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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20230511BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230511BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230511BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230511BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/38
C09J11/06
C09J175/04
G02B5/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019060288
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158653
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】亀山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】服部 慎也
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-172578(JP,A)
【文献】特開2011-037927(JP,A)
【文献】特開2017-057295(JP,A)
【文献】特表2008-517137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0279922(US,A1)
【文献】特開2014-084386(JP,A)
【文献】特開2013-224431(JP,A)
【文献】特開2005-200567(JP,A)
【文献】特開2019-065113(JP,A)
【文献】特開2019-002020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/04
C09J 7/38
C09J 11/06
C09J 175/04
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、
金属キレート系化合物と、
トリレンジイソシアネート系化合物と、を含み、
前記金属キレート系化合物の含有量が、前記トリレンジイソシアネート系化合物の含有量よりも多く、かつ、
前記金属キレート系化合物及び前記トリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下の範囲であり、
前記金属キレート系化合物が、アルミニウムキレート化合物であり、
偏光板を被着体に貼着させる用途に用いられる粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体における前記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、1質量%以上5質量%以下の範囲である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体における前記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.1質量%以上3質量%以下の範囲である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
仮支持体上に塗布した粘着剤組成物に対し、100℃の空気を風速3m/秒で1分間吹き付けて形成した厚さ20μmの膜を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に3時間置いたときの膜のゲル分率が、80質量%以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
基材と、前記基材上に設けられ、かつ、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯端末等の携帯電子機器は、液晶表示装置が組み込まれているものが多い。一般に、液晶表示装置は、2枚のガラス基板に液晶層が挟まれた液晶セルと、液晶セルの両面に配置される偏光板とを備えている。液晶セルと偏光板とは、液晶表示装置の視認性を確保する観点から、一般的には、アクリル系粘着剤により形成される粘着剤層を介して貼合される。
【0003】
例えば、特許文献1には、アクリル系ポリマー100質量部と、イソシアネート系硬化剤5質量部~50質量部とを含有することを特徴とする光学用粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-37927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着剤層を備える偏光板(以下、「粘着剤層付き偏光板」ともいう。)は、ロール状態で保管された後、所望の大きさに裁断されて使用される。しかし、近年、作業効率を高める観点から、粘着剤組成物を塗工した偏光板を、塗工直後に裁断し、その後、養生させたいとの要望がある。しかし、架橋が不十分(即ち、養生が不十分)な状態で、偏光板を裁断すると、裁断刃に粘着剤が付着する、粘着剤層付き偏光板同士が貼り付く等の問題が発生する。そのため、偏光板に用いられる粘着剤組成物には、上記のような問題を発生し難い粘着剤層(所謂、加工性に優れる粘着剤層)を形成できることが求められる。
【0006】
また、偏光板に用いられる粘着剤組成物には、高温(例えば、105℃)環境下に曝された場合でも、発泡、浮き、及び剥がれを抑制できる性質(以下、「高温耐久性」ともいう。)に優れる粘着剤層を形成できることが求められる。
【0007】
粘着剤層の加工性を改善するには、例えば、粘着剤組成物に含まれる架橋剤の量を増やし、粘着剤層の粘弾率を高めることが考えられる。しかし、粘弾率が高い粘着剤層は、高温環境下において高い応力がかかると、偏光板の収縮を抑制できず、発泡、浮き、及び剥がれが生じ得る。
【0008】
以上のとおり、高温耐久性及び加工性が共に優れる粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現することは困難であった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高温耐久性及び加工性に優れる粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、並びに、上記粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> (メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、
金属キレート系化合物と、
トリレンジイソシアネート系化合物と、を含み、
上記金属キレート系化合物の含有量が、上記トリレンジイソシアネート系化合物の含有量よりも多く、かつ、
上記金属キレート系化合物及び上記トリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下の範囲である粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体における上記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、1質量%以上5質量%以下の範囲である<1>に記載の粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体における上記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.1質量%以上3質量%以下の範囲である<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
