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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】光学性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20230511BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230511BHJP
   G02B 1/113 20150101ALI20230511BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20230511BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230511BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20230511BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G02B5/30
G02B1/113
G02C7/10
G02B5/08 C
B32B7/023
B32B38/18 C
F21V7/00 570
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019073201
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020173283
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大矢 裕
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-154177(JP,A)
【文献】特開2006-142445(JP,A)
【文献】特開2007-078884(JP,A)
【文献】特開2010-286737(JP,A)
【文献】特開2016-097507(JP,A)
【文献】特開2019-173282(JP,A)
【文献】特表2018-533075(JP,A)
【文献】特開2005-029083(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017332(WO,A1)
【文献】特開2010-039458(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115641(WO,A1)
【文献】特開2011-128331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0141786(US,A1)
【文献】特開2006-192658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
G02B 5/30
G02B 1/113
G02C 7/10
B32B 7/023
B32B 38/18
F21V 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第1基材と、
前記第1基材に積層され、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層と、
前記第1基材と前記ハーフミラー層との間に設けられ、前記第1基材と前記ハーフミラー層との密着性を高める下地層と、
光透過性を有し、前記ハーフミラー層の前記第1基材とは反対側に設けられた第2基材と、
光透過性を有し、前記ハーフミラー層と前記第2基材との間に設けられ、前記ハーフミラー層と前記第2基材とを接合する接合層と、を備える光学性積層体を製造する光学性積層体の製造方法であって、
前記光学性積層体を、前記第2基材側からその厚さ方向に刃を入れて打ち抜く打ち抜き工程を有し、
前記接合層の25℃における引張貯蔵弾性率は、前記下地層の25℃における引張貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とする光学性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記接合層の25℃における引張貯蔵弾性率は、10MPa以下である請求項1に記載の光学性積層体の製造方法。
【請求項3】
前記接合層は、シリコーン系接着剤またはウレタン系接着剤を含む接着剤層である請求項1または2に記載の光学性積層体の製造方法。
【請求項4】
前記接合層は、シリル化ウレタン接着剤を含む請求項3に記載の光学性積層体の製造方法。
【請求項5】
前記接合層の厚さは、1μm以上300μm以下である請求項3または4に記載の光学性積層体の製造方法。
【請求項6】
前記ハーフミラー層は、高屈折率層と、前記高屈折率層よりも光屈折率が低い少なくとも1層の低屈折率層と、を有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学性積層体の製造方法。
【請求項7】
前記接合層と前記第2基材との間に設けられ、偏光層および第2の接合層を有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の光学性積層体の製造方法。
【請求項8】
前記打ち抜き工程では、前記光学性積層体の両面側に、前記第1基材および前記第2基材よりも引張貯蔵弾性率が低い保護層を積層した状態で、前記光学性積層体を打ち抜く請求項1ないしのいずれか1項に記載の光学性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡、カメラなどの光学製品や、ディスプレイ装置の表示画面など、光学的・視覚的な現象を生じる機器には、様々な光学多層膜が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
