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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】無線通信確立方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20230511BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20230511BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20230511BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H04Q9/00 351
H04M11/00 301
B66B3/00 U
B66B5/00 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018161084
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020036181
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中城 那津子
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517571(JP,A)
【文献】特開2011-067894(JP,A)
【文献】特開2011-067892(JP,A)
【文献】特開2008-197856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04M 11/00
B66B 3/00
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転モード及び手動運転モードを有する産業用機械に、運転モードの切換指示を、第1無線通信経路を介して送信する操作側通信機と、
前記産業用機械に接続される機械側通信機と、
の間の第2無線通信経路を確立するための無線通信確立方法であって、
前記第2無線通信経路での無線通信を確立する要求である接続要求を、前記操作側通信機が前記機械側通信機に無線送信する接続要求ステップと、
前記機械側通信機が、接続確立条件が満たされるか否かを判定し、当該接続確立条件が満たされた場合に、前記接続要求に応じて、前記操作側通信機との間で、前記第2無線通信経路での無線通信を確立する第2無線通信経路確立ステップと、
を含み、
前記第2無線通信経路確立ステップでは、前記接続確立要件が満たされない場合に、前記接続要求があった場合でも、前記操作側通信機との間で前記第2無線通信経路での無線通信を確立せず、
前記接続確立条件が満たされるには
前記操作側通信機が前記第1無線通信経路を介して前記運転モードの切換指示を送信することにより当該運転モードを切り換えることが可能な前記産業用機械が前記手動運転モードである第1条件の成立と、
前記第2無線通信経路での無線通信が既に他の操作側通信機との間で確立されていない第3条件の成立と、
を要し、
前記機械側通信機は、前記第3条件が成立しない場合、当該機械側通信機との間で既に無線通信が確立されている前記他の操作側通信機を識別するための識別情報を前記操作側通信機に無線送信し、
前記操作側通信機は、前記機械側通信機から受信した前記他の操作側通信機の識別情報を、自機が備える表示部に表示することを特徴とする無線通信確立方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信確立方法であって、
前記接続要求には、前記操作側通信機を識別するための操作側通信機識別情報が含まれ、
前記接続確立条件が満たされるには、前記第1条件の成立及び第3条件の成立に加えて、前記接続要求に含まれる前記操作側通信機識別情報が通信許容相手として前記機械側通信機に予め登録されている第2条件の成立を要することを特徴とする無線通信確立方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信確立方法であって、
前記第2無線通信経路確立ステップにおいて、
前記機械側通信機は、前記接続確立条件が満たされない場合に、その理由を示す情報を前記操作側通信機に無線送信し、
前記操作側通信機は、前記機械側通信機から受信した理由を、当該操作側通信機が備える表示部に表示することを特徴とする無線通信確立方法。
【請求項4】
請求項1からまでの何れか一項に記載の無線通信確立方法であって、
前記操作側通信機は、
第1操作部を有する携帯端末と、
有線ケーブルを介して前記携帯端末と接続され、第2操作部を有するリモートコントローラと、
を備え、
前記産業用機械には、前記操作側通信機が送信する前記運転モードの切換指示を受信する受信用通信機が接続され、
前記第1無線通信経路は、前記携帯端末と前記受信用通信機との間に確立され、前記第1操作部の操作を示す第1操作情報が前記携帯端末から送信される経路であり、
前記第2無線通信経路は、前記リモートコントローラと前記機械側通信機との間に確立され、前記第2操作部の操作を示す第2操作情報が前記リモートコントローラから送信される経路であることを特徴とする無線通信確立方法。
【請求項5】
請求項に記載の無線通信確立方法であって、
前記携帯端末は、タブレット型の携帯端末であり、
前記第1操作部は、前記携帯端末が備える表示部と一体化したタッチパネルであることを特徴とする無線通信確立方法。
【請求項6】
請求項又はに記載の無線通信確立方法であって、
前記第2操作部による前記第2操作情報は、前記第1操作情報を有効にするイネーブル信号を含むことを特徴とする無線通信確立方法。
【請求項7】
請求項からまでの何れか一項に記載の無線通信確立方法であって、
前記第2操作部による前記第2操作情報は、非常停止信号を含むことを特徴とする無線通信確立方法。
【請求項8】
自動運転モード及び手動運転モードを有する産業用機械に、運転モードの切換指示を、第1無線通信経路を介して送信する操作側通信機と、
前記産業用機械に接続される機械側通信機と、
を備える無線通信システムであって、
前記操作側通信機と前記機械側通信機との間に第2無線通信経路を確立する場合、
前記操作側通信機は、前記第2無線通信経路での無線通信を確立する要求である接続要求を、前記機械側通信機に無線送信し、
前記機械側通信機が、接続確立条件が満たされるか否かを判定し、当該接続確立条件が満たされた場合に、前記接続要求に応じて、前記操作側通信機との間で、前記第2無線通信経路での無線通信を確立し、
前記機械側通信機が、接続確立条件が満たされるか否かを判定し、当該接続確立要件が満たされない場合には、前記接続要求があった場合でも、前記操作側通信機との間で前記第2無線通信経路での無線通信を確立せず、
前記接続確立条件が満たされるには
前記操作側通信機が前記第1無線通信経路を介して前記運転モードの切換指示を送信することにより当該運転モードを切り換えることが可能な前記産業用機械が前記手動運転モードである第1条件の成立と、
前記第2無線通信経路での無線通信が既に他の操作側通信機との間で確立されていない第3条件の成立と、
を要し、
前記機械側通信機は、前記第3条件が成立しない場合、当該機械側通信機との間で既に無線通信が確立されている前記他の操作側通信機を識別するための識別情報を前記操作側通信機に無線送信し、
前記操作側通信機は、前記機械側通信機から受信した前記他の操作側通信機の識別情報を、自機が備える表示部に表示することを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う通信機の間の無線通信確立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有線ケーブルを利用せず、電波や光等を介して通信を行う無線通信が知られている。特許文献1は、無線通信を行う通信システムを開示する。
【0003】
