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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】塗装シートメタルバンド及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20230511BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230511BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20230511BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20230511BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B32B15/08 E
C08L101/00
C08L29/04 A
C08L71/10
C08K5/3445
B32B15/092
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020555314
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019059476
(87)【国際公開番号】W WO2019201788
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】102018206151.3
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506029255
【氏名又は名称】フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE STAHL GMBH
【住所又は居所原語表記】VOESTALPINE-STRASSE 3, A-4020 LINZ, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルーフ、ロナルド
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0082773(US,A1)
【文献】特開2005-109209(JP,A)
【文献】特開平11-151779(JP,A)
【文献】特開昭62-090235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08
C08L 101/00
C08L 29/04
C08L 71/10
C08K 5/3445
B32B 15/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平坦面及び第2平坦面を有する圧延シートメタルストリップと、
前記第1平坦面の上を覆う、キャリア層を有する第1の層であって、前記キャリア層は、前記圧延シートメタルストリップに直接的に塗布され、接着剤の反応促進剤を含有する、第1の層と、
前記第2平坦面の上を覆う、前記接着剤を含む第2の層であって、前記第2の層は前記反応促進剤も、いかなる反応促進剤も含まない、第2の層と
を備え
前記キャリア層のキャリア層材料と、前記反応促進剤との体積比が1:1と3:1の間である、塗装シートメタルストリップ。
【請求項2】
前記キャリア層は、有機樹脂、ポリビニルアルコール、及び/又はフェノキシ樹脂を含む、請求項1に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項3】
前記反応促進剤は、尿素若しくは尿素誘導体、ルイス塩基、具体的には第三級アミン、ルイス酸、具体的にはBF3若しくはイミダゾール、具体的には1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、又は他のイミダゾール誘導体若しくはイミダゾール付加物、又は変性アミン若しくは複素環アミンを含む、請求項1又は2に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項4】
前記第2の層は、エポキシ樹脂ベースの層及び/又はベーキングラッカー層、具体的にはエポキシ樹脂ベースのベーキングラッカー層である、請求項1から3のいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項5】
前記第1の層は接着剤を含まない、請求項1から4のいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項6】
第1平坦面及び第2平坦面を有する圧延シートメタルストリップと、
前記第1平坦面の上を覆う、キャリア層を有する第1の層であって、前記キャリア層は、前記圧延シートメタルストリップに直接的に塗布され、接着剤の反応促進剤を含有する、第1の層と、
前記第2平坦面の上を覆う、前記接着剤を含む第2の層であって、前記第2の層は前記反応促進剤も、いかなる反応促進剤も含まない、第2の層と
を備え、
前記第1の層は接着剤を含まない、塗装シートメタルストリップ
【請求項7】
前記第1の層は、20vol%より少ない又はそれに等しい接着剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項8】
前記第1の層は、20vol%より多い又はこれに等しい接着剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項9】
前記第1の層の厚さは、2μmより薄い又はそれに等しい、請求項1からのいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項10】
