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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20230511BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60C11/01 B
B60C11/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019028857
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020131978
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 雅光
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028314(JP,A)
【文献】特開2000-280711(JP,A)
【文献】特開平11-291718(JP,A)
【文献】特開2009-208641(JP,A)
【文献】特開2018-039366(JP,A)
【文献】特開2016-113100(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125246(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に配設されるベルト層と、
トレッドプロファイルから突出すると共に、タイヤ子午断面において前記ベルト層のタイヤ幅方向における端部から前記トレッドプロファイルに対して垂直に延ばした線と前記トレッドプロファイルとの交点を跨いで形成されるリブと、
タイヤ幅方向に延びると共に、タイヤ幅方向における位置が前記リブのタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有するラグ溝と、
を備え
前記リブは、前記交点から前記リブのタイヤ幅方向における外側端部までの距離D1と、前記交点から前記リブのタイヤ幅方向における内側端部までの距離D2との関係が、0.5≦(D2/D1)≦2.0の範囲内であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記リブは、タイヤ断面高さのタイヤ径方向内側の基準位置から、前記リブのタイヤ幅方向における外側端部の位置までのタイヤ径方向における高さが、前記タイヤ断面高さの55%以上である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記リブは、延在方向が異なる前記リブを複数有しており、
延在方向が異なる複数の前記リブは、互いに交差して配置される請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
複数の前記リブは、前記交点の位置で交差する請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
複数の前記リブのうちの一部の前記リブは、前記交点の位置でタイヤ周方向に延在する請求項3または4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記リブは、前記トレッドプロファイルからの高さが、前記ベルト層のタイヤ幅方向における前記端部から前記交点までの距離に対して20%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記リブは、タイヤ幅方向における外側端部から内側端部までの距離が、前記ベルト層のタイヤ幅方向における幅に対して20%以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気入りタイヤの中には、ショルダー部付近に突出部を設けることにより、所望の性能の向上を図っているものがある。例えば、特許文献1に記載された空気入りタイヤは、ラグ溝のショルダー部側の端部をベルト層の端部よりタイヤ軸方向のセンター側に位置させると共に、当該ラグ溝の端部の外側に接するリブ領域を設けることにより、ベルト部の耐久性の維持と高周波ロードノイズの低減とを両立させている。また、特許文献2に記載された空気入りタイヤは、トレッド部の接地部のタイヤ幅方向外側に、車両の直進走行時には接地せず、コーナリング時には接地する突起部を複数形成することにより、操縦安定性や耐摩耗性を低減させることなく転覆限界性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-138739号公報
【文献】特開2006-182179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年では、コストの削減や転がり抵抗の低減などといった目的から、タイヤの軽量化が要求されている。軽量化の手法としては、例えば、トレッド部の展開幅を狭くし、これに伴いベルト幅を狭くする手法が挙げられる。しかし、ベルト幅を狭くした場合、タイヤの高速回転時に、トレッド部のタイヤ幅方向における両端付近の、タイヤ径方向外側への膨らみを抑えるのが困難になる虞があり、ベルト層のタイヤ幅方向における端部付近でセパレーションが発生し易くなる等、高速耐久性能が悪化し易くなる虞がある。
【0005】
ベルト層の耐久性を確保するためには、例えば、特許文献1に記載されてように、ラグ溝のショルダー部側の端部の外側に接するリブ領域を設けることが考えられるが、ラグ溝のショルダー部側の端部の外側に接するリブ領域を設けた場合、当該ラグ溝での排水性が低下する虞がある。この場合、濡れた路面の走行時の性能であるウェット性能が低下する虞がある。このため、ウェット性能の低下を抑えつつ高速耐久性能を確保するのは、大変困難なものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高速耐久性能とウェット性能とを両立することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部に配設されるベルト層と、トレッドプロファイルから突出すると共に、タイヤ子午断面において前記ベルト層のタイヤ幅方向における端部から前記トレッドプロファイルに対して垂直に延ばした線と前記トレッドプロファイルとの交点を跨いで形成されるリブと、タイヤ幅方向に延びると共に、タイヤ幅方向における位置が前記リブのタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有するラグ溝と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記リブは、タイヤ断面高さのタイヤ径方向内側の基準位置から、前記リブのタイヤ幅方向における外側端部の位置までのタイヤ径方向における高さが、前記タイヤ断面高さの55%以上であることが好ましい。
