(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】交通安全システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/08 20060101AFI20230511BHJP
E01F 11/00 20060101ALI20230511BHJP
E01F 9/559 20160101ALI20230511BHJP
E01F 9/506 20160101ALI20230511BHJP
【FI】
G08G1/08 C
E01F11/00
E01F9/559
E01F9/506
(21)【出願番号】P 2018206366
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 正道
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩明
(72)【発明者】
【氏名】梅村 祐二
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-209929(JP,A)
【文献】特開2012-062718(JP,A)
【文献】特開2006-219896(JP,A)
【文献】特開2000-064234(JP,A)
【文献】特開2004-270443(JP,A)
【文献】特開2015-090599(JP,A)
【文献】株式会社倉本道路,道路鋲,[online],日本,2003年01月04日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20030104154615/http://www.doboku-kenzai.com:80/d/mee/mee_index.html><URL:http://www.doboku-kenzai.com/d/mee/mee_index.html>,[2023年1月16日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
E01F 11/00
E01F 9/559
E01F 9/506
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道を形成するプレキャストコンクリート版のうち第1のプレキャストコンクリート版の表面に形成される横断歩道を横断中及び横断歩道近傍にいる人を検知する人検知手段と、
前記第1のプレキャストコンクリート版とは異なる第2のプレキャストコンクリート版の表面に形成され、前記横断歩道の前記横断歩道に向かって車両が走行してくる側に設置される停止線より手前に配設される自発光型路面標示と、
前記自発光型路面標示に電力を供給する電源手段と、
前記人検知手段による人の検知状況に応じて前記自発光型路面標示の点灯を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする交通安全システム。
【請求項2】
前記自発光型路面標示は、前方に横断歩道があることを示す文字又は形状で示されることを特徴とする請求項1に記載の交通安全システム。
【請求項3】
前記自発光型路面標示は、前方に横断歩道があることを示す予告マーク、「止まれ」の文字のマーク、又は歩行者の形状のマークであることを特徴とする請求項2に記載の交通安全システム。
【請求項4】
前記自発光型路面標示は、ドライバーが前記横断歩道を見ることのできない車道上の位置に配設されることを特徴とする請求項1に記載の交通安全システム。
【請求項5】
前
記第1プレキャストコンクリート版の手前に「止まれ」の文字のマークが形成される第
3プレキャストコンクリート版が形成され、
前記第
3プレキャストコンクリート版の手前に歩行者の形状のマークが形成される第
4プレキャストコンクリート版が形成され、
前記第
4プレキャストコンクリート版の手前に前方に横断歩道があることを示す予告マークが形成される第
5プレキャストコンクリート版が形成される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の交通安全システム。
【請求項6】
前記自発光型路面標示に近付く車両を検知する車両検知手段を有し、
