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特許7275590ノズルチップ、流体装置、コネクタおよび製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ノズルチップ、流体装置、コネクタおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20230511BHJP
   A61M 5/34 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01N1/10 V
A61M5/34 500
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019005660
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020112525
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 耕徳
(72)【発明者】
【氏名】桑田 幹晴
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-018462(JP,Y1)
【文献】特開2011-120582(JP,A)
【文献】特開2001-178823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
A61M 5/00 - 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の先端チップと、
前記先端チップの基端部に固定された筒状のコネクタと、
を備え、
前記コネクタは、
径方向に加圧されて前記先端チップの側周面に当接した加圧部を有し、
前記加圧部は、当該コネクタの基端側から先端まで前記コネクタの周方向と交差して延在する少なくとも1つの接合跡を有するノズルチップ。
【請求項2】
各接合跡は、前記加圧部の2つの部分をつなぎ合わせたものである、請求項1に記載のノズルチップ。
【請求項3】
各接合跡は、融着跡または接着跡である、請求項1または2に記載のノズルチップ。
【請求項4】
筒状の先端チップと、
前記先端チップの基端部に固定された筒状のコネクタと、
を備え、
前記コネクタは、
径方向に加圧されて前記先端チップの側周面に当接した加圧部を有し、
前記加圧部は、熱または光によって収縮する収縮性材料で形成された収縮性材料部を有するノズルチップ。
【請求項5】
前記加圧部は、非収縮性材料により前記コネクタのコネクタ本体部から延出して形成され前記先端チップの側周面に当接する延出部をさらに有し、
前記収縮性材料部は、前記延出部を周方向に覆う収縮チューブである
請求項に記載のノズルチップ。
【請求項6】
前記コネクタは、前記先端チップの周方向に亘って前記基端部の側周面および基端面の少なくとも一方と接触したシーリング部を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載のノズルチップ。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載のノズルチップを備え、
前記ノズルチップを介して流体の吸引および注入の少なくとも一方を行う流体装置。
【請求項8】
筒状の先端チップに固定される筒状のコネクタであって、
径方向に加圧されて前記先端チップの側周面に当接する加圧部を備え
前記加圧部は、当該コネクタの基端側から先端まで前記コネクタの周方向と交差して延在する少なくとも1つの接合跡を有するコネクタ。
【請求項9】
筒状の先端チップに固定される筒状のコネクタであって、
径方向に加圧されて前記先端チップの側周面に当接する加圧部を備え
前記加圧部は、熱または光によって収縮する収縮性材料で形成された収縮性材料部を有するコネクタ。
【請求項10】
ノズルチップの製造方法であって、
径方向に加圧される加圧部を有する筒状のコネクタに、筒状の先端チップの基端部を収容する収容段階と、
前記加圧部を前記径方向に加圧して前記先端チップの側周面に当接させ前記コネクタに前記先端チップを固定する固定段階と、