【0009】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記リブは、延在方向が異なる前記リブを複数有しており、延在方向が異なる複数の前記リブは、互いに交差して配置されることが好ましい。
【0010】
また、上記空気入りタイヤにおいて、複数の前記リブは、前記交点の位置で交差することが好ましい。
【0011】
また、上記空気入りタイヤにおいて、複数の前記リブのうちの一部の前記リブは、前記交点の位置でタイヤ周方向に延在することが好ましい。
【0012】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記リブは、前記トレッドプロファイルからの高さが、前記ベルト層のタイヤ幅方向における前記端部から前記交点までの距離に対して20%以下であることが好ましい。
【0013】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記リブは、タイヤ幅方向における外側端部から内側端部までの距離が、前記ベルト層のタイヤ幅方向における幅に対して20%以下であることが好ましい。
【0014】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記リブは、前記交点から前記リブのタイヤ幅方向における外側端部までの距離D1と、前記交点から前記リブのタイヤ幅方向における内側端部までの距離D2との関係が、0.5≦(D2/D1)≦2.0の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤは、高速耐久性能とウェット性能とを両立することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。
図2図2は、図1に示す空気入りタイヤのトレッド部からビード部にかけての詳細図である。
図3図3は、図2に示すリブを説明するための空気入りタイヤの要部斜視図である。
図4図4は、図2に示すリブの詳細図である。
図5図5は、図4のA-A矢視図である。
図6図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、リブが平面交差をする2つのリブのみによって構成される場合の説明図である。
図7図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、一部のリブが交点に沿ってタイヤ周方向に延在する場合の説明図である。
図8図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、一部のリブが交点に沿ってタイヤ周方向に延在する場合の説明図である。
図9図9は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、一部のリブがショルダーラグ溝から離間して配置される場合の説明図である。
図10図10は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、ショルダーラグ溝の外側端部がリブの外側端部よりもタイヤ幅方向内側に位置する場合の説明図である。
図11図11は、図10のB-B断面図である。
図12図12は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
【0019】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド接地面3として形成され、トレッド接地面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、トレッド接地面3にタイヤ周方向に延びる主溝30と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40とがそれぞれ複数形成されている。複数の主溝30は、タイヤ幅方向に並んで配置されており、複数のラグ溝40は、タイヤ周方向に並んで配置されており、これらの主溝30やラグ溝40により、トレッド部2の表面には複数の陸部20が画成されている。
【0020】
なお、主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に主溝30は、4.0mm以上の溝幅を有し、5.0mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在していてもよく、タイヤ周方向に延びながらタイヤ幅方向に繰り返し振幅することにより、波形状又はジグザグ状に形成してもよい。
【0021】
ラグ溝40は、溝幅が2.0mm以上5.0mm以下の範囲内になっており、溝深さが5.0mm以上12.0mm以下の範囲内になっている。ラグ溝40は、タイヤ幅方向に直線状に延在していてもよく、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜したり、湾曲や屈曲したりしていてもよい。本実施形態では、ラグ溝40としては、複数の主溝30のうちタイヤ幅方向において最も外側に位置する最外主溝31のタイヤ幅方向外側に配置される、ショルダーラグ溝41を少なくとも有している。ショルダーラグ溝41は、本実施形態では、タイヤ幅方向内側の端部は、最外主溝31には開口せずに、最外主溝31のタイヤ幅方向外側に位置する陸部であるショルダー陸部21内で終端している。
【0022】
また、主溝30とラグ溝40とによって画成される陸部20は、タイヤ周方向の1周に亘ってリブ状に形成されていてもよく、タイヤ幅方向に隣り合う主溝30同士の間に亘ってラグ溝40が形成されることにより陸部20が主溝30とラグ溝とによって画成され、各陸部20がブロック状に形成されていてもよい。
【0023】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されており、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
【0024】
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
【0025】
