(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/33 20180101AFI20230511BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20230511BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20230511BHJP
F21S 41/265 20180101ALI20230511BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230511BHJP
【FI】
F21S41/33
F21S41/148
F21S41/151
F21S41/265
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018106119
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037298(JP,A)
【文献】特開2016-039021(JP,A)
【文献】特開2009-301980(JP,A)
【文献】特開2017-212170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/33
F21S 41/148
F21S 41/151
F21S 41/265
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すれ違い用配光パターンを形成する光を出射する第1光源と、
前記第1光源よりも光軸方向前側に設けられて走行用配光パターンを形成する光を出射する第2光源と、
前記第1光源および前記第2光源から出射された光を反射するリフレクタと、
前記リフレクタで反射された光を光軸方向前側に投影する第1レンズと、
前記第2光源から出射された光を前記リフレクタ側に進行させる第2レンズと、を備え、
前記第1光源と前記第2光源
とは、
光軸方向と平行な同一平面上に設けられ
て光軸方向に並べられる位置関係とされ、
前記リフレクタは、前記第1光源から出射された光を前記第1レンズへと反射する第1反射面と、前記第1反射面よりも光軸方向前側に設けられて前記第2光源から出射されて前記第2レンズを通った光を前記第1レンズへと反射する第2反射面と、を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1レンズは、前記第1反射面で反射された光が入射される下部レンズ面と、前記第2反射面で反射された光が入射される上部レンズ面と、を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第2光源は、光軸方向および上下方向に直交する幅方向に複数の光源部が並列されて形成され、
前記走行用配光パターンは、複数の前記光源部のそれぞれからの光が前記第1レンズにより投影されて形成された複数の走行用配光部が前記幅方向に並列されて形成され、前記走行用配光部毎に点灯および消灯が可能とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第2レンズは、前記幅方向に伸びつつ光軸方向のみに屈折力を持つシリンドリカルレンズで形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、光源からの光を用いて所定の配光パターンを形成する。
【0003】
このような車両用灯具は、第1光源からの光ですれ違い用配光パターンを形成するとともに、第2光源からの光で走行用配光パターンを形成するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この車両用灯具は、第1光源から出射されてリフレクタで反射された光と、第1光源よりも前方に設けられた第2光源から出射されて透光部材により導かれた光と、を投影レンズで車両の前方へ向けて出射させることで、すれ違い用配光パターンと走行用配光パターンとを上下に並べて形成している。この車両用灯具は、第2光源よりも後方に設けた第1光源から出射されてリフレクタで反射された光を効率良く利用するために、シェードによる意図的な遮光を除くと、リフレクタと投影レンズとの間で光の進行を妨げることのない配置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用灯具は、透光部材内に設けた反射面で投影レンズへと反射することで、透光部材が第2光源から出射された光を投影レンズに導いているので、透光部材を大きいものとする必要がある。このため、従来の車両用灯具は、第1光源よりも第2光源が下方に位置するように第1光源と第2光源とを段差を付けて設けている。これにより、従来の車両用灯具は、第1光源および第2光源が取り付けられる部材の形状の複雑化を招くとともに、第1光源および第2光源に個別の基板を設ける必要がある。