(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61L2/10
(21)【出願番号】P 2019044692
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青 孝次
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩史
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06500346(US,B1)
【文献】国際公開第2017/043357(WO,A1)
【文献】特開2017-104230(JP,A)
【文献】特開平05-005635(JP,A)
【文献】実開平04-055353(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入口、前記流体が流出する流出口、及び前記流体を殺菌するための流路を有する流路管と、
前記流路に紫外線を照射する光源と、
前記流入口に設置され、前記流入口から前記流路内に流入する前記流体の流れを拡散させる第1の拡散部材と、前記流出口に設置され、前記流路内を前記流出口へ向かう前記流体の流れを拡散させる第2の拡散部材との少なくともいずれか一方と、
を備え、
前記第1の拡散部材が、前記流入口から前記流路内に流入する前記流体の流れを遮る、前記流入口に対向するドーム状部材の内面に位置する第1の遮蔽面と、前記第1の遮蔽面によって流れを変えられた前記流体を通過させる複数の第1の開口部と、を有し、
前記第2の拡散部材が、前記流路内を前記流出口へ向かう流体の流れを遮る、前記流出口の反対側を向くドーム状部材の外面に位置する第2の遮蔽面と、前記第2の遮蔽面によって流れを変えられた流体を通過させる第2の開口部と、を有する、
流体殺菌装置。
【請求項2】
前記流入口の面積A1に対する前記第1の遮蔽面の面積A2の比の値A2/A1が1/4以上である、
請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記第1の遮蔽面の前記流入口から最も離れた部分が、前記複数の第1の開口部の前記流入口から最も離れた部分よりも、前記流入口から離れている、
請求項1又は2に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記流路の径方向の断面積A3から前記複数の第1の開口部の前記流入口から最も離れた点を通る前記第1の拡散部材の前記径方向の断面積A4を引いた値A3-A4が前記流入口の面積A1以上であり、かつ、前記複数の第1の開口部の合計面積A5が前記流入口の面積A1以上である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記第2の拡散部材の前記第2の開口部が、前記流路内に位置し、前記流入口に対向しない、
請求項1~4のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
前記第2の拡散部材が、前記流路内に突出しないように設置された、
請求項1~5のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項7】
流体が流入する流入口、前記流体が流出する流出口、及び前記流体を殺菌するための流路を有する流路管と、
前記流路に紫外線を照射する光源と、
前記流入口に設置され、前記流入口から前記流路内に流入する前記流体の流れを拡散させる第1の拡散部材と、前記流出口に設置され、前記流路内を前記流出口へ向かう前記流体の流れを拡散させる第2の拡散部材との少なくともいずれか一方と、
を備え、
前記第1の拡散部材が、前記流入口から前記流路内に流入する前記流体の流れを遮る、前記流入口に対向するドーム状部材の内面に位置する第1の遮蔽面と、前記第1の遮蔽面によって流れを変えられた前記流体を通過させる複数の第1の開口部と、を有し、
前記第2の拡散部材が、前記流路内を前記流出口へ向かう流体の流れを遮る、前記流出口の反対側を向くドーム状部材の外面に位置する第2の遮蔽面と、前記第2の遮蔽面によって流れを変えられた流体を通過させる第2の開口部と、を有し、
前記流入口と前記流出口は、前記管路への流入方向と前記管路からの流出方向が直交するように前記管路に設けられた、
流体殺菌装置。
【請求項8】
前記流入口の面積A1に対する前記第1の遮蔽面の面積A2の比の値A2/A1が1/4以上である、
請求項
7に記載の流体殺菌装置。
【請求項9】
前記第1の遮蔽面の前記流入口から最も離れた部分が、前記複数の第1の開口部の前記流入口から最も離れた部分よりも、前記流入口から離れている、
請求項
7又は
8に記載の流体殺菌装置。
【請求項10】
前記流路の径方向の断面積A3から前記複数の第1の開口部の前記流入口から最も離れた点を通る前記第1の拡散部材の前記径方向の断面積A4を引いた値A3-A4が前記流入口の面積A1以上であり、かつ、前記複数の第1の開口部の合計面積A5が前記流入口の面積A1以上である、