光学多層膜は、例えば、反射防止膜や、ハーフミラーとして用いられている。
【0003】
特許文献1に記載されている光学多層膜は、レンズ等の透明基材の表面に、例えば、真空蒸着法によって金属薄膜を成膜、積層することにより製造されている。各金属薄膜の厚さや材料を適宜設定することにより、光学多層膜は、反射防止膜や、ハーフミラーとして機能する。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている光学多層膜は、表面の部分(最外層)に露出しており、摩耗したり傷ついたりすることがある。この損傷の程度によっては、光学特性が低下することがある。
【0005】
さらに、このような光学多層膜が形成された基板を所望の形状に打ち抜いて用いる際、その打ち抜き方向によっては、光学多層膜が剥離してしまうことがあるが、従来ではこの点に関して十分な研究が行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-058703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製造時および製造後にハーフミラー層を保護することができ、優れた光学特性を有する光学性積層体を製造する光学性積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~()の本発明により達成される。
(1) 光透過性を有する第1基材と、
前記第1基材に積層され、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層と、
前記第1基材と前記ハーフミラー層との間に設けられ、前記第1基材と前記ハーフミラー層との密着性を高める下地層と、
光透過性を有し、前記ハーフミラー層の前記第1基材とは反対側に設けられた第2基材と、
光透過性を有し、前記ハーフミラー層と前記第2基材との間に設けられ、前記ハーフミラー層と前記第2基材とを接合する接合層と、を備える光学性積層体を製造する光学性積層体の製造方法であって、
前記光学性積層体を、前記第2基材側からその厚さ方向に刃を入れて打ち抜く打ち抜き工程を有し、
前記接合層の25℃における引張貯蔵弾性率は、前記下地層の25℃における引張貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とする光学性積層体の製造方法。
【0009】
(2) 前記接合層の25℃における引張貯蔵弾性率は、10MPa以下である上記(1)に記載の光学性積層体の製造方法。
【0010】
(3) 前記接合層は、シリコーン系接着剤またはウレタン系接着剤を含む接着剤層である上記(1)または(2)に記載の光学性積層体の製造方法。
【0011】
(4) 前記接着剤層は、シリル化ウレタン接着剤を含む上記(3)に記載の光学性積層体の製造方法。
【0012】
(5) 前記接合層の厚さは、1μm以上300μm以下である上記(3)または(4)に記載の光学性積層体の製造方法。
【0013】
(6) 前記ハーフミラー層は、高屈折率層と、前記高屈折率層よりも光屈折率が低い少なくとも1層の低屈折率層と、を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光学性積層体の製造方法。
【0015】
) 前記接合層と前記第2基材との間に設けられ、偏光層および第2の接合層を有する上記(1)ないし()のいずれかに記載の光学性積層体の製造方法。
【0016】
) 前記打ち抜き工程では、前記光学性積層体の両面側に、前記第1基材および前記第2基材よりも引張貯蔵弾性率が低い保護層を積層した状態で、前記光学性積層体を打ち抜く上記(1)ないし()のいずれかに記載の光学性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造時および製造後にハーフミラー層を保護することができ、優れた光学特性を有する光学性積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の光学性積層体の製造方法により製造される光学性積層体を備えるサングラスの斜視図である。
図2図2は、本発明の光学性積層体の製造方法により製造される光学性積層体を備えるサンバイザーの斜視図である。
図3図3は、本発明の光学性積層体の製造方法により製造される光学性積層体の拡大断面図である。
図4図4は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、ハーフミラー層形成工程を示す図である。
図5図5は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、接着剤層塗布工程(介在層積層工程)を示す図である。
図6図6は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、接合工程を示す図である。
図7図7は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、打ち抜き工程を示す図である。
図8図8は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、打ち抜き工程を示す図である。
図9図9は、本発明の光学性積層体の製造方法(第2実施形態)を説明するための断面図であって、打ち抜き工程を示す図である。