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、すれ違い用配光パターンと走行用配光パターンとを重ねて形成しつつ第1光源と第2光源とを段差なく設けることのできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両用灯具は、すれ違い用配光パターンを形成する光を出射する第1光源と、前記第1光源よりも光軸方向前側に設けられて走行用配光パターンを形成する光を出射する第2光源と、前記第1光源および前記第2光源から出射された光を反射するリフレクタと、前記リフレクタで反射された光を光軸方向前側に投影する第1レンズと、前記第2光源から出射された光を前記リフレクタ側に進行させる第2レンズと、を備え、前記第2光源は、前記第1光源と同一平面上に設けられ、前記リフレクタは、前記第1光源から出射された光を前記第1レンズへと反射する第1反射面と、前記第1反射面よりも光軸方向前側に設けられて前記第2光源から出射されて前記第2レンズを通った光を前記第1レンズへと反射する第2反射面と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車両用灯具によれば、すれ違い用配光パターンと走行用配光パターンとを重ねて形成しつつ第1光源と第2光源とを段差なく設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る一例としての車両用灯具の構成を示す説明図である。
【
図2】走行用配光パターンおよびすれ違い用配光パターンを示す説明図である。
【
図3】走行用配光パターンにおいて一部の走行用配光部が消灯された様子を示す
図2と同様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一実施形態としての車両用灯具10の実施例1について
図1から
図3を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0011】
車両用灯具10は、自動車等の車両に用いられる灯具として用いられるもので、例えば、ヘッドランプやフォグランプ等に用いられる。車両用灯具10は、車両の前部の左右両側で、ランプハウジングの開放された前端がアウターレンズで覆われて形成される灯室に、上下方向用光軸調整機構や幅方向用光軸調整機構を介して設けられる。以下の説明では、車両用灯具10において、車両の直進時の進行方向であって光を照射する方向を光軸方向とし、車両に搭載された状態での鉛直方向を上下方向とし、光軸方向および上下方向に直交する方向を幅方向とする。
【0012】
車両用灯具10は、
図1に示すように、第1光源11と第2光源12とヒートシンク部材13とリフレクタ14とシェード15と第1レンズ16と第2レンズ17とを備え、プロジェクタタイプの前照灯ユニットを構成する。
【0013】
第1光源11は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成され、基板20に実装されている。その基板20は、ヒートシンク部材13の上面13aに固定されている。この第1光源11は、点灯制御回路から電力が供給されて適宜点灯される。
【0014】
第2光源12は、LED等の発光素子で構成され、第1光源11よりも光軸方向の前側(車両用灯具10から光を照射する側)で基板21に実装されている。その基板21は、基板20よりも光軸方向の前側でヒートシンク部材13の上面13aに固定されている。このため、第2光源12は、第1光源11と同一平面上に設けられている。この第2光源12は、点灯制御回路から電力が供給されて適宜点灯される。実施例1の第2光源12は、基板21上で幅方向に5つの光源部12a(
図1では手前側の1つのみ図示している)が整列されて設けられている。各光源部12aは、発光素子で構成されて点灯制御回路から電力が供給されることで、適宜一斉にまたは個別に点灯される。なお、光源部12aの数は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0015】
ヒートシンク部材13は、第1光源11および第2光源12で発生する熱を外部に逃がす放熱部材である。このヒートシンク部材13では、上面13aに基板20および基板21が設けられるとともに、その両基板(20、21)を覆うように上面13aにリフレクタ14が設けられる。実施例1のヒートシンク部材13は、両基板(20、21)を介して第1光源11および第2光源12が設けられる上面13aを、第1レンズ16の物理的な中心位置(後述する出射面16bの中心線)よりも上下方向の下側に設けられている。これにより、上面13aに設けられた第1光源11および第2光源12から出射される光のうち、強度の大きい光を有効に利用することができる。
【0016】
リフレクタ14は、基板20および基板21すなわちそれらに実装された第1光源11および第2光源12を覆うようにヒートシンク部材13(上面13a)に取り付けられている。リフレクタ14は、上面13aに対向する第1反射面22と第2反射面23とを有する。第1反射面22は、第1光源11から出射した光を第1レンズ16へと反射するために設けられている。第1反射面22は、第1光源11を第1焦点とするとともにシェード15の後述する先端縁15aの近傍を第2焦点とする楕円を基本とした自由曲面とされている。第1反射面22は、第1光源11からの光を前方へと反射させて第1レンズ16を経て出射させることによりすれ違い用配光パターンLP(
