(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ストレッチ織物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 15/56 20210101AFI20230511BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20230511BHJP
D03D 15/292 20210101ALI20230511BHJP
D03D 15/37 20210101ALI20230511BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
D03D15/56
D01F8/14 B
D03D15/292
D03D15/37
D06M11/00 111
(21)【出願番号】P 2018244102
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須山 浩史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勇太
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129519(WO,A1)
【文献】国際公開第02/008504(WO,A1)
【文献】特開2002-004178(JP,A)
【文献】特開2006-336162(JP,A)
【文献】特開2010-285704(JP,A)
【文献】国際公開第02/08504(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0109662(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F8/00-8/18
D03D1/00-27/18
A41D1/00-31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トータル繊度が40dtex以下、単糸繊度が
0.01dtex以上0.3dtex以下、交絡度が1ヶ/m以下のバイメタル複合糸を含むストレッチ織物であり、
前記バイメタル複合糸は、一方の成分がポリブチレンテレフタレートであり、他方の成分がポリエチレンテレフタレートであり、伸長率が10%以上、通気度が1cc/cm
2/s以下、カバーファクターが2000~3500の範囲内であることを特徴とするストレッチ織物。
【請求項2】
前記ストレッチ織物により12cm×12cmのミニチュア布団を作製し、内部に5gの羽毛を詰め込むとともに、周囲を構成する各辺の中央部に直径4cm、重さ45gの硬質ゴムボールを10cm長の紐で結んで試料とし、ICI試験機に投入し、JIS L1076:2012 6.1 A法に基づいて60rpm、1時間運転するダウンプルーフ試験によるダウン抜け本数が0本である、請求項1に記載のストレッチ織物。
【請求項3】
一方の成分がポリブチレンテレフタレートであり、他方の成分がポリエチレンテレフタレートである、島成分がバイメタル複合糸
の海島型複合糸を用いて織物を製織し、織物段階で海成分を脱海
し、その後120℃以上のリラックス処理を付与することで前記バイメタル複合糸に捲縮を発現せしめ
て前記織物にストレッチ性を付与するとともに、前記織物におけるバイメタル複合糸を、
トータル繊度が40dtex以下、単糸繊度が
0.01dtex以上0.3dtex以下、交絡度が1ヶ/m以下のバイメタル複合糸とし、かつ、前記織物のカバーファクターを2000~3500の範囲内とすることを特徴とするストレッチ織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウンプルーフ性に優れたストレッチ織物であって、詳しくはストレッチ時においてもダウンプルーフ性を維持することのできる織物およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダウン生地や布団側地などの分野では、綿やダウンの吹き出しを低減する効果(ダウンプルーフ性)に優れた低通気度のストレッチ織物が用いられている(特許文献1参照)。また、近年、織物の着用快適性を向上させるべく、織物にストレッチ性を付与することが提案されており、例えば、仮撚捲縮糸条を用いることでダウンプルーフ性とストレッチ性を両立することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、仮撚捲縮加工糸を用いた製法では、織物の工程通過性を考慮すると現実的には糸条に交絡を付与せざるを得ず、ストレッチ時にその収束した交絡部よりダウン抜けが起こるという問題を解決できるとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-057265号公報
