(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】テニスボール用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
A63B 39/00 20060101AFI20230511BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20230511BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230511BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230511BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/151 20060101ALI20230511BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230511BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A63B39/00 Z
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/541
C08K5/17
C08K5/151
C08K9/04
C08L21/00
(21)【出願番号】P 2018236312
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 悠子
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 順則
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文哉
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 邦夫
【審査官】右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-029769(JP,A)
【文献】特表2006-522200(JP,A)
【文献】特開昭61-143455(JP,A)
【文献】特開平10-323408(JP,A)
【文献】特開平07-149958(JP,A)
【文献】特開平09-249716(JP,A)
【文献】特開2015-038183(JP,A)
【文献】特表2015-501873(JP,A)
【文献】特開平10-088028(JP,A)
【文献】特開2004-263128(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107652479(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0321681(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0138339(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108299687(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108102154(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 39/00
C08L 7/00 - 7/02
C08L 9/00 - 9/10
C08L 21/00 -21/02
C08K 3/013
C08K 5/151- 5/1545
C08K 5/17 - 5/19
C08K 5/541- 5/5435
C08K 9/04 - 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材ゴムと、扁平状充填剤とを含むゴム組成物であって、
上記ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの、JIS K6251に準拠して温度23±1℃で測定される、引張歪み10%における引張応力Mと、引張歪み5%から20%の領域における引張弾性率Eとの積M×Eが、2.0
(MPa)
2
以上20
(MPa)
2
以下であるテニスボール用ゴム組成物。
【請求項2】
上記扁平状充填剤の平均粒子径D
50が0.01μm以上50μm以下であり、この平均粒子径D
50を、その平均厚さTで除すことにより求められる扁平度DLが20以上200以下である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記扁平度DLが20以上200以下である扁平状充填剤の量が、上記基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下である請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
上記扁平状充填剤が、タルク、カオリンクレー、グラファイト、グラフェン、ベントナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、マイカ、炭酸マグネシウム、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ノントロナイト、バーミキュライト、イライト及びアロフェンからなる群から選択される請求項1から3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
カップリング剤をさらに含み、
上記カップリング剤が、上記扁平状充填剤との相互作用が可能な官能基Xと、上記基材ゴムとの相互作用が可能な官能基Yとを有し、一般式X-Yで示される化合物であ
り、
上記官能基Xが、アルコキシシリル基(-Si-R
1
3-n
(OR
2
)
n
)、4級アンモニウム基(-N
+
R
3
R
4
R
5
Z)及びエポキシ基からなる群から選択され、ここで、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
及びR
5
は、それぞれ独立に炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、アルケニルフェニル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルケニル基であり、nは1~3の自然数であり、Zは陰イオンであり、
