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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】カップ取付装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B24B9/14 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018184529
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049632
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝哲
(72)【発明者】
【氏名】武市 教児
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-248746(JP,A)
【文献】特開平11-216650(JP,A)
【文献】米国特許第06056633(US,A)
【文献】特開2008-246634(JP,A)
【文献】特開昭61-284372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-57/04
G02C1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズに加工治具であるカップを取り付けるカップ取付装置において、
光を透過するとともに、前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けるために前記眼鏡レンズを位置合わせする基準となるアライメントマークを表示可能な透過型のディスプレイと、
操作者の視線方向の変化による前記眼鏡レンズのレンズマークと前記アライメントマークとが一致する位置のずれを抑制するように、前記ディスプレイと前記眼鏡レンズとの少なくともいずれかを移動させることで、前記ディスプレイと、前記レンズマークと、の光軸方向における距離をくする調整手段と、
前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けるカップ取付手段と、
を備え、
前記調整手段により前記光軸方向における距離が短くされた状態で、前記操作者が前記ディスプレイ越しに前記レンズマークを観察し、前記レンズマークと前記アライメントマークとを位置合わせすることで、前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けることを特徴とするカップ取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズにカップを取り付けるカップ取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズの周縁を加工する際に用いる加工治具であるカップを、未加工の眼鏡レンズに対して取り付けるカップ取付装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-246634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発明者らは、従来のカップ取付装置において、光を透過することが可能であり、かつ、アライメントマークを表示することが可能な透過型のディスプレイを用いることを検討した。しかし、この場合には、操作者の視線方向が変化すると、透過型のディスプレイに表示するアライメントマークと、眼鏡レンズのレンズマーク(例えば、眼鏡レンズに付された印点、眼鏡レンズの小玉、眼鏡レンズに印刷されたプリントマーク、等)と、が一致する位置が変化しやすいことがわかった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、操作者の視線方向の変化にかかわらず、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができるカップ取付装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 本開示の第1態様に係るカップ取付装置は、眼鏡レンズに加工治具であるカップを取り付けるカップ取付装置において、光を透過するとともに、前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けるために前記眼鏡レンズを位置合わせする基準となるアライメントマークを表示可能な透過型のディスプレイと、操作者の視線方向の変化による前記眼鏡レンズのレンズマークと前記アライメントマークとが一致する位置のずれを抑制するように、前記ディスプレイと前記眼鏡レンズとの少なくともいずれかを移動させることで、前記ディスプレイと、前記レンズマークと、の光軸方向における距離をくする調整手段と、前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けるカップ取付手段と、を備え、前記調整手段により前記光軸方向における距離が短くされた状態で、前記操作者が前記ディスプレイ越しに前記レンズマークを観察し、前記レンズマークと前記アライメントマークとを位置合わせすることで、前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】アライメント機構を使用位置に配置した状態におけるカップ取付装置の外観図である。
図2】カップ取付機構を使用位置に配置した状態におけるカップ取付装置の外観図である。
図3】印点像のずれを説明する図である。
図4】単焦点レンズの光学中心位置に対するアライメントを説明する図である。
図5】玉型の幾何学中心位置に対するアライメントを説明する図である。
図6】単焦点レンズとは異なるレンズに対する軸打ち画面の一例である。
図7】玉型マークが表示された軸打ち画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示の実施形態に係るカップ取付装置の概要について説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0010】
本実施形態におけるカップ取付装置(例えば、カップ取付装置1)は、眼鏡レンズに加工冶具であるカップを取り付ける。
【0011】
<表示手段>
例えば、本実施形態におけるカップ取付装置は、表示手段(例えば、ディスプレイ13)を備えてもよい。表示手段は、光を透過する透過型の表示手段である。また、表示手段は、眼鏡レンズにカップを取り付けるために眼鏡レンズを位置合わせする基準となるアライメントマークを表示可能な表示手段である。例えば、カップ取付装置が、光を透過するとともに、眼鏡レンズにカップを取り付けるために眼鏡レンズを位置合わせする基準となるアライメントマークを表示可能な透過型の表示手段であることによって、操作者は、表示手段越しの眼鏡レンズと、表示手段に表示されたアライメントマークと、を容易に観察して位置合わせし、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0012】
