(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】車高調整装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20230511BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20230511BHJP
B60G 15/07 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60G17/015 Z
F16F9/46
B60G15/07
(21)【出願番号】P 2019082454
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】竹味 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】東嶋 元気
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-080336(JP,A)
【文献】特表2020-508250(JP,A)
【文献】特表2016-530154(JP,A)
【文献】国際公開第2010/058773(WO,A1)
【文献】特開2002-323083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
F16H 25/20 - 25/24
F16F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサスペンションを構成する車体側の基部および車輪側の基部のうち何れか一方に設置され、当該設置された側の設置基部との相対高さが変化するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた駆動モータと、
前記設置基部との前記相対高さが変化するよう前記ハウジングに設けられた
駆動ナットを備え、前記駆動モータによって前記駆動ナットを駆動することで前記ハウジングの前記相対高さを変化させる車高調整部と、
前記ハウジングに設けられ、前記車高調整部の動作に連動する差動機構と、
前記差動機構から伝達された動作によって前記ハウジングの高さ変化に従動し、前記駆動ナットの駆動により前記相対高さ変化した前記ハウジングの一部に当接して前記ハウジングの荷重を保持可能な支持ナットを備えた車高保持部と、
前記駆動モータの駆動態様を制御する制御部と、を備え
前記車両の車高を変更する際に、
前記駆動モータにより前記駆動ナットが駆動されて前記ハウジングが前記支持ナットから離間し、
前記ハウジングが前記支持ナットから離間した状態で、前記駆動モータにより前記車高調整部および前記車高保持部が駆動されて、前記駆動ナット・前記支持ナット・前記ハウジンングの高さが変化し、
前記駆動モータにより前記駆動ナットを駆動することで前記ハウジングが前記支持ナットに載置されるよう構成されている車高調整装置。
【請求項2】
前記車高保持部が、
前記支持ナットに加えて、前記支持ナットが螺合する状態に前記設置基部に設
けられ、車高調整が終了した後に前記支持ナットと共に前記ハウジングの荷重を負担する支持ねじ部材と、車高保持状態において前記支持ナットの回転を規制する回転規制部と、を備えている請求項1に記載の車高調整装置。
【請求項3】
前記回転規制部が、前記ハウジングの一部に設けられ、前記支持ナットに対する当接部である請求項2に記載の車高調整装置。
【請求項4】
前記差動機構が、
前記車高調整部に含まれる第1回転体と、前記車高保持部に含まれ前記支持ナットと連動する第2回転体と、に亘って設けられ、
前記第1回転体に設けられたガイド突起と、
前記ガイド突起が挿入され、前記ガイド突起が所定の位置にあるとき前記ガイド突起からの駆動力を前記支持ナットに伝達するよう前記第2回転体に形成された溝部と、を備えている請求項2または3に記載の車高調整装置。
【請求項5】
前記第2回転体が、平面上に前記溝部が形成されている円盤部材、あるいは、曲面上に前記溝部が形成されている円筒部材によって構成されている請求項4に記載の車高調整装置。
【請求項6】
前記車高調整部が、
前記駆動ナットに加えて、前記駆動ナットが螺合する状態に前記設置基部に設け
られた駆動ねじ部材を備えており、
前記
駆動ねじ部材および前記駆動ナットのねじ効率が、前記支持ねじ部材および前記支持ナットのねじ効率よりも高く設定してある請求項2から5の何れか一項に記載の車高調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンションに設置され、車高を変化させる車高調整部および調整後の車高を保持する車高保持部を有する車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような車高調整装置としては例えば以下の特許文献1(〔0024〕乃至〔0032〕段落、