<4> 仮支持体上に塗布した粘着剤組成物に対し、100℃の空気を風速3m/秒で1分間吹き付けて形成した厚さ20μmの膜を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に3時間置いたときの膜のゲル分率が、80質量%以上である<1>~<3>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
<5> 基材と、上記基材上に設けられ、かつ、<1>~<4>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温耐久性及び加工性に優れる粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、並びに、上記粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0015】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0016】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0017】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体」ともいう。〕と、金属キレート系化合物と、トリレンジイソシアネート系化合物と、を含み、上記金属キレート系化合物の含有量が、上記トリレンジイソシアネート系化合物の含有量よりも多く、かつ、上記金属キレート系化合物及び上記トリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下の範囲である。
本発明の粘着剤組成物は、上記のような構成を有することで、高温耐久性及び加工性に優れる粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0018】
本発明の粘着剤組成物では、特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基と金属キレート系化合物との反応後に、特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基とトリレンジイソシアネート系化合物中のイソシアネート基との反応が進行する。(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基と、金属キレート系化合物とが速やかに反応するため、養生に多くの時間を要しない。このため、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、例えば、塗工から比較的短時間で裁断しても、裁断刃への粘着剤の付着及び粘着シート同士の貼り付きが生じ難く、加工性に優れる。また、本発明の粘着剤組成物は、金属キレート系化合物の含有量がトリレンジイソシアネート系化合物の含有量よりも多い。このため、形成される粘着剤層の弾性率が過度に高くならず、高温(例えば、105℃)環境下に曝された場合でも、発泡、浮き、及び剥がれが生じ難い。なお、金属キレート系化合物の架橋は、共有結合ではなく、イオン結合であるため、熱により結合が外れ、その後、再結合が可能であり、トリレンジイソシアネート系化合物の架橋点が存在することで、再結合が適切に行える。このため、形成される粘着剤層は、見かけ上、凝集力が大きくても、被着体の収縮に伴う応力に追随でき、高温耐久性に優れる。さらに、本発明の粘着剤組成物は、金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が特定の範囲内であるため、形成される粘着剤層の高温耐久性と加工性とをバランス良く改善できる。
以上により、本発明の粘着剤組成物は、高温耐久性及び加工性に優れる粘着剤層を形成できると考えられる。
【0019】
これに対し、特許文献1(特開2011-37927号公報)には、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位と水酸基を有する単量体に由来する構成単位とを両方含む(メタ)アクリル系共重合体と、トリレンジイソシアネート系化合物と、金属キレート系化合物とを併用した例は、記載されていない。また、特許文献1には、金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物を含む光学用粘着剤が記載されているが、その合計含有量は、非常に少なく、かつ、金属キレート系化合物の含有量とトリレンジイソシアネート系化合物の含有量が同じである。このため、特許文献1に記載の光学用粘着剤により形成された粘着剤層は、例えば、塗工から比較的短時間で裁断された場合には、裁断刃への粘着剤の付着及び粘着シート同士の貼り付きが生じ、かつ、高温耐久性にも劣ると考えられる。
【0020】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について説明する。
【0021】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体〕
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体〕を含む。
本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0022】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する。
【0023】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、粘着力及び基材密着性の観点から、1~18であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、凝集力と粘着力とを調整しやすいとの観点から、メチルアクリレート(MA)及びn-ブチルアクリレート(n-BA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0026】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0027】
特定(メタ)アクリル系共重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率(即ち、割合)は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
特定(メタ)アクリル系共重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率の上限は、特に制限されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、98.5質量%以下であることが好ましい。
【0028】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基は、後述の金属キレート系化合物と速やかに反応する。
【0029】
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0030】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、レイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、共重合性の観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0032】