特許文献1の通信システムにおいては、本体機器の電源がオンとなると、ペアリング情報が保持されていない場合、本体機器が備えるメインプロセッサは、本体機器の周辺に存在し且つペアリングモードで動作する相手機器を自動的に検索し、特定機器名を持つ相手機器を識別して特定機器名を持つ相手機器に対してペアリングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-23496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成では、本体機器の電源がオンとなると、ペアリング情報が保持されていない場合は、自動的にペアリング動作を開始する。従って、ユーザが特に意図していないのにペアリングが自動的に行われて無線通信が確立され、不測の結果を引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、無線通信を適切な状況下でだけ確立する無線通信確立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の無線通信確立方法が提供される。即ち、この無線通信確立方法は、操作側通信機と、機械側通信機と、の間の第2無線通信経路を確立する。前記操作側通信機は、自動運転モード及び手動運転モードを有する産業用機械に、運転モードの切換指示を、第1無線通信経路を介して送信する。前記機械側通信機は、前記産業用機械に接続される。この無線通信確立方法は、接続要求ステップと、第2無線通信経路確立ステップと、を含む。前記接続要求ステップでは、前記第2無線通信経路での無線通信を確立する要求である接続要求を、前記操作側通信機が前記機械側通信機に無線送信する。前記第2無線通信経路確立ステップでは、前記機械側通信機が、接続確立条件が満たされるか否かを判定し、当該接続確立条件が満たされた場合に、前記接続要求に応じて、前記操作側通信機との間で、前記第2無線通信経路での無線通信を確立する。前記第2無線通信経路確立ステップでは、前記接続確立要件が満たされない場合に、前記接続要求があった場合でも、前記操作側通信機との間で前記第2無線通信経路での無線通信を確立しない。前記接続確立条件が満たされるには、前記操作側通信機が前記第1無線通信経路を介して前記運転モードの切換指示を送信することにより当該運転モードを切り換えることが可能な前記産業用機械が前記手動運転モードである第1条件の成立と、前記第2無線通信経路での無線通信が既に他の操作側通信機との間で確立されていない第3条件の成立と、を要する。前記機械側通信機は、前記第3条件が成立しない場合、当該機械側通信機との間で既に無線通信が確立されている前記他の操作側通信機を識別するための識別情報を前記操作側通信機に無線送信する。前記操作側通信機は、前記機械側通信機から受信した前記他の操作側通信機の識別情報を、自機が備える表示部に表示する。
【0009】
これにより、産業用機械が手動運転モードで動作していない場合は、運転モードを手動運転モードに切り換えない限り、第2無線通信経路による通信が確立されない。従って、予期しない動作の発生を避けることができるので、オペレータの安心感を高めることができる。
【0010】
前記の無線通信確立方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記接続要求には、前記操作側通信機を識別するための操作側通信機識別情報が含まれる。前記接続確立条件が満たされるには、前記第1条件の成立及び前記第3条件の成立に加えて、前記接続要求に含まれる前記操作側通信機識別情報が通信許容相手として前記機械側通信機に予め登録されている第2条件の成立を要する。
【0011】
これにより、オペレータが意図しない操作側通信機と機械側通信機との間で無線通信が確立するのを回避することができる。
【0012】
前記の無線通信確立方法においては、前記接続確立条件が満たされるには、前記第1条件の成立に加えて、前記第2無線通信経路での無線通信が既に他の操作側通信機との間で確立されていない第3条件の成立を要することが好ましい。
【0013】
これにより、1つの産業用機械を複数の操作側通信機が同時に操作可能な不安定な状況を回避することができる。
【0014】
前記の無線通信確立方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記機械側通信機は、前記第3条件が成立しない場合、当該機械側通信機との間で既に無線通信が確立されている前記他の操作側通信機を識別するための識別情報を前記操作側通信機に無線送信する。前記操作側通信機は、前記機械側通信機から受信した前記他の操作側通信機の識別情報を、自機が備える表示部に表示する。
【0015】
これにより、オペレータが、第2無線通信経路を介して機械側通信機と通信している他の操作側通信機の情報を容易に把握することができる。
【0016】
前記の無線通信確立方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第2無線通信経路確立ステップにおいて、前記機械側通信機は、前記接続確立条件が満たされない場合に、その理由を示す情報を前記操作側通信機に無線送信する。前記操作側通信機は、前記機械側通信機から受信した理由を、当該操作側通信機が備える表示部に表示する。
【0017】
これにより、操作側通信機が機械側通信機との間で無線通信を確立できない場合に、オペレータが原因を容易に把握することができる。
【0018】
前記の無線通信確立方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記操作側通信機は、携帯端末と、リモートコントローラと、を備える。前記携帯端末は、第1操作部を有する。前記リモートコントローラは、有線ケーブルを介して前記携帯端末と接続され、第2操作部を有する。前記産業用機械には、前記操作側通信機が送信する前記運転モードの切換指示を受信する受信用通信機が接続される。前記第1無線通信経路は、前記携帯端末と前記受信用通信機との間に確立され、前記第1操作部の操作を示す第1操作情報が前記携帯端末から送信される経路である。前記第2無線通信経路は、前記リモートコントローラと前記機械側通信機との間に確立され、前記第2操作部の操作を示す第2操作情報が前記リモートコントローラから送信される経路である。
【0019】
これにより、異なる2つの通信経路を確保することができるので、非常時における非常停止信号等を即時に送信することが可能になる。
【0020】
前記の無線通信確立方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記携帯端末は、タブレット型の携帯端末である。前記第1操作部は、前記携帯端末が備える表示部と一体化したタッチパネルである。
【0021】
これにより、オペレータが様々な情報を確認し易く、操作も容易になる。
【0022】
前記の無線通信確立方法においては、前記第2操作部による前記第2操作情報は、前記第1操作情報を有効にするイネーブル信号を含むことが好ましい。
【0023】
このように、第1操作部の操作を有効にする第2操作部の操作を示すイネーブル信号を、当該第1操作情報とは別の通信経路で送信することで、無線通信による遠隔操作の信頼性を高めることができる。
【0024】
前記の無線通信確立方法においては、前記第2操作部による前記第2操作情報は、非常停止信号を含むことが好ましい。
【0025】
これにより、非常停止信号を第1操作情報とは別の通信経路で送信することができるので、非常時における信頼性を一層確保することができる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、以下の無線通信システムが提供される。即ち、この無線通信システムは、操作側通信機と、機械側通信機と、を備える。前記操作側通信機は、自動運転モード及び手動運転モードを有する産業用機械に、運転モードの切換指示を、第1無線通信経路を介して送信する。前記機械側通信機は、前記産業用機械に接続される。前記操作側通信機と前記機械側通信機との間に第2無線通信経路を確立する場合、前記操作側通信機は、前記第2無線通信経路での無線通信を確立する要求である接続要求を、前記機械側通信機に無線送信する。前記機械側通信機が、接続確立条件が満たされるか否かを判定し、当該接続確立条件が満たされた場合に、前記接続要求に応じて、前記操作側通信機との間で、前記第2無線通信経路での無線通信を確立する。前記機械側通信機が、接続確立条件が満たされるか否かを判定し、当該接続確立要件が満たされない場合には、前記接続要求があった場合でも、前記操作側通信機との間で前記第2無線通信経路での無線通信を確立しない。前記接続確立条件が満たされるには、前記操作側通信機が前記第1無線通信経路を介して前記運転モードの切換指示を送信することにより当該運転モードを切り換えることが可能な前記産業用機械が前記手動運転モードである第1条件の成立と、前記第2無線通信経路での無線通信が既に他の操作側通信機との間で確立されていない第3条件の成立と、を要する。前記機械側通信機は、前記第3条件が成立しない場合、当該機械側通信機との間で既に無線通信が確立されている前記他の操作側通信機を識別するための識別情報を前記操作側通信機に無線送信する。前記操作側通信機は、前記機械側通信機から受信した前記他の操作側通信機の識別情報を、自機が備える表示部に表示する。
【0027】
これにより、産業用機械が手動運転モードで動作していない場合は、運転モードを手動運転モードに切り換えない限り、第2無線通信経路による通信が確立されない。従って、予期しない動作の発生を避けることができるので、オペレータの安心感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信確立方法が行われる自動倉庫の構成を模式的に示す平面図。
図2】自動倉庫を構成する1つのスタッカクレーンの構成を説明する図。
図3】スタッカクレーンの制御システムの構成を示すブロック図。
図4】安全信号システムの構成を示すブロック図。
図5】第2受信部の構成を示す斜視図。
図6】固定型リモコンの構成を示す斜視図。
図7】タブレットが携帯型リモコンに取り付けられて構成される携帯操作ユニットを示す正面図。
図8】携帯操作ユニットの側面図。
