IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業機械 図1
  • 特許-作業機械 図2
  • 特許-作業機械 図3
  • 特許-作業機械 図4
  • 特許-作業機械 図5
  • 特許-作業機械 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
E02F3/85 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018156005
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029712
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】上村 佑介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕治
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204580(JP,A)
【文献】特開2018-115461(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221904(WO,A1)
【文献】特開平07-207699(JP,A)
【文献】特開2007-186964(JP,A)
【文献】特開2018-059400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記上下方向に回動可能に前記下部走行体に取り付けられた排土板と、
を有する作業機械であって、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢を検出する上部旋回体姿勢検出装置と、
前記排土板の姿勢を検出する排土板姿勢検出装置と、
前記上部旋回体に設けられ、レーザ投光器が発するレーザを受光可能なレーザ受光器と、
施工面に対する前記排土板の刃先の高さ位置を算出する算出手段と、
をさらに有し、
前記算出手段は、前記レーザ受光器が前記レーザを受光したときにおける、前記レーザの受光位置と、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢と、前記排土板の姿勢とに基づいて、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置を算出し、
作業者に情報を報知することが可能な禁止報知装置と、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きで作業を開始した後に、前記上部旋回体が旋回される前に、前記上部旋回体の旋回を禁止する報知を前記禁止報知装置に行わせる禁止報知制御手段と、
警告を発することが可能な警告装置と、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きで作業を開始した後に、前記上部旋回体が旋回された場合に、前記警告装置から警告を発生させる警告制御手段と、
をさらに有することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
下部走行体と、
前記下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記上下方向に回動可能に前記下部走行体に取り付けられた排土板と、
を有する作業機械であって、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢を検出する上部旋回体姿勢検出装置と、
前記排土板の姿勢を検出する排土板姿勢検出装置と、
前記上部旋回体に設けられ、レーザ投光器が発するレーザを受光可能なレーザ受光器と、
施工面に対する前記排土板の刃先の高さ位置を算出する算出手段と、
をさらに有し、
前記算出手段は、前記レーザ受光器が前記レーザを受光したときにおける、前記レーザの受光位置と、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢と、前記排土板の姿勢とに基づいて、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置を算出し、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きで作業を開始した後に、前記上部旋回体の旋回を禁止するコントローラをさらに有することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
下部走行体と、
前記下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記上下方向に回動可能に前記下部走行体に取り付けられた排土板と、
を有する作業機械であって、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢を検出する上部旋回体姿勢検出装置と、
前記排土板の姿勢を検出する排土板姿勢検出装置と、