前記制御手段は、前記車両検知手段が車両を検知しているときに前記自発光型路面標示を点灯又は点滅させることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の交通安全システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記人検知手段が人を検知し、かつ前記車両検知手段が車両を検知しているときに前記自発光型路面標示を点灯又は点滅させることを特徴とする請求項
6に記載の交通安全システム。
【請求項8】
前記車両検知手段は
、前記
第2のプレキャストコンクリート版よ
り手前に配設される
第6のプレキャストコンクリート版に形成されることを特徴とする請求項
6に記載の交通安全システム。
【請求項9】
前記電源手段は、
第7のプレキャストコンクリート版に組み込まれ、
車道を形成するプレキャストコンクリート版のうち前記電源手段が組み込まれていな
いプレキャストコンクリート版に電力を供給する、
ことを特徴とする請求項
1から
8のいずれか1項に記載の交通安全システム。
【請求項10】
前記電源手段が組み込まれていな
いプレキャストコンクリート版は、前記
第2のプレキャストコンクリート版であることを特徴とする請求項
9に記載の交通安全システム。
【請求項11】
隣接する前記プレキャストコンクリート版同士を電気的に接続する電気的接続部品を有することを特徴とする請求項
9に記載の交通安全システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通安全システム、特に横断歩道の利用者の安全に関する。
【背景技術】
【0002】
横断歩道を横断している歩行者の安全を守るために、横断歩道を点灯させたり、横断歩道を照らしたりして、横断歩道を横断中の歩行者の存在をドライバーに知らせるための技術が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-90599号公報
【文献】特開2012-62718号公報
【文献】特開2006-265989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、いずれも横断歩道近辺を明るくする技術であるため、高速で走行している場合やカーブ直後に横断歩道がある場合、横断歩道を横断中の歩行者に気づくのが遅れる場合がある。
【0005】
本発明は、横断歩道又はその近傍に人がいることを車両のドライバーにより早く気づかせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る交通安全システムは、車道を形成するプレキャストコンクリート版のうち第1のプレキャストコンクリート版の表面に形成される横断歩道を横断中及び横断歩道近傍にいる人を検知する人検知手段と、前記第1のプレキャストコンクリート版とは異なる第2のプレキャストコンクリート版の表面に形成され、前記横断歩道の前記横断歩道に向かって車両が走行してくる側に設置される停止線より手前に配設される自発光型路面標示と、前記自発光型路面標示に電力を供給する電源手段と、前記人検知手段による人の検知状況に応じて前記自発光型路面標示の点灯を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記自発光型路面標示は、前方に横断歩道があることを示す文字又は形状で示されることを特徴とする。
【0008】
また、前記自発光型路面標示は、前方に横断歩道があることを示す予告マーク、「止まれ」の文字のマーク、又は歩行者の形状のマークであることを特徴とする。
【0009】
また、前記自発光型路面標示は、ドライバーが前記横断歩道を見ることのできない車道上の位置に配設されることを特徴とする。
【0011】
また、前記自発光型路面標示は、車道を形成するプレキャストコンクリート版の表面に形成されることを特徴とする。
【0012】
また、前記第1プレキャストコンクリート版の手前に「止まれ」の文字のマークが形成される第3プレキャストコンクリート版が形成され、前記第3プレキャストコンクリート版の手前に歩行者の形状のマークが形成される第4プレキャストコンクリート版が形成され、前記第4プレキャストコンクリート版の手前に前方に横断歩道があることを示す予告マークが形成される第5プレキャストコンクリート版が形成される、ことを特徴とする。
また、前記自発光型路面標示に近付く車両を検知する車両検知手段を有し、前記制御手段は、前記車両検知手段が車両を検知しているときに前記自発光型路面標示を点灯又は点滅させることを特徴とする。