を備え
前記固定段階では、前記コネクタの基端側から先端まで前記コネクタの周方向と交差して延在する少なくとも1つの接合跡を前記加圧部に形成する製造方法。
【請求項11】
前記加圧部は、当該コネクタの基端側から先端まで、前記コネクタの周方向と交差して延在する少なくとも1つのスリットを有し、
前記固定段階は、前記スリットの内側面同士を接合して当該スリットを塞ぐ段階を有する、
請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
ノズルチップの製造方法であって、
径方向に加圧される加圧部を有する筒状のコネクタに、筒状の先端チップの基端部を収容する収容段階と、
前記加圧部を前記径方向に加圧して前記先端チップの側周面に当接させ前記コネクタに前記先端チップを固定する固定段階と、
を備え
前記加圧部は、熱または光によって収縮する収縮性材料で形成された収縮性材料部を有しており、
前記固定段階は、前記収縮性材料の収縮作用により前記加圧部を前記径方向に収縮させる製造方法。
【請求項13】
前記収容段階は、前記先端チップの周方向に亘って前記基端部の側周面および基端面の少なくとも一方を前記コネクタに接触させる段階を有する、
請求項10~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルチップ、流体装置、コネクタおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞質などの微細な試料を吸引,注入する流体装置には、筒状のコネクタおよび先端チップを有するノズルチップが装着される(例えば特許文献1参照)。ノズルチップは、コネクタに先端チップの基端側を挿入して接着剤で固定することで製造されている(例えば特許文献2参照)。
特許文献1 特許第5317983号公報
特許文献2 実開昭53-34297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のノズルチップはコネクタと先端チップとの間で軸同士のずれ量が大きい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、ノズルチップが提供される。ノズルチップは、筒状の先端チップを備えてよい。ノズルチップは、先端チップの基端部に固定された筒状のコネクタを備えてよい。コネクタは、径方向に加圧されて先端チップの側周面に当接した加圧部を有してよい。
【0005】
加圧部は、当該コネクタの基端側から先端までコネクタの周方向と交差して延在する少なくとも1つの接合跡を有してよい。
【0006】
加圧部は、収縮性材料で形成された収縮性材料部を有してよい。
【0007】
加圧部は、非収縮性材料によりコネクタのコネクタ本体部から延出して形成され先端チップの側周面に当接する延出部をさらに有してよい。収縮性材料部は、延出部を周方向に覆う収縮チューブであってよい。
【0008】
コネクタは、先端チップの周方向に亘って基端部の側周面および基端面の少なくとも一方と接触したシーリング部を有してよい。
【0009】
本発明の第2の態様においては、流体装置が提供される。流体装置は、第1の態様のノズルチップを備えてよい。流体装置は、ノズルチップを介して流体の吸引および注入の少なくとも一方を行ってよい。
【0010】
本発明の第3の態様においては、コネクタが提供される。コネクタは、筒状の先端チップに固定される筒状のコネクタであってよい。コネクタは、径方向に加圧されて先端チップの側周面に当接する加圧部を備えてよい。
【0011】
本発明の第4の態様においては、ノズルチップの製造方法が提供される。製造方法は、径方向に加圧される加圧部を有する筒状のコネクタに、筒状の先端チップの基端部を収容する収容段階を備えてよい。製造方法は、加圧部を径方向に加圧して先端チップの側周面に当接させコネクタに先端チップを固定する固定段階を備えてよい。
【0012】
加圧部は、当該コネクタの基端側から先端まで、コネクタの周方向と交差して延在する少なくとも1つのスリットを有してよい。固定段階は、スリットの内側面同士を接合して当該スリットを塞ぐ段階を有してよい。
【0013】