図1乃至
図5など参照)に記載されたものがある。
【0003】
係る車高調整装置は、車輪のダンパにおいてばねを支持する部材の一部に取り付けられる。この車高調整装置は、筒状のスリーブ13の周りに相対回転可能に設けられたスピンドル7をモータ6によって回転させ、このスピンドル7の周りにボールねじを介して螺合しているガイドスリーブ9を上下させる。
【0004】
ガイドスリーブ9は、スリーブ13に対してテレスコピックに伸縮し、スリーブ13に対する二つの高さ位置で固定される。当該固定に際しては、スピンドル7の上方端部に、スピンドル7と相対回転可能なロックリング19が設けてあり、このロックリング19の回転姿勢に応じてガイドスリーブ9が二つの高さ位置の何れかで支持される。
【0005】
ここには所謂ボールペンのノック機構が構成されている。ガイドスリーブ9の上昇に際し、ガイドスリーブ9と共にランプリング21が上昇する。このランプリング21の上縁には、のこぎり歯状の傾斜面が設けてあり、この傾斜面がロックリング19を押し上げるようにロックリング19の外周に設けたロック突起20に当接する。ガイドスリーブ9が上昇して、ランプリング21がロックリング19に当接すると、ガイドスリーブ9の内面に形成された溝部によるロックリング19の回転拘束が開放され、ロックリング19が、のこぎり歯の一山分だけ回転する。
【0006】
この結果、ロックリング19の外周に設けられたロック突起20がガイドスリーブ9の内面に設けられた二種類のロックポケット23a、23bに交互に係合する。これらロックポケット23a、23bは、夫々ガイドスリーブ9のスライド方向に沿って深さが異なっており、ガイドスリーブ9の高さ保持位置が変更される。
【0007】
これらの構成によれば、ガイドスリーブ9の高さを調整する際には、スピンドル7とガイドスリーブ9との間のボールねじによってガイドスリーブ9が駆動される。一方、ガイドスリーブ9を位置保持する際には、ガイドスリーブ9を設定高さに対して所定高さだけ上方に持ち上げたのち改めて当該所定高さ下げることで、ガイドスリーブ9のロックポケット23aあるいは23bをロックリング19に当接させる。当該ロックリング19はスピンドル7によって支持されている。この結果、位置保持に際してボールねじに作用する負荷が軽減されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の車高調整装置にあっては、高さ調整後の位置保持状態においてボールねじに作用する負荷は軽減できるものの、位置保持高さはロックポケット23a,23bの深さに規定される。このため、位置保持高さが例えば二位置に制限され、微細は車高調整を行うことができない。
【0010】
また、車高保持状態において、ガイドスリーブ9の荷重はロックリング19を介してスピンドル7が負担する。しかし、スピンドル7はスリーブ13に対して円滑に回転すべき部材であり、当該スピンドル7に車両の重量を負担させる構造は合理的ではない。本装置は、ボールねじの耐久性を高めた装置であるとはいえ、装置全体の耐久性を鑑みたとき未だ十分とは言えない。
【0011】
このように、従来の車高調整装置にあっては種々の改善すべき点があり、従来から車高調整位置の設定が任意で優れた耐久性を備えた車高調整装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(特徴構成)
本発明に係る車高調整装置の特徴構成は、
車両のサスペンションを構成する車体側の基部および車輪側の基部のうち何れか一方に設置され、当該設置された側の設置基部との相対高さが変化するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた駆動モータと、
前記設置基部との前記相対高さが変化するよう前記ハウジングに設けられた駆動ナットを備え、前記駆動モータによって前記駆動ナットを駆動することで前記ハウジングの前記相対高さを変化させる車高調整部と、
前記ハウジングに設けられ、前記車高調整部の動作に連動する差動機構と、
前記差動機構から伝達された動作によって前記ハウジングの高さ変化に従動し、前記駆動ナットの駆動により前記相対高さ変化した前記ハウジングの一部に当接して前記ハウジングの荷重を保持可能な支持ナットを備えた車高保持部と、
前記駆動モータの駆動態様を制御する制御部と、を備え
前記車両の車高を変更する際に、
前記駆動モータにより前記駆動ナットが駆動されて前記ハウジングが前記支持ナットから離間し、
前記ハウジングが前記支持ナットから離間した状態で、前記駆動モータにより前記車高調整部および前記車高保持部が駆動されて、前記駆動ナット・前記支持ナット・前記ハウジングの高さが変化し、
前記駆動モータにより前記駆動ナットを駆動することで前記ハウジングが前記支持ナットに載置されるよう構成されている点にある。