図10図10は、本発明の光学性積層体の製造方法(第2実施形態)を説明するための断面図であって、打ち抜き工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の光学性積層体の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の光学性積層体の製造方法により製造される光学性積層体を備えるサングラスの斜視図である。図2は、本発明の光学性積層体の製造方法により製造される光学性積層体を備えるサンバイザーの斜視図である。図3は、本発明の光学性積層体の製造方法により製造される光学性積層体の拡大断面図である。
【0021】
なお、図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面とも言う。すなわち、図3では、左側の面が「表側の面」であり、右側の面が「裏側の面」である。また、図3図10では、光学性積層体の厚さ方向を誇張して図示しているが、実際の寸法とは大きく異なる。
【0022】
光学性積層体100は、図1に示すサングラス(光学部品1)のレンズ4や、図2に示すサンバイザー(光学部品1’)の光透過性部材7に積層されて用いられる。
【0023】
図1に示すように、サングラス(光学部品1)は、使用者の頭部に装着されるフレーム2と、フレーム2に固定された光学性積層体付レンズ3(光学部品)とを備えている。なお、本明細書中においては、「レンズ」とは、集光機能を有するもの、集光機能を有していないものの双方を含む。
【0024】
図1に示すように、フレーム2は、使用者の頭部に装着されるものであり、リム部21と、ブリッジ部22と、使用者の耳に掛けられるテンプル部23と、ノーズパッド部24を有している。各リム部21は、リング状をなしており、内側に光学性積層体付レンズ3が装着される部分である。
【0025】
光学性積層体付レンズ3は、光学性積層体100と、レンズ4とを有し、レンズ4の表側の面上に光学性積層体100が接合されたものである。これにより、後述する光学性積層体100の利点を享受しつつ、サングラスとしての機能を発揮することができる。
【0026】
ブリッジ部22は、各リム部21を連結する部分である。テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21の縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の耳に掛けられる部分である。ノーズパッド部24は、サングラス(光学部品1)を使用者の頭部に装着した装着状態において、使用者の鼻と当接する部分である。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0027】
なお、フレーム2の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0028】
図2に示すように、サンバイザー(光学部品1’)は、使用者の頭部に装着されるリング状の装着部5と、装着部5の前方に設けられたツバ6とを有している。ツバ6は、光透過性部材7(基材)と、光透過性部材7の上面に設けられた光学性積層体100とを有する。これにより、後述する光学性積層体100の利点を享受しつつ、サンバイザーとしての機能を発揮することができる。
【0029】
なお、レンズ4および光透過性部材7の構成材料としては、光透過性を有していれば、特に限定されず、例えば、各種熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種硬化性樹脂の各種樹脂材料や、各種ガラス材料や、各種結晶材料等が挙げられるが、ポリカーボネートであるのが好ましい。光学性積層体100の第2基材20は、後述するように、ポリカーボネートで構成されることがあり、この場合、レンズ4または光透過性部材7と、光学性積層体100との密着性を高めることができる。
【0030】
上記樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、上記ガラス材料としては、光透過性を有していれば特に限定されず、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
【0032】
また、上記結晶材料としては、光透過性を有していれば特に限定されず、例えば、サファイア、水晶等が挙げられる。また、レンズ4または光透過性部材7の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、比較的高い強度と、軽量化とを両立することができる。
【0033】
以下、光学性積層体100について詳細に説明する。なお、以下では、レンズ4(基材)上に積層した場合について代表的に説明する。
【0034】
図3に示すように、光学性積層体100は、第1基材10と、第2基材20と、これらの間に設けられたハーフミラー層30(光学多層膜)と、ハーフミラー層30と第2基材20との間に設けられた接着剤層40と、第1基材10とハーフミラー層30との間に設けられたコート層60(下地層)とを有する積層体で構成されている。
【0035】
また、光学性積層体100は、第1基材10がレンズ4と反対側、すなわち、表側に位置する向きで、レンズ4に積層されて用いられる。
【0036】
また、光学性積層体100は、可撓性を有している。これにより、レンズ4が湾曲した形状であっても、その湾曲に追従して光学性積層体100を積層することができる。
【0037】
(第1基材および第2基材)
第1基材10および第2基材20は、ハーフミラー層30を支持するとともに保護する機能を有している。
【0038】
第1基材10および第2基材20は、光透過性(可視光透過性)を有する材料で構成されている。第1基材10および第2基材20の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として)用いることができる。