上記官能基Yが、炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基である、請求項1から4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
上記扁平状充填剤が、上記カップリング剤で表面処理されている請求項
5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
上記表面処理された扁平状充填剤に含まれる上記カップリング剤の量が、1質量%以上50質量%以下である請求項
6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
上記扁平状充填剤に該当しない他の充填剤をさらに含み、
上記他の充填剤が、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス及び硫酸バリウムからなる群から選択される請求項1から
7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
上記基材ゴムが、ブタジエンゴム及び天然ゴムを含んでおり、この基材ゴム中のブタジエンゴムの配合量Bの天然ゴムの配合量Nに対する質量比B/Nが、1.4以下である請求項1から
8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
硫黄含有量が0.01質量%以上10質量%以下である請求項1から
9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
その0℃における損失正接tanδが、0.10以下である請求項1から
10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
ショアA硬度Haが20以上88以下である請求項1から
11のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれかに記載のゴム組成物を用いて得られるコアを備えたテニスボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスボール用ゴム組成物に関する。詳細には、本発明は、テニスボールのコアに用いるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テニスボールは、ゴム組成物からなるコアと、このコアを被覆するフェルト(メルトン)とを備えている。このコアは、中空の球体である。硬式テニスで使用されるテニスボールでは、コアの内部に、大気圧よりも40kPaから120kPa高い圧力の圧縮ガスが充填されている。このテニスボールは、加圧テニスボール(プレッシャーボール)とも称される。
【0003】
加圧テニスボールでは、大気圧よりも高いコアの内圧により、優れた反発性能と良好な打球感とが付与される。反発性能に優れたテニスボールがテニスコートに打ち付けられるとき、大きな速度でバウンドする。バウンド後のボール速度が大きなテニスボールは、プレーヤー及び観戦者にスピード感を感じさせる。スピード感を感じさせるテニスボールは、ゲームを面白くする。一方、コアの内圧が大気圧よりも高いことに起因して、充填された圧縮ガスが徐々にコアから漏出する。ガスの漏出によって、コアの内圧が大気圧付近まで減少する場合がある。コアの内圧が減少したテニスボールは、スピード感及び打球感に劣る。
【0004】
近年、ラケット等の改良にともなって、よりスピード感のあるテニスボールが要望されている。特開昭61-143455号公報では、鱗片状ないし平板状充填剤を配合したゴム材料により、ボール内圧の経時的な低下を抑制して、反発性能を維持する検討がなされている。特開2011-188877号公報、特開2011-188878号公報及び特開2011-177369号公報には、内圧を高めたコアと、不織布により形成されたフェルトとを備えることにより、プレー時のコアの撓みを低減して、バウンドの経時的劣化を抑制したテニスボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-143455号公報
【文献】特開2011-188877号公報
【文献】特開2011-188878号公報
【文献】特開2011-177369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開昭61-143455号公報、特開2011-188877号公報、特開2011-188878号公報及び特開2011-177369号公報が開示では、反発性能等の経時劣化を低減するための技術が提案されているが、バウンド時のボール速度が大きいゴム組成物は開示されていない。また、特開昭61-143455号公報で提案されたゴム材料によれば、鱗片状ないし平板状充填剤の配合によりゴム材料が過度に硬くなり、テニスボールの打球感が低下する場合がある。
【0007】
テニスボールのスピード感の向上には、未だ改善の余地がある。本発明の目的は、打球感を阻害することなく、スピード感を高めたテニスボールを得るためのゴム組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、少なくとも基材ゴムと、扁平状充填剤とを含んでいる。このゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの、JIS K6251に準拠して温度23±1℃で測定される、引張歪み10%における引張応力Mと、引張歪み5%から20%の領域における引張弾性率Eとの積M×Eは、2.0(MPa)
2
以上20(MPa)
2
以下である。
【0009】
好ましくは、この扁平状充填剤の平均粒子径D50は0.01μm以上50μm以下である。好ましくは、この平均粒子径D50を、その平均厚さTで除すことにより求められる扁平度DLは20以上200以下である。
【0010】
好ましくは、この扁平度DLは20以上200以下である扁平状充填剤の量は、この基材ゴム100質量部に対する5質量部以上150質量部以下である。
【0011】