表示手段は、自然光を透過してもよいし、カップ取付装置が光源を備える場合には、光源から照射された測定光束を透過してもよい。表示手段が透過型であることによって、表示手段の裏側に配置された部材(例えば、眼鏡レンズ)を、表示手段の表側から観察することができる。すなわち、操作者は、表示手段越しに、表示手段の裏側に配置された部材を観察することができる。
【0013】
表示手段が表示するアライメントマークは、眼鏡レンズのレンズマーク(例えば、眼鏡レンズに付された印点、眼鏡レンズの小玉、眼鏡レンズに印刷されたプリントマーク、等)を位置合わせするためのマークであってもよい。例えば、表示手段が透過型であり、表示手段にアライメントマークが表示されることによって、操作者は、表示手段越しに眼鏡レンズを観察し、眼鏡レンズとアライメントマークとを位置合わせすることができる。また、操作者は、表示手段越しに眼鏡レンズのレンズマークを観察し、レンズマークとアライメントマークとを位置合わせすることができる。
【0014】
表示手段は、眼鏡レンズの玉型を表す玉型マークを表示可能な表示手段であってもよい。例えば、表示手段が透過型であり、表示手段に玉型マークが表示されることによって、表示手段越しに眼鏡レンズを観察し、眼鏡レンズと玉型マークとの位置を確認することができる。
【0015】
表示手段が表示する玉型マークは、眼鏡レンズの左右の玉型を表す玉型マークであってもよい。玉型マークとしては、玉型マークの左右を識別させるための識別マーク(例えば、L表示、R表示、等)が表示されてもよい。なお、この場合には、識別マークに限定されず、玉型マークの左右を識別させることが可能であればよい。一例として、玉型マークを左右で異なる表示色としてもよい。また、玉型マークとしては、眼鏡レンズに取り付けられるカップの径を表すカップマークが表示されてもよい。これによって、玉型にカップがおさまるか否かを判断できるようにしてもよい。
【0016】
例えば、本実施形態において、このような表示手段としては、透過型のディスプレイが用いられてもよい。透過型のディスプレイにアライメントマークを表示することによって、眼鏡レンズをディスプレイ越しに直接確認し、眼鏡レンズとアライメントマークとの位置関係を把握しやすくなる。また、透過型のディスプレイに玉型マークを表示することによって、眼鏡レンズの玉切れをカップの取り付けよりも早い段階で確認することができる。
【0017】
また、例えば、本実施形態において、このような表示手段としては、透過型のスクリーンが用いられてもよい。透過型のスクリーンに眼鏡レンズの像(あるいは、眼鏡レンズのレンズマークの像)とアライメントマークを投影することで表示し、眼鏡レンズとアライメントマークとを位置合わせするようにしてもよい。もちろん、透過型のスクリーンに眼鏡レンズの像(あるいは、眼鏡レンズのレンズマークの像)と玉型マークを投影することで表示し、眼鏡レンズの玉切れを確認するようにしてもよい。
【0018】
<表示制御手段>
例えば、本実施形態におけるカップ取付装置は、表示制御手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。表示制御手段は、表示手段にアライメントマークを表示させる。表示制御手段は、表示手段に表示するアライメントマークの種類を変更してもよい。アライメントマークの種類は、眼鏡レンズの種類に基づいて自動的に設定されてもよい。また、アライメントマークの種類は、操作者により指定されてもよい。この場合、表示制御手段は、操作部から入力される操作信号に基づいて、アライメントマークを変更してもよい。
【0019】
また、表示制御手段は、表示手段における所定の位置にアライメントマークを表示してもよい。所定の位置は、予め設定された位置でもよい。一例として、表示制御手段は、表示手段の中央にアライメントマークを表示してもよい。また、所定の位置は、眼鏡レンズの加工条件、眼鏡レンズのレイアウト、等のデータに基づいて設定される位置であってもよい。もちろん、所定の位置は、操作者により指定される任意の位置であってもよい。
【0020】
例えば、カップ取付装置は、取得手段(例えば、制御部60)を備えていてもよい。取得手段は、アライメントマークの表示位置を移動させるための移動信号を取得する。取得手段は、操作部から入力された操作信号を受信することで、移動信号を取得してもよい。また、取得手段は、眼鏡レンズの加工条件、眼鏡レンズのレイアウト、等のデータに基づく移動信号を取得してもよい。このような場合、表示制御手段は、移動信号に基づいて、表示手段に表示するアライメントマークの表示位置を移動させてもよい。これによって、眼鏡レンズ(眼鏡レンズのレンズマーク)とアライメントマークをより精度よく位置合わせ、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0021】
なお、本実施例において、表示制御手段は、表示手段に玉型マークを表示させてもよい。例えば、表示制御手段は、眼鏡レンズ(眼鏡レンズのレンズマーク)とアライメントマークとの位置合わせが完了した状態で、玉型マークを表示してもよい。この場合、眼鏡レンズとアライメントマークとの位置合わせを行っているときには玉型マークが表示されず、眼鏡レンズとアライメントマークとの位置合わせが完了したときに玉型マークが表示されてもよい。また、この場合、眼鏡レンズとアライメントマークとの位置合わせを行っているときから玉型マークが表示されてもよい。玉型マークは、眼鏡レンズの移動にともなって追従して表示されてもよいし、位置合わせが完了したときの位置に予め固定表示されてもよい。これによって、表示手段越しの眼鏡レンズと、表示手段に表示された玉型マークと、を観察し、眼鏡レンズの玉切れを容易に確認することができる。すなわち、眼鏡レンズの玉型が眼鏡レンズの径内におさまるか否かを容易に確認することができる。
【0022】
例えば、カップ取付装置は、設定手段(例えば、制御部60)を備えていてもよい。設定手段は、眼鏡レンズを位置合わせする第1モードと、眼鏡レンズの玉切れを確認する第2モードと、の少なくともいずれかを設定する。例えば、設定手段は、操作部から入力された操作信号を受信することで、第1モードと第2モードのそれぞれを設定してもよい。また、例えば、設定手段は、第1モードが設定され、第1モードによる眼鏡レンズの位置合わせが完了した後に、第2モードを自動的に設定してもよい。このような場合、表示制御手段は、設定手段が設定したモードに応じて、表示手段の表示を、アライメントマークと玉型マークの少なくともいずれかに切り換えてもよい。これによって、表示手段には、設定されたモードに応じた必要なマークのみが表示され、表示手段越しに眼鏡レンズを観察しやすくなる。
【0023】
例えば、本実施形態におけるカップ取付装置が、表示手段として透過型のディスプレイを備える場合、表示制御手段は、ディスプレイを制御することによって、ディスプレイにアライメントマークを表示させてもよい。もちろん、表示制御手段は、ディスプレイを制御することによって、ディスプレイに玉型マークを表示させてもよい。
【0024】
また、例えば、本実施形態におけるカップ取付装置が、表示手段として透過型のスクリーンを備える場合、カップ取付装置は、アライメントマークを出力可能な光源を備えていてもよい。例えば、このような光源はプロジェクタであってもよく、アライメントマークを出力するとともに、眼鏡レンズを照明してもよい。プロジェクタのフォーカスは、スクリーンに合わされていてもよい。表示制御手段は、光源を制御することによって、スクリーンにアライメントマークを表示させてもよい。もちろん、表示制御手段は、光源を制御することによって、ディスプレイに玉型マークを表示させてもよい。