また、トレッド部2には、ベルト層14が配設されている。ベルト層14は、複数のベルト141、142が積層される多層構造によって構成されており、本実施形態では、2層のベルト141、142が積層されている。ベルト層14を構成するベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。また、2層のベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層のベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。つまり、2層のベルト141、142は、それぞれのベルト141、142が有するベルトコードが互いに交差する向きで配設される、いわゆる交差ベルトとして設けられている。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0026】
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
【0027】
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
【0028】
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
【0029】
また、最外主溝31のタイヤ幅方向外側には、リブ50が配設されている。リブ50は、トレッド部2のショルダー部5付近に形成されており、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に配設されている。即ち、リブ50は、ショルダー陸部21のタイヤ幅方向外側寄りの位置に配設されている。また、リブ50は、トレッド部2のタイヤ幅方向における両側に配設されている。
【0030】
ここでいう接地端Tは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして規定内圧を充填し、静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に相当する荷重を加えられたときの、トレッド接地面3における平板に接触する領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。ここでいう規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0031】
図2は、図1に示す空気入りタイヤ1のトレッド部2からビード部10にかけての詳細図である。図3は、図2に示すリブ50を説明するための空気入りタイヤ1の要部斜視図である。最外主溝31のタイヤ幅方向外側に配設されるリブ50は、タイヤ断面高さSHのタイヤ径方向内側の基準位置であるリム径基準位置BLから、リブ50のタイヤ幅方向における外側端部56の位置までのタイヤ径方向における高さHRが、タイヤ断面高さSHの55%以上になっている。即ち、リブ50は、リム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に、タイヤ断面高さSHの55%の位置よりもタイヤ径方向外側に配置されている。
【0032】
なお、この場合におけるタイヤ断面高さSHは、トレッド部2における最もタイヤ径方向外側に位置している部分と、リム径基準位置BLとのタイヤ径方向の距離になっている。ここでいうリム径基準位置BLは、JATMAの規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線である。つまり、タイヤ断面高さSHは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして、規定内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときの、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいう。
【0033】
図4は、図2に示すリブ50の詳細図である。図5は、図4のA-A矢視図である。リブ50は、最外主溝31とサイドウォール部8との間の位置で、トレッドプロファイルTPから突出して形成されている。ここでいうトレッドプロファイルTPは、タイヤ子午断面における、サイドウォール部8の表面から凹凸を除いたサイドウォール部8の表面のプロファイルと、トレッド接地面3のプロファイルとを滑らかに接続する円弧になっている。
【0034】
また、リブ50は、タイヤ子午断面においてベルト層14のタイヤ幅方向における端部144からトレッドプロファイルTPに対して垂直に延ばした線Lと、トレッドプロファイルTPとの交点Pを跨いで形成されている。この場合におけるベルト層14のタイヤ幅方向における端部144は、ベルト層14は、複数のベルト141、142のうち、タイヤ幅方向における幅が最も広いベルトである最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における端部144になっている。つまり、ベルト層14のタイヤ幅方向における端部144からトレッドプロファイルTPに対して垂直に延ばした線Lは、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における端部144を通る、トレッドプロファイルTPの法線Lになっている。リブ50は、このように最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における端部144を通るトレッドプロファイルTPの法線Lと、トレッドプロファイルTPとの交点Pを、タイヤ幅方向に跨いで形成されている。
【0035】
最外主溝31のタイヤ幅方向外側に配置されてタイヤ幅方向に延びるショルダーラグ溝41は、本実施形態では、リブ50よりもタイヤ幅方向外側まで延びている。即ち、ショルダーラグ溝41は、タイヤ幅方向における外側端部42の位置が、リブ50のタイヤ幅方向における外側端部56の位置よりも、タイヤ幅方向外側に位置している。これにより、ショルダーラグ溝41は、タイヤ幅方向における位置が、リブ50のタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有している。換言すると、リブ50は、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士の間に配設されている。なお、ショルダーラグ溝41は、ショルダーラグ溝41の外側端部42と、リブ50の外側端部56とのずれ量D4が、1.0mm以上5.0mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0036】
