(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】容量推定システム、容量推定方法、及び通信デバイス
(51)【国際特許分類】
G01R 31/36 20200101AFI20230511BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230511BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230511BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01R31/36
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
H01M10/42 P
(21)【出願番号】P 2018144520
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】松島 均
(72)【発明者】
【氏名】内堀 富勝
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲郎
【審査官】麻川 倫広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/051722(WO,A1)
【文献】特開2017-125680(JP,A)
【文献】特開2018-057220(JP,A)
【文献】特開2012-122872(JP,A)
【文献】特開2016-031411(JP,A)
【文献】特開2016-062561(JP,A)
【文献】特開2005-227837(JP,A)
【文献】特開2006-080579(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038749(WO,A1)
【文献】特開2015-102396(JP,A)
【文献】特開2007-309839(JP,A)
【文献】特開2015-038437(JP,A)
【文献】特開2011-158444(JP,A)
【文献】特開2017-009577(JP,A)
【文献】特開2014-102248(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145734(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/158706(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185163(WO,A1)
【文献】特開2019-192562(JP,A)
【文献】特開2012-90480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の状態を含む情報を処理する情報処理装置と、
前記蓄電素子における電圧及び電流を取得する管理装置と、
前記管理装置と通信する第1通信部、及び、前記情報処理装置又は他装置と通信する第2通信部を備える通信デバイスとを含み、
前記情報処理装置は、
前記蓄電素子の異常又は異常の予兆を自律的に検知したか否かによって前記蓄電素子の満充電容量を確認すべき状況にあるか否かを判断する判断部と、
前記満充電容量を確認すべき状況にあると判断された場合、前記満充電容量
の推定を指示するため、又は、前記満充電容量の推定に必要な情報の送信を指示するための推定指示を前記通信デバイスへ送信する送信部とを備え、
前記通信デバイスは、
前記蓄電素子の前記推定指示を前記第2通信部により受け付ける受付部と、
該受付部により前記推定指示が受け付けられた場合に、前記第1通信部によって前記管理装置から取得される電圧及び電流、
並びに/又は該電圧及び電流に基づき推定される満充電容
量を前記第2通信部により送信する送信処理部と
を備える容量推定システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記他装置にて前記満充電容量の推定の実行指示を受け付けた場合に
も、前記満充電容量を確認すべき状況にあると判断する
請求項1に記載の容量推定システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、設定されているスケジュールに従って、前記満充電容量を確認すべき状況にあるか否かを判断する
請求項1に記載の容量推定システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記通信デバイスを介して過去に得られた前記電圧及び電流、及び/又は、前記満充電容量に対する統計的解析、又は予め設定された閾値との比較に基づ
き、異常又は異常の予兆の有無を判断する
請求項
1に記載の容量推定システム。
【請求項5】
前記蓄電素子は、並列接続された複数のバンクを備え、
前記第2通信部は、満充電容量の推定中であるバンクの識別情報及び/又は該バンクが含まれるドメインの識別情報を前記情報処理装置又は他装置に送信する
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の容量推定システム。
【請求項6】
前記複数のバンク夫々は、蓄電素子に通電するための電力線との間の接続又は切断を切り替える切替部を備え、
前記管理装置は、前記複数のバンク毎に設けられて前記切替部を制御する
請求項
5に記載の容量推定システム。
【請求項7】
前記通信デバイスは、前記複数のバンク夫々に相互に通信可能に設けられ、前記第1通信部を介して接続されたバンクの前記切替部、又は他の通信デバイスを介して他のバンクの前記切替部での切断又は接続を指示する
請求項
6に記載の容量推定システム。
【請求項8】
前記複数のバンクについて一括して満充電容量推定を行なうか、前記複数のバンク内の特定のバンクについて満充電容量推定を行なうかを選択する
請求項
5から請求項
7のいずれかに記載の容量推定システム。
【請求項9】
蓄電素子の状態を含む情報を処理する情報処理装置と、前記蓄電素子における電圧及び電流を取得する管理装置と、前記管理装置と通信する第1通信部、及び、前記情報処理装置又は他装置と通信する第2通信部を備える通信デバイスとを用い、
前記情報処理装置が、
前記蓄電素子の異常又は異常の予兆を自律的に検知したか否かによって前記蓄電素子の満充電容量を確認すべき状況にあるか否かを判断し、
満充電容量を確認すべき状況にあると判断された場合、前記情報処理装置が前記満充電容量
の推定を指示するため、又は、前記満充電容量の推定に必要な情報の送信を指示するための推定指示を前記通信デバイスへ送信し、
前記通信デバイスが、前記推定指示を前記第2通信部により受け付け、
前記推定指示が受け付けられた場合に、前記通信デバイスが前記第1通信部によって前記管理装置から取得される電圧及び電流、
並びに/又は該電圧及び電流に基づき推定される満充電容
量を前記第2通信部により送信する
容量推定方法。
【請求項10】
蓄電素子に接続され、該蓄電素子における電圧及び/又は電流の情報を取得する第1通信部と、
他装置と通信する第2通信部と、
前記他装置によ
って前記蓄電素子の異常又は異常の予兆を自律的に検知したか否かに応じて満充電容量を確認すべき状況にあると判断されることによって送信される前記蓄電素子の満充電容量
の推定を指示するため、又は、前記満充電容量の推定に関する情報送信を指示するための推定指示を前記第2通信部における通信により受け付ける受付部と、
該受付部により推定指示が受け付けられた場合に、前記蓄電素子に通電するための電力線の接続又は切断を切り替える切替部を制御して、前記蓄電素子における電圧及び電流の測定を開始させる処理部と
を備える通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子及び/又は電源関連装置に搭載/接続される通信デバイスを用いた容量推定システム、容量推定方法、及び前記通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子(Energy Storage Device )は、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流又は交流電源装置等に広く使用されている。発電された電力を蓄電しておく大規模なシステムでの蓄電素子の利用が拡大している。本明細書では、蓄電素子とは、蓄電を行なう素子全般を指す。蓄電素子の最小単位を蓄電セルと言う。
【0003】
無停電電源装置、安定化電源、又は発電システムにおいては、蓄電素子の保守活動が重要になる。これらのシステムに含まれる蓄電素子の充電状態(SOC:State Of Charge)、又は寿命予測の情報について、サーバ装置経由で、蓄電素子のユーザ又は保守担当者が遠隔から取得することを可能とする技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、蓄電素子の劣化率の予測値をサーバ装置及びネットワークを経由してオペレータが遠隔からその情報を視認することを実現するシステムが提案されている。蓄電セルは、充放電を繰り返すことで劣化が進行することが知られている。特許文献1では遠隔から使用条件、及び劣化率のデータを用いて、劣化率の予測値の算出、即ち寿命予測が行なわれている。