【0013】
(効果)
車高を調整する際には車両は静的な状態にあるため、例えば車両の自重のみを考慮しつつ車高調整部を構成すればよい。その場合には、例えば、車両の自重に耐え得る強度を備えておき、車高調整の速度を重視した機構を構成すればよい。
【0014】
一方、調整した車高を保持する状態では、車両が走行状態におかれ、路面の凹凸などによって車高保持部には自重以上の慣性荷重が作用する。そのため車高保持部は、主に強度を重視した機構にすることができる。
【0015】
本構成では、これら車高調整部と車高保持部との間に差動機構を設けており、一つの駆動モータを用いてこれら車高調整部と車高保持部とを異なる態様で動作させることができる。例えば、車高調整部によってハウジングの高さ調整を行う際には、車高保持部の動作を車高調整部の動作と切り離す。先ず、駆動モータにより車高調整部の駆動ナットを駆動してハウジングを支持ナットから離間させる。こうして支持ナットがハウジングの荷重を負担しない状態としたのち、駆動モータにより車高調整部および車高保持部を駆動して、駆動ナット・支持ナット・ハウジングの高さを変化させる。所期の位置まで車高調整を行ったのち、駆動モータによって駆動ナットを駆動しハウジングを支持ナットに載置させる。これにより、車高調整部が負担していたハウジングの荷重が車高保持部に引き継がれる。
【0016】
このように、本構成であれは、車高調整部のみ、或は、車高調整部および車高保持部を共に移動させつつ車高調整を行い、車高保持に際しては車高保持部が移動した後の位置で保持機能を発揮するから、車高を調整可能範囲において任意に設定することができる。
【0017】
(特徴構成)
本構成の車高調整装置においては、前記車高保持部が、前記支持ナットに加えて、前記支持ナットが螺合する状態に前記設置基部に設けられ、車高調整が終了した後に前記支持ナットと共に前記ハウジングの荷重を負担する支持ねじ部材と、車高保持状態において前記支持ナットの回転を規制する回転規制部と、を備えていると好都合である。
【0018】
(効果)
本構成であれば、車高保持に際して、ハウジングの荷重が車高保持部の支持ねじ部材および支持ナットを介して負担される。支持ナットは簡便な構造であるうえ、ねじ部の機能によって支持ねじ部材に対する高さ位置の設定が任意である。ねじ構造を用いる場合、車両の自重によって支持ナットが回転し、車高が変更する可能性があるが、本構成では支持ナットの回転を回転規制部が規制する。このように本構成であれば、車高を細かく調整でき、車高保持状態が安定な車高調整機構を合理的に構成することができる。
【0019】
(特徴構成)
本構成の車高調整装置においては、前記回転規制部を、前記ハウジングの一部に設けられ、前記支持ナットに対する当接部によって構成することができる。
【0020】
(効果)
本構成であれば、ハウジングに作用する車両等の荷重を支持ナットに直接伝えつつハウジングと支持ナットとの摩擦力を利用して支持ナットの回転を規制することができる。このため、ハウジングから支持ナットに荷重が伝わる際に他の構成が介在せず、部材どうしの衝突等による振動や騒音が発生し難い。また、ハウジングを支持ナットに直に当接させることで回転規制部の構成を簡略化することができる。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係る車高調整装置にあっては、前記差動機構として、
前記車高調整部に含まれる第1回転体と、前記車高保持部に含まれ前記支持ナットと連動する第2回転体と、に亘って設けられ、
前記第1回転体に設けられたガイド突起と、
前記ガイド突起が挿入され、前記ガイド突起が所定の位置にあるとき前記ガイド突起からの駆動力を前記支持ナットに伝達するよう、前記第2回転体に形成された溝部と、を備えた構成とすることができる。
【0022】
(効果)
差動機構がこのようなガイド突起と溝部とを備える場合、例えばこれらガイド突起と溝部の形状を適宜変化させることで第1回転体と第2回転体との差動態様を種々に設定することができる。第1回転体と第2回転体とを差動させる構成であれば、一つの駆動モータを用いて二つの駆動機構を動作させることができる。よって、車高調整部および車高保持部が有する各種歯車の諸元等に応じて最適な車高調整装置を容易にかつ効率的に得ることができる。
【0023】
(特徴構成)
本発明に係る車高調整装置では、前記第2回転体を、平面上に前記溝部が形成されている円盤部材あるいは曲面上に前記溝部が形成されている円筒部材によって構成することができる。
【0024】
(効果)
第2回転体が円盤部材あるいは円筒部材であれば、これらは共に回転軸を有するから、駆動モータの回転動作を利用した車高調整部あるいは車高保持部に対する組み付けが容易となる。よって、例えばコンパクトに構成できるなど合理的な構造の車高調整装置が得易くなる。