また、前記制御手段は、前記人検知手段が人を検知し、かつ前記車両検知手段が車両を検知しているときに前記自発光型路面標示を点灯又は点滅させることを特徴とする。
また、前記車両検知手段は、前記第2のプレキャストコンクリート版より手前に配設される第6のプレキャストコンクリート版に形成されることを特徴とする。
また、前記電源手段は、第7のプレキャストコンクリート版に組み込まれ、車道を形成するプレキャストコンクリート版のうち前記電源手段が組み込まれていないプレキャストコンクリート版に電力を供給する、ことを特徴とする。
また、前記電源手段が組み込まれていないプレキャストコンクリート版は、前記第2のプレキャストコンクリート版であることを特徴とする。
また、隣接する前記プレキャストコンクリート版同士を電気的に接続する電気的接続部品を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、横断歩道又はその近傍に人がいることを車両のドライバーにより早く気づかせることができる。
【0014】
また、横断歩道に近付く車両が検知されている場合に限り自発光型路面標示を点灯又は点滅させるようにすることで省エネ効果及び電源手段の小容量化を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る交通安全システムの一実施の形態を示す全体構成図である。
【
図2】本実施の形態における路版の構成例を示す図である。
【
図3】本実施の形態における路版に設けられる太陽電池パネルの形成例を示す図である。
【
図4】本実施の形態における人検知機器の構成例を示す図である。
【
図5A】本実施の形態において路版間の電気的接続の構造の一例を側方から見たときの図である。
【
図5B】本実施の形態において路版間の電気的接続の構造の一例を上方から見たときの図である。
【
図6A】本実施の形態における電気的接続部品の他の例を側方から見たときの図である。
【
図6B】本実施の形態において電気的接続部品の他の例を上方から見たときの図である。
【
図7】本実施の形態において路版間の電気的接続の構造の他の例を側方から見たときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る交通安全システムの一実施の形態を示す全体構成図である。
図1では、便宜的に本実施の形態の説明に必要な構成として、横断歩道1が設けられている道路2のうち、横断歩道1に向かって車両が走行してくる側の道路の構成を示している。
図1に示す車線との対向車線側は、省略している。
【0018】
本実施の形態における道路2のうち少なくとも車道2aは、矩形形状のプレキャストコンクリート版(以下、「路版」)3を並べて敷設することで形成される。
図1では、複数の種類の路版3a~3fを敷設している。なお、路版3a~3fを区別することなく説明する場合には「路版3」と称することにする。「プレキャストコンクリート版(路版)」3は、現場で組立・設置を行うために、工場などで運搬可能な形や大きさに予め製造された板状のコンクリートである。車道2aの両側には、歩道2bが設けられ、車道2aと歩道2bは、ガードレール4によって区切られている。
【0019】
図2は、本実施の形態において用いる路版3の構成の例を示す図であるが、
図1に示すように、路版3a~3eは、横断歩道1を形成する路版3fより手前に敷設される。本実施の形態において「手前」というのは、車両が走行してくる側をいう。従って、横断歩道1より手前というのは、
図1において横断歩道1より図面左側に示している車道2a側であり、前述した「横断歩道1に向かって車両が走行してくる側」と同義である。
【0020】
なお、本実施の形態では、1つの路版3b等(路面標示パネル)に1つの路面標示を設けた例を示しているが、路版3と路面標示の大きさの関係に応じて、1つ路版3に複数の路面標示を設けてもよいし、1つの路面標示を複数の路版3に分割して設けてもよい。
【0021】
路版3b,3d,3e(路面標示パネル)は、前方に横断歩道1があることを示す路面標示が形成された路版3である。そして、その路面標示は、電力が供給されることによって発光する自発光型路面標示として形成される。本実施の形態では、自発光型路面標示をLEDで形成することを想定しているが、LEDの代わりに液晶パネル(LEDがバックライト)又は有機EL等で形成してもよい。LEDは、表面をシリコーン樹脂で防水対策した上で、透明ポリカーボネート樹脂などでカバーする。透明ポリカーボネート樹脂の表面は、自動車やトラックのタイヤが滑らないように表面加工を行う。例えば、表面加工として、摩擦が高くなるようなコーティング、半球状の凹凸をつける、または直径1~数ミリ程度のポリカーボネート、ガラスの破片、粒 等を固定化する。