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下の範囲であることがより好ましく、2質量%以上4質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して1質量%以上であると、カルボキシ基と金属キレート系化合物とが十分に反応し、形成される粘着剤層の加工性がより向上する傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して5質量%以下であると、例えば、基材が偏光板である場合には、基材の劣化がより生じ難くなる傾向がある。
【0033】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
水酸基を有する単量体に由来する構成単位の水酸基は、後述のトリレンジイソシアネート系化合物のイソシアネート基と架橋する。
【0034】
本明細書において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0035】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ジカプロラクトン2-アクリロイルオキシ-エチルエーテルなどが挙げられる。
これらの中でも、水酸基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体との共重合性が良好であるとの観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述のトリレンジイソシアネート系化合物との反応性が良好であるとの観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0036】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0037】
特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.1質量%以上3質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.3質量%以上1質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.1質量%以上であると、水酸基とトリレンジイソシアネート系化合物のイソシアネート基とが十分に反応し、形成される高温耐久性がより向上する傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して3質量%以下であると、形成される粘着剤層が硬くなりすぎず、形成される高温耐久性がより向上する傾向がある。
【0038】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の効果が発揮される範囲内において、既述の構成単位、すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、水酸基を有する単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0039】
その他の構成単位を構成する単量体は、既述の構成単位を構成する単量体と共重合できるものであれば、特に限定されない。
その他の構成単位を構成する単量体の具体例としては、アミノ基を有する単量体、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される環状基を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステル、並びに、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0040】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、50万以上200万以下の範囲であることが好ましく、50万以上180万以下の範囲であることがより好ましく、60万以上150万以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が50万以上であると、高温環境下に曝された場合に生じ得る粘着剤層の発泡が低減される傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が200万以下であると、粘着剤組成物の粘度が高くなりすぎず、粘着剤組成物をより良好に塗工できる。
【0041】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体の質量割合)が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0042】
~条件~
測定装置:高速GPC(型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製)
検出器:示差屈折率計(RI)(HLC-8220に組込、東ソー(株)製)
カラム:TSK-GEL GMHXL(東ソー(株)製)を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
注入量:100μL
流量:0.6mL/分
【0043】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率(割合)は、特に限定されないが、例えば、粘着力を調整しやすいとの観点から、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、50質量%以上99質量%以下の範囲であることが好ましく、75質量%以上97質量%以下の範囲であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
【0044】
本明細書において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
【0045】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合して製造できる。
【0046】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0047】
重合方法としては、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合が好ましい。
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中及び/又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0048】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環式系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環式系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時には、これらの有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アルコール化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、例えば、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0050】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
重合反応時には、これらの重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0052】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール、及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0053】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0054】
重合温度は、特に限定されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0055】