請求項
7~
9のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項11】
前記第2の拡散部材の前記第2の開口部が、前記流路内に位置し、前記流入口に対向しない、
請求項
7~
10のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項12】
前記第2の拡散部材が、前記流路内に突出しないように設置された、
請求項
7~
11のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を照射することにより水等の流体を殺菌する流体殺菌装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1においては、紫外線LEDから発せられる紫外線を流体に高効率で照射するため、流体の流路内の流れを所望の状態に近付けることを課題としている。
【0003】
特許文献1に記載の流体殺菌装置においては、流体の流入路と、殺菌処理のための処理流路が形成された流路管との間に、流入路よりも狭い狭路が設けられている。そして、この狭路によって流入路から流路管の端部への流体の直線的な流れを妨げ、他方向へ分散させることにより、流れを整流化させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の流体殺菌装置においては、上述の狭路を形成するために、一方の端面にフランジが設けられた円筒部材を備えた流路管を用いたり、流路管の端部を覆い、流路管の外部に狭路を形成する筐体を用いたりするため、流路管の構造の複雑化や、流体殺菌装置の大型化という問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、構造の複雑化や大型化を伴わずに、流路内の流体の滞留時間を平均化し、紫外線の照射による殺菌等の効率を向上させることができる構造を有する流体殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[11]の流体殺菌装置を提供する。
【0008】
[1]流体が流入する流入口、前記流体が流出する流出口、及び前記流体を殺菌するための流路を有する流路管と、前記流路に紫外線を照射する光源と、前記流入口に設置され、前記流入口から前記流路内に流入する前記流体の流れを拡散させる第1の拡散部材と、前記流出口に設置され、前記流路内を前記流出口へ向かう前記流体の流れを拡散させる第2の拡散部材との少なくともいずれか一方と、を備え、前記第1の拡散部材が、前記流入口から前記流路内に流入する前記流体の流れを遮る、前記流入口に対向する第1の遮蔽面と、前記第1の遮蔽面によって流れを変えられた前記流体を通過させる複数の第1の開口部と、を有し、前記第2の拡散部材が、前記流路内を前記流出口へ向かう流体の流れを遮る、前記流出口の反対側を向く第2の遮蔽面と、前記第2の遮蔽面によって流れを変えられた流体を通過させる第2の開口部と、を有する、流体殺菌装置。
[2]前記流入口の面積A1に対する前記第1の遮蔽面の面積A2の比の値A2/A1が1/4以上である、上記[1]に記載の流体殺菌装置。
[3]前記第1の遮蔽面の前記流入口から最も離れた部分が、前記複数の第1の開口部の前記流入口から最も離れた部分よりも、前記流入口から離れている、上記[1]又は[2]に記載の流体殺菌装置。
[4]前記流路の径方向の断面積A3から前記複数の第1の開口部の前記流入口から最も離れた点を通る前記第1の拡散部材の前記径方向の断面積A4を引いた値A3-A4が前記流入口の面積A1以上であり、かつ、前記複数の第1の開口部の合計面積A5が前記流入口の面積A1以上である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
[5]前記第1の拡散部材が、前記複数の第1の開口部を通過した前記流体を拡散させる、前記流入口に対向する第1の拡散板を有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
[6]前記流路の径方向の断面の面積A3から前記第1の拡散板の面積A6を引いた値A3-A6が前記流入口の面積A1以上であり、かつ、前記複数の第1の開口部の合計面積A5が前記流入口の面積A1以上である、上記[5]に記載の流体殺菌装置。
[7]前記第1の拡散部材が、前記第1の遮蔽面に遮られる前に前記流体の流れを分断する複数の第1の羽を有する、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
[8]前記第2の拡散部材が、前記流出口に対向する第2の板状部材を有し、前記第2の板状部材の前記流出口と反対側の面が前記第2の遮蔽面を構成する、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