【0022】
本実施の形態の場合、
図1に示すように、横断歩道1の路版3fの直前に「止まれ」の路面標示が形成された路版3eが配設され、その手前には人の形状の路面標示が形成された路版3dが配設される。前方に横断歩道1があることを示す路面標示のうち、路版3d,3eの路面標示が法律で定められていない道路標示であるのに対し、予告マーク(ダイヤのマーク)の路面標示を設ける位置は法律で定められている。従って、予告マークの路面標示が形成された路版3bは、法律で定められた位置に配設される。本実施の形態では、このように3種類の路面標示を設ける例を示すが、これらの例に限る必要はない。
【0023】
路面標示の路版3b,3d,3e(路面標示パネル)より手前の位置には、車両検知手段5を具備する路版3a(車両検知パネル)が配設される。そして、これらの路版以外の位置に太陽電池6を含む電源手段が組み込まれた路版3c(太陽電池パネル)が配設される。
【0024】
車両検知手段5は、路面標示の路版3b,3d,3eに近付く車両を検知する手段であり、車両の検知には、従前からある手法を利用すればよい。例えば、路版3aを通行する車両の重量、振動、赤外線、超音波等により検知する。なお、本実施の形態では、車両検知手段5を路版3に設けるようにしたが、これに限らず、車道2aの上方や側方に配設して、路面標示に近付く車両を検知するように構成してもよい。
【0025】
本実施の形態における電源手段は、太陽電池(パネル)6を具備する。すなわち、
図3に示すように路版3cの表面に太陽電池パネル6を設け、太陽光を利用して発電する。太陽電池パネル6を、
図3(a)に示すように路面に貼り付けてもよいし、
図3(b)に示すように路面に埋め込んでもよい。太陽電池パネル6は、耐久性を考慮して通常、車両が走行しない位置(タイヤにより踏まれにくい位置、例えば、路版3の車両走行方向に沿った中央線の位置や歩道2b寄り若しくはセンターライン寄りの位置)に設置するのが好適である。電源手段の構成については、後述する。
【0026】
また、本実施の形態では、
図1に示すように横断歩道1の近傍に人検知機器7を設置する。本実施の形態では、車道2aと歩道2bを隔てるガードレール4に取り付けるよう図示しているが、後述する機能を発揮できる位置であれば、取付位置はガードレール4に限定する必要はない。本実施の形態における人検知機器7の一例を
図4に示す。
【0027】
人検知機器7は、横断歩道1を横断している人及び歩道2b上の横断歩道1の近傍にいる人を検知する人検知手段である。人検知機器7は、人感センサー71、太陽電池(パネル)72、蓄電池73、無線送信機74及びコントローラ75を有する。人感センサー71は、横断歩道1を横断している人、横断歩道1の近傍にいる人(横断歩道1をこれから横断する可能性のある人)を検知する。人の検知には、赤外線、超音波、可視光等既存の技術を利用して検知してよい。太陽電池72は、太陽光を利用して発電する。蓄電池73は、太陽が出ていない天気のときや夜間においても機能が発揮できるように太陽電池72が発電した電力を蓄積する。無線送信機74は、人検知機器7が人を検知していることを路版3、本実施の形態では、後述するように電源手段を搭載した路版3cに通知するための通知手段である。本実施の形態では、無線により通知するが、道路下に配線するなどして有線にて通知するように構成してもよい。コントローラ75は、人検知機器7に搭載された各構成要素71~74の動作を制御する。なお、本実施の形態では、人検知機器7を直方体形状にて図示したが、設置スペース等を考慮して適切な形状にて構成すればよい。
【0028】
図5Aは、本実施の形態において電源手段を具備する路版3cと電力の供給を受ける路面標示を具備する路版3bとの間の電気的接続の構造の一例を側方から見たときの図であり、
図5Bは上方から見たときの図である。なお、ここでは、路面標示パネルとして路版3bを代表させて説明する。
【0029】
本実施の形態における自発光型路面標示は、電源手段から電力が供給されて点灯することが可能となる。そのために、本実施の形態では、路版3cに電源手段を設け、路版3cから路版3bに電力を供給できるように電気的接続部品8を用いる。
【0030】
