(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20230511BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230511BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
C08K3/36
C08K5/06
C08K5/10
C08K5/5419
C08K5/548
(21)【出願番号】P 2019026312
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】武田 慎也
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-137945(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002750(WO,A1)
【文献】特開2015-218255(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143272(WO,A1)
【文献】特開2002-234310(JP,A)
【文献】特開平11-106512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエンゴムを30~60質量部含むゴム成分100質量部に対し、シリカを70~120質量部および
ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が6~12であるポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)を1~25質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
さらにシランカップリング剤を配合してなり、前記シランカップリング剤が、下記(1)の組成式で表されることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
(A)
a(B)
b(C)
c(D)
d(R1)
eSiO
(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
(式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
【請求項3】
さらにアルキルアルコキシシラン剤を配合してなり、前記アルキルアルコキシシランが、下記式(2)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【化1】
(式(2)中、R1は炭素数3~20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【請求項4】
タイヤキャップトレッドに用いられる、請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、低温グリップ性能を維持しながら、ドライグリップ性能とウェットグリップ性能とを向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オールシーズン用の空気入りタイヤは、高速走行時における乾燥路面での操縦安定性(ドライグリップ性能)や湿潤路面での操縦安定性(ウェットグリップ性能)を具備することの他に、低温時や積雪路面での操縦安定性(低温グリップ性能)などの低温性能を具備することが必要であるため、広範な条件下で高いレベルの走行安定性が求められる。
【0003】
一般に、オールシーズン用空気入りタイヤのドライグリップ性能を向上するためには、ガラス転移温度(Tg)が高いスチレン-ブタジエンゴムを使用したり、シリカとカーボンブラックを併用したりするが、低温グリップ性能が悪化するという問題があった。
【0004】
低温グリップ性能を向上させる手段として、例えばゴム組成物に液状ポリブタジエンなどの液状ポリマーを配合することが知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、この技術では、強度や高温時の硬さが低下するので、ドライグリップ性能およびウェットグリップ性能が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、低温グリップ性能を維持しながら、ドライグリップ性能とウェットグリップ性能とを向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ブタジエンゴムを特定量で含むゴム成分に対し、シリカを特定量配合し、さらに特定の可塑剤を特定量で配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.ブタジエンゴムを30~60質量部含むゴム成分100質量部に対し、シリカを70~120質量部およびポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)を1~25質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.さらにシランカップリング剤を配合してなり、前記シランカップリング剤が、下記(1)の組成式で表されることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
(式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
3.さらにアルキルアルコキシシラン剤を配合してなり、前記アルキルアルコキシシランが、下記式(2)で表されることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
【0009】
【0010】
(式(2)中、R1は炭素数3~20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
4.タイヤキャップトレッドに用いられる、前記1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
5.前記1~3のいずれかに記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴム組成物は、ブタジエンゴムを30~60質量部含むゴム成分100質量部に対し、シリカ70~120質量部と、特定の可塑剤であるポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)1~25質量部とを配合しているので、低温グリップ性能を維持しながら、ドライグリップ性能とウェットグリップ性能とを向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、ブタジエンゴム(BR)を必須成分とする。BRは、ゴム成分全体を100質量部としたときに、30~60質量部を占める必要がある。BRの前記配合量が30質量部未満であると低温グリップ性能が悪化し、逆に60質量部を超えるとウェットグリップ性能が悪化する。
なお、本発明におけるゴム成分は、BR以外のゴム、例えば公知のジエン系ゴムを配合することができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0014】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカは、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカなど、従来からゴム組成物において使用することが知られている任意のシリカを単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