また、リブ50は、延在方向が異なるリブ50を複数有している。さらに、リブ50は、1つのリブ50がタイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士の間に亘って延在することにより、または、複数のリブ50が組み合わされることにより、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士の間に亘って配設されている。具体的には、リブ50は、それぞれ延在方向が異なる第1リブ51と、第2リブ52と、第3リブ53と、第4リブ54、第5リブ55とを有している。これらの第1リブ51、第2リブ52、第3リブ53、第4リブ54、第5リブ55とは、全て、タイヤ周方向に隣り合う各ショルダーラグ溝41同士の間に配設されている。
【0037】
このうち、第1リブ51は、タイヤ幅方向における内側から外側に向かいつつ、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士のうちの一方のショルダーラグ溝41側から他方のショルダーラグ溝41側に向かって延在している。
【0038】
第2リブ52は、第1リブ51とはタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が反対方向になっており、タイヤ幅方向における内側から外側に向かいつつ、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士のうちの他方のショルダーラグ溝41側から一方のショルダーラグ溝41側に向かって延在している。
【0039】
このように、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への延在方向が異なる第1リブ51と第2リブ52とは、リブ50の平面視において互いに交差して配置されており、即ち、第1リブ51と第2リブ52とは、平面交差をしている。平面交差をしている第1リブ51と第2リブ52とは、交点Pの位置で交差している。
【0040】
第3リブ53は、一方のショルダーラグ溝41に隣接して一方のショルダーラグ溝41に沿ってタイヤ幅方向に延在し、第1リブ51と第2リブ52とのそれぞれのリブ50における一方のショルダーラグ溝41側の端部同士の間に亘って形成されている。
【0041】
第4リブ54は、他方のショルダーラグ溝41に隣接して他方のショルダーラグ溝41に沿ってタイヤ幅方向に延在し、第1リブ51と第2リブ52とのそれぞれのリブ50における他方のショルダーラグ溝41側の端部同士の間に亘って形成されている。
【0042】
第5リブ55は、第3リブ53と第4リブ54とのそれぞれのリブ50における、タイヤ幅方向外側の端部の間に亘って、タイヤ周方向に延在している。これらのように、リブ50は、第1リブ51と第2リブ52と第5リブ55とが、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士の間に亘って延在することにより、ショルダーラグ溝41同士の間に亘って配設されている。
【0043】
これらの第1リブ51、第2リブ52、第3リブ53、第4リブ54、第5リブ55は、トレッドプロファイルTPからの高さが、ほぼ同じ高さになっており、ほぼ一定の高さになっている。トレッドプロファイルTPからの高さがほぼ同じ高さになって形成されるリブ50は、トレッドプロファイルTPからの高さH2が、ベルト層14のタイヤ幅方向における端部144から交点Pまでの距離H1に対して、20%以下になっている。なお、トレッドプロファイルTPからのリブ50の高さH2は、ベルト層14のタイヤ幅方向における端部144から交点Pまでの距離H1に対して、10%以上20%以下の範囲内であるのが好ましい。
【0044】
また、リブ50は、タイヤ幅方向における外側端部56から内側端部57までの距離D3が、ベルト層14のタイヤ幅方向における幅BWに対して、20%以下になっている。この場合におけるベルト層14のタイヤ幅方向における幅BWは、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅になっている。また、リブ50の外側端部56と内側端部57とは、リブ50における、それぞれ最もタイヤ幅方向外側に位置する部分と最もタイヤ幅方向内側に位置する部分になっており、外側端部56から内側端部57までの距離D3は、リブ50の外側端部56と内側端部57とにおける、タイヤ子午断面上での距離になっている。つまり、外側端部56と内側端部57とは、タイヤ周方向における位置が異なる位置であってもよい。外側端部56と内側端部57とで、タイヤ周方向における位置が異なる場合は、距離D3は、外側端部56と内側端部57とのタイヤ周方向における位置が同じ位置にあるものとして測定される。また、リブ50の外側端部56から内側端部57までの距離D3は、ベルト層14のタイヤ幅方向における幅BWに対して、5%以上20%以下の範囲内であるのが好ましい。
【0045】
さらに、リブ50は、交点Pからリブ50のタイヤ幅方向における外側端部56までの距離D1と、交点Pからリブ50のタイヤ幅方向における内側端部57までの距離D2との関係が、0.5≦(D2/D1)≦2.0の範囲内になっている。この場合における交点Pから外側端部56までの距離D1と、交点Pから内側端部57までの距離D2とは、互いにタイヤ周方向における位置が異なる位置での距離であってもよい。また、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1と、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2とは、D1:D2=1:1の関係であるのが好ましい。
【0046】
また、リブ50は、交点Pからリブ50のタイヤ幅方向における外側端部56までの距離D1が、接地端Tから交点Pまでの距離TDに対して、0.3≦(D1/TD)≦1.0の範囲内になっている。この場合における接地端Tから交点Pまでの距離TDは、タイヤ周方向における位置が同じ位置における、トレッドプロファイルTPに沿った長さ、或いはトレッド接地面3に沿った長さになっている。
【0047】
また、各リブ50は、リブ50の延在方向に対して直交する方向における幅であるリブ50の幅Wが、交点Pからリブ50のタイヤ幅方向における外側端部56までの距離D1に対して、0.1≦(W/D1)≦1.0の範囲内になっている。
【0048】
さらに、リブ50のタイヤ幅方向における内側の位置から、リブ50のタイヤ幅方向における外側端部56よりもタイヤ幅方向外側まで延在するショルダーラグ溝41は、ショルダーラグ溝41の外側端部42と、リブ50の外側端部56とのずれ量D4が、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1に対して、0.1≦(D4/D1)≦1.0の範囲内になっている。