本実施の形態における電気的接続部品8は、オスピン8aを有している。
図5Bに示すように、本実施の形態では、一対の路版3を接続するために4組のオスピン8aが形成されているが、対向する位置のオスピン8a同士は、電気的接続部品8の本体内部で電気的に接続されている。一方、路版3b,3cには、敷設されたときに対向する辺近傍にメスピン31が配設されている。このように、路版3の他の路版3と対向する側の形状は、電気的接続部品8の形状に応じて決まる。そして、
図5Aに示す矢印のように電気的接続部品8を上方から差し込む。これにより、オスピン8aとメスピン31が係合し、電気的接続部品8が路版3b,3cに固定され、路版3bと路版3cが電気的に接続される。
【0031】
ところで、路版3cには、太陽電池6以外にも電源手段を構成する蓄電池32、無線受信機33、パワーコントローラ34が搭載されている。蓄電池32は、太陽が出ていない天気のときや夜間においても機能が発揮できるように太陽電池6が発電した電力を蓄積する。無線受信機33は、人検知機器7の無線送信機74が送信する情報を受信する。具体的には、人検知機器7が人を検知していることを示す情報を受信する。更に、無線受信機33は、車両検知手段5が車両を検知したことを示す情報を受信する。パワーコントローラ34は、各構成要素3,32,33の動作を制御する。具体的には、人検知機器7による人の検知状況及び車両検知手段5による車両の検知状況に応じて路版3bの自発光型路面標示35への電力供給制御を行うことによって自発光型路面標示35の点灯を制御する。なお、無線受信機33は、パワーコントローラ34に内蔵されていてもよい。
【0032】
そして、太陽電池6により生成された電力は、配線39を介して蓄電池32に蓄積される。そして、蓄電池32に蓄積された電力は、パワーコントローラ34による制御のもと、配線36、メスピン31、電気的接続部品8(オスピン8a)、配線37を介して自発光型路面標示35に供給される。このようにして、自発光型路面標示35は、パワーコントローラ34による制御のもと、点灯したり、点滅したりすることが可能となる。
【0033】
路版3eは、電源手段を具備する路版3cに隣接されていないが、路版3dを介して電力の供給を受けるように構成してもよい。例えば、路版3dの路版3c,3eと対向する両辺には、
図5A,5Bに示すメスピンが配設されており、路版3dは、上記のように電気的接続部品8によって路版3cと電気的に接続される。他方、路版3eとも電気的接続部品8によって電気的に接続される。そして、路版3dは、電気的接続部品8を介して路版3cから供給された電力を、配線37にて路版3dに形成された自発光型路面標示35に供給すると共に、図示しない配線にて路版3cと反対側の路版3eに電気的接続部品8を介して供給する。これにより、路版3eに形成された自発光型路面標示35は点灯可能となる。
【0034】
車両検知パネルにも上記と同様に電源手段と接続するための構成を設けて電源手段から電力の供給を受けることができるように構成する。
【0035】
なお、本実施の形態では、電源手段を有する太陽電池パネルを、自発光型路面標示を具備する路面標示パネルや車両検知手段を具備する車両検知パネルと別個に形成するようにしたが、路面標示パネルや車両検知パネルに電源手段を配設して電力を自ら生成して単独の路版3にて動作できるように構成してもよい。
【0036】
次に、本実施の形態における動作について説明する。なお、横断歩道1を利用するものとしては、自転車等もあり得るが、以降の説明では、歩行者(人)を例にして説明する。
【0037】
人検知機器7における人感センサー71は、横断歩道1及び歩道2b上の横断歩道1をこれから利用しようとする歩行者が立つ位置を検知ゾーンとし、人を常時検知している。ここで、検知ゾーンに人を検知すると、コントローラ75は、人が検知されたことを示す情報を無線送信機74に発信させる。
【0038】
路版3cに埋め込まれている無線受信機33が無線送信機74により発信された情報を受信すると、パワーコントローラ34は、車両検知手段5が車両を検知しているかどうかを確認する。ここで、車両検知手段5が車両を検知している場合、パワーコントローラ34は、自発光型路面標示に電力を供給することによって自発光型路面標示を点灯又は点滅させる。この点灯又は点滅(以下、単に「点灯」)により、車両のドライバーは、走行先に横断歩道1を横断している人若しくはこれから横断しようとしている人がいることに気づく。