前記第1の層は無機充填剤を含まない、請求項1からのいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項11】
前記第2の層の厚さは、4μmより厚い又はこれに等しい、請求項1から10のいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項12】
前記塗装シートメタルストリップは電気シートストリップである、請求項1から11のいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項13】
前記塗装シートメタルストリップは巻き付けられてコイルになる、請求項1から12のいずれか一項に記載の塗装シートメタルストリップ。
【請求項14】
塗装シートメタルストリップを製造する方法であって、
圧延シートメタルストリップの第1平坦面の上に第1の層を塗布する段階であって、前記第1の層は、前記圧延シートメタルストリップに直接的に塗布されるキャリア層を有し、接着剤の反応促進剤を含有する、段階と、
前記接着剤を含む第2の層を、前記圧延シートメタルストリップの第2平坦面の上に塗布する段階であって、前記第2の層は、前記反応促進剤も、いかなる反応促進剤も含まない、段階と
を備え
前記キャリア層のキャリア層材料と、前記反応促進剤との体積比が1:1と3:1の間である、方法。
【請求項15】
前記キャリア層は、有機樹脂、ポリビニルアルコール、及び/又はフェノキシ樹脂を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の層はローラ式塗布で塗布される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の層はローラ式塗布で塗布される、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法はさらに、
前記塗装シートメタルストリップを、280℃より低い又はそれに等しい乾燥温度で乾燥させる段階を備える、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
絶縁ラッカーで塗装されたシートメタルストリップであって、
第1平坦面及び第2平坦面を有する圧延シートメタルストリップと、
前記第1平坦面を覆第1の層であって、前記第1の層は、反応促進剤を含有するキャリア層を含み、前記キャリア層のキャリア層材料と、前記反応促進剤との体積比が1:1と3:1の間である、第1の層と、
前記第2平坦面を覆い、接着剤を含まない絶縁ラッカー層を有する第2の層と
を備えるシートメタルストリップ。
【請求項20】
記キャリア層は、有機樹脂、ポリビニルアルコール、及び/又はフェノキシ樹脂を含み、前記反応促進剤は、尿素若しくは尿素誘導体、ルイス塩基、具体的には第三級アミン、ルイス酸、具体的にはBF3若しくはイミダゾール、具体的には1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、又は他のイミダゾール誘導体若しくはイミダゾール付加物、又は変性アミン若しくは複素環アミンを含む、請求項19に記載のシートメタルストリップ。
【請求項21】
前記第1の層の厚さは、2μmより薄い又はそれに等しく、且つ/又は前記第2の層の厚さは、4μmより厚い又はこれに等しい、請求項19又は20に記載のシートメタルストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装シートメタルストリップに関し、また塗装シートメタルストリップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装シートメタルストリップは、多くの技術領域で用いられている。例として、電気シートストリップとして知られているものの形態で、発電機、電動機、変圧器、又は他の電気装置に用いられる電気コアを製造するための出発物質が形成される。そのような電気コアは、塗装電気シートストリップを個々のシートメタルラミネーションに切断し、これらのシートメタルラミネーションを積み重ね、これらを共に接着結合してラミネーションスタックを形成することによって製造される。さらに、一緒に接着結合した塗装シートメタルストリップ又はシートメタルラミネーションが、電気コア以外の用途でも用いられてよい。
【0003】
そのような用途又は他の用途で、シートメタルラミネーションを簡単に接着結合できるようにするために、圧延シートメタルストリップの一方又は両方の平坦面を接着層(例えば、ベーキングラッカー層)で塗布することが既に知られている。これにより、例えば、接着剤を塗装又は塗布するなどの中間作業工程を必要とすることなく、塗装シートメタルストリップを切断して得られたシートメタルラミネーションから直接的にラミネーションスタックを製造することが可能になる。接着結合プロセス(ラミネーションスタックの焼成)において初めて、接着層は活性化して、ラミネーションスタックは寸法安定性を得る。
【0004】
接着結合プロセスでシートメタルラミネーションの積層を製造する際の既知の欠点とは、接着結合プロセスが代替手段(例えば、シートメタルラミネーションのネジ止め又は筋交など)と比較してかなり時間がかかることである。従来の焼成プロセスにおける接着結合時間は、通常、数時間にも及び、その結果として、電気コア(ラミネーションスタック)の製造はコストと時間がかかるようになる。
【0005】
シートメタルストリップを接着剤で前塗装する際のさらなる欠点とは、まだ塗布されていない状態の液状接着剤が低い保存安定性を呈し、塗布後に急速に時効が進む傾向を表すということである。実際には、これは、液状接着剤が長くても約半年間しか保存できず、それまでに液状接着剤をシートメタルストリップに塗布する必要があることを意味している。シートメタルストリップに塗布された接着剤は、その後、遅くとも半年後には活性化(接着結合)されなければならない。そうしなければ、ラミネーションスタック(例えば、電気コア)が所望の(高い)機械的安定性を保有しなくなるからである。