前記上部旋回体に設けられ、レーザ投光器が発するレーザを受光可能なレーザ受光器と、
施工面に対する前記排土板の刃先の高さ位置を算出する算出手段と、
をさらに有し、
前記算出手段は、前記レーザ受光器が前記レーザを受光したときにおける、前記レーザの受光位置と、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢と、前記排土板の姿勢とに基づいて、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置を算出し、
前記上部旋回体姿勢検出装置は、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の相対角度を検出する相対角度検出装置であり、
前記算出手段は、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きで作業を開始した後に、前記上部旋回体が旋回した場合に、前記相対角度検出装置が検出した前記相対角度に基づいて、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置を算出することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きである初期状態で、作業が開始され、
前記初期状態が、前記下部走行体の正面に対して前記上部旋回体が正面を向き、且つ、前記上部旋回体の向きが前記レーザの傾斜方向に平行である状態であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記下部走行体の正面の方位、および、前記上部旋回体の正面の方位の少なくとも一方を検出する方位センサと、
前記レーザの傾斜方向と、前記下部走行体の正面の方位と、前記上部旋回体の正面の方位とに基づいて、前記初期状態であるか否かを判定する判定手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項に記載の作業機械。
【請求項6】
作業者に情報を報知することが可能な高さ位置報知装置と、
前記算出手段が算出した、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置を前記高さ位置報知装置に報知させる高さ位置報知制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記排土板の姿勢を変化させる姿勢変化装置と、
前記算出手段が算出した、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置に基づいて、前記排土板が前記施工面の高さまで地面を削るように、前記姿勢変化装置を制御する姿勢制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項8】
前記上部旋回体は、上下方向に回動可能な作業装置を有し、
前記作業装置の姿勢を検出する作業装置姿勢検出装置をさらに有し、
前記レーザ受光器が、前記作業装置に取り付けられており、
前記算出手段は、前記レーザ受光器が前記レーザを受光したときにおける、前記レーザの受光位置と、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢と、前記作業装置の姿勢と、前記排土板の姿勢とに基づいて、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置を算出することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項9】
前記作業装置は、
前記上下方向に回動可能に前記上部旋回体に取り付けられたブームと、
前記上下方向に回動可能に前記ブームに取り付けられたアームと、
を有し、
前記レーザ受光器が、前記アームの長手方向に延在するように、前記アームに取り付けられていることを特徴とする請求項に記載の作業機械。
【請求項10】
作業者に情報を報知することが可能な禁止報知装置と、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きである初期状態で作業を開始した後に、前記上部旋回体の旋回を禁止する報知を前記禁止報知装置に行わせる禁止報知制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項11】
前記禁止報知制御手段は、前記初期状態からさらに前記上部旋回体が所定角度旋回した開始状態で作業を開始した後に、前記上部旋回体の旋回を禁止する報知を前記禁止報知装置に行わせることを特徴とする請求項10に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置と排土板とを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、レーザ投光器が発するレーザをレーザ受光器で受光しながらブルドーザで土壌をならすことが行われている。レーザによるガイダンスに沿って作業を行うことで、仕上げ面精度が向上する。レーザ受光器は、支持棒を介してブルドーザの土工板に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-172972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、油圧ショベルなどの作業機械が備える排土板で、地面を削ることが行われている。そこで、作業機械においても、レーザ投光器が発するレーザをレーザ受光器で受光しながら排土板で地面を削ることが考えられる。