図9】スタッカクレーンの運転モードを切り換えるためのタブレットの操作画面の例を説明する図。
図10】携帯型リモコンとの無線接続を確立する条件を判断する第2受信部の処理を説明するフローチャート。
図11】スタッカクレーンの手動運転モードでの操作のために、携帯型リモコンと第2受信部との間で接続が行われる処理を説明するシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信確立方法が行われる自動倉庫1の構成を模式的に示す平面図である。図2は、自動倉庫1を構成する1つのスタッカクレーン12の構成を説明する図である。図3は、スタッカクレーン12の制御システム10の構成を示すブロック図である。図4は、安全信号システム20の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示す自動倉庫1は、複数のスタッカラック11と、複数のスタッカクレーン(産業用機械)12と、を備える。スタッカラック11には、部品や材料等の荷物を収納可能な多数の収納空間が形成されている。スタッカクレーン12は、スタッカラック11の収納空間に荷物を自動で搬入/搬出する。自動倉庫1は、スタッカクレーン12を介して、荷物をスタッカラック11に自動的に格納したり、スタッカラック11に格納している荷物を自動的に搬出したりすることができる。
【0031】
図2に示すように、それぞれのスタッカクレーン12は、軌道に沿って走行する走行台車13と、上下に昇降可能な昇降台14と、走行台車13及び昇降台14の動作を制御するクレーンコントローラ(機械コントローラ)2と、を備える。
【0032】
スタッカクレーン12は、自動運転モードと、手動運転モードと、の中から運転モードを選択して動かすことができる。自動運転モードでは、スタッカクレーン12は、予めプログラムされた規則に従って自動的に動く。手動運転モードでは、スタッカクレーン12は、オペレータの動作指示に従って動く。
【0033】
図2及び図3に示すクレーンコントローラ2は、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力部等からなる公知の制御ユニットから構成される。ROMには、各種プログラムや自動運転に関するデータ(規則)等が記憶されている。CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。
【0034】
スタッカクレーン12の運転モードとして自動運転モードが選択されている場合、クレーンコントローラ2は、記憶された自動運転に関するデータ等に基づいて、走行台車13及び昇降台14の動作を制御する。
【0035】
スタッカクレーン12の運転モードとして手動運転モードが選択されている場合、クレーンコントローラ2は、第1受信部21を介して受信したオペレータからの動作指示、及び第2受信部22を介して受信した各スイッチの状態信号に従って、走行台車13及び昇降台14の動作を制御する。
【0036】
荷物との接触等を防止するために、自動倉庫1においてスタッカクレーン12の動作エリアを含むエリアが図2に示すように柵9等で区画され、当該エリアが立入禁止エリアとして定められている。オペレータがメンテナンス等を行うために動作エリアに入るのを検知するために、例えば、柵9に設けられたドアにセンサが設けられる。ただし、図2においてドア及びセンサは省略されている。スタッカクレーン12が自動運転モードで動いているときに、ドアが開いたことをセンサが検知すると、スタッカクレーン12の運転は自動的に停止する。
【0037】
自動倉庫1は、第1受信部(受信用通信機)21と、第2受信部(機械側通信機)22と、を備える。第1受信部21及び第2受信部22は、それぞれ通信装置として構成され、スタッカクレーン12におけるクレーンコントローラ2の近傍に設置されている。第1受信部21及び第2受信部22は、クレーンコントローラ2に電気的に接続されている。第1受信部21と第2受信部22は、1つのスタッカクレーン12に対して1つずつ設けられている。
【0038】
第1受信部21は、無線LANを介して、後述のタブレット5と無線通信する。無線LANは複数の無線通信チャネルを有しており、電波や赤外線等を用いてデータを伝送する。本実施形態では、無線LANとしてWi-Fi(Wi-Fiは登録商標)が用いられている。この無線通信により、第1受信部21は、オペレータがタブレット5を操作することによって当該タブレット5に入力された動作指示(第1操作情報)を受信する。動作指示の例としては、走行台車13を走行させる指示、及び、昇降台14を昇降させる指示等を挙げることができる。第1受信部21は、これらの指示を示す信号を、スタッカクレーン12の動作を制御するための制御信号としてクレーンコントローラ2に出力する。
【0039】
第2受信部22は、無線LANを介して後述の固定型リモコン4及び携帯型リモコン6と無線通信する。本実施形態では、無線LANとしてWi-Fi(Wi-Fiは登録商標)が用いられている。この無線通信により、第2受信部22は、各種の状態信号(第2操作情報)を受信する。状態信号の例としては、非常停止スイッチの状態信号、及び、タブレット5からの動作指示を有効にするためのイネーブルスイッチの状態信号等を挙げることができる。第2受信部22は、受信した状態信号を、スタッカクレーン12の動作を制御するための制御信号としてクレーンコントローラ2に出力する。第1受信部21及び第2受信部22は、互いに異なる周波数帯域又はチャネルを用いて無線通信をそれぞれ行う。
【0040】
次に、第2受信部22について、図5を参照して詳細に説明する。図5は、第2受信部22の構成を示す斜視図である。
【0041】
第2受信部22は、図5に示すように、第2受信部状態表示部23と、第2受信部電源コネクタ24と、第2受信部USBコネクタ25と、第2受信部保守スイッチ26と、確認ボタン27と、を備える。
【0042】
第2受信部状態表示部23は、電源ランプ、ステータスランプ、WLANランプからなる3つのランプを備える。それぞれのランプはLEDとして構成されている。第2受信部状態表示部23は、それぞれのLEDの点灯色及び点灯状態(点灯/点滅)の組合せによって、第2受信部22の様々な動作状態を表す。
【0043】
第2受信部電源コネクタ24には、電源ケーブル91が接続されている。この電源ケーブル91を介して、第2受信部22の動作に必要な電力が供給される。電源ケーブル91には複数の電線が含まれており、電源ケーブル91は、電力供給だけでなく、信号の入出力のための信号ケーブルとしても機能する。本実施形態の第2受信部22においては電源スイッチが省略されており、電源ケーブル91の第2受信部電源コネクタ24への取付け/取外しにより第2受信部22の電源のON/OFFを行う。ただし、第2受信部22に電源スイッチを設けても良い。
【0044】
第2受信部22には、第2受信部電源コネクタ24のほかに、アンテナケーブル93を電気的に接続するための図略のコネクタが設けられている。このアンテナケーブル93には、電波の送受信を行うための図略の無線アンテナが接続される。
【0045】
第2受信部USBコネクタ25は、USBケーブル8を接続するために用いられる。USBケーブル8を介して、第2受信部22は、後述のタブレット5に有線で接続することができる。USBケーブル8は、データ通信ケーブルとして機能する。オペレータは、第2受信部22に接続されたタブレット5を介して、当該第2受信部22の状態を確認することができる。また、オペレータは、タブレット5を操作することで、当該第2受信部22に各種の指示を行うことができる。
【0046】
第2受信部保守スイッチ26は、例えばスライドスイッチから構成される。この第2受信部保守スイッチ26をスライドさせることで、第2受信部22を2つの動作モード、即ち、通常モードと保守モードとの間で切り換えることができる。第2受信部22の通常モードとは、スタッカクレーン12を手動又は自動で動作させるための動作モードであり、保守モードとは、初期設定や各種設定を行うときの動作モードである。
【0047】
なお、第2受信部保守スイッチ26による動作モードの変更は、第2受信部22の電源をいったんOFFして再びONすることで有効になる。
【0048】
第2受信部22には、図4に示すように、第2受信部無線部28と、第2受信部安全部29と、が設けられている。この第2受信部無線部28と第2受信部安全部29は、例えばUARTで接続され、シリアル通信を行う。UARTは、Universal Asynchronous Receiver/Transmitterの略称である。
【0049】
第2受信部無線部28は、コンピュータ(具体的には、無線通信モジュール)として構成され、CPU、ROM、RAM等を備える。第2受信部無線部28は、固定型リモコン4及び携帯型リモコン6のそれぞれとの間で無線通信する。
【0050】
第2受信部安全部29は、コンピュータとして構成され、CPU、ROM、RAM等を備える。第2受信部安全部29は、機能安全部として用いられる。具体的には、第2受信部安全部29は、第2受信部無線部28が固定型リモコン4及び携帯型リモコン6と通信した結果に基づいて、スタッカクレーン12が動作しない安全状態とすべきか否かを判断し、必要に応じて安全状態要求信号をクレーンコントローラ2に出力する。