[9]前記第2の拡散部材が、前記第2の開口部を通過した後の前記流体の流路を形成する複数の第2の羽を有する、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
[10]前記第2の拡散部材の前記第2の開口部が、前記流路内に位置し、前記流入口に対向しない、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
[11]前記第2の拡散部材が、前記流路内に突出しないように設置された、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構造の複雑化や大型化を伴わずに、流路内の流体の滞留時間を平均化し、紫外線の照射による殺菌等の効率を向上させることができる構造を有する流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る流体殺菌装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、流体殺菌装置を構成する流路管の長さ方向に沿った垂直断面図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、それぞれ流路管の長さ方向の端部近傍を拡大した垂直断面図である。
【
図4】
図4は、面積A1、A3、A4に係る断面の位置を示す模式図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、拡散部材の一例をそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、拡散部材の一例をそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、拡散部材の一例と、その周辺部材を示す模式図である。
【
図8】
図8は、拡散部材の一例と、その周辺部材を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
(流体殺菌装置の構成)
図1は、実施の形態に係る流体殺菌装置1の斜視図である。
図2は、流体殺菌装置1を構成する流路管10の長さ方向に沿った垂直断面図である。
図3(a)、(b)は、それぞれ流路管10の長さ方向の端部近傍を拡大した垂直断面図である。
【0012】
流体殺菌装置1は、液体の殺菌及び菌の繁殖の抑制を行うための装置であり、殺菌対象である水などの液体(被殺菌液体)を流すための、流体が流入する流入口100、流体が流出する流出口101、及び流体を殺菌するための流路102を有する流路管10と、流路102に紫外線を照射する光源15と、流入口100に設置された、流路102内に流入する流体の流れを拡散させる拡散部材13と、流出口101に設置された、流路102内を流出口101へ向かう流体の流れを拡散させる拡散部材14と、を備える。
【0013】
流路管10は、光源15から発せられる紫外線に対する反射率の高いアルミニウムなどの材料からなること、またはこのような材料で内面がコーティングされていることが好ましい。
【0014】
流路管10の流入口100側には、流路管10に流入する流体が通過する流入管11が接続されている。
図2、
図3(a)に示される例では、流入管11の流路管10側の開口部が流路管10の流入口100として機能する。
【0015】
流路管10と流入管11は、例えば、
図2、
図3(a)に示されるように、ボルト20とナット21により固定される。また、流路管10と流入管11の接続部には、Oリング等の環状のシール部材22が用いられてもよい。
【0016】
流路管10の流出口101側には、流路管10から流出する流体が通過する流出管12が接続されている。
図2、
図3(b)に示される例では、流出管12の流路管10側の開口部が流路管10の流出口101として機能する。
【0017】
流路管10と流出管12は、例えば、ねじ構造により固定される。また、流路管10と流出管12の接続部には、Oリング等の環状のシール部材23が用いられてもよい。
【0018】
光源15は、紫外線を発する発光素子を有し、流路102を流れる流体に紫外線を照射し、殺菌及び菌の繁殖の抑制を行うことができる。
【0019】
光源15の発する紫外線は、例えば、UV-Aと呼ばれる波長域(400~315nm)の紫外線、UV-Bと呼ばれる波長域(315~280nm)の紫外線、UV-Cと呼ばれる波長域(280nm未満)の紫外線であり、このうち最も殺菌効果の高いUV-Cであることが好ましい。
【0020】
光源15に含まれる発光素子は、例えば、LEDチップ(Light Emitting Diode)又はLDチップ(Laser Diode)である。光源15に含まれる発光素子の個数や配置は特に限定されないが、流路102に均一に紫外線を照射できるように設定されることが好ましい。
【0021】
流体殺菌装置1は、光源15を構成する発光素子が流体に曝されないような構造を有する。例えば、
