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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】基板冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 1/00 20060101AFI20230511BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230511BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20230511BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F25D1/00 B
H01L21/68 N
H01L21/265 603D
H01L21/02 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020052632
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152424
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】中澤 喜之
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-317734(JP,A)
【文献】特開2012-023369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0087789(US,A1)
【文献】特開2000-311862(JP,A)
【文献】特開2015-138948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00
H01L 21/00-21/98
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に基板を収容する収容空間が形成された本体を備え、前記収容空間に冷却ガスを導入して前記基板を冷却する基板冷却装置において、
前記冷却ガスが流動するガス流路と、前記ガス流路に通じており、前記冷却ガスが前記基板の表面上および裏面上を一方向に流動するよう前記冷却ガスを噴出する噴出口と、を有する噴出体と、
前記噴出口と前記収容空間に収容された前記基板を挟んで対向するように位置付けられ、前記冷却ガスを前記収容空間から前記一方向に排出する排出部と、
を備え、
前記噴出体は、前記噴出体の少なくとも一部を前記本体の外部に取り外せるよう構成されており、
前記噴出口は、前記冷却ガスが前記表面上を流動する表側フローを発生させる少なくとも一つの表側噴出口と、前記冷却ガスが前記裏面上を流動する裏側フローを発生させる少なくとも一つの裏側噴出口と、により構成され、
前記表側噴出口と前記裏側噴出口は、それぞれ前記収容空間に収容された前記基板の厚さ方向について前記基板の表側と裏側に位置付けられており、
前記ガス流路は、前記表側噴出口に通じる表側流路と、前記裏側噴出口に通じる裏側流路とにより構成され、
前記噴出体は複数の分割体により構成され、前記表側流路と前記裏側流路の少なくとも一方は、前記分割体のうち少なくとも二つを組み合わせることにより完成されることを特徴とする基板冷却装置。
【請求項2】
前記表側流路と前記裏側流路とは、互いに交わることなく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板冷却装置に関し、特に、冷却ガスにより基板を冷却する基板冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ用ガラス基板等の各種基板を冷却する装置として、特許文献1に開示された基板冷却装置が知られている。
特許文献1に示された基板冷却装置は、基板を収容する処理室内に、内部に冷却水を流動させる冷却水経路が形成されたクーリングプレートと、基板に向けて冷却用ガスを供給するエア供給ノズルを備えている。また、クーリングプレートの表面には、基板を載置しつつクーリングプレート表面と基板との間に間隙を形成するプロキシミティーボールが配置されている。すなわち、特許文献1の基板冷却装置は、基板の一面をクーリングプレートにより冷却し、他面をエア供給ノズルから吹きつけられた冷却用ガスにより冷却する構成である。
【0003】
一般に、基板の表面と裏面との間で冷却の進行に差があると基板に反りが発生するおそれがある。このような問題に対し、特許文献1の基板冷却装置では、基板の一面をクーリングプレートにより冷却し、他面を冷却ガスにより冷却することによって基板の一面と他面との間における冷却の進行差をなくし、基板を均一に冷却することができるため、基板の反りの発生を抑制することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の基板冷却装置においては、基板の一面と他面を冷却する方法が異なるため、基板の一面と他面との間における冷却の進行差をなくすための制御が難しいという問題があった。また、クーリングプレートを構成するユニットと冷却ガスを供給するユニットの両方が必要となり、装置全体の構成が複雑となるという問題もあった。
【0005】
また、特許文献1の基板冷却装置では、冷却ガスが基板の一面側と他面側の両方を流動する構造であるため、冷却ガスのみでも基板の両面を冷却できると考えられる。しかしながら、仮に冷却ガスのみで基板を冷却しようとすると、冷却ガスは基板の表側から裏側に回り込むように流動する構成であるため、基板の表側の熱を奪った後の冷却ガスが基板の裏側を流動することになる。したがって、基板の表側と裏側の間における冷却差をなくすことはできない。すなわち、基板の反りの発生を抑制することはできない。
【0006】
また、アニール処理後の半導体ウエハを冷却する装置として、特許文献2に開示された基板処理装置が知られている。特許文献2に開示された基板処理装置は、処理室内に複数枚の基板を保持したボートを収容し、複数の基板の間に冷却ガスを流動させることによって基板を冷却する構造である。
【0007】
特許文献2の基板処理装置は、冷却ガス供給ノズルの噴出孔から複数の基板に向けて冷却ガスを供給するのみであり、各基板の表面と裏面との間の冷却の進行差は考慮されていない。したがって、基板の表側と裏側を均一に冷却することはできず、基板の表側と裏側とで冷却の進行に差が生じ、基板に反りが発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-329922
【文献】再公表特許WО2007/018016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、冷却ガスにより基板を均一に冷却できる基板冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
内部に基板を収容する収容空間が形成された本体を備え、前記収容空間に冷却ガスを導入して前記基板を冷却する基板冷却装置において、前記冷却ガスが流動するガス流路と、前記ガス流路に通じており、前記冷却ガスが前記基板の表面上および裏面上を一方向に流動するよう前記冷却ガスを噴出する噴出口と、を有する噴出体と、前記噴出口と前記収容空間に収容された前記基板を挟んで対向するように位置付けられ、前記冷却ガスを前記収容空間から前記一方向に排出する排出部と、を備え、前記噴出体は、前記噴出体の少なくとも一部を前記本体の外部に取り外せるよう構成されていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、収容空間に収容された基板に向けて噴出口から噴出された冷却ガスは、基板の表面上と裏面上のそれぞれを一方向に流動した後、排出部から一方向に排出される。すなわち、噴出口から噴出された冷却ガスは、基板の表面上と裏面上を常に一方向に流動し、排出部から排出される。したがって、基板の表面側と裏面側はともに噴出口に近い領域から順次冷却されていくことになることから、基板の表面側と裏面側との間における、一方向についての冷却の進行差の発生を抑制できる。その結果、冷却ガスにより基板を均一に冷却することができる。