【0006】
したがって、接着剤塗装シートメタルストリップの低い保存安定性及び時効安定性は、塗装シートメタルストリップの製造業者及び購入者の両方に関わる課題を示しており、そのために、ラミネーションスタックを製造するための接着剤塗装シートメタルストリップが市場に浸透するのを著しく妨げている。
【0007】
独国特許出願公開第102015012172A1号には、エポキシ樹脂、潜在性硬化剤、及び潜在性促進剤で構成される熱的に活性化可能な速硬化性接着層が開示されている。
【0008】
国際出願公開第2016/033630A1号には、ベーキングラッカー塗装シートメタルストリップを製造する方法が説明されており、この方法では、触媒がベーキングラッカー層に直接的に塗布される。
【0009】
独国特許出願公開第3503019C2号には、接着層及び絶縁層で塗装された電気シートストリップが説明されており、絶縁層は既に硬化した接着層で構成されている。
【0010】
欧州特許出願公開第0756297B1号には、両面に塗装された電気シートが説明されており、両方の塗装は異なる組成を有し、両方の塗装のうちの少なくとも一方は、アミノ樹脂の化学基からの硬化促進剤を含有する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的とは、接着結合したシートメタルラミネーションから作られる構成部品の出発物質として、具体的には保存安定性及び/又は時効安定性に関して有利な特性を有する塗装シートメタルストリップと製造プロセスとを提供することとみなされ得る。本発明はさらに、上述した特性を有する塗装シートメタルストリップを製造する方法の詳述を目的とする。
【0012】
この目的は、独立請求項の特徴によって実現される。例示的な実施形態及び発展例が、従属請求項の主題である。
【0013】
それに応じて、塗装シートメタルストリップは、第1平坦面と第2平坦面とを有する圧延シートメタルストリップを有する。第1の層が、第1平坦面の上に延在し、接着剤の反応促進剤を含有し、物理的基礎上に反応促進剤を保存するキャリア層を含む。接着剤を含む第2の層が、第2平坦面の上に延在する。キャリア層は、例えば、シートメタルストリップに直接的に塗布されてよい。第2の層は、第1の層の反応促進剤を含まず、又はあらゆる反応促進剤を含まない。
【0014】
接着層及び反応促進剤をシートメタルストリップの異なる面に塗布することで、接着剤と反応促進剤とは分離される。その結果、シートメタルストリップに塗布するまでの液状接着剤の保存安定性と、塗装プロセス後の接着層の時効安定性とが、混合反応促進剤を用いる従来の溶液と比較して著しく向上する。同時に、2つの層を連結した後の接着結合プロセスは、反応促進剤が存在するため、短くすることができる。したがって、第1の層は、キャリア層に含有する反応促進剤が後で用いられる準備を維持している持効性塗装を形成する。
【0015】
したがって、塗装シートメタルストリップは、保存安定性及び時効安定性に関して、またシートメタルストリップから製造されるラミネーションスタックの短い接着結合時間及び高い機械的安定性に関しても、総合的に所望の要件を満たすことができる。
【0016】
反応促進剤のキャリア層での保存を化学プロセスによって促進する少量の接着剤が、第1の層のキャリア層材料に添加されてよい。この場合の接着剤の量は少量であり、例えば、キャリア層の20vol%より少ない又はそれに等しい、あるいは10vol%である。
【0017】
キャリア層のキャリア層材料(少ない割合の接着剤の有無にかかわらず)の反応促進剤に対する比率は、例えば1/1と3/1との間、具体的には約2/1(単位:vol%)であってよい。
【0018】
例えば、第1の層は、反応促進剤を含有するキャリア層で構成されてよい。
【0019】
キャリア層は、例えば、有機樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、及び/又はフェノキシ樹脂を含んでもよく、又はこれらの物質のうちの1種又は複数種で構成されてもよい。
【0020】
反応促進剤は、例えば、尿素若しくは尿素誘導体、ルイス塩基(例えば、第三級アミン)、ルイス酸(例えば、BF)、又はイミダゾール、具体的には、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MIm)、又は他のイミダゾール誘導体若しくはイミダゾール付加物を含んでもよく、あるいはこれらの物質のうちの1種又は複数種で構成されてもよい。
【0021】
イミダゾールは、樹脂(例えば、エポキシ樹脂)の重合に効果的な触媒である。さらに、変性アミン又は複素環アミンも、反応促進剤として用いられてよい。
【0022】
第1の層は、大部分又は完全に接着剤を含まない層であってよい。すなわち、第1の層は、20vol%より少ない又はそれに等しい接着剤、具体的には、10vol%より少ない又はそれに等しい接着剤を含んでよく、又は接着剤を含まない。この文脈において、「接着剤」とは、第2の層の接着剤、又は反応促進剤と相互作用するあらゆる接着剤を意味し得る。この文脈において、「接着剤を含まない」とは、第2の層の接着剤を含まないこと、又は反応促進剤と相互作用するあらゆる接着剤を含まないことを意味し得る。
【0023】
しかしながら、第1の層は、20vol%の接着剤より高い割合の接着剤、例えば、30vol%、40vol%、50vol%、60vol%、又は70vol%より高い又はそれに等しい割合の接着剤を含むこともできる。
【0024】