図3(b)に示される光源15においては、少なくとも光取り出し側の部分が紫外線を透過するケース又はカバー内に発光素子が収容されている。また、例えば、流路管10の端部に、紫外線を透過する仕切り板を設け、その仕切り板により区画された流路管10内の流体が侵入しない空間に発光素子を設置し、光源15としてもよい。紫外線を透過する材料としては、石英ガラスやフッ素樹脂を用いることができる。
【0022】
また、光源15は、発光素子から側方に発せられる光を反射するためのリフレクターや、発光素子から発せられる光を平行光へ近付けるための集光レンズを有していてもよい。
【0023】
図2、
図3(b)に示される例では、光源15は発光素子に電源を供給する配線基板30上に設置され、配線基板30は部材31a、31bから構成される蓋状の支持部材31に支持される。部材31aは、配線基板30を支持するための部材であり、部材31bは、光源15の設置スペースを確保するためのスペーサーである。
図1に示されるコネクタ33は、配線基板30を介して光源15の発光素子に電源を供給するための電源線のコネクタである。
【0024】
流路管10と支持部材31は、例えば、
図2、
図3(a)に示されるように、ボルト24とナット25により固定される。また、流路管10と支持部材31の接続部には、Oリング等の環状のシール部材26が用いられてもよい。
【0025】
支持部材31を構成する部材31a、31bは、いずれも、光源15から伝わる熱を流体や流路管10へ伝導させるため、Alなどの熱伝導率の高い材料からなることが好ましい。また、支持部材31は、
図3(b)に示されるように、配線基板30を介して光源15の熱を外部へ放出することのできるヒートシンク32を有することが好ましい。
【0026】
流体殺菌装置1においては、光源15から発せられる紫外線が流路102を流れる流体に効率的に照射されるように、流路102の形状や光源15の設置位置などが設定される。典型的には、
図2に示されるように、流路102は直線状であり、流路102の長さ方向に沿って紫外線を照射できるように、流路102の長さ方向の一端に光源15が設置される。流路102の形状は、例えば、円柱状や多角柱状である。
【0027】
(拡散部材)
拡散部材13は、流入口100から流路102に流入する流体の流れを拡散させる部材であり、流入口100から流路102に流入する流体の流れを遮る遮蔽面130と、遮蔽面130によって流れを変えられた流体を通過させる複数の開口部131と、を有する。通常、遮蔽面130と複数の開口部131は連続しており、遮蔽面130により流れを遮られた流体は、複数の開口部131から直接流れ出る。
【0028】
遮蔽面130は、流入口100に対向する面であり、遮蔽面130により流れを遮られた流体は、複数の開口部131を通過して遮蔽面130を迂回するように流路管10内へ流れ込む。また、拡散部材13の流体の流出口である開口部131が複数設けられているため、遮蔽面130に方向を変えられた流体の流れは複数に分けられる。
【0029】
そのため、拡散部材13を用いて流入口100から流出口101へ流体が直線的に流れることを妨げ、流路102内の流体の滞留時間を平均化する(均一性を高める)ことができる。それによって、光源15から発せられる紫外線が流体に照射される時間を平均化し、効果的に殺菌等を行うことができる。
【0030】
遮蔽面130による流体の流れを遮る効果を高めるため、流入口100の面積(開口面積)に対する遮蔽面130の面積がある程度大きいことが好ましい。例えば、流入口100の面積(A1とする)に対する遮蔽面130の面積(A2とする)の比の値A2/A1が1/4以上であることが好ましい。
【0031】
また、流路管10内での流体の流速の低下や流路管10内の圧力の上昇を抑えるため、流入口100の面積A1に対する、流路管10の流路102部分の内壁と拡散部材13との隙間の面積及び複数の開口部131の面積(開口面積)の合計がある程度大きいことが好ましい。例えば、流路102の径方向の断面積(A3とする)から複数の開口部131の流入口100から最も離れた点を通る拡散部材13の前記径方向(流路102の径方向)の断面の面積(A4とする)を引いた値A3-A4が流入口100の面積A1以上であり、かつ、複数の開口部131の合計面積(A5とする)が流入口の面積A1以上であることが好ましい。
【0032】
拡散部材13の流体殺菌装置1への固定方法は特に限定されない。
図2、
図3(a)に示されるように、拡散部材13の一部(例えば、後述する拡散部材13a、13bの基板132)を流路管10と流入管11に挟むことにより固定することができる。
【0033】
図4は、上述の面積A1、A3、A4に係る断面の位置を示す模式図である。
図4の矢印A1、A3、A4が、それぞれ面積A1、A3、A4に係る断面の位置を示す。なお、
図4において、拡散部材13、ボルト20、ナット21については側面視した像を示し、その他の部材についてはその断面を示す。
【0034】