また、噴出体は、噴出体の少なくとも一部を本体の外部に取り外せるよう構成されていることから、噴出体の構成部材の一部または噴出体全体を本体の外部に取り出して清掃などのメンテナンス作業を行うことができる。その結果、噴出体が本体と一体に形成されている場合と比較してメンテナンス時の作業性が向上する。
また、仮に、噴出体が本体と一体に形成されている構成であるとすると、例えば噴出口の形状やガス流路を変更したい場合には、本体全体を交換する必要がある。これに対し、本発明によれば、所望の変更を施した噴出口またはガス流路を形成した噴出体または噴出体の一部を交換すればよい。したがって、噴出口またはガス流路の構成を容易に変更できる。
【0012】
また、本発明の基板冷却装置においては、前記噴出口から噴出された直後の前記冷却ガスの流動である初期フローが、前記表面上を流動する表側フローと、前記裏面上を流動する裏側フローとに分岐するよう構成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、噴出口から噴出された冷却ガスの初期フローが、基板の表面上と裏面上をそれぞれ流動する表側フローと裏側フローに分岐する。したがって、噴出体に形成するガス流路を、表面側を流動する流路と、基板の裏面側を流動する流路とに分けて形成する必要がない。すなわち、簡易な構成で噴出体を形成することができる。
【0014】
また、本発明の基板冷却装置においては、前記噴出口は、前記収容空間に収容された前記基板の側面に対向するよう位置付けられており、前記初期フローが前記側面により前記表側フローと前記裏側フローに分岐される構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、収容空間に収容された基板の側面によって、初期フローを表側フローと裏側フローに分岐させることができ、初期フローを表側フローと裏側フローに分岐するための構成を別に設ける必要がない。
【0016】
また、本発明の基板冷却装置においては、前記噴出体は複数の分割体により構成され、前記ガス流路は前記分割体のうち少なくとも二つを組み合わせることにより形成される構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、分割体を組み合わせることによってガス流路を完成できることから、ガス流路の形成が容易となるとともに、より複雑なガス流路を形成することが可能となる。
【0018】
また、本発明の基板冷却装置においては、前記噴出口は、前記冷却ガスが前記表面上を流動する表側フローを発生させる少なくとも一つの表側噴出口と、前記冷却ガスが前記裏面上を流動する裏側フローを発生させる少なくとも一つの裏側噴出口と、により構成され、前記表側噴出口と前記裏側噴出口とは、それぞれ前記収容空間に収容された前記基板の厚さ方向について前記基板の表側と裏側に位置付けられている構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、表側フローを発生させる表側噴出口と裏側フローを発生させる裏側噴出口が、それぞれ前記収容空間に収容された基板の厚さ方向について、前記基板の表側と裏側に位置付けられていることから、表側フローと裏側フローをそれぞれ個別に発生させることができる。したがって、表側フローと裏側フローを個別に調整できることから、基板の表面側と裏面側における冷却の進行差の発生をより確実に抑制できる。その結果、基板をより均一に冷却することができる。
【0020】
また、本発明の基板冷却装置においては、前記噴出体は、前記表側噴出口から噴出される冷却ガスが基板の側面に衝突することを規制する表側規制面と、前記裏側噴出口から噴出される冷却ガスが基板の側面に衝突することを規制する裏側規制面と、を有する構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、表側規制面を備えることにより、表側噴出口から噴出した冷却ガスが基板側面に衝突することが規制される。また、裏側規制面を備えることにより、裏側噴出口から噴出した冷却ガスが基板側面に衝突することが規制される。したがって、表側噴出口と裏側噴出口のそれぞれから噴出される冷却ガスの流量または流速を増加させた場合であっても、基板の側面が冷却ガスにより押されることが抑制される。その結果、基板の位置ずれの発生を考慮することなく表側フローと裏側フローの流量または流速を増加させることができ、基板を所定の温度にまで冷却するのに必要な時間を短縮することができる。
【0022】
また、本発明の基板冷却装置においては、前記ガス流路は、前記表側噴出口に通じる表側流路と、前記裏側噴出口に通じる裏側流路とにより構成され、前記噴出体は複数の分割体により構成され、前記表側流路と前記裏側流路の少なくとも一方は、前記分割体のうち少なくとも二つを組み合わせることにより完成される構成としてもよい。
【0023】
この構成によれば、分割体を組み合わせることによって表側流路と裏側流路の少なくとも一方を完成できることから、ガス流路の形成が容易となるとともに、より複雑なガス流路を形成することが可能となる。
【0024】
前記ガス流路は、前記表側噴出口に通じる表側流路と、前記裏側噴出口に通じる裏側流路とにより構成され、前記表側流路と前記裏側流路とは、互いに交わることなく形成されている構成としてもよい。
【0025】
この構成によれば、表側流路と裏側流路とは、互いに交わることなく形成されていることから、表側流路と裏側流路を流動する冷却ガスの流量または流速をそれぞれ個別に制御できる。したがって、表側噴出と裏側噴出から噴出する冷却ガスの流量または流速をそれぞれ個別に制御することにより、表側フローの流量または流速と、裏側フローの流量または流速を個別に調整することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の基板冷却装置によれば、冷却ガスにより基板を均一に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第一実施形態における基板冷却装置を示す斜視図。
図2】第一実施形態におけるカバー部材を除いた基板冷却装置の上面図。
図3】第一実施形態における基板冷却装置の図2のV1-V1線における縦断面図。
図4】本発明の第二実施形態における基板冷却装置を示す分解斜視図。
図5】第二実施形態におけるカバー部材を除いた基板冷却装置の上面図。
図6】第二実施形態における基板冷却装置の図5に示すV2-V2線における縦断面図。
図7】本発明の第三実施形態における基板冷却装置を示す分解斜視図。
図8】第三実施形態における基板冷却装置の噴出体を示す分解斜視図。
図9】第実施形態におけるカバー部材を除いた基板冷却装置の上面図。
図10】第三実施形態における基板冷却装置の図9に示すV3-V3線における縦断面図。
図11】第三実施形態における変形例である噴出体を示す斜視図。
図12】第三実施形態における変形例の噴出体を示す分解斜視図。
図13】第三実施形態における変形例の噴出体を使用した基板冷却装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明における第一実施形態である基板冷却装置10A、第二実施形態である基板冷却装置10B、および第三実施形態である基板冷却装置10Cについて説明する。
各実施例における基板冷却装置10A、10B、10Cは、いずれも半導体製造工程やフラットパネルディスプレイ製造工程において使用され、半導体ウエハやガラス基板等の基板に対して所定の処理を施す基板処理装置に組み込まれて使用される装置である。
【0029】
図1に示すように、本発明の第一実施形態における基板冷却装置10Aは、基板処理装置1の配置部2に設置されることで基板処理装置1に組み込まれており、本実施形態における基板処理装置1は、半導体ウエハである基板Sにイオン注入処理を施すためのイオン注入装置である。また、基板冷却装置10Bおよび基板冷却装置10Cは、いずれも後述する基板冷却装置10Aと同様に、基板処理装置1の配置部2に設置されて使用されるものである。
尚、基板処理装置1はイオン注入装置に限定されず、例えばCVD装置等の各種の基板処理装置であってもよい。また、基板冷却装置10A、10B、10Cは、基板処理装置1に組み込まれていることに限定されず、基板処理装置1とは独立して配置されて使用されるものであってもよい。
【0030】
<第一実施形態>
まず、本発明の本発明の第一実施形態における基板冷却装置10Aについて説明する。
図1は、基板処理装置1に組み付けられた状態の基板冷却装置10A示す斜視図である。図1においては、基板処理装置1はその一部のみが示されている。