【0025】
(特徴構成)
本発明に係る車高調整装置にあっては、前記車高調整部が、前記駆動ナットに加えて、前記駆動ナットが螺合する状態に前記設置基部に設けられた駆動ねじ部材を備えており、
前記駆動ねじ部材および前記駆動ナットのねじ効率が、前記支持ねじ部材および前記支持ナットのねじ効率よりも高く設定してあると好都合である。
【0026】
(効果)
本構成のように、車高調整部が有する駆動ねじ部材および駆動ナットのねじ効率を、支持ねじ部材および支持ナットのねじ効率よりも高く設定することで、車高調整時の駆動ナットの駆動が機敏なものとなり迅速な車高調整を行うことができる。
【0027】
また、車高調整終了時に車両の自重を負担する支持ねじ部材および支持ナットは相対的にねじ効率が低いため、自重によって支持ナットが回転するおそれが少なく、車高保持状態が安定する。さらに、一般的にねじ効率の低いねじ部材は、例えば台形ねじなど高強度のものが選択し易くなる。よって、耐久性に優れた車高調整装置を得ることができる。
【0028】
その他、駆動ねじ部材および駆動ナットが高効率化されると駆動ナットに入力する駆動力も小さくすることができ駆動モータの省力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る車高調整装置の構成を示す説明図
【
図2】第1実施形態に係る差動機構の動作態様を示す説明図
【
図3】第1実施形態に係る差動機構の溝部の詳細を示す説明図
【
図4】第2実施形態に係る車高調整装置の構成を示す説明図
【
図5】第2実施形態に係る車高調整装置の構成を示す分解斜視図
【
図6】第2実施形態に係る差動機構の溝部の詳細を示す説明図
【
図7】第3実施形態に係る車高調整装置の構成を示す説明図
【
図8】第3実施形態に係る車高調整装置の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
(全体概要)
図1乃至
図3に、第1実施形態に係る車高調整装置Sを示す。本実施形態の車高調整装置Sは、例えば、車両のサスペンションを構成する車体側の基部および車輪側の基部のうち何れか一方に設置される。本実施形態では、一つの車輪につき、車輪側の基部、即ち、サスペンションのコイルばね1を受けるばね受2の下方に車高調整装置Sを設ける例を示す。以下、当該車高調整装置Sを設置した側の基部を設置基部Bと称する。
【0031】
車高調整装置Sを構成するハウジングHには、車高調整部Cと、車高保持部K、さらには、車高調整部Cの動作と車高保持部Kの動作とを連携させる差動機構Dが設けてある。車高調整部Cは、駆動モータMにより、設置基部Bに対するハウジングHの高さを変更する部位である。車高保持部Kは、車高調整部CによってハウジングHの高さを変更したのち、例えばハウジングHに当接してハウジングHに作用する荷重を負担する部位である。車高保持部Kは、同じ駆動モータMによって駆動されるが、差動機構Dによって車高調整部Cとは異なる態様の動作となる。これら駆動モータMなどは車両の所定箇所に設けられた制御部ECUによって制御される。これら各部の詳細は以下のとおりである。
【0032】
(車高保持部)
図1に示すように、車高保持部Kは、設置基部Bに設けられた支持ねじ部材N5と、当該支持ねじ部材N5に螺合する支持ナットG5とを備えている。支持ねじ部材N5は例えば筒状の部材であり、設置基部Bに設けられたスリーブB1に外挿され、スリーブB1と一体に構成されている。支持ナットG5は、後述するように本実施形態では、駆動モータMから支持ねじ部材N5に至る駆動伝達経路の第5ギヤG5として機能する。これら支持ねじ部材N5と支持ナットG5とは、比較的大きな荷重を支持できるように例えば台形ねじで構成する。支持ナットG5は、駆動モータMによって駆動され、ハウジングHの高さ調整が終了した後には、例えばハウジングHの一部に設けた回転規制部H1としての当接部H1aに当接してハウジングHに作用する荷重を支持する。
【0033】
支持ナットG5は、自身が回転駆動されることで、支持ねじ部材N5の延出方向、即ち、通常は上下方向に沿って昇降する。よって、ハウジングHの支持高さを任意に設定することができる。
【0034】
(車高調整部)
図1に示すように、ハウジングHの内部には、ハウジングHの高さを変更する車高調整部Cを設けてある。車高調整部Cは、駆動モータMによって回転駆動される駆動ナットG3と、この駆動ナットG3に螺合する駆動ねじ部材N3とを備えている。駆動ナットG3は、駆動モータMから駆動ねじ部材N3に至る駆動伝達経路の第3ギヤG3として機能する。駆動ナットG3は、軸受3を介してハウジングHに設けられており、車高の調整時にはハウジングHに作用する荷重を負担する。ハウジングHの下部には、車高変更時にハウジングHが設置基部Bに対して回転しないように直動部H2を設けてある。当該直動部H2は、設置基部Bに設けた例えば長尺状のレールH2aと、当該レールH2aを跨ぐようにハウジングHに形成された切欠きH2bで構成する。
