挿通する。外側筒部63は、その内部に接合材64が充填され、フランジ6に外部保護管4及び保護キャスタブル5が接合される。
【0047】
外側筒部63は、その軸方向長さが限定されない。すなわち、本体部60の裏面60bから立設する立設高さが限定されない。外側筒部63の軸方向長さは、外部保護管4及び保護キャスタブル5を接合材64で接合できる長さであればよい。
【0048】
フランジ6は、本体部60の裏面60b側に、従来の測温プローブで使用している耐熱材を配してもよい。耐熱材は、多孔質のセラミックス板よりなることが好ましい。耐熱材は、接合材64で本体部60に接合して固定する。
【0049】
接合材64は、外部保護管4及び保護キャスタブル5をフランジ6に接合して固定する。接合材64は、外部保護管4及び保護キャスタブル5の基端側の端面がフランジ6の裏面60bに密着した状態(外部保護管4の端面がフランジ6に押しつけられた状態)で、接合し固定する。接合材64は、従来の接合材を用いることができる。本形態において、接合材64は、フランジ6の外側筒部63の内部に充填されたセメントを固化して形成される。
【0050】
本体部60は、裏面60bに、接合材64の抜け落ちを防止するためのスタッドを有していてもよい。スタッドの形状や数等については限定されない。本体部60がスタッドを有する場合、接合材64は、スタッドを囲包する状態で充填されることが好ましい。
【0051】
(製造方法)
本形態の測温プローブ1は、その製造方法が限定されない。内部保護管3及び外部保護管4をそれぞれ製造した後に、従来の測温プローブ1と同様な製造方法で製造できる。
内部保護管3は、先端側小管部材31と基端側小管部材32及び係合筒33となる各部材をそれぞれ形成する(具体的には、加熱炉で焼成して焼成体を得る)。そして、所定の端部に雄ネジ部310,320及び雌ネジ部330,331を形成(例えば、タップやダイスでネジ山を形成)する。その後、雄ネジ部310と雌ネジ部330、及び雄ネジ部320と雌ネジ部331のそれぞれを螺合して係合する。以上により、本形態の測温プローブ1を製造できる。
【0052】
また、本形態において、フランジ6は、図1に示すように、本体部60と外側筒部63を有する耐熱性金属よりなる部材に、内側筒部62を有する耐熱性金属よりなる部材を溶接で接合して形成しているが、この形態に限定されない。本体部60、内側筒部62、外側筒部63となる部材を形成し、一体に接合して形成してもよい。
【0053】
(効果)
本形態の測温プローブ1は、先端部30が閉塞した有底筒状を有し、サーメット(金属とセラミックスとを含有する材料)で形成された内部保護管3と、内部保護管3の内部に配された、測温対象物の温度を測定する測温部20を有する熱電対(測温手段)2と、内部保護管3を内部に配する筒状を有し、セラミックスで形成された外部保護管4と、を有する。そして、内部保護管3は、先端側小管部材31と基端側小管部材32(軸方向に配列した複数の小管部材)と、先端側小管部材31と基端側小管部材32(隣接した2つの小管部材)を一体に係合する係合筒33(係合手段)と、を有する。
【0054】
本形態の測温プローブ1は、係合手段が、先端側小管部材31と基端側小管部材32(隣接した2つの小管部材)の近接した端部のそれぞれに形成された雄ネジ部310,320と、雄ネジ部310(2つの雄ネジ部310,320の一方の雄ネジ部)に螺合する雌ネジ部330を一方の端部に、雄ネジ部320(2つの雄ネジ部310,320の他方の雄ネジ部)に螺合する雌ネジ部331を他方の端部に、それぞれ有する筒状の係合筒33と、からなる。
【0055】
本形態の測温プローブ1は、サーメットよりなる内部保護管3が、隣接した先端側小管部材31と基端側小管部材32を係合筒33で一体に係合してなる。この構成によると、長尺の測温プローブ1を、簡単かつ安価に製造することができる。
【0056】