【0025】
<調整手段>
例えば、本実施形態におけるカップ取付装置が、表示手段として透過型のディスプレイを備える場合には、調整手段(例えば、擦りガラス14)を備えてもよい。調整手段は、透過型のディスプレイと眼鏡レンズのレンズマークとの光軸方向における距離を実質的に短くする。この場合、調整手段は、透過型のディスプレイと眼鏡レンズの光軸方向における距離を短くすることで、透過型のディスプレイと眼鏡レンズのレンズマークとの光軸方向における距離を短くしてもよい。また、この場合、調整手段は、透過型のディスプレイと眼鏡レンズ(レンズマーク)の像との光軸方向における距離を短くしてもよい。例えば、カップ取付装置が調整手段を備えることによって、調整手段により光軸方向の距離が短くされた状態で、透過型のディスプレイ越しにレンズマークを観察し、レンズマークとアライメントマークとを位置合わせすることができる。操作者の視線方向が変化すると、透過型のディスプレイに表示されるアライメントマークと、眼鏡レンズのレンズマークと、が一致する位置がずれることがあるが、透過型のディスプレイとレンズマークとの光軸方向の距離を短くすることによって、このずれを低減させることができる。
【0026】
例えば、カップ取付装置は、眼鏡レンズに測定光束を照射する光源を備え、調整手段として、透過型のディスプレイと眼鏡レンズとの間に配置される投影部材を有してもよい。投影部材は、光軸方向において表示手段により近い位置に配置されることが好ましい。投影部材は、光源からの測定光束により照明された眼鏡レンズ(レンズマーク)の像を投影可能な部材であればよい。一例として、擦りガラス、スクリーン、等が用いられてもよい。カップ取付装置が投影部材を有する場合、透過型のディスプレイと眼鏡レンズの光軸方向における距離が長くても、透過型のディスプレイと、投影部材に投影された眼鏡レンズ(レンズマーク)の像と、の距離は短くなる。すなわち、投影部材にレンズマークを投影することで、透過型のディスプレイとレンズマークとの光軸方向における距離が実質的に短くなる。これによって、透過型のディスプレイ越しに、透過型のディスプレイに近い位置に投影された眼鏡レンズ(レンズマーク)の像を観察でき、操作者の視線方向の変化によるアライメントマークとレンズマークとが一致する位置のずれが軽減され、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0027】
例えば、カップ取付装置は、レンズに測定光束を照射する光源を備え、調整手段として、透過型のディスプレイを用いてもよい。つまり、透過型のディスプレイが調整手段を兼ねてもよい。この場合、透過型のディスプレイは、アライメントマークを表示するとともに、アライメントマークとは異なる領域を半透明に表示してもよい。すなわち、アライメントマークとは異なる領域を、擦りガラス状(言い換えると、曇りガラス状、スクリーン状)に表示してもよい。アライメントマークとは異なる領域は、そのすべてが半透明に表示されてもよいし、その少なくとも一部が半透明に表示されてもよい。これによって、光源からの測定光束により照明された眼鏡レンズ(レンズマーク)の像が、透過型のディスプレイのアライメントマークとは異なる領域に投影される。すなわち、透過型のディスプレイが、眼鏡レンズ(レンズマーク)の像を投影するための投影部材として機能してもよい。例えば、透過型のディスプレイのアライメントマークとは異なる領域を半透明に表示し、アライメントマークとは異なる領域にレンズマークを投影することで、透過型のディスプレイとレンズマークとの光軸方向における距離が実質的に短くなる。より詳細には、透過型のディスプレイのアライメントマークとは異なる領域を半透明に表示し、アライメントマークとは異なる領域にレンズマークを投影することで、透過型のディスプレイとレンズマークとの光軸方向における距離がゼロになる。このため、操作者の視線方向が変化しても、アライメントマークとレンズマークとが一致する位置のずれは生じず、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0028】
なお、上記では、カップ取付装置が、透過型のディスプレイとともに投影部材を用いる構成を例示したがこれに限定されない。あるいは、カップ取付装置が、透過型のディスプレイと投影部材を兼ねる構成を例示したがこれに限定されない。カップ取付装置は、このような投影部材を用いない構成であってもよい。つまり、透過型のディスプレイ越しに、眼鏡レンズのレンズマークを直接確認する構成でもよい。
【0029】
この場合、例えば、カップ取付装置が備える調整手段は、透過型のディスプレイとレンズとの少なくともいずれかを移動させてもよい。調整手段は、透過型のディスプレイを光軸方向に移動させるための移動機構(例えば、スライド機構、等)であってもよいし、眼鏡レンズを光軸方向に移動させるための移動機構であってもよい。もちろん、調整手段は、透過型のディスプレイ及び眼鏡レンズを光軸方向に移動させるための移動機構であってもよい。このような場合には、調整手段を用いることで、透過型のディスプレイと眼鏡レンズの光軸方向における距離を短くすることができる。すなわち、調整手段を用いることで、透過型のディスプレイとレンズマークとの光軸方向における距離を短くすることができる。透過型のディスプレイ越しに、透過型のディスプレイに近い位置に配置された眼鏡レンズを観察できるので、操作者の視線方向の変化によるアライメントマークとレンズマークとが一致する位置のずれが軽減され、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0030】
<カップ取付手段>
例えば、本実施形態におけるカップ取付装置は、カップ取付手段(例えば、カップ取付機構30)を備えてもよい。カップ取付手段は、レンズにカップを取り付ける。カップ取付手段は、レンズの前面と後面の少なくともいずれかにカップを取り付けてもよい。本実施形態では、カップ取付手段が、レンズ支持手段(例えば、支持ピン3)に支持されたレンズの前面にカップを取り付ける。
【0031】
なお、カップ取付手段は、眼鏡レンズを搬送するための搬送手段(例えば、眼鏡レンズを吸着して搬送するための搬送ユニット、等)を備えていてもよい。例えば、この場合には、レンズ支持手段により支持されたレンズが搬送手段によってカップ取付手段まで搬送され、カップ取付手段が搬送されたレンズに対してカップを取り付ける構成としてもよい。
【0032】
<実施例>
本実施形態に係るカップ取付装置の一実施例を図面に基づいて説明する。本実施例では、カップ取付装置の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向として説明する。
【0033】
図1は、カップ取付装置1の外観図である。図1(a)は、カップ取付装置1の正面、平面、及び右側面を表す斜視図である。図1(b)は、図1(a)のA-A´断面を表す断面図である。なお、図1は、後述するアライメント機構10を使用可能な使用位置に配置した状態である。例えば、カップ取付装置1は、筐体2、支持ピン3、光量調整ノブ4、アライメント機構10、切換機構20、カップ取付機構30(図2参照)、制御部60、等を備える。