【0005】
しかしながら、作業機械の場合、排土板の上方に作業装置が設けられている。そのため、支持棒を介して排土板にレーザ受光器を取り付けると、作業装置がレーザ受光器に接触することで、レーザ受光器が破損する恐れがある。これを避けるために、排土板に取り付けるレーザ受光器の高さを低くすると、レーザ受光器が土砂で汚れてレーザを受光できなくなったり、レーザ受光器が土砂で破損したりする恐れがある。また、レーザ受光器の高さを低くすると、現場の資材等の遮蔽物によってレーザが容易に遮蔽される恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、レーザ投光器が発するレーザをレーザ受光器で好適に受光しながら、地面を削る作業を好適に行うことが可能な作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下部走行体と、前記下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上下方向に回動可能に前記下部走行体に取り付けられた排土板と、を有する作業機械であって、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢を検出する上部旋回体姿勢検出装置と、前記排土板の姿勢を検出する排土板姿勢検出装置と、前記上部旋回体に設けられ、レーザ投光器が発するレーザを受光可能なレーザ受光器と、施工面に対する前記排土板の刃先の高さ位置を算出する算出手段と、をさらに有し、前記算出手段は、前記レーザ受光器が前記レーザを受光したときにおける、前記レーザの受光位置と、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の姿勢と、前記排土板の姿勢とに基づいて、前記施工面に対する前記排土板の前記刃先の高さ位置を算出し、作業者に情報を報知することが可能な禁止報知装置と、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きで作業を開始した後に、前記上部旋回体が旋回される前に、前記上部旋回体の旋回を禁止する報知を前記禁止報知装置に行わせる禁止報知制御手段と、警告を発することが可能な警告装置と、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の角度が特定の角度であり、且つ、前記レーザの傾斜方向に対する前記上部旋回体の向きが特定の向きで作業を開始した後に、前記上部旋回体が旋回された場合に、前記警告装置から警告を発生させる警告制御手段と、をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、上部旋回体にレーザ受光器が設けられている。このように、下部走行体や排土板と同じ高さ位置にレーザ受光器が設けられる場合などに比べて、レーザ受光器が高い位置に設けられているので、土砂や遮蔽物によってレーザが遮蔽される可能性が低くなる。また、レーザ受光器がレーザを受光したときにおける、レーザの受光位置と、下部走行体に対する上部旋回体の姿勢と、排土板の姿勢とに基づいて、施工面に対する排土板の刃先の高さ位置が算出される。これにより、施工面に対する排土板の刃先の高さ位置がわかるので、施工面の高さまで地面を削るように、排土板の姿勢を変化させることが可能となる。よって、レーザ投光器が発するレーザをレーザ受光器で好適に受光しながら、地面を削る作業を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業機械の側面図である。
図2】作業機械の回路図である。
図3】作業機械の作業状態を示す図である。
図4】初期状態の作業機械を上方から見た図である。
図5】開始状態の作業機械を上方から見た図である。
図6】作業制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
[第1実施形態]
(作業機械の構成)
本発明の第1実施形態による作業機械は、例えば油圧ショベルである。作業機械1の側面図である図1に示すように、作業機械1は、下部走行体2と、上部旋回体3と、排土板5と、を備えている。
【0012】
下部走行体2は、作業機械1を走行させる部分である。上部旋回体3は、旋回装置を介して下部走行体2の上部に旋回可能に設けられている。上部旋回体3は、上下方向に回動可能な作業装置4を有している。上部旋回体3の前部には、キャブ(運転室)6が設けられている。
【0013】
作業装置4は、ブーム31と、アーム32と、バケット33と、を備える。ブーム31は、上下方向に回動可能に上部旋回体3に取り付けられている。アーム32は、上下方向に回動可能にブーム31に取り付けられている。バケット33は、上下方向に回動可能にアーム32に取り付けられている。