具体的には、従来の内部保護管3は、サーメットを焼成する焼成炉のサイズによりその長さが限定されていた。これに対し、本形態の測温プローブ1では、先端側小管部材31と基端側小管部材32を係合筒33で一体に係合・固定することで、長尺のサーメットよりなる内部保護管3を得ることができる。先端側小管部材31と基端側小管部材32は、いずれも従来の内部保護管より長くする必要がない。先端側小管部材31と基端側小管部材32は、従来の製造方法(製造装置、加熱炉)を用いて製造することができる。この結果、従来の方法ではその製造が困難となっていた長尺の内部保護管3を用いた測温プローブ1を簡単かつ低コストで製造することができる。
【0057】
本形態では、従来の測温プローブの内部保護管を先端側小管部材31に用い、先端側小管部材31より短い基端側小管部材32を用いることができる。そうすると、基端側小管部材32のみを新たに設計・製造することで、内部保護管3を製造できる。この結果、先端側小管部材31も新たに設計・製造する場合と比較して、より低コストで内部保護管3を製造することができる。先端側小管部材31と基端側小管部材32は、全体として内部保護管3を形成できる形状(軸方向長さ)であれば、具体的な形状(サイズ)が限定されない。例えば、基端側小管部材32は軸方向長さが、200mm以上であることが好ましく、200~500mmがより好ましく、250~400mmが更に好ましい。ここで、基端側小管部材32の軸方向長さは、フランジ6の本体部60の裏面60bからの長さとしてもよい。
【0058】
本形態の測温プローブ1は、外部保護管4が、軸方向に配列した先端側管部材40と基端側管部材41(複数の管部材)と、先端側管部材40と基端側管部材41を接合する接合材と、からなる。そして、外部保護管4における先端側管部材40と基端側管部材41が接合した接合部42は、測温プローブ1における軸方向での位置が、内部保護管3における先端側小管部材31と基端側小管部材32の係合部34と異なっている。より具体的には、内部保護管3の係合部34は、外部保護管4の接合部42より基端側に位置する。
【0059】
この構成によると、本形態の測温プローブ1の先端を測温対象物(金属溶湯)に浸漬してその温度を測定するときに、金属溶湯の流れに起因する軸方向に垂直な方向(横方向)の応力が測温プローブ1に加わっても、測温プローブ1の損傷(折損)が抑えられる。
【0060】
具体的には、温度を測定する測温対象物(金属溶湯、例えば溶鋼)は、タンディッシュに貯留している状態では、静止しておらず、内部に流れが生じている。この状態で溶鋼に測温プローブ1の先端(すなわち、内部保護管3の先端部30)を浸漬すると、測温プローブ1には、溶鋼の流れに起因する力が加わる。この力は、主に横方向(軸方向に垂直な面に沿う方向)に向かう力である。すなわち、測温プローブ1の内部保護管3と外部保護管4のそれぞれに、横方向の力が加わる。内部保護管3と外部保護管4のそれぞれは、基端側が固定し、先端側が固定されておらず、基端部を中心に測温プローブ1が揺動するように変位する。そして、測温プローブ1に横方向に加わった力は、内部保護管3の係合部34と、外部保護管4の接合部42のそれぞれに集中する。内部保護管3の係合部34と外部保護管4の接合部42の軸方向での位置が異なっていることで、測温プローブ1の軸方向で応力が集中しなくなる。この結果、測温プローブ1の損傷(折損)が抑えられる。
【0061】
さらに詳しくは、内部保護管3に横方向の力が加わると、先端側小管部材31と基端側小管部材32のそれぞれに横向きの力が加わる。そして、横方向に向けて変形する。横方向への変形は、その変形量が、先端側が基端側より大きくなる。この変形量の差により係合部34に応力が集中する。そして、先端側小管部材31が大きく変形しようとしても、外部保護管4の基端側管部材41によりそれ以上の変形が規制される。この結果、係合部34に集中する応力を低減でき、内部保護管3の折損が抑えられる。同様に、外部保護管4に横方向の応力が加わって先端側管部材40が変形しようとしても、その変形が内部保護管3(の先端側小管部材31)に規制される。接合部42に集中する応力を低減でき、外部保護管4の折損が抑えられる。この結果、測温プローブ1の損傷(折損)が抑えられる。
【0062】