【0035】
一方、駆動ねじ部材N3は、例えば筒状の部材であるスリーブB1に外挿固定してある。駆動モータMからの回転駆動力の伝達効率を高めるべく、駆動ナットG3と駆動ねじ部材N3は例えばボールねじを用いる。
【0036】
本実施形態では、駆動ねじ部材N3のねじ効率を支持ねじ部材N5のねじ効率よりも高く設定してある。その結果、車高調整時の駆動ナットG3の動きが機敏なものとなり、迅速な車高調整が可能となる。また、駆動ねじ部材N3が高効率化されると駆動ナットG3に入力する駆動力を小さくすることができ駆動モータMの省力化が実現する。
【0037】
(差動機構)
車高調整部CによってハウジングHの高さを変更する際には、車高保持部KによるハウジングHの保持を一旦開放する必要がある。これら車高調整動作と車高保持動作とは一つの駆動モータMによるため、夫々の動作を区別するために差動機構Dを備えている。
【0038】
図1および
図2に示すように、本実施形態の差動機構Dは、車高調整部Cに含まれる第1回転体R1と、車高保持部Kに含まれる第2回転体R2、さらには、第1回転体R1と第2回転体R2とを連動させるアーム部材Aとを備えている。
【0039】
第1回転体R1は円盤部材であり、駆動モータMから駆動ねじ部材N3に至るギヤ列のうちの第2ギヤG2に設けてある。駆動モータMの駆動回転は、駆動モータMの回転軸に設けられた第1ギヤG1から、これに順次歯合する第2ギヤG2および第3ギヤG3に伝達される。第3ギヤG3は即ち駆動ナットG3である。第1回転体R1は、これらのうち第2ギヤG2に取り付けられている。尚、第2ギヤG2の一方の面にアーム部材Aを取り付ける構成とし、第1回転体R1を第2ギヤG2と兼ねても良い。
【0040】
第2回転体R2も円盤部材であり、第1回転体R1と対向する状態となるよう、第2ギヤG2と同軸芯上で回転する第4ギヤG4に取り付けてある。第4ギヤG4は、第5ギヤG5即ち支持ナットG5に歯合している。第2回転体R2には、所定の形状を有する溝部5が設けられており、アーム部材Aの先端に設けたガイド突起4を案内する。これにより、第1回転体R1の回転駆動に伴って、第2回転体R2が連動する状態と第1回転体R1のみが回転する状態とが形成される。尚、この溝部5は第4ギヤG4の一方の面に形成することもでき、その場合、第2回転体R2と第4ギヤG4とを単一部品で構成することができる。
【0041】
第1回転体R1および第2回転体R2を円盤部材とすることで、第2ギヤG2あるいは第4ギヤG4への取付けが容易となる。よって、例えば差動機構Dの構成がコンパクトになるなど合理的な構造の車高調整装置Sが得易くなる。
【0042】
アーム部材Aは、
図1及び
図2に示すように、その一端を第1回転体R1に設けた揺動軸A1に軸支してある。揺動軸A1は、第2ギヤG2の回転軸芯Xと平行である。揺動軸A1には例えば線ばね等によって形成された中立ばねA2が固定してあり、アーム部材Aには、中立ばねA2の一端に対する係合部A3が設けてある。これにより、第1回転体R1に対するアーム部材Aの基本姿勢が決定され、アーム部材Aの揺動端部が第1回転体R1の中心側あるいは外方側の何れの方向に揺動した際にも、中立ばねA2がアーム部材Aを基本姿勢に戻すように付勢する。アーム部材Aをこのような中立姿勢に設定することで、後述するように、ガイド突起4が溝部5を所定の順序で移動できるように構成してある。
【0043】
(動作態様)
第1回転体R1と第2回転体R2との動作態様を
図2に基づき説明する。尚、
図3には、第2回転体R2に設けられた溝部5の形状を示す。
【0044】
図2(a)は差動機構Dの基本姿勢を示す。現状から車高を上げる場合も下げる場合も、差動機構Dはこの基本姿勢から動作が開始される。アーム部材Aのガイド突起4は溝部5の一方の端部(
図3中a位置)に位置している。この状態では、アーム部材Aを付勢する中立ばねA2は自然状態にある。このとき
図2(a)に示すように、ハウジングHの当接部H1aは支持ナットG5に当接しており、両者間の隙間寸法d0はゼロである。この状態では、ハウジングHに作用する荷重が支持ナットG5で負担されている。
【0045】
図2(b)は、第1回転体R1が
図3においてa位置から時計方向に135度回転し、ガイド突起4がb点に来た状態である。この間は、ガイド突起4が溝部5に沿って移動するだけであり、第1回転体R1のみが回転する。
【0046】
図2(c)は、第1回転体R1がさらに180度回転し、
図3においてガイド突起4が溝部5のc点に達した状態である。b点を通過したガイド突起4は中立ばねA2の付勢力に抗いつつ溝部5に沿って第2回転体R2の中心側に引き付けられる。このとき
図2(c)に示すように、ハウジングHの当接部H1aは支持ナットG5から完全に離間した状態となり、隙間d1が形成される。