【0014】
排土板5は、上下方向に回動可能に下部走行体2に取り付けられている。排土板5は、作業機械1の進行方向に土砂を押し出したり、地面を削ったりするものである。排土板5は、アクチュエータである姿勢変化装置15(図2参照)により、その姿勢が変化される。具体的には、排土板5は、姿勢変化装置15によって上下動されるとともに、その傾きが可変される。
【0015】
また、作業機械1の回路図である図2に示すように、作業機械1は、上部旋回体姿勢検出装置11と、作業装置姿勢検出装置12と、排土板姿勢検出装置13と、を有している。
【0016】
上部旋回体姿勢検出装置11は、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢を検出するものである。本実施形態において、上部旋回体姿勢検出装置11は、下部走行体2の正面に対して、上部旋回体3が正面を向いているか否かを検出する。
【0017】
作業装置姿勢検出装置12は、作業装置4の姿勢を検出するものである。具体的には、作業装置姿勢検出装置12は、ブーム角度検出センサと、アーム角度検出センサと、を有している。ブーム角度検出センサは、上部旋回体3に対するブーム31の角度を検出するものであり、ブーム31に設けられている。アーム角度検出センサは、ブーム31に対するアーム32の角度を検出するものであり、アーム32に設けられている。
【0018】
排土板姿勢検出装置13は、排土板5の姿勢を検出するものである。具体的には、排土板姿勢検出装置13は、排土板5の高さ位置および排土板5の傾き角度を検出する。
【0019】
また、作業機械1は、レーザ受光器10を有している。レーザ受光器10は、レーザ投光器50(図3参照)が発するレーザを受光可能である。本実施形態において、レーザ受光器10は、アーム32の長手方向に延在するように、アーム32の片側の側面に設けられている(図1参照)。なお、レーザ受光器10は、アーム32の両側の側面にそれぞれ設けられていてもよい。また、レーザ受光器10は、作業装置4以外の上部旋回体3に設けられていてもよいし、作業装置4のアーム32以外の箇所に設けられていてもよい。
【0020】
本実施形態において、レーザ受光器10は、縦長の矩形形状であり、その長手方向のどの位置においても、レーザを受光可能である。
【0021】
また、作業機械1は、図2に示すように、コントローラ21と、記憶装置22と、を有している。
【0022】
コントローラ(算出手段)21は、後述する施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を算出する。ここで、排土板5の刃先とは、排土板5の下端である。
【0023】
記憶装置22は、作業機械1の寸法に係る情報を記憶している。具体的には、記憶装置22は、少なくとも、下部走行体2の機構寸法、上部旋回体3の機構寸法、ブーム31の寸法、アーム32の寸法、排土板5の寸法、ブーム31の基端部から接地面までの高さ、アーム32に対するレーザ受光器10の設置位置といった情報を記憶している。
【0024】
作業機械1の作業状態を示す図である図3に示すように、作業機械1は、排土板5を用いて地面を削る作業を行う。このとき、レーザ投光器50が発するレーザをレーザ受光器10で受光しながら作業を行うことで、仕上げ面精度が向上する。
【0025】
レーザ投光器50は、地面に立てて設けられ、360度の全方向にレーザを発する。レーザ投光器50が発するレーザには、α%の勾配がつけられている。この勾配は、目標とする施工面の勾配と同じである。レーザ投光器50が設置された地面上の位置を基準点とすると、基準点における施工面の深さ位置は、レーザ投光器50のレーザ発光部の高さから所定長さ低い位置である。よって、レーザ投光器50が発するレーザのどの位置においても、その位置の高さから所定長さ低い位置が、施工面となる。
【0026】
図3に示すように、アーム32に設けられたレーザ受光器10でレーザを受光する。このように、下部走行体2や排土板5と同じ高さ位置にレーザ受光器10が設けられる場合などに比べて、レーザ受光器10が高い位置に設けられているので、土砂や遮蔽物によってレーザが遮蔽される可能性が低くなる。
【0027】
コントローラ(算出手段)21(図2参照)は、レーザ受光器10がレーザを受光したときにおける、レーザの受光位置と、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢と、作業装置4の姿勢と、排土板5の姿勢とに基づいて、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を算出する。ここで、本実施形態において、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢とは、下部走行体2の正面に対して上部旋回体3が正面を向いた姿勢である。
【0028】
