(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
H05B 45/50 20220101AFI20230511BHJP
B60Q 1/26 20060101ALI20230511BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20230511BHJP
B60Q 11/00 20060101ALI20230511BHJP
H05B 45/345 20200101ALI20230511BHJP
【FI】
H05B45/50
B60Q1/26
B60Q1/00 C
B60Q11/00 610C
B60Q11/00 610D
B60Q11/00 625
H05B45/345
(21)【出願番号】P 2018246719
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】枩本 考司
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012669(JP,A)
【文献】特開2011-174787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
B60Q 1/26
B60Q 1/00
B60Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが定電流源及び前記定電流源と直列に接続された半導体発光素子を備えた複数の点灯ユニットを有する半導体型光源と、
前記半導体型光源に出力する出力電流の供給を制御する
と共に、前記複数の点灯ユニットのいずれかの断線時において前記出力電流の供給を停止する制御部と、
を備え、
前記複数の点灯ユニットは、
それぞれが並列に接続されたものであり、
前記制御部は、
前記出力電流が、前記複数の点灯ユニットの全灯状態のときのものと比べて低下した場合、前記半導体型光源への前記出力電流の供給を停止する
ものであって、
前記半導体型光源に接続され、前記出力電流を検知するカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路により検知された前記出力電流の変動量に応じた参照電圧が、一定値を保つ基準電圧よりも小さいか否かを判定する比較回路と、
前記比較回路により前記参照電圧が前記基準電圧よりも小さいと判定された場合、前記半導体型光源への前記出力電流の供給を停止するスイッチング回路と、を備え、
前記基準電圧は、前記全灯状態のときの参照電圧より小さくなり、前記複数の点灯ユニットのいずれかの断線時において参照電圧より大きくなる値に設定されている
車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具のうち半導体型光源を光源とするものは、従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のような従来の半導体型光源は、基板に実装された複数のLEDチップが樹脂等の封止部材で覆われたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のような従来技術では、上記のような半導体型光源は、複数の点灯ユニットを有する車両用灯具として構成され、且つ複数の点灯ユニットのそれぞれが並列に接続された回路構成である場合、一部の点灯ユニットが断線しても他の点灯ユニットが点灯し続けることが可能である。よって、一部の点灯ユニットが断線した結果、規定の配光を満足しない状態となった際には、他の点灯ユニットを全て消灯させるという法規上の要求を満たすことができない虞がある。
【0005】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、簡易な回路構成で法規上の要求を満たすことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面である車両用灯具は、それぞれが定電流源及び前記定電流源と直列に接続された半導体発光素子を備えた複数の点灯ユニットを有する半導体型光源と、前記半導体型光源に出力する出力電流の供給を制御すると共に、前記複数の点灯ユニットのいずれかの断線時において前記出力電流の供給を停止する制御部と、を備え、前記複数の点灯ユニットは、それぞれが並列に接続されたものであり、前記制御部は、前記出力電流が、前記複数の点灯ユニットの全灯状態のときのものと比べて低下した場合、前記半導体型光源への前記出力電流の供給を停止するものであって、前記半導体型光源に接続され、前記出力電流を検知するカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路により検知された前記出力電流の変動量に応じた参照電圧が、一定値を保つ基準電圧よりも小さいか否かを判定する比較回路と、前記比較回路により前記参照電圧が前記基準電圧よりも小さいと判定された場合、前記半導体型光源への前記出力電流の供給を停止するスイッチング回路と、を備え、前記基準電圧は、前記全灯状態のときの参照電圧より小さくなり、前記複数の点灯ユニットのいずれかの断線時において参照電圧より大きくなる値に設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一側面によれば、簡易な回路構成で法規上の要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示を適用した実施形態に係る車両用灯具の概略的な回路構成図である。
【
図2】本開示を適用した実施形態に係る制御部2の回路構成図である。
【
図3】本開示を適用した実施形態に係る比較回路22に入力される参照電圧V