第1の層がある割合の接着剤を含む場合、反応促進剤は接着剤と反応してよく(例えば、一例としてイミダゾールがベーキングラッカーのエポキシ基、すなわち例示的な接着剤と反応する)、その結果として、第1の層(つまり、「持効性層」)における反応促進剤付加物(例えば、イミダゾール付加物)のいわばインサイチュの製造につながる。
【0025】
例示的なイミダゾール付加物(又は一般に反応促進剤付加物)は、キャリア層、すなわち例えば比較的硬いフェノキシ樹脂に埋め込まれる。20vol%未満の接着剤(例えば、ベーキングラッカー)の場合、キャリア層(すなわち、例えばフェノキシ樹脂)の硬度が主である。このことは、第1の層(「持効性塗装」)の方が硬いという利点を有する。この利点が作用し始めるのは、塗装シートメタルストリップが巻き付けられてコイルになり、コイルの固有重量の結果として高い圧力が勝った場合である。
【0026】
しかしながら、20vol%を超える接着剤でも第1の層として可能であるということが実験で示されている。例として、30vol%の接着剤(例えば、ベーキングラッカー)が、40vol%の接着剤と同様に、50vol%の接着剤と同様に、60vol%の接着剤と同様に、70vol%の接着剤と同様に、接着結合後に、すなわち、反応促進剤が第1の層から第2の層に放出されたときに、塗装システム全体のより優れた均質性をもたらす。第1の層により多くの接着剤がある利点は、さらに、より多くのイミダゾール(又は一般に、反応促進剤)が接着剤で接合し得ることである。
【0027】
言い換えれば、反応促進剤が、例えば接着剤などのキャリアを有し、そのために反応促進剤付加物がインサイチュで形成されるならば、有利になり得ることが分かった。
【0028】
イミダゾールのほかに、イミダゾール誘導体も反応促進剤として用いられ得る。これは、第1の層に関して「接着剤を含まない」ことが、純粋なイミダゾールでは機能しない、又は非常に限られた程度にしか機能せず、その代わりに、イミダゾールがより高い分子量のイミダゾール誘導体又はイミダゾール付加物として存在する場合にしか機能しないので、有利になり得る。
【0029】
第1の層の厚さは、2μm、1μm、又は0.5μmより薄い又はそれに等しくなるように選択され得る。第1の層の厚さは、50nm、100nm、又は250nmより厚くなるように選択され得る。反応促進剤がかなり薄い厚さの層(持効性層)に収容されるという事実の結果として、反応促進剤は、熱接着結合プロセス時の拡散によって(つまり、短い拡散経路長を介して)第2の層の接着剤に容易に到達することができる。
【0030】
第1の層は、無機充填剤を含まなくてよい。これにより、反応促進剤の第2の層(接着層)への移動が容易になり得る。
【0031】
第1の層は、実質的に又は完全に、あらゆる接着剤を含まなくてよい、具体的には、反応促進剤が作用する接着剤を含まなくてよい。その結果、反応促進剤との好ましくない反応プロセスを防止することができる。第1の層は、接着剤を全く含まなくてもよい。しかしながら、例えば、第1の層における全体としての接着剤の割合が、例えば20vol%まで又はさらに多く(例えば30vol%、40vol%、50vol%、60vol%、又は70vol%)、好ましくない3次元架橋を引き起こすことなく添加され得る。反応促進剤が作用する接着剤(例えば、ベーキングラッカー又は第2の層の接着剤)の割合は、この場合、最大で10vol%を含み得る。第1の層の接着剤に関連するvol%の数字は、第1の層の全体積に基づいている。
【0032】
第2の層は、エポキシ樹脂ベースの層及び/又はベーキングラッカー層、具体的にはエポキシ樹脂ベースのベーキングラッカー層であってよい。これらの層により、高い結合力と優れた電気絶縁効果が可能になる。
【0033】
具体的には、塗装シートメタルストリップは、電気コアの製造に用いられる電気シートストリップになり得る。しかしながら、本明細書の開示は、シートメタルストリップも包含し、その接着結合は、電気コアではない構成部品を生み出す。
【0034】
塗装シートメタルストリップは、例えば、コイル(巻き線、巻き物、スプール)の形態で巻き上げられてよい。コイルの好ましくない予備反応が、ここでは、(室温で)反応促進剤に対して高い接合力を有するキャリア層に好適な材料によって抑制され得る。
【0035】
塗装シートメタルストリップを製造する方法が、例えば、圧延シートメタルストリップの第1平坦面の上に第1の層を塗布する段階であって、第1の層は、接着剤の反応促進剤を含有するキャリア層を含み、物理的基礎上に反応促進剤を保存する、段階と、接着剤を含む第2の層を圧延シートメタルストリップの第2平坦面の上に塗布する段階とを含むことができる。したがって、反応促進剤(活性剤)(いわゆる持効性塗装)を含有する第1の層は、接着剤を含有する第2の層と同様に、実質的に無端のシートメタルストリップに既に塗布されている可能性がある。
【0036】
キャリア層は、例えば、シートメタルストリップに直接的に塗布されてよい。
【0037】
第1の層は、接着剤を含まなくてもよく、又は既述したように、少ない割合の接着剤を任意選択で含有してもよい。既述したように、第2の層は、第1の層の反応促進剤を含まなくてもよく、又はあらゆる反応促進剤を含まなくてもよい。
【0038】
例えば、第1の層及び/又は第2の層はそれぞれ、ローラ式塗布で塗布され得る。他の塗布方法、例えば、印刷方式又は噴霧方式なども可能である。
【0039】
本方法はさらに、塗装シートメタルストリップを280℃、270℃、260℃、又は250℃より低い又はそれに等しい乾燥温度で乾燥させる段階を含んでよい。比較的低い乾燥温度を用いることで、主要部分の反応促進剤が第1の層のキャリア層材料に残留する、すなわち、放出されない又はわずかしか放出されないことが実現され得る。
【0040】