【0047】
図2(d)は
図2(c)と同じ状態に示しているが、ガイド突起4がc点に達した後、第1回転体R1をさらに時計方向に回転させ、
図2(c)の状態から第1回転体R1および第2回転体R2が整数回転だけ上昇した状態を示している。第1回転体R1の更なる回転により、ガイド突起4がc点を介して第2回転体R2を回転させ、駆動ナットG3が駆動ねじ部材N3に沿って上昇し、支持ナットG5が支持ねじ部材N5に沿って上昇する。この上昇動作中は、ハウジングHの当接部H1aは支持ナットG5から隙間d1だけ離間した状態が維持される。尚、
図2(c)の状態から第1回転体R1を時計方向に回転させる角度は、求める車高調整高さに応じて任意の角度に設定するとよい。
【0048】
図2(e)は、第1回転体R1が
図3のc,d点から反時計方向に約90度回転し、ガイド突起4がe点に移動した状態である。このとき、アーム部材Aは、揺動軸A1によって押される状態となる。ガイド突起4は中立ばねA2の付勢力によって外側の壁に摺接し、b点には戻らずにe点のある溝を選択して進行する。ガイド突起4がc,d点からe点に移動するあいだ、第2回転体R2は静止したままであり、支持ナットG5の高さは一定である。ハウジングHは、第1回転体R1の反転により支持ナットG5に対する距離を少し詰めることとなり、両者の隙間がd2となる。
【0049】
図2(f)は
図2(e)と同じ状態に示しているが、ガイド突起4がe点に達した後、さらに第1回転体R1を反時計方向に回転させ、第2回転体R2を反時計方向に整数回転させた状態である。これにより、車高を下げることができる。
図2(f)に示すように、ハウジングHの当接部H1aが支持ナットG5に対して隙間d2を維持した状態で、駆動ナットG3が駆動ねじ部材N3に沿って下降し、同時に支持ナットG5も支持ねじ部材N5に沿って同じ距離だけ下降する。尚、この時の第1回転体R1および第2回転体R2の回転角度も望みの車高下げ高さに応じて設定すればよい。
【0050】
図2(g)は、
図2(e)あるいは
図2(f)の状態から第1回転体R1を時計方向に90度回転させ、ガイド突起4を
図3のg点に移動させた状態である。このあいだ第2回転体R2は静止したままであり、第1回転体R1のみが回転してハウジングHが支持ナットG5に対して上昇する。
図2(g)に示すように、双方の隙間が再びd1に広がる。
【0051】
この行程は、ガイド突起4をa点に戻すために必要な工程である。つまり、ハウジングHの当接部H1aを支持ナットG5に載置するためには第1回転体R1のみを反時計方向に回転させる必要があり、ガイド突起4をe,f点が設けられた溝からa点が設けられた一段外方の溝に変位させる。e,f点からガイド突起4を時計方向に移動させると、ガイド突起4は中立ばねA2の付勢力によって外側の壁に摺接しつつ進行し、外側の壁が途切れた瞬間に一つ外側の壁に乗り替わる。
【0052】
本実施形態では、この後もガイド突起4を時計方向にg点まで移動させるべく約45度の角度を持たせている。これは、駆動モータMを制御する上で、第2回転体R2に対する第1回転体R1の相対回転位置の設定数を、c,d,g点で共通化することで制御の容易化を考慮したものである。よって、例えば、e,f点から移動したガイド突起4が最も外側の壁に乗り替わった後は、直ちに第1回転体R1を反時計方向に反転させても良い。
【0053】
その後、第1回転体R1をg点から反時計方向に約315度回転させ、
図2(a)の如くガイド突起4をa点に戻すことで、ハウジングHの当接部H1aが支持ナットG5に当接し、ばね受2からの荷重を支持ナットG5で負担する状態となる。以上の態様により、第1回転体R1および第2回転体R2が基本姿勢に復帰し車高調整が終了する。
【0054】
このように、本実施形態では、車高調整部Cと車高保持部Kとの間に差動機構Dを設けることで、一つの駆動モータMを用いて車高調整部Cと車高保持部Kとを異なる態様で動作させることができる。この差動機構Dにあっては、例えば溝部5の形状を適宜変更することで、第1回転体R1と第2回転体R2との差動態様を種々に設定することができる。よって、車高調整部Cおよび車高保持部Kが有する各種ギヤの諸元等に応じて最適な車高調整装置Sを容易に得ることができる。
【0055】
〔第2実施形態〕
図4乃至
図6に、第2実施形態に係る車高調整装置Sの構成を示す。ここでは、差動機構Dとして、筒状の第1回転体R1が筒状の第2回転体R2に内挿配置されたものを用いる。
【0056】
具体的には、第2ギヤG2に差動軸Jを接続し、この差動軸Jに対して第1回転体R1を回転不能かつ差動軸Jに沿って移動可能に外挿する。そのために、例えば、差動軸Jを四角柱状に形成し、第1回転体R1には断面が矩形状のスライド孔R1aを設けておく。これにより、第1回転体R1は差動軸Jに対して所定距離だけ往復移動できる。
【0057】