加圧部は、収縮性材料で形成された収縮性材料部を有してよい。固定段階は、収縮性材料の収縮作用により加圧部を径方向に収縮させてよい。
【0014】
収容段階は、先端チップの周方向に亘って基端部の側周面および基端面の少なくとも一方をコネクタに接触させる段階を有してよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るノズルチップ1を示す。
図2】本実施形態に係るコネクタ3を示す。
図3】ノズルチップ1の製造方法を示す。
図4】加圧対象部330の加圧前後の状態を示す。
図5】細胞吸引システム5を示す。
図6】変形例に係るノズルチップ1Aを示す。
図7】収縮性材料部326を収縮させる処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
[1.ノズルチップ]
図1は、本実施形態に係るノズルチップ1を示す。なお、図中の左側部分は全体の部分透視図、中央部分はノズルチップ1をX方向から見た場合の部分拡大図、右側部分は断面図である。また、図中ではノズルチップ1の先端側を下側とし、基端側を上側としている。
【0019】
ノズルチップ1は、流体の吸入および排出の少なくとも一方を行うものであり、流体に圧力をかけて移動させるポンプ装置や注射器などの流体機械(流体装置とも称する)に着脱可能に装着される。ノズルチップ1は、先端チップ2と、コネクタ3とを備える。
【0020】
[1.1.先端チップ2]
先端チップ2は、ノズルチップ1の先端に位置して、流体の吸入および排出の少なくとも一方を行う。先端チップ2は、筒状に形成されており、本実施形態では一例として基端側で外径が一定で、先端側で先細りの円筒状となっている。先端チップ2の先端には図示しない吸入口または排出口が設けられてよい。先端チップ2の先端部の外径は一例として0.1~100μmであってよい。先端チップ2は、ガラス製でもよいし、金属など、他の材料で形成されてもよい。
【0021】
[1.2.コネクタ3]
コネクタ3は、先端チップ2の基端部に固定された筒状の部材である。コネクタ3は、上述の流体機械に着脱可能に装着されてよい。コネクタ3は、それぞれ筒状に形成されて内部に流体の流路10を形成したコネクタ本体部30と、装着部31と、固定部32とを有する。
【0022】
[1.2.1.コネクタ本体部30]
コネクタ本体部30は、コネクタ3の軸方向における中途部に位置する。本実施形態では一例として、コネクタ本体部30は、外径が一定の円筒状に形成されている。
【0023】
[1.2.2.装着部31]
装着部31は、上述の流体機械にコネクタ3を着脱可能に装着するべく当該流体機械に係合する。装着部31は、コネクタ本体部30の基端側(図中の上側)に位置してよい。装着部31は、コネクタ本体部30よりも外径が大きい環状に形成されてよい。この場合には、装着部31よりも小径の穴部が多数設けられた収容ラック(図示せず)にノズルチップ1を収容した場合に、装着部31を把持してノズルチップ1を取り出すことができる。
【0024】
[1.2.3.固定部32]
固定部32は、先端チップ2をコネクタ3に固定する部分であり、コネクタ本体部30の先端側(図中の下側)に位置する。固定部32は、加圧部320およびシーリング部321を有する。
【0025】
加圧部320は、コネクタ本体部30の先端側(図中の下側)に位置し、径方向に加圧されて先端チップ2の側周面に当接する。これにより先端チップ2がコネクタ3に固定されてよい。加圧部320は、コネクタ3の基端側から先端までコネクタ3の周方向と交差して延在する少なくとも1つの接合跡3200を有してよい。接合跡3200は一例としてノズルチップ1の軸方向に延在してよい。
【0026】
ここで、接合とは2つの物体をつなぎ合わせることであってよく、例えば溶着でもよいし、接着でもよいし、カシメでもよい。跡とは物事が行われたことを示すしるし,証拠であってよい。接合跡3200は、加圧部320の一の部分と、他の部分とを接合した跡であってよく、例えば、加圧前の加圧部320に設けられたスリット3300(図2参照)の内側面同士を接合した後であってよい。
【0027】