さらなる態様によれば、塗装シートメタルストリップが、第1平坦面と第2平坦面とを有する圧延シートメタルストリップを含んでよく、接着剤の反応促進剤を含む第1の層(第1の層は、例えば接着剤を含まなくてよい)が第1平坦面の上に配置され、接着剤を含まない絶縁ラッカー層を含む第3の層が第2平坦面の上に配置される。絶縁ラッカーで塗装され且つ持効性塗装を有する、そのようなシートメタルストリップは、同様に、シートメタルラミネーションで構成される構成部品(例えば、電気コア)を製造するための前駆体材料として用いられ得る。この場合の接着結合は、さらなるシートメタルストリップから製造されるシートメタルラミネーションを用いて達成され、このシートメタルストリップには、第1平坦面に接着層が設けられ、第2平坦面には塗装されていないか、第2平坦面にも絶縁ラッカー層が設けられている。したがって、持効性塗装を有するシートメタルストリップの第1平坦面の上に存在する反応促進剤は、他のシートメタルストリップに設けられた接着層と接着結合プロセスで相互作用するように、ここに設けられる。
【0041】
第1の層に関して、絶縁ラッカーで塗装され且つ持効性塗装を有するシートメタルストリップは、塗装シートメタルストリップとの接続で上述した全ての特徴を個々に又は組み合わせて持つことができる。
【0042】
第3の層(接着剤を含まない絶縁ラッカー層)は、塗装シートメタルストリップの第2の層の厚さ仕様に基づいた厚さにすることができる。
【0043】
本明細書での「絶縁ラッカー層」とは、電気的に絶縁しているが、後の接着結合プロセスでいかなる効果的な接着結合も可能にしない層のことを指す。
【0044】
本明細書での「接着層」とは、3次元架橋反応による(つまり化学的に)構成部品の寸法安定性を実現するために、接着結合プロセスでシートメタルラミネーションの接着結合をもたらす層のことを指す。さらに、接着層は任意選択で、接着結合したシートメタルラミネーション間に十分な電気絶縁性も、もたらしてよい(例えば、ベーキングラッカー層が接着層及び電気絶縁層の両方として機能する)。しかしながら、接着結合したシートメタルラミネーションから作られる一部の構成部品では、接着層はいかなる電気絶縁保証も確保せず、場合によっては導電性でさえあることも提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
これ以降は、例示的な実施形態及び発展例が、概略図面に基づいて例示形式で明らかにされ、異なる詳細の程度がこれらの図面の一部に用いられる。同じ参照符号は、同じ又は類似した部分を表している。
【0046】
図1】反応促進剤を有する第1の層と、接着剤を有する第2の層とを圧延シートメタルストリップのそれぞれ反対側の平坦面の上に塗布する例示的なプロセスを示す。
【0047】
図2】例えば、図1に示すプロセスで製造することができる、両面に塗装したシートメタルストリップの断面図を示す。
【0048】
図3図2の両面に塗装したシートメタルストリップを一緒に接着結合したラミネーションから構成部品を製造する例示的なプロセスを示す。
【0049】
図4】反応促進剤を有する第1の層と絶縁ラッカーを有する第3の層とを備えたさらなるシートメタルストリップの断面図を示す。
【0050】
図5図4のさらなるシートメタルストリップと接着剤塗装シートメタルストリップとを一緒に接着結合したラミネーションから製造される例示的な構成部品を示す。
【0051】
図6】2つの接着結合シートメタルストリップで構成された標本の、接着結合の直後及び時効後においてもローラ剥離耐性(単位:N/mm)を例示形式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書における「application(塗布)」又は「applying(塗布する)」及び他の類似用語(例えば「applied(塗布される)」などの用語は、塗布層が塗布される表面と直接接触していなければならないことを意味すると理解されるべきではない。「applied(塗布される)」要素又は層とその下に存在する表面との間に、介在する要素又は層が存在してもよい。しかしながら、本開示における上述の用語又は類似用語は、要素又は層が下に存在する表面と直接接触している、すなわち介在する要素又は層がないという特定の意味も有し得る。
【0053】
用語「over(の上)」は、表面「の上」に形成又は塗布される要素又は材料層に関して用いられており、ここでは、表面と要素又は材料層との間に介在する要素又は層が場合によっては存在している状態で、要素又は材料層が表面「の上に間接的に」塗布されるという意味で用いられてよい。しかしながら、用語「の上」は、表面「の上」に塗布される要素又は材料層が適切な表面「の上に直接」塗布される、すなわち直接接触しているという特定の意味も有してよい。同じことは、例えば、「overlying(の上にある)」、「below(の下)」、「underlying(の下にある)」などの類似用語にも同様に適用される。
【0054】
図1は、本発明の1つの態様による塗装シートメタルストリップ200を製造する方法100を、例示形式で示している。方法100の出発物は、圧延シートメタルストリップ110である。シートメタルストリップ110は、例えば、鋼鉄で構成され得る。シートメタルストリップ110は、例えば、電気コアの製造に提供される電気シートストリップであってよい。圧延シートメタルストリップ110は、連続したベルト搬送路(矢印Pを参照)における、例えば、製鋼所における、実質的に無端のシートメタルストリップ110の形態であってよい。
【0055】
シートメタルストリップ110は、最終アニールを施した状態にある、例えば、冷間圧延シートメタルストリップ又は電気シートストリップであってよい。他のシートメタルストリップ、例えば、最終アニールを施していないシートメタルストリップ又は電気シートストリップが同様に可能である。
【0056】