対して、内部保護管3と外部保護管4のそれぞれの接合部の軸方向位置が同じとなると、先端側小管部材31と先端側管部材40の少なくとも一方が変形しようとしたときに、その変形が規制されない。この結果、内部保護管3の係合部34と外部保護管4の接合部42の少なくとも一方に応力が集中し、この位置で損傷(折損)が生じる。このように、内部保護管3と外部保護管4のそれぞれの接合部の軸方向位置が同じとなると、測温プローブ1に損傷(折損)が生じやすくなる。
【0063】
本形態の測温プローブ1は、内部保護管3の係合手段が、軸方向で隣接する先端側小管部材31と基端側小管部材32の近接した端部のそれぞれの外周面に形成された雄ネジを有する雄ネジ部310,320と、両端部側の内周面に2つの雄ネジ部310,320の一方の雄ネジ部310に螺合する雌ネジ部330と、他方の雄ネジ部320に螺合する雌ネジ部331と、を有する筒状の係合筒33と、からなる。
【0064】
この構成によると、先端側小管部材31と基端側小管部材32が、簡単な構成で強固に係合・固定した内部保護管3となる。また、係合筒33が、先端側小管部材31と基端側小管部材32の端部を係合する構成となっており、内部保護管3に横方向の応力が加わっても、先端側小管部材31と基端側小管部材32の係合部34(端部同士が対向した部分)を覆う係合筒33が応力の集中を抑える。この結果、本形態の測温プローブ1は、その損傷(折損)をより確実に抑えることができる。
【0065】
さらに、係合筒33は、先端側小管部材31と基端側小管部材32の端部(係合部34)を全周で覆う円筒形状を有しており、内部保護管3(測温プローブ1)に加わる応力の方向によらず、上記効果を発揮できる。すなわち、本形態の測温プローブ1は、流れのある測温対象物(金属溶湯)の温度を測定するときに、測温対象物(金属溶湯)の流れの向きによらずに損傷を抑えつつ温度を測定できる。また、測温対象物(金属溶湯)の温度を測定しているときに、測温対象物(金属溶湯)の流れの向きが変化しても、測温プローブ1が損傷(折損)することが抑えられる。
【0066】
本形態の測温プローブ1は、不定形耐火物よりなり、外部保護管4の外周面を被覆する、保護キャスタブル5を有する。この構成によると、外部保護管4の外周面が露出することが抑えられ、外部保護管4が金属溶湯により摩耗損傷することが抑えられる。特に、保護キャスタブル5が金属溶湯のスラグラインに対応する位置に形成されており、外部保護管4が金属溶湯の湯面の固形物(スラグ)により摩耗損傷することが抑えられる。
【0067】
[実施形態1の変形形態]
本形態は、内部保護管3の係合手段(係合部34近傍の構成)が異なること以外は、実施形態1と同様な構成の測温プローブ1である。本形態で特に言及しない構成は、実施形態1と同様な構成である。本形態の測温プローブ1の内部保護管3の係合部近傍の構成を図5に拡大断面図で示す。
【0068】
先端側小管部材31は、基端側の端部に雄ネジ部310が形成されている。先端側小管部材31は、基端側の端部(すなわち、雄ネジ部310が形成されている部分)の外径が、その他の部分より縮径して形成されている。具体的には、図5に示すように、先端側小管部材31は、基端側の端部が他の部分(先端部30を除く)よりも縮径した円筒形状に形成され、その外周面にネジ山が形成された雄ネジ部310となっている。雄ネジ部310のネジ山は、その最外径が、雄ネジ部310以外の円筒形状の部分の外径より小さく形成されている。
【0069】
基端側小管部材32は、先端側の端部の外周面に雄ネジ部320が形成されている。基端側小管部材32は、先端側の端部(すなわち、雄ネジ部320が形成されている部分)の外径が、その他の部分より縮径した状態で形成されている。具体的には、基端側小管部材32は、先端側の端部が他の部分よりも縮径した円筒形状に形成され、その外周面にネジ山が形成された雄ネジ部320となっている。雄ネジ部320のネジ山は、その最外径が、雄ネジ部320以外の円筒形状の部分の外径より小さく形成されている。
【0070】
係合筒33は、先端側小管部材31の雄ネジ部310及び基端側小管部材32の雄ネジ部320と螺合する円筒形状の部材である。係合筒33は、外径及び内径が異なること以外は、実施形態1の係合筒33と同様な構成である。係合筒33は、雄ネジ部310,320と螺合する雌ネジ部330,331が形成されている。すなわち、係合筒33は、先端側小管部材31及び基端側小管部材32の外径が縮径した端部に対応した内径で形成されている。