シーリング部321は、先端チップ2の周方向に亘って先端チップ2の基端部の側周面および基端面の少なくとも一方と接触することで、コネクタ3と先端チップ2との間をシーリングする。シーリング部321は弾性を有してよい。例えば、シーリング部321は、先端チップ2の基端部に押圧されて弾性変形することで、当該先端チップ2に密着してよい。
【0028】
シーリング部321は、固定部32の内部において加圧部320よりも基端側に設けられてよい。本実施形態では一例として、シーリング部321は、周方向に亘って先端チップ2の基端部の側周面と接触する環状の内周面部3210と、周方向に亘って先端チップ2の基端部の基端面と接触する環状の底面部3211とを有してよい。内周面部3210の内径は先端チップ2の外径と等しくてよく、底面部3211の内径は先端チップ2の外径よりも小さくてよい。
【0029】
なお、本実施形態では一例として固定部32は、基端側から先端側に向かって細くなる円錐台部分322と、円錐台部分322の先端側に設けられた外径が一定の円筒部分323と、円錐台部分322および円筒部分323の側周面から板状に延出する板状部324とを有する。円錐台部分322は、コネクタ本体部30の先端側に接続されており、基端側から先端側に向かって内部の流路10を細くしている。円筒部分323は、少なくとも先端側の部分で内部に先端チップ2の基端部を収容している。板状部324は、円錐台部分322および円筒部分323の中心軸を通るよう形成されている。
【0030】
このうち、円筒部分323および板状部324の少なくとも先端側の部分は加圧部320となっており、径方向のうちの一方向(図中のY方向)に加圧されて接合されている。円筒部分323および板状部324には、加圧方向の直交方向(図中のX方向)から見た側面に接合跡3200を有してよい。円筒部分323の基端側の内部はシーリング部321となっている。
【0031】
以上のノズルチップ1によれば、先端チップ2の基端部に固定されたコネクタ3には径方向に加圧されて先端チップ2の側周面に当接した加圧部320が具備される。従って、加圧部320が加圧されていない状態で先端チップ2の基端部をコネクタ3内に収容し、加圧部320を径方向に加圧することでコネクタ3に先端チップ2が固定される。よって、先端チップ2をコネクタ3に固定する過程において先端チップ2の軸がコネクタ3の軸に対してずれてしまうことがないため、コネクタ3および先端チップ2の間で軸同士のズレ量が小さいノズルチップ1を製造することができる。また、また、先端チップ2に軸方向の圧力を加えてコネクタ3に圧入する場合と異なり、先端チップ2の破損を防止し、高い歩留りでノズルチップ1を製造することができる。
【0032】
また、加圧部320はコネクタ3の基端側から先端まで、コネクタ3の周方向と交差して延在する少なくとも1つの接合跡3200を有する。従って、加圧部320を径方向に加圧しつつ、加圧部320に設けられたスリット3300の内側面同士を接合してスリット3300を塞ぐことで、接合跡3200が形成され加圧部320が先端チップ2の側周面に当接する。従って、スリット3300の内側面同士を接合するという簡易な工程で加圧部320を先端チップ2の側周面に当接させ、コネクタ3に先端チップ2を固定することができる。
【0033】
また、周方向に亘って先端チップ2にシーリング部321が接触するので、ノズル先端部とコネクタ3との間の気密性を高めることができる。
【0034】
[2.コネクタ3]
図2は、本実施形態に係るコネクタ3を示す。先端チップ2に固定される前のコネクタ3は、径方向に加圧されて先端チップ2の側周面に当接する加圧部(加圧対象部330とも称する)を有する。加圧対象部330は、コネクタ3の基端側から先端まで、コネクタ3の周方向と交差して延在する少なくとも1つのスリット3300を有してよい。本図では一例として、加圧対象部330は径方向のうち図中の左右方向に加圧されるようになっており、コネクタ3の先端側ほど左右方向に開いている。また、加圧対象部330は、紙面の表裏方向に延在したスリット3300を有している。
【0035】
なお、コネクタ3の少なくとも加圧対象部330は可撓性を有してよい。例えば、加圧対象部330は、スリット3300内側面同士が当接するまで変形可能であってよい。加圧対象部330は、先端チップ2の外径と等しい内径の流路10が先端部に形成されるまで変形可能であってよい。