【0005】
従来、蓄電素子の健全度(SOH:State Of Health )を把握するために、充放電による計測が行なわれている。蓄電素子が搭載又は接続されたシステム(例えばESS:Energy Storage System )における複数の蓄電素子から、一部の蓄電素子が取り外されて蓄電素子メーカーなどの保守担当者へ配送され、保守担当者がその一部の蓄電素子について容量計測を行なうケースがある。このケースでは、保守担当者は、蓄電素子を満充電状態に充電した後、計測用の負荷を用いて所定の放電レート(例えば、1Cレート)で蓄電素子を完全放電することで、容量を正しく計測できる。代替的に、蓄電素子が設置されている場所で、システムから蓄電素子を切り離すことなく、蓄電素子の容量を推定するケースがある。このケースでは、保守担当者が設置場所へ赴き、システムの実際の負荷を用いて蓄電素子に、前記所定の放電レートよりも低いレートで所定の充電又は放電(例えば、SOC80%から50%への放電)を行なわせる。保守担当者は蓄電素子の電圧を計測し、SOC-OCV曲線に基づいてSOCを把握しつつ、放電時の電流を積算する。完全充放電ではなく、このような部分的な充放電によって、蓄電素子の容量は簡易的に推定される。
【0006】
特許文献2には、定置用の蓄電素子を遠隔監視するコントローラモジュールが開示されている。コントローラモジュールは、PCS(Power Conditioning System )を介して蓄電素子に接続されている。コントローラモジュールは、運用プロファイル記憶部、蓄電可能容量算出部、蓄電可能容量記憶部、劣化度判定部を含む電池状態推定部、遠隔操作部、及びカレンダー部を有している。コントローラモジュールは、劣化度判定部によって蓄電素子の劣化度・異常の有無などを判定する。劣化度判定部は、次の3つの方法で劣化及び異常の度合いを判定する。
(1)モデルとなる容量推移曲線からの逸脱を算出(初期不良的な劣化の検知に好適)
(2)寿命の予測値と保証期間との逸脱を算出(保証期間内での寿命到達の検知に好適)
(3)劣化進行の加速度合いを算出(日々の運用における劣化が急速に進行する現象の検知に好適)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-121520号公報
【文献】国際公開第2015/072528号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
IoT(Internet of Things)の社会への浸透と平行して、蓄電素子及び電源関連装置の遠隔監視の実現とそれによる利便性の高い付加価値サービスの実現に対する期待が高まっている。例えば、メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電システムでは、非常に多くの蓄電素子が設置されて利用される。工場又は大規模施設における電力ピークカットを実現する場合にも、非常に多くの蓄電素子が設置されて利用される。従来の保守支援システムでは、分散電源システム又は事業主体にこのように多くの蓄電素子が設置されるケースを想定していない。
【0009】
本発明は、遠隔からの蓄電素子のSOHの把握を可能とする容量推定システム、容量推定方法、及び通信デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
容量推定システムは、蓄電素子の状態を含む情報を処理する情報処理装置と、前記蓄電素子における電圧及び電流を取得する管理装置と、前記管理装置と通信する第1通信部、及び、前記情報処理装置又は他装置と通信する第2通信部を備える通信デバイスとを含み、前記通信デバイスは、前記蓄電素子の満充電容量の推定指示を前記第2通信部により受け付ける受付部と、該受付部により推定指示が受け付けられた場合に、前記第1通信部によって前記管理装置から取得される電圧及び電流、及び/又は該電圧及び電流に基づき推定される充電状態を前記第2通信部により送信する送信処理部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】蓄電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】通信デバイスにおける満充電容量推定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】通信デバイスにおける満充電容量推定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】サーバ装置により提示される画面例を示す図である。
【
図7】サーバ装置により提示される画面例を示す図である。
【
図8】通信デバイスにより提示される画面例を示す図である。
【
図9】通信デバイスにより提示される画面例を示す図である。
【
図10】通信デバイスにより提示される画面例を示す図である。
【
図11】サーバ装置により提供される画面例を示す図である。
【
図13】サーバ装置の制御部の指示に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】変形例1におけるサーバ装置の機能ブロック図である。
【
図15】変形例1におけるサーバ装置の制御部による満充電容量推定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】変形例2における蓄電システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
容量推定システムは、蓄電素子の状態を含む情報を処理する情報処理装置と、前記蓄電素子における電圧及び電流を取得する管理装置と、前記管理装置と通信する第1通信部、及び、前記情報処理装置又は他装置と通信する第2通信部を備える通信デバイスとを含み、前記通信デバイスは、前記蓄電素子の満充電容量の推定指示を前記第2通信部により受け付ける受付部と、該受付部により推定指示が受け付けられた場合に、前記第1通信部によって前記管理装置から取得される電圧及び電流、及び/又は該電圧及び電流に基づき推定される充電状態を前記第2通信部により送信する送信処理部とを備える。
【0013】
上記構成により、蓄電素子の満充電容量を遠隔から確認することが可能となり、保守担当者の負担を大幅に軽減できる。第1通信部で取得した情報を、外部に送信する第2通信部を備えることで、大規模蓄電システムの保守にも対応できる。
【0014】
前記管理装置から取得される電圧及び電流に基づく満充電容量の推定処理は、通信デバイスで行なわれてもよいし、通信デバイスから送信された情報に基づいて情報処理装置で行なわれてもよい。
【0015】
前記蓄電素子は、並列接続された複数のバンクを備え、前記第2通信部は、満充電容量の推定中であるバンクの識別情報及び/又は該バンクが含まれるドメインの識別情報を前記情報処理装置又は他装置に送信してもよい。
上記構成により、大規模蓄電システム、或いは、複数のシステムや複数の場所を含む保守対象エリアにおける、いずれの蓄電素子が満充電容量の推定中であるかを把握できる。併設された他の蓄電素子とは異なる挙動をその蓄電素子が示しても、異常であると誤って判定されることを防止できる。
【0016】
前記複数のバンク夫々は、蓄電素子に通電するための電力線との間の接続又は切断を切り替える切替部を備え、前記管理装置は、前記複数のバンク毎に設けられて前記切替部を制御してもよい。
上記構成により、複数のバンクを有する大規模蓄電システムにおいて、バンク毎に満充電容量の推定を行なうことが可能となる。
【0017】
前記通信デバイスは、前記複数のバンク夫々に相互に通信可能に設けられ、前記第1通信部を介して接続されたバンクの前記切替部、又は他の通信デバイスを介して他のバンクの前記切替部での切断又は接続を指示してもよい。
容量推定システムにおいて、複数のバンクに対して一括して満充電容量推定を行なうか、複数のバンク内の特定のバンクについて満充電容量推定を行なうかを選択してもよい。
【0018】
蓄電素子からの放電は、電圧降下素子を含む測定部を設け、この電圧降下素子に対して行なわれるようにしてもよい。この場合、急速な(ハイレートでの)完全放電中の電圧及び電流の測定を行なってもよい。
【0019】
容量推定方法は、蓄電素子の状態を含む情報を処理する情報処理装置と、前記蓄電素子における電圧及び電流を取得する管理装置と、前記管理装置と通信する第1通信部、及び、前記情報処理装置又は他装置と通信する第2通信部を備える通信デバイスとを用い、前記通信デバイスが、前記蓄電素子の満充電容量の推定指示を前記第2通信部により受け付け、前記推定指示が受け付けられた場合に、前記第1通信部によって前記管理装置から取得される電圧及び電流、及び/又は該電圧及び電流に基づき推定される充電状態を前記第2通信部により送信する。