【文献】特開2014-205933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ダウンプルーフ性に優れた低通気度のストレッチ織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの構成を有する。
(1) 交絡度1ヶ/m以下のバイメタル複合糸を含むストレッチ織物であり、伸長率が10%以上、通気度が1cc/cm2/s以下であることを特徴とするストレッチ織物。
(2) 前記バイメタル複合糸の単糸繊度が0.3dtex以下である、前記(1)に記載のストレッチ織物。
(3) 前記バイメタル複合糸のトータル繊度が40dtex以下である、前記(1)または(2)に記載のストレッチ織物。
(4) 前記バイメタル複合糸は、一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、他方の成分がポリエチレンテレフタレートである、前記(1)~(3)のいずれかに記載のストレッチ織物。
(5) 島成分がバイメタル複合糸である海島型複合糸を用いて織物を製織し、織物段階で海成分を脱海することで前記ポリエステルバイメタル複合糸に捲縮を発現せしめて、前記織物にストレッチ性を付与することを特徴とするストレッチ織物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来得ることができなかった着用時を想定したストレッチ状況下においても、ダウンプルーフ性に優れた低通気度のストレッチ織物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のストレッチ織物においては、まず通気度が1cc/cm2/s以下であることが重要である。通気度が1cc/cm2/sよりも大きいと、ダウンプルーフ性が低下し好ましくない。より好ましい通気度の範囲は0.01~1cc/cm2/sである。
【0008】
また、本発明のストレッチ織物は、伸長率が10%以上であることが重要である。10%以上であることで、実着用上で快適なストレッチ性を得ることができる。10%未満であると、ストレッチ性としては不十分である。より好ましい伸長率の範囲は10%以上40%未満である。
【0009】
このような本発明のストレッチ織物においては、経糸もしくは緯糸を構成する糸に交絡度1ヶ/m以下のバイメタル複合糸を含むことが重要である。交絡度が1ヶ/m以下のバイメタル複合糸を用いることで、生地が上記のように高伸度で伸長するストレッチ時においても、ダウン抜けを防止することができる。交絡度が1ヶ/mを超えると、捲縮が伸ばされるストレッチ時に糸が収束する交絡部においてダウン抜けが発生する。
【0010】
本発明のストレッチ織物においては、前記バイメタル複合糸は少なくとも経糸もしくは緯糸の30%以上の混率で用いることが好ましく、このような混率とすることで、ダウンプルーフ性とストレッチ性に特に優れた織物となる。より好ましくは経糸および緯糸の一部に前記バイメタル複合糸を用いることが好ましく、さらには経糸および緯糸の全てを前記バイメタル複合糸で構成することが好ましい。
【0011】
本発明のストレッチ織物においては、バイメタル複合糸の単糸繊度が0.3dtex以下であることが好ましい。0.3dtex以下であることで、柔らかい生地が得られ、かつ捲縮も細かくなり、ダウンプルーフ性も向上することができる。より好ましい単糸繊度は0.01dtex以上0.2dtex以下である。
【0012】
また、本発明のストレッチ織物においては、バイメタル複合糸のトータル繊度が40dtex以下であることが好ましい。40dtex以下であることで、薄い生地が得られるので、ダウン生地として好適である。より好ましいトータル繊度は20dtex以上40dtex以下である。
【0013】
本発明のストレッチ織物においては、バイメタル複合糸として、ポリエステル系やポリアミド系の複合糸を用いることができるが、ストレッチ性に優れる点からポリエステル系バイメタル複合糸が好ましい。さらに、一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、他方の成分がポリエチレンテレフタレートであるバイメタル複合糸が、捲縮コイルを多く形成し、優れた伸縮性が得られることから好ましい。
【0014】
バイメタル複合糸の断面は、丸型、三角型、扁平型、六角型、L型、T型、W型、八葉型、ドッグボーン型、中空型、偏心芯鞘型などから任意に選択することができる。
【0015】
本発明のストレッチ織物においては、バイメタル複合糸以外のフィラメントや紡績糸を混合していてもよい。例えば、経糸にバイメタル複合糸と仮撚糸とを配列したり、緯糸にバイメタル複合糸とポリウレタンカバリング紡績糸とを配列することができる。
【0016】
本発明において、織物の織組織や密度等に制約はないが、例えば高いダウンプルーフ性を得るために平組織やリップ組織が好ましい。また、本発明には、効果を妨げない範囲で、レーヨンやウール、綿などの天然繊維とバイメタル複合糸とを精紡合撚、交織などしたものも含まれるが、これらに限られるものではない。
【0017】