以上のコネクタ3は、本実施形態では一例として、全体が樹脂により一体成型されている。
【0036】
[3.ノズルチップ1の製造方法]
図3は、ノズルチップ1の製造方法を示す。ノズルチップ1は、ステップS11~S13の処理により製造される。各処理は、ノズルチップ1を製造する製造業者の製造装置によって行われてもよいし、製造業者の作業員またはノズルチップ1の使用者によって行われてもよい。
【0037】
ステップS11において、コネクタ3に先端チップ2の基端部を収容する。例えば、径方向に開いた加圧対象部330に先端チップ2の基端部を差し込むことで、当該基端部をコネクタ3に収容する。この処理では、先端チップ2の周方向に亘って基端部の側周面および基端面の少なくとも一方をコネクタ3のシーリング部321に接触させてよい。本実施形態では一例として、底面部3211が押圧されるまで先端チップ2の基端部をコネクタ3に差し込んでシーリング部321を弾性変形させることでシーリング部321が先端チップ2に密着し、コネクタ3と先端チップ2との間がシーリングされる。
【0038】
ステップS13において、加圧対象部330を径方向に加圧して先端チップ2の側周面に当接させ、コネクタ3に先端チップ2を固定する。例えば、加圧対象部330を径方向に加圧してスリット3300の内側面同士を当接させ、この状態で内側面同士を接合してスリット3300を塞ぐ。本実施形態では一例として、加圧対象部330は樹脂製となっており、熱や超音波などによって加圧対象部330の内側面同士を溶融して融着する。これにより、径方向に加圧された加圧部320が形成されて先端チップ2の側周面に当接した状態となり、先端チップ2がコネクタ3に固定される。また、融着の跡によって接合跡3200が形成される。なお、先端チップ2とコネクタ3との同軸度(中心軸同士のずれ量の大きさ)は例えば0.1mm以下であってよい。
【0039】
以上の製造方法によれば、先端チップ2の基端部をコネクタ3内に収容して加圧対象部330を径方向に加圧することでコネクタ3に先端チップ2が固定される。よって、先端チップ2をコネクタ3に固定する過程において先端チップ2の軸がコネクタ3の軸に対してずれてしまうことがないため、コネクタ3および先端チップ2の間で軸同士のズレ量が小さいノズルチップ1を製造することができる。また、また、先端チップ2に軸方向の圧力を加えてコネクタ3に圧入する場合と異なり、先端チップ2の破損を防止し、高い歩留りでノズルチップ1を製造することができる。
【0040】
[3.1.加圧]
図4は、加圧対象部330の加圧前後の状態を示す。なお、図中の左側部分は外観図、であり、右側部分は断面図である。また、図中の上側部分は加圧前の状態を示し、下側部分は加圧後の状態を示す。本図では一例として、加圧対象部330が径方向のうち図中の左右方向に加圧される前後の状態を示す。
【0041】
加圧対象部330は、板状部324に対して圧力が加えられてよい。加圧対象部330は、加圧によって径方向に収縮してよい。例えば、図では、加圧対象部330の径がD1からD2へと小さくなってよい。
【0042】
[4.ノズルチップ1の適用例]
図5は、細胞吸引システム5を示す。細胞吸引システム5は、ノズルチップ1を用いて細胞内物質あるいは1または複数個の細胞の吸引する作業を支援する。
【0043】
細胞吸引システム5は、試料容器50、吸引器51、搬送部52、制御部53、顕微鏡54、共焦点スキャナ55、およびカメラ56を備える。
【0044】
試料容器50は、試料である細胞500を細胞培養液501とともに収容する。試料容器50の少なくとも底面は透光性であってよい。
【0045】
吸引器51は、細胞内成分などを吸引する。吸引器51の先端にはノズルチップ1が着脱可能に装着されてよい。吸引器51は、ノズルチップ1の内圧を調整する圧力調整部510を有してよい。
【0046】
搬送部52は、吸引器51を移動させる。例えば、搬送部52は、吸引器51をノズルチップ1とともに水平方向および鉛直方向に移動させてよい。
【0047】
制御部53は、細胞吸引システム5の各部の制御および信号処理を行なう。
【0048】