前述のように、基板冷却装置10Aは配置部2に設置されることによってイオン注入装置である基板処理装置1に組み込まれており、イオン注入処理が施された後の基板Sを収容し、所定の温度にまで冷却する装置である。また、基板冷却装置10Aは、内部を高真空下と大気圧下に切り替えられるロードロック装置としての機能を備えている。言い換えれば、基板冷却装置10Aは、基板Sを冷却する機能を備えたロードロック装置と捉えることもできる。
【0031】
図1に示すように、基板冷却装置10Aは、後述する内部に基板Sを収容する収容空間34が形成された本体31Aと、図2に示す本体31Aに形成された開口32を閉塞するカバー部材30Aを備える。本体31Aとカバー部材30Aはいずれも金属材料により形成されている。本体31Aは複数の壁部11により全体の概形が直方体をなすよう構成されている。複数の壁部11は、前方壁11a、前方壁11aと対向する後方壁11b、前方壁11aと後方壁11bとを連結する一対の側壁11c、底壁11d、および天井壁11eから成る。
【0032】
また、前方壁11aには、前方壁11aを厚さ方向に貫通して開口し、後述する冷却ガスを排出する排出部12が形成されている。基板冷却装置10Aにおいては、排出部12は、本体31Aの内部と外部との間で基板Sを出し入れするためにも使用されており、基板Sは図示されていないロボットハンドにより排出部12を通過するように移送されて本体31A内の収容空間34に搬入され、また、収容空間34から搬出される。
尚、基板Sを出し入れするための開口は、壁部11のいずれかの位置において、排出部12とは別に形成されてもよい。また、基板Sを収容空間34に搬入するための開口と、収容空間34から搬出するための開口をそれぞれ別個に設けてもよい。
【0033】
基板冷却装置10Aは、前方壁11aの外側に配置され、排出部12を気密に閉塞し得るフラップ弁13をさらに備えている。また、一方の側壁11cには、本体31Aの外部から内部に貫通して通じる排気孔14が形成されている。排気孔14の側壁11c側の開口には、排気配管接続部14aが形成されており、排気配管接続部14aには、真空ポンプ16に通じる排気配管15が接続されている。真空ポンプ16は、本体31の内部を真空排気するために使用される排気用ポンプである。本体31Aにカバー部材30Aが取り付けられ、フラップ弁13が排出部12を閉塞した状態で真空ポンプ16を動作させることにより、本体31A内部の空気が排気配管15を通じて外部に排気され、本体31Aの内部を高真空下に置くことができる。
尚、排気孔14と排気配管接続部14aは、基板冷却装置10Aにロードロック装置としても機能も果たせるようにするために設けたものである。つまり、基板冷却装置10Aが基板Sを収容して冷却することのみを目的とするものであれば、排気孔14と排気配管接続部14aを設ける必要はない。
【0034】
また、一方の側壁11cには、冷却ガスが流動し得るガス導入孔17Aが形成されており、ガス導入孔17Aの側壁11c側の開口にはガス配管接続部18Aが形成されている。ガス配管接続部18Aには、冷却ガスを供給するガス源20に通じるガス配管19が接続されている。ガス配管19の途中にはバルブ21が接続されており、バルブ21の開閉動作により本体31Aの内部への冷却ガスの供給を制御することができる。
尚、冷却ガスの供給を制御することは、冷却ガスの供給の開始と停止を行うことに限らず、冷却ガスの流量や流速を調整する制御も含む。また、これらの制御は自動的に行われるものであっても、操作者によって行われるものであってもよい。また、本実施形態のおける冷却ガスは窒素ガスであるが、基板Sの各種処理へ影響を与えない不活性ガスや乾燥空気などであってもよい。
また、冷却ガスは、基板Sを所定温度にまで冷却できればよく、冷却ガス自体が冷却されて本体31Aの内部に供給される必要はない。すなわち、冷却ガスの温度は、本体31Aの内部に供給された直後において前述の所定温度よりも低ければよく、前述の所定温度が常温より高いものであれば、冷却ガスの温度は常温であっても構わない。
【0035】
本実施形態における各図は、水平面をXY平面、鉛直方向をZ方向とし、図1に示すように、基板Sが排出部12から出し入れされる方向をX軸に一致させて示している。以降、本明細書における前後方向とはX軸に沿う方向を、左右方向とはY軸に沿う方向を、上下方向とはZ軸に沿う方向を指す。
【0036】
図2は、カバー部材30Aを除いた状態での基板冷却装置10Aの上面図である。また、図3は、図2のV1-V1線における基板冷却装置10Aの縦断面図である。尚、図2および図3においては、図1におけるフラップ弁13等の本体31Aの外側に配置される構成要素を省略して示している。また、図3においては、図2に示されていないカバー部材30Aも示されている。
【0037】
図2および図3に示すように、基板冷却装置10Aの本体31Aの内部には、基板Sを収容する収容空間34が形成されている。より詳細には、収容空間34は、基板Sを取り囲むように配置され、本体31Aを構成する複数の壁部11、すなわち前方壁11a、後方壁11b、一対の側壁11c、11c、および底壁11dの各内側の面によって区画された空間であり、本体31Aにカバー部材31Aが取り付けられることにより、収容空間34は排出部12を除き外部に対して閉塞された空間となる。
図2および図3に示すように、天井壁11eには、カバー部材31Aを載置する載置面11fが形成されている。
また、基板Sは全体円板状を成し、表面Saと裏面Sb、および側面Scを有する。尚、イオン注入等の各種処理は基板Sの表面Saに対して施される。
【0038】
図2に示すように、底壁11dの収容空間34を区画する内側の面である底壁内面34aには、基板Sを載置するための一対の載置台35、35が形成されている。一対の載置台35、35は左右方向に離間して形成されており、各載置台35は、図3に示すように、底壁内面34aから上方に突出し、上面視で細長の矩形状に形成されている。また、各載置台35は長手方向を前後方向に一致させており、各載置台35の長手方向両端部にはそれぞれ、基板Sを支持する支持部36と、基板Sの位置決め、および基板Sの移動を規制する規制面37aを備える規制壁37が配置されている。一対の載置台35、35は、基板Sの裏面Sbと底壁内面34aとの間に冷却ガスを前方に向かって円滑に流動させるための間隙を形成するものである。
【0039】
一対の載置台35、35は、基板Sの裏面Sbと底壁内面34aとの間に冷却ガスが流動するための間隙を形成しつつ基板Sを収容空間34に収容して支持できるよう形成されていればよい。すなわち、基板Sは、載置台35、35に直接載置されることに限定されず、本実施形態のように載置台35に配置された支持部36に載置されて支持される構造であってよい。
尚、一対の載置台35、35は、基板Sを底壁内面34aから持ち上げた状態で支持できればよい。したがって、載置台35、35は、底壁内面34aに別部材を配置することによって形成されていてもよく、また、底壁内面34aが切削されるなどして底壁内面34aと一体に形成されていてもよい。
【0040】
また、図2に示すように、ガス源20から供給される冷却ガスが流動するガス導入孔17Aは、本体31Aを構成する後方壁11bの内部を貫通するように形成されている。詳述すると、ガス導入孔17Aは、側壁11cの外側面に形成されたガス配管接続部18Aから途中4か所の分岐部17Bにおいて分岐し、後方壁11bの内側面11gに形成された5か所の開口に通じるように形成されている。
【0041】
図2および図3に示すように、基板冷却装置10Aは、さらに、後方壁11bの内側面11gに着脱可能に配置され、冷却ガスを噴出する噴出体40Aを備える。噴出体40Aは、収容空間34に収容された基板Sに向けて冷却ガスを噴出する5つの噴出口42Aと、噴出体40Aの内部を前後方向に貫通して各噴出口42Aに通じるように形成され、内部を冷却ガスが流動するガス流路41Aとを備えている。
尚、本第一実施形態における噴出体40Aは、壁部11の後方壁11bに着脱可能な構成である。すなわち、本第一実施形態における基板冷却装置10Aにおいては、噴出体40Aを後方壁11bから取り外せる構成であることから、噴出体40A全体を本体31Aの外部に取り外すことができる。また、噴出体40Aの収容空間34に対する配置位置や取り付け方法は限定されず、噴出体40Aの少なくとも一部を本体31Aの外部に取り外せる構成であればよい。つまり、噴出体40Aを複数の構成部材から構成し、そのうちの少なくとも一つの構成部材を31Aの外部に取り外せる構成としてもよい。