【0051】
本実施形態の自動倉庫1には、図3に示すように、オペレータがスタッカクレーン12に指示するための制御指示送信機3が設けられている。制御指示送信機3は、第1受信部21及び第2受信部22を経由して、例えば無線LANを介して、クレーンコントローラ2と無線通信することができる。制御指示送信機3をオペレータが操作すると、制御指示送信機3は、操作に応じた指示を、第1受信部21及び第2受信部22経由でクレーンコントローラ2に送信する。
【0052】
制御指示送信機3は、図6に示す固定型リモコン4と、図7及び図8に示す携帯操作ユニット(操作側通信機)30と、を含む。携帯操作ユニット30は、タブレット(携帯端末)5と、携帯型リモコン(リモートコントローラ)6と、により構成される。リモコンとは、リモートコントローラの略である。
【0053】
固定型リモコン4について、図6を参照して詳細に説明する。図6は、固定型リモコン4の構成を示す斜視図である。
【0054】
固定型リモコン4は、オペレータが自動倉庫1の作業エリアの外部で操作できるように、例えば柵9の外部に固定される。固定型リモコン4は、非常時において、スタッカクレーン12の動作を即座に停止させたい場合に操作される。
【0055】
固定型リモコン4は、図6に示すように、固定型リモコン状態表示部40と、固定側非常停止スイッチ41と、固定型リモコン電源コネクタ42と、固定型リモコンUSBコネクタ43と、固定型リモコン保守スイッチ44と、無線アンテナ45と、を備える。
【0056】
固定型リモコン状態表示部40は、図6に示すように、電源ランプ及びステータスランプからなる2つのランプを備える。それぞれのランプはLEDとして構成されている。固定型リモコン状態表示部40は、それぞれのLEDの点灯色及び点灯状態(点灯/点滅)の組合せによって、固定型リモコン4の様々な動作状態を表す。
【0057】
固定側非常停止スイッチ41は、押しボタンスイッチから構成される。固定側非常停止スイッチ41は、固定型リモコン4の正面に設けられている。固定側非常停止スイッチ41は、スタッカクレーン12を非常停止させたいときに押される。固定側非常停止スイッチ41は、いったん押されると、操作力が解除されても、押された状態を保つ。当該固定側非常停止スイッチ41を右に回す又は引っ張ることによって、押された状態が解除される。
【0058】
当該固定側非常停止スイッチ41が押された状態では、固定型リモコン4は、非常停止スイッチONを示す状態信号である非常停止信号を第2受信部22に送信する。固定側非常停止スイッチ41が押されていない状態では、固定型リモコン4は、非常停止スイッチOFFを示す状態信号である非停止信号を第2受信部22に送信する。
【0059】
固定型リモコン電源コネクタ42には、電源ケーブル92が接続される。この固定型リモコン電源コネクタ42に接続された電源ケーブル92を介して、固定型リモコン4の動作に必要な電力が供給される。本実施形態の固定型リモコン4においては、電源ケーブル92と外部電源との接続、又は電源ケーブル92と固定型リモコン電源コネクタ42との接続を切断することにより、固定型リモコン4を電源OFFさせる。なお、これに限定されず、固定型リモコン4に電源スイッチを設けることによって電源のON/OFFを切換可能に構成しても良い。
【0060】
固定型リモコンUSBコネクタ43は、USBケーブル8を接続するために用いられる。USBケーブル8を介して、固定型リモコン4は、タブレット5に有線で接続することができる。オペレータは、固定型リモコン4に接続されたタブレット5を介して、当該固定型リモコン4の状態を確認することができる。また、オペレータは、タブレット5を操作することで、当該固定型リモコン4に各種の指示を行うことができる。
【0061】
固定型リモコン保守スイッチ44は、例えばスライドスイッチから構成される。この固定型リモコン保守スイッチ44をスライドさせることで、固定型リモコン4を通常モードと保守モードとの間で切り換えることができる。固定型リモコン4の通常モードとは、スタッカクレーン12を非常停止させることが可能な動作モードであり、保守モードとは、初期設定や各種設定を行うときの動作モードである。固定型リモコン保守スイッチ44による動作モードの変更は、固定型リモコン4の電源をいったんOFFして再びONすることで有効になる。
【0062】
無線アンテナ45は棒状のアンテナとして構成されており、電波の送受信を行うことができる。
【0063】
固定型リモコン4には、図4に示すように、固定型リモコン無線部46と、固定型リモコン安全部47と、が設けられている。この固定型リモコン無線部46と固定型リモコン安全部47は、例えばUARTで接続され、シリアル通信を行う。
【0064】
固定型リモコン無線部46は、コンピュータ(具体的には、無線通信モジュール)として構成され、CPU、ROM、RAM等を備える。固定型リモコン無線部46は、第2受信部22が備える第2受信部無線部28との間で無線通信する。
【0065】
固定型リモコン安全部47は、コンピュータとして構成され、CPU、ROM、RAM等を備える。固定型リモコン安全部47は、機能安全部として用いられる。固定型リモコン安全部47は、固定側非常停止スイッチ41と電気的に接続される。固定型リモコン安全部47は、固定側非常停止スイッチ41の状態信号を固定型リモコン無線部46に出力する。
【0066】
携帯操作ユニット30を構成するタブレット5は、CPU、ROM、RAM、入出力部等から構成される公知のタブレット型のコンピュータである。タブレット5には、タッチパネルディスプレイ(第1操作部)51が設けられている。このタッチパネルディスプレイ51は、オペレータが指で触れて操作するタッチパネル(操作部)と、様々な情報を表示するディスプレイ(表示部)と、を一体化した構成となっている。
【0067】
タブレット5には図略の無線アンテナが内蔵されており、図3に示すように、第1受信部21と無線通信することができる。タブレット5は、オペレータの操作に応じて、スタッカクレーン12の運転モードの切換指示や、スタッカクレーン12の手動運転モードにおいて当該スタッカクレーン12を動かすための動作指示等の様々な指示を第1受信部21に無線送信する。
【0068】
タブレット5は、USBケーブル(例えば、図5に示すUSBケーブル8)を介して、固定型リモコン4、携帯型リモコン6、及び第2受信部22のそれぞれに有線で接続することができる。タブレット5は、接続されたそれぞれの上記通信機の様々な情報を表示することができるとともに、上記通信機を動作させる制御指示を通信機に出力することができる。即ち、タブレット5は、それぞれの通信機に接続することで、当該通信機に関するマンマシンインタフェースとして機能する。
【0069】
携帯型リモコン6は、スタッカクレーン12の手動運転モードにおいてスタッカクレーン12の動作を制御するために、タブレット5と組み合わせて用いられる。携帯型リモコン6には図略の無線アンテナが内蔵されており、図3等に示すように、第2受信部22と無線通信することができる。
【0070】
携帯型リモコン6は、図7及び図8に示すように、携帯型リモコン状態表示部60と、電源ボタン61と、リモコン電源コネクタ62と、リモコン保守スイッチ63と、USBケーブル(有線ケーブル)64と、イネーブルスイッチ65と、携帯側非常停止スイッチ66と、を備える。イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66は、第2操作部に相当する。
【0071】
携帯型リモコン状態表示部60は、図7に示すように、電源ランプ、充電ランプ及びステータスランプからなる3つのランプを備える。それぞれのランプはLEDとして構成されている。携帯型リモコン状態表示部60は、それぞれのLEDの点灯色及び点灯状態(点灯/点滅)の組合せによって、携帯型リモコン6の様々な動作状態を表す。
【0072】
電源ボタン61は押しボタンスイッチとして構成されている。電源ボタン61を押すことにより、携帯型リモコン6が備える図略の充電池からの電力供給の有無を切り換えることができる。これにより、携帯型リモコン6の電源のON/OFFが実現される。
【0073】
リモコン電源コネクタ62には、上述の充電池を充電するための図略のケーブルを接続することができる。
【0074】
リモコン保守スイッチ63は、例えばスライドスイッチから構成される。このリモコン保守スイッチ63をスライドさせることで、携帯型リモコン6を2つの動作モード、即ち、通常モードと保守モードとの間で切り換えることができる。携帯型リモコン6の通常モードとは、スタッカクレーン12が手動運転モードとなっているときに当該スタッカクレーン12を動作させるための動作モードである。保守モードとは、初期設定や各種設定を行うときの動作モードである。リモコン保守スイッチ63による動作モードの変更は、携帯型リモコン6の電源をいったんOFFして再びONすることで有効になる。
【0075】