本発明のストレッチ織物においては、カバーファクターが2000~3500の範囲内であることが、優れたダウンプルーフ性が得られる点で好ましい。ここで、カバーファクター(CF値)は下記式により計算される。
・CF値=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
なお、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0018】
また、本発明のストレッチ織物には、ストレッチ性を阻害しなければ、コーティング加工やラミネート加工が施されていても構わない。
【0019】
以上のような本発明のストレッチ織物は、例えば、島成分がバイメタル複合糸である海島型複合糸を用いて織物を製織し、織物段階で該海島方複合糸の海成分を脱海することにより得ることができる。
【0020】
従来用いられていた仮撚捲縮加工糸や海島型ではない通常のバイメタル複合糸を製織するには、捲縮がばらけるのを抑制し工程通過性を安定化するために、交絡を付与して捲縮を抑制する必要があった。そのため、伸長時のダウン抜けを防止するという点では改善の余地があった。しかしながら、本発明においては、島成分としてバイメタル複合糸を含む海島型複合糸を用いて織物にし、その後に、織物状態で海成分を脱海することでバイメタル複合糸に捲縮を発現せしめるので、バイメタル複合糸にはほとんど交絡がない織物を製造することが可能になった。
【0021】
海島型複合糸の島部を構成するバイメタル複合糸には、例えば粘度の異なる2種類のポリエステル成分(以下、これを島成分ポリエステルという)を用いる。
【0022】
島成分ポリエステルを、高粘度ポリエステルaと低粘度ポリエステルbとで構成する場合、高粘度ポリエステルaと低粘度ポリエステルbの極限粘度差Δ[η]は0.15以上が好ましい。Δ[η]が0.15以上であれば、脱海処理に相当するアルカリ減量およびその後の熱処理にて、高粘度ポリエステルaと低粘度ポリエステルbとの間に十分な収縮差が発現して捲縮コイルを成し、優れた伸長性が得られやすくなる。より好ましいΔ[η]は0.20以上、さらに好ましくは0.50以上である。Δ[η]が大きい程、開繊性が向上して好ましい。そのためには、低粘度ポリエステルbの極限粘度[η]が0.60以下であることが好ましい。
【0023】
また、脱海処理後に十分な開繊性を得るためには、高粘度ポリエステルaと低粘度ポリエステルbとの質量複合比が3:7~7:3であることが好ましい。より好ましい質量複合比は4:6~6:4である。
【0024】
一方、海島型複合糸の海成分としては、島成分がポリエステルの場合、2種類の島成分ポリエステルのいずれに対しても脱海処理速度(アルカリ減量速度)が5倍以上速いポリエステルであることが好ましい。より好ましくは8倍以上速いポリエステルであり、さらに好ましくは10倍以上速いポリエステルである。2種類の島成分ポリエステルのいずれに対してもアルカリ減量速度比を5倍以上とすることにより、脱海処理における、不完全脱海(海成分の溶出が不完全で島部が融着した状態)を回避しやすくなり、染色斑や起毛斑等の欠点が少ない優れた布帛が得られやすくなる。
【0025】
具体的に2種類の島成分ポリエステルとしては、公知のいずれのポリエステルを組み合わせても良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、3GTと称す)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと称す)、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル等が挙げられる。また、これらのポリエステルは、ジオール成分および酸成分の一部が各々、20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができる。これらのポリエステルは艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していても構わない。
【0026】
海成分ポリエステルとしては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.5モル%以上10モル%以下、及びポリエチレングリコールを2質量%以上15質量%以下共重合したポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、海成分ポリエステルは、海島型複合糸の繊維表面を形成するため、安定した工程通過性を維持する強度も必要であるが、5-ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールの共重合量を多くしすぎると原糸強度が低下する。そのため、5-ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量は10モル%以下、ポリエチレングリコールの共重合量は15質量%以下が好ましい。5-ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量は2モル%以上8モル%以下、ポリエチレングリコールの共重合量を4質量%以上12質量%以下がより好ましい。