顕微鏡54は、試料容器50内の拡大画像を取得する。顕微鏡54は資料容器の底面を介して試料容器50内の拡大画像を取得してよい。顕微鏡54は、対物レンズ541、結像レンズ542および照明543などを有してよい。このうち照明543は、試料やノズルチップ1を照射してよい。一例として、照明543は、ノズルチップ1の先端を認識しやすいように、ノズルチップ1を囲むリング形状となっていてよい。
【0049】
共焦点スキャナ55は、ピンホールディスクアレイ551、マイクロレンズアレイディスク552、ダイクロイックミラー553、バンドバスフィルタ554、リレーレンズ555を備えており、顕微鏡54と組み合わせることで、試料の共焦点画像を取得する。
【0050】
カメラ56は、共焦点スキャナ55を介して取得される共焦点画像を撮像する。カメラ56は、撮像画像を制御部53に供給してよい。
【0051】
以上の細胞吸引システム5は、オペレータが吸引対象の細胞500を確認しながら搬送部52によってノズルチップ1を移動させてノズルチップ1の先端を目的の細胞に挿入し、吸引器51によって細胞内物質を吸引する。ノズルチップ1が移動される場合には、ノズルチップ1が試料容器50内の細胞培養液501を含む周辺成分を吸引しないようにノズルチップ1内は加圧されてよい。
【0052】
[4.変形例]
図6は、変形例に係るノズルチップ1Aを示す。なお、図中の左側部分はノズルチップ1の全体の外観図、右側部分はノズルチップ1の部分断面図である。
【0053】
本変形例に係るノズルチップ1Aはコネクタ3Aを備え、コネクタ3Aの固定部32Aは加圧部320Aを有する。加圧部320Aは、複数の延出部325と、収縮性材料部326とを有する。
【0054】
各延出部325は、非収縮性材料によりコネクタ3のコネクタ本体部30から延出して形成されて先端チップ2の側周面に当接する。各延出部325は、コネクタ3の周方向と交差してコネクタ本体部30からノズルチップ1の先端側に延出してよい。本変形例では一例として、各延出部325はノズルチップ1Aの軸方向に延在してよい。なお、コネクタ本体部30および装着部31は延出部325と同じ非収縮性材料により形成されてよく、この場合にはコネクタ本体部30、装着部31および延出部325が一体的に形成されてよい。
【0055】
収縮性材料部326は、収縮性材料で形成されている。収縮性材料は、収縮性を有する材料であり、例えば樹脂材料である。収縮性材料は、熱や光などの外的要因によって収縮してもよいし、自己収縮してもよい。本変形例では一例として、収縮性材料は熱収縮性であり、具体的にはポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリスチレン等であるが他の材料であってもよい。
【0056】
収縮性材料部326は、少なくとも周方向に収縮することで径方向に加圧された状態となってよい。例えば、収縮性材料部326は、収縮チューブであってよい。収縮性材料部326は、延出部325を周方向に覆ってよい。
【0057】
[4.1.ノズルチップ1Aの製造方法]
以上のノズルチップ1Aを製造する場合には、上述のステップS13の処理において、収縮性材料部326を形成する収縮性材料の収縮作用により、加圧部320を径方向に収縮させる。
【0058】
図7は、収縮性材料部326を収縮させる処理を示す。図中の左側部分は全体の外観図、右側部分は部分断面図である。
【0059】
収縮性材料部326を収縮させる場合には、コネクタ3Aに先端チップ2の基端部を収容した後、コネクタ本体部30の先端側を収縮前の収縮性材料部326で周方向に覆ってよい。本変形例では一例として、コネクタ3Aに先端チップ2の基端部を収容した後、収縮性材料部326である収縮チューブの内側に先端チップ2を先端側から通して、各延出部325を収縮性材料部326で覆ってよい。そして、収縮性材料部326を加熱によって収縮させてよい。
【0060】
なお、収縮性材料部326の収縮前には、各延出部325は先端側ほど径方向に広がってよい。この場合には、コネクタ3Aに先端チップ2の基端部を差し込みやすくなる。
【0061】
また、周方向に隣接する延出部325同士の間にはスリットが形成されてよい。この場合には収縮性材料部326が収縮しても延出部325同士は互いに重なり合わないため、延出部325の重なり具合によって先端チップ2とコネクタ3との同軸度や固定強度が影響を受けてしまうのが防止される。