USBケーブル64は、携帯型リモコン6のハウジングから引き出されている。USBケーブル64はデータ通信ケーブルとして構成されており、タブレット5に接続することができる。携帯型リモコン6が備えるホルダにタブレット5を装着し、このタブレット5にUSBケーブル64を接続することにより、タブレット5及び携帯型リモコン6を連携させて携帯操作ユニット30として機能させることができる。
【0076】
イネーブルスイッチ65は、例えば押しボタンスイッチから構成される。イネーブルスイッチ65は、オペレータが片手で携帯型リモコン6を掴みながら押すことができるように、携帯型リモコン6の側面に設けられている。イネーブルスイッチ65は、スタッカクレーン12が手動運転モードとなっているときに、スタッカクレーン12の動作を許可していることを示すために、ある程度の操作力で押される。イネーブルスイッチ65は、いったん押された後でも、操作力が解除されれば、押された状態から元に戻る。従って、オペレータに転倒等の不慮の状況が生じた場合に、スタッカクレーン12の動作を直ちに不許可とすることができる。
【0077】
このイネーブルスイッチ65が押されている状態では、携帯型リモコン6は、イネーブルスイッチONを示す状態信号であるイネーブル信号を第2受信部22に送信する。イネーブルスイッチ65が押されていない状態では、携帯型リモコン6は、イネーブルスイッチOFFを示す状態信号であるディセーブル信号を第2受信部22に送信する。
【0078】
本実施形態において、イネーブルスイッチ65は3位置型のスイッチとして構成されている。オペレータがイネーブルスイッチ65を強い力で押し込んだ場合は、イネーブルスイッチ65を押していない場合と同様に、携帯型リモコン6はディセーブル信号を第2受信部22に送信するように構成されている。これにより、非常時において、オペレータがイネーブルスイッチ65から指を離さず、逆に反射的に強く押してしまった場合でも、スタッカクレーン12の動作を適切に停止することができる。
【0079】
携帯側非常停止スイッチ66は、例えば押しボタンスイッチとして構成されている。携帯側非常停止スイッチ66は、携帯型リモコン6の正面に設けられている。携帯側非常停止スイッチ66は、スタッカクレーン12の手動運転モードにおいて、当該スタッカクレーン12を非常停止させたいときに押される。携帯側非常停止スイッチ66は、いったん押されると、操作力が解除されても、押された状態を保つ。当該携帯側非常停止スイッチ66を右に回す又は引っ張ることによって、押された状態が解除される。
【0080】
当該携帯側非常停止スイッチ66が押された状態では、携帯型リモコン6は、非常停止スイッチONを示す状態信号である非常停止信号を第2受信部22に送信する。携帯側非常停止スイッチ66が押されていない状態では、携帯型リモコン6は、非常停止スイッチOFFを示す状態信号である非停止信号を第2受信部22に送信する。
【0081】
携帯型リモコン6には、図4に示すように、携帯型リモコン無線部67と、携帯型リモコン安全部68と、が設けられている。携帯型リモコン無線部67と携帯型リモコン安全部68は、例えばUARTで接続され、シリアル通信を行う。
【0082】
携帯型リモコン無線部67は、コンピュータ(具体的には、無線通信モジュール)として構成され、CPU、ROM、RAM等を備える。携帯型リモコン無線部67は、第2受信部22が備える第2受信部無線部28との間で無線通信する。
【0083】
携帯型リモコン安全部68は、コンピュータとして構成され、CPU、ROM、RAM等を備える。携帯型リモコン安全部68は、機能安全部として用いられる。携帯型リモコン安全部68は、イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66と電気的に接続される。携帯型リモコン安全部68は、イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66の状態信号を携帯型リモコン無線部67に出力する。
【0084】
上記のように、本実施形態の自動倉庫1は、スタッカクレーン12を動作させる動作指示の送受信システム(第1受信部21及びタブレット5)とは別途に、スタッカクレーン12への動作指示を有効にするイネーブル信号、及び非常時における非常停止信号を送受信する安全信号システム(無線通信システム)20を備える。この安全信号システム20は、図4に示すように、第2受信部22と、固定型リモコン4と、携帯型リモコン6と、から構成される。
【0085】
無線通信経路に着目すると、スタッカクレーン12を手動運転モードで操作する場合、クレーンコントローラ2と、オペレータが操作する携帯操作ユニット30と、の間には、2つの無線通信経路を通じて信号がやり取りされることになる。第1無線通信経路は、第1受信部21とタブレット5との間に確立される。第2無線通信経路は、第2受信部22と携帯型リモコン6との間に確立される。
【0086】
このように、スタッカクレーン12の動作を制御する動作指示の信号と、イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66の状態を示す信号と、の無線通信経路が分離しているので、非常時において非常停止信号等を第2受信部22に遅延なく送信して、スタッカクレーン12を確実に即座に停止させることができる。
【0087】
本実施形態では、スタッカクレーン12の動作指示の信号システムに加えて、安全信号システム20が無線通信により構築されている。従って、信号ケーブルが機械に引っ掛かったりすることがなくなり、取回しに優れている。また、信号ケーブルの分だけ携帯操作ユニット30を軽くすることができ、オペレータの負担を軽減できる。
【0088】
ただし、信号ケーブルで通信機同士を物理的に繋ぐ必要がなく、接続相手を簡単に切換可能な無線通信の特性上、ある通信機に対してどの通信機が通信しているか否かをオペレータが直感的に理解することは困難である。
【0089】
次に、上記の安全信号システム20の運用を開始する前に必要となる通信許容相手の登録について説明する。
【0090】
通信許容相手の登録とは、固定型リモコン4、携帯型リモコン6及び第2受信部22において、自機との通信を許容できる相手の識別情報を、オペレータが確認できる状況で事前に登録することである。相手の識別情報を互いに登録することで、2つの通信機の間で、安全信号システム20を運用するための無線通信を行うことができるようになる。
【0091】
識別情報の形式は固定型リモコン4、携帯型リモコン6及び第2受信部22を一意に識別できる限り任意であるが、本実施形態では、MACアドレスを適宜加工した情報が識別情報として用いられている。以下、この識別情報をIDと呼ぶことがある。
【0092】
通信許容相手の登録作業は、例えば、携帯型リモコン6に第2受信部22を通信許容相手として登録する場合、以下のようにして行うことができる。(1)携帯型リモコン6に、当該携帯型リモコン6の通信許容相手として登録しようとする第2受信部22のIDを、適宜の方法によって入力する。(2)携帯型リモコン6は、入力されたIDを、当該第2受信部22に無線通信によって送信する。(3)第2受信部22は、受信したIDと自機のIDとを比較し、一致するか否かの判定結果を携帯型リモコン6に返答する。(4)携帯型リモコン6は、両IDが一致していた旨の判定結果を受信した場合は、オペレータの第2受信部22に対する所定の操作を条件として、第2受信部22のIDを、通信許容相手のIDとして登録する。
【0093】
第2受信部22と通信するために、それぞれの携帯型リモコン6は、タブレット5を装着した状態の携帯操作ユニット30として利用される。従って、第2受信部22との関係では、携帯型リモコン6は、それを備える携帯操作ユニット30と同一視することができる。携帯型リモコン6のIDを第2受信部22に通信許容相手として登録することは、対応する携帯操作ユニット30を通信許容相手として登録することと実質的に同義である。以下の説明でも、携帯型リモコン6が携帯操作ユニット30を実質的に意味する場合がある。
【0094】
上記の作業は、固定型リモコン4に第2受信部22を通信許容相手として登録する場合についても、実質的に同様に行うことができる。第2受信部22に携帯型リモコン6又は固定型リモコン4を通信許容相手として登録する場合も同様である。
【0095】
本実施形態において、携帯型リモコン6には、1つにつき複数の第2受信部22を、通信許容相手として登録することができる。この場合、オペレータは、1つの携帯型リモコン6を操作して、通信相手の第2受信部22を切り換えながら指示することができる。従って、携帯型リモコン6の汎用性を高めることができる。
【0096】
第2受信部22には、1つにつき複数の携帯型リモコン6及び固定型リモコン4を、通信許容相手として登録することができる。オペレータは、第2受信部22と無線接続を確立している携帯型リモコン6又は固定型リモコン4を操作することで、対応するスタッカクレーン12を停止させる等の指示を行うことができる。
【0097】
固定型リモコン4には、1つにつき1つだけの第2受信部22を、通信許容相手として登録することができる。固定型リモコン4は携帯型リモコン6と違って固定的に設置されることを考慮して、固定型リモコン4に関しては通信相手の第2受信部22を変更できないようにすることで、シンプルな操作を実現することができる。