シートメタルストリップ110は、塗装システム150に供給される。ここに示す例では、塗装システム150は、両面塗装システム150として示されている。しかしながら、上面及び下面が異なる別の塗装システムで塗布されることも可能であり、それぞれの塗装システムは、圧延シートメタルストリップの一方の平坦面だけを塗装する。さらに、一方又は両方の塗装が複数の塗装システムによって行われる、すなわち、これらをそれぞれ複数の塗装段階に適用することも可能である。
【0057】
図1では、第1の層120が圧延シートメタルストリップ110の第1平坦面110Aの上に塗布され、第2の層130が、第1平坦面110Aの反対側に位置する、圧延シートメタルストリップ110の第2平坦面110Bの上に塗布される。
【0058】
第1の層120は、接着剤の反応促進剤を含有する、いわゆる持効性塗装である。第1の層は、反応促進剤が対象とする接着剤に関して、ほとんど又は完全に接着剤を含まなくてよい、すなわち、第1の層120に接着剤が存在しない又はわずかしか存在しない(例えば、20vol%又は10vol%より少ない又はそれに等しい)。同じことが、反応促進剤と相互作用するあらゆる接着剤に適用され得る。第1の層120は、接着剤が第1の層120に全く存在しないという意味で、完全に接着剤を含まなくてもよい。
【0059】
一方、第1の層120が高い割合の接着剤、例えば、30vol%、40vol%、50vol%、60vol%、70vol%を超える接着剤を含むことも可能であり、これによって、塗装シートメタルストリップ110を接着結合した後の塗装システム全体の、又は塗装メタルストリップから製造されるシートメタルラミネーション(シートメタルプレート)320(図3を参照)のより優れた均質性がもたらされる。この高い割合の接着剤は、具体的にはイミダゾールなどの低分子量の反応促進剤にとって有利であることが判明した。
【0060】
反応促進剤は、(第1の層120には存在していない)接着剤の活性剤又は触媒になり得る。つまり、反応促進剤は、接着剤と接触して熱活性化すると、化学接着剤の完全な反応に必要な時間を、例えば、反応促進剤を用いない場合に必要とされる時間と比較して、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍以上に短縮することができる。
【0061】
圧延シートメタルストリップ110の第2平坦面110Bの上に塗布される第2の層130には、接着剤が存在する。したがって、接着剤及び反応促進剤は、塗布の際に、またその後のベルト搬送路において、間にあるシートメタルストリップ110により分離されている。
【0062】
第1平坦面110A及び/又は第2平坦面110Bは、ローラ式塗布によって塗装され得る。例えば図1は、2つのローラ151、152を示しており、これらのローラはそれぞれ、第1の層120及び第2の層130を、例えば、湿式で塗布する。しかしながら、第1の層120及び/又は第2の層130の層塗布が他の方法で、例えば、噴霧方式又は印刷方式で実行されることも可能である。
【0063】
第1の層120及び第2の層130は、無塗装の圧延シートメタルストリップ110に、又は既に塗装済みのシートメタルストリップ110に塗布されてよい。例えば、下塗りの形態で前塗装(不図示)が存在してよく、その上に第1の層120及び/又は第2の層130が塗布される。ベルト搬送路において塗装システム150の上流側にある、シートメタルストリップ110の片面又は両面に、絶縁ラッカー層を事前に設けることも可能であり、これにより、第1の層120及び/又は第2の層130は、事前に塗布された絶縁ラッカー層に塗布される。例えば、絶縁ラッカー層に用いられ得る材料も、以下に言及される。
【0064】
第1の層120及び/又は第2の層130は、圧延シートメタルストリップ110のそれぞれの平坦面110A又は110Bに、全面を覆って又は表面の一部だけを覆って塗布されてよい。第2の層130は、例えば、シートメタルストリップ110の平坦面110Bの領域の80%、60%、40%、又は20%以下の範囲の程度で製造され得る。第2の層130は、例えば、縞模様で塗布され得る。第1の層120は、第1平坦面110Aに全面を覆って塗布されるのが好ましく、その表面の一部だけを覆って塗布することも、この層では任意選択で可能である。したがって、未塗布(左に開放した)領域も第2の層130で塗布されていないはずである。
【0065】
乾燥ステーション160が、ベルト搬送経路において塗装システム150の下流側に配置され得る。乾燥システム160は、例えば、連続式乾燥オーブンとして設計されてよく、塗装シートメタルストリップ110がこのオーブンを連続的に通過する。
【0066】
例えば、乾燥システム160内のシートメタルストリップ110の最高温度は、150℃と280℃との間にすることができ、270℃、260℃、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、205℃、195℃、185℃、175℃、又は165℃より低い又はそれに等しい温度の値にすることができる。
【0067】
乾燥システム160における熱処理時間は、例えば、10秒と40秒との間であってよく、具体的には、20秒又は30秒未満、20秒又は30秒と等しい、あるいは20秒又は30秒を超えてもよい。乾燥温度及び/又は熱処理時間の好適な選択の結果、反応促進剤が第1の層120に完全に又は実質的に完全に残留することが保証され得る。
【0068】
例えば、ローラ151によるローラ式塗布が乾燥システム160の下流側になるまで起こらないので、又は第1の層120のキャリア層が、図1に示すように、ベルト搬送路における乾燥システム160の上流側で塗布されるが、反応促進剤が乾燥システム160の下流側だけでさらなる塗布工程によって塗布されるので、ベルト搬送路の乾燥システム160の下流側で反応促進剤を塗布することも可能である。