【0034】
筐体2はすり鉢状である。筐体2の内部には、アライメント機構10の一部(本実施例では、光源11)が備えられる。筐体2の内壁には、反射を低減させるための塗料が塗布されている。光源11から照明された測定光束が内壁で反射すると、集光レンズ12により平行とされた測定光束のノイズとなるためである。
【0035】
支持ピン3は、眼鏡レンズ(以下、レンズ)LEを載置してレンズLEを支持する。支持ピン3は、集光レンズ12の上面に3本配置される。支持ピン3は、カップ取り付けの基準軸となるアライメント機構10の光軸L1に対して、等距離かつ等角度で配置される。
【0036】
なお、本実施例において、支持ピン3はレンズLEを支持できればよく、何本で構成されてもよいし、必ずしも光軸L1に対して等距離かつ等角度で配置されなくてもよい。また、本実施例において、支持ピン3はレンズLEを支持できればよく、移動可能に配置されてもよい。この場合には、光軸L1から各支持ピン3までの距離、及び、光軸L1と各支持ピン3を結ぶ直線のなす角度(言い換えると、支持ピン3同士の間隔)、等を調整し、支持ピン3がレンズLEを支持する領域の大きさを変更するための構成を有してもよい。
【0037】
光量調整ノブ4は、光源11の発光光量を調整する。光量調整ノブ4は、筐体2の内部に設けられた回転型の可変抵抗器5に取り付けられている。光量調整ノブ4を回転させると、可変抵抗器5の抵抗値が変化し、この抵抗値が制御部60へと出力される。制御部60は、光源11に入力する電流値を可変抵抗器5の抵抗値に応じて変更し、光源11の発光光量を調整する。
【0038】
<アライメント機構>
アライメント機構10は、支持ピン3に支持されたレンズLEを位置合わせする。アライメント機構10は、光源11、集光レンズ12、透過型ディスプレイ13、擦りガラス14、等を備える。ディスプレイ13と擦りガラス14は、第1アーム8aに保持される。
【0039】
光源11は、レンズLEに測定光束を照射する。光源11は、LED(Light Emitting Diode)であってもよい。光源11は、光軸L1上に配置される。光源11の周囲には、伝熱性の高い素材で作製された放熱を促すための基板11aが取り付けられている。集光レンズ12は、光源11から照射された測定光束を光軸L1と平行に整形する。
【0040】
透過型ディスプレイ(以下、ディスプレイ)13は、光源11からの測定光束を透過させる透過率の高いディスプレイである。ディスプレイ13は、透過型の液晶ディスプレイであってもよいし、透過型の有機ELディスプレイであってもよい。ディスプレイ13は、その中央が光軸L1に一致するように配置される。ディスプレイ13には、レンズLEを位置合わせするためのアライメントマーク、レンズLEの玉型を表す玉型マーク、等が表示される。ディスプレイ13と制御部60を繋ぐケーブルは、操作の邪魔にならないように、第1アーム8a及び円筒部材31の内部に通される。
【0041】
擦りガラス14は、ディスプレイ13の下部に、ディスプレイ13と近い距離で配置される(ディスプレイ13と擦りガラス14の配置についての詳細は後述する)。擦りガラス14には、光源11に照明されたレンズLEの像が投影される。例えば、レンズLEの像は、レンズLEの外形の像、レンズLEに予め付した印点S1の像である印点像S2、レンズLEが有する小玉の像、レンズLEに印刷されたプリントマークの像、等である。なお、本実施例では擦りガラス14を例に挙げるが、レンズLEの像が投影可能な部材であればよく、例えば、擦りガラス14の代わりにスクリーンを用いてもよい。
【0042】
光源11から測定光束が照射されると、測定光束は集光レンズ12に屈折されて平行光束となり、支持ピン3に支持されたレンズLEを透過して、擦りガラス14に到達する。レンズLEに印点S1を付していた場合、擦りガラス14には印点像S2が光軸L1に対して平行(略平行)に投影される。さらに、測定光束は、擦りガラス14とディスプレイ13を透過し、操作者の眼Eに到達する。これにより、操作者は、ディスプレイ13越しに、レンズLEの位置(レンズLEの印点像S2の位置)を確認することができる。
【0043】
<カップ取付機構>
図2は、カップ取付装置1の外観図である。図2(a)は、カップ取付装置1の正面、平面、及び右側面を表す斜視図である。図2(b)は、図2(a)のA-A´断面を表す断面図である。なお、図2は、カップ取付機構30を使用可能な使用位置に配置した状態である。カップ取付機構30は、支持ピン3に支持されたレンズLEにカップCuを取り付ける。カップ取付機構30は、円筒部材31、シャフト32、バネ33、回転ノブ34、カップ装着部35、等を備える。
【0044】
円筒部材31は、筐体2の後方に配置される。円筒部材31の内部には、シャフト32が上下方向へ移動可能に保持される。シャフト32の上部には、一体的に形成された第1アーム8a及び第2アーム8bが固定される。第2アーム8bは、カップ装着部35を保持する。カップ装着部35には、カップCuが、その中央が光軸L1と一致するように装着される。シャフト32の上端には、回転ノブ34が固定される。シャフト32の下端には、バネ33が取り付けられる。バネ33は、シャフト32、及び、シャフト32に固定されたアーム(第1アーム8aと第2アーム8b)や回転ノブ34、等の荷重に抗してシャフト32をもち上げ、シャフト32を上方向に常時付勢する。
【0045】
図2に示す状態で回転ノブ34を押し下げると、回転ノブ34とともにシャフト32が押し下げられ、シャフト32に固定された第2アーム8bが下降する。これによって、レンズLEにカップCuが接触し、レンズLEにカップCuが取り付けられる。回転ノブ34から手を離すと、バネ33の付勢力によりシャフト32が押し上げられ、第2アーム8bが元の位置まで上昇する。
【0046】
なお、本実施例において、カップ取付機構30には検出器36が設けられてもよい。検出器36は、シャフト32の上下移動を検出する。例えば、検出器36は、シャフト32が押し下げられたことを検出して、制御部60へ出力信号を出力してもよい。制御部60は、検出器36からの出力信号に応じて、ディスプレイ13に表示する表示内容(例えば、左のレンズLEに対する玉型マーク、右のレンズLEに対する玉型マーク、等)を制御してもよい。例えば、このような検出器36は、マイクロスイッチであってもよい。
【0047】
<切換機構>
切換機構20は、支持ピン3に支持されたレンズLEの上部に、ディスプレイ13及び擦りガラス14を配置するか、または、カップ装着部35を配置するか、を切り換える。すなわち、ディスプレイ13及び擦りガラス14を使用可能な使用位置に配置するか、または、カップ装着部35を使用可能な使用位置に配置するか、を切り換える。例えば、切換機構20は、円筒部材31、第1アーム8a、第2アーム8b、シャフト32、回転ノブ34、等を備える。
【0048】