好ましくは、この扁平状充填剤は、タルク、カオリンクレー、グラファイト、グラフェン、ベントナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、マイカ、炭酸マグネシウム、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ノントロナイト、バーミキュライト、イライト及びアロフェンからなる群から選択される。
【0012】
好ましくは、このゴム組成物は、カップリング剤をさらに含んでいる。このカップリング剤は、この扁平状充填剤との相互作用が可能な官能基Xと、この基材ゴムとの相互作用が可能な官能基Yとを有し、一般式X-Yで示される化合物である。
【0013】
好ましくは、この官能基Xは、アルコキシシリル基(-Si-R1
3-n(OR2)n)、4級アンモニウム基(-N+R3R4R5Z)及びエポキシ基からなる群から選択され、ここで、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、アルケニルフェニル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルケニル基であり、nは1~3の自然数であり、Zは陰イオンである。この官能基Yは、炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基である。
【0014】
好ましくは、この扁平状充填剤はこのカップリング剤で表面処理されている。好ましくは、この扁平状充填剤に対するカップリング剤の量は、1質量%以上50質量%以下である。
【0015】
好ましくは、このゴム組成物は、この扁平状充填剤に該当しない他の充填剤をさらに含む。この他の充填剤は、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス及び硫酸バリウムからなる群から選択される。
【0016】
好ましくは、この基材ゴムは、ブタジエンゴム及び天然ゴムを含んでいる。この基材ゴム中のブタジエンゴムの配合量Bの天然ゴムの配合量Nに対する質量比B/Nは、1.4以下である。
【0017】
好ましくは、このゴム組成物の硫黄含有量は0.01質量%以上10質量%以下である。好ましくは、このゴム組成物の、その0℃における損失正接tanδは、0.10以下である。好ましくは、このゴム組成物のショアA硬度Haは、20以上88以下である。
【0018】
このテニスボールは、前述したいずれかのゴム組成物を用いて得られるコアを備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分との密着性に優れた扁平状充填剤を含んでいる。このゴム組成物を加硫して得られるコアでは、低歪み領域における応力及び弾性率が適正である。このコアを備えたテニスボールでは、打撃されてコートと接地するときの変形が抑制される。このテニスボールがバウンド時に受ける接地抵抗は、小さい。このゴム組成物によれば、打球感を損なうことなく、スピード感を向上させたテニスボールが得られる。さらに、このテニスボールでは、扁平状充填剤のガス漏出防止作用により、好適なスピード感及び良好な打球感が長期間維持されうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るテニスボールの一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るテニスボール2が示された一部切り欠き断面図である。このテニスボール2は、中空のコア4と、このコア4を被覆する2枚のフェルト部6と、この2枚のフェルト部6の間隙に位置するシーム部8とを有している。コア4の厚みは、通常、3mmから4mm程度である。コア4の内部には、圧縮ガスが充填されている。コア4の表面には、2枚のフェルト部6が、接着剤により貼り付けられている。
【0023】
コア4は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物から形成されている。このゴム組成物は、少なくとも基材ゴムと、扁平状充填剤とを含んでいる。
【0024】
扁平状充填剤は、多数の扁平粒子からなる。このゴム組成物において、扁平状充填剤をなす多数の扁平粒子は、基材ゴムを主成分とするマトリックスに分散している。本願明細書において、基剤ゴムを主成分とするマトリックスを「ゴム成分」と記載する場合がある。この扁平状充填剤は、ゴム成分と良く密着する。ゴム成分との密着性の大きい扁平状充填剤は、補強性に優れている。
【0025】
このゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムでは、補強性に優れた扁平状充填剤を含むことによって、特に、接地時の変形に寄与する低歪み領域において、適正な引張特性が得られる。具体的には、この扁平状充填剤を含むゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムでは、JIS K6251に準拠して、温度23±1℃で測定される引張歪み10%における引張応力M(MPa)と、引張歪み5%から20%の領域における引張弾性率E(MPa)との積M×Eが、2.0(MPa)
2
以上20(MPa)
2
以下である。
【0026】
積M×Eは、扁平状充填剤とゴム成分との密着性を示す指標である。このゴム組成物を用いて得られるコア4を備えたテニスボール2では、積M×Eが2.0(MPa)
2
以上であることによって、扁平状充填剤による補強効果が発揮され、バウンド時にテニスコートと接地するときの変形が抑制される。このテニスボール2では、変形に起因する接地抵抗が低減されることにより、バウンド後のボール速度が、大きくは低下しない。バウンド時の変形抑制の観点から、積M×Eは、2.5(MPa)
2
以上が好ましく、3.0(MPa)
2
以上がより好ましい。
【0027】
また、このテニスボール2では、積M×Eが20(MPa)
2
以下であることにより、加硫ゴムが過剰に硬くなることが回避される。このテニスボール2の打球感は、良好である。このゴム組成物によれば、打球感を損なうことなく、スピード感を向上させたテニスボール2が得られる。打球感の観点から、積M×Eは、15.0(MPa)
2
以下が好ましく、12.0(MPa)
2
以下がより好ましい。
【0028】