差動軸Jのうち、第1回転体R1から露出した両外側には夫々コイル状の中立ばねJ1を設けてある。この中立ばねJ1は、第1回転体R1の両側の端面R1bと、第2回転体R2の内側の底面R2aおよび天井面R2bとの間に設けられる。これにより、差動軸Jの軸方向に沿った第1回転体R1の基本位置が設定される。
【0058】
第1回転体R1の外面には第2回転体R2の溝部5に係合するガイド突起4が設けてある。
図6には溝部5の詳細形状を示すが、第1回転体R1が基本位置にあるとき、ガイド突起4は、
図6中のa点,b点を通る破線の高さ位置にある。
【0059】
第2回転体R2は、例えば二分割の外ケースR21の内部に筒状の内ケースR22が装着されて構成される。内ケースR22の壁面には溝部5を形成する切欠部5aが形成してあり、外ケースR21の内面には溝部5を形成する土手部5bが形成してある。これら内ケースR22と外ケースR21を組み合わせることで
図6に示すような溝部5が形成される。溝部5の各所に付した記号は
図3に記した記号と同趣旨であり、これら溝部5に対するガイド突起4の動きは第1実施形態と同じである。
【0060】
内ケースR22と外ケースR21との組み合わせに際しては、内ケースR22に形成した位置決め用の凸部R23と外ケースR21に形成した位置決め用の凹部R24とを嵌合させる。二つの外ケースR21どうしの固定は、図示は省略してあるが、係合構造やねじ止め構造等一般的な方法で固定すればよい。
【0061】
組み立てられた外ケースR21の外面には、第4ギヤG4として機能する環状の歯車部材G4aが取り付けられる。図示は省略しているが、外ケースR21と歯車部材G4aとの間にはキー部材などが設けられ、両者が一体回転可能な状態とされる。尚、当該歯車は鋳造などによって外ケースR21に一体形成しても良い。
【0062】
本構成であれば、第2回転体R2の内ケースR22の内部に第1回転体R1が挿入され、第1回転体R1の外面に設けたガイド突起4が内ケースR22の溝部5に係合する。よって、ガイド突起4が溝部5から逸脱するような事態は生じ難く、耐久性の高い差動機構Dを得ることができる。
【0063】
〔第3実施形態〕
図7乃至
図8に、第3実施形態に係る車高調整装置Sの構成を示す。ここでの差動機構Dは、第1回転体R1として機能する第2ギヤG2に、第2回転体R2を従動回転させるガイド突起4を設け、第2回転体R2には、当該ガイド突起4の移動領域を規制する揺動アームFを設けて構成されている。
【0064】
第2回転体R2は、第4ギヤG4を備えた筒状の部材で形成し、ガイド突起4が貫通した状態で摺動する溝部5と、当該溝部5に沿って移動するガイド突起4の移動軌跡に対して進入・退避する揺動アームFと、当該揺動アームFの動作速度を規定する揺動制御部Pとを備えている。
【0065】
ガイド突起4は、円弧状の溝部5の内部を円周方向に沿って往復移動する。例えば
図7の矢視線VIII-VIIIに係る
図8において、第1回転体R1が時計方向に回転することで、ガイド突起4も溝部5の内部を時計方向に移動し溝部5の端部に当接する。ガイド突起4が
図8における溝部5の左端部から右端部に当接するまで移動する間は、第2回転体R2は回転せず第1回転体R1のみが回転する。これにより、第2ギヤG2および第3ギヤG3(駆動ナットG3)が回転して、ハウジングHの当接部H1aが支持ナットG5から上方に離間する。
【0066】
図8の状態から第1回転体R1がさらに時計方向に回転すると、第2回転体R2が従動回転し始め揺動アームFに遠心力が作用する。その結果、揺動制御部PのシリンダP1と揺動アームFとの間に介装してある付勢部材6の付勢力に抗して揺動アームFの揺動側の先端Faが外周側に移動する。これにより、揺動アームFの先端Faがガイド突起4の移動軌跡の上に進入する。揺動アームFの両側には、揺動アームFの揺動範囲を規定する二つのストッパ7が設けてある。
図8の状態では、揺動アームFは外側のストッパ7に当接する。
【0067】
揺動アームFの付勢側の端部Fbには、シリンダP1の内部に設けたピストンP2に接続したロッド8が接続してある。揺動アームFの揺動に伴い、ピストンP2が往復移動する。その際、後述するように駆動ナットG3および支持ナットG5の正逆回転駆動を制御するため、ピストンP2の往復移動速度が異なるように設定してある。
【0068】
シリンダP1の内部は例えばオイルで満たされており、ピストンP2によって第1室r1と第2室r2とに仕切られている。ピストンP2には、ピストンP2の移動方向に沿って貫通する第1流路t1と第2流路t2とを形成してある。第1流路t1の一方には膜状の弁体Vを設けてある。第1流路t1の断面積は第2流路t2の断面積よりも大きく形成してある。第1流路t1は大流量流路として機能し、第2流路t2はオリフィスとして機能する。
【0069】