円筒部材31の内部において、シャフト32は水平方向へ回転可能に保持される。回転ノブ34を回転させると、回転ノブ34とともにシャフト32も回転し、第1アーム8aまたは第2アーム8bのいずれかが、筐体2の上部に配置される。例えば、図1に示す状態から回転ノブ34を時計回りに回転させると、図2に示す状態となり、第2アーム8bが筐体2の上部に配置される。これによって、カップ取付機構30が使用可能となる。また、例えば、図2に示す状態から回転ノブ34を反時計回りに回転させると、図1に示す状態となり、第1アーム8aが筐体2の上部に配置される。これによって、アライメント機構10が使用可能となる。
【0049】
なお、本実施例において、切換機構20には検出器25が設けられてもよい。検出器25は、シャフト32の回転を検知する。検出器25は、光センサ(例えば、フォトインタラプタ)を用いて構成されるが、位置検出センサ、回転角センサ、等を用いることもできる。
【0050】
例えば、検出器25は、発光素子と受光素子とが対向するフォトセンサ26と、遮光板27と、を有する。フォトセンサ26は、円筒部材31の下部に設けられる。遮光板27は、シャフト32の下部に設けられたガイド32aに取り付けられる。ガイド32aは、シャフト32の回転に連動して回転するが、シャフト32が上下方向に移動しても、その高さ位置が維持されるようになっている。
【0051】
例えば、回転ノブ34を回転させることで、シャフト32及びガイド32aが回転し、フォトセンサ26に遮光板27が挿し込まれると、発光素子からの光が遮断される。本実施例では、カップ取付機構30が使用位置にあるとき、フォトセンサ26に遮光板27が挿し込まれた状態となる。この状態では、フォトセンサ26からの出力信号が、光源11を消灯させるためのスイッチ信号として、制御部60に入力される。また、例えば、回転ノブ34を回転させることで、シャフト32及びガイド32aが回転し、フォトセンサ26から遮光板27が引き抜かれると、発光素子からの光は受光素子に到達する。本実施例では、アライメント機構10が使用位置にあるとき、フォトセンサ26から遮光板27が引き抜かれた状態となる。この状態では、フォトセンサ26からの出力信号が、光源11を点灯させるためのスイッチ信号として、制御部60に入力される。制御部60は、このようなスイッチ信号に応じて、光源11の点灯と消灯を制御する。
【0052】
<ディスプレイと擦りガラスの配置>
ここで、ディスプレイ13と擦りガラス14の配置について詳細に説明する。本実施例では、擦りガラス14がディスプレイ13と近い距離で配置されているため、操作者がディスプレイ13をみる場所により生じるアライメントマークに対する印点像S2のずれを低減させることができる。言い換えると、操作者の眼Eの視線方向(視軸)の変化により生じるアライメントマークに対する印点像S2bのずれを低減させることができる。
【0053】
図3は、印点像S2のずれを説明する図である。図3(a)は、擦りガラス14とディスプレイ13が近い距離に配置され、操作者の眼Eの視線方向がディスプレイ13の真上にある状態である。図3(b)は、擦りガラス14とディスプレイ13が近い距離に配置され、操作者の眼Eの視線方向がディスプレイ13に対して斜めにある状態である。図3(c)は、擦りガラス14とディスプレイ13が遠い距離に配置され、操作者の眼Eの視線方向がディスプレイ13に対して斜めにある状態である。
【0054】
なお、図3では、ディスプレイ14における位置Pにアライメントマークが表示されている。例えば、位置Pは光軸L1と一致する位置である。レンズLEには印点S1が付され、擦りガラス14には印点S1に対応する印点像S2が投影されている。
【0055】
操作者の眼Eは、ディスプレイ13に表示されたアライメントマークと、擦りガラス14に投影された印点像S2と、が視軸N1上に位置したときに、アライメントマークと印点像S2が一致したと認識する。操作者は、アライメントマークと印点像S2が一致するようにレンズLEを移動させることで、光軸L1とレンズLEに付された印点S1とが一致する適切な位置にレンズLEを配置することができる。
【0056】
例えば、図3(a)のように、眼Eの視線方向がディスプレイ13の真上にあると、眼Eには、アライメントマークが表示された位置Pと、位置PとX方向及びZ方向が同一(略同一)な位置Qと、が重なってみえる。操作者が印点像S2を位置Qに位置させるようにレンズLEを移動させると、眼Eの視軸N1上にアライメントマークと印点像S2が位置するので、眼Eはアライメントマークと印点像S2が一致したと認識する。例えば、このように、眼Eの視線方向がディスプレイ13の真上にあれば、ディスプレイ13越しに印点像S2を観察しながらレンズLEを移動させることで、光軸L1と印点S1とが一致する適切な位置にレンズLEを配置することができる。
【0057】
例えば、図3(b)のように、眼Eの視線方向がディスプレイ13に対して斜めにあると、眼Eには、アライメントマークが表示された位置Pと、位置QからX方向及びZ方向に所定の距離だけずれた位置Q’と、が重なってみえる。本実施例では、位置Pと、位置QからZ方向にずれ量d1だけ離れた位置Q’と、が重なってみえる。操作者は、印点像S2が位置Q’に位置するようにレンズLEを移動させるので、上述の適切な位置(図3(b)にて点線で示す位置)からずれた位置(図3(b)にて実線で示す位置)にレンズLEが配置される。
【0058】
なお、ずれ量d1は、眼Eの視軸N1と、光軸L1に対する垂直な面と、のなす角度が小さい(すなわち、眼Eの視線方向が真横に近い)ほど大きくなり、眼Eの視軸N1と、光軸L1に対する垂直な面と、のなす角度が大きい(すなわち、眼Eの視線方向が真上に近い)ほど小さくなる。このため、特に、眼Eの視線方向が真横に近い場合は、適切な位置からよりずれた位置にレンズLEが配置される。
【0059】
例えば、図3(c)のように、眼Eの視線がディスプレイ13に対して斜めにあり、かつ、擦りガラス14とディスプレイ13が遠い距離に配置されていると、アライメントマークが表示された位置Pと、位置QからX方向及びZ方向に所定の距離だけずれた位置Q’と、が重なってみえる。本実施例では、位置Pと、位置QからZ方向にずれ量d2だけ離れた位置Q’と、が重なってみえる。例えば、眼Eが同じ視線方向からディスプレイ13越しに印点像S2を観察しても、擦りガラス14とディスプレイ13が近い距離に配置されているときのずれ量d1と、擦りガラス14とディスプレイ13が遠い距離に配置されているときのずれ量d2と、ではずれ量d2のほうが大きくなる。操作者は、印点像S2が位置Q’に位置するようにレンズLEを移動させるので、上述の適切な位置(図3(c)にて点線で示す位置)からずれた位置(図3(c)にて実線で示す位置)にレンズLEが配置される。
【0060】
例えば、このように、眼Eの視線方向の変化によって、眼Eがアライメントマークと印点像S2が一致したと認識できる位置(すなわち、位置Q及び位置Q’の位置)にはずれが生じる。ずれが生じていると、上述の適切な位置にレンズLEが配置されないため、レンズLE上の正確な位置にカップCuを取り付けることができない。しかし、擦りガラス14とディスプレイ13を近い距離に配置しておくことで、眼Eの視線方向が変化しても、アライメントマークに対する印点像S2のずれを小さく抑え、レンズLE上の正確な位置にカップCuを取り付けることができる。
【0061】