記憶装置22(図2参照)が記憶する作業機械1の寸法に係る情報を用いるとともに、レーザ受光器10がレーザを受光したときにおける、レーザの受光位置と、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢と、作業装置4の姿勢と、排土板5の姿勢とを用いれば、レーザの受光位置に対する排土板5の刃先の高さ位置が求まる。また、レーザの受光位置における施工面の高さ位置が求まる。よって、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を算出することができる。これにより、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置がわかるので、施工面の高さまで地面を削るように、排土板5の姿勢を変化させることが可能となる。よって、レーザ投光器50が発するレーザをレーザ受光器10で好適に受光しながら、地面を削る作業を好適に行うことができる。
【0029】
また、図2に示すように、作業機械1は、報知装置(高さ位置報知装置)14を有している。報知装置14は、キャブ6内にいる作業者に情報を報知することが可能である。本実施形態において、報知装置14は、キャブ6内に設けられたディスプレイやスピーカである。コントローラ(高さ位置報知制御手段)21は、自身が算出した、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を、報知装置14に報知させる。具体的には、排土板5の刃先が施工面に対してあと何センチであるか等の情報を、ディスプレイに表示させたり、スピーカから音声で出力させたりする。これにより、作業者は、報知内容に従って、施工面の高さまで地面を削るように、排土板5の姿勢を変化させることができる。
【0030】
なお、コントローラ(姿勢制御手段)21は、自身が算出した、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置に基づいて、排土板5が施工面の高さまで地面を削るように、上述の姿勢変化装置15を制御してもよい。これにより、施工面の高さまで地面を削るように、排土板5の姿勢を自動で変化させることができる。
【0031】
ここで、図3に示すように、レーザ受光器10が、作業装置4に取り付けられている。そのため、レーザを受光していたレーザ受光器10が、レーザを受光しなくなったときに、作業装置4を動かすことで、レーザ受光器10でレーザを容易に再受光することができる。
【0032】
また、レーザ受光器10が、アーム32の長手方向に延在するように、アーム32に取り付けられている。通常、アーム32を、上下方向に延在した姿勢にすることができる。レーザ受光器10の長手方向がアーム32の長手方向に沿うように、レーザ受光器10がアーム32に取り付けられているので、アーム32を上下方向に延在した姿勢にすれば、レーザ受光器10を縦長に配置することができる。これにより、上下方向の広い範囲において、レーザ受光器10でレーザを好適に受光することができる。
【0033】
(作業前の状態)
上述したように、作業機械1は、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を算出することができるが、施工面の傾斜方向に対して、自身がどの方向を向いているのかを把握することができない。そこで、レーザによるガイダンスに沿って作業を行う前に、施工面の傾斜方向に対して、作業機械1がどの方向を向いているのかを明確にしておく必要がある。
【0034】
そこで、本実施形態では、作業を行う前に、下部走行体2および上部旋回体3を動かして、作業機械1を初期状態にする。作業機械1を上方から見た図である図4に示すように、初期状態は、下部走行体2に対する上部旋回体3の角度が特定の角度であり、且つ、レーザの傾斜方向(施工面の傾斜方向)に対する上部旋回体3の向きが特定の向きである状態である。このように、レーザの傾斜方向に対して、作業機械1がどの方向を向いているかを明確にした後に、作業を開始する。
【0035】
ここで、本実施形態では、初期状態は、下部走行体2の正面に対して上部旋回体3が正面を向き、且つ、上部旋回体3の向きがレーザの傾斜方向に平行である状態である。初期状態がこのような状態であれば、下部走行体2の正面と上部旋回体3の正面とを合わせ、上部旋回体3の向きをレーザの傾斜方向に平行にすることで、容易に初期状態にすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、作業を行う前に、初期状態からさらに上部旋回体を旋回させて、開始状態にしてもよい。作業機械1を上方から見た図である図5に示すように、開始状態は、初期状態からさらに上部旋回体を所定角度旋回させた状態である。所定角度は、例えば45度である。初期状態からさらに上部旋回体を旋回させることで、キャブ6内にいる作業者から排土板5を目視しやすくなる。このように、キャブ6内にいる作業者から排土板5を目視しやすい姿勢にした後に、作業を開始してもよい。
【0037】
作業を開始した後は、下部走行体2はどの方向に走行してもよい。
【0038】