R3の変位を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を適用した車両用灯具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本開示を適用した実施形態に係る車両用灯具の概略的な回路構成図である。車両用灯具は、バッテリー1、制御部2及び半導体型光源3を備えている。車両用灯具は、例えば、クリアランスランプ機能を構成するものであり、半導体型光源3が有する複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのようにN台設けられ、台数に応じた光量が出力されるものである。複数の点灯ユニット3_U1~3_UNは、それぞれが並列にN台接続されたものである。複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれは、定電流源3_S11~3_SN1のそれぞれと、半導体発光素子3_D12~3_DN2のそれぞれとを備えている。半導体発光素子3_D12~3_DN2のそれぞれは、例えば、LED又はOEL(有機EL)を用いたOLED(有機発光ダイオード)等の自発光半導体光源である。
【0013】
制御部2は、入力側にはバッテリー1から入力電流Iinが流れ込み、出力側からは出力電流Ioutが出力され、半導体型光源3に出力する出力電流Ioutの供給を制御するものである。点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれは並列にN台接続されているため、制御部2から出力された出力電流Ioutは点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれに分岐され、点灯電流I_LED(1)~I_LED(N)のそれぞれが点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれに流入する。制御部2は、出力電流Ioutが複数の点灯ユニット3_U1~3_UNの全灯状態のときのものと比べて低下した場合、半導体型光源3への出力電流Ioutの供給を停止する。次に、制御部2の構成及び機能につき、
図2,3を用いて具体的に説明する。
【0014】
図2は、本開示を適用した実施形態に係る制御部2の回路構成図である。
図2に示すように、制御部2は、カレントミラー回路21、比較回路22及びスイッチング回路23を備えている。カレントミラー回路21は、抵抗R1,R2、スイッチング素子Q1,Q2を備え、半導体型光源3に接続され、出力電流Ioutを検知する機能を有するものである。
【0015】
具体的には、スイッチング素子Q1,Q2のそれぞれはPNPトランジスタであって、それぞれのエミッタは抵抗R1,R2を介して接続され、同一の温度特性のものが使用されている。スイッチング素子Q1,Q2のそれぞれのベースは接続され、スイッチング素子Q1のベースはスイッチング素子Q1のコレクタに接続され、スイッチング素子Q1のコレクタから出力電流Ioutが出力される。上記で説明したように、スイッチング素子Q1は、コレクタ-ベース間が接続されることで、ダイオードとして機能するため、エミッタ側の第1分岐電流I1及びコレクタ側の出力電流Ioutの大きさが同一のものとして機能する。
【0016】
制御部2の出力側には点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれがN台並列に接続されているため、点灯電流I_LED(1)~I_LED(N)のそれぞれは
図1の制御部2の出力電圧Voutに依存せず一定である。よって、出力電流Iout=N×点灯電流I_LEDとなる。したがって、点灯ユニット3_U1~3_UNの少なくとも1台が断線により故障すれば出力電流Ioutは変動するため、出力電流Ioutの変動量を検知することで、点灯ユニット3_U1~3_UNの少なくとも1台が断線により故障しているか否かを検知できる。また、スイッチング素子Q1,Q2のベース-エミッタ間に係る電圧V
BEが同じ値となるため、抵抗R1に係る電圧V
R1と、抵抗R2に係る電圧V
R2とが等しくなる。よって、第1分岐電流I1:第2分岐電流I2=抵抗R2:抵抗R1となる。すなわち、第2分岐電流I2=第1分岐電流I1×(抵抗R1/抵抗R2)となる。以上の説明から、第2分岐電流I2は、第1分岐電流I1の変動量に比例するため、出力電流Ioutの変動量に応じて変動するとみなすことができる。よって、第2分岐電流I2の変動量を検知することで、点灯ユニット3_U1~3_UNの少なくとも1台が断線により故障しているか否かを判定できる。
【0017】
比較回路22は、抵抗R3、コンパレータIC及びスイッチング素子Q3を備え、カレントミラー回路21により検知された出力電流Ioutの変動量に応じた参照電圧V
R3が、一定値を保つ基準電圧Vrefよりも小さいか否かを判定するものである。具体的には、コンパレータICの非反転入力端子には、抵抗R3の一方と、スイッチング素子Q2のコレクタとが接続されている。コンパレータICの反転入力端子には、基準電圧Vrefが印加されている。コンパレータICの出力端子には、スイッチング素子Q3のベースが接続されている。なお、抵抗R3は抵抗R2と等しいものが設けられている。よって、抵抗R3には第2分岐電流I2が流れ、抵抗R2=抵抗R3であるため、参照電圧V
R3=第2分岐電流I2×抵抗R2=(第1分岐電流I1×(抵抗R1/抵抗R2))×抵抗R2=第1分岐電流I1×抵抗R1=N×点灯電流I_LED×抵抗R1となる。よって、点灯電流I_LEDが一定であれば、参照電圧V
R3は、
図1のバッテリー1から制御部2に印加される入力電圧Vinによらず一定である。なお、抵抗R3の他方及びスイッチング素子Q3のエミッタはシャーシグランドに接続されている。
【0018】
比較回路22の動作について
図3を用いて説明する。