図2参照)を形成する。
【0017】
第2反射面23は、第2光源12から出射して後述するように第2レンズ17を通った光を第1レンズ16へと反射するために設けられている。第2反射面23は、第2レンズ17の集光点近傍を第1焦点とするとともに第1レンズ16の後側焦点と略同距離にある点であって後述する上部レンズ面25の後方側焦点の近傍を第2焦点とする楕円を基本とする自由曲面とされている。第2反射面23は、後述するように第2レンズ17で集光された第2光源12からの光を前方へと反射させて第1レンズ16を経て出射させることにより走行用配光パターンHP(
図2参照)を形成する。
【0018】
シェード15は、ヒートシンク部材13に設けられており、上下方向に直交しつつ幅方向に伸びる板状とされている。シェード15の光軸方向の前側の先端縁15aは、光軸方向での位置の異なる2つの水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされた形状とされている。シェード15は、第1光源11から出射されてリフレクタ14の第1反射面22で反射された光の一部を先端縁15aで遮ることで、後述するすれ違い用配光パターンLPの上縁に2つの水平ラインを傾斜ラインで繋ぎ合わせたカットオフラインCl(
図2参照)を形成する
【0019】
第1レンズ16は、リフレクタ14の第1反射面22で反射された光を車両の前方へ投影して、すれ違い用配光パターンLP(
図2参照)を形成する。また、第1レンズ16は、リフレクタ14の第2反射面23で反射された光を車両の前方へ投影して、走行用配光パターンHP(
図2参照)を形成する。
【0020】
実施例1の第1レンズ16は、第1光源11や第2光源12側すなわち光軸方向の後側の入射面16aに、下部レンズ面24と上部レンズ面25とを設けている。下部レンズ面24は、リフレクタ14の第1反射面22で反射された光が入射される箇所であり、第1レンズ16における光軸方向の前側の出射面16bと協働してすれ違い用配光パターンLP(
図2参照)を形成する。下部レンズ面24は、出射面16bにおける下部レンズ面24と対向する箇所との間で設定される第1レンズ16の下部における後側焦点を、シェード15の先端縁15aの近傍に設定させている。
【0021】
上部レンズ面25は、第2反射面23で反射された光が入射される箇所であり、第1レンズ16の出射面16bと協働して走行用配光パターンHP(
図2参照)を形成する。上部レンズ面25は、出射面16bにおける上部レンズ面25と対向する箇所との間で設定される第1レンズ16の上部における後側焦点を、第2反射面23の第2焦点の近傍に設定させている。
【0022】
また、実施例1の上部レンズ面25は、細かな菱形の凹凸(マイクロストラクチャ)が設けられている。これにより、上部レンズ面25は、第2反射面23で反射された第2光源12からの光を上下方向に拡散し、走行用配光パターンHP内の光量を均等化しつつ走行用配光パターンHPを上下方向に拡大させる。なお、この凹凸は、第2光源12からの光を上下方向に拡散するものであれば、形状や設ける範囲や個数や大きさは適宜設定すればよく、第2反射面23に対向する出射面16bに設けてもよく、実施例1の構成に限定されない。また、凹凸は、すれ違い用配光パターンLPにおいても必要であれば、下部レンズ面24にも適宜設けてもよく、第1反射面22に対向する出射面16bに設けてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0023】
この第1レンズ16は、レンズホルダに支持される。レンズホルダは、第1光源11や第2光源12やリフレクタ14やシェード15に第2レンズ17に対して第1レンズ16を位置決めした状態で、ヒートシンク部材13に組み付けられる。
【0024】
第2レンズ17は、第2光源12から出射された光を集光してリフレクタ14の第2反射面23へと進行させる。実施例1の第2レンズ17は、第2光源12が5つの光源部12aで構成されていることに対応して、幅方向に伸びつつ光軸方向のみに屈折力を持つシリンドリカルレンズで形成されてヒートシンク部材13に設けられている。第2レンズ17は、5つの光源部12aに沿うように幅方向に伸びる焦線を有するものとされ、各光源部12a(第2レンズ17)から出射された光を光軸方向に集光して第2反射面23へと進行させる。なお、第2レンズ17は、第2光源12から出射された光を第2反射面23へと進行させるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0025】
この車両用灯具10は、点灯制御回路からの電力を基板20から第1光源11に供給することで、第1光源11を適宜点灯させる。この点灯により、車両用灯具10は、第1光源11からの光をリフレクタ14の第1反射面22で反射し、下部レンズ面24を経て第1レンズ16から出射することで、上縁にカットオフラインClを有するすれ違い用配光パターンLP(