【0039】
これらの中でも、ポリカーボネートを用いることにより、光学性積層体100の耐熱性および耐摩擦性を優れたものとすることができる。また、ポリアミド系樹脂を用いることにより、耐衝撃性および耐薬品性を優れたものとすることができる。
【0040】
なお、第1基材10および第2基材20は、構成材料が同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
第1基材10および第2基材20の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよく、例えば、0.05mm以上1mm以下であるのが好ましく、0.06mm以上0.8mm以下であるのがより好ましい。
【0042】
また、第1基材10および第2基材20の色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0043】
これらの色の選択は、第1基材10および第2基材20の少なくとも一方に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0045】
(ハーフミラー層)
ハーフミラー層30は、第1基材10と第2基材20との間に設けられ、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる機能を有する、いわゆる、ハーフミラー機能を有する層である。
【0046】
ハーフミラー層30は、高屈折率層31と、高屈折率層31よりも光屈折率が低い低屈折率層32と、を有している。図示の構成では、表側(第1基材10側)から、高屈折率層31および低屈折率層32の順で積層されている。
【0047】
高屈折率層31および低屈折率層32は、例えば、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法(EB法)等の真空蒸着等により成膜された蒸着膜であり、ハーフミラー層30はこれらの積層体である。
【0048】
また、高屈折率層31および低屈折率層32の構成材料としては、例えば、SiO2、SiO、TiO、TiO、Ti23、Ti25、Al23、TaO2、Ta25、NdO2、NbO、Nb23、NbO2、Nb25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、WO3、HfO2、ZrO2、Sc3、CrO、Cr、In、La、CaF、MgF2、NaAlF、AlF、BaF、CeF、CaF、LaF、LiF、NaAl14、NdF、YF等の酸化物またはフッ化物や、In、Cr、Ti、Ni、Au、Cu、Sn、Zr、Al等の金属材料が挙げられる。
【0049】
高屈折率層31の構成材料は、上記金属材料の中では、Cr、Zrであるのが好ましい。一方、低屈折率層32の構成材料は、上記金属材料の中では、Inであるのが好ましい。これにより、高屈折率層31の屈折率を、低屈折率層32よりも高くすることができる。よって、後述するように、ハーフミラー層30は、ハーフミラー機能を有するものとなる。さらに、ハーフミラー層30の曲げ性を高める、すなわち、クラックを生じにくくすることができる。
【0050】
高屈折率層31の構成材料は、上記酸化物の中では、Ta、HfO、ZrO、Y、Sc、CeOであるのが好ましく、ZrO、CeOであるのがさらに好ましい。一方、低屈折率層32の構成材料は、上記酸化物の中では、例えば、SiO、SiO、MgF、CaF、NaAlF、NaAl14であるのが好ましい。これにより、高屈折率層31の屈折率を、低屈折率層32よりも高くすることができる。よって、後述するように、ハーフミラー層30は、ハーフミラー機能を有するものとなる。
【0051】
なお、ハーフミラー層30の構成材料として、例えば、Au、Cu、In等単層の金属膜で構成することもできる。単層の場合、ハーフミラー層30の厚さを可及的に薄くすることができ、後述する打ち抜き工程や、曲げ加工時等にハーフミラー層30にクラックが生じたりするのを抑制することができる。また、上述したようにハーフミラー層30を複数層(多層膜)とすることで様々な反射色を再現することができ、デザイン性に優れる。
【0052】
また、高屈折率層31および低屈折率層32の厚さ(物理厚さ)は、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、1.5nm以上150nm以下であるのがより好ましい。
【0053】
高屈折率層31および低屈折率層32の厚さ(光学厚さ:500nmの波長に対して)は、0.002/4λnm以上0.4/4λnm以下であるのが好ましく、0.003/4λnm以上0.3/4λnm以下であるのがより好ましい。
【0054】
高屈折率層31および低屈折率層32をこのような厚さとすることにより、ハーフミラー層30は、ハーフミラーとしての効果を十分に発揮することができる。
【0055】
また、ハーフミラー層30の総厚(高屈折率層31および低屈折率層32の厚さの和)は、5nm以上500nm以下であるのが好ましく、7.5nm以上450nm以下であるのがより好ましく、10nm以上400nm以下であるのがさらに好ましく、12nm以上380nm以下であるのが特に好ましい。これにより、ハーフミラー層30は、ハーフミラーとしての効果を十分に発揮することができるとともに、曲げ変形した際にハーフミラー層30にクラックが生じてしまうのを防止することができる。
【0056】
ハーフミラー層30の総厚が薄すぎた場合、ハーフミラー層30は、ハーフミラーとしての効果を十分に発揮することができず、意匠性が低下する可能性がある。一方、ハーフミラー層30の総厚が厚すぎた場合