【0027】
海島型複合糸の海成分ポリエステル/島成分ポリエステルの質量比率は、複合形態の安定性、製糸性、生産性の点から、10/90~50/50が好ましい。海成分ポリエステルの質量比率が低すぎる場合は複合異常が発生し分割不良を生じたり、分散形態が正常であっても海成分ポリエステルの溶解不良による分割不良が発生しやすい。逆に海成分ポリエステルの質量比率が50%を越えると、生産性が低下する。海成分ポリエステル/島成分ポリエステルの質量比率は20/80~30/70であることがより好ましい。
【0028】
そして、海島型複合糸の島部を構成するバイメタル複合糸は、上記したポリエステル系ではなく、ポリアミド系バイメタル複合糸とすることも好ましい。その場合、基本的にはポリエステル系バイメタル複合糸と同様の観点から条件を適宜設定すればよく、例えば粘度差を有する2種類のポリアミドで構成することが好ましい(以下、これを島成分ポリアミドという)。
【0029】
島成分ポリアミドは、一方のポリマーと他方のポリマーの極限粘度差Δ[η]が0.03以上0.15以下であることが好ましい。極限粘度差Δ[η]が0.03未満であれば、粘度差による捲縮発現効果は小さく、粘度差が0.15より大きければポリアミドポリマー間の接合性の悪さや紡糸不良が起こるために、品質問題が起こる場合がある。
【0030】
具体的に2種類の島成分ポリアミドには、公知のいずれのポリアミドを組み合わせても良いが、ストレッチ性能、製品コスト、紡糸性および高次通過性の観点から、高粘度ポリマーとしてナイロン610またはその共重合体を用い、低粘度ポリマーとしてナイロン6、ナイロン66またはそれらの共重合体を用いることが好ましい。
【0031】
また、海成分ポリエステルとしては、ポリエステル系バイメタル複合糸について説明したようなものを用いることができる。
【0032】
上記したような海島型複合糸を製糸するにあたっては、紡糸および延伸工程を連続して行う方法、未延伸糸として一旦巻取った後延伸する方法などいずれのプロセスも適用できる。例えば、紡出糸を600m/分~5000m/分で引取り、続いて3000m/分~6000m/分で延伸・熱固定する方法が挙げられる。
【0033】
このようにして製造した海島型複合糸は、公知の製織方法を用いて、織物にすることができる。織組織としては公知の如何なる組織をも適用できるが、高いダウンプルーフ性を得るためには平組織やリップ組織が好ましい。
【0034】
製織に用いられる織機は、一般に使用される普通織機や、レピア、ウオータージェットルーム、エアージエットルームの機種など、特に限定されることなく採用できる。なかでも、緯糸に張力のかかり過ぎないエアージエットルームが好ましい態様である。
【0035】
製織された織物には、海島型複合糸の海成分を脱海する処理を施し、島成分のバイメタル複合糸に捲縮を発現せしめる。捲縮を発現させる脱海工程としては、織物にアルカリ減量を施すことが好ましい。減量としては、海成分を全部除去する程度の処理が好ましい。例えば、30~100℃の水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:0.1~10g/L)に織物を浸せきさせれば良い。なお、アルカリ減量としては、基本的に公知の方法、装置を採用することができるが、繊維表面を均一に脱海できることから、液流染色機による脱海方法が好ましい。
【0036】
また、バイメタル複合糸により強い捲縮を付与するためには、脱海処理後に、熱処理を施すことが好ましい。具体的には、液流染色機により、120℃以上のリラックス処理を付与することで、より強い捲縮を付与することができる。
【0037】
さらに、アルカリ減量処理後には、染色加工を施してもよい。染色加工工程は、一般の織物の染色工程及び条件に準じて行うことができる。
【0038】
以上のようにして得られる本発明のストレッチ織物は、製織時には捲縮を発現していない糸を用いるため工程通過性が安定するうえに、最終的なストレッチ織物を構成する糸は捲縮を発現し、さらにダウン抜けの原因となる交絡が実質的にないので、ダウンプルーフ性能、伸縮性に優れ、また通気度を安定して低く抑えることができる。そのため、ダウンウエア、ダウンジャケット、ふとん、寝袋、およびスポーツ衣料などに好適に用いられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0040】
(1)極限粘度
オルソクロロフェノール(以下OCPと略す)10ml中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度[ηr]を次式により算出した値(IV)である。
相対粘度[ηr]=η/η0=(t×q)/(t0×q0)
極限粘度[IV]=0.0242ηr+0.2634