【0098】
携帯型リモコン6又は第2受信部22に通信許容相手を複数登録するには、相手の通信機を変えながら、上述の登録作業を反復すれば良い。
【0099】
次に、無線接続の前提となるペアリング状態について説明する。
【0100】
携帯型リモコン6(携帯操作ユニット30)を携帯するオペレータがスタッカクレーン12を手動運転モードで動かしたい場合、オペレータは、図7のように携帯型リモコン6に装着された状態のタブレット5を操作して、当該スタッカクレーン12に対応する第2受信部22を接続相手として選ぶ。これに応じて、当該携帯型リモコン6と、選択された第2受信部22と、の間で通信が適宜行われて、携帯型リモコン6の接続相手となる第2受信部22(ひいては、操作対象となるスタッカクレーン12のクレーンコントローラ2)が確定する。
【0101】
1つの携帯型リモコン6の接続相手が1つの第2受信部22に確定した状態を、1対1のペアを形成した状態であると捉えて、ペアリング状態(相手確定状態)と呼ぶことができる。前述の通信許容相手は、ペアリング状態となる相手の候補(ペアリング候補)ということもできる。1つの第2受信部22に対し、2つ以上の携帯型リモコン6が同時にペアリング状態となることはできない。
【0102】
ペアリング状態となるには、携帯型リモコン6において、当該第2受信部22が通信許容相手として予め登録され、また、接続相手の第2受信部22において、当該携帯型リモコン6が通信許容相手として予め登録されていることが必要である。ペアリング状態となった後、携帯型リモコン6と第2受信部22との無線接続が直ちに確立される。
【0103】
ペアリング状態は、無線接続を確立する相手を制限するために用いられる概念である。ペアリング状態においては、当該第2受信部22を操作できる携帯型リモコン6は、当該第2受信部22を通信相手とする(言い換えれば、ペアを形成している)1つの携帯型リモコン6だけになる。従って、他の携帯型リモコン6は、当該第2受信部22に接続することはできない。これにより、同じスタッカクレーン12を複数人が同時に操作できてしまう不安定な状況を防止することができる。
【0104】
タブレット5及び携帯型リモコン6によるスタッカクレーン12の操作が完了すると、オペレータはタブレット5を操作して、携帯型リモコン6に無線接続の切断を指示する。これにより、携帯型リモコン6と第2受信部22との間で通信が適宜行われて無線接続が切断され、ほぼ同時にペアリング状態が解除される。
【0105】
このように、ペアリング状態の有無と、無線接続の確立の有無は、殆ど同じことである。以下では、断り書きがない限り、無線接続の確立に伴ってペアリング状態が開始され、無線接続の切断に伴ってペアリング状態が解除されるものとする。ただし、いったん確立された無線接続がオペレータの指示によらずに(例えば、電波状況が悪化したことにより)切断された場合は、ペアリング状態は解除されない。従って、携帯型リモコン6と第2受信部22との間で意図しない切断があった場合でも、当該携帯型リモコン6と第2受信部22の間で無線接続を再確立した後にオペレータの指示で無線接続を切断するまでは、他の携帯型リモコン6は第2受信部22に接続できない。これにより、第2受信部22との間で無線接続を確立する携帯型リモコン6が不意に切り換わることを確実に防止できる。
【0106】
次に、自動運転モードと手動運転モードにおける固定型リモコン4及び携帯型リモコン6の動作について説明する。
【0107】
固定型リモコン4は、スタッカクレーン12の運転モードが自動運転モードであるか手動運転モードであるかにかかわらず、常に、第2受信部22と間で無線通信を確立した状態となっている。
【0108】
第2受信部22に通信許容相手として登録された1つ又は複数の固定型リモコン4は、全て第2受信部22との間で無線接続を確立し、固定側非常停止スイッチ41の状態を常に第2受信部22に送信可能となっている。逆に言えば、通信許容相手として登録された固定型リモコン4の全てが第2受信部22との間で無線接続を確立できなければ、クレーンコントローラ2はスタッカクレーン12を、自動運転モードでも手動運転モードでも動作させない。
【0109】
一方、携帯型リモコン6は、スタッカクレーン12の運転モードが手動運転モードである場合に限り、第2受信部22と無線接続を確立することができる。従って、オペレータが携帯操作ユニット30を操作してスタッカクレーン12を手動で動かすことができるのは、スタッカクレーン12が手動運転モードである場合に限られる。
【0110】
手動運転モードにおいて、携帯型リモコン6は、必要なときだけ、イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66の状態を送信するために第2受信部22との間で無線接続を確立することができる。即ち、手動運転モードでは、携帯型リモコン6は、第2受信部22に通信許容相手として登録されていれば、オペレータが指示したタイミングで、第2受信部22との間で無線接続を確立し、また、当該無線接続を切断することができる。
【0111】
固定型リモコン4は、他の固定型リモコン4が第2受信部22との間で無線接続を確立している状態であっても、当該第2受信部22との間で無線接続を確立することができる。携帯型リモコン6は、1つ又は複数の固定型リモコン4が第2受信部22との間で無線接続を確立している状態であっても、当該第2受信部22との間で無線接続を確立することができる。
【0112】
ただし、ある携帯型リモコン6が第2受信部22との間で無線接続を確立しているときは、他の携帯型リモコン6は当該第2受信部22と無線接続を確立することができない。従って、同時に複数の携帯操作ユニット30でスタッカクレーン12を動かすことはできない。
【0113】
次に、タブレット5及び携帯型リモコン6によってスタッカクレーン12を手動運転モードで操作するために必要な条件について、整理して説明する。
【0114】
第1に、タブレット5及び携帯型リモコン6によってスタッカクレーン12を手動で動かすためには、スタッカクレーン12が事前に手動運転モードとなっている必要がある。言い換えれば、スタッカクレーン12が自動運転モードとなっているときは、タブレット5及び携帯型リモコン6によってスタッカクレーン12を手動で動かすことができない。
【0115】
スタッカクレーン12の運転モードを切り換える操作は、例えば以下のように行うことができる。オペレータは、タブレット5を適宜操作して運転モード切換を選択することにより、図9に示すように、運転モード切換ダイアログを表示させる。このとき、タブレット5は、携帯型リモコン6に装着された状態であっても良いし、そうでなくても良い。
【0116】
運転モード切換ダイアログには、トグルスイッチを模したウィジェットが表示される。自動運転モードから手動運転モードに切り換えたい場合、オペレータは、このトグルスイッチを「自動」から「手動」にスライドするようにスワイプした後、「OK」ボタンをタップする。この指示に応じて、タブレット5は、スタッカクレーン12の運転モードを手動運転モードに切り換えるモード切換指示を、第1無線通信経路を介して第1受信部21に送信する。第1受信部21は、モード切換指示に従って、スタッカクレーン12の運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える。
【0117】
第2に、タブレット5及び携帯型リモコン6によってスタッカクレーン12を手動で動かすためには、第2受信部22において、当該携帯型リモコン6が通信許容相手として予め登録されている必要がある。また、携帯型リモコン6において、第2受信部22が通信許容相手として予め登録されている必要がある。この登録作業は、上述したとおりである。
【0118】
第3に、タブレット5及び携帯型リモコン6によってスタッカクレーン12を手動で動かすためには、第2受信部22が、当該携帯型リモコン6と違う携帯型リモコン6との間で無線通信を確立していない(言い換えれば、他の携帯型リモコン6との間でペアリング状態となっていない)必要がある。
【0119】
続いて、携帯型リモコン6が接続要求を送信してから、携帯型リモコン6によるスタッカクレーン12の制御ができるようになるまでの第2受信部22の処理について、図10を参照して詳細に説明する。
【0120】
図10に示すように、第2受信部22は、携帯型リモコン6の接続要求の受信を待機する(ステップS101)。
【0121】
接続を希望するオペレータは、携帯型リモコン6に装着されたタブレット5を操作して、携帯型リモコン6に第2受信部22への接続を指示する。接続が指示された携帯型リモコン6は、自機のIDを含む接続要求を第2受信部22に無線送信する(接続要求ステップ)。携帯型リモコン6から第2受信部22に送信される当該携帯型リモコン6のIDは、操作側通信機識別情報に相当する。
【0122】
ステップS101で携帯型リモコン6から接続要求を受信すると、第2受信部22は、所定の接続確立要件が満たされているかを判断する。本実施形態において、接続確立要件は、第1条件、第2条件及び第3条件が何れも成立することである。それぞれの条件の詳細は後述する。