【0049】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールに空気入りタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド接地面3のうち下方に位置する部分のトレッド接地面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、トレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。例えば、空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド接地面3と路面との間の水が主溝30やラグ溝40等の溝に入り込み、これらの溝でトレッド接地面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド接地面3は路面に接地し易くなり、トレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、車両は所望の走行をすることが可能になる。
【0050】
また、車両の走行時は、空気入りタイヤ1はタイヤ回転軸を中心として回転をするため、トレッド部2のタイヤ幅方向における両端付近が、タイヤ径方向外側への膨らみ易くなる。特に、車両の高速走行時は、空気入りタイヤ1は高速で回転するため、トレッド部2のタイヤ幅方向における両端付近は、より膨らみ易くなる。この場合、ベルト層14のタイヤ幅方向における端部144付近もタイヤ径方向外側に膨らみ易くなり、これに起因して、セパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0051】
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トレッドプロファイルTPから突出するリブ50が、ベルト層14の端部144からトレッドプロファイルTPに対して垂直に延ばした線LとトレッドプロファイルTPとの交点Pを跨いで形成されている。このため、トレッド部2におけるベルト層14の端部144付近の位置の剛性をリブ50によって補強することができ、リブ50によって剛性を確保することができる。これにより、車両の高速走行時に空気入りタイヤ1が高速で回転した場合でも、トレッド部2のタイヤ幅方向における両端付近がタイヤ径方向外側に膨らむことを極力抑制することができ、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことも、極力抑制することができる。従って、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことに起因するセパレーションの発生を抑制することができ、高速耐久性能を確保することができる。
【0052】
ここで、濡れた路面の走行時は、トレッド接地面3と路面との間の水を主溝30やラグ溝40等の溝によって排水しながら走行するため、ショルダー陸部21やショルダー部5付近の水の一部は、ショルダーラグ溝41によってタイヤ幅方向外側に排水しながら走行する。このため、ショルダー部5付近に、トレッドプロファイルTPから突出するリブ50が形成される場合、ショルダーラグ溝41によってタイヤ幅方向外側に排水する水は、リブ50によって阻害されて排水し難くなる虞がある。
【0053】
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ショルダーラグ溝41は、タイヤ幅方向における位置がリブ50のタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有しているため、ショルダーラグ溝41は、リブ50の影響を受けずにタイヤ幅方向外側に排水することができる。つまり、ショルダーラグ溝41によって排水する水は、タイヤ幅方向外側への流れがリブ50によって遮られることなく、ショルダーラグ溝41を通って、タイヤ幅方向においてリブ50が配設される位置や、リブ50が配設される位置のタイヤ幅方向外側に流れることができる。従って、ベルト層14の端部144付近でのセパレーションの発生を抑制することができるリブ50を設けた場合における、ラグ溝40での排水性を確保することができ、濡れた路面を走行する際における走行性能であるウェット性能を確保することができる。これらの結果、高速耐久性能とウェット性能とを両立することができる。
【0054】
また、リブ50は、リム径基準位置BLから、リブ50のタイヤ幅方向における外側端部56の位置までのタイヤ径方向における高さHRが、タイヤ断面高さSHの55%以上であるため、リブ50の重量が大きくなり過ぎることを抑制することができる。つまり、リム径基準位置BLからリブ50の外側端部56の位置までの高さHRが、タイヤ断面高さSHの55%未満である場合は、リブ50がタイヤ幅方向外側に大きく延び過ぎ、即ち、タイヤ径方向内側にまで大きく延び過ぎる虞がある。この場合、リブ50の体積が大きくなり過ぎるため、リブ50の重量が大きくなり過ぎる虞があり、空気入りタイヤ1の重量が大きくなり過ぎる虞がある。
【0055】
これに対し、リム径基準位置BLからリブ50の外側端部56の位置までの高さHRが、タイヤ断面高さSHの55%以上である場合は、リブ50がタイヤ幅方向外側に大きく延び過ぎることを抑制することができ、リブ50の重量が大きくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、空気入りタイヤ1の重量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、高速耐久性能とウェット性能とを両立することができる。
【0056】
また、リブ50は、延在方向が異なるリブ50を複数有しており、このうち、第1リブ51と第2リブ52とが互いに交差して配置されているため、タイヤ周方向における剛性を確保することができる。これにより、空気入りタイヤ1の高速回転時に、トレッド部2におけるショルダー部5付近がタイヤ径方向外側に膨らもうとした際に、平面交差をする第1リブ51と第2リブ52とによって、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士の間隔が大きくなる方向にショルダー部5付近がタイヤ周方向に膨らむことを抑制することができる。このように、トレッド部2におけるショルダー部5付近がタイヤ周方向に膨らむことを抑制することにより、ショルダー部5付近がタイヤ径方向外側に膨らむことを抑制することができるため、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことを抑制することができる。従って、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことに起因するセパレーションの発生を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に高速耐久性能を向上させることができる。