【0020】
蓄電システムは、複数の蓄電素子を階層的に含む蓄電素子ユニットと、前記複数の蓄電素子における電圧及び電流を蓄電素子毎に取得する管理装置と、前記蓄電素子ユニットに電力線を介して接続されるパワーコンディショナとを含む蓄電システムであって、前記電力線に介装されており、前記電力線の接続又は切断を切り替える切替部と、前記蓄電素子ユニットにおける電圧又は電流を前記蓄電素子毎に前記管理装置から取得し、他装置へ送信する通信部を備え、前記蓄電素子ユニットに接続又は搭載されている通信デバイスとを含み、該通信デバイスは、前記蓄電素子ユニット、又は前記複数の蓄電素子夫々の満充電容量の推定指示を前記通信部により受け付ける受付部と、該受付部により推定指示が受け付けられた場合に、前記切替部を制御して前記管理装置から取得される電圧及び電流、又は該電圧及び電流に基づき推定される満充電容量を前記他装置へ送信する送信処理部とを備える。
【0021】
通信デバイスは、蓄電素子に接続され、該蓄電素子における電圧及び/又は電流の情報を取得する第1通信部と、他装置と通信する第2通信部と、前記蓄電素子の満充電容量の推定指示を前記第2通信部における通信により受け付ける受付部と、該受付部により推定指示が受け付けられた場合に、前記蓄電素子に通電するための電力線の接続又は切断を切り替える切替部を制御して、前記蓄電素子における電圧及び電流の測定を開始させる処理部とを備える。
【0022】
コンピュータプログラムは、表示部を備えるコンピュータに、蓄電素子の情報を受信して表示させる。コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記蓄電素子の状態を表示する表示情報を要求するステップ、要求に応じて送信された表示情報に基づき、前記蓄電素子の状態を表示するステップ、前記表示情報に含まれている前記蓄電素子に接続されている通信デバイスへの接続情報に基づいて該通信デバイスに通信接続するステップ、及び前記通信デバイスから提供される前記蓄電素子の満充電容量の推定の実行を受け付ける画面を表示させるステップを実行させる。
【0023】
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1は、遠隔監視システム100の概要を示す図である。遠隔監視システム100は、メガソーラー発電システムS、火力発電システムF、風力発電システムWに含まれる蓄電素子及び電源関連装置に関する情報への遠隔からのアクセスを可能とする。無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)U及び鉄道用の安定化電源システム等に配設される整流器(直流電源装置、又は交流電源装置)Dも遠隔監視される。蓄電素子及び電源関連装置は産業用途に限らず、家庭用のものであってもよい。
【0025】
メガソーラー発電システムS、火力発電システムF及び風力発電システムWには、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System )P及び蓄電システム101が並設されている。蓄電システム101は、蓄電モジュール群Lを収容したコンテナCを複数並設して構成されている。蓄電モジュール群Lは、複数の蓄電素子を含む。蓄電素子は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池のような二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。
【0026】
遠隔監視システム100では、監視対象となるシステムS,F,Wにおける蓄電システム101、又は装置(P,U,D,及び後述の管理装置M)夫々に通信デバイス1が搭載又は接続されている(
図2参照)。遠隔監視システム100は、通信デバイス1と、通信デバイス1から情報を収集するサーバ装置2(情報処理装置)と、収集された情報を閲覧するためのクライアント装置3(通信端末装置)と、装置間の通信媒体であるネットワークNとを含む。
【0027】
通信デバイス1は、蓄電素子に備えられる電池管理装置(BMU:Battery Management Unit )と通信して蓄電素子の情報を受信する端末装置(計測モニタ)であってもよいし、ECHONET /ECHONETLite (登録商標)対応のコントローラであってもよい。通信デバイス1は、パワーコンディショナPや蓄電モジュール群Lに搭載可能なネットワークカード型のデバイスであってもよい。通信デバイス1は、蓄電システム101における蓄電モジュール群Lの情報を取得すべく、複数の蓄電モジュールからなるグループ毎に一つずつに設けられている。パワーコンディショナPは複数台でシリアル通信が可能に接続されており、通信デバイス1は、いずれか代表となるパワーコンディショナPの制御ユニットに接続されている。
【0028】
サーバ装置2はWebサーバ機能を含み、監視対象の各装置に搭載/接続された通信デバイス1から得られる情報を、クライアント装置3からのアクセスに応じて提示する。通信デバイス1はクライアント装置からのアクセスに応じて通信デバイス1にて操作を受け付けるためのインタフェースを有している。インタフェースは、クライアント装置3における汎用的なアプリケーションプログラムにて出力できることが好ましく、Webベースのインタフェースであってもよい。サーバ装置2が情報を提示するインタフェースには、通信デバイス1のインタフェースへのリンク(接続情報)が含まれてもよい。クライアント装置3は、通信デバイス1と直接的に通信接続して遠隔からの通信デバイス1の操作が可能である。
【0029】
ネットワークNは、所謂インターネットである公衆通信網N1と、所定の移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークN2とを含む。公衆通信網N1は、一般光回線を含み、ネットワークNは、サーバ装置2が接続する専用線を含む。ネットワークNは、ECHONET /ECHONETLite 対応のネットワークを含んでもよい。キャリアネットワークN2には基地局BSが含まれ、クライアント装置3は基地局BSからネットワークNを介したサーバ装置2との通信が可能である。公衆通信網N1にはアクセスポイントAPが接続されており、クライアント装置3はアクセスポイントAPからネットワークNを介してサーバ装置2との間で情報を送受信することができる。
【0030】
このように遠隔監視システム100は、監視対象の各装置に搭載又は接続した通信デバイス1を利用し、蓄電システム101における蓄電素子のSOC、SOH(State Of Health )等の状態、各装置で検知された異常といった情報を、サーバ装置2が収集する。収集された情報は、サーバ装置2を介して一括で提示される。
【0031】
図2に示すように、通信デバイス1は、制御部10、記憶部11、第1通信部12及び第2通信部13を備える。制御部10(「処理部」に相当)はCPU(Central Processing Unit )を用いたプロセッサであり、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0032】
記憶部11は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部11には、制御部10が読み出して実行するデバイスプログラム1Pが記憶されている。デバイスプログラム1Pには、Linux (登録商標)等を用いた組み込み系OS(Operating System)、OS上で動作するWebサーバ、SSH(Secure Shell)、SNMP(Simple Network Management Protocol)等に準じた通信用プログラムが含まれる。記憶部11に記憶してあるデバイスプログラム1Pは、記録媒体4に記憶してあるデバイスプログラム4Pを読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。デバイスプログラム1Pにはメーラプログラムが含まれてもよく、異常が発生した場合に、予め設定されたメールアドレスへ向けて電子メールが自動的に送信されてもよい。これらのプログラムは、制御部10内蔵のメモリ(ROM)に記憶されていてもよい。記憶部11には、情報の収集に係るサンプリングタイミングの設定が記憶されている。サンプリングタイミングは、例えば1分、1秒等のサンプリング周期である。サンプリングタイミングは一定周期に限らず、特定のパターンであってもよいし、イベント(温度、電圧、電流等の測定値の変化)に基づくものであってもよい。記憶部11には、制御部10の処理によって収集された情報、イベントログ等の情報が記憶される。記憶部11に記憶された情報は、通信デバイス1の筐体に端子が露出するUSB等の通信インタフェースを介して読み出すことも可能である。