【0071】
係合筒33は、その外径が、先端側小管部材31及び基端側小管部材32のそれぞれと同じ外径となっている。内部保護管3は、先端側小管部材31及び基端側小管部材32が係合筒33に螺合したときに、その外周面が連続した滑らかな面(軸方向で凹凸がない外周面)をなしている。
【0072】
(効果)
本形態の測温プローブ1は、内部保護管3の係合構造が異なること以外は、実施形態1と同様な構成を有しており、実施形態1と同様な効果を発揮する。
本形態の測温プローブ1は、内部保護管3がその外周面に凹凸がない形状を有している。この構成によると、内部保護管3の外周面と外部保護管4の内周面との間のすき間を小さくすることができる。そうすると、内部保護管3と外部保護管4とが互いに変形を規制する効果をより発揮でき、測温プローブ1の損傷(折損)をより抑えることができる。
【0073】
[実施形態2]
本形態は、内部保護管3の係合手段(係合部34の近傍の構成)が異なること以外は、実施形態1と同様な構成の測温プローブ1である。本形態で特に言及しない構成は、実施形態1と同様な構成である。本形態の測温プローブ1の内部保護管3の係合部近傍の構成を図6図7に部分拡大断面図で示す。図7は、図6中のVII-VII線での断面図である。
内部保護管3は、先端側小管部材31、基端側小管部材32、係止板35、2本の係止ピン36(360,361)を有する。
先端側小管部材31は、基端側の端部近傍の外周面に係止ピン36(360)が係止する係止穴311が開口している。
基端側小管部材32は、先端側の端部近傍の外周面に係止ピン36(361)が係止する係止穴322が開口している。
係止板35は、軸方向に長く延びた板状(帯状)を有する。係止板35は、内部保護管3の外周面に当接した状態で配される板状(帯状)の部材であり、帯状の幅方向が周方向に沿って湾曲している。
【0074】
係止板35は、隣接する先端側小管部材31と基端側小管部材32との端部同士をつなぐように、各小管部材31,32の外周に配される。係止板35は、係止穴350、及び係止穴351が設けられている。係止穴350は、係止板35の先端側小管部材31の係止穴311の径方向外方の位置に設けられ、係止ピン36(具体的には、係止ピン360)が挿通する。係止穴351は、係止板35の基端側小管部材32の係止穴322の径方向外方の位置に設けられ、係止ピン36(具体的には、係止ピン361)が挿通する。
係止穴350,351は、係止ピン36(360,361)が嵌合・固定されるように、その内径が係止ピン36の外径と一致するように形成されている。
【0075】
係止ピン36(360)は、径方向で連通した係止穴311,350を貫通して組み付けられ、先端側小管部材31と係止板35を係止・固定する。係止ピン36(361)は、径方向で連通した係止穴322,351を貫通して組み付けられ、基端側小管部材32と係止板35を係止・固定する。
【0076】
係止ピン36(360,361)は、その具体的な形状が限定されない。係止ピン36(360,361)は、係止穴311,350及び係止穴322,351の内周形状と一致する外周形状(具体的には、円柱形状)を有する。係止ピン36(360,361)は、頭部(径方向外方側の端部)が拡径したリベット形状等の形状であってもよい。
【0077】
(効果)
本形態の測温プローブ1は、内部保護管3の係合構造が異なること以外は、実施形態1と同様な構成を有しており、実施形態1と同様な効果を発揮する。
本形態の測温プローブ1における係合手段は、軸方向に延びる板状を有するとともに、隣接した先端側小管部材31と基端側小管部材32(隣接した2つの小管部材)の隣接した端部同士をつなぐように配された係止板35と、係止板35を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が先端側小管部材31(一方の小管部材)に係止する係止ピン360(第1ピン)と、係止板35を厚さ方向で貫通し、その内径側の先端が基端側小管部材32(他方の小管部材)に係止する係止ピン361(第2ピン)と、を有している。この構成によると、先端側小管部材31、基端側小管部材32及び係止板35が係止ピン36(360,361)で係止され、固定される。すなわち、先端側小管部材31と基端側小管部材32が簡単な構成で強固に固定された内部保護管3となる。