【0069】
乾燥システム160では、第2の層130及び任意選択で第1の層120は、ベルト搬送路における乾燥システム160の下流側で、少なくともこれらの層120、130が機械的に安定で耐摩耗性を有する程度に乾燥される。したがって、これにより、乾燥した塗装シートメタルストリップ110を、例えば、偏向ローラによって又はコイル状に巻き上げることによって、さらに処理することが可能になる。第2の層130内の接着剤は、乾燥システム160で乾燥している間に、まだ活性化していない、すなわち、接着剤の化学反応(例えば、架橋)は始まっていない、又は少なくとも接着剤の反応は完了していない。
【0070】
図2は、図1で実施されたプロセスで両面に塗装されて製造されたシートメタルストリップ200を、例として示している。第1の層120の厚さD1は、0.5μm、1.0μm、又は2.0μmより薄い又はこれより厚い又はこれと等しくてよい。第1の層120は、反応促進剤が添加されたキャリア層で構成され得る。キャリア層は、例えば、有機樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、及び/又はフェノキシ樹脂で構成されてよく、又は上述した物質を含んでよい。
【0071】
反応促進剤は、例えばイミダゾール、具体的には1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、若しくは2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MIm)で構成されても、又は1種又は複数種の他のイミダゾール誘導体若しくはその付加物で、例えばエポキシ樹脂と共に構成されてもよく、又は、尿素若しくは尿素誘導体、ルイス塩基(例えば、第三級アミン)、ルイス酸(例えば、BF)を含んでも、又は上述した物質のうちの1種又は複数種で構成されてもよい。さらに、変性アミン又は複素環アミンも、反応促進剤として用いられてよい。上述された物質の全てが、個々に存在してもよく、又は反応促進剤に混合物として存在してもよい。
【0072】
キャリア層は、反応促進剤を保存する役割を果たす、すなわち、反応促進剤が第2の層130との連結を達成する前に第1の層120から流出するのを防止する役割を果たす。キャリア層材料は、反応促進剤を単に物理的方式で保存することができ、キャリア層材料はその目的に好適である。
【0073】
具体的には、低モル質量を有し容易に蒸発可能な反応促進剤の場合、物理的基礎上への保存は、任意選択で第1の層120のキャリア層材料に少量の接着剤を添加することで改善され得る。これにより、キャリア層での化学プロセスを介した反応促進剤の保存が容易になる。この場合の接着剤の量は、非常に少量(例えば、第1の層120/キャリア層の20vol%又は10vol%より少ない又はそれに等しい)のため、反応促進剤の著しい消費も、第1の層120/キャリア層の3次元架橋も起こらない。添加される接着剤は、例えば、第2の層に存在する接着剤及び/又は反応促進剤と相互作用する別の接着剤であってよい。
【0074】
キャリア層のキャリア層材料(少ない割合の接着剤の有無にかかわらず)の反応促進剤に対する比率は、例えば1/1と3/1との間、具体的には約2/1(単位:vol%)であってよい。
【0075】
キャリア層材料はさらに、例えば架橋剤(例えばイソシアン酸塩の群からのもの)などのさらなる活性物質も含有してよい。
【0076】
第2の層130では、例えばベーキングラッカーとして知られているものが用いられ得る。ベーキングラッカー層は、電気コアの製造用に特別に開発され、高い寸法安定性、動作安定性、及び高い結合力を有する、化学的に硬化する接着性絶縁ラッカー層である。例えば、Backlack-V(登録商標)として知られているものを用いるのが可能であり、これにより、高い結合力、低時効に起因した長い使用時間長、長期挙動の改善、及び低圧での短い焼成時間が可能になる。第2の層130の厚さD2は、例えば、4μm、6μm、8μm、10μm、12μm、又は15μmより薄い又はこれより厚い又はこれと等しくてよい。
【0077】
シートメタルストリップ110は、例えば、鋼鉄から製造され得る。シートメタルストリップ100の厚さD3は、例えば、0.35mm、0.5mm、0.75mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、又は2.5mmより厚い又はこれより薄い又はこれと等しくてよい。
【0078】
図3は、例えば塗装シートメタルストリップ200から製造される構成部品を製造する方法300を例として示す。塗装シートメタルストリップ200は、例えば、コイル(巻き線、巻き物、スプール)310の形態でよく、これは、例えば製鋼所により顧客に供給されている。
【0079】
1つの方法の段階では、塗装シートメタルストリップ200は、個々のシートメタルラミネーション(シートメタルプレート)320に分離される。この分離は、分離システム330で、例えば、塗装シートメタルストリップ200を短手方向に分割することにより実施され得る。シートメタルラミネーション320は次に、その最終形態に切断され得る。
【0080】
次いで、少なくとも2つのシートメタルラミネーション320_1及び320_2が積層され、接着剤を含有した第2の層130によって共に接着結合される。このために、340では、少なくとも2つのシートメタルラミネーション320_1、320_2は、一方のシートメタルラミネーション320_1の第2の層130が他方のシートメタルラミネーション320_2の第1の層120に面するように積層され、0.5~10MPa、具体的には2~5MPaの面圧(F)を(熱、紫外線放射、又は赤外線放射などによる)エネルギーの導入と共に印加することで一緒に押圧される。