【0033】
第1通信部12は、通信デバイス1が接続されている監視対象装置との通信を実現する通信インタフェースである。第1通信部12は例えば、RS-232C又はRS-485等のシリアル通信インタフェースを用いる。例えばパワーコンディショナPはRS-485に準拠したシリアル通信機能を有する制御ユニットを備えており、第1通信部12はその制御ユニットと通信する。蓄電モジュール群Lに備えられている制御基板又は蓄電モジュールを制御する管理装置(
図3参照)がCAN(Controller Area Network)バスにより接続されてCAN通信により相互に通信する場合、第1通信部12はCANプロトコルに基づく通信インタフェースであってもよい。第1通信部12は、ECHONET /ECHONETLite の規格に基づく通信を行なう通信インタフェースであってもよい。
【0034】
第2通信部13は、ネットワークNを介した通信を実現するインタフェースであり、例えばEthernet(登録商標)、又は無線通信用アンテナ等の通信インタフェースを用いる。ECHONET /ECHONETLite の規格に基づく通信を行なう通信インタフェースを用いてもよい。制御部10は、第2通信部13によりネットワークNを介してサーバ装置2又はクライアント装置3と通信接続が可能である。
【0035】
このように構成される通信デバイス1では、制御部10が第1通信部12を介して、通信デバイス1が接続されている監視対象装置の状態情報を含む各種情報を取得する。制御部10は、Webサーバ用プログラムを読み出して実行することによって、Webサーバとしてサーバ装置2又はクライアント装置3からの通信接続を受け、情報を提示することも可能である。制御部10は、SSHにより遠隔から動作指示を受けることが可能である。制御部10は例えば、状態取得のサンプリングタイミングの設定、シャットダウンの指示を受ける。制御部10は、SNMP用プログラムを読み出して実行することにより、SNMPエージェントとして機能し、サーバ装置2からの情報要求に対して応答することも可能である。
【0036】
サーバ装置2はサーバコンピュータを用い、制御部20、記憶部21、及び通信部22を備える。本実施の形態においてサーバ装置2は、1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のサーバコンピュータで処理を分散させてもよい。
【0037】
制御部20は、CPU又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサであり、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。制御部20は、記憶部21に記憶されているサーバプログラム2Pに基づく情報処理を実行する。サーバプログラム2PにはWebサーバプログラムが含まれ、制御部20は、クライアント装置3へのWebページの提供、Webサービスへのログインの受け付け等を実行するWebサーバとして機能する。制御部20は、サーバプログラム2Pに基づき、SNMP用サーバとして通信デバイス1から情報を収集することも可能である。
【0038】
記憶部21は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部21には、上述したサーバプログラム2Pが記憶されているほか、制御部20の処理によって収集される蓄電システム101のパワーコンディショナP及び蓄電モジュール群Lの状態を含むデータを記憶する。サーバプログラム2Pは、記録媒体5に記憶してあるサーバプログラム5Pを読み出して記憶部21に複製したものであってもよい。
【0039】
通信部22は、ネットワークNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には通信部22はネットワークNに対応したネットワークカードである。
【0040】
クライアント装置3は、発電システムS,F,Wの蓄電システム101の管理者又は保守担当者等のオペレータが使用するコンピュータである。クライアント装置3は、デスクトップ型若しくはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、所謂スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。クライアント装置3は、制御部30、記憶部31、通信部32、表示部33、及び操作部34を備える。
【0041】
制御部30は、CPUを用いたプロセッサである。制御部30は、記憶部31に記憶されているWebブラウザを含むクライアントプログラム3Pに基づき、サーバ装置2又は通信デバイス1により提供されるWebページを表示部33に表示させる。
【0042】
記憶部31は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部31には、Webブラウザを含むクライアントプログラム3Pを含む各種プログラムが記憶されている。クライアントプログラム3Pは、記録媒体6に記憶してあるクライアントプログラム6Pを読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。
【0043】
通信部32は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局BS(
図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイス、又はアクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いる。制御部30は通信部32により、ネットワークNを介してサーバ装置2又は通信デバイス1との間で通信接続又は情報の送受信が可能である。
【0044】
表示部33は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いる。表示部33は制御部30のクライアントプログラム3Pに基づく処理により、サーバ装置2で提供されるWebページのイメージを表示する。表示部33は、好ましくはタッチパネル内蔵型ディスプレイであるが、タッチパネル非内蔵型ディスプレイであってもよい。
【0045】
操作部34は、制御部30との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインタフェースである。操作部34は、表示部33のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部34は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
【0046】
図3は、蓄電システム101の構成例を示すブロック図である。蓄電モジュール群Lは、例えば蓄電セル(セルとも称する)を複数直列に接続した蓄電モジュール(モジュールとも称する)と、モジュールを複数直列に接続したバンクと、バンクを複数並列に接続したドメインとからなる階層構造を有してもよい。階層構造における上位層の蓄電素子は蓄電素子ユニットとも称する。例えばセル又はモジュールは蓄電素子に対応し、モジュール又はバンクは蓄電素子ユニットに対応する。
図3では、一つのドメインのみを示している。
【0047】
蓄電システム101は、パワーコンディショナPを含む。パワーコンディショナPは、ソーラーシステム等の発電システムにて発電された電力を蓄電システム101へ供給し、また蓄電システム101に蓄電された電力を他の電力消費設備(負荷)又は電力系統へ供給する。パワーコンディショナPは電力線42により並列の複数のバンク#1-#Nへ接続されている。電力線42の複数のバンクへの分岐点とパワーコンディショナPとの間には、開閉器43が設けられている。開閉器43の開閉により、パワーコンディショナPからドメイン全体への通電のオンオフが切り替えられる。開閉器43は、パワーコンディショナPの内部に設けられてもよい。
【0048】
各バンクには切替部41が設けられている。切替部41は、電力線42の複数のバンクへの分岐点から蓄電モジュール群Lへの通電のオン/オフを切り替える。切替部41により、電力線42と蓄電モジュール群Lとの間が接続されたオン状態となるか、それらが接続されていないオフ状態となるかが切り替えられる。各バンクの蓄電モジュール群Lと電力線42とが接続された状態で、パワーコンディショナP、開閉器43、電力線42及び切替部41を通じて、各蓄電モジュール群Lで充電又は放電、即ち通電が行なわれる。
図3では、切替部41はバンク毎に設けられているが、複数のバンクをグループに分けてグループ毎に一つの切替部41が設けられてもよい。
【0049】