揺動アームFに遠心力が作用し、揺動アームFの付勢側の端部FbがシリンダP1に近づくとき、ピストンP2がシリンダP1の一方に押され第1室r1の体積が縮小される。これにより、第1室r1のオイルが第1流路t1および第2流路t2を介して第2室r2に流入する。このとき、弁体Vが開き、第1室r1から第2室r2へのオイルの流入が速やかに行われる。つまり、ピストンP2はシリンダP1に対して素早く移動し、揺動アームFの揺動側の先端Faがガイド突起4の移動軌跡上に進入する。
【0070】
一方、第1回転体R1および第2回転体R2の回転が停止して、揺動アームFに作用していた遠心力が解消されると、揺動アームFの付勢側の端部Fbが付勢部材6によって外方に押し出され、揺動アームFの揺動側の先端Faがガイド突起4の移動軌跡から離脱する。この時、ピストンP2は第2室r2の体積を縮めようとするが、弁体VがピストンP2の第1流路t1を遮蔽する。よって、第2室r2のオイルはオリフィスである第2流路t2のみを介して第1室r1に流入する。この結果、ピストンP2の動作速度が低下し、揺動アームFの先端Faが内側に移動する時間が長く確保される。
【0071】
本構成にすることで、回転規制部H1としての当接部H1aと支持ナットG5との当接・離間状態を切り換えつつ、第1回転体R1および第2回転体R2を正逆回転させることが可能となる。
【0072】
(ハウジングの上昇動作)
ハウジングHを上昇させる場合、
図8に示すように、第1回転体R1のガイド突起4を溝部5に沿って時計方向に移動させる。この移動距離に応じた第1回転体R1の回転角度、即ち、第2ギヤG2の回転角度に応じて駆動ナットG3が回転し、駆動ナットG3と共にハウジングHが所定距離だけ上昇する。これにより、当接部H1aが支持ナットG5から離間して、支持ナットG5に作用していたハウジングHからの荷重が解消される。
【0073】
図8の状態から第1回転体R1をさらに時計方向に回転させると、第2回転体R2および支持ナットG5が従動回転して支持ナットG5が支持ねじ部材N5に対して上昇する。つまり、第1実施形態の場合と同様に、駆動ナットG3がハウジングHの荷重を負担した状態で、ハウジングHおよび支持ナットG5が一定の相対位置を保持した状態で上昇する。
【0074】
所定の位置までハウジングHを上昇させると、第1回転体R1の駆動を停止する。これによって第2回転体R2も停止し、揺動アームFの遠心力が解消されて揺動アームFの先端Faが内側に退避する。このとき揺動アームFの退避時間を考慮して第1回転体R1を停止させる。揺動アームFの退避後、第1回転体R1を
図8における反時計方向に回転させる。第2回転体R2は静止したまま、ガイド突起4が溝部5を移動し、第1回転体R1のみが回転する。つまり、第2ギヤG2および駆動ナットG3が逆回転してハウジングHが下降し、当接部H1aが支持ナットG5に当接する。これにより、駆動ナットG3の荷重負担が支持ナットG5に引き継がれる。
【0075】
(ハウジングの下降動作)
ハウジングHを下降させる場合にも、先ず
図8の状態として、当接部H1aを支持ナットG5から離間させる。次に、第1回転体R1および第2回転体R2を停止し、さらに第1回転体R1を続けて反時計方向に回転させてガイド突起4を揺動アームFの先端Faに当接させる。つまり、揺動アームFが内側に退避する前にガイド突起4を揺動アームFに当接させる。この状態から第1回転体R1を反時計方向に回転させることで第2回転体R2も反時計方向に回転する。これにより、当接部H1aが支持ナットG5から離間した状態を維持しつつ、ハウジングHおよび支持ナットG5を下降させることができる。
【0076】
所定位置までの下降が終了すると、第1回転体R1の回転を停止し、さらに時計方向に僅かに回転させてガイド突起4を溝部5に沿って時計方向に移動させる。これによって揺動アームFの先端Faが自由になり、付勢部材6によって揺動アームFが内側に退避する。その後、第1回転体R1を反時計方向に移動させ、駆動ナットG3を降下回転させて、当接部H1aを支持ナットG5に載置する。
【0077】
このように本構成の差動機構Dであれば、第1実施形態および第2実施形態で示したような複雑な形状の溝部5を形成する必要がなく、比較的簡便な構成の差動機構Dを備えた車高調整装置Sを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る車高調整装置は、例えばコイルばねを備えた車両のサスペンション等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
4 ガイド突起
5 溝部
B 設置基部
C 車高調整部
D 差動機構
ECU 制御部
G3 駆動ナット
G5 支持ナット
H ハウジング
H1 回転規制部
H1a 当接部
K 車高保持部
M 駆動モータ
N3 駆動ねじ部材
N5 支持ねじ部材
R1 第1回転体
R2 第2回転体
S 車高調整装置