【0042】
例えば、噴出体40Aは、側壁11cまたは底壁11dの内側の面に着脱可能とされていてもよい。また、噴出体40Aは、噴出体40Aと壁部11との間にパッキン等のシール部材を介在させて取り付けられていてもよく、基板Sに対する噴出口42Aの位置を調整するためのスペーサー部材を介在させて取り付けられていてもよい。
【0043】
図2および図3に示すように、噴出体40Aの5つのガス流路41Aはそれぞれ、後方壁11bの内側面11gに形成されたガス導入孔17Aに通じる各開口と通じるように形成されている。各噴出口4Aおよび各ガス流路41Aは、各噴出口42Aから噴出される冷却ガスの流動が均一となるよう、すなわち、各噴出口42Aから噴出される冷却ガスの流量と流速の一方あるいは両方を略均一に揃えられるよう構成されている。
【0044】
ここで、各噴出口42Aから噴出される冷却ガスの流動を均一に揃えることは、各噴出口4Aおよび各ガス流路41Aの配置位置や形状等の構成を変更して調整することにより達成され、例えば、ガス流路41Aの長さ寸法、流路の形状等をガス流路41Aごとに変更することや、噴出口40Aの開口面積を噴出口40Aごとに変更すること等により達成される。
【0045】
また、図3に示すように、噴出体40Aの5つの噴出口42Aは、いずれも冷却ガスを基板Sの側面Scに向けて、すなわち前方に向けて、噴出できる構成とされており、収容空間34に収容された基板Sの側面Scに対向し、基板Sの厚さ方向、すなわち上下方向について基板Sと同位置になるよう位置付けられている。また、図2に示すように、5つの噴出口42Aは、左右方向について等間隔で一列に整列するよう形成されている。さらに、冷却ガスを収容空間34から排出する排出部12は、排出部12の開口が噴出口42Aと基板Sを挟んで対向するように位置付けられて形成されている。
【0046】
したがって、5つの噴出口42Aから噴出された冷却ガスの流れは、図3に示されるような、すなわち以下のような流れとなる。まず、各噴出口42Aから前方に向かって冷却ガスが噴出され、各噴出口42Aから噴出された直後の冷却ガスの流動である初期フローF1が発生する。その後、初期フローF1は、基板Sの側面Scによって、基板Sの表面Sa上を流動する表側フローFaと基板Sの裏面Sb上を流動する裏側フローFbに分岐される。その後、表側フローFaと裏側フローFbは、基板Sの表面Sa上と裏面Sb上をそれぞれ前方向に横切った後、表側フローFaと裏側フローFbは全体の流動方向を前方向としたまま変えることなく、そのまま排出フローF2として排出部12から収容空間34の外部へ排出される。
【0047】
このように、冷却ガスは、表側フローFaと裏側フローFbとして示すように、基板Sの表面Sa上と裏面Sb上をともに前方向、すなわち一方向に向かって流動し、この間に基板Sの表面Sa側と裏面Sb側のそれぞれから熱を奪い、基板Sを冷却する。その後、そのまま一方向に流動し、排出フローF2として排出される。また、基板Sの側面Scは初期フローF1によって前方に向かって押されるが、本第一実施形態の基板収容装置10においては、規制壁37に形成された規制面37aによって基板Sの前方向への移動を規制している。
【0048】
続いて、本第一実施形態における基板冷却装置10Aの動作を説明する。
基板冷却装置10Aは、イオン注入装置である基板処理装置1に組み込まれて使用され、イオン注入後の基板Sを冷却するとともに、ロードロック装置としての機能を備えるものである。まず、基板Sは基板処理装置1が備える加熱装置(不図示)により加熱され、内部を高真空とされた処理室(不図示)においてイオンビームが照射されることによりイオン注入処理が施される。その後、基板Sは、内部を高真空とされた本体31Aの収容空間34に収容される。次に、バルブ21が開かれてガス源20から収容空間34に冷却ガスが供給され始める。このとき、冷却ガスは、まず、流量を抑えた状態で供給されて各噴出口42Aから噴出され、収容空間34の内圧が高められる。その後、バルブ21がさらに開かれ、冷却ガスは、基板Sを冷却させるために設定された所定の流量または流速で収容空間34に連続して導入される。
【0049】
そして、各噴出口42Aから冷却ガスが前方に向かって噴出されることにより前方に流動する初期フローF1が発生し、続いて初期フローF1は表側フローFaと裏側フローFbとに分岐され、それぞれ基板Sの表面Sa上および裏面Sb上を前方に向かって一方向に流動し、排出フローF2となって排出部12から前方に向かって一方向に排出される。冷却ガスは基板Sを所望の温度にまで冷却できるよう所定時間連続して供給されており、所定時間経過後にバルブ21を再び動作させて冷却ガスの供給が停止される。続いて、冷却された基板Sは、図示されないロボットハンドにより排出部11と通って本体31Aの外部に搬出される。その後、フラップ弁13が閉じられて、真空ポンプ16により真空排気することにより、収容空間34の内部は再び真空とされる。
尚、フラップ弁13は、冷却ガスが収容空間34内を流動している間は、排出フロー2によって前方に押されることにより開くものであるが、モーター等の駆動装置により開閉が制御される構造であってもよく、基板Sの冷却中に冷却ガスの一方向への流動を妨げるものでなければよい。
【0050】
本第一実施形態の基板冷却装置10Aによれば、冷却ガスは、噴出口42から収容空間34に収容された基板Sに向けて噴出された後、基板Sの表面Sa上と裏面Sb上のそれぞれを一方向に流動した後、排出部12から一方向に排出される。すなわち、冷却ガスは、基板Sの表面Sa上と裏面Sb上を常に一方向に流動し、いずれも一面側から他面側に回り込むことなく、排出部から排出される。したがって、基板の表面Sa側と裏面Sb側はともに噴出口42Aに近い領域から、即ち後方側から前方側に向かって、順次冷却されていく。よって、基板Sを表面Sa側と裏面Sb側との間に一方向における冷却の進行差の発生が抑制され、基板を均一に冷却することができる。その結果、表面Sa側と裏面Sb側に冷却の進行差が発生することがなく、基板Sに反りが発生することが抑制される。
尚、初期フローF1、表側フローFa、および裏側フローFbは、いずれも各噴出口42Aから噴出される冷却ガス全体の流動を表している。すなわち、初期フローF1、表側フローFa、および裏側フローFbは、いずれも、微視的には、または部分的には、上下方向または左右方向に広がる流動や乱流となっていてもよく、全体として一方向に流動するものであればよい。
【0051】
また、基板冷却装置10Aは、5つの噴出口42Aが基板Sの厚さ方向について略同位置に整列していることから、各噴出口42Aから噴出される冷却ガスの初期フローF1は基板Sの厚さ方向について略同位置から発生する。したがって、基板Sの表面Saおよび裏面Sbについて左右方向、すなわち一方向との直交方向における各初期フローF1を均一とさせやすい。したがって、表側フローFaと裏側フローFbがそれぞれ左右方向、すなわち一方向との直交方向についても均一としやすくなり、その結果、表側フローと裏側フローがそれぞれ前記の直交方向についても均一な流動となりやすくなる。すなわち、基板の表面および裏面の一方向との直交方向についても、冷却の進行差の発生を抑制することができる。つまり、すなわち、基板Sの表面Saおよび裏面Sbの左右方向、すなわち一方向との直交方向についても、冷却の進行差の発生を抑制することができ、基板Sをより均一に冷却することができる。
【0052】
また、基板冷却装置10Aは、初期フローF1を、基板Sの側面Scにより表側フローFaと裏側フローFbに分岐できることから、後述する第三実施例における基板冷却装置10Cとは異なり、噴出体40Aに形成するガス流路41Aを、表側フローFaを発生させるための流路と裏側フローFbを発生させるための流路とに分けて形成する必要がないことから、簡易な構造で噴出体40Aを形成することができる。
【0053】
また、基板冷却装置10Aは、初期フローF1を表側フローFaと裏側フローFbに分岐するための構成を別途設ける必要もなく、本体31A内部の構成を簡易なものとすることができる。また、基板冷却装置10Aは、基板Sの一方向における移動を規制する規制壁37をさらに備えていることから、基板Sの側面Scが初期フローF1に押された場合であっても基板Sが許容範囲を越えて移動することがない。