図5(a)、(b)は、拡散部材13の一例である拡散部材13aをそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。拡散部材13aは、環状の基板132と基板132の孔134を覆うように設けられたドーム状の部材133から構成される。
【0035】
拡散部材13aにおいては、部材133の内面が遮蔽面130となる。部材133の内面、すなわち遮蔽面130は、
図3(a)、
図5(a)、(b)に示されるドーム状の他、例えば、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状の形状をとり得る。
【0036】
流入口100から流路管10に流入した流体は、基板132の孔134を通過して、部材133の内面である遮蔽面130によって流れを変えられ、部材133に設けられた複数の開口部131を通過する。
【0037】
遮蔽面130の流入口100から最も離れた部分は、複数の開口部131の流入口100から最も離れた部分よりも、流入口100から離れていることが好ましい。これによって、遮蔽面130により変えられる流体の流れが複雑になり、流路102内の流体の滞留時間をより平均化し、紫外線の照射時間を平均化することができる。
【0038】
図3(a)、
図5(a)、(b)に示される例では、拡散部材13aの遮蔽面130はドーム状であり、その流入口100から最も離れた部分(ドーム状の先端)は、開口部131の流入口100から最も離れた部分よりも、流入口100から離れている。
【0039】
図6(a)、(b)は、拡散部材13の一例である拡散部材13bをそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。拡散部材13bは、環状の基板132と、基板132と対向する、遮蔽面130を有する板材135と、基板132の孔134を通過した流体の流れを遮蔽面130に遮られる前に分断する複数の羽136を有する。
【0040】
拡散部材13bにおいては、板材135の流入口100側の面が遮蔽面130となる。
【0041】
複数の羽136は、その表面に沿って流入口100から流入した流体が流れるように、例えばその表面が基板132の厚さ方向に垂直になるように設けられる。また、
図6(a)、(b)に示されるように、複数の羽136は、中心部から広がるように設けられており、複数の羽136の縁と、基板132、板材135とにより枠が構成される複数の開口部が、複数の開口部131となる。
【0042】
流入口100から流路管10に流入した流体は、基板132の孔134を通過して、複数の羽136に流れを分断された後、板材135の遮蔽面130によって流れを変えられ、複数の開口部131を通過する。
【0043】
羽136の各々の平面形状(基板132の厚さ方向からみた形状)は、
図6(a)、(b)に示されるように、湾曲していてもよい。これによって、拡散部材13bから流出する流体の流れをより複雑にして、流路102内の流体の滞留時間をより平均化し、紫外線の照射時間を平均化することができる。
【0044】
板材135の遮蔽面130は凹形状(例えば、ドーム状、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状)を有していてもよい。この場合、遮蔽面130の流入口100から最も離れた部分は、開口部131の流入口100から最も離れた部分よりも、流入口100から離れる。これによって、遮蔽面130により変えられる流体の流れが複雑になり、流路102内の流体の滞留時間をより平均化し、紫外線の照射時間を平均化することができる。
【0045】
図7は、拡散部材13の一例である拡散部材13cと、その周辺部材を示す模式図である。
図7において、拡散部材13c、ボルト20、ナット21については側面視した像を示し、その他の部材についてはその断面を示す。
【0046】
拡散部材13cは、複数の開口部131を通過した流体を拡散させるための拡散板137を有する。拡散板137は、流入口100に対向して設けられる板状の部材であり、拡散板137を用いることにより、複数の開口部131を通過した後の流体の流れを複雑にすることができる。
【0047】
図7に示される拡散部材13cにおいては、拡散板137の流入口100側の面の、複数の開口部131の内側の領域が遮蔽面130となる。
図6に示される拡散部材13bにおいては、板材135の直径を大きくして、遮蔽面130を含む拡散板137として用いることもできる。
【0048】
拡散部材13cを用いる場合、流路管10内での流体の流速の低下や流路管10内の圧力の上昇を抑えるため、流入口100の面積A1に対する、流路管10の流路102部分の内壁と拡散板137との隙間の面積及び複数の開口部131の面積(開口面積)の合計がある程度大きいことが好ましい。例えば、流路102の径方向の断面積A3から拡散板137の面積(A6とする)を引いた値A3-A6が流入口100の面積A1以上であり、かつ、複数の開口部131の合計面積A5が流入口の面積A1以上であることが好ましい。
図7の矢印A1、A3、A6は、それぞれ面積A1、A3、A6に係る断面の位置を示す。