なお、本実施例において、集光レンズ12に屈折されて平行光束となった測定光束は、レンズLEがもつ屈折力によってさらに屈折され、光軸L1と平行でない状態となって擦りガラス14に到達することがある。この状態では、レンズLEに付された印点S1が真上に投影されず、印点S1と印点像S2とのX方向及びZ方向がずれてしまう。操作者がアライメントマークと印点像S2が一致するようにレンズLEを移動させても、適切な位置からずれた位置にレンズLEが配置されるので、レンズLE上の正確な位置にカップCuを取り付けることができない。本実施例では、このようなレンズLEの屈折力の影響を抑えるため、擦りガラス14が、予めレンズLEと近い距離となる位置に配置されてもよい。ディスプレイ13及び擦りガラス14と、レンズLEと、の少なくともいずれかを移動可能な構成として、擦りガラス14とレンズLEとの距離を調整してもよい。
【0062】
<制御系>
制御部60は、一般的なCPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等で実現される。CPUは、カップ取付装置1における各部の駆動を制御してもよい。RAMは、各種の情報を一時的に記憶してもよい。ROMには、CPUが実行する各種プログラムが記憶されてもよい。例えば、制御部60には、ディスプレイ13、可変抵抗器5、光源11、フォトセンサ26、不揮発性メモリ(以下、メモリ65)、等が電気的に接続される。
【0063】
メモリ65は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、メモリ65としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、SDカード、等を使用することができる。
【0064】
<動作>
上記のような構成を備えるカップ取付装置1の動作を説明する。
【0065】
本実施例では、レンズLEを位置合わせする第1モードと、レンズLEの玉切れ(レンズLEの径内に玉型がおさまらない状態)を確認する第2モードと、のいずれかが設定される。
【0066】
<第1モード>
以下、第1モードについて説明する。ここでは、レンズLEが単焦点レンズであり、レンズLEの光学中心位置にカップを取り付ける場合を例示する。
【0067】
<玉型の取得>
まず、レンズLEの玉型が取得される。レンズLEの玉型は、フレームのリムの内形、フレームに枠入れされていたデモレンズまたは型板の外形、等から取得されてもよい。本実施例では、カップ取付装置1に別の装置を用いて測定した玉型を読み込ませることで、玉型が取得される。
【0068】
<加工条件とレイアウトの設定>
続いて、レンズLEの加工条件とレイアウトが設定される。レンズLEの加工条件は、レンズLEの種類(例えば、単焦点レンズ、二重焦点レンズ、累進レンズ、等)、レンズLEの材質、フレームの材質、加工モード(例えば、鏡面加工、面取り加工、溝掘り加工、等の有無)、レンズLEに対するカップCuの取り付け位置(例えば、レンズLEの光学中心位置、玉型の幾何学中心位置、等)、等の少なくともいずれかであってもよい。レンズLEのレイアウトは、玉型の幾何学中心位置から光学中心位置までの高さ、玉型の最底辺の位置から光学中心位置までの高さ(BT)、玉型における光学中心位置直下の底辺の位置から光学中心位置までの高さ(PD高さ)、左右レンズの光学中心間(距離眼鏡装用者の瞳孔間距離)、左右レンズの幾何学中心間距離(フレーム中心間距離)、等の少なくともいずれかであってもよい。本実施例では、カップ取付装置1に別の装置を用いて作製された加工条件及びレイアウトを読み込ませることで、加工条件及びレイアウトが設定される。
【0069】
<レンズのアライメント>
操作者は、レンズLEの光学中心位置OCに予め印点S1を付し、レンズLEを支持ピン3に載置すると、カップ取り付けの基準軸である光軸L1に印点S1が一致するようにアライメントを行う。
【0070】
操作者は、回転ノブ34を操作して、アライメント機構10を使用位置に配置する。制御部60は、検出器25からのスイッチ信号に応じ、光源11を点灯して測定光束を照射させる。また、制御部60は、レンズLEを位置合わせしてカップCuを取り付けるための軸打ち画面70をディスプレイ13に表示する。
【0071】
図4は、単焦点レンズの光学中心位置に対するアライメントを説明する図である。図4(a)は、軸打ち画面70の一例である。図4(b)は、アライメント時の軸打ち画面70を示す図である。軸打ち画面70には、レンズLEを位置合わせするための目標位置を表すアライメントマークが表示される。アライメントマークは、レンズLEの玉型、加工条件、レイアウト、等に基づいて、その種類や表示位置が設定されてもよい。
【0072】
本実施例では、レンズLEが単焦点レンズであり、レンズLEの光学中心位置OCにカップを取り付けるため、軸打ち画面70の中央(すなわち、光軸L1と一致する位置)に、印点像S2を一致させるための十字マークM1が表示される。また、本実施例では、ディスプレイ13が透過型のディスプレイであるので、ディスプレイ13の下部にある擦りガラス14に投影された像が、ディスプレイ13越しに観察される。例えば、擦りガラス14に投影された、支持ピン3の像である支持ピン像3s、レンズLEの外形の像である外形像LEs、レンズLEの印点像S2、等が観察される。
【0073】
操作者は、軸打ち画面70を確認しながら、印点像S2と十字マークM1とが一致するように、支持ピン3上のレンズLEを移動させる。これによって、光軸L1とレンズLEの光学中心位置OCが一致し、レンズLEを位置合わせすることができる。
【0074】
例えば、第1モードを設定した場合には、このような動作によって、レンズLEの位置合わせが行われる。
【0075】
なお、本実施例では、第1モードにおいて、レンズLEの光学中心位置OCを位置合わせする場合を例示したがこれに限定されない。例えば、レンズLEの玉型に対する幾何学中心位置(ボクシング中心位置)を位置合わせしてもよい。
【0076】
図5は、玉型の幾何学中心位置に対するアライメントを説明する図である。図5(a)は、軸打ち画面70の一例である。図5(b)は、アライメント時の軸打ち画面70を示す図である。なお、図5(b)では、支持ピン像3sの図示を省略している。制御部60は、レンズLEの玉型T、加工条件、レイアウト、等を取得すると、玉型Tの幾何学中心位置BCと、玉型Tに対するレンズLEの光学中心位置OCと、を求める。幾何学中心位置BCは、玉型Tを囲む四角形において、対向する各辺の中点を結んだ直線の交点として表される。玉型Tに対するレンズLEの光学中心位置OCは、レイアウトに基づいて取得される。制御部60は、玉型Tに対するレンズLEの光学中心位置OCと、玉型Tの幾何学中心位置BCと、の位置に基づいて、ディスプレイ13に表示する十字マークM1の表示位置を変更してもよい。例えば、光学中心位置OCに対して幾何学中心位置BCが2mm下方向かつ1mm左方向に位置したとき、制御部60は、ディスプレイ13の中央から2mm上方向かつ1mm右方向に十字マークM1を表示してもよい。操作者は、印点像S2と十字マークM1とが一致するように支持ピン3上のレンズLEを移動させることで、光軸L1と玉型Tの幾何学中心位置BCを一致させ、レンズLEを位置合わせすることができる。
【0077】