図2参照)を形成する。
【0026】
また、車両用灯具10は、点灯制御回路からの電力を基板21から第2光源12の各光源部12aに供給することで、第2光源12(その各光源部12a)を適宜点灯させる。この点灯により、車両用灯具10は、第2光源12からの光を第2レンズ17で集光しリフレクタ14の第2反射面23で反射し、上部レンズ面25を経て第1レンズ16から出射することで、すれ違い用配光パターンLPの上端部に下端部を重ねるように走行用配光パターンHP(
図2参照)を形成する。
【0027】
実施例1の車両用灯具10は、ADB(Adaptive Driving Beam(配光可変型前照灯))とされており、第2光源12の5つの光源部12aを点灯すると、各光源部12aからの光がそれぞれ走行用配光部hpを形成する(
図2参照)。その5つの走行用配光部hpは、幅方向に並んで一体に形成されて、走行用配光パターンHPを形成する(
図2参照)。そして、車両用灯具10は、第2光源12の各光源部12aを個別に点灯および消灯することで、5つの走行用配光部hpのうちの特定の方向の部分的な消灯を可能としている(
図3参照)。これにより、車両用灯具10は、各光源部12aを個別に点灯および消灯することで、走行用配光パターンHPにおける任意の方向の部分的な消灯を可能としている。
【0028】
このため、車両用灯具10は、第1光源11を点灯することで、カットオフラインClを有するすれ違い用配光パターンLPを形成でき、第2光源12の各光源部12aを点灯することで、走行用配光パターンHPを形成できる(
図2参照)。車両用灯具10は、第1光源11や第2光源12の各光源部12aを点灯制御することで、すれ違い用配光パターンLPおよび走行用配光パターンHPを同時にまたは一方のみを適宜形成できる。また、車両用灯具10は、第2光源12の各光源部12aのうち、任意の向きに位置する光源部12aを消灯することで、対応する方向の走行用配光部hpのみを形成しないことができ、ADBの機能を実現できる(
図3参照)。
【0029】
このように、車両用灯具10は、第2光源12の上方に設けた第2レンズ17で第2光源12からの光を集光するだけとし、その光を第2レンズ17の上方に設けたリフレクタ14の第2反射面23で第1レンズ16側へと反射している。このため、車両用灯具10は、従来技術の透光部材のように第2レンズ17が第2光源12からの光を第1レンズ16側に反射させる必要がないので、第2レンズ17を小さな構成とすることができる。これにより、車両用灯具10は、第2光源12を第1光源11と上下方向で同じ位置(同一平面上)に設けても、第1光源11から出射されリフレクタ14の第1反射面22で反射されて第1レンズ16へと向かう光の進行を、第2レンズ17が妨げることを防止できる。よって、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12が取り付けられる箇所(実施例1では上面13a)を平坦にでき、それらが取り付けられる部材(実施例1ではヒートシンク部材13)の形状を簡易なものにでき、第1光源11および第2光源12を同一平面上に設けることができる。なお、基板20と基板21とは、同一平面となる上面13a上に設けられているので、一体化した単一の基板としてもよい。
【0030】
特に、実施例1の車両用灯具10は、基板20および基板21を介して第1光源11および第2光源12をヒートシンク部材13に取り付けている。ここで、一般的にヒートシンクでは、熱源から放射状に熱が伝達するので、熱源を中心とする同心球状に大きな体積となる箇所を確保することで冷却性能を高めることができる。車両用灯具10は、ヒートシンク部材13の上面13aを平坦にしているので、上面13aに段差を設けることと比較して、段差に起因して部分的に欠けたりすることなく第1光源11および第2光源12のそれぞれの下方に大きな体積を有する同心球状の箇所の確保が容易となる。このため、車両用灯具10は、ヒートシンク部材13において第1光源11および第2光源12のそれぞれに対して熱伝達させるための体積を確保することができ、第1光源11や第2光源12を適切に冷却することができる。
【0031】
また、車両用灯具10は、第1レンズ16の入射面16aに、第1反射面22で反射された光に対応する下部レンズ面24と、第2反射面23で反射された光に対応する上部レンズ面25と、を設けている。このため、車両用灯具10は、第1レンズ16とリフレクタ14との間における第1反射面22からの反射光が通る光路と第2反射面23からの反射光が通る光路との位置関係の自由度を高めつつ、すれ違い用配光パターンLPと走行用配光パターンHPとを重ねて形成できる。これは、従来技術のように第1レンズ16の入射面16aを単一の面とすると、第1レンズ16の後側焦点の近傍ですれ違い用配光パターンLPを形成する光路と走行用配光パターンHPを形成する光路とが近接するように設定しないと、両配光パターン(LP、HP)が重ならないことによる。