図3の例ではバンク単位及びドメイン単位に、管理装置(BMU)Mが設けられている。バンク単位に設けられている管理装置Mと、ドメイン単位に設けられている管理装置Mとを分別して説明する場合、説明を容易とするために括弧付きで、バンク用はB、ドメイン用はDを付す。バンク用の管理装置(B)Mは、蓄電モジュールの内部に夫々内蔵されている通信機能付きの制御基板(CMU:Cell Monitoring Unit)とシリアル通信によって通信する。管理装置Mは、電力線42を介してパワーコンディショナPから、又は蓄電モジュール群Lから、給電を受けて動作する。
【0050】
管理装置(B)Mは切替部41に接続されており、管理装置(D)Mは開閉器43に接続されている。管理装置Mによって切替部41及び開閉器43が夫々制御される。
【0051】
通信デバイス1は、監視対象の蓄電モジュール群Lに対し、管理装置Mを介して接続している。上述したように通信デバイス1は第1通信部12によって管理装置Mにシリアル通信ケーブルを介して接続されている。通信デバイス1は管理装置Mと一体に構成されていてもよい。通信デバイス1は、電力線42とは別経路による給電を受けて動作する。これらの複数の通信デバイス1は、相互に情報を送受信すべく通信接続されている。
図3に示す例では、通信バスにより接続している。通信バスは例えばLANケーブルである。代替的に、通信バスは、CANバスでもよいし、LANケーブルでもよいし、ECHONETLite 対応の通信媒体でもよい。ドメインの管理装置(D)Mと、同一システム内の他のドメインの管理装置(D)Mとは、別途異なる通信バス、例えばCANバスにより接続されており、相互に通信が可能であってもよい。管理装置Mは、通信デバイス1からの指示により、切替部41及び開閉器43を夫々制御することが可能である。
【0052】
各バンクの管理装置(B)Mに接続されている通信デバイス1は、第2通信部13を介して指示を受け付けると、電池モジュール群Lに所定の充電又は放電を実施させ、その間に測定される電圧・電流の測定値から満充電容量を推定する機能を有する。以下に示す例において通信デバイス1は、対応する電池モジュール群Lを、1Cレートで充電状態50%と80%との間で充電又は放電し、その過程での電圧・電流の測定値から満充電容量を推定する。
【0053】
図4及び
図5は、通信デバイス1における満充電容量推定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0054】
通信デバイス1の制御部10は第2通信部13により、対象バンクについて満充電容量の推定指示を受け付けているか否かを判断する(ステップS101)。対象バンクは、通信デバイス1が搭載又は接続されている管理装置(B)Mに対応するバンクである。通信デバイス1は、第2通信部13経由でサーバ装置2、クライアント装置3又は他の通信デバイス1から推定の実行指示を受け付ける。ステップS101の処理は「受付部」に相当する。
【0055】
推定指示を受け付けていないと判断された場合(S101:NO)、制御部10は処理を終了する。
【0056】
推定指示を受け付けたと判断された場合(S101:YES)、制御部10は満充電容量の推定対象のバンク全体における充電状態を管理装置Mから取得する(ステップS102)。制御部10は、他の通信デバイス1との通信により、他のバンクの充電状態を取得する(ステップS103)。
【0057】
制御部10は、対象バンクにおける充電状態及び他のバンクにおける充電状態に基づき、満充電容量の推定処理が可能な状態であるか否かを判断する(ステップS104)。制御部10は例えば、充電状態50%から80%まで1Cレートで充電する過程、又は充電状態80%から50%まで放電する過程での電圧・電流を測定する。制御部10は、対象バンク及び他のバンクにおいて、所定の充電率(例えば50%)以下であり、パワーコンディショナPを介して発電系統から蓄電システム101が充電中である場合に、推定処理が可能であると判断する。制御部10は、時刻が予め許容範囲として設定されている時間帯(例えば昼間又は夜間)に含まれるか否かを判断し、許容範囲の時間帯に含まれている場合のみ、推定処理が可能であると判断してもよい。
【0058】
ステップS104で、推定処理に適した状態でないと判断された場合(S104:NO)、制御部10は処理をステップS102へ戻し、ステップS104で推定処理に適した状態であると判断されるまで待機する。
すなわち、本実施形態では、受付部によって推定指示を受け付けた後は、対象バンクにおいて自律的に、蓄電素子の満充電容量推定のための処理を実行する。
【0059】
ステップS104で推定処理に適した状態であると判断された場合(S104:YES)、制御部10は、他の通信デバイス1へ、対象バンクに対し満充電容量推定を実施することを通知する(ステップS105)。この際、容量推定の対象バンクを識別する情報(バンクの識別番号)を対応付けて他の通信デバイス1又はサーバ装置2へ通知するとよい。サーバ装置2へ通知することにより、容量推定の対象バンクが、併設された他のバンクと異なる挙動を示しても、異常として誤って検知されることを防止できる。
【0060】
制御部10は、対象バンク又は他のバンクの切替部41に対し、電力線42から切り離されるように対応する管理装置(B)Mへ指示する(ステップS106)。ステップS106の処理は「指示部」に相当する。対象バンクの切り離しにより、他のバンクへの充電が継続される。反対に、他のバンクの切り離しにより、対象バンクのみへの充電が継続される。
【0061】
制御部10は、対象バンクの充電状態又は他のバンクの充電状態を取得し(ステップS107)、取得した充電状態に基づいて測定が開始できるか否かを判断する(ステップS108)。ステップS108において制御部10は例えば、他のバンクにおける充電状態が、切り離された対象バンクを50%から80%へ充電できるような状態となったか否かを判断する。又は制御部10は、対象バンクの充電状態が80%となったか否かを判断する。
【0062】
ステップS108において測定が開始できないと判断された場合(S108:NO)、制御部10は所定の待機時間の経過後に処理をステップS107へ戻し、測定が開始できると判断されるまで待機する。
【0063】
ステップS108において測定が開始できると判断された場合(S108:YES)、制御部10は、
図5に示すように、ドメインの管理装置Mへ、パワーコンディショナPとの間の開閉器43の切断を指示する(ステップS109)。開閉器43が切断されたことを確認すると制御部10は、対象バンクの管理装置(B)M、又は他のバンクの管理装置(B)Mへ、切替部41の接続を指示すると共に(ステップS110)、電圧又は電流の測定開始を管理装置(B)Mへ指示する(ステップS111)。通信デバイス1間での通信によって開閉器43及び切替部41の接続を制御し、対象バンクのみを発電系統から充電しながら電圧・電流を測定するか、又は対象バンクのみから電力消費設備(負荷)へ放電しながら電圧・電流を測定してもよい。代替的に、対象バンクを充電状態50%から80%まで1Cレートで充電する過程で測定を行なう場合は、対象バンクの切替部41を切断状態から接続状態にしてもよい。これにより、他のバンクから対象バンクへ横流が起こって対象バンクが充電される。対象バンクを充電状態80%から50%まで1Cレートで放電する過程で測定を行なう場合は、他のバンクの切替部41を切断状態から接続状態にしてもよい。これにより、対象バンクから他のバンクへ横流が起こって対象バンクが放電される。
【0064】
制御部10はステップS111の測定開始の指示に伴い、管理装置(B)Mにおける状態取得のサンプリングタイミングを変更してもよい(より高頻度にデータを取得できるようサンプリングタイミングを短くしてもよい)。制御部10は、対象バンクの識別情報と対応付けて測定開始をサーバ装置2へ通知するとよい。
【0065】
制御部10は、測定を終了させるか否かを判断する(ステップS112)。制御部10はステップS112にて、蓄電モジュール群Lにおける充電状態が例えば開始時50%(80%)から80%(50%)へ到達したか、又は所定の電圧値の変化若しくは電流値の変化を測定できたと判断された場合に測定を終了させる。制御部10は、他の条件に基づき測定を終了させるか否かを判断してもよい。測定を終了させないと判断された場合(S112:NO)、制御部10は処理をステップS112へ戻す。
【0066】
測定を終了させると判断された場合(S112:YES)、制御部10は、他の通信デバイス1との通信により、他のバンクの充電状態を取得する(ステップS113)。制御部10は、取得した充電状態に基づき、全バンクとパワーコンディショナPとの間の開閉器43を復帰させる通常状態への復旧が可能か否かを判断する(ステップS114)。制御部10はステップS114で、他のバンクとの間で充電状態が均衡状態となっていない場合は、通電は不可と判断する。可能でないと判断された場合(S114:NO)、制御部10は、所定の待機時間後に処理をステップS114へ戻す。
【0067】