ただし、η:ポリマー溶液の粘度、η0:OCPの粘度、t:溶液の落下時間(秒)、q:溶液の密度(g/cm3)、t0:OCPの落下時間(秒)、q0:OCPの密度(g/cm3)。
【0041】
(2)トータル繊度、単糸繊度
織物から対象糸を抜き取り、JIS L1013:2010 8.3.1 b)のB法にて、トータル繊度を求める。その後、その繊度を構成するフィラメント数で除することにより、単糸繊度の算出を求める。
【0042】
(3)交絡度
織物から対象糸を抜き取り、0.1g/dtexの荷重下で1mの長さをとり、除重後、交絡点の数を読み取り、個/mで表示する。
【0043】
(4)伸長率
JIS L 1096:2010 8.16 B法にて、織物の伸長率を計測する。
【0044】
(5)通気度
JIS L 1096:2010 8.26.1に規定される通気度(フラジール法)に準拠した方法により求めた。
【0045】
(6)ダウンプルーフ性
対象生地により内部に5gの羽毛を詰め込んだ12cm×12cmのミニチュア布団を作製し(縫い目は樹脂によってシーリングする)、この試料を、JIS L1076:2012 6.1 A法に基づき、ICI試験機の中に入れる。その際に生地の周囲を構成する各辺の中央部の4ヶ所に1個ずつ硬質ゴムボール(直径4cm、重さ45g)を10cm長の紐で結んで投入する。60rpm、1時間を1セットとして3セット繰り返し運転し、各セットの羽毛の抜け出し平均本数を求める。
【0046】
<実施例1>
2種類の島成分ポリマーとして極限粘度が1.2のPBT(島1成分)及び極限粘度0.50のPET(島2成分)、海成分ポリマーとして5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%及びポリエチレングリコールを10質量%共重合したポリエチレンテレフタレートを別々に溶融し、島成分がサイドバイサイド型の海島型複合形態を形成すべく24島の口金に流入させた。海/島1/島2成分の質量比は20/40/40とした。紡速1500m/minで巻取り、延伸倍率2.8で延伸し、42dtex-12フィラメントの24島の海島型ポリエステルフィラメントを得た。
【0047】
この糸を経糸及び緯糸に用いて、平組織でエアージエット織機を用い、生機密度(経糸:154本/inch(2.54cm)、緯糸:135本/inch(2.54cm))で製織した。
【0048】
次に、得られた製織生地を98℃拡布連続精練のあと、1質量%90℃苛性ソーダ水溶液中に浸漬して脱海加工することで、織物を構成しているポリエステルフィラメントに捲縮を発現させた。なお、該ポリエステルフィラメントは35dtex-288フィラメント(単糸繊度:0.12dtex)となった。その後、130℃液流リラックス処理することで、経糸、緯糸の表面にさらに捲縮が発現した。その後、180℃の中間セット、130℃染色、160℃仕上げセットを施し、製品とした。
【0049】
得られた織物は、加工密度(経糸:239本/inch、緯糸:189本/inch)、CF値が2414であった。また、交絡度は経糸および緯糸共に0ヶ/mであり、伸長率は経:15%、緯:25%であり、通気度は0.8cc/cm2/s、ダウンプルーフ試験でのダウン抜け本数は0本であった。本生地を用いたダウン衣服はストレッチ性、ダウンプルーフ性に優れ、非常に柔らかい風合いを有しており、表面も滑らかで快適であった。
【0050】
<参考例1>
2種類の島成分ポリマーとして極限粘度が1.1の3GT(島1成分)及び極限粘度0.50のPET(島2成分)、海成分ポリマーとして5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%及びポリエチレングリコールを10質量%共重合したポリエチレンテレフタレートを別々に溶融し、島成分がサイドバイサイド型の海島型複合形態を形成すべく24島の口金に流入させた。海/島1/島2成分の質量比は20/40/40とした。紡速1500m/minで巻取り、延伸倍率2.8で延伸し、70dtex-12フィラメントの24島の海島型ポリエステルフィラメントを得た。
【0051】
この糸を経糸及び緯糸に用いて、2/1ツイル組織でエアージエット織機を用い、生機密度(経糸:173本/inch、緯糸:132本/inch)で製織した。
【0052】
次に、得られた製織生地を98℃拡布連続精練のあと、1質量%90℃苛性ソーダ水溶液中に浸漬し、脱海加工することで、織物を構成しているポリエステルフィラメントに捲縮を発現させた。なお、該ポリエステルフィラメントは56dtex-288フィラメント(単糸繊度:0.19dtex)となった。その後、180℃の中間セット、130℃染色、160℃仕上げセットを施し、製品とした。
【0053】
得られた織物は、加工密度(経糸:245本/inch、緯糸:176本/inch)、CF値が3004であった。また、交絡度は経糸および緯糸共に0ヶ/mであり、伸長率は経:11%、緯:18%であり、通気度は0.5cc/cm2/s、ダウンプルーフ試験でのダウン抜け本数は0本であった。本生地を用いたダウン衣服はストレッチ性、ダウンプルーフ性に優れ、柔らかい風合いを有しており、表面も滑らかで快適であった。