さらに、このゴム組成物から得られるコア4では、ゴム成分のマトリックスに分散する多数の扁平粒子が、その内部における気体分子の移動を阻害する。このコア4を備えたテニスボール2では、扁平状充填剤をなす多数の扁平粒子によって、ガス漏出が防止される。このテニスボール2では、好適なスピード感及び良好な打球感が長期間維持されうる。
【0029】
このゴム組成物では、積M×Eが2.0(MPa)
2
以上20(MPa)
2
以下である限り、引張応力Mは特に限定されない。スピード感向上の観点から、引張歪み10%における引張応力Mは、0.3MPa以上が好ましく、0.4MPa以上がより好ましい。打球感の観点から、好ましい引張応力Mは、3.5MPa以下である。引張歪み10%における引張応力Mの測定方法については、実施例において後述する。
【0030】
このゴム組成物では、積M×Eが2.0(MPa)
2
以上20(MPa)
2
以下である限り、引張弾性率Eは特に限定されない。スピード感向上の観点から、引張歪み5%から20%の領域における引張弾性率Eは、3.0MPa以上が好ましく、3.5MPa以上がより好ましい。打球感の観点から、好ましい引張弾性率Eは、14.0MPa以下である。引張歪み5%から20%の領域における引張弾性率Eは、実施例にて後述する方法にて測定され、次式に従って算出される。
E=(M20-M5)/(20-5)
ここで、M20は、引張歪み20%における引張応力であり、M5は引張歪み5%における引張応力である。
【0031】
本発明に係るゴム組成物において、扁平状充填剤の種類は特に限定されず、積M×Eが2.0(MPa)
2
以上20(MPa)
2
以下となるように、適宜選択されうる。タルク、カオリンクレー、グラファイト、グラフェン、ベントナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、マイカ、炭酸マグネシウム、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ノントロナイト、バーミキュライト、イライト及びアロフェンからなる群から選択される扁平状充填剤が好ましい。タルク、カオリンクレー、グラファイト及びベントナイトがより好ましい。2種以上の扁平状充填剤が併用されてもよい。
【0032】
扁平状充填剤の平均粒子径D50は、その種類によって適宜選択される。ガス漏出防止の観点から、扁平状充填剤の平均粒子径D50は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が特に好ましい。基材ゴムとの混合性の観点から、平均粒子径D50は50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。本願明細書において、平均粒子径D50(μm)とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業社製のLMS-3000)によって測定される粒度分布において、小径側から累積して50体積%となる平均粒子径を意味する。
【0033】
扁平状充填剤の平均厚さTは、その種類によって適宜選択される。ガス漏出防止の観点から、扁平状充填剤の平均厚さTは1.00μm以下が好ましく、0.50μm以下がより好ましく、0.20μm以下が特に好ましい。基材ゴムとの混合性の観点から、平均厚さTは0.001μm以上が好ましく、0.002μm以上がより好ましく、0.003μm以上が特に好ましい。本願明細書において、扁平状充填剤の平均厚さT(μm)は、透過型電子顕微鏡等の顕微鏡観察により測定される。具体的には、扁平状充填剤から採取した複数の粒子を、透過型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のH-9500)で観察して得られた画像から、この扁平状充填剤の平均粒子径D50と同等の大きさの粒子を選択してその厚さを測定する。12個の粒子について得られた測定値の平均値が、この扁平状充填剤の平均厚さTとされる。
【0034】
ガス漏出防止の観点から、扁平状充填剤の平均粒子径D50(μm)を平均厚さT(μm)で除すことにより求められる扁平度DLは、20以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上がさらに好ましく、100以上が特に好ましい。ゴム成分との混合性の観点から、好ましい扁平度DLは、200以下である。なお、扁平状充填剤をなす複数の扁平粒子が凝集又は多層化して集合体を形成している場合、扁平度DLは、この集合体を含んだ状態で測定して得られる平均粒子径D50及び平均厚さTから算出される。本発明の効果が阻害されない範囲で、このゴム組成物が、扁平度20未満の扁平状充填剤を含んでもよい。
【0035】
積M×Eが前述の範囲を満たす限り、扁平状充填剤の配合量は特に限定されず、その種類及び粒子形状によって適宜調整される。所定の積M×Eが得られやすいとの観点から、好ましくは、扁平度DLが20以上200以下である扁平状充填剤の量は、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下である。スピード感向上の観点から、扁平度DLが20以上200以下である扁平状充填剤の量は、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、この量は、120質量部以下が好ましく、100質量部以下が特に好ましい。
【0036】
積M×Eが前述の範囲を満たす限り、ゴム組成物が、扁平状充填剤に該当しない他の充填剤を含んでもよい。ここで、扁平状充填剤に該当しない他の充填剤とは、扁平度DLが1程度の充填剤を意味する。この他の充填剤として、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、硫酸バリウム等が挙げられる。シリカ、カーボンブラック及び酸化亜鉛からなる群から選択される充填剤が好ましい。ゴム成分との密着性の観点から、炭素系充填剤が好ましく、カーボンブラックが特に好ましい。他の充填剤として、2種以上を併用してもよい。なお、本願明細書において、炭素系充填剤とは、炭素原子を主構成成分とする多数の粒子からなる充填剤を意味する。好ましくは、その構成成分の90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上が炭素原子である充填剤を意味する。
【0037】