復旧が可能であると判断された場合(S114:YES)、制御部10は、開閉器43の接続を指示する(ステップS115)。以後、ドメインは全てのバンクが通電状態で運用される。
【0068】
制御部10は、ステップS111からステップS112までの間で測定された電圧値及び電流値、又はいずれか一方に基づく対象バンク全体における満充電容量の推定を行なう(ステップS116)。ステップS116にて制御部10は、蓄電モジュール群Lの充電中の電圧の変化、電流積算値に基づき、満充電容量を推定する。制御部10は、推定結果をサーバ装置2へ、時間情報及びバンクの識別情報と対応付けて第2通信部13から送信し(ステップS117)、処理を終了する。ステップS117の処理は「送信処理部」に相当する。制御部10はステップS116の推定処理を省略し、測定された電圧値及び電流値をサーバ装置2へ送信してもよい。
【0069】
制御部10は、ステップS111において、蓄電モジュール夫々に内蔵されているバランサ回路の機能をオフにして所定期間における電圧の変化を測定することで劣化を判定し、満充電容量を推定することも可能である。
【0070】
このように通信デバイス1が
図4及び
図5のフローチャートに示した処理手順を実行することにより、指示をトリガとして蓄電モジュール群Lにおける特定のバンクの満充電容量の推定処理(容量の確認)を行なうことができる。通信デバイス1は並列の他のバンクの通信デバイス1、ドメインの通信デバイス1又はサーバ装置2からの指示をトリガとして受け、バンク単位で自律的に容量を推定する。トリガは通信デバイス1自身が出力してもよい。バンク単位における通信デバイス1が受ける指示には、通信デバイス1自身が提示するインタフェース上の操作に基づき受けるもの(第1の指示)、サーバ装置2が提示するWeb画面330上での操作に基づき受けるもの(第2の指示)が含まれる。指示には、サーバ装置2にて自律的に容量の推定処理が必要であると判断した場合に出力されるもの(第3の指示)も含まれる。通信デバイス1自身が自律的に異常を検知して、容量推定が必要であると判断してもよい。
【0071】
このようにして通信デバイス1を用い、接続/搭載されている対象装置(蓄電モジュール群L)に含まれている蓄電素子の満充電容量を遠隔から推定することが可能になる。
【0072】
第1の指示について、通信デバイス1から提示されるインタフェースの例示を参照して説明する。通信デバイス1から提示されるインタフェースは、サーバ装置2から提供される遠隔監視システム100のポータルページに含まれるリンク情報からアクセスが可能である。クライアント装置3にて直接的に、前記インタフェースへの接続情報を記憶部31に記憶して使用してもよい。
【0073】
図6及び
図7は、サーバ装置2により提示される画面例を示す図であり、
図8-
図10は、通信デバイス1により提示される画面例を示す図である。遠隔監視システム100を利用するべくユーザ(オペレータ)がクライアント装置3を用い、サーバ装置2のWebサーバから提供されるログイン画面を介してログインを行ない、ログインに成功した場合に表示される。クライアント装置3ではサーバ装置2から送信される画面情報に基づき、ログイン情報により抽出されたシステム又は装置の名称の一覧を含むWeb画面330を
図6に示すように表示部33に表示させる。
図6の例であれば、
図1に示したメガソーラー発電システムSの「XY市メガソーラーシステム」、火力発電システムFの「WZ発電所システム」等の名称が夫々、識別情報(識別番号)と共にリンクとして表示されている。
【0074】
図7は、システム毎に情報が一括して表示される画面例を示す図である。
図7は、
図6に表示されたWeb画面330で例えば、多数の蓄電モジュール群Lが使用されている「XY市メガソーラーシステム」がクライアント装置3の操作部34の操作により選択された場合に表示部33に表示される画面である。システムが選択されたWeb画面330には、「システム検索」、「寿命予測」、「ダウンロード」、「レポート」等のメニュー331が含まれる。「寿命予測」のメニュー331は、「容量確認」も含まれる。メニュー331には「新規登録」、及び「編集」が含まれる。Web画面330には、選択されたシステムに対するメニューアイコン338が含まれる。メニューアイコン338は例えば、「異常履歴」、「統計情報」、「寿命予測/容量確認」、及び「装置一覧」のメニューを含む。Web画面330には、ログアウト又は終了操作のためのボタン332が含まれている。
【0075】
図7の画面例では、「XY市メガソーラーシステム」が用いている蓄電システム101のシステム構成に合わせ、複数のバンクを夫々含む複数のドメインから構成された蓄電モジュール群L夫々を識別する名称(識別番号)を含むアイコン333が表示されている。蓄電モジュール群Lについてはその階層構造を展開又は折り畳むための「+/-」アイコン334と、各々の詳細情報を表示するためのアイコン335と、詳細情報(リアルタイム)を表示させるためのアイコン336とが配置されている。アイコン336は、蓄電モジュール群Lに接続されている通信デバイス1の識別情報(デバイスID)と共に配置されている。
【0076】
「XY市メガソーラーシステム」の蓄電システム101は、
図3に示したように、各々n個(nは自然数。本実施形態では12個)のセルを含むモジュールを複数直列させたバンクを、複数並列に持つドメインを複数有する構成の蓄電モジュール群Lを持っている。
図7にて示すように、Web画面330ではドメインに対応する「+/-」アイコン334が選択されると、該ドメインに所属するバンクに対応するリストが展開され、展開されたリスト中のバンクに対応する「+/-」アイコン334が選択されると、該バンクに所属する蓄電モジュールのリストが展開される。蓄電モジュールは各々n個のセルを含んでおり、クライアント装置3の操作部34の操作により、画面330上で蓄電モジュールに対応する「+/-」アイコン334が選択されると該モジュールに含まれるセルのリスト(イメージ)が、
図7に示すように展開される。
図7では、詳細情報を取得するためのアイコン336は、通信デバイス1が搭載/接続されている管理装置Mに対応する各階層、即ちドメイン及びバンクの両方に配置されている。
【0077】
図8は、詳細情報の表示例を示す図である。
図8は、
図7中の容量確認対象となるバンク(#1)に対応する階層のアイコン336が選択された場合に、該アイコン336に対応付けられているリンク情報に基づいて通信デバイス1により提示されるWeb画面337の一例である。
図8に示す通信デバイス1から提供されるWeb画面337を表示するためにはログインが必要である。このときのログイン情報はサーバ装置2で提供されるWebサーバへのログインと共通としてあり、これにより改めてログイン情報を入力する操作を行なうことなしに自動的にログインされて表示されることが好ましい。
【0078】
Web画面337にて通信デバイス1は、対象のバンクに設けられている管理装置Mを介し、各蓄電モジュールに搭載されている制御基板から得られる情報をクライアント装置3へ提供する。具体的にはWeb画面337には「バンク情報」として、バンクの状態(正常/異常)、バンクの総電圧、電流、セル電圧、SOC、温度の分布(最高値、平均値、及び最低値)が含まれている。「データ日時」もWeb画面337に表示されている。
【0079】
通信デバイス1により提示されるWeb画面337には、メニューアイコン338が複数含まれている。複数のメニューアイコン338は例えば、通信デバイス1を介して得られる「バンク情報」の詳細な情報を表示するためのメニューを含む。詳細な情報とは、バンクに含まれる蓄電モジュール毎の状態情報、蓄電セル毎の状態情報等である。通信デバイス1は、「バンク情報」の内容更新に応じて、提示するWeb画面337内の情報を更新する。メニューアイコン338は、通信デバイス1における時刻、メンテナンスに関する通知用のメールアドレスの設定、ネットワーク設定、SNMPに関する設定、シリアル通信を介した制御に関する設定、又は通信デバイス1の再起動(シャットダウン)のためのメニューを含む。メニューアイコン338には、
図4及び
図5のフローチャートに示した満充電容量の推定指示を受け付けるメニューが含まれる。通信デバイス1は、提示しているWeb画面337上でのクライアント装置3の操作部34にて、これらのメニューアイコン338が選択操作されることにより、Web画面337を遷移させる。
【0080】
図9は、通信デバイス1から提示されるWeb画面337の他の一例を示す図である。
図9は、
図8のメニューアイコン338の内、満充電容量の推定を行なうためのアイコンが選択された場合に表示される画面例である。
図9の画面例を表示させることができるクライアント装置3は、管理者権限が割り当てられたユーザ(オペレータ)のログインがされているものに限るとよい。
図9に示すように、メニューアイコン338が選択されると、Web画面337に重畳するような画面339が表示されると共に、