【0062】
以上のノズルチップ1Aによれば、加圧部320は収縮性材料で形成されているので、収縮材料を収縮させるという簡易な工程で加圧部320を先端チップ2の側周面に当接させ、コネクタ3に先端チップ2を固定することができる。
【0063】
また、非収縮性材料によりコネクタ本体部30から延出して先端チップ2の周面に当接する複数の延出部325が収縮チューブによって周方向に覆われるので、各延出部325を介して先端チップ2がコネクタ本体部30に確実に固定される。
【0064】
なお、上記の変形例においては、加圧部320Aが複数の延出部325を有することとして説明したが、1つの延出部325のみを有することとしてもよい。この場合には、延出部325は先端チップ2の側周面に対し周方向に亘って当接してもよいし、側周面における周方向の一部の領域のみに当接してもよい。
【0065】
また、延出部325、コネクタ本体部30および装着部31が非収縮性材料で形成され、収縮性材料部326が収縮性材料で形成されることとして説明したが、コネクタ3の全体が収縮性材料で形成されてもよい。この場合には、収縮前のコネクタ3に先端チップ2の基端側を収容した後、コネクタ3の全体を収縮させてノズルチップ1を製造してよい。
【0066】
[5.その他の変形例]
なお、上記の実施形態および変形例においては、ノズルチップ1が細胞吸引システム5の吸引器51に装着されることとして説明したが、他の装置の吸引部に装着されてもよいし、試料や薬剤を注入する注入部に装着されてもよい。
【0067】
また、コネクタ3が全体として樹脂により一体成型されることとして説明したが、1または複数の材料を用いて複合的に形成されてもよい。例えば、コネクタ3におけるシーリング部321は樹脂で形成され、他の部分がシーリング部321とは異なる1または複数の材料(一例として金属)で形成されてもよい。
【0068】
また、シーリング部321は先端チップ2の基端部に押圧されて弾性変形することでコネクタ3と先端チップ2との間をシーリングすることとして説明したが、先端チップ2の基端部をコネクタ3内に差し込む段階で溶融されて先端チップ2に溶着することでシーリングしてもよい。また、シーリング部321は接着剤によって形成されてもよく、この場合は先端チップ2の基端部をコネクタ3内に差し込む段階でコネクタ3の内側の少なくとも一部に接着剤を塗布して先端チップ2に接着させることでコネクタ3と先端チップ2との間がシーリングされてもよい。
【0069】
また、シーリング部321が固定部32の内側に形成されることとして説明したが、先端チップ2とコネクタ3との気密性が保たれる限りにおいて、コネクタ3におけるコネクタ本体部30や装着部31の内側に形成されてもよいし、ノズルチップ1がシーリング部321を有しなくてもよい。
【0070】
また、加圧対象部330を樹脂製とし、接合跡3200を融着の跡として説明したが、加圧対象部330は金属製であってもよく、接合跡3200はカシメによる接合の跡であってもよい。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0072】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0073】
1,1A ノズルチップ、
2 先端チップ、
3,3A コネクタ、
5 細胞吸引システム、
10 流路、
30 コネクタ本体部、
31 装着部、
32,32A 固定部、
50 試料容器、
51 吸引器、
52 搬送部、
53 制御部、
54 顕微鏡、
55 共焦点スキャナ、
56 カメラ、
320,320A 加圧部、
321 シーリング部、
322 円錐台部分、
323 円筒部分、
324 板状部、
325 延出部、
326 収縮性材料部、
330 加圧対象部、
500 細胞、
501 細胞培養液、
541 対物レンズ、
542 結像レンズ、
543 照明、
555 リレーレンズ、
3200 接合跡、
3210 内周面部、
3211 底面部、
3300 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7