【0054】
噴出体40Aは、本体31Aの外部に取り外せるよう構成されていることから、噴出体40Aを本体31Aの外部に取り出して清掃などのメンテナンス作業を行うことができる。その結果、噴出体40Aが本体31Aと一体に形成されている場合と比較してメンテナンス時の作業性が向上する。
尚、噴出体40Aは、噴出体40A全体を本体31Aの外部に取り外せるように構成されていることに限らず、噴出体40Aを複数の部材から構成される構造とし、その一部を本体31Aの外部に取り外せる構成としてもよい。
【0055】
また、仮に、噴出体40Aが本体31Aに一体に形成されている構成であるとすると、例えば噴出口42Aまたはガス流路41Aを変更したい場合には、本体31A全体を交換する必要がある。これに対し、本第一実施形態の基板冷却装置10Aによれば、噴出体40Aの全体または一部を、所望の変更を施した噴出口またはガス流路を形成した噴出体または噴出体の一部に交換するのみでよい。したがって、噴出口42Aまたはガス流路41Aの構成を容易に変更できる。
【0056】
例えば、基板Sに対する各噴出口42Aの位置をより近づけたい場合には、各ガス流路41Aを前方向に延長し各噴出口42Aの形成位置を基板Sに近づけた噴出体を作成し、噴出体40Aと付け替えて使用すればよい。
【0057】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態における基板冷却装置10Bについて説明する。
図4図6においては、第一実施形態の基板冷却装置10Aと共通する構成については、第一実施形態の基板冷却装置10Aと同一の符号を付与し、その説明を省略する。また、基板冷却装置10Bの使用方法は、基板冷却装置10Aと同一であるため、説明を省略し、以下においては、基板冷却装置10Bに特有の構成、および、それによる作用効果について説明する。
【0058】
図4は、本発明の第二実施形態における基板冷却装置10Bを示す分解斜視図である。図4に示すように、基板冷却装置10Bは、内部に収容空間34が形成された本体31Bと、開口32を閉塞する全体板状のカバー部材30Bとを備える。本体31Bとカバー部材30Bは、いずれも金属材料により形成されており、カバー部材30Bの下面には、収容空間34に収容された基板Sに向けて冷却ガスを噴出する噴出体40Bが配置される。つまり、基板冷却装置10Bにおいては、噴出体40Bは、カバー部材30Bを本体31Aに取り付けることで本体31Aの内部に配置され、カバー部材30Bを本体31Aから取り外すことによって、本体31Aの外部に取り外される構成である。
【0059】
本体31Bとカバー部材30Bについて、第一実施形態の基板冷却装置10Aにおける本体31Aおよびカバー部材30Aとの主な相違点は、ガス源20に通じるガス配管接続部18B、および冷却ガスが流動するガス導入孔17Bがカバー部材30Bに形成されている点にある。すなわち、基板冷却装置10Bにおいては、ガス源20から供給される冷却ガスは、ガス配管接続部18Bからガス導入孔17Bを通過して、カバー部材30Bに配置された噴出体40Bに導入され、噴出体40B形成された噴出口42Bから収容空間34に噴出する構成である。
【0060】
図4に示すように、ガス導入孔17Bはカバー部材30Bを板厚方向に貫通するように形成されており、噴出体40Bがカバー部材30Bに取り付けられた状態では、ガス貫通孔17Bは噴出体40Bの内部に形成されたガス流路41Bに通じるよう構成されている。
【0061】
噴出体40Bは、二つの分割体である第一分割体45aと第二分割体45bにより構成されており、5つの噴出口42Bと、各噴出口42Bに通じるよう途中で流路が分岐されたガス流路41Bを備える。第一分割体45aと第二分割体45bにはそれぞれ冷却ガスが流動するガス流路41Bとなり得る溝または貫通孔が形成されており、第一分割体45aと第二分割体45bを組み合わせることにより、最終的にガス流路41Bが完成する構成とされている。
【0062】
図5は、カバー部材30Bを外した基板冷却装置10Bの上面図である。また、図6は、図5に示すV2-V2線における基板冷却装置10Bの縦断面図である。図6には。図5に示されていないカバー部材30Bが示されている。尚、図6に示す噴出体40Bについては、図の理解を容易にするためハッチングを省略している。図5および図6に示すように、本第二実施形態における噴出体40Bは、冷却ガスを噴出する5つの噴出口42Bと、各噴出口42B通じ、内部に冷却ガスが流動するガス流路4Bを備えており、カバー部材30Bに着脱可能に固定された状態で、収容空間34内に配置される。また、5つの噴出口42Bは、第一実施形態における噴出口42Aと同様、基板Sの側面Scに対向するよう上下方向について同位置に形成され、かつ、左右方向について一列に整列するよう形成されている。
【0063】
また、図4図6に示すように、基板冷却装置10Bは、初期フローF1を表側フローFaと裏側フローFbとに分岐させる分岐部材38を備えている。分岐部材38は薄板により形成されており、噴出口42Bと収容空間34に収容された基板Sとの間に位置するよう、支持部36または載置台35に取り付けられて配置されている。
尚、5つの噴出口42Bの基板Sに対する位置関係は、第一実施形態における基板冷却装置10Aの5つの噴出口42Aと同一である。また、5つの噴出口42Bから発生される冷却ガスの流動についても、初期フローF1を表側フローFaと裏側フローFbに分岐させる方法を除いては第一実施形態における基板冷却装置10Aと同一であるため、その説明を省略する。
【0064】
本第二実施形態における基板冷却装置10Bにおいては、ガス導入孔17Bを、カバー部材30Bの厚さ方向に向けて一方向に貫通させることにより形成できる。したがって、第一実施形態の基板冷却装置10Aのように本体31Aを構成する壁部11にガス導入孔17Aを形成する場合と比較して、ガス導入孔17Bの形成が容易となる。
【0065】
また、第一実施形態の基板冷却装置10Aと比較して、ガス導入孔17Bの形成が容易となる代わりに、噴出体40Bの内部に形成されたガス流路41Bが分岐部を有することによって、噴出体40Bの形成が困難になる場合がある。このような課題に対し、本第二実施形態における噴出体40Bにおいては、第一分割体45aと第二分割体45bに冷却ガスが流動するガス流路41Bとなり得る溝または貫通孔を形成し、第一分割体45aと第二分割体45bを組み合わせることにより、最終的にガス流路41Bが完成する構成としている。したがって、第一分割体45aと第二分割体45bのそれぞれに、ガス流路41Bを形成し得る溝または貫通孔を形成すればよいので、最終的なガス流路41Bの形状が複雑なものであっても容易に形成することができる。
尚、噴出体40Bは二つの分割体である第一分割体45aと第二分割体45bを組み合わせるものであるが、三つ以上の分割体を組み合わせる構成としてもよい。また、各分割体の間にシール部材を介在して気密性を高める構成としてもよい。
【0066】
また、基板冷却装置10Bは、分岐部材38により初期フローF1を表側フローFaと裏側フローFbとに分岐させることから、初期フローF1が基板Sを前方向に押すことなく表側フローFaと裏側フローFbに分岐できることから、初期フローF1による基板Sの位置ずれが生じるおそれがない。したがって、基板Sの位置ずれの発生を考慮することなく、初期フローF1の流速と流量の一方または両方を増加させることができ、基板Sの冷却効率を向上させることができる。すなわち、基板Sを所定温度にまで冷却するのに要する時間を短縮することができ、その結果、基板冷却装置10Bを使用する基板処理装置1においては、基板Sに対する処理時間全体が短縮されスループットが向上する。
尚、本第二実施形態においては、基板Sの位置ずれが発生するおそれがないため、規制壁37を省略した構成としてもよい。
【0067】
また、図6に示すように、噴出体40Bは、噴出体40Bと底壁内面34aとの間、および、噴出体40Bと後方壁11bの内側面11gとの間に間隙を形成して収容空間34に配置されている。したがって、カバー部材30Bを本体31Bに取り付ける作業時には、噴出体40Bが固定されたカバー部材30Bを下方に移動させて本体31Bに取り付けることにより、噴出体40Bが底壁内面34aと内側面11gに接触することがない。すなわち、噴出体40Bが底壁内面34aまたは内側面11gに接触することによる損傷やパーティクルの発生が抑制される。