また、本実施例では、第1モードにおいて、レンズLEが単焦点レンズである場合を例示したがこれに限定されない。もちろん、二重焦点レンズや累進レンズを位置合わせしてもよい。
【0078】
図6は、単焦点レンズとは異なるレンズに対する軸打ち画面70の一例である。図6(a)は、二重焦点レンズに対する軸打ち画面70である。図6(b)は、累進レンズに対する軸打ち画面70である。
【0079】
例えば、レンズLEが二重焦点レンズである場合、軸打ち画面70には、アライメントマークとして小玉マークM2が表示されてもよい。小玉マークM2は、軸打ち画面70の中央(すなわち、光軸L1と一致する位置)に対する所定の位置に表示されてもよい。小玉マークM2の表示位置は、二重焦点レンズのレイアウト、二重焦点レンズの設計データ、等に応じて変更されてもよい。操作者は、支持ピン3上に二重焦点レンズを載置し、ディスプレイ13越しに、擦りガラス14に投影された二重焦点レンズの小玉の像を観察する。また、操作者は、支持ピン3上の二重焦点レンズを、小玉の像と小玉マークM2とが一致するように移動させる。このようにして光軸L1と二重焦点レンズの光学中心位置OCを一致させ、レンズLEを位置合わせしてもよい。
【0080】
また、例えば、レンズLEが累進レンズである場合、軸打ち画面70には、アライメントマークとしてプリントマークM3が表示されてもよい。プリントマークM3は、軸打ち画面70の中央(すなわち、光軸L1と一致する位置)に対する所定の位置に表示されてもよい。プリントマークM3の表示位置は、累進レンズのレイアウト、累進レンズの設計データ、等に応じて変更されてもよい。操作者は、支持ピン3上に累進レンズを載置し、ディスプレイ13越しに、擦りガラス14に投影された累進レンズのプリントマークの像を観察する。また、操作者は、支持ピン3上の累進レンズを、プリントマークの像とプリントマークM3とが一致するように移動させる。このようにして光軸L1と累進レンズの光学中心位置OCを一致させ、レンズLEを位置合わせしてもよい。
【0081】
<第2モード>
以下、第2モードについて説明する。ここでは、レンズLEが単焦点レンズであり、レンズLEの玉切れを確認する場合を例示する。第2モードは、レンズLEにおけるカップCuの取り付け位置(例えば、レンズLEの光学中心位置OC、あるいは、レンズLEの幾何学中心位置BC)と光軸L1とを一致させるアライメントが完了した後に実行されてもよい。
【0082】
例えば、制御部60は、レンズLEのアライメントが完了すると、レンズLEの玉型Tを表す玉型マークM4をディスプレイ13に表示する。玉型マークM4としては、その左右を識別可能とするための識別マークM5が同時に表示されてもよい。もちろん、その左右を識別可能とするために玉型マークM4の表示色が変更されてもよい。このとき、アライメントマーク(例えば、十字マークM1、等)はディスプレイ13に表示されたままでもよいし、ディスプレイ13から表示が消されてもよい。これによって、操作者は、ディスプレイ13越しに擦りガラス14に投影されたレンズLEの外形像LEsを観察するとともに、LEの外形像LEsと玉型マークM4との位置を確認することができる。
【0083】
また、例えば、制御部60は、レンズLEの玉型Tを表す玉型マークM4とともに、カップCuの径を表すカップマークCUsをディスプレイ13に表示してもよい。これによって、操作者は、レンズLEの玉型にカップCuがおさまるか否かを判断することができる。
【0084】
図7は、玉型マークM4が表示された軸打ち画面70の一例である。図7(a)は、レンズLEが玉切れしていない状態である。図7(b)は、レンズLEが玉切れしている状態である。例えば、操作者は、ディスプレイ13に表示された玉型マークM4が、レンズLEの径内(本実施例では、レンズLEの外形像LEsの径内)におさまるか否かを確認することで、レンズLEが玉切れするか否かを判断することができる。例えば、図7(a)のように、ディスプレイ13に表示された玉型マークM4がレンズLEの外形像LEsの径内におさまっている場合は、レンズLEが玉切れせず、レンズLEの適切な加工が可能であると判断できる。また、例えば、図7(a)のように、ディスプレイ13に表示された玉型マークM4がレンズLEの外形像LEsの径内におさまっていない場合は、レンズLEが玉切れし、レンズLEの適切な加工が不可能であると判断できる。このとき、操作者は、レンズLEに印点S1を再度付す、レンズLEのレイアウトを変更する、等して、レンズLEに適切な加工がなされるように調整してもよい。
【0085】
なお、本実施例では、第2モードにおいて、レンズLEが単焦点レンズである場合を例示したが、もちろん、二重焦点レンズや累進レンズに対して玉切れを確認してもよい。
【0086】
<カップの取り付け>
例えば、上記のように、レンズLEのアライメント、または、レンズLEのアライメントの後に行う玉切れの確認が完了すると、操作者はレンズLEにカップCuを取り付ける。操作者は、カップ取付機構30のカップ装着部35にカップCuを装着するとともに、回転ノブ34を操作してカップ取付機構30を使用位置に配置する。制御部60は、検出器25からのスイッチ信号に応じ、光源11を消灯する。また、操作者は、回転ノブ34を押し下げ、レンズLEの前面にカップCuを取り付ける。これによって、レンズLEの所定の位置(例えば、光学中心位置OC、幾何学中心位置BC、等)にカップCuを取り付けることができる。
【0087】
以上説明したように、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、光を透過するとともに、眼鏡レンズにカップを取り付けるために眼鏡レンズを位置合わせする基準となるアライメントマークを表示可能な透過型の表示手段と、表示手段にアライメントマークを表示させる表示制御手段と、眼鏡レンズにカップを取り付けるカップ取付手段と、を備える。操作者は、表示手段越しの眼鏡レンズと、表示手段に表示されたアライメントマークと、を容易に観察して位置合わせし、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0088】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、アライメントマークの表示位置を移動させるための移動信号を取得する取得手段を備える。これにより、操作者により入力された移動信号、眼鏡レンズのレイアウトに応じた移動信号、等に基づいて、表示手段に表示するアライメントマークの表示位置が移動される。従来のカップ取付装置では、操作者がアライメントマークを手動で移動させていたため、操作者の操作によって、アライメントマークを移動させる位置がばらつくことがあった。しかし、このような構成であることによって、移動量の誤差の発生が抑えられ、眼鏡レンズとアライメントマークをより精度よく位置合わせし、眼鏡レンズのより正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0089】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置において、表示手段は眼鏡レンズの玉型を表す玉型マークを表示可能であり、表示制御手段は表示手段を制御して表示手段に玉型マークを表示させる。これによって、操作者は、表示手段越しの眼鏡レンズと、表示手段に表示された玉型マークと、を観察し、眼鏡レンズの玉切れを容易に確認することができる。