図8のWeb画面337に戻るためのアイコン340が表示される。
【0081】
画面339には、Web画面337の提示元の通信デバイス1が接続されているバンクの蓄電モジュール群Lにおける満充電容量の推定を実行するための実行受付画面341が含まれる。
図9に示す実行受付画面341の例では、容量推定の方式の選択を受け付ける選択欄、容量推定のための測定値のサンプリング時間(間隔)の設定入力欄が含まれている。実行受付画面341にて、適宜方式の選択又は入力が行なわれた後に実行ボタン342がクライアント装置3の操作部34により選択された場合、容量の推定指示が受け付けられ(S101)、推定が可能な状態となると(S104:YES)、その後、対象のバンクの切り離しが行なわれた上で測定が開始され(S111)、容量の推定処理が行なわれる(S116)。このように通信デバイス1が提示するWeb画面337を介して遠隔から手動で、蓄電モジュール群Lの容量の推定処理を受け付けることができる。
【0082】
図10は、詳細情報の他の表示例を示す図である。
図10は、推定処理が行なわれている間に表示される画面例を示す。Web画面337には、
図8同様に、「バンク情報」として、バンクの状態、バンクの総電圧、電流、セル電圧、SOC、温度の分布(最高値、平均値、及び最低値)が含まれている。ただし
図10では、バンクの状態として「容量確認中」であることを示すメッセージが含まれている。
【0083】
満充電容量の推定処理(容量確認)中、通信デバイス1を介してクライアント装置3にて状態を逐次把握することができる。サーバ装置2においても対応するバンクに対する満充電容量の推定処理が行なわれていることを認識できる。サーバ装置2は
図7に示したWeb画面330で、対応するバンクのアイコン333又は詳細を表示するためのアイコン335にて、容量確認中であることを色又は光で出力してもよい。
【0084】
第2の指示について、サーバ装置2が提供するWeb画面を参照して説明する。
図11は、サーバ装置2により提供される画面例を示す図である。
図11は、
図7中のメニューアイコン338「寿命予測/容量確認」が選択された場合に表示される画面である。
図11の画面330は、対象の選択欄343、寿命予測の依頼を受け付けるアイコン344、容量確認即ち容量の推定処理の指示を受け付けるアイコン345を含む。容量の推定処理の指示を受け付けるアイコン345が選択された場合、サーバ装置2の制御部20は、選択欄343で選択されているドメイン又はバンクを認識し、認識したドメイン又はバンクに搭載/接続されている通信デバイス1へ、推定指示を送信する。選択欄343は
図11に示すように、バンク一つずつについて容量を確認するか、複数のバンクを含むドメインに対し一括して容量を確認するか、又は全体に対し一括して容量を確認するかの選択を受け付ける。
【0085】
例えば選択欄343にてドメインが選択された場合、サーバ装置2の制御部20は選択されたドメインに搭載/接続されている通信デバイス1へ推定指示を送信する。ドメインに搭載/接続されている通信デバイス1の制御部10は、ドメインに属するバンクを順次1又は複数(例えば2又は3)選択する。ドメインの通信デバイス1は、通信デバイス1間の通信によって、選択したバンクに搭載/接続されている通信デバイス1に対し推定指示を送信する。又は、制御部20がドメインに属するバンクを順次1又は複数選択し、選択したバンクに搭載/接続されている通信デバイス1に対し推定指示を送信してもよい。以後は、
図4及び
図5のフローチャートに示した手順と同様の処理が行なわれる。「寿命予測の依頼を受け付けるアイコン344が選択された場合にも、容量の推定処理は行なわれてよい。
【0086】
選択欄343にて「全体」が選択された場合、サーバ装置2の制御部20は、システム全体の状態に基づき、運用を継続しながらバンク等の所定の単位で容量を確認する。例えば制御部20は、対象のシステムに含まれるドメイン又はバンクを一つずつ選択し、推定指示を送信する。推定指示に基づき、選択されたドメイン又はバンクの満充電容量の推定処理が完了し、選択されたドメイン又はバンクが蓄電システム101に通電して復帰したことが確認できた場合に制御部20は、次のドメイン又はバンクを選択して推定指示を送信する。以後の処理は上述のドメイン選択の場合と同様である。
【0087】
図11に示した受付画面にて手動により容量の推定処理が開始されるだけでなく、サーバ装置2にて設定されるスケジュールに基づき設定が行なわれてもよい。サーバ装置2は、
図11の画面内に設けられる日時の設定画面を出力し、選択された対象の蓄電システム101、あるいはドメイン又はバンク単位で蓄電モジュール群Lに対し、設定された日時を記憶部21に記憶しておく。サーバ装置2の制御部20は、記憶してある設定日時に到達したことを検知した場合に、対応する通信デバイス1へ推定指示を送信する。
【0088】
第3の指示について説明する。遠隔監視システム100にてサーバ装置2の制御部20は、システム毎に全体の状態を収集している。制御部20は、収集した情報を用いて容量の推定処理の要否について自律的に判断し、必要であると判断した場合に、対象となるドメイン又はバンクに対応する通信デバイス1へ推定指示を送信してもよい。制御部20が、収集している状態に基づいて満充電容量を推定してもよい。
図12は、サーバ装置2の機能ブロック図である。制御部20は、状況判断部201として機能する。
【0089】
状況判断部201は、通信デバイス1を介して収集した情報(データ)に基づき、システム、又は蓄電モジュール群L単位で容量を確認すべき状況にあるか否かを判断する。例えば状況判断部201は、システム又は蓄電モジュール群Lの異常の予兆を検知した場合に対象のシステム、又は特定の蓄電モジュール群Lの容量を確認すると判断する。予兆の検知は、サーバ装置2における情報に基づく統計的解析、又は閾値判断によって行なわれてもよい。予兆の検知は図示するように、各取得した状態情報に基づく劣化又は異常予測に関する学習による人工知能的な状況判定に基づき行なわれてもよい。人工知能的な状況判定とは例えば、状態情報を入力層とし、状態を判定結果として出力する深層学習である。その他判定は、状態情報に対する回帰分析によるものであってもよい。
【0090】
図13は、サーバ装置2の制御部20の指示に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。サーバ装置2の制御部20は、周期的(例えば1日、1時間に1回等)に以下の処理手順を実行する。通信デバイス1からのデータの受信をトリガとして、サーバ装置2が以下の処理手順を実行してもよい。1回の演算で1ヶ月先の予兆を検知する場合、1日周期で、演算した予兆を補正するようにしてもよい。すなわち、将来の第2時点における状態予測を、第2時点より現在から近い将来である第1時点で補正してもよい。
【0091】
制御部20は、監視対象のシステム又は装置を一つ選択する(ステップS201)。ステップS201において制御部20は、記憶部21に記憶してある監視対象のシステム又は装置の識別情報の中から一つ選択する。選択したシステム又は装置について、制御部20は、状況判断部201の機能により、収集した状態情報に基づき異常の予兆を検知したか否かを判断する(ステップS202)。
【0092】
異常の予兆を検知したと判断された場合(S202:YES)、制御部20は、満充電容量の推定の対象として選択しているシステム又は装置を指定した推定指示を作成する(ステップS203)。制御部20は、作成した推定指示を、選択しているシステム又は装置に対応する通信デバイス1へ送信する(ステップS204)。ステップS203にて制御部20は、対象のシステム、ドメイン又はバンクについて、状態取得のサンプリングタイミングの設定を高頻度へ変更する指示を指示情報に含めてもよい。
【0093】
制御部20は、全てのシステム又は装置について選択したか否かを判断し(ステップS205)、選択していないと判断された場合(S205:NO)、処理をステップS201へ戻し、選択したと判断された場合(S205:YES)、処理を終了する。
【0094】
サーバ装置2から送信された推定指示に対し、対応するバンクの通信デバイス1では
図5のフローチャートに示した処理手順を実行し、満充電容量を推定する。ドメインの通信デバイス1経由で推定指示が送信されてもよい。
【0095】
異常の予兆を検知したと判断されない場合(S202:NO)、制御部20は、満充電容量の推定指示のトリガ入力があったか否かを判断する(ステップS206)。トリガは例えば、選択されているシステム又は装置に対応付けて記憶部21に記憶してあるスケジュールに基づき、制御部20自身が出力してもよいし、クライアント装置3からの指示で
図11のWeb画面330に含まれるアイコン340によって出力されるものであってもよい。
【0096】