【0068】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態における基板冷却装置10Cについて説明する。
図7図10においては、第一実施形態の基板冷却装置10Aまたは第二実施形態の基板冷却装置10Bと共通する構成については、第一実施形態の基板冷却装置10Aおよび第二実施形態の基板冷却装置10Bと同一の符号を付与し、その説明を省略する。また、基板冷却装置10Cの使用方法は、基板冷却装置10Aと同一であるため、説明を省略し、以下においては、基板冷却装置10Cに特有の構成、および、それによる作用効果について説明する。
【0069】
図7は、本発明の第三実施形態における基板冷却装置10Cを示す分解斜視図である。
図7に示すように、基板冷却装置10Cは、本体31C、本体31Cに取り付けられる板状のカバー部材30C、冷却ガスを噴出する噴出体40C、およびカバー部材30Cと噴出体40Cの間に配置されるスペーサー部材80を備える。本体31C、カバー部材30C、噴出体40C、およびスペーサー部材80はいずれも金属材料により形成されている。
【0070】
噴出体40Cは、それぞれ全体板状の表側流路部材50C、中間部材70、と裏側流路部材60Cから成り、表側流路部材50C、中間部材70、および裏側流路部材60Cを上下方向に、すなわちそれぞれの板厚方向に重なるようにして組み立てられる。
中間部材70は、収容空間34に収容された基板Sの表面Sa上を流動する表側フローFaを発生させる7つの表側噴出口54Cと、基板Sの裏面Sb上を流動する裏側フローFbを発生させる7つの裏側噴出口64Cを有する。尚、後述するように、表側噴出口54Cと裏側噴出口64は、いずれも中間部材70に表側流路部材50Cと裏側流路部材60が組み合わせることにより周囲が閉塞された開口として完成するものである。また、本第三実施形態における表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cの開口形状はいずれも矩形状であるが、矩形状に限定されず、例えば円形状であってもよい。また、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cがすべて同一形状であることに限らない。
尚、カバー部材30Cを本体31Aから取り外すことにより、噴出体40Cは本体31Aの外部に取り外せる構成であるが、表側流路部材50C、中間部材70、および裏側流路部材60Cのいずれかを個別に本体31Aから取り外し、所望の変更を施せる構成としてもよい。
【0071】
第三実施形態における基板冷却装置10Cは、第一実施形態における基板冷却装置10Aと同様、ひとつのガス源20とガス配管19を備え、ガス配管19は途中で表側ガス配管19pと裏側ガス配管19qに分岐するよう構成されている。また、カバー部材30Cには、二つのガス配管接続部18p、18qと、二つのガス配管接続部18p、18qのそれぞれに通じる二つのガス導入孔17p、17qが形成されている。一方のガス配管接続部18pは、ガス源20と表側ガス配管19pを介して通じており、表側ガス配管19pの途中には冷却ガスの流動を調整できるバルブ21pが配置されている。他方のガス配管接続部18qは、ガス源20と裏側ガス配管19を介して通じており、裏側ガス配管19の途中には冷却ガスの流動を調整できるバルブ21qが配置されている。
【0072】
さらに、ガス導入孔17pは、噴出体40Cの表側噴出口54Cに通じており、ガス導入孔17qは、噴出体40Cの裏側噴出口64Cに通じている。すなわち、ガス源20から表側ガス配管19pを通じて供給される冷却ガスは表側噴出口54Cから噴出して表側フローFaを生成し、ガス源20から裏側ガス配管19qを通じて供給される冷却ガスは裏側噴出口64Cから噴出して裏側フローFbを生成する。つまり、本第三実施形態における基板冷却装置10Cにおいては、表側フローFaと裏側フローFbを生成する冷却ガスは、ひとつのガス源20から表側ガス配管19pと裏側ガス配管19q分岐を通じて別々に供給されるよう構成されている。
尚、ガス源を二つ使用し、一方のガス源を表側ガス配管19pに接続し、他方のガス源を裏側ガス配管19qに接続する構成してもよい。すなわち、カバー部材30Cの二つのガス導入孔17p、17qに異なるガス源から供給される冷却ガスを流動させるようにしてもよい。
【0073】
図8は、噴出体40Cの分解斜視図である。
図8に示すように、表側流路部材50Cの下面50aには、破線で示されるように、表側フローFaを生成する冷却ガスが流動する表側第一溝部55Cが形成されている。また裏側流路部材60Cの表面60aには、裏側フローFbを生成する冷却ガスが流動する裏側第一溝部65Cが形成されている。
【0074】
また、中間部材70の上面70aには表側フローFaを生成する冷却ガスが流動する表側第二溝部71が形成されており、中間部材70の下面70bには、一部が破線で示されるように、裏側第二溝部72が形成されている。また、中間部材70の前側側面70cには、上面70a側に7つの表側噴出口54Cが、下面70b側に7つの裏側噴出口64Cが形成されており、各表側噴出口54Cと各裏側噴出口64は、それぞれ正面視で上面70a側と下面70b側に開口する凹形状を成している。
【0075】
表側流路部材50C、中間部材70、および裏側流路部材0Cを積層させて噴出体40Cを組み立てた状態では、表側流路部材50Cの表側第一溝部55Cと中間部材70の表側第二溝部71が合わさって互いに閉塞し合うことで、表側フローFaを生成する冷却ガスが流動するガス流路である表側流路53Cが完成する。同様に、裏側流路部材60Cの裏側第一溝部65Cと中間部材70の裏側第二溝部72が合わさって互いに閉塞し合うことで、裏側フローFbを生成する冷却ガスが流動するガス流路である裏側流路63Cが完成する。また、表側流路53Cと裏側流路63Cとは、噴出体40Cの内部において互いに交わることなく形成されている。
【0076】
また、中間部材70の各表側噴出口54Cは、表側流路部材50Cの下面50aによって上方が閉塞される。したがって、各表側噴出口54Cは前後方向について周囲が閉塞され、冷却ガスを前方に噴出できるようになる。同様に、中間部材70の各裏側噴出口64Cは、裏側流路部材60Cの上面60aによって下方が閉塞される。したがって、各裏側噴出口64Cは前後方向について周囲が閉塞され、冷却ガスを前方に噴出できるようになる。
尚、本第三実施形態においては、表側流路部材50Cと裏側流路部材60Cは、それぞれ表側第一溝部55Cと裏側第一溝部65Cが形成されている構成としたが、表側第一溝部55Cと裏側第一溝部65Cは必ずしも形成されている必要はない。すなわち、表側流路部材50Cの下面50aと裏側流路部材60Cの上面60aはそれぞれ平坦な形状とされ、中間部材70に形成された表側第二溝部71と裏側第二溝部72を単に閉塞するのみの構成であってもよい。すなわち、表側流路部材50Cと裏側流路部材60Cは、それぞれに流路が形成されている必要はなく、噴出体40Cが組み立てられた結果、表側流路53Cと裏側流路63Cの一部を構成するものであればよい。
【0077】
また、噴出体40Cは、三つの分割体である表側流路部材50C、中間部材70、および裏側流路部材60Cを組み合わせることにより、表側流路53Cと裏側流路63Cを完成させる構成として捉えることができる。すなわち、本第三実施形態の基板冷却装置10Cにおいては、噴出体40Cが三つの分割体である表側流路部材50C、中間部材70、および裏側流路部材60Cを組み合わせることにより表側流路53Cと裏側流路63Cを完成できることから、ガス流路の形成が容易になるとともに、より複雑なガス流路を形成することも可能となる。
【0078】
図7に示すように、スペーサー部材80には、板厚方向に貫通し、ガス導入孔17pとガス導入孔17qにそれぞれ通じる二つの貫通孔80p、80qが形成されている。また、図8に示すように、表側流路部材50Cには、ガス導入孔17pとガス導入孔17qにそれぞれ通じる二つの貫通孔22p、22qが形成されている。また、中間部材70には、貫通孔22qおよびガス導入孔17qに通じる貫通孔22形成されている。
【0079】