また、作業中に上部旋回体3が旋回すると、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢が変わってしまい、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を正確に算出することができなくなる。それは、上部旋回体姿勢検出装置11(図2参照)が、下部走行体2の正面に対して上部旋回体3が正面を向いているか否かを検出するものであって、下部走行体2に対する上部旋回体3の相対角度を検出することができないからである。上部旋回体3の旋回をジャイロセンサで検出することができるが、ジャイロセンサでは、上部旋回体3に対して下部走行体2がどの方向を向いているのかを把握することができない。例えば、下部走行体2が上部旋回体3とは別の方向を向いているのと、同じ方向を向いているのとを、ジャイロセンサでは区別することができない。なお、上部旋回体3のピッチング角度とローリング角度とをそれぞれ検出する角度センサであっても同じである。
【0039】
そこで、図2に示すように、コントローラ(禁止報知制御手段)21は、初期状態または開始状態で作業を開始した後に、上部旋回体3の旋回を禁止する報知を報知装置(禁止報知装置)14に行わせる。本実施形態において、報知装置14は、キャブ6内に設けられたディスプレイやスピーカである。具体的には、上部旋回体3の旋回を禁止する旨の文言をディスプレイに表示させたり、スピーカから音声で出力させたりする。これにより、作業者が間違って上部旋回体3を旋回させるのを抑制することができる。
【0040】
また、図2に示すように、作業機械1は、警告装置16を有している。警告装置16は、作業者に対して警告を発することが可能である。本実施形態において、警告装置16は、キャブ6内に設けられたディスプレイやスピーカである。コントローラ(警告制御手段)21は、作業を開始した後に、上部旋回体3が旋回された場合に、警告装置16に警告を発生させる。具体的には、正確な作業ができなくなった旨の文言をディスプレイに表示させたり、スピーカから音声で出力させたりする。これにより、作業者が間違ってこのまま作業を続けるのを抑制することができる。
【0041】
なお、作業を開始した後は、上部旋回体3を旋回できなくしてもよい。例えば、上部旋回体3の旋回を指令する操作をコントローラ21が無効化したり、旋回動作に対してブレーキをかけるようにコントローラ21で制御したりしてよい。
【0042】
ここで、作業機械1の状態を手動で初期状態にするのは手間である。そこで、図2に示すように、作業機械1は、方位センサ17と、入力装置18と、を有している。方位センサ17は、下部走行体2の正面の方位、および、上部旋回体3の正面の方位をそれぞれ検出する。入力装置18は、レーザの傾斜方向に係る情報をコントローラ21に入力するためのものであり、例えばタッチパネルである。なお、レーザの傾斜方向に係る情報を手動で入力する構成に限定されず、レーザ投光器50の送信機から送信されるレーザの傾斜方向に係る情報を、入力装置18で受信して自動でコントローラ21に入力する構成であってもよい。
【0043】
コントローラ(判定手段)21は、レーザの傾斜方向と、下部走行体2の正面の方位と、上部旋回体3の正面の方位とに基づいて、作業機械1が初期状態であるか否かを判定する。判定結果は、ディスプレイに表示されたり、スピーカから音声で報知されたりする。判定結果に基づいて、下部走行体2、上部旋回体3を動かすことで、容易に初期状態にすることができる。
【0044】
(作業機械の動作)
次に、作業制御のフローチャートである図6を用いて、作業機械1の動作を説明する。なお、本フローチャートでは、開始状態で作業を開始する場合について説明する。
【0045】
まず、作業機械1のコントローラ21は、作業機械1が初期状態であるか否かを判定する(ステップS1)。作業者は、ディスプレイの表示や、スピーカからの音声に従って、作業機械1を動かして初期状態にする作業を行う。ステップS1において、作業機械1が初期状態でないと判定した場合には(S1:NO)、コントローラ21は、ステップS1を繰り返す。一方、ステップS1において、作業機械1が初期状態であると判定した場合には(S1:YES)、コントローラ21は、作業機械1が開始状態であるか否かを判定する(ステップS2)。作業者は、作業機械1を動かして開始状態にする作業を行う。作業機械1を開始状態にした作業者がタッチパネル等に入力することで、コントローラ21は、開始状態であるか否かを判定可能となる。
【0046】
ステップS2において、作業機械1が開始状態でないと判定した場合には(S2:NO)、コントローラ21は、ステップS2を繰り返す。一方、ステップS2において、作業機械1が開始状態であると判定した場合には(S2:YES)、コントローラ21は、排土板5の刃先位置のガイダンスを行う(ステップS3)。すなわち、レーザ受光器10がレーザを受光したときにおける、レーザの受光位置と、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢と、作業装置4の姿勢と、排土板5の姿勢とを用いて、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を算出し、報知装置14を用いて、キャブ6内にいる作業者にその情報を報知する。
【0047】