【0123】
最初に、第2受信部22は、スタッカクレーン12のクレーンコントローラ2に問い合わせることにより、スタッカクレーン12が手動運転モードであるか否かを判定する(ステップS102)。スタッカクレーン12が手動運転モードであるか否かは、第1条件に該当する。
【0124】
ステップS102の判定の結果、スタッカクレーン12が手動運転モードでなかった場合、第2受信部22は、接続できない旨を示す情報を、接続要求への応答として携帯型リモコン6に送信する(ステップS103)。第2受信部22は、携帯型リモコン6に送信する情報に、接続ができない理由(具体的には、スタッカクレーン12が自動運転モードであること)を示す情報を含める。携帯型リモコン6は、タブレット5の画面に、スタッカクレーン12が自動運転モードであるために第2受信部22に接続できない旨を表示する。従って、オペレータは、第2受信部22に接続するにはスタッカクレーン12の運転モードを手動運転モードに切り換えなければならないことを知ることができる。
【0125】
ステップS102の判定の結果、スタッカクレーン12が手動運転モードであった場合、第2受信部22は、受信した接続要求に含まれる携帯型リモコン6のIDが、事前に登録された通信許容相手に含まれているか否かを判定する(ステップS104)。携帯型リモコン6のIDが第2受信部22において通信許容相手として事前に登録されているか否かは、第2条件に該当する。
【0126】
ステップS104の判定の結果、携帯型リモコン6のIDが第2受信部22において通信許容相手として登録されていなかった場合、第2受信部22は、接続できない旨を示す情報を、接続要求への応答として携帯型リモコン6に送信する(ステップS105)。第2受信部22は、携帯型リモコン6に送信する情報に、接続ができない理由(具体的には、携帯型リモコン6が第2受信部22において通信許容相手として登録されていないこと)を示す情報を含める。携帯型リモコン6は、タブレット5の画面に、携帯型リモコン6が第2受信部22の通信許容相手として登録されていないために第2受信部22に接続できない旨を表示する。従って、オペレータは、第2受信部22に接続するには、第2受信部22に携帯型リモコン6を通信許容相手として登録しなければならないことを知ることができる。
【0127】
ステップS104の判定の結果、携帯型リモコン6のIDが第2受信部22において通信許容相手として登録されていた場合、第2受信部22は、現在、今回の接続要求に係る携帯型リモコン6とは異なる携帯型リモコン6と既に接続しているか否かを判定する(ステップS106)。他の携帯型リモコン6と既に接続しているか否かは、第3条件に該当する。
【0128】
ステップS106の判定の結果、第2受信部22が他の携帯型リモコン6と既に接続していた場合、第2受信部22は、接続できない旨を示す情報を、接続要求への応答として携帯型リモコン6に送信する。第2受信部22は、携帯型リモコン6に送信する情報に、接続ができない理由(具体的には、既に他の携帯型リモコン6が第2受信部22に接続していること)を示す情報と、既に当該第2受信部22に接続している他の携帯型リモコン6のIDの情報と、を含める。携帯型リモコン6は、タブレット5の画面に、他の携帯型リモコン6が第2受信部22に既に接続しているために第2受信部22に接続できない旨と、既に接続済の携帯型リモコン6のIDと、を表示する。従って、オペレータは、第2受信部22に接続するには、他の携帯型リモコン6において第2受信部22との接続を切断する必要があることを知ることができる。
【0129】
ステップS106の判定の結果、第2受信部22が他の携帯型リモコン6と接続していなかった場合、第2受信部22は、携帯型リモコン6との無線通信するための接続処理を行う(ステップS108)。接続処理が完了した後、携帯型リモコン6は、携帯型リモコン状態表示部60が備えるステータスランプを緑に点灯させる。更に、携帯型リモコン6は、タブレット5の画面に、第2受信部22に接続している旨を表示する。従って、オペレータは、携帯型リモコン6のステータスランプ、及び、タブレット5の画面を確認することで、タブレット5と携帯型リモコン6の操作によりスタッカクレーン12を手動で動く状態になっていることを知ることができる。
【0130】
その後、オペレータは、タブレット5及び携帯型リモコン6を操作する。第1受信部21は、タブレット5の操作に基づいて信号を受信して、クレーンコントローラ2を介してスタッカクレーン12を制御する。これと並行して、第2受信部22は、携帯型リモコン6の操作に基づいて信号を受信して、クレーンコントローラ2を介してスタッカクレーン12を制御する(ステップS109)。具体的には、第2受信部22は、接続済の携帯型リモコン6に、所定の時間間隔で状態確認信号を送信する。状態確認信号を受信した携帯型リモコン6は、イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66の状態を取得し、この状態に応じて、上述のイネーブル信号/ディセーブル信号、及び、非常停止信号/非停止信号を、状態確認信号の応答として第2受信部22に送信する。第2受信部22は、携帯型リモコン6から受信した応答に基づいてクレーンコントローラ2に指示し、スタッカクレーン12の非常停止制御等を行う。
【0131】
次に、携帯型リモコン6と第2受信部22との間で行われる具体的な通信について、図11を参照して詳細に説明する。
【0132】
図11では、あるスタッカクレーン12を手動運転モードで制御するために、3つの携帯型リモコン6A,6B,6C及び1つの第2受信部22Aが備えられる場合の各通信機の動作が示されている。ただし、スタッカクレーン12は当初は自動運転モードで動作している。
【0133】
3つの携帯型リモコン6A,6B,6Cにおいては、何れも、第2受信部22Aが通信許容相手として予め登録されている。第2受信部22Aにおいては、2つの携帯型リモコン6B,6Cが通信許容相手として予め登録されているが、残りの携帯型リモコン6Aについては通信許容相手として登録されていない。
【0134】
携帯型リモコン6A,6B,6Cには、それぞれタブレット5が図7に示すように装着され、USBケーブル64によって電気的に接続されている。従って、3つの携帯操作ユニット30が構成されている。オペレータが携帯型リモコン6A,6B,6Cに各種の指示を行う場合、当該指示はタブレット5を操作することにより行われる。
【0135】
図11の例では、最初に、オペレータが携帯型リモコン6Cに対して第2受信部22Aへの接続を指示したとする。これに応じて、携帯型リモコン6Cは、第2受信部22Aに接続要求を送信する(シーケンス番号1)。携帯型リモコン6Cは、第2受信部22Aに送信する接続要求に、携帯型リモコン6CのIDの情報を含める。
【0136】
第2受信部22Aは、接続確立条件を満たすか否かを判定するために、クレーンコントローラ2と通信して、現在の運転モードを問い合わせる(ステップS102)。このとき、スタッカクレーン12は自動運転モードである。従って、第2受信部22Aは、自動運転モードであるために接続できない旨を、接続要求への応答として携帯型リモコン6Cに送信する(シーケンス番号2、ステップS103)。この応答を受信した携帯型リモコン6Cは、スタッカクレーン12が自動運転モードであるために第2受信部22Aに接続できなかった旨を、携帯型リモコン6Cに装着されたタブレット5の画面に表示する。
【0137】
その後、オペレータは、適宜のタブレット5を操作して、スタッカクレーン12の運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り替える指示を行う。運転モードを切り換える指示を行うタブレット5は、携帯型リモコン6A,6B,6Cの何れかに装着されているタブレット5であっても良いし、他のタブレット5であっても良い。図11のシーケンス図では省略されているが、これに応じてタブレット5から第1受信部21にモード切換信号が送信される。クレーンコントローラ2は、モード切換信号を受信した第1受信部21の指示により、スタッカクレーン12の動作モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える。
【0138】
その後、別のオペレータが携帯型リモコン6Aに対して第2受信部22Aへの接続を指示したとする。これに応じて、携帯型リモコン6Aは、第2受信部22Aに接続要求を送信する(シーケンス番号3)。携帯型リモコン6Aは、第2受信部22Aに送信する接続要求に、携帯型リモコン6AのIDの情報を含める。
【0139】
第2受信部22Aは、接続確立条件を満たすか否かを判定するが、このとき、スタッカクレーン12は手動運転モードである。そこで、次に第2受信部22Aは、接続要求に含まれている携帯型リモコン6AのIDが、通信許容相手として事前に登録されているか否かを判定する(ステップS104)。第2受信部22Aにおいて、携帯型リモコン6AのIDは、通信許容相手として登録されていない。従って、第2受信部22Aは、通信許容相手でないために接続できない旨を、接続要求への応答として携帯型リモコン6Aに送信する(シーケンス番号4、ステップS105)。この応答を受信した携帯型リモコン6Aは、通信許容相手として第2受信部22Aに登録されていないために第2受信部22Aに接続できなかった旨を、携帯型リモコン6Aに装着されたタブレット5の画面に表示する。