噴出体40Cがカバー部材30Cに取り付けられた状態においては、ガス導入孔17pは、貫通孔80pおよび貫通孔22pを介して表側流路53Cに通じている。また、ガス導入孔17qは、貫通孔80q、貫通孔22q、貫通孔22rを介して裏側流路63Cに通じている。
【0080】
図9は、カバー部材30Cを除いた基板冷却装置30Cの上面図である。また、図10は、基板冷却装置30Cの図9に示すV3-V3線における縦断面図である。尚、図10においては、図9に示されていないカバー部材30Cが示されている。
図9に示すように、噴出体40Cの7つの表側噴出口54Cは、左右方向について等間隔で配置されており、基板Sの表面Saの左右方向について全域に冷却ガスを均一に噴出できる構成である。また、図7および図8に示すように7つの裏側噴出口64Cは、それぞれ各表側噴出口54Cと左右方向について同位置に形成されており、基板Sの裏面Sbの左右方向について全域に冷却ガスを均一に噴出できる構成である。
【0081】
図10に示すように、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cは、基板Sの厚さ方向について、すなわち上下方向について、基板Sを挟んで所定間隔離間するように位置づけられている。表側噴出口54Cは、収容空間34に収容された基板Sの表面Sa側に向けてガス源20から表側ガス配管19pを通じて供給される冷却ガスを前方向に噴出し、表面Sa上を流動する表側フローFaを発生させる。また、裏側噴出口64Cは、収容空間34に収容された基板Sの裏面Sb側に向けてガス源20から裏側ガス配管19qを通じて供給される冷却ガスを前方向に噴出し、裏面Sb上を流動する側フローFbを発生させる。
【0082】
本第三実施形態の基板冷却装置10Cにおいては、第一実施形態の基板冷却装置10Aおよび第二実施形態の基板冷却装置10Bと異なり、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cから前方に向かって一方向に発生される表側フローFaと裏側フローFbは、それぞれ分岐することなく一方向に基板Sの表面Sa側と裏面Sb側を流動する構成である。すなわち、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cが上下方向について基板Sを挟みつつ所定間隔離間させることにより、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cから、基板Sの側面Scにより分岐されることなく、基板Sの表面Sa上と裏面Sb上を一方向に流動する表側フローFaと裏側フローFbを直接発生させることができる。
【0083】
本第三実施形態における基板冷却装置10Cによれば、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cから、表側フローFaと裏側フローFbをそれぞれ個別に発生させることができる。また、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cに供給される冷却ガスの流量または流速を、表側ガス配管19pおよび裏側ガス配管19qに配置されたバルブ21p、バルブ21qを個別に制御することにより、表側フローFaと裏側フローFbの流量または流速を独立して制御できる。したがって、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cを個別に調整することにより、表側フローFaと裏側フローFbを個別に調整でき、その結果、より均一に基板を冷却することができる。
尚、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cを個別に調整することは、例えば、各表側噴出口54Cと各裏側噴出口64Cの開口形状や開口面積を個別に調整することや、冷却ガスを噴出する向きをそれぞれ変更することを含んでおり、基板Sの表面Saと裏面Sbとの間の一方向における冷却差の発生を抑制するあらゆる調整を含んでいる。
【0084】
特に、本第三実施形態における基板冷却装置10Cにおいては、表側流路53Cと裏側流路63Cは互いに交わることなく形成されている。したがって、表側ガス配管19pおよび裏側ガス配管19qに配置されたバルブ21p、バルブ21qを個別に制御することにより、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cに供給される冷却ガスの流量または流速を個別に制御できる。したがって、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cから噴出する冷却ガスの流量または流速をそれぞれ個別に制御することにより、表側フローFaの流量または流速と、裏側フローFbの流量または流速を個別に調整することができる。したがって、表側フローFaと裏側フローFbのそれぞれについて、流速と流量の一方または両方を調整することができる。したがって、表側フローFaと裏側フローFbをより確実に独立して調整できることから、基板Sの表面Saと裏面Sbとの間の一方向における冷却差の発生をより確実に抑制することができ、その結果、基板をより均一に冷却することができる。
【0085】
また、複数の表側噴出口54Cと複数の裏側噴出口64Cは、左右方向について互い違いに配置されるよう構成されていてもよい。また、表側噴出口54Cおよび裏側噴出口64Cの少なくとも一方は、基板Sに向けて左右方向から上下方向に傾くような方向に向けて冷却ガスを噴出するものであってもよい。また、スペーサー部材80と中間部材70の厚さを変更することにより、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cの基板Sに対する位置を変更できるよう構成されていてもよい。
尚、スペーサー部材80は、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cの基板Sに対する上方方向の位置を調整するために必要に応じて使用されるものであり、スペーサー部材80を省略することも可能である。
【0086】
また、図8に示すように、噴出体40Cの中間部材70には、表側噴出口54Cに連なる表側規制面56Cが形成されている。図10に示すように、表側規制面56Cは、表側噴出口54Cに連なる表側流路53Cの下面として形成されている。同様に、図8に示すように、噴出体40の中間部材70には、裏側噴出口64Cに連なる裏側規制面66Cが形成されている。図10に示すように、裏側規制面66Cは、裏側噴出口64Cに連なる裏側流路63Cの上面として形成されている。
【0087】
表側規制面56Cは、表側噴出口54Cから噴出する冷却ガスが、基板Sの側面Scに衝突することを規制し、基板Sの表面Sa側に確実に流動するよう誘導するものである。同様に、裏側規制面66Cは、裏側噴出口64Cから噴出する冷却ガスが、基板Sの側面Scに衝突することを規制し、基板Sの裏面Sb側に確実に流動するよう誘導するものである。
【0088】
本第三実施形態における基板冷却装置10Cにおいては、噴出体40Cが表側規制面56Cおよび裏側規制面66Cを備えることにより、表側噴出口54Cおよび裏側噴出口64Cから噴出した直後の冷却ガスが基板Sの側面Scに衝突することが規制され、る。したがって、表側噴出口54Cと裏側噴出口64Cのそれぞれから噴出される冷却ガスの流量または流速を増加させた場合であっても、基板Sの側面Scが冷却ガスにより押されるようにして発生し得る基板Sの位置ずれが発生することはない。その結果、基板Sの位置ずれの発生を考慮することなく表側フローFaと裏側フローFbの流量または流速を増加させることができ、基板Sを所定の温度にまで冷却するのに必要な時間を短縮することができる。
尚、表側規制面56Cと裏側規制面66Cはともに冷却ガスが基板Sの側面Scに完全に衝突することを防止できる必要はなく、基板Sの位置ずれが発生しない程度に抑制できるものであればよい。
【0089】
また、本第三実施形態における基板冷却装置10Cにおいては、噴出体40Cの表側噴出口54Cおよび裏側噴出口64Cを基板Sの側面Scに近づけるほど、表側噴出口54Cおよび裏側噴出口64Cから広がるように発生する噴流が基板Sの側面に衝突することなく基板Sの表面Sa上と裏面Sb上を流動でき、冷却効率が向上する。言い換えれば、表側噴出口および裏側噴出口の位置をより基板Sの側面Scに近づけられる噴出体に交換することで冷却効率を向上させることも可能である。
【0090】