【0039】
本実施の形態によれば、このように横断歩道1の直前ではなく手前(予告マークの位置)で横断歩道1の歩行者の存在をドライバーに知らせることができるので、横断歩道1をこれから通過しようとする車両を横断歩道1の手前でより確実に停止させることが可能となる。道路2がカーブしていて横断歩道1は見えなくても予告マークは見える場合には、特に効果的である。また、夜間、特に雨天時においては常夜灯のない暗い横断歩道1を渡る歩行者は非常に見づらいが、このような道路2においてもドライバーに横断歩道1のだいぶ手前から車速を落とさせ、横断歩道1の手前で確実に停車させることが可能となる。
【0040】
本実施の形態では、上記説明したように人検知機器7が人を検知し、かつ車両検知手段5が車両を検知したときに自発光型路面標示を点灯させるようにした。人検知機器7が人を検知したときに点灯させるようにしてもよいが、点灯する自発光型路面標示を見る車両(ドライバー)がいなければ、点灯させる意味はない。一方、車両検知手段5が車両を検知したときに点灯させるようにしてもよいが、横断歩道1の周辺に人が検知されていなければ、車両を横断歩道1の手前で停止させる必要がない。つまり、自発光型路面標示を点灯させる意味はない。そこで、本実施の形態では、省エネ効果を考慮して、人検知機器7が人を検知したときに車両検知手段5が車両を検知した場合に自発光型路面標示を点灯するように制御する。
【0041】
以上の説明から明らかなように、車両が検知されたタイミングで路面標示は点灯されるので、車両検知手段5を具備する路版3aと路版3aに最も近い路面標示を具備する路版3bとは、車両が路版3aを通り過ぎる前に路面標示(予告マーク)が点灯を開始して、車両のドライバーが路版3bの路面標示の点灯に気づく位置関係(距離関係)とする必要がある。
【0042】
自発光型路面標示は、少なくとも1つ用意されていればよいようにも考えられる。本実施の形態の例によれば、横断歩道1に最も遠い路版3bのみを用意しておけば、ドライバーに横断歩道1からより離れた位置で歩行者の存在を知らせることが可能となる。このため、横断歩道1の手前でより確実に停止させることが可能となる。ただ、車両の走行速度やドライバーの視線(遠くを見るドライバーの視線)を考慮すると、本実施の形態のように、複数の自発光型路面標示を並べて設けておくことでより確実に効果を奏することが可能となる。
【0043】
なお、本実施の形態では、便宜的に車道2aを直線道路として説明した。ただ、実際の道路では、
図1に示す路版3a(車両検知手段5)と横断歩道1との間、例えば路版3aと路版3bとの間に車道2aへ合流する側道(車道)がある場合も考えられる。この場合、車道2a上の側道の入口若しくは側道の出口(合流地点)に路版3a(車両検知手段5)を追加で設置するのがよい。このように、路面標示のある路版3b等(路面標示パネル)に1つの路版3a(車両検知パネル)を対応付けて設置するだけでなく、側道がある場合等には、1つ(1組)の路面標示パネルに複数の車両検知パネルを対応付けして設置してもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態では、横断歩道を横断している人に加えて横断歩道1の近傍にいる人を、これから横断歩道1を渡る者と仮定して検知するようにした。しかしながら、実際には、歩道2bを単に歩行していて横断歩道1を横断せずに通過する場合も考えられる。そこで、本実施の形態では、人感センサー71が出力する超音波等で人の歩く方向を推定し、横断歩道1の位置で停止していなかったり、横断歩道1の方を向いていなかったりする場合、その人は横断歩道1を横断する意思がない者と判断して検知の対象外としてもよい。この場合、人検知機器7には、人感センサー71に代えて、あるいは人感センサー71と共に撮影手段としてカメラを搭載し、カメラによる撮影画像を解析することによって映し出された人の行動、すなわち横断歩道1をこれから渡ろうとしているのか否かを判定するようにしてもよい。
【0045】
ところで、例えば、車両検知手段5が車両を検知した直後に人検知機器7が人を検知する場合(歩道2bの歩行者が横断歩道1への横断を開始する場合)があり得る。換言すると、人検知機器7が人を検知したときは、車両検知手段5が車両を検知した直後(路版3aの位置を車両が通過した直後)である場合があり得る。このような場合を考慮して、パワーコントローラ34は、人検知機器7が人を検知したタイミングで車両検知手段5に車両の検知の有無を問い合わせるのではなく、車両検知手段5から車両の検知の有無を常時取得するようにしてもよい。すなわち、パワーコントローラ34は、横断歩道1の周辺に人が検知されているときに車両が横断歩道1を通過するようなタイミングの時には、自発光型路面標示を点灯するように制御する。