扁平状充填剤と併用される他の充填剤の平均粒子径D50は、選択される充填剤の種類に応じて適宜設定される。ガス漏出防止の観点から、他の充填剤の平均粒子径D50は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.10μm以上が特に好ましい。打球感の観点から、他の充填剤の平均粒子径D50は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。他の充填剤の平均粒子径D50(μm)は、扁平状充填剤と同様の方法にて測定される。
【0038】
本発明の効果が阻害されない限り、他の充填剤の配合量は特に限定されない。補強性の観点から、他の充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、他の充填剤の配合量は、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。2種以上を併用する場合、その合計量が上記範囲内となるように調整される。本発明のゴム組成物において、扁平状充填剤に該当しない他の充填剤を含まなくてもよい。
【0039】
扁平状充填剤と、他の充填剤とを併用する場合、補強性及びガス漏出防止の観点から、その総配合量は、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、総配合量は、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
【0040】
扁平状充填剤と、他の充填剤とを併用する場合、スピード感向上の観点から、扁平状充填剤と他の充填剤との総配合量に占める扁平状充填剤の量の比率は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、上限値は100質量%である。
【0041】
好ましくは、このゴム組成物は、さらに、カップリング剤を含んでいる。このカップリング剤は、扁平状充填剤との相互作用が可能な官能基Xと、基材ゴムとの相互作用が可能な官能基Yとを有し、一般式X-Yで示される化合物である。このカップリング剤を含むゴム組成物では、官能基Xが扁平状充填剤と相互作用し、官能基Yが基材ゴムと相互作用することにより、扁平状充填剤と基材ゴムとの密着性が向上する。このゴム組成物から得られるコア4では、特に、低歪み領域における引張応力が増大する。このコア4を備えたテニスボール2では、バウンド時の変形が抑制され、スピード感が向上する。
【0042】
官能基Xは、扁平状充填剤の表面に存在する水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等と相互作用する機能を有している限り、その種類は特に限定されない。好ましくは、官能基Xは、アルコキシシリル基(-Si-R1
3-n(OR2)n)、4級アンモニウム基(-N+R3R4R5Z)及びエポキシ基からなる群から選択される。ここで、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、アルケニルフェニル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルケニル基であり、nは1~3の自然数であり、Zは、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン等の陰イオンである。本発明の効果が阻害されない限り、R1、R2、R3、R4及びR5がさらに置換基を有していてもよい。
【0043】
官能基Yは、基材ゴムの分子鎖に含まれる官能基(例えば、炭素-炭素二重結合等)又は後述する加硫成形時にこの基材ゴムの分子鎖が切断されて生じるラジカル等と相互作用する機能を有している限り、その種類は特に限定されないが、好ましくは、この官能基Yは、炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基である。
【0044】
扁平状充填剤との親和性の観点から、好ましい官能基Xは、4級アンモニウム基(-N+R3R4R5Z)である。立体障害軽減の観点から、R3、R4及びR5の少なくとも1つが、炭素数1~30の直鎖状アルキル基である4級アンモニウム塩が好ましい。直鎖状アルキル基の炭素数は1~25がより好ましく、1~20がさらに好ましく、1~10が特に好ましい。R3、R4及びR5の少なくとも1つが、メチル基である4級アンモニウム基が特に好ましい。陰イオンZとしては、水酸化物イオン及び塩化物イオンが好ましい。
【0045】
官能基Xが4級アンモニウム基であるカップリング剤は、4級アンモニウム塩とも称される。このような4級アンモニウム塩の具体例としては、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、n-ドデシルトリメチルアンモニウム、セチルジメチルベンジルアンモニウム、メチルセチルジベンジルアンモニウム、セチルジメチルエチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の水酸化物又はハロゲン化物が挙げられる。トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムの水酸化物又はハロゲン化物が好ましい。より好ましい4級アンモニウム塩は、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムのハロゲン化物であり、塩化物が特に好ましい。2種以上が併用されてもよい。
【0046】
本発明の効果が得られやすいとの観点から、扁平状充填剤が、予め、カップリング剤で表面処理されていることが好ましい。このゴム組成物は、扁平状充填剤の表面に結合したカップリング剤を含んでいる。基材ゴムとの密着性の観点から、表面処理された扁平状充填剤に含まれるカップリング剤の量(以下、変性率とも称する)は、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。打球感の観点から、変性率は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が特に好ましい。
【0047】