次に、本発明の第三実施形態の噴出体40Cの変形例である噴出体40Dついて説明する。噴出体40Dは、基板冷却装置10Cに対して前述の噴出体40Cと置き換えて使用することができる構成とされており、噴出体40Dの使用方法は、噴出体40Cと同一であるため、説明を省略する。以下においては、噴出体40Dに特有の構成、および、それによる作用効果について説明する。
【0091】
図11は、噴出体40Dを示す斜視図である。
噴出体40Dは、カバー部材30Cに取り付けられて使用されるものであり、表側流路部材50Dと裏側流路部材60Dを上下方向に積層させるように組み立てることにより構成される。表側流路部材50Dは、収容空間34に収容された基板Sの表面Sa上を流動する表側フローFaを発生させる7つの表側噴出口54Dを有する。また、裏側流路部材60Dは、収容空間34に収容された基板Sの裏面Sb上を流動する裏側フローFbを発生させる7つの裏側噴出口64Dを有する。7つの表側噴出口54Dと7つの表側噴出口54Dの開口形状は円形状であるが、円形状に限らず、例えば矩形状であってもよい。
【0092】
また、噴出体40Dがカバー部材30Cに取り付けられた状態では、表側流路部材50Dの表側噴出口54Dは、カバー部材30Cのガス導入孔17pに通じるよう構成されており、同様に、裏側流路部材60Dの裏側噴出口64Dは、カバー部材30Cのガス導入孔17qに通じるよう構成されている。つまり、噴出体40Dにおいても、表側フローFaと裏側フローFbはひとつのガス源20から途中で分岐するようにして供給された冷却ガスにより生成されるよう構成されている。
【0093】
図12は、噴出体40Dの分解斜視図である。
図12に示すように、表側流路部材50Dは、表側フローFaを生成する冷却ガスが流動し、溝および噴出口54Dに通じる貫通孔により構成される表側流路53Dが形成された表側本体部51Dと、表側本体部51Dの開口を閉塞する表側蓋部52Dを備える。より正確には、表側流路53Dは、表側本体部51Dに形成された溝が表側蓋部52Dにより閉塞されることで流路として完成するものである。また、裏側流路部材60Dは、裏側フローFbを生成する冷却ガスが流動し、溝および噴出口64Dに通じる貫通孔により構成される裏側流路63Dが形成された裏側本体部61Dと、裏側本体部61Dの開口を閉塞する裏側蓋部62Dを備える。より正確には、裏側流路63Dは、裏側本体部61Dに形成された溝が裏側蓋部62Dにより閉塞されることで流路として完成するものである。また、表側流路53Dと裏側流路63Dは、互いに交わることなく形成されている。
【0094】
また、表側流路部材50Dは、二つの分割体である表側本体部51Dと表側蓋部52Dとを組み合わせることにより表側流路53Dを完成させる構成として捉えることができる。同様に、裏側流路部材60Dは、二つの分割体である裏側本体部61Dと裏側蓋部62Dとを組み合わせることにより裏側流路53Dを完成させる構成として捉えることができる。
【0095】
また、噴出体40Dは、二つの分割体である表側流路部材50Dと裏側流路部材60Dとを組み合わせることにより、冷却ガスが流動するガス流路を完成させる構成として捉えることができる。さらに、噴出体40Dは、四つの分割体である表側本体部51D、表側蓋部52D、裏側本体部61D、および裏側蓋部62Dを組み合わせることにより冷却ガスが流動するガス流路を完成させる構成として捉えてもよい。
尚、表側本体部51D、表側蓋部52D、裏側本体部61D、および裏側蓋部62Dの間にはそれぞれパッキン等のシール部材を介在させて組み立てられていてもよい。また、表側本体部51D、表側蓋部52D、裏側本体部61D、および裏側蓋部62Dのいずれか、またはすべてがさらに複数の分割体によって構成されるものであってもよい。
【0096】
また、図12に示すように、表側蓋部52Dには、ガス導入孔17pとガス導入孔17qにそれぞれ通じる二つの貫通孔22s、22tが形成されている。また、表側本体部51Dと裏側蓋部62Dには、それぞれ貫通孔22tおよびガス導入孔22qに通じる貫通孔22u、22vが形成されている。噴出体40Dがカバー部材30Dに取り付けられた状態においては、ガス導入孔17pは、貫通孔22sを介して表側流路53Dに通じている。また、ガス導入孔17qは、貫通孔22t、貫通孔22u、貫通孔22vを介して裏側流路63Dに通じている。
【0097】
また、図11に示すように、噴出体40Dのつの表側噴出口54Dは、左右方向について等間隔で配置されており、基板Sの表面Saの左右方向について全域に冷却ガスを均一に噴出できる構成である。また、図7および図8に示すようにつの裏側噴出口64Dは、それぞれ各表側噴出口54Dと左右方向について同一の位置に形成されており、基板Sの裏面Sbの左右方向について全域に冷却ガスを均一に噴出できる構成である。
【0098】
図13は、噴出体40Dを使用した基板冷却装置30Cの断面図である。尚、図13における断面の切断位置は図10の断面図と同位置である。
図13に示すように、表側噴出口54Dと裏側噴出口64Dは、基板Sの厚さ方向について、すなわち上下方向について、基板Sを挟んで所定間隔離間するように位置づけられている。表側噴出口54Dは、収容空間34に収容された基板Sの表面Sa側に向けてガス源20から表側ガス配管19pを通じて供給される冷却ガスを噴出し、表面Sa上を流動する表側フローFaを発生させる。また、裏側噴出口64Dは、収容空間34に収容された基板Sの裏面Sb側に向けてガス源20から裏側ガス配管19qを通じてから供給される冷却ガスを噴出し、裏面Sb上を流動する側フローFbを発生させる。
【0099】
図11に示すように、裏側蓋部62Dは、表側噴出口54Dから噴出した直後の冷却ガスが基板Sの側面Scに衝突することを規制する表側規制面56Dと、裏側噴出口64Dから噴出した直後の冷却ガスが基板Sの側面Scに衝突することを規制する裏側規制面と66Dを備えている。表側規制面56Dと裏側規制面と66Dは、それぞれ裏側蓋部62Dの表面と裏面を成すよう形成されおり、表側規制面56Dと裏側規制面と66Dはともに、表側噴出口54Dと裏側噴出口54Dよりも前方に延長されるように形成されている。
【0100】
図13に示すように、裏側蓋部62Dは、基板Sの側面Scと上下方向について略同一に位置して対向するように配置されている。したがって、表側噴出口54Dから噴出した直後の冷却ガスは、表側規制面56Dによって流動方向が規制され、基板Sの側面Scに衝突することが抑制される。同様に、裏側噴出口64Dから噴出した直後の冷却ガスは、裏側規制面66Dによって流動方向が規制され、基板Sの側面Scに衝突することが抑制される。
【0101】
すなわち、噴出体40Dの構成によれば、表側規制面56Dを備えることにより、表側噴出口54Dから噴出した直後の冷却ガスにより基板Sの側面Scが押されることがない。また、裏側規制面66Dを備えることにより、裏側噴出口64Dから噴出した直後の冷却ガスにより基板Sの側面Scが押されることがない。したがって、表側噴出口54Dと裏側噴出口64Dのそれぞれから噴出される冷却ガスの流量または流速を増加させた場合であっても、基板Sの側面Scが冷却ガスにより押されることが抑制される。その結果、基板Sの位置ずれの発生を考慮することなく表側フローFaと裏側フローFbの流量または流速を増加させることができ、基板Sを所定の温度にまで冷却するのに必要な時間を短縮することができる。
【0102】
尚、表側規制面56Dと裏側規制面66Dは、裏側蓋部62Dに形成される構成とされているが、裏側蓋部62Dとは異なる板状部材を用意し、その板状部材に表側規制面56Dと裏側規制面66Dを形成してもよい。この場合、板状部材は一枚であることに限らず、表側規制面56Dと裏側規制面66Dがそれぞれ形成される二枚の板状部材を使用する構成としてもよい。
【0103】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0104】
S 基板
Sa 表面
Sb 裏面
Sc 側面
F1 初期フロー
Fa 表側フロー
Fb 裏側フロー
F2 排出フロー
10A、10B、10C 基板冷却装置
12 排出部
30A、30B、30C カバー部材
31A、31B、31C 本体
34 収容空間
40A、40B、40C、40D 噴出体
41A、41B ガス流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13