〔金属キレート系化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、金属キレート系化合物を含む。
金属キレート系化合物は、架橋剤として機能する。
【0056】
金属キレート系化合物は、特に限定されない。
金属キレート系化合物としては、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、金属キレート系化合物としては、化合物として安定であり、取り扱いが容易であるとの観点から、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
【0057】
金属キレート系化合物としては、市販品を使用できる。
金属キレート系化合物の市販品の例としては、「アルミキレートA」、「アルミキレートD」、及び「ALCH-TR」〔以上、川研ファインケミカル(株)製〕が挙げられる。
【0058】
本発明の粘着剤組成物は、金属キレート系化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0059】
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系化合物の含有量は、トリレンジイソシアネート系化合物の含有量よりも多く、トリレンジイソシアネート系化合物の含有量に対して1.1倍量以上であることが好ましく、1.5倍量以上であることがより好ましく、2.0倍量以上であることが更に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系化合物の含有量は、トリレンジイソシアネート系化合物の含有量よりも多いと、形成される粘着剤層の弾性率が過度に高くならず、高温耐久性が向上し得る。
また、本発明の粘着剤組成物における金属キレート系化合物の含有量は、例えば、トリレンジイソシアネート系化合物の含有量に対して5.0倍量以下であることが好ましい。
【0060】
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下の範囲であり、6質量部以上30質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上25質量部以下の範囲であることがより好ましい。
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以上であると、形成される粘着剤層の加工性が向上し得る。
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して30質量部以下であると、形成される粘着剤層の弾性率が過度に高くならず、高温耐久性が向上し得る。
【0061】
〔トリレンジイソシアネート系化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、トリレンジイソシアネート系化合物を含む。
トリレンジイソシアネート系化合物は、架橋剤として機能する。
なお、本発明の粘着剤組成物は、トリレンジイソシアネート系化合物に代えて、他のポリイソシアネート系化合物〔例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)〕を含むと、ゲル化し、塗工が困難となる。
【0062】
トリレンジイソシアネート系化合物は、特に限定されない。
トリレンジイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート体、TDIのアダクト体[即ち、TDIとポリオール化合物〔例えば、トリメチロールプロパン(TMP)〕との付加体]等が挙げられる。
これらの中でも、トリレンジイソシアネート系化合物としては、反応速度及びポットライフがいずれも適度となるとの観点から、TDIのアダクト体が好ましい。
【0063】
トリレンジイソシアネート系化合物としては、市販品を使用できる。
トリレンジイソシアネート系化合物の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2030」、及び「コロネート(登録商標) 2037」〔以上、東ソー(株)製〕が挙げられる。
【0064】
本発明の粘着剤組成物は、トリレンジイソシアネート系化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0065】
本発明の粘着剤組成物におけるトリレンジイソシアネート系化合物の含有量は、金属キレート系化合物の含有量よりも少なく、かつ、金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下の範囲であれば、特に限定されない。
本発明の粘着剤組成物におけるトリレンジイソシアネート系化合物の含有量は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、2質量部以上14質量部以下の範囲であり、3質量部以上12質量部以下の範囲であることが好ましく、4質量部以上10質量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0066】
〔シランカップリング剤〕
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含むと、形成される粘着剤層のガラス及びSUS(ステンレス鋼)に対する接着性が向上し、ガラス又はSUS(ステンレス鋼)を被着体とした場合に、高温耐久性がより向上する傾向がある。
【0067】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0068】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品の例としては、「KBM-403」、「X-41-1053」、及び「KBM-9659」〔以上、信越化学工業(株)製〕が挙げられる。
【0069】
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0070】
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上1.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.2質量部以上0.8質量部以下の範囲であることがより好ましく、0.3質量部以上0.5質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
【0071】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、例えば、塗布性向上の観点から、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0072】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0073】
本発明の粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0074】
〔他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0075】
本発明の粘着剤組成物がこれらの他の成分を含む場合、当該他の成分の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲内において、適宜設定できる。
【0076】
(ゲル分率)
本発明の粘着剤組成物は、以下のような物性を示すことが好ましい。
仮支持体上に塗布した粘着剤組成物に対し、100℃の空気を風速3m/秒で1分間吹き付けて形成した厚さ20μmの膜を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に3時間置いたときの膜(所謂、粘着膜)のゲル分率が、80質量%以上である。