本発明の効果が得られる限り、扁平状充填剤をカップリング剤で表面処理する方法は、特に限定されない。例えば、水等の溶媒中に分散させた扁平状充填剤に、所定量のカップリング剤を添加し、必要に応じて加熱しながら、還流下で反応させた後、乾燥させることにより、表面処理された扁平状充填剤が得られる。市販品をそのまま使用することも可能である。
【0048】
表面処理された扁平状充填剤の変性率は、扁平状充填剤に対するカップリング剤の添加量によって調整されうる。扁平状充填剤に対するカップリングの添加量は、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましい。打球感の観点から、カップリング剤の添加量は、100質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
【0049】
本発明に係るゴム組成物において、好適な基材ゴムの例は、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体及びアクリルゴムである。より好ましい基材ゴムは、天然ゴム及びポリブタジエンである。これらのゴムの2種以上が併用されてもよい。
【0050】
天然ゴムとポリブタジエンとが併用される場合、打球感の観点から、天然ゴムの配合量Nに対するポリブタジエンゴムの配合量Bの質量比B/Nは、1.4以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.4以下が特に好ましい。基材ゴムの全量が、天然ゴムであってもよい。
【0051】
好ましくは、このゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤及び加硫助剤をさらに含んでいる。加硫剤として、例えば、粉末硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄等の硫黄;モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の硫黄化合物が挙げられる。加硫剤の配合量は、その種類に応じて調整されるが、反発性能の観点から、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。加硫剤の配合量は5.0質量部以下が好ましい。
【0052】
好適な加硫促進剤として、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド-アミン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、キサンテート系化合物等が挙げられる。反発性能の観点から、加硫促進剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましい。加硫促進剤の配合量は、6.0質量部以下が好ましい。
【0053】
加硫助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が例示される。本発明の効果を阻害しない範囲で、ゴム組成物が、さらに老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。
【0054】
好ましくは、このゴム組成物は硫黄を含んでいる。ゴム組成物中に含まれる硫黄は、架橋構造の形成に寄与しうる。ゴム組成物の架橋密度は、このゴム組成物から得られるテニスボール2の打球感及びスピード感に影響する。スピード感の観点から、このゴム組成物の硫黄含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が特に好ましい。打球感の観点から、硫黄含有量は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が特に好ましい。本願明細書において、ゴム組成物の硫黄含有量は、第17改正日本薬局方、一般試験法に記載の酸素フラスコ燃焼法に準じて測定される。なお、このゴム組成物に含まれる硫黄は、単体としての硫黄であってもよく、硫黄化合物に含まれる硫黄原子でもよい。この硫黄が、加硫剤又は加硫促進剤に由来するものであってもよい。
【0055】
ゴム組成物の0℃における損失正接tanδは、このゴム組成物からなるコア4を備えたテニスボール2の打球感に影響する。0℃におけるtanδが大きいコア4では、打球時の変形からの復元性が低下するため、打球感が重くなる傾向にある。この観点から、このゴム材料の0℃における損失正接tanδは、0.10以下が好ましく、0.085以下がより好ましく、0.075以下が特に好ましく、その下限値は0である。なお、本願明細書において、0℃における損失正接tanδは、粘弾性スペクトロメーターで得られる温度分散曲線の0℃におけるtanδの値である。測定方法の詳細については、後述する。
【0056】
スピード感の観点から、このゴム組成物のショアA硬度Haは、20以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。打球感の観点から、硬度Haは、88以下が好ましく、85以下がより好ましく、80以下が特に好ましい。硬度Haは、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたタイプAデュロメータによって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。
【0057】
コア4からのガスの漏出が防止され、好適な打球感及び反発性能が維持される、との観点から、このゴム材料の40℃における窒素ガス透過係数Gは、9.0×10-10(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)以下が好ましく、8.0×10-10(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)以下がより好ましい。本願明細書において、窒素ガス透過係数Gは、JIS K7126-1に記載の差圧法に準拠して測定される。
【0058】
本発明の目的が達成される限り、このゴム組成物を製造する方法は、特に限定されない。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等既知の混練機に、基材ゴムと扁平状充填剤と、適宜選択された他の添加剤等とを投入して溶融混練した後、得られた混練物に加硫剤等を添加して、加圧及び加熱することにより、このゴム組成物が製造されてもよい。なお、炭素系充填剤を添加する場合は、分散性の観点から、予め基剤ゴムと混合されたマスターバッチの状態で、ゴム組成物に添加することが好ましい。