【0032】
実施例1の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0033】
車両用灯具10は、第1光源11から出射された光を第1レンズ16へと反射する第1反射面22と、第2光源12から出射されて第2レンズ17を通った光を第1レンズ16へと反射する第2反射面23と、をリフレクタ14に設けている。このように、車両用灯具10は、第2光源12からの光を第2反射面23へと進行させる機能を第2レンズ17に持たせるとともに、その光を第1レンズ16側に反射させる機能を第2反射面23に持たせている。このため、車両用灯具10は、第2レンズ17を小さな構成にでき、第1光源11と第2光源12とを上下方向で同じ位置(同一平面上)に設けても、第1光源11から出射されて第1反射面22で反射されて第1レンズ16へと向かう光を第2レンズ17が妨げることを防止できる。これにより、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12が取り付けられる部材の形状を簡易なものにできる。また、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12を、基板20と基板21とを一体化した共通の基板に設けることもできる。
【0034】
車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12をヒートシンク部材13の上面13aに設けている。このため、車両用灯具10は、上面13aに段差を設ける必要がないので、第1光源11や第2光源12を適切に冷却することができる。
【0035】
車両用灯具10は、第1レンズ16に、第1反射面22で反射された光が入射される下部レンズ面24と、第2反射面23で反射された光が入射される上部レンズ面25と、を設けている。このため、車両用灯具10は、リフレクタ14と第1レンズ16との間における第1反射面22からの反射光が通る光路と第2反射面23からの反射光が通る光路との位置関係の自由度を高めつつ、すれ違い用配光パターンLPと走行用配光パターンHPとを重ねて形成できる。
【0036】
車両用灯具10は、第2光源12の複数の光源部12aのそれぞれからの光が形成する複数の走行用配光部hpを幅方向に並列させて走行用配光パターンHPを形成している。このため、車両用灯具10は、適切に冷却した第2光源12の各光源部12aを個別に点灯および消灯することで、複数の走行用配光部hpのうちの特定の方向の走行用配光部hpを部分的に消灯することができ、より適切にADBの機能を実現できる。
【0037】
車両用灯具10は、幅方向に伸びつつ光軸方向のみに屈折力を持つシリンドリカルレンズで第2レンズ17を形成している。このため、車両用灯具10は、簡易な構成で各光源部12aからの光で幅方向に並列する各走行用配光部hpを形成することができ、ADBの機能を有する走行用配光パターンHPを形成できる。
【0038】
したがって、本開示に係る車両用灯具10としての実施例1の車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPと走行用配光パターンHPとを重ねて形成しつつ第1光源11と第2光源12とを段差なく設けることができる。
【0039】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0040】
なお、実施例1では、走行用配光パターンHPにおける任意の走行用配光部hpを形成しないことでADBの機能を実現できるものとしている。しかしながら、車両用灯具10は、第1光源11からの光をリフレクタ14の第1反射面22で反射してすれ違い用配光パターンLPを形成し、第2光源12からの光をリフレクタ14の第2反射面23で反射して走行用配光パターンHPを形成するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0041】
また、実施例1では、第2レンズ17をシリンドリカルレンズとしている。しかしながら、第2レンズ17は、第2光源12の複数(実施例1では5つ)の光源部12aに対応するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。その他の例としては、例えば、各光源部12aに個別に対応して複数のレンズを設けるものとしてもよく、光源部12a毎に入射面と出射面が設計された自由曲面レンズを設けるものとしてもよい。その自由曲面レンズは、光源部12a毎に別体で設けるものとしてもよく、各光源部12aに対応するものを一体化したものとしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 車両用灯具 11 第1光源 12 第2光源 12a 光源部 14 リフレクタ 16 第1レンズ 17 第2レンズ 22 第1反射面 23 第2反射面 24 下部レンズ面 25 上部レンズ面 HP 走行用配光パターン hp 走行用配光部 LP すれ違い用配光パターン