【0057】
また、第1リブ51と第2リブ52とは、交点Pの位置で交差するため、トレッド部2におけるベルト層14の端部144付近の剛性をより確実に高めることができ、空気入りタイヤ1の高速回転時に、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことをより確実に抑制することができる。従って、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことに起因するセパレーションの発生を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に高速耐久性能を向上させることができる。
【0058】
また、リブ50は、トレッドプロファイルTPからの高さH2が、ベルト層14のタイヤ幅方向における端部144から交点Pまでの距離H1に対して20%以下であるため、リブ50の高さH2が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、リブ50の体積が大きくなり過ぎることを抑制することができ、リブ50の重量が大きくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、空気入りタイヤ1の重量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、高速耐久性能とウェット性能とを両立することができる。
【0059】
また、リブ50は、タイヤ幅方向における外側端部56から内側端部57までの距離D3が、ベルト層14のタイヤ幅方向における幅BWに対して20%以下であるため、タイヤ幅方向におけるリブ50の配設範囲が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、タイヤ幅方向におけるリブ50の配設範囲が大きくなり過ぎることを抑制することができ、リブ50の重量が大きくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、空気入りタイヤ1の重量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、高速耐久性能とウェット性能とを両立することができる。
【0060】
また、リブ50は、交点Pから外側端部56までの距離D1と、交点Pから内側端部57までの距離D2との関係が、0.5≦(D2/D1)≦2.0の範囲内であるため、リブ50の重量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、交点P付近の位置の剛性をリブ50によってより確実に高めることができる。つまり、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1と、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2との関係が、(D2/D1)<0.5である場合は、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1が大き過ぎるか、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2が小さ過ぎる虞がある。交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1が大き過ぎる場合は、タイヤ幅方向におけるリブ50の配設範囲が大きくなり過ぎるため、リブ50の重量が大きくなり過ぎる虞がある。また、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2が小さ過ぎる場合は、交点P付近の位置の剛性をリブ50によって高め難くなる虞があり、ベルト層14の端部144付近の剛性を高め難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の高速回転時に、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことを、効果的に抑制し難くなる虞がある。
【0061】
また、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1と、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2との関係が、(D2/D1)>2.0である場合は、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1が小さ過ぎるか、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2が大き過ぎる虞がある。交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1が小さ過ぎる場合は、交点P付近の位置の剛性をリブ50によって高め難くなる虞があり、ベルト層14の端部144付近の剛性を高め難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の高速回転時に、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことを、効果的に抑制し難くなる虞がある。また、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2が大き過ぎる場合は、タイヤ幅方向におけるリブ50の配設範囲が大きくなり過ぎるため、リブ50の重量が大きくなり過ぎる虞がある。
【0062】
これに対し、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1と、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2との関係が、0.5≦(D2/D1)≦2.0の範囲内である場合は、交点Pからリブ50の外側端部56までの距離D1と、交点Pからリブ50の内側端部57までの距離D2とのいずれも、大き過ぎたり小さ過ぎたりすることを抑制することができる。これにより、リブ50の重量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、交点P付近の位置の剛性をリブ50によってより確実に高めることができる。この結果、空気入りタイヤ1の重量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、より確実に高速耐久性能を向上させることができる。