ステップS206でトリガ入力があったと判断された場合(S206:YES)、制御部20はトリガ入力と対応して指定される条件(対象及び時間)に基づき推定指示を作成し(ステップS207)、送信する(S204)。
【0097】
ステップS206でトリガ入力がなかったと判断された場合(S206:NO)、制御部20は処理をステップS205へ進める。
【0098】
階層構造を持つ蓄電システム101に搭載/接続される複数の通信デバイス1はいずれも、デバイスプログラム1Pに基づき
図4のフローチャートに示した処理手順を実行することができる。これにより、サーバ装置2又はクライアント装置3から、各通信デバイス1への推定指示の送信制御がされることで遠隔から状況に応じた満充電容量の推定(容量確認)が可能になる。従来、容量確認は、保守担当者が、蓄電システム101の設置場所で、対象の蓄電素子の蓄電システム101からの切断作業、測定処理を行なうことで実施された。上述した単一又は複数の通信デバイス1の利用により、完全充放電を含む多様な方法で満充電容量の推定が可能であるから、保守担当者の作業を大幅に削減することができる。
【0099】
(変形例1)
変形例1では、通信デバイス1は、電流又は電圧の測定データの取得のみ行なう。通信デバイス1は、管理装置(B)Mから得られる測定結果をサーバ装置2へ送信する、変形例1ではサーバ装置2が満充電容量の推定処理を行なう。
図14は、変形例1におけるサーバ装置2の機能ブロック図である。制御部20は、状況判断部201及び容量推定部202として機能する。
【0100】
容量推定部202は、収集した情報と、推定指示に応じて対象の蓄電モジュール群Lに対して測定部70により測定された情報とを用いて、満充電容量を推定する処理を行なう。変形例における容量推定部202は、所定の放電制御(例えば80%から50%)下での電圧・電流を用いることに限られず、機械学習、深層学習等の学習処理、回帰分析等の統計的処理により、収集及び測定された情報を入力して容量を推定することが好ましい。予め、完全充放電(100%から0%)又は所定の充電制御を行なった場合の電圧・電流の測定値を入力とし、満充電容量を教師データとする学習により得られた容量推定モデルを図示するように記憶部21に記憶しておき、制御部20がこの容量推定モデルを用い、測定値を入力して容量を推定してもよい。教師あり学習に基づく処理のみならず、教師なしでの機械学習によって容量を推定してもよい。
【0101】
図15は、変形例1におけるサーバ装置2の制御部20による満充電容量推定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15のフローチャートの処理手順の内、
図13のフローチャートと共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0102】
ステップS202にて異常の予兆を検知したと判断された場合(S202:YES)、制御部20は満充電容量の推定の対象として選択しているシステム又は装置を指定して測定指示を含む推定指示を作成する(ステップS208)。制御部20は、ステップS208で作成した推定指示を通信デバイス1へ送信する(S204)。この場合、通信デバイス1では
図4及び
図5のフローチャートにおける処理手順の内のステップS111を省略し、推定結果ではなく測定結果を送信する(S112)。
【0103】
制御部20は、送信した測定指示を含む推定指示に応じて送信される測定結果を受信し(ステップS210)、測定が完了したか否かを判断する(ステップS211)。
図4のフローチャートに示した一例では、通信デバイス1は測定完了後に測定結果を送信しているので測定結果の受信により完了を確認するとよい。測定結果が逐次送信される場合には、制御部20は通信デバイス1からの完了通知が送信された場合に完了したと判断すればよい。測定が完了していないと判断された場合(S211:NO)、制御部20は処理をステップS210へ戻す。
【0104】
測定が完了したと判断された場合(S211:YES)、制御部20は容量推定部202により、測定結果及びこれまで収集された情報に基づいてステップS201で選択しているシステム又は装置における蓄電素子の容量を推定する(ステップS212)。システムがドメイン全体である場合、ドメインに含まれるバンク夫々についてステップS210及びS211の処理を逐次実行するとよい。
【0105】
制御部20は、容量推定の処理完了後に(S212)、処理をステップS205へ進める。
【0106】
変形例1に示したように、保守担当者が蓄電システム101の状況をWeb画面330にて視認していなくとも、異常の予兆が検知できた場合に自律的に満充電容量の推定ができる。劣化した蓄電モジュールを自律的に特定することも可能である。異常状態へ推移する前に、劣化した蓄電モジュールを取り替えるなどの処置が可能になる。保守担当者の負担を減らしつつ、予期せぬ事態が発生する前に対処することができ蓄電システム101の確実で安定的な継続運転が実現される。
【0107】
(変形例2)
上述の実施形態及び変形例1では、所定の時間帯に対象バンクを充電又は放電している間の電圧・電流を測定して容量を推定する例を挙げて説明した。その他、測定用の負荷を別途設ける構成としてもよい。
図16は、変形例2における蓄電システム101の構成例を示すブロック図である。変形例では、測定部70が蓄電モジュール群Lに対して並列に設けられている。測定部70は、蓄電モジュール群Lの容量(SOH)を計測するための機器である。測定部70は通信デバイス1に通信線により接続されている。
図17は、測定部70のブロック図である。測定部70は、電圧降下素子71、電圧測定部72、電流測定部73、制御部74及び通信部75を備える。測定部70は切替部41と一体に制御されてもよい。電圧降下素子71は蓄電モジュール群Lに対し並列に設けられた抵抗である。電圧測定部72は、電圧降下素子71における電位差を測定し、制御部74へ通知する。電流測定部73は電圧降下素子71における電流を測定し、制御部74へ通知する。制御部74は、電圧測定部72及び電流測定部73により測定された測定値を内蔵する記憶部に記憶する。
【0108】
制御部74は外部からの信号、又は通信部75を介して測定の指示を受け付けると、蓄電モジュール群Lの放電中の電圧の変化、又は放電中の電流積算値に基づき、満充電容量を推定する。満充電から充電率が0%になるまで放電してその間における変化を測定する完全充放電方式により推定する。完全充放電方式に限らず所定の割合までの電圧又は電流の変化に基づき推定するようにしてもよい。
【0109】
測定部70の通信部75は、通信デバイス1との間の情報の送受信を実現する。制御部74は、測定により得られた情報(電圧、電流)、又は推定結果の満充電容量を通信部75から通信デバイス1へ通知する。測定部70に接続されている通信デバイス1は他の通信デバイス1とも通信接続が可能である。通信デバイス1は、他の通信デバイス1との間で送受信する情報に基づいて測定部70による測定開始又は測定終了を測定部70へ指示し、測定部70から測定結果の通知を受けることができる。
【0110】
図16の例では切替部41は、電力線42の複数のバンクへの分岐点からの蓄電モジュール群Lへの給電のオン/オフと、測定部70への接続とを切り替える。切替部41により電力線42と蓄電モジュール群Lとの間が接続された状態となるか、蓄電モジュール群Lと測定部70との間が接続された状態となるか、又はいずれにも接続されていないオフ状態となるかが切り替えられる。測定部70はバンク外にドメインに対し一つ設けられ、各バンクの蓄電モジュール群Lに対して切替部41によって切り替えて容量の推定を行なう。測定部70は、各バンクに設けられてもよい。
【0111】
変形例2において通信デバイス1の制御部10は、
図4及び
図5のフローチャートに示した処理手順を実行する。変形例2では、測定部70を用い、蓄電モジュール群Lから完全放電(例えば満充電から0(ゼロ)%まで1Cレートで、ハイレートでもよい)を行ない、この放電中の測定により得られた測定値に基づいて満充電容量を推定する。ステップS106での切替部41による切り離しは、対象バンク以外のバンクの切替部41をオフ状態とするのではなく、対象バンクの切替部41を測定部70へ接続する制御に代替される。そしてステップS114において制御部10は、他のバンクの容量が低下して、完全放電を行なった対象バンクを接続しても過剰な横流が発生しないと推測された状態か否かを判断する。
【0112】
変形例2で測定部70は、測定のみ行ない、満充電容量の推定処理は通信デバイス1、又はサーバ装置2にて行なってもよい。
【0113】
開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 通信デバイス
10 制御部
11 記憶部
1P デバイスプログラム
2 サーバ装置
20 制御部
21 記憶部
2P サーバプログラム
3 クライアント装置
30 制御部
31 記憶部
3P クライアントプログラム