上記ゲル分率が80質量%以上であることは、架橋反応が短時間で進行することを意味する。上記ゲル分率が80質量%以上である粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シートは、例えば、塗工から比較的短時間で裁断されても、裁断刃への粘着剤の付着及び粘着シート同士の貼り付きが生じ難い傾向がある。
【0077】
本明細書では、説明の便宜上、上記ゲル分率を「塗工から3時間後のゲル分率」ともいう。
【0078】
本発明の粘着剤組成物の塗工から3時間後のゲル分率は、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
本発明の粘着剤組成物の塗工から3時間後のゲル分率の上限は、特に限定されないが、例えば、高温環境下に曝された場合に生じ得る粘着剤層の剥がれをより抑制できるとの観点から、99質量%以下であることが好ましい。
【0079】
本発明の粘着剤組成物の塗工から3時間後のゲル分率は、上記粘着膜を用いて測定される。本明細書において、「粘着膜のゲル分率」は、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される溶媒不溶分の割合である。
本発明の粘着剤組成物の塗工から3時間後のゲル分率は、具体的には、下記(1)~(4)に従って測定する。
(1)精密天秤を用いて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、粘着膜を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着膜を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。次いで、試料の質量(即ち、粘着膜を貼付した金網の浸漬前の質量)を、精密天秤を用いて正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。次いで、この乾燥後の試料の質量(即ち、浸漬後乾燥させた、粘着膜を貼付した金網の質量)を、精密天秤を用いて正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは、金網の質量(単位:g)であり、Yは、粘着膜を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)であり、Zは、浸漬後乾燥させた、粘着膜を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0080】
[粘着剤組成物の用途]
本発明の粘着剤組成物の用途は、特に限定されない。
本発明の粘着剤組成物の用途としては、例えば、光学用途、商業用途、工業用途、建築用途、医療用途等の用途が挙げられる。
【0081】
本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温耐久性に優れるのみならず、粘着剤組成物の塗工から比較的短時間で裁断された場合でも、裁断刃に粘着剤が付着する、粘着シート同士が貼り付く等の問題が生じ難く、加工性に優れる。このため、本発明の粘着剤組成物は、特に、偏光板を被着体に貼着させる用途に好適である。
【0082】
また、本発明の粘着剤組成物は、被着体の種類を問わず、用いることができる。
本発明の粘着剤組成物は、有機材料及び無機材料のいずれの材質の被着体に対しても好適に用いることができる。
有機材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、PET)、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリイミド系樹脂等の樹脂が挙げられる。
無機材料としては、例えば、アルミニウム、銅、及びSUS(ステンレス鋼)に代表される各種金属、並びに、ガラスが挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、特に、SUS(ステンレス鋼)、ポリイミド系樹脂、又はガラスを材質とする被着体に対して好適に用いることができる。
【0083】
具体的な用途としては、偏光板を液晶セルに貼着させる用途、偏光板を位相差フィルム等の光学フィルムに貼着させる用途、タッチパネルの各構成部材を貼り合わせる用途、ステッカー、再帰反射シート、及びレーザーマーキングラベルに代表される情報表示フィルムを各種部材に貼着させる用途などが挙げられる。
【0084】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、基材と、上記基材上に設けられ、かつ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温耐久性に優れる。また、本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、粘着剤組成物の塗工から比較的短時間で裁断された場合でも、裁断刃に粘着剤が付着する、粘着シート同士が貼り付く等の問題が生じ難く、加工性に優れる。
【0085】
基材は、その基材上に粘着剤層を形成できれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0086】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0087】
基材は、偏光板であることが好ましい。
本発明における偏光板は、少なくとも偏光子を含んで構成されるものであり、偏光子単体であってもよく、偏光子と保護フィルムとを積層したものであってもよい。
すなわち、偏光板は、偏光子単独の1層構造であってもよく、偏光子の片面に保護フィルムを有する2層構造であってもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有する3層構造であってもよい。
【0088】
基材が偏光板である場合、本発明の粘着シートの層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光子、粘着剤層/偏光子/保護フィルム、粘着剤層/保護フィルム/偏光子/保護フィルム、及び粘着剤層/保護フィルム/偏光子が挙げられる。
なお、偏光子と保護フィルムとの間、保護フィルムと粘着剤層との間、及び偏光子と粘着剤層との間に、位相差フィルム(例えば、EWV層に代表される光学機能性層、接着剤層、及び易接着層)などの層を有していてもよい。
【0089】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。
【0090】
保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリシクロオレフィン(COP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、及びアクリルフィルムが挙げられる。
【0091】
基材の厚さは、一般には500μm以下であり、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
基材の厚さの下限は、特に限定されず、例えば、30μm以上であることが好ましい。
【0092】
粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物により形成され、粘着剤組成物の架橋物を含む。
粘着剤層の形成方法は、特に限定されず、通常用いられる方法を採用できる。
基材上に粘着剤層を形成する方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、基材上に塗布し、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥して溶媒を除去した後、養生を行うことにより、基材上に粘着剤層を形成する。
【0093】
なお、露出した粘着剤層の表面は、剥離フィルムによって保護してもよい。