【0059】
混練条件及び加硫条件は、ゴム組成物の配合により選択される。好ましい混練温度は50℃以上180℃以下である。好ましい加硫温度は、140℃以上180℃以下である。加硫時間は2分以上60分以下が好ましい。
【0060】
このゴム組成物を用いて、テニスボール2を製造する方法も、特に限定されない。例えば、このゴム組成物を所定の金型中で加硫成形することにより、2つの半球状のハーフシェルを形成する。この2個のハーフシェルを、その内部にアンモニウム塩及び亜硝酸塩を含む状態で、貼り合わせた後、圧縮成形することにより、中空の球状体であるコア4を形成する。コア4の内部では、アンモニウム塩及び亜硝酸塩の化学反応により窒素ガスが発生する。この窒素ガスにより、コア4の内圧が高められる。次に、予め、ダンベル状に裁断し、その断面にシーム糊を付着させたフェルト部6を、このコア4の表面に貼り合わせることにより、テニスボール2が得られる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0062】
[実施例1]
80質量部の天然ゴム(商品名「SMR CV60」)、20質量部のポリブタジエンゴム(JSR社製の商品名「BR01」)、66質量部のタルクA(イメリス社製の商品名「Mistron HAR」)、5質量部の酸化亜鉛(正同化学社製の商品名「酸化亜鉛2種」)及び0.5質量部のステアリン酸(日油社製の商品名「つばき」)をバンバリーミキサーに投入して、90℃で5分間混練した。得られた混練物を40℃以下に冷却後、3.6質量部の硫黄(三新化学社製の商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有)、1質量部の加硫促進剤1(三新化学社製の商品名「サンセラーD」)、1質量部の加硫促進剤2(大内新興化学社製の商品名「ノクセラーCZ」)及び1.9質量部の加硫促進剤3(大内新興化学社製の商品名「ノクセラーDM」)を添加して、オープンロールを用いて50℃で3分間混練することにより、実施例1のゴム組成物を得た。
【0063】
[実施例2-15及び比較例1-7]
基材ゴム、扁平状充填剤及び他の充填剤の量を、下表1-5に示されるものに変更し、実施例1と同様の方法にて、実施例2-15及び比較例1-7のゴム組成物を製造した。なお、炭素系充填剤を配合する場合は、予め、100質量部の基材ゴムと、50質量部の炭素系充填剤とをバンバリーミキサーを用いて90℃で5分間混練してマスターバッチを準備した後、このマスターバッチを、下表1-5に示される配合となるように添加して、それぞれのゴム組成物を得た。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表1-5に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
NR:天然ゴム、商品名「SMR CV60」
BR:JSR社製のポリブタジエンゴム、商品名「BR01」
タルクA:イメリス社製の商品名「Mistron HAR」、平均粒子径(D50)6.7μm、扁平度(DL)100
表面処理クレーA:ホージュン社製の4級アンモニウムカチオン変性ベントナイトクレー、商品名「エスベンNX80」、平均粒子径(D50)2μm、扁平度(DL)50、変性率約45質量%
表面処理クレーB:ホージュン社製の4級アンモニウムカチオン変性ベントナイトクレー、商品名「レボナイト400」、平均粒子径(D50)5μm、扁平度(DL)40、変性率約35%質量%
グラファイト:イメリス社製の商品名「SFG44」、平均粒子径(D50)49μm、扁平度(DL)120、BET比表面積5m2/g
グラフェン:XG Sciences社製の商品名「xGn-M-5」、平均粒子径(D50)5μm、扁平度(DL)700
タルクB:日本タルク社製の商品名「SSS」、平均粒子径(D50)13μm、扁平度(DL)20
クレー:イメリス社製のカオリンクレー、商品名「ECKALITE120」、平均粒子径(D50)4μm、扁平度(DL)20、BET比表面積18m2/g
マイカ:ヤマグチマイカ社製の商品名「SYA-21」、平均粒子径(D50)27μm、扁平度(DL)90、BET比表面積2m2/g
カーボンブラック:キャボットジャパン社製の商品名「ショウブラックN330」、平均粒子径(D50)0.03μm、扁平度(DL)1、BET比表面積79m2/g
シリカ:東ソー・シリカ社製の商品名「ニプシールVN3」、平均粒子径(D50)20μm、扁平度(DL)1、BET比表面積200m2/g
珪藻土:昭和化学工業社製の商品名「Radiolite500」、平均粒子径(D50)35μm、扁平度(DL)1
炭酸マグネシウム:神島化学工業社製の商品名「金星」、平均粒子径(D50)6μm、扁平度(DL)10
炭酸カルシウム:白石カルシウム社製の商品名「BF300」、平均粒子径(D50)8μm、扁平度(DL)1、BET比表面積0.27m2/g
酸化亜鉛:正同化学社製の商品名「酸化亜鉛2種」、平均粒子径(D50)0.6μm、扁平度(DL)1、BET比表面積4m2/g
ステアリン酸:日油社製の商品名「つばき」
イオウ:三新化学社製の不溶性硫黄、商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有
加硫促進剤1:三新化学社製の1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、商品名「サンセラーD」
加硫促進剤2:大内新興化学社製のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、商品名「ノクセラーCZ」
加硫促進剤3:大内新興化学社製のジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、商品名「ノクセラーDM」
【0070】
[硫黄含有量測定]
実施例1-15及び比較例1-7のゴム組成物の硫黄含有量を、第17改正日本薬局方、一般試験法に記載の酸素フラスコ燃焼法に準じて測定した。各ゴム組成物10mgを燃焼させた後、合計55mLのメタノールを添加し、次いで0.005mol/Lの過塩素酸溶液20mLを正確に添加した。10分間放置して得られた溶液を、イオンクロマトグラフィー(島津製作所製のHIC-SP)を用いて測定することにより、硫黄含有量を定量した。得られた硫黄含有量(wt.%)が、下表6-10に示されている。