なお、ウェットグリップ性能および低温グリップ性能をさらに高めるという観点から、シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、150~250m2/gであることが好ましく、150~230m2/gであるのがさらに好ましい。
なお窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217-2に準拠して求めるものとする。
【0015】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対し、70~120質量部であり、80~120質量部が好ましい。シリカの配合量が70質量部未満では、ウェットグリップ性能および低温グリップ性能を高めることができず、120質量部を超えると加工性が悪化する。
【0016】
(特定の可塑剤)
本発明では、特定の可塑剤としてポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)を使用する。
ポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)は、可塑剤としての効果に加えて、シリカの凝集を防ぐことでシリカの分散を向上させる効果を有するものと推測される。
【0017】
ポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)において、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数は、例えば6~12であり、8~10が好ましい。
【0018】
ポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)は、市販品を利用することができ、例えばライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製リオノンDEH-40等が挙げられる。
【0019】
ポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、1~25質量部であり、5~20質量部が好ましい。
ポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)の配合量が1質量部未満では、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができず、25質量部を超えるとドライグリップ性能およびウェットグリップ性能が低下する。
【0020】
(シランカップリング剤)
本発明では、公知のシランカップリング剤を使用することができる。使用されるシランカップリング剤としては、ウェットグリップ性能および低温グリップ性能をさらに高めるという観点から、下記式(1)で表されるシランカップリング剤が好ましい。
【0021】
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
【0022】
(式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
【0023】
式(1)で表される硫黄含有シランカップリング剤(ポリシロキサン)およびその製造方法は、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示され、公知である。
【0024】
上記式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。なかでも、下記式(12)で表される基であることが好ましい。
*-(CH2)n-Sx-(CH2)n-* (12)
上記式(12)中、nは1~10の整数を表し、なかでも、2~4の整数であることが好ましい。
上記式(12)中、xは1~6の整数を表し、なかでも、2~4の整数であることが好ましい。
上記式(12)中、*は、結合位置を示す。
上記式(12)で表される基の具体例としては、例えば、*-CH2-S2-CH2-*、*-C2H4-S2-C2H4-*、*-C3H6-S2-C3H6-*、*-C4H8-S2-C4H8-*、*-CH2-S4-CH2-*、*-C2H4-S4-C2H4-*、*-C3H6-S4-C3H6-*、*-C4H8-S4-C4H8-*などが挙げられる。
【0025】
上記式(1)中、Bは炭素数5~20の1価の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0026】
上記式(1)中、Cは加水分解性基を表し、その具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、下記式(13)で表される基であることが好ましい。
*-OR2 (13)
上記式(13)中、R2は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2~10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(13)中、*は、結合位置を示す。
【0027】
上記式(1)中、Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。なかでも、下記式(14)で表される基であることが好ましい。
*-(CH2)m-SH (14)
上記式(14)中、mは1~10の整数を表し、なかでも、1~5の整数であることが好ましい。
上記式(14)中、*は、結合位置を示す。
上記式(14)で表される基の具体例としては、*-CH2SH、*-C2H4SH、*-C3H6SH、*-C4H8SH、*-C5H10SH、*-C6H12SH、*-C7H14SH、*-C8H16SH、*-C9H18SH、*-C10H20SHが挙げられる。
【0028】
上記式(1)中、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。
【0029】
上記式(1)中、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。
【0030】
上記式(1)中、aは、本発明の上記効果が向上するという理由から、0<a≦0.50であることが好ましい。
上記式(1)中、bは、本発明の上記効果が向上するという理由から、0<bであることが好ましく、0.10≦b≦0.89であることがより好ましい。
上記式(1)中、cは、本発明の上記効果が向上するという理由から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
上記式(1)中、dは、本発明の上記効果が向上するという理由から、0.1≦d≦0.8であることが好ましい。
【0031】
上記ポリシロキサンの重量平均分子量は、本発明の上記効果が向上するという理由から、500~2300であるのが好ましく、600~1500であるのがより好ましい。本発明における上記ポリシロキサンの分子量は、トルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で求めたものである。
上記ポリシロキサンの酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加-チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550~700g/molであるのが好ましく、600~650g/molであるのがより好ましい。
【0032】
上記ポリシロキサンは、本発明の上記効果が向上するという理由から、シロキサン単位(-Si-O-)を2~50個有するものであることが好ましい。
【0033】
なお、上記ポリシロキサンの骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しない。
【0034】