次に、コントローラ21は、上部旋回体3の旋回を禁止する報知を報知装置14に行わせる(ステップS4)。その後、コントローラ21は、上部旋回体3が旋回したか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において、上部旋回体3が旋回していないと判定した場合には(S5:NO)、コントローラ21は、ステップS3に戻る。一方、ステップS5において、上部旋回体3が旋回したと判定した場合には(S5:YES)、コントローラ21は、警告装置16に警告を発生させる(ステップS6)。
【0048】
その後、コントローラ21は、警告が停止されたか否かを判定する(ステップS7)。作業者は、タッチパネル等を操作することで、警告を解除することができる。ステップS7において、警告が停止されていないと判定した場合には(S7:NO)、コントローラ21は、ステップS7を繰り返す。一方、ステップS7において、警告が停止されたと判定した場合には(S7:YES)、コントローラ21は、ステップS1に戻る。作業者は、作業機械1を初期状態にする作業から再開することになる。
【0049】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る作業機械1によれば、上部旋回体3にレーザ受光器10が設けられている。このように、下部走行体2や排土板5と同じ高さ位置にレーザ受光器10が設けられる場合などに比べて、レーザ受光器10が高い位置に設けられているので、土砂や遮蔽物によってレーザが遮蔽される可能性が低くなる。また、レーザ受光器10がレーザを受光したときにおける、レーザの受光位置と、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢と、作業装置4の姿勢と、排土板5の姿勢とに基づいて、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置が算出される。これにより、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置がわかるので、施工面の高さまで地面を削るように、排土板5の姿勢を変化させることが可能となる。よって、レーザ投光器50が発するレーザをレーザ受光器10で好適に受光しながら、地面を削る作業を好適に行うことができる。
【0050】
また、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置が報知される。これにより、作業者は、報知内容に従って、施工面の高さまで地面を削るように、排土板5の姿勢を変化させることができる。
【0051】
また、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置に基づいて、排土板5が施工面の高さまで地面を削るように、姿勢変化装置15が制御される。これにより、施工面の高さまで地面を削るように、排土板5の姿勢を自動で変化させることができる。
【0052】
また、レーザ受光器10が、作業装置4に取り付けられている。よって、レーザを受光していたレーザ受光器10が、レーザを受光しなくなったときに、作業装置4を動かすことで、レーザ受光器10でレーザを容易に再受光することができる。
【0053】
また、レーザ受光器10が、アーム32の長手方向に延在するように、アーム32に取り付けられている。通常、アーム32を、上下方向に延在した姿勢にすることができる。レーザ受光器10の長手方向がアーム32の長手方向に沿うように、レーザ受光器10がアームに取り付けられているので、アーム32を上下方向に延在した姿勢にすれば、レーザ受光器10を縦長に配置することができる。これにより、上下方向の広い範囲において、レーザ受光器10でレーザを好適に受光することができる。
【0054】
また、下部走行体2に対する上部旋回体3の角度が特定の角度であり、且つ、レーザの傾斜方向に対する上部旋回体3の向きが特定の向きである初期状態で作業を開始した後に、上部旋回体3の旋回を禁止する報知が行われる。作業を開始した後に、上部旋回体3が旋回すると、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢が変わってしまい、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を正確に算出することができなくなる。そこで、初期状態で作業を開始した後に、上部旋回体3の旋回を禁止する報知を行うことで、作業者が間違って上部旋回体3を旋回させるのを抑制することができる。
【0055】
また、初期状態からさらに上部旋回体3が所定角度旋回した開始状態で作業を開始した後に、上部旋回体3の旋回を禁止する報知が行われる。作業を開始した後に、上部旋回体3が旋回すると、下部走行体2に対する上部旋回体3の姿勢が変わってしまい、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を正確に算出することができなくなる。そこで、開始状態で作業を開始した後に、上部旋回体3の旋回を禁止する報知を行うことで、作業者が間違って上部旋回体3を旋回させるのを抑制することができる。
【0056】