【0081】
第2の層130内の接着剤は、化学反応、例えば、接着剤の3次元架橋を伴い得るプロセスで活性化される。(熱)接着結合プロセスにおいて、反応促進剤は、第1の層120から第2の層130の接着剤に拡散する。反応促進剤(活性剤、触媒)は、化学反応、したがって接着結合プロセスの大幅な促進をもたらすことができる。
【0082】
340での接着結合は、圧縮されたシートメタルラミネーション320_1、320_2を、例えば、オーブン又は温度Tに加熱可能な圧縮器(不図示)で加熱することにより達成され得る。この温度は、室温と比較して、例えば100℃から250℃、具体的には80℃から150℃の温度に上昇し、その結果、反応促進剤の第2の層130への拡散と、接着剤の活性化とを両方とも開始することが可能になる。例えば、放射エネルギーの印加を伴い得る他の活性化プロセスも同様に考えられる。短い接着結合時間t、例えば、20分、15分、10分、5分、1分より短い又はそれに等しい時間の後に、構成部品は機械的に仕上げられ、接着結合システム(例えば、オーブン又は圧縮器)から取り出されてよい。任意選択で、接着結合反応が、圧縮器の下流側で完了し、それでもツールの外側で継続することが可能である。
【0083】
反応促進に加えて反応促進剤を用いると、さらなる利点をもたらす。短い接着結合時間tに起因して、漏出挙動の改善が実現され得る。つまり、接着隙間での接着剤の側方漏出が最小限に抑えられる。反応促進剤は、より高い時効耐性の反応メカニズムを開始することも可能にする。すなわち、反応促進剤を用いた接着結合の時効安定性は、反応促進剤を用いない接着結合と比較して向上し得る(図6も参照)。
【0084】
図4は、さらなるシートメタルストリップ400の断面図を示す。このシートメタルストリップは、反応促進剤を有する第1の層120と、絶縁ラッカーを含む又はこれで構成される任意選択の第3の層430とを有する。
【0085】
繰り返しを避けるために、シートメタルストリップ110及び第1の層120に関する上記の説明を参照されたい。
【0086】
第3の層430の絶縁ラッカーは、例えば、C6ラッカーであってよい。具体的には、例えば、Remisol EB500FF C6ラッカーを用いることが可能である。この場合の「FF」は、「ホルムアルデヒドなし」(つまり、ホルムアルデヒドの放出がない)を表す。例えば、C5ラッカー又はC3ラッカーも、同様に使用可能である。第3の層430の絶縁ラッカーは、接着剤を含まなくてよい。
【0087】
図5は、持効性塗装を有するさらなるシートメタルストリップ400(図4を参照)と接着剤塗装シートメタルストリップ510とを一緒に接着結合したラミネーションから製造される例示的な構成部品500を示している。
【0088】
接着剤塗装シートメタルストリップ510は、シートメタルストリップ110と、シートメタルストリップ110の第2平坦面110Bの上に配置される第2の層130とを含んでよく、これらは、前述の説明に従って設計されてよい。しかしながら、塗装シートメタルストリップ200とは異なり、接着剤塗装シートメタルストリップ510は第1の層120(持効性塗装)を有していない。その代わり、シートメタルストリップ110の第1平坦面110Aは、無塗装であってもよく、場合によっては第3の層430に対応する絶縁ラッカー塗装530で塗装されてもよい。
【0089】
したがって、図5に示す構成部品500を製造するために、通常は2つのコイルの形態で供給される2つの異なるシートメタルストリップが必要とされ、一方のコイル(不図示)は持効性塗装を有するシートメタルストリップ400を含み、他方のコイル(不図示)は接着剤塗装を有するシートメタルストリップ510を含む。
【0090】
次いで、接着結合が図3を参照して説明されたのと同様に達成され、ここでも、反応促進剤と接着剤との間の接触は、接着結合プロセスまで起こらず、したがって、上述したのと同じ特徴、特性、及び利点が存在し実現される。
【0091】
図3及び図5によって示される構成部品は、全ての例示的な実施形態において、図示された2つの接着剤結合シートメタルラミネーションより実質的に多く含むことができ、例えば、多数の(例えば、10、50、100などより多い又はこれに等しい)シートメタルラミネーションの積層によって製造され得る。
【0092】
図6のグラフは、2つの接着結合シートメタルストリップで構成された標本の接着結合直後及び時効後も併せて、ローラ剥離耐性(単位:N/mm)を示す実験の結果を示している。ローラ剥離耐性とは、2つの接着結合シートメタルストリップを引き離すのに必要な引き裂き力の測定値である。
【0093】
接着結合温度Tは、この実験では150℃だった。10分の接着結合時間tだけ待ち、3MPaの押圧力(F)が印加された。反応促進剤として、第1の層120には2E4MImが用いられ、第2の層130はBacklack-V(登録商標)層とした。
【0094】
この実験の結果は、これらのパラメータを用いると、平均で6N/mm以上の引き裂き力を有する高強度結合のシートメタルストリップが、接着結合の直後に実現された(棒グラフ601)ことを示している。1か月の時効後に(棒グラフ602)、強度の値は同じ領域内にあった(実験公差を参照)。すなわち、時効の結果として、接着結合に著しい劣化は検出されなかった。
【0095】
比較すると、持効性塗装がない(つまり、反応促進剤を用いない)場合、これらのパラメータで任意の利用可能な接着結合を実現することは可能ではなかった(右側の棒グラフ603を参照)。
【0096】
図6の実験を参照して示された結果は、一般に、本開示内で説明される全ての例示的な実施形態に通用し得る有効な説明を表していると考えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6