【0140】
次に、オペレータが携帯型リモコン6Cに対して第2受信部22Aへの接続を再度指示したとする。これに応じて、携帯型リモコン6Cは、第2受信部22Aに接続要求を送信する(シーケンス番号5)。携帯型リモコン6Cは、第2受信部22Aに送信する接続要求に、携帯型リモコン6CのIDの情報を含める。
【0141】
第2受信部22Aは、接続確立条件を満たすか否かを判定する。このとき、スタッカクレーン12は手動運転モードであり、また、接続要求に含まれている携帯型リモコン6CのIDは、通信許容相手として事前に登録されている。そこで、次に第2受信部22Aは、他の携帯型リモコン6Bと既に接続を開始していないかを判定する(ステップS106)。このとき、第2受信部22Aは、他の携帯型リモコン6Bとは接続していない。接続確立条件が満たされたので、第2受信部22Aは、携帯型リモコン6Cとの接続処理を行い(ステップS108)、接続に成功した旨の応答を携帯型リモコン6Cに送信する(シーケンス番号6)。これにより、無線接続が確立される。
【0142】
その後、携帯型リモコン6Cは、操作内容(言い換えれば、イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66)の状態を第2受信部22Aに送信する(シーケンス番号7)。第2受信部22Aは、操作内容を受信すると(ステップS109)、これに対して応答を送信するとともに、受信した操作内容に応じてスタッカクレーン12を制御する(シーケンス番号8)。
【0143】
図11では示していないが、シーケンス番号7及びシーケンス番号8の通信と並行して、オペレータがタブレット5を操作することにより、スタッカクレーン12を動かす指示がタブレット5から第1受信部21に送信される。第1受信部21は、当該操作に応じた信号をクレーンコントローラ2に出力する。これにより、タブレット5によるスタッカクレーン12の手動遠隔操作が実現される。
【0144】
携帯型リモコン6Cと第2受信部22Aとが接続している状態で、別のオペレータが携帯型リモコン6Bに対して第2受信部22Aへの接続を指示したとする。これに応じて、携帯型リモコン6Bは、第2受信部22Aに接続要求を送信する(シーケンス番号9)。
【0145】
第2受信部22Aは、接続確立条件を満たすか否かを判定する。このとき、スタッカクレーン12は手動運転モードであり、また、接続要求に含まれている携帯型リモコン6BのIDは、通信許容相手として事前に登録されている。しかしながら、ステップS106の判断において、第2受信部22Aは、既に携帯型リモコン6Cと接続済である。従って、第2受信部22Aは、既に別の携帯型リモコン6Cと接続済であるために接続できない旨を、接続要求への応答として携帯型リモコン6Bに送信する(シーケンス番号10、ステップS107)。このとき、第2受信部22Aは、既に当該第2受信部22Aと接続している携帯型リモコン6CのIDを、携帯型リモコン6Bに送信する応答に含める。この応答を受信した携帯型リモコン6Bは、既に携帯型リモコン6Cと第2受信部22Aとが無線通信を確立しているために第2受信部22Aに接続できなかった旨を、携帯型リモコン6Bに装着されたタブレット5の画面に表示する。
【0146】
その後、オペレータが、携帯型リモコン6Cに、第2受信部22Aとの無線接続を切断する指示を行ったとする。これに応じて、携帯型リモコン6Cは、第2受信部22Aに切断要求を送信する(シーケンス番号11)。切断要求を受信した第2受信部22Aは、無線接続を切断する処理を行い、切断を完了した旨の応答を携帯型リモコン6Cに送信する(シーケンス番号12)。これにより、無線接続が切断される。
【0147】
その後は、オペレータが携帯型リモコン6Bに対して第2受信部22Aへの接続を指示した場合に、携帯型リモコン6Cと第2受信部22Aとの接続が既に終了しているので、接続に成功することになる(シーケンス番号13及び14)。
【0148】
以上の処理により、携帯型リモコン6とタブレット5の組合せによるスタッカクレーン12の手動操作が、適切な状況下においてだけ行われることを確保することができる。また、手動操作ができない場合は、その理由がタブレット5に表示されるので、オペレータは手動操作のために必要な作業を容易に理解することができる。
【0149】
必要なメンテナンス作業が完了した後、オペレータはタブレット5を操作して、スタッカクレーン12を手動運転モードから自動運転モードに切り換える。
【0150】
ただし、自動運転モードを開始できる条件として、第2受信部22Aが、通信許容相手として登録された固定型リモコン4の全てと無線接続を確立していることが必要である。これにより、自動運転モードにおいて、固定型リモコン4が備える固定側非常停止スイッチ41の操作が有効な状態を確保することができる。
【0151】
また、自動運転モードを開始できる条件としては、更に、第2受信部22Aに対して、何れの携帯型リモコン6も無線接続していないことが必要である。これにより、タブレット5による手動操作ができない状態としてから自動運転モードを開始することができる。
【0152】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0153】
第2受信部22が、各携帯型リモコン6に対して、スタッカクレーン12の運転モードが自動運転モードであるか手動運転モードであるかの情報を示す信号を、所定の時間間隔で反復して送信しても良い。この場合、携帯型リモコン6は、第2受信部22から受信した情報に基づいて、スタッカクレーン12が自動運転モードであるときは、第2受信部22に対する接続要求自体を行わないように構成することができる。
【0154】
第2受信部22は、通信許容相手として登録されている携帯型リモコン6だけに対して、接続を受け付ける適宜の信号を、所定の時間間隔で反復して送信するように構成することができる。この場合、携帯型リモコン6は、第2受信部22から当該信号を受信しない場合は、第2受信部22に対する接続要求自体を行わないように構成することができる。
【0155】
第2受信部22は、ある携帯型リモコン6との間で無線接続を確立したときは、当該携帯型リモコン6と無線接続を確立している旨を示す適宜の信号を、他の携帯型リモコン6に所定の時間間隔で反復して送信するように構成することができる。この場合、他の携帯型リモコン6と接続していることを当該信号によって認識した携帯型リモコン6は、第2受信部22に対する接続要求自体を行わないように構成することができる。
【0156】
上記のように携帯型リモコン6側で接続確立要件を判断し、接続確立要件を満たさない場合には携帯型リモコン6側から接続要求を送信しないように構成した場合でも、誤動作等により携帯型リモコン6から接続要求が第2受信部22に送信されることも考えられる。オペレータが意図していない無線接続の確立を確実に防止するためには、第2受信部22側で改めて図10の処理を行い、接続確立要件を判断することが好ましい。
【0157】
接続確立条件を構成する第1条件、第2条件、及び第3条件のうち、一部が省略されても良い。
【0158】
接続確立条件には、他の条件が含まれても良い。例えば、接続確立条件が満たされるには、携帯型リモコン6が備える携帯側非常停止スイッチ66が押された状態になっていない第4条件の成立を要するように構成しても良い。
【0159】
携帯型リモコン6において、イネーブルスイッチ65及び携帯側非常停止スイッチ66のうち一方が省略されても良い。
【0160】
固定型リモコン4の代わりに、有線ケーブルを介してクレーンコントローラ2に接続された非常停止スイッチを設けても良い。
【0161】
スタッカクレーン12の運転モードの切換は、携帯操作ユニット30のタブレット5により行われることに限定されない。例えば、スタッカクレーン12が備える図略の操作盤のスイッチを操作することにより、自動運転モード及び手動運転モードの間でモードを切り換えても良い。
【0162】
第1無線通信経路は、スタッカクレーン12の手動操作のための信号以外の信号を第1受信部21に送信するために用いられても良い。第2無線通信経路は、イネーブル信号及び非常停止信号等以外の信号を第2受信部22に送信するために用いられても良い。
【0163】
安全信号システム20は、スタッカクレーン12以外の産業用機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0164】
5 タブレット(携帯端末)
6 携帯型リモコン(リモートコントローラ)
12 スタッカクレーン(産業用機械)
21 第1受信部(受信用通信機)
22 第2受信部(機械側通信機)
30 携帯操作ユニット(操作側通信機)
64 USBケーブル(有線ケーブル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11