【0078】
[実施形態2の変形形態]
実施形態2は、軸方向に並んだ先端側小管部材31と基端側小管部材32とを係止板35と係止ピン36(360,361)とで係止・固定しているが、先端側小管部材31と基端側小管部材32との双方に係止できるものであれば係止板35の数は限定されない。係止板35は、2つ以上としてもよい。2つ以上の複数の係止板35を用いる場合、それぞれの係止板35は、周方向で等間隔の位置に配することが好ましい。
係止板35は、帯状の長手方向が軸方向に沿って延びた形状だけでなく、帯状の長手方向が内部保護管3の外周面をらせん状に沿って延びた形状であってもよい。
【0079】
係止板35は、帯状の幅方向が内部保護管3の外周面の全周にわたって形成された円筒形状や、周方向の一部が切れた円筒形状をなしていてもよい。つまり、軸方向に垂直な断面の断面形状が円形形状や、C字形状であってもよい。
【0080】
さらに、係止板35を、先端側小管部材31や基端側小管部材32に係止する係止ピン36の数についても限定されない。係止ピン36(及び係止穴311,350,322,351)の数が多くなれば、係止板35を先端側小管部材31や基端側小管部材32に係止する係止箇所が多くなり、より確実に先端側小管部材31と基端側小管部材32を係止板35に固定できる。
【0081】
[実施形態3]
本形態は、内部保護管3の係合手段(係合部の構成)が異なること以外は、実施形態1と同様な構成の測温プローブ1である。本形態で特に言及しない構成は、実施形態1と同様な構成である。本形態の測温プローブ1の内部保護管3の係合部近傍の構成を図8に示す。
【0082】
内部保護管3は、先端側小管部材31の基端側の端部に雄ネジ部310が、基端側小管部材32の先端側の端部に雌ネジ部321が、それぞれ形成されている。そして、雄ネジ部310と雌ネジ部321が螺合し、先端側小管部材31と基端側小管部材32が一体に係合・固定された内部保護管3が形成されている。
【0083】
先端側小管部材31は、実施形態1の変形形態の場合と同様に、基端側の端部が縮径し、その外周面に雄ネジ部310が形成されている。具体的には、図8に示すように、先端側小管部材31は、基端側の端部が他の部分(先端部30を除く)よりも縮径した円筒形状に形成され、その外周面に雄ネジ部310が形成されている。雄ネジ部310の雄ネジは、その最外径が、雄ネジ部310以外の円筒形状の部分の外径より小さく形成されている。
【0084】
基端側小管部材32は、先端側の端部の内周面に、雄ネジ部310に螺合する雌ネジ部321が形成されている。具体的には、図8に示すように、基端側小管部材32は、先端側の端部が他の部分よりも拡径した内径の円筒形状に形成され、その拡径した部分の内周面に雌ネジ部321が形成されている。
【0085】
先端側小管部材31と基端側小管部材32のそれぞれは、内部保護管3を形成したときに、連続した滑らかな外周面を形成するように、雄ネジ部310及び雌ネジ部321が形成されていない部分(先端部30を除く)は、外径が同じとなるように形成されている。内部保護管3は、雄ネジ部310と雌ネジ部321とが螺合して内部保護管3を形成したときに、その内周面及び外周面が連続した滑らかな面(軸方向で凹凸がない面)を形成する。
なお、本形態では、先端側小管部材31に雄ネジ部310が、基端側小管部材32に雌ネジ部321が、それぞれ形成されているが、この形態に限定されるものではなく、雄ネジ部と雌ネジ部をそれぞれ逆の小管部材に形成してもよい。具体的には、先端側小管部材31の基端側の端部に雌ネジ部を、基端側小管部材32の先端側の端部に雌ネジ部を、それぞれ形成してもよい。
【0086】
(効果)
本形態の測温プローブ1は、内部保護管3の係合構造が異なること以外は、実施形態1と同様な構成を有しており、実施形態1と同様な効果を発揮する。