【0049】
拡散部材14は、流路102内を流出口101へ向かう流体の流れを拡散させる部材であり、流路102内を流出口101へ向かう流体の流れを遮る遮蔽面140と、遮蔽面140によって流れを変えられた流体を通過させる開口部141と、を有する。拡散部材14に含まれる開口部141の個数は、単数でも複数でもよい。
【0050】
遮蔽面140は、流出口101の反対側を向く面であり、流出口101へ垂直方向から流体が流れ込むことを妨げる。遮蔽面140により流れを遮られた流体は、開口部141を通過して、遮蔽面140を迂回するように、流出口101へ向かう。
【0051】
そのため、拡散部材14を用いて流出口101へ流体が直線的に流れ込むことを防ぎ、流路102内の流体の滞留時間を平均化することができる。それによって、光源15から発せられる紫外線が流体に照射される時間を平均化し、効果的に殺菌等を行うことができる。
【0052】
拡散部材14は、拡散部材13と同様の構造を有していてもよい。例えば、
図5(a)、(b)に示される拡散部材13aを拡散部材14として用いる場合、ドーム状の部材133の外側の面が遮蔽面140として機能し、開口部131が開口部141として機能する。
【0053】
また、
図6(a)、(b)に示される拡散部材13bを拡散部材14として用いる場合、板材135の外側の面が遮蔽面140として機能し、開口部131が開口部141として機能する。複数の羽136は、開口部141を通過した後の流体の流路を形成する。
【0054】
また、拡散部材14は、
図7に示される拡散部材13cと同様に、拡散板137を有してもよい。この場合、拡散板137は流出口101に対向して設けられ、拡散板137の流出口101と反対側の面が遮蔽面140として機能する。
【0055】
拡散部材14は、流路102内に設置されてもよいが、光源15から発せられる紫外線が拡散部材14により遮られることを防ぐため、流路102内に突出しないように、例えば、
図2、
図3(b)に示されるように、流路102と流出管12をつなぐ流路内に設置されることが好ましい。
図2、
図3(b)に示される例では、拡散部材14の一部(例えば、拡散部材13a、13bを拡散部材14として用いる場合の基板132)を流路管10と流出管12に挟むことにより、散部材14を固定している。
【0056】
また、拡散部材14が流路102内に突出しない方が、突出する場合よりも、流体の流れに対する抵抗が大きくなり、流体の流路102内の流体の滞留時間を増やすことができる。流路102よりも流路102と流出管12をつなぐ流路の方が狭いため、流体の流れの向きに対する遮蔽面140の投影面積が大きいためである。
【0057】
流路102内に設置される場合、拡散部材14は、紫外線を吸収しない材料、すなわち紫外線を透過又は反射する材料からなることが好ましい。例えば、石英ガラスやフッ素樹脂などの紫外線を透過する材料からなることが好ましい。
【0058】
図8は、拡散部材14の一例である拡散部材14aと、その周辺部材を示す模式図である。
図8において、拡散部材14a、ボルト24、ナット25については側面視した像を示し、その他の部材についてはその断面を示す。
【0059】
拡散部材14aの開口部141は、流路102内に位置し、流入口100に対向しない。このため、流路102内を流入口100側から流れてきた流体が直線的に開口部141を通過することがない。これによって、流路102内の流体の滞留時間をより平均化し、紫外線の照射時間を平均化することができる。
【0060】
拡散部材14aと流路管10は、例えば、ねじ構造により固定される。この場合、例えば、拡散部材14aの基板(拡散部材13a、13bの基板132に相当する部材)の外周側面と、流路管10の対応部分にねじ切り加工を施す。
【0061】
なお、流体殺菌装置1において、拡散部材13と拡散部材14のいずれか一方のみを用いてもよいが、両方を用いることにより、流入口100から流出口101へ流体が直線的に流れることをより効果的に妨げ、流路102内の流体の滞留時間をより平均化することができる。
【0062】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態に係る流体殺菌装置1によれば、拡散部材13と拡散部材14の少なくともいずれか一方を用いることにより、構造の複雑化や大型化を伴わずに、流路102内の流体の滞留時間を平均化し、紫外線の照射による殺菌等の効率を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0064】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0065】
1 流体殺菌装置
10 流路管
11 流入管
12 流出管
13、13a、13b、13c、14、14a 拡散部材
15 光源
100 流入口
101 流出口
102 流路
130、140 遮蔽面
131、141 開口部
136 羽
137 拡散板