【0054】
<参考例2>
2種類の島成分ポリマーとして極限粘度が2.6のナイロン6(島1成分)及び極限粘度2.7のナイロン610((島2成分)、海成分ポリマーとして5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%及びポリエチレングリコールを10質量%共重合したポリエチレンテレフタレートを別々に溶融し、島成分がサイドバイサイド型の海島型複合形態を形成すべく24島の口金に流入させた。海/島1/島2成分の質量比は20/40/40とした。紡速1500m/minで巻取り、延伸倍率2.8で延伸し、42dtex-12フィラメントの24島の海島型ポリアミドフィラメントを得た。
【0055】
この糸を経糸及び緯糸に用いて、平組織でエアージエット織機を用い、生機密度(経糸:154本/inch(2.54cm)、緯糸:135本/inch(2.54cm))で製織した。
【0056】
次に、得られた製織生地を98℃拡布連続精練のあと、1質量%90℃苛性ソーダ水溶液中に浸漬して脱海加工することで、織物を構成しているポリアミドフィラメントに捲縮を発現させた。なお、該ポリアミドフィラメントは35dtex-288フィラメント(単糸繊度:0.12dtex)となった。その後、120℃液流リラックス処理することで、経糸、緯糸の表面にさらに捲縮が発現した。その後、170℃の中間セット、120℃染色、160℃仕上げセットを施し、製品とした。
【0057】
得られた織物は、加工密度(経糸:225本/inch、緯糸:178本/inch)、CF値が2384であった。また、交絡度は経糸および緯糸共に0ヶ/mであり、伸長率は経:12%、緯:20%であり、通気度は0.9cc/cm2/s、ダウンプルーフ試験でのダウン抜け本数は0本であった。本生地を用いたダウン衣服はストレッチ性、ダウンプルーフ性に優れ、非常に柔らかい風合いを有しており、表面も滑らかで快適であった。
【0058】
<比較例1>
極限粘度0.55のPETを紡糸して、56dtex-144フィラメントの延伸糸を得た(単糸繊度:0.39dtex)。その後、愛機製作所TFT-6M機を用いて210℃でピン仮撚りを行い、圧空圧2kgf/cm2(196kPa)でインターレース加工を実施し、仮撚交絡糸を得た。
【0059】
この糸を経糸及び緯糸に用いて、平組織でエアージエット織機を用い、生機密度(経糸:154本/inch、緯糸:135本/inch)で製織した。
【0060】
次に、得られた製織生地を98℃拡布連続精練のあと、130℃液流リラックス処理、180℃の中間セット、130℃染色、160℃仕上げセットを施し、製品とした。
【0061】
得られた織物は加工密度(経糸:185本/inch、緯糸:155本/inch)、CF値が2426であった。また、交絡度は経糸:35ヶ/m、緯糸:32ヶ/mであり、伸長率は経:10%、緯:12%であり、通気度は0.9cc/cm2/sであった。本生地を用いたダウン衣服はストレッチ性を有してはいるが、ダウンプルーフ試験でのダウン抜け本数は10本あり、交絡部からダウン抜けが多い問題があった。
【0062】
<比較例2>
島成分ポリマーとして極限粘度0.55のPET、海成分ポリマーとして5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%及びポリエチレングリコールを10質量%共重合したポリエチレンテレフタレートを別々に溶融し、海島型複合形態を形成すべく24島の口金に流入させた。海/島成分の質量比は50/50とした。紡速1500m/minで巻取り、延伸倍率2.8で延伸し、56dtex-12フィラメントの24島の海島型ポリエステルフィラメントを得た。その後、愛機製作所TFT-6M機を用いて180℃でピン仮撚りを行い、圧空圧2kgf/cm2 でインターレース加工を実施し、仮撚交絡糸を得た。
【0063】
この糸を経糸及び緯糸に用いて、平組織でエアージエット織機を用い、生機密度(経糸:154本/inch、緯糸:135本/inch)で製織した。
【0064】
次に、得られた製織生地を98℃拡布連続精練のあと、1質量%90℃苛性ソーダ水溶液中に浸漬して脱海加工することで、織物を構成しているポリエステルフィラメントを56dtex-288フィラメント(単糸繊度:0.19dtex)とした。その後、180℃の中間セット、130℃染色、160℃仕上げセットを施し、製品とした。
【0065】
得られた織物は加工密度(経糸:165本/inch、緯糸:140本/inch)、CF値が2176であった。また、交絡度は経糸:2ヶ/m、緯糸:3ヶ/mであり、伸長率は経:1%、緯:3%であり、通気度は4.5cc/cm2/sであった。本生地を用いたダウン衣服は滑らかなタッチは有してはいるが、ストレッチ性が不十分であり、またダウンプルーフ試験でのダウン抜け本数は22本あり、ダウン抜けが多い問題があった。