【0046】
上記説明では、
図5A,5Bに示す電気的接続部品8を用いて太陽電池パネルを他の種類のパネルに電気的に接続するようにしたが、以下に示す他の構造の電気的接続部品を用いて電気的に接続するようにしてもよい。
【0047】
図6Aは、本実施の形態において電気的接続部品8とは異なる構造を有する電気的接続部品9を上方から見たときの平面図、
図6Bは、
図6Aに示す電気的接続部品9を側方から見たときの側面図である。また、
図7は、電気的接続部品9を用いて路版3bと路版3cとを電気的に接続した状態を側方から見たときの図である。電気的接続部品9は、箱形状の本体91を有しており、その本体91の路版3と対向する側面には、凸形状のコネクタ部材(以下、「凸コネクタ」)92が配設される。
図6Aに示すように、本実施の形態では、一対の路版3を接続するために4組の凸コネクタ92が形成されているが、対向する位置の凸コネクタ92同士は、本体91の内部で配線93にて電気的に接続されている。そして、本体91の頂部は、防水シート94で覆われる。
【0048】
一方、路版3b,3cの対向する位置には、電気的接続部品9が装着可能な凹部が形成されている。そして、電気的接続部品9の装着時において凸コネクタ92と対向する位置には平面コネクタ38が配設される。路版3cの平面コネクタ38は、配線36を介して蓄電池32に接続され、一方、路版3bの平面コネクタ38は、配線37を介して自発光型路面標示35に接続される。
【0049】
以上の構成において、敷設された路版3b,3cの間に電気的接続部品9を上方から差し込み固定するが、この際、凸コネクタ92の本体91から突出している部分は、差し込むに連れて平面コネクタ38と接触しながら本体91の内部にスライドして入り込む。この結果、
図7に示すように平面コネクタ38と凸コネクタ92は、電気的に接続され、電気的接続部品9は、凸コネクタ92の付勢力により路版3bと路版3cとの間に強固に固定される。
【0050】
なお、上記説明では、
図1に例示したように、ガードレール4によって車道2aと歩道2bとが区切られている道路を例にして説明したが、道路の状況はこれに限らず、歩道が設けられていない道路や、ガードレール4のない路側帯等、横断歩道が設けられている種々の種類の道路に適用可能である。
【0051】
また、以上の動作の説明から明らかなように路面標示の点灯制御に必要な電力が蓄電池32,73に蓄電できるように太陽電池6,72及び蓄電池32,73の容量を決めればよい。
【0052】
また、本実施の形態では、電源手段を路版3に設けるようにしたが、路版3以外の場所、例えば、歩道2bやガードレール4等道路上若しくは、道路の上方等に設けてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、車道2aの形成に関し、自発光型路面標示を組み込んだプレキャストコンクリート版を施工する工程で説明したが、例えば既設道路の表面を切削して自発光型路面標示そのものを埋設する工程としてもよい。あるいは、薄型の自発光型路面標示である場合、路面に自発光型路面標示を直接接着する工程としてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、自発光型路面標示として横断歩道の予告マーク、“止まれ”の文字、及び歩行者マークを例にしたが、これに限る必要はない。例えば、歩行者の検知と連動する警告灯等他の形態の自発光型路面標示を路面に設置してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 横断歩道、2 道路、2a 車道、2b 歩道、3a~3f プレキャストコンクリート版(路版)、4 ガードレール、5 車両検知手段、6,72 太陽電池(パネル)、7 人検知機器、8,9 電気的接続部品、8a オスピン、31 メスピン、32,73 蓄電池、33 無線受信機、34 パワーコントローラ、35 自発光型路面標示、36,37,39,93 配線、38 平面コネクタ、71 人感センサー、74 無線送信機、75 コントローラ、91 本体、92 凸コネクタ、94 防水シート。