【0071】
[引張試験]
実施例1-15及び比較例1-7のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの3号ダンベル型試験片を作製した。JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、23±1℃で引張試験をおこなって、引張歪み10%における引張応力M(MPa)を測定した。また、次式に従って、引張歪み5%から20%の領域における引張弾性率E(MPa)を求めた。
E=(M20-M5)/(20-5)
ここで、M20は、引張歪み20%における引張応力であり、M5は引張歪み5%における引張応力である。得られた引張応力M、引張弾性率E及びそれらの積M×Eが、下表6-10に示されている。
【0072】
[粘弾性測定]
実施例1-15及び比較例1-7のゴム組成物をモールドに投入して、160℃で2分間プレス加硫することにより、それぞれ、厚さ2mmの加硫ゴムシートを作製した。この加硫ゴムシートを切断して、それぞれ、幅4mm、長さ30mmの試験片を準備した。各試験片の0℃における損失正接を、粘弾性スペクトロメーター(ユービーエム社製のE4000)を用いて、引張モード、初期歪み10%、周波数10Hz、振幅0.05%で測定した。得られた損失正接がtanδ(0℃)として、下表6-10に示されている。
【0073】
[硬度]
実施例1-15及び比較例1-7のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間、プレス加硫することにより、厚さ2mm、幅4mm、長さ30mmの試験片3枚を準備し、各試験片を23℃の温度下で2週間保管した。その後、「ASTM-D 2240-68」の規定に準拠して、それぞれ3枚に重ね合わせた試験片に、タイプAデュロメータを装着した自動硬度計(前述の「デジテストII」)を押し付けることにより硬度を測定した。得られたショアA硬度がHaとして下表6-10に示されている。
【0074】
[窒素ガス透過係数測定]
実施例1-15及び比較例1-7のゴム組成物を用いて、それぞれ、厚さ2mm、幅4mm、長さ30mmの試験片を準備した。JIS K7126-1「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法」に準じて、各試験片の厚さ方向の窒素ガス透過係数(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)を測定した。測定には、GTRテック社製のガス透過試験機「GTR-30ANI」を使用した。測定条件は、サンプル温度40℃、測定セルの透過断面積15.2cm2、差圧0.2MPaとした。測定はすべて23±0.5℃の室内でおこなった。得られた窒素ガス透過係数に1010を乗じた数値が、G(×1010)として下表6-10に示されている。
【0075】
[テニスボールの製造]
実施例1のゴム組成物を、モールドに投入して、150℃で4分間加熱することにより、2枚のハーフシェル(厚さ3.6±0.4mm)を形成した。1枚のハーフシェルに塩化アンモニウム、亜硝酸ナトリウム及び水を投入した後、他のハーフシェルと接着し、150℃で4分間加熱することにより、球状のコアを形成した。このコアの表面に、その断面にシーム糊を付着させた2枚のフェルト部(ミリケン社製、厚み3.1mm)を貼り合わせることにより、テニスボールを得た。同様にして、実施例2-15及び比較例1-7のゴム組成物からなるコアをそれぞれ備えたテニスボールを製造した。各テニスボールの直径は65±1mmであり、その内圧は0.08±0.02MPaであった。
【0076】
[スピード感]
国際テニス規格のルール(ITF CS 01/01)に準じて、テニスボールがテニスコートに衝突する直前の速度(入射速度)Vi(m/s)と、衝突直後の速度(反射速度)Vf(m/s)との比(Vf/Vi)を求めた。具体的には、ボール発射装置(シルバー精工社製の商品名「テニサーPM100」)を用いて、テニスコート(住友ゴム工業社製の商品名「オムニコートLT20」)に向かってテニスボールを発射し、スピードガン(Applied Concepts社製の商品名「Stalter Sports2」)を用いて、入射速度Vi(m/s)及び反射速度Vf(m/s)を測定し、比(Vf/Vi)を算出した。測定は、温度19℃、相対湿度57%の条件下でおこなった。発射時のテニスボールの速度を30±2(m/s)とし、回転数を毎秒3回転未満とし、テニスコートへの入射角度を16±2°(degree)とした。各テニスボールについて3回測定したときの平均値が、Vi(m/s)、Vf(m・s)及び比(Vf/Vi)として、下表6-10に示されている。比(Vf/Vi)が大きい程評価が高い。
【0077】
得られた比(Vf/Vi)に基づいて、以下の格付けをおこなった。この結果が、「スピード感」として、下表6-10に示されている。
A:比(Vf/Vi)が0.72以上
B:比(Vf/Vi)が0.70以上0.72未満
C:比(Vf/Vi)が0.70未満
【0078】
[打球感]
製造後、大気圧下、気温20±2℃、相対湿度60%の環境下に24時間保存したテニスボールを、50名のプレーヤーにテニスラケットで打撃させ、その打球感を聞き取った。「打球感が良い」と回答したプレーヤーの数に基づき、以下の格付けをおこなった。この結果が、下表6-10に示されている。
A:40人以上
B:30-39人
C:20-29人
D:19人以下
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表6-10に示される通り、実施例のゴム組成物では、比較例のゴム組成物に比べて、打球感を大きくは阻害することなく、スピード感が向上した。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明されたゴム組成物は、スピード感及び打球感が求められる種々のボールの製造にも適用されうる。
【符号の説明】
【0086】
2・・・テニスボール
4・・・コア
6・・・フェルト部
8・・・シーム部