本形態の測温プローブ1は、係合手段が、先端側小管部材31の雄ネジ部310(隣接した2つの小管部材のうち、一方の小管部材の端部に形成された雄ネジ部)と、基端側小管部材32の雌ネジ部321(隣接した2つの小管部材のうち、他方の小管部材の端部の端部に形成された、雄ネジ部と螺合する雌ネジ部)と、からなる。この構成によると、先端側小管部材31と基端側小管部材32を簡単な構成で強固に係合し固定することができる。
さらに、実施形態1の変形形態と同様に、内部保護管3の外周面と外部保護管4の内周面との間のすき間を小さくすることができ、内部保護管3と外部保護管4とが互いに変形を規制する効果をより発揮できる。
【0087】
[実施形態4]
本形態の測温プローブは、内部保護管3が3つの小管部材から形成されていること以外は実施形態1と同様な構成の測温プローブ1である。本形態で特に言及しない構成は、実施形態1と同様な構成である。本形態の測温プローブ1の内部保護管3の構成を図9に示す。
【0088】
内部保護管3は、先端側小管部材31、中間小管部材37及び基端側小管部材32が軸方向に沿って配列した状態で、それぞれ係合し固定して形成されている。内部保護管3において、先端側小管部材31と中間小管部材37の係合手段、及び基端側小管部材32と中間小管部材37の係合手段は、いずれも実施形態1と同様な係合手段としての係合筒33である。すなわち、各小管部材31,32,37の端部の雄ネジ部と係合筒33の雌ネジ部とが螺合することで、各小管部材31,32,37が係合し、固定される。
【0089】
中間小管部材37は、軸方向の両端部に雄ネジ部が形成されていること以外は、実施形態1の基端側小管部材32と同様な円筒形状の部材である。中間小管部材37の両端部の雄ネジ部は、実施形態1の各雄ネジ部310,320と同様な構成である。
【0090】
中間小管部材37の数は限定されない。2本以上の複数としてもよい。2つ以上の中間小管部材37のそれぞれは、実施形態1と同様に雄ネジ部及び係合筒部の雌ネジ部とが螺合することより係合・固定することができる。
【0091】
(効果)
本形態は、先端側小管部材31と中間小管部材37の係合手段、及び基端側小管部材32と中間小管部材37の係合手段が実施形態1と同様に形成されており、実施形態1と同様な効果を発揮する。
本形態の測温プローブ1は、中間小管部材37を有することで、実施形態1の内部保護管よりも、長尺の内部保護管3を形成できる。すなわち、軸方向長さがより長い測温プローブとなる。すなわち、実施形態1の測温プローブよりも、測温対象物(金属溶湯)の湯面(スラグライン)からより深い位置での温度を測定することができる。
【0092】
本形態では、先端側小管部材31と中間小管部材37の係合手段、及び基端側小管部材32と中間小管部材37の係合手段は、実施形態1の係合手段を用いているが、この係合手段に限定されない。上記の各形態から任意の係合手段を選択することができる。1つの測温プローブ1で、異なる複数の係合手段を用いてもよい。
【0093】
[その他の変形形態]
上記の各形態では、外部保護管4が円筒形状を有しているが、この形状に限定されない。外部保護管4は、内部に内部保護管3を収容する有底筒状の形状を有していてもよい。例えば、内部保護管3と同様に先端が閉じた形状としてもよい。
保護キャスタブル5についても、外部保護管4の外周を覆う円筒形状を有しているが、この形状に限定されない。保護キャスタブル5は、内部保護管3及び外部保護管4の外周面を覆う形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1:測温プローブ
2:熱電対、20:測温部、21:絶縁管、22:通孔
3:内部保護管、30:先端部、31:先端側小管部材、32:基端側小管部材、33:係合筒、34:係合部、35:係止板、36:係止ピン、37:中間小管部材
4:外部保護管、40:先端側管部材、41:基端側管部材、42:接合部、43:充填材
5:保護キャスタブル
6:フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9