上記ポリシロキサンの製造方法は公知であり、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示された方法にしたがって製造することができる。
【0035】
シランカップリング剤の配合量は、前記シリカに対して3~20質量%が好ましく、5~15質量%であるのがさらに好ましい。5質量%未満であると、添加効果が発現しない。逆に20質量%を超えると、それ以上の改善効果が得られなくなる。
【0036】
(アルキルアルコキシシラン)
本発明では、ウェットグリップ性能および低温グリップ性能をさらに高めるという観点から、下記式(2)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。
【0037】
【0038】
(式(2)中、R1は炭素数3~20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【0039】
ここで、R1の炭素数3~20のアルキル基としては、中でも、炭素数7~20のアルキル基が好ましく、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。これらのうち、ジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8~10のアルキル基がさらに好ましく、オクチル基、ノニル基であるのがとくに好ましい。
【0040】
アルキルアルコキシシランの配合量は、前記シリカに対して3~20質量%が好ましく、5~15質量%であるのがさらに好ましい。5質量%未満であると、添加効果が発現しない。逆に20質量%を超えると、それ以上の改善効果が得られなくなる。
【0041】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;前記以外のその他の可塑剤;樹脂などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0042】
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、キャップトレッド、とくにオールシーズンタイヤのキャップトレッドに適用するのがよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0044】
実施例1~7および比較例1~4
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、混練物をミキサー外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにおいて加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0045】
上記で得られた加硫ゴム試験片をタイヤトレッド部に使用して、タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤを製造した。これらの空気入りタイヤについて、ドライグリップ性能およびウェットグリップ性能を以下の方法で評価した。
【0046】
ドライグリップ性能:前記空気入りタイヤをサイズ15×6Jのリムにリム組みし、JATMAイヤーブックに記載の正規空気圧を充填し、国産2.5リットルクラスの車両に装着して、乾燥路面からなるテストコースを走行時のドライグリップ性能を専門パネラー5名が10点満点でフィーリング評価し、その平均点を求めた。得られた結果は、比較例1のタイヤを100とする指数として表1に示した。この値が大きいほどドライグリップ性能が優れている。
【0047】
ウェットグリップ性能:前記空気入りタイヤをサイズ15×6Jのリムにリム組みし、JATMAイヤーブックに記載の正規空気圧を充填し、国産2.5リットルクラスの車両に装着して、湿潤路面(水深約10mm)からなるテストコースを走行時のウェットグリップ性能を専門パネラー5名が10点満点でフィーリング評価し、その平均点を求めた。得られた結果は、比較例1のタイヤを100とする指数として表1に示した。この値が大きいほどウェットグリップ性能が優れている。
【0048】
また、低温グリップ性能について、以下の方法で評価した。
低温グリップ性能:得られた加硫ゴム試験片の硬度を、JIS K6253に準拠して、デュロメータのタイプAにより温度-20℃で測定した。得られた結果は、比較例1の逆数を100とする指数として表1に示した。この値が大きいほど低温時の硬度が低く、低温グリップ性能が優れている。
【0049】
結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
*1:NR(RSS#3)
*2:BR(日本ゼオン株式会社製Nipol BR1220)
*3:SBR(日本ゼオン株式会社製Nipol NS460、油展S-SBR、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部、スチレン量=25%、ビニル量=63%)
*4:可塑剤1(株式会社ジェイ・プラス製DINP、フタル酸ジイソノニル)
*5:可塑剤2(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製リオノンDEH-40、ポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート))
*6:アロマオイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*7:カーボンブラック(キャボットジャパン社製ショウブラックN234、窒素吸着比表面積(N2SA)=126m2/g)
*8:シリカ(ローディア社製1165MP、窒素吸着比表面積(N2SA)=160m2/g)
*9:シランカップリング剤1(エボニクデグッサ社製Si69)
*10:シランカップリング剤2(上記式(1)を満たす化合物。組成式=(-C3H6-S4-C3H6-)0.071(-C8H17)0.571(-OC2H5)1.50(-C3H6SH)0.286SiO0.75)
*11:亜鉛華(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*12:ステアリン酸(千葉脂肪酸株式会社製工業用ステアリン酸N)
*13:老化防止剤(精工化学株式会社製オゾノン6C)
*14:イオウ(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
*15:加硫促進剤1(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ-G)
*16:加硫促進剤2(フレキシス製PERKACIT DPG)
*17:アルキルアルコキシシラン(n-オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBE-3083))
【0052】
表1の結果から、実施例のゴム組成物は、ブタジエンゴムを30~60質量部含むゴム成分100質量部に対し、シリカ70~120質量部と、特定の可塑剤であるポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)1~25質量部とを配合しているので、従来の代表的な組成を有する比較例1の組成物に比べ、低温グリップ性能を維持しながら、ドライグリップ性能とウェットグリップ性能とが向上している。
これに対し、比較例2は比較例1のゴム組成物に対し、ゴム成分の組成およびアロマオイルの量を単に変更したものであるので、ウェットグリップ性能が悪化した。
比較例3は、比較例1のゴム組成物に対しシリカを増量した例であり、低温グリップ性能が悪化した。
比較例4はポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、ドライグリップ性能およびウェットグリップ性能が悪化した。