【0090】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、眼鏡レンズを位置合わせする第1モードと、眼鏡レンズの玉切れを確認する第2モードと、の少なくともいずれかを設定する設定手段を備える。表示手段には、設定されたモードに応じて必要なマークのみを表示させることができるので、表示手段越しに眼鏡レンズを観察しやすくなる。
【0091】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、光を透過するとともに、眼鏡レンズにカップを取り付けるために眼鏡レンズを位置合わせするための基準となるアライメントマークを表示可能な透過型のディスプレイと、ディスプレイと眼鏡レンズのレンズマークとの光軸方向における距離を実質的に短くする調整手段と、眼鏡レンズにカップを取り付けるカップ取付手段と、を備える。操作者の視線方向が変化すると、透過型のディスプレイに表示されるアライメントマークと、眼鏡レンズのレンズマークと、が一致する位置がずれることがあるが、透過型のディスプレイとレンズマークとの光軸方向の距離を短くすることによって、このずれを低減させることができる。
【0092】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、眼鏡レンズに測定光束を照射する光源を備え、調整手段は、ディスプレイと眼鏡レンズとの間に配置される投影部材であって、投影部材にレンズマークを投影することで、ディスプレイとレンズマークとの光軸方向における距離を短くする。このような構成であると、眼鏡レンズのレンズマークが投影部材に投影される。ディスプレイと投影部材との間の距離を短くしておくことで、ディスプレイとレンズマーク(レンズマークが投影された像)との光軸方向における距離が短くなる。これによって、操作者の視線方向の変化によるアライメントマークとレンズマークとが一致する位置のずれが軽減され、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0093】
<変容例>
なお、本実施例では、ディスプレイ13を用いて、ディスプレイ13にアライメントマークを表示するとともに、光源11を用いてレンズLEを照明し、擦りガラス14にレンズLEの印点像S2を投影することによって、アライメントマークと印点像S2を位置合わせする構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、透過型のスクリーンとプロジェクタを用いることで、アライメントマークと印点像S2を位置合わせする構成としてもよい。この場合、プロジェクタを用いてレンズLEを照明することで、レンズLEの印点像S1がスクリーンに投影されるようにしてもよい。また、プロジェクタでアライメントマークを出力することで、レンズLEの印点像S1とともに、アライメントマークがスクリーンに投影される。操作者は、スクリーンを観察しながら、アライメントマークと印点像S2を位置合わせすることができる。
【0094】
なお、本実施例では、ディスプレイ13と擦りガラス14を光軸L1方向に近い距離に配置することで、眼Eの視線方向(視軸)の変化により生じる印点像S2bのずれを低減させる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、ディスプレイ13は擦りガラス14を兼ねてもよい。より詳細には、ディスプレイ13は、アライメントマークを表示するとともに、アライメントマークとは異なる領域を半透明に表示してもよい。例えば、アライメントマークとは異なる領域が半透明であることで、レンズLEの像(印点像S1、外形像LEs、小玉の像、プリントマークの像、等)をディスプレイ13に投影することができる。操作者は、ディスプレイ13に投影されたレンズLEの像を観察するとともに、ディスプレイ13に表示されたアライメントマークを観察することで、レンズLEとアライメントマークを位置合わせし、レンズLEにカップCuを取り付けてもよい。
【0095】
例えば、このように、本実施例におけるカップ取付装置は、眼鏡レンズに測定光束を照射する光源を備え、ディスプレイは調整手段を兼ね、アライメントマークとは異なる領域を半透明に表示し、アライメントマークとは異なる領域にレンズマークを投影することで、ディスプレイとレンズマークとの光軸方向における距離を短くする。このような構成であると、眼鏡レンズのレンズマークがディスプレイに投影される。ディスプレイとレンズマーク(レンズマークが投影された像)との光軸方向における距離があかないため、操作者の視線方向が変化しても、アライメントマークとレンズマークとが一致する位置のずれが生じず、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【0096】
なお、本実施例では、ディスプレイ13の下部に擦りガラス14を配置する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。ディスプレイ13の下部には、擦りガラス14を必ずしも設ける必要はない。すなわち、ディスプレイ13とレンズLEの間に投影部材を配置しない構成としてもよい。この場合、光源11から照射され、集光レンズ12に屈折された測定光束は、レンズLEを透過してディスプレイ13に到達する。しかし、ディスプレイ13とレンズLEの間に投影部材を配置しないと、眼Eはディスプレイ13越しにレンズLEを直接観察することになり、眼Eの視線方向の変化による印点像S2bのずれが生じやすくなる。このため、ディスプレイ13と、レンズLEと、はなるべく近い距離で配置することが好ましい。
【0097】
例えば、本実施例では、ディスプレイ13とレンズLEとを近い距離で配置するために、ディスプレイ13を光軸L1方向に移動させるための移動機構、レンズLEを光軸L1方向に移動させるための移動機構、等を設け、ディスプレイ13とレンズLEとの距離を調整できるようにしてもよい。一例として、第1アーム8aにスライド機構を設け、第1アーム8aを上下方向に移動可能とすることで、ディスプレイ13を光軸L1方向に移動させてもよい。また、一例として、支持ピン3の高さを調節可能とすることで、レンズLEを光軸L1方向に移動させてもよい。
【0098】
例えば、このように、本実施例におけるカップ取付装置において、調整手段は、ディスプレイと眼鏡レンズとの少なくともいずれかを移動させる。例えば、このような構成であると、眼鏡レンズを載置した後等に、ディスプレイとレンズマークとの光軸方向における距離を調整して短くすることができる。これによって、操作者の視線方向の変化によるアライメントマークとレンズマークとが一致する位置のずれが軽減され、眼鏡レンズの正確な位置にカップを取り付けることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 カップ取付装置
10 アライメント機構
13 ディスプレイ
14 擦りガラス
20 切換機構
30 カップ取付機構
60 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7