剥離フィルムとしては、粘着剤層の表面からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離剤による表面処理が施された紙、樹脂フィルム等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0094】
基材上に粘着剤層を形成する別の方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、剥離フィルムの表面処理が施された面上に塗布し、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥して溶媒を除去する。次いで、剥離フィルムの粘着剤層が形成された側の面を基材に接触させて加圧し、粘着剤層を基材に転写することにより、基材上に粘着剤層を形成する。次いで、養生を行う。
【0095】
基材上又は剥離フィルム上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材上又は剥離フィルム上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0096】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、基材及び被着体の種類、基材及び被着体の表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。
粘着剤層の厚さは、一般には1μm~100μmであり、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~30μmであることがより好ましい。
【0097】
基材上又は剥離フィルム上に形成した塗布膜を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。
【0098】
養生は、例えば、20℃~40℃の環境下で、24時間~168時間行う。
養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【0099】
本発明の粘着シートの被着体は、特に限定されない。
本発明の粘着シートは、被着体の種類を問わず、用いることができる。
本発明の粘着シートは、有機材料及び無機材料のいずれの材質の被着体に対しても好適に用いることができる。
有機材料及び無機材料の具体例は、[粘着剤組成物の用途]の項において説明した有機材料及び無機材料の具体例と同義であるため、ここでは説明を省略する。
本発明の粘着シートは、特に、SUS(ステンレス鋼)、ポリイミド系樹脂、又はガラスを材質とする被着体への貼着に好適に用いることができる。
【実施例
【0100】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
[(メタ)アクリル系共重合体の製造]
(製造例A-1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体)96.5質量部、2-ヒドロキシルエチルアクリレート(2HEA;水酸基を有する単量体)0.5質量部、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)3.0質量部、及び酢酸エチル70.0質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。
次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN;重合開始剤)0.02質量部と、酢酸エチル120.0質量部と、を逐次添加し、6時間保持して重合反応させ、重合反応物を得た。得られた重合反応物を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度18.5質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液を得た。
【0102】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液に占める、(メタ)アクリル系共重合体A-1の質量割合を意味する。以下の(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-14の各溶液についても同様である。
【0103】
(製造例A-2~A-5、A-7~A-10、A-13、及びA-14)
製造例A-2~A-5、A-7~A-10、A-13、及びA-14では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が18.5質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-5、A-7~A-10、A-13、及びA-14の各溶液を得た。
【0104】
(製造例A-12)
製造例A-12では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、重合温度及び重合時間を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が18.5質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-12の溶液を得た。
【0105】
(製造例A-6)
温度計、撹拌機、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体)32.3質量部、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)1.0質量部、及び酢酸エチル60質量部を入れて混合し、混合物を得た。
次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら95℃に昇温した後、n-ブチルアクリレート(n-BA)64.7質量部と、アクリル酸(AA)2.0質量部と、酢酸エチル86.0質量部と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN;重合開始剤)0.09質量部と、を逐次添加し、5時間保持して重合反応させ、重合反応物を得た。得られた重合反応物を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度38.0質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系共重合体A-6の溶液を得た。
【0106】
(製造例A-11)
製造例A-11では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例A-6と同様の操作を行い、固形分濃度が38.0質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-11の溶液を得た。
【0107】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-14の単量体組成(単位:質量%)及び重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10」と表記)〕を表1に示す。
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-14の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「MA」:メチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「BZA」:ベンジルアクリレート(その他の単量体)
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート(水酸基を有する単量体)
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート(水酸基を有する単量体)
「AA」:アクリル酸(カルボキシ基を有する単量体)