図3は、本開示を適用した実施形態に係る比較回路22に入力される参照電圧V
R3の変位を説明する図である。
図3に示すように、参照電圧V
R3が基準電圧Vrefよりも大きい場合、断線状態ではない。つまり、コンパレータICは、Highレベルを出力する。よって、スイッチング素子Q3はオン状態となる。この場合、
図2に示すように、スイッチング素子Q_Aのゲートには、抵抗R4及び抵抗R5によりソース電圧V
Sよりもゲート電圧V
Gの方が低くなるため、スイッチング素子Q_Aはオン状態になる。よって、制御部2に入力電流Iinが流れ込むため、制御部2から出力電流Ioutが出力され、半導体型光源3には出力電流Ioutが流れ込む。したがって、半導体型光源3は点灯する。
【0019】
一方、点灯ユニット3_U1~3_UNの何れか1つが断線状態となれば、参照電圧V
R3は、N×点灯電流I_LED×抵抗R1からN-1×点灯電流I_LED×抵抗R1と変化し、参照電圧V
R3が基準電圧Vrefより小さくなる。つまり、コンパレータICは、
図3に示すように参照電圧V
R3が基準電圧Vrefよりも小さい場合、Lowレベルを出力する。よって、スイッチング素子Q3はオフ状態となる。この場合、ソース電圧V
S及びゲート電圧V
Gは同電位になるため、スイッチング素子Q_Aはオフ状態になる。よって、制御部2に入力電流Iinが流れ込まないため、制御部2から出力電流Ioutが出力されず、半導体型光源3には出力電流Ioutが流れ込まない。したがって、半導体型光源3は消灯する。
【0020】
以上の説明から、本実施形態において、出力電流Ioutが、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNの全灯状態のときのものと比べて低下した場合、半導体型光源3への出力電流Ioutの供給が停止される。よって、点灯ユニット3_U1~3_UNのうち、一部が断線した場合、他の全てを消灯することができるので、断線を通知する機能が実装されていない点灯ユニット3_U1~3_UNであっても、簡易な回路構成で法規上の要求を満たすことができる。
【0021】
また、本実施形態において、制御部2は半導体型光源3に直列に接続されているため、制御部2は、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれとは直列に接続された関係にある。よって、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのうち一部が断線状態になれば、出力電流Ioutはその分だけ減少する。また、出力電流Ioutの変動量に応じた参照電圧VR3が基準電圧Vrefよりも小さいと判定された場合、半導体型光源3への出力電流Ioutが停止される。よって、出力電流Ioutと連動する参照電圧VR3と、基準電圧Vrefとの比較により出力電流Ioutの変位を検出することができる。したがって、簡単な回路構成により、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのうち一部が断線状態にあるか否かを検出することができるため、低コストで断線検出を実現することができる。
【0022】
また、本実施形態において、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれが、定電流源3_S11~3_SN1のそれぞれと、定電流源3_S11~3_SN1のそれぞれと直列に接続された半導体発光素子3_D12~3_DN2のそれぞれとを備える。よって、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれは、安定した発光量を出力できる。したがって、車両用灯具は意図した通りに配光をすることができる。
【0023】
以上、本開示を適用した車両用灯具を実施形態に基づいて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0024】
例えば、車両用灯具がクリアランスランプ機能を構成する一例について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、車両用灯具は、テール・ストップランプ機能、テールランプ機能、ストップランプ機能、バックアップランプ機能、ターンシグナルランプ機能等を構成してもよい。
【0025】
また、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれは、半導体発光素子3_D12~3_DN2のそれぞれを1個ずつ含む一例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、複数の点灯ユニット3_U1~3_UNのそれぞれは、半導体発光素子3_D12~3_DN2のそれぞれを複数個ずつ含む回路構成であってもよい。
【0026】
また、例えば、カレントミラー回路21は1段構成とした一例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、スイッチング素子Q1,Q2を多段構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 バッテリー
2 制御部
21 カレントミラー回路、22 比較回路、23 スイッチング回路
3 半導体型光源
3_U1~3_UN 点灯ユニット
3_S11~3_SN1 定電流源
3_D12~3_DN2 半導体発光素子
Q1,Q2,Q3,Q_A スイッチング素子
R1~R5 抵抗
IC コンパレータ
Iin 入力電流、
I1 第1分岐電流、I2 第2分岐電流
Iout 出力電流
I_LED,I_LED(1)~I_LED(N) 点灯電流
VR3 参照電圧、Vref 基準電圧、Vout 出力電圧、Vin 入力電圧
VR1,VR2,VBE,VG,VS 電圧