また、作業を開始した後に、上部旋回体3が旋回された場合に、警告が発せられる。作業を開始した後に、上部旋回体3が旋回すると、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を正確に算出することができなり、正確な作業ができなくなる。そこで、このような場合に、警告を発生させることで、作業者が間違ってこのまま作業を続けるのを抑制することができる。
【0057】
また、下部走行体2の正面に対して上部旋回体3が正面を向き、且つ、上部旋回体3の向きがレーザの傾斜方向に平行である状態が初期状態である。よって、下部走行体2の正面と上部旋回体3の正面とを合わせ、上部旋回体3の向きをレーザの傾斜方向に平行にすることで、容易に初期状態にすることができる。
【0058】
また、レーザの傾斜方向と、下部走行体2の正面の方位と、上部旋回体3の正面の方位とに基づいて、初期状態であるか否かが判定される。よって、判定結果に基づいて、下部走行体2や上部旋回体3を動かすことで、容易に初期状態にすることができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の作業機械について、図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と共通する構成およびそれにより奏される効果については説明を省略し、主に、第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材については、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0060】
(作業機械の構成)
第1実施形態では、図2に示す上部旋回体姿勢検出装置11は、下部走行体2の正面に対して、上部旋回体3が正面を向いているか否かを検出するものであった。そのため、作業中に上部旋回体3が旋回すると、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を正確に算出することができなくなっていた。
【0061】
そこで、本実施形態では、上部旋回体姿勢検出装置11として、相対角度検出装置を採用している。相対角度検出装置は、下部走行体2に対する上部旋回体3の相対角度を検出するものである。
【0062】
下部走行体2に対する上部旋回体3の相対角度を用いれば、作業を開始した後に上部旋回体3が旋回しても、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を正確に算出することができる。よって、作業を開始した後に上部旋回体3を自由に旋回させることができるので、操作自由度が向上するとともに、レーザ受光器10がレーザを受光するように上部旋回体3を旋回させることで、作業効率が向上する。
【0063】
なお、上部旋回体姿勢検出装置11が相対角度検出装置であれば、下部走行体2の正面の方位、または、上部旋回体3の正面の方位から、他方の正面の方位がわかる。よって、本実施形態の方位センサ17は、下部走行体2の正面の方位、および、上部旋回体3の正面の方位のどちらか一方を検出するものであってよい。
【0064】
本実施形態では、作業機械1を初期状態にした後に、作業を開始する。作業を開始した後に、上部旋回体3を旋回させたとしても、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置をコントローラ21で算出しつづけることができるので、排土板5の刃先位置のガイダンスを好適に行うことができる。
【0065】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る作業機械によれば、初期状態で作業を開始した後に、上部旋回体3が旋回した場合に、相対角度検出装置が検出した相対角度に基づいて、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置が算出される。下部走行体2に対する上部旋回体3の相対角度を用いれば、作業を開始した後に上部旋回体3が旋回しても、施工面に対する排土板5の刃先の高さ位置を正確に算出することができる。よって、作業を開始した後に上部旋回体3を自由に旋回させることができるので、操作自由度が向上するとともに、レーザ受光器10がレーザを受光するように上部旋回体3を旋回させることで、作業効率が向上する。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 作業機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 排土板
6 キャブ
10 レーザ受光器
11 上部旋回体姿勢検出装置
12 作業装置姿勢検出装置
13 排土板姿勢検出装置
14 報知装置(高さ位置報知装置、禁止報知装置)
15 姿勢変化装置
16 警告装置
17 方位センサ
18 入力装置
21 コントローラ(算出手段、高さ位置報知制御手段、姿勢制御手段、禁止報知制御手段、警告制御手段、判定手段)
22 記憶装置
31 ブーム
32 アーム
33 バケット
50 レーザ投光器
図1
図2
図3
図4
図5
図6