「M-5300」〔商品名、東亞合成(株)〕:ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(カルボキシ基を有する単量体)
【0110】
表1中、「-」は、該当する欄の単量体を使用していないことを意味する。
表1では、「重量平均分子量(Mw)」を単に「Mw」と表記した。
【0111】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系共重合体として(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液100質量部(固形分換算値)と、トリレンジイソシアネート系化合物としてコロネート(登録商標) L-45E〔商品名、東ソー(株)製〕5質量部(固形分換算値)と、金属キレート系化合物としてアルミキレートA〔商品名、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムの含有率:8.3質量%、川研ファインケミカル(株)製〕をアセチルアセトンで1:1の割合で希釈したものを24質量部(金属キレート系化合物として12質量部)と、シランカップリング剤としてKBM-403〔商品名、信越化学工業(株)製〕0.3質量部と、適量の酢酸エチルと、を十分に撹拌混合し、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0112】
〔実施例2~18〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~18の各粘着剤組成物を得た。
【0113】
〔比較例1~9〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~9の各粘着剤組成物を得た。
【0114】
実施例1~18の各粘着剤組成物の組成(単位:質量部)を表2に示し、比較例1~9の各粘着剤組成物の組成(単位:質量部)を表3に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
表2及び表3中、「粘着剤組成物の組成」の欄における「-」は、該当する成分を含んでいないことを意味する。
【0118】
表2及び表3に記載の成分の詳細は、以下の通りである。
〔架橋剤〕
<TDI(トリレンジイソシアネート)>
「コロネート L-45E」〔商品名、東ソー(株)製〕:TDIとトリメチロールプロパン(TMP)との付加体(所謂、TDIのアダクト体)、固形分:45質量%、イソシアネート基の含有率:7.9質量%
「コロネート 2030」〔商品名、東ソー(株)製〕:TDIのイソシアネートヌレート体、固形分:50質量%、イソシアネート基の含有率:8.0質量%
<XDI(キシリレンジイソシアネート)>
「タケネート D-110N」〔商品名、三井化学(株)製〕:XDIとトリメチロールプロパン(TMP)との付加体(所謂、XDIのアダクト体)、固形分:75質量%
<HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)>
「スミジュール N-75」〔商品名、住化コベストロウレタン(株)製〕:HMDIのビュレット体、固形分:75質量%
<金属キレート系化合物>
「アルミキレートA」〔商品名、川研ファインケミカル(株)製〕
【0119】
なお、「コロネート」、「タケネート」、及び「スミジュール」は、いずれも登録商標である。
【0120】
〔シランカップリング剤〕
「KBM-403」〔商品名、信越化学工業(株)製〕:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシ基含有シラン化合物、固形分:100質量%
「X-41-1053」〔商品名、信越化学工業(株)製〕:エポキシ基含有シラン化合物、固形分:100質量%
「KBM-9659」〔商品名、信越化学工業(株)製〕:トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、固形分:100質量%
【0121】
[塗工から3時間後のゲル分率の測定]
実施例1~18、並びに、比較例1~4及び6~8の各粘着剤組成物について、以下に示す方法により、塗工から3時間後のゲル分率を測定した。結果を表4に示す。
なお、比較例5及び比較例9の粘着剤組成物は、いずれもゲル化し、塗工不能であったため、ゲル分率を測定できなかった。
【0122】
〔ゲル分率測定用サンプルの作製〕
(実施例1)
シリコーン系離型剤による表面処理が施された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の表面処理面上に、粘着剤組成物を約110μmの厚さで塗布し、塗布膜を形成した。
次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で1分間吹き付けて、厚さ20μmの膜Xを形成した。
次いで、形成した膜Xを、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に3時間放置し、剥離フィルム/粘着膜の構成を有する積層体を得た。
そして、積層体の剥離フィルムを剥がし、得られた粘着膜をゲル分率測定用サンプルとした。
【0123】
(実施例2~18、並びに、比較例1~4及び6~8)
膜Xの厚さが20μmとなるように、粘着剤組成物の塗布量を適宜変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、剥離フィルム/粘着膜の構成を有する積層体を得た。
そして、積層体の剥離フィルムを剥がし、得られた粘着膜をゲル分率測定用サンプルとした。
【0124】
〔ゲル分率測定〕
上記にて作製したゲル分率測定用サンプル(即ち、粘着膜)を用い、下記(1)~(4)に従って、ゲル分率を測定した。
(1)精密天秤を用いて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、粘着膜を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着膜を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。次いで、試料の質量(即ち、粘着膜を貼付した金網の浸漬前の質量)を、精密天秤を用いて正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。次いで、この乾燥後の試料の質量(即ち、浸漬後乾燥させた、粘着膜を貼付した金網の質量)を、精密天秤を用いて正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは、金網の質量(単位:g)であり、Yは、粘着膜を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)であり、Zは、浸漬後乾燥させた、粘着膜を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0125】
[評価]
実施例1~18、並びに、比較例1~4及び6~8の各粘着剤組成物について、下記の評価を行った。結果を表4に示す。
なお、比較例5及び比較例9の粘着剤組成物は、いずれもゲル化し、塗工不能であったため、評価を行わなかった。
【0126】
1.高温耐久性
(粘着シートの作製)
高温耐久性の評価には、基材が偏光板である粘着シートを用いた。
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の表面処理面上に、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の膜Yの厚さが20μmとなる量とした。
次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で1分間吹き付けて、厚さ20μmの膜Yを形成した。