【0063】
また、ショルダーラグ溝41は、タイヤ幅方向における外側端部42の位置が、リブ50のタイヤ幅方向における外側端部56の位置よりも、タイヤ幅方向外側に位置するため、ショルダーラグ溝41の長さを長くすることができる。これにより、ショルダーラグ溝41での排水性を、より確実に確保することができ、ウェット性能をより確実に確保することができる。また、ショルダーラグ溝41の長さを長くすることにより、ショルダーラグ溝41の体積を大きくすることができ、その分、トレッドゴム層4のゴムの量を減らすことができるため、車両走行時におけるトレッド部2の発熱を抑えることができる。特に、空気入りタイヤ1の高速回転時における発熱を抑えることができ、発熱に起因するベルト層14のセパレーション等の故障を抑制することができる。これらの結果、より確実に高速耐久性能とウェット性能とを両立することができる。
【0064】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、リブ50は、平面交差をする第1リブ51及び第2リブ52と、ショルダーラグ溝41に沿ってタイヤ幅方向に延在する第3リブ53及び第4リブ54と、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士の間に亘って延在する第5リブ55とを有しているが、リブ50の構成はこれ以外であってもよい。
【0065】
図6は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、リブ50が平面交差をする2つのリブ50のみによって構成される場合の説明図である。リブ50は、例えば、図6に示すように、延在方向における端部がそれぞれショルダーラグ溝41に隣接し、平面交差をする第1リブ51と第2リブ52とのみによって構成されていてもよい。ショルダーラグ溝41に沿ってタイヤ幅方向に延在するリブ50を有さない場合でも、2つのリブ50が平面交差することにより、交点P付近の位置の剛性をリブ50によって高めることができる。即ち、リブ50は、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝41同士の間の位置に、延在方向が異なる複数のリブ50が互いに交差して配置されることにより、交点P付近の位置の剛性をリブ50によって高めることができる。
【0066】
さらに、複数のリブ50は、図6において第1リブ51と第2リブ52とが交点Pの位置で交差しているように、延在方向が異なる複数のリブ50が交点Pの位置で交差することにより、交点P付近の位置の剛性をより確実に高めることができる。これらにより、トレッド部2におけるベルト層14の端部144付近の位置の剛性をリブ50によってより確実に補強することができるため、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことに起因するセパレーションの発生を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に高速耐久性能を向上させることができる。
【0067】
また、リブ50は、交点Pに沿って延在するリブ50を有するのが好ましい。図7図8は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、一部のリブ50が交点Pに沿ってタイヤ周方向に延在する場合の説明図である。リブ50は、例えば、図7に示すように、隣り合うショルダーラグ溝41同士の間で交点Pに沿ってタイヤ周方向に延在する第1リブ51と、一端が互いに異なるショルダーラグ溝41に隣接し、他端が互いに接続されると共に、第1リブ51に対して平面交差する第2リブ52と第3リブ53とを有していてもよい。または、リブ50は、例えば、図8に示すように、隣り合うショルダーラグ溝41同士の間で交点Pに沿ってタイヤ周方向に延在する第1リブ51と、隣り合うショルダーラグ溝41のうちの一方のショルダーラグ溝41に一端が隣接し、他端が他方のショルダーラグ溝41に隣接すると共に、第1リブ51に対して平面交差する第2リブ52を有していてもよい。リブ50は、複数のリブ50のうちの一部のリブ50が、交点Pの位置でタイヤ周方向に延在することにより、トレッド部2におけるベルト層14の端部144付近の位置の剛性をリブ50によってより確実に補強することができる。これにより、ベルト層14の端部144付近がタイヤ径方向外側に膨らむことに起因するセパレーションの発生を、より確実に抑制することができ、より確実に高速耐久性能を向上させることができる。
【0068】
また、リブ50は、全てのリブ50が、ショルダーラグ溝41に隣接していなくてもよい。図9は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、一部のリブ50がショルダーラグ溝41から離間して配置される場合の説明図である。リブ50は、例えば、図9に示すように、隣り合うショルダーラグ溝41同士の間で交点Pに沿ってタイヤ周方向に延在する第1リブ51と、隣り合うショルダーラグ溝41同士の間の位置で、ショルダーラグ溝41に接することなくタイヤ幅方向に延在して交点Pをタイヤ幅方向に跨ぎ、第1リブ51に対して平面交差する第2リブ52を有していてもよい。ショルダーラグ溝41に隣接しないリブ50を有する場合でも、リブ50が交点Pを跨いで形成されることにより、トレッド部2におけるベルト層14の端部144付近の位置の剛性をリブ50によって補強することができる。これにより、ベルト層14の端部144付近でのセパレーションの発生を、より確実に抑制することができ、より確実に高速耐久性能を向上させることができる。
【0069】
また、上述した実施形態では、ショルダーラグ溝41は、リブ50よりもタイヤ幅方向外側にまで延びて配置されているが、ショルダーラグ溝41は、リブ50よりもタイヤ幅方向外側にまで延びていなくてもよい。図10は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、ショルダーラグ溝41の外側端部42がリブ50の外側端部56よりもタイヤ幅方向内側に位置する場合の説明図である。図11は、図10のB-B断面図である。ショルダーラグ溝41は、図10図11に示すように、タイヤ幅方向における外側端部42の位置が、リブ50のタイヤ幅方向における外側端部56の位置よりも、タイヤ幅方向内側に位置していてもよい。ショルダーラグ溝41は、外側端部42がリブ50の外側端部56よりもタイヤ幅方向内側に位置する場合でも、ショルダーラグ溝41の外側端部42が、リブ50の内側端部57よりもタイヤ幅方向外側に位置していればよい。これにより、ショルダーラグ溝41は、タイヤ幅方向における位置がリブ50のタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有することになるため、ショルダーラグ溝41は、リブ50の影響を受けずにタイヤ幅方向外側に排水することができる。従って、交点Pをタイヤ幅方向に跨ぐリブ50を設けた場合における、ラグ溝40での排水性を確保することができ、ウェット性能を確保することができる。
【0070】
また、ショルダーラグ溝41の外側端部42が、リブ50の外側端部56よりもタイヤ幅方向内側に位置することにより、リブ50の剛性をより確実に確保することができる。これにより、トレッド部2におけるベルト層14の端部144付近の位置の剛性をより確実に確保することができ、ベルト層14の端部144付近でのセパレーションの発生を、より確実に抑制することにより、高速耐久性能を向上させることができる。
【0071】
なお、このように、ショルダーラグ溝41の外側端部42が、リブ50の外側端部56よりもタイヤ幅方向内側に位置する場合は、ショルダーラグ溝41の外側端部42は、交点Pのタイヤ幅方向における位置よりもタイヤ幅方向外側に位置するのが好ましい。ショルダーラグ溝41は、外側端部42のタイヤ幅方向における位置が、極力タイヤ幅方向外側に位置するようにタイヤ幅方向に延在することにより、より確実に排水性を確保することができ、ウェット性能を確保することができる。
【0072】
また、上述した実施形態では、各リブ50は直線状に延びて形成されているが、リブ50は、直線状以外の形状で形成されていてもよい。リブ50は、湾曲したり屈曲したりしていてもよく、これらを繰り返すことにより振幅していてもよい。また、延在方向が異なるリブ50を複数有する場合は、リブ50同士の間で、形状が異なっていてもよい。また、タイヤ幅方向の両側に配置されるリブ50は、形態が互いに異なっていてもよく、また、リブ50は、タイヤ幅方向におけるいずれか一方のみに配置されていてもよい。また、タイヤ幅方向における位置がリブ50のタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有するラグ溝40は、主溝30に対して開口していてもよく、トレッドパターンは制約されない。
【0073】
[実施例]
図12は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、高速耐久性とウェット性能についての試験を行った。
【0074】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが205/55R16 91Vサイズの空気入りタイヤ1を、リムサイズ16×6.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みしたものを用いて行った。
【0075】
各試験項目の評価方法は、高速耐久性については、試験タイヤの空気圧を300kPaに調整し、室内ドラム試験機(ドラム直径:1707mm)を用いて、負荷荷重6.04kNにて一定の時間ごとにタイヤ速度を増加させて、故障が発生する速度を測定し、測定した速度を、後述する従来例1を100とする指数で表した。この数値が大きいほど故障が発生し難く、高速耐久性が優れていることを示している。
【0076】
また、ウェット性能については、試験タイヤの空気圧を250kPaに調整して車両に装着し、テストコースにおいて、水深1mmになるように撒水した路面を100km/hで走行して、制動した際の制動距離を測定し、測定した距離の逆数を後述する従来例1を100とする指数で表した。この数値が大きいほど、制動に要する距離が短く、ウェット性能が優れていることを示している。
【0077】
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例1、2の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~6との8種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例1の空気入りタイヤは、特許文献1と同等の形態の空気入りタイヤになっており、ラグ溝40がタイヤ幅方向においてリブ50のタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有していない。また、従来例2の空気入りタイヤは、特許文献2と同等の形態の空気入りタイヤになっており、従来例2も、ラグ溝40がタイヤ幅方向においてリブ50のタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有していない。
【0078】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~6は、全てリブ50が交点Pを跨いでおり、ラグ溝40がタイヤ幅方向においてリブ50のタイヤ幅方向における位置と同じ部分を有している。さらに、実施例1~6に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ断面高さSHに対するリブ50の外側端部56のタイヤ径方向における高さHRや、リブ50の交差の有無、ベルト層14の端部144から交点Pまでの距離H1に対するリブ50の高さH2、ベルト層14の幅BWに対する、リブ50の外側端部56から内側端部57までの距離D3が、それぞれ異なっている。
【0079】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図12に示すように、実施例1~6に係る空気入りタイヤ1は、従来例1、2に対して、ウェット性能の低下を抑えつつ、高速耐久性を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1~6に係る空気入りタイヤ1は、高速耐久性能とウェット性能とを両立することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 トレッド接地面
4 トレッドゴム層
5 ショルダー部
8 サイドウォール部
10 ビード部
11 ビードコア
12 ビードフィラー
13 カーカス層
14 ベルト層
141、142 ベルト
143 最幅広ベルト
144 端部
16 インナーライナ
17 リムクッションゴム
18 タイヤ内面
20 陸部
21 ショルダー陸部
30 主溝
31 最外主溝
40 ラグ溝
41 ショルダーラグ溝
42 外側端部
50 リブ
56 外側端部
57 内側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12