次いで、形成した膜Yの露出した面と、トリアセチルセルロース(TAC)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の構造を有する偏光板の一方のTAC層の面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度35℃及び50%RHの環境下に3日間放置し、養生させることで、架橋反応を進行させて、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着シートを作製した。
【0127】
(高温耐久性評価用サンプルの作製)
上記にて作製した粘着シートを25mm×75mm(長辺)の大きさに切断した。
次いで、切断した粘着シートの剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、表4に記載の被着体の面と、を重ねて貼り合わせた後、ラミネーターを用いて圧着し、積層体を作製した。
次いで、作製した積層体に対し、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:5kg/cm、処理時間:20分間)を施した後、雰囲気温度23℃及び65%RHの環境下に1時間放置し、高温耐久性評価用サンプルを作製した。
【0128】
(評価試験)
上記にて作製した高温耐久性評価用サンプルを105℃の状態に保った恒温器に入れ、500時間放置した。放置時間が経過した後、恒温器から高温耐久性評価用サンプルを取り出し、外観を目視により観察した。そして、下記の評価基準に従って、高温耐久性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0129】
-評価基準-
A:発泡、浮き、及び剥れが全く認められなかった。
B:発泡、浮き、及び剥れがほとんど認められなかった。
C:発泡、浮き、及び剥れが少し認められたが、許容範囲内であった。
D:発泡、浮き、及び剥れが認められ、許容範囲外であった。
【0130】
2.加工性(粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付き)
(粘着シートの作製)
粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きに基づく加工性の評価には、基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである粘着シートを用いた。
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の表面処理面上に、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の膜Zの厚さが20μmとなる量とした。
次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で1分間吹き付けて、厚さ20μmの膜Zを形成した。
次いで、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下、膜Zの露出した面と、基材(PETフィルム、厚さ:50μm)の面とを重ねて貼り合わせ、ラミネーターを用いて圧着し、「基材/膜Z/剥離フィルム」の構成を有する積層体を作製した。
次いで、作製した積層体を、塗工(即ち、膜Zの形成)から3時間、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に放置し、「基材/粘着膜/剥離フィルム」の構成を有する粘着シートを作製した。
【0131】
(評価試験)
上記にて作製した粘着シートを5枚重ねた後、裁断した。
裁断後、裁断刃及び粘着シートを目視にて観察し、粘着剤の裁断刃への付着の有無及び程度、並びに、粘着シート同士の貼り付きの有無及び程度を確認した。そして、下記の評価基準に従って、粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きに基づく加工性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0132】
-評価基準-
A:粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きは全く確認されなかった。
B:粘着剤の裁断刃への付着は僅かに確認されたが、粘着シート同士の貼り付きは全く確認されなかった。
C:粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きが僅かに確認されたが、いずれも許容範囲内であった。
D:粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きが顕著に確認された。
【0133】
【表4】
【0134】
表4に記載の被着体の詳細は、以下の通りである。
「ガラス」:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製
「BASUS」:ステンレス鋼板、商品名:SUS304、(株)パルテック製
「PET」:ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム HPE、厚さ:50μm、帝人フィルムソリューション(株)製
「ポリイミド」:ポリイミドフィルム、商品名:カプトン(登録商標)100H、厚さ:25μm、東レ・デュポン(株)製
【0135】
表4に示すように、実施例1~18の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、いずれも高温耐久性及び加工性の両方に優れていた。
また、実施例1~18の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、いずれも塗工から3時間後のゲル分率が高く、短時間で架橋反応が進行することが確認された。特に、実施例1~14及び16~18の粘着剤組成物は、塗工から3時間後のゲル分率が80質量%以上であり、塗工から短時間で裁断できる粘着剤組成物であり、実施例1~14及び16~18の粘着剤組成物によれば、作業性の大幅な改善が期待できることがわかった。
【0136】
一方、金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部未満である比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きが顕著に確認され、加工性に劣ることがわかった。
金属キレート系化合物及びトリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して30質量部を超える比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温耐久性に劣ることがわかった。
トリレンジイソシアネート系化合物を含まない比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温耐久性が劣ることがわかった。
金属キレート系化合物を含まない比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きが顕著に確認され、加工性に劣ることがわかった。また、比較例4の粘着剤組成物は、塗工から3時間後のゲル分率が3質量%であり、顕著に低いことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、粘着剤の裁断刃への付着及び粘着シート同士の貼り付きが顕著に確認され、加工性に劣ることがわかった。また、比較例6の粘着剤組成物は、塗工から3時間後のゲル分率が4質量%であり、顕著に低いことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温耐久性が劣ることがわかった。
金属キレート系化合物の含有量が、トリレンジイソシアネート系化合物の含有量よりも少ない比較例8の粘着剤組成物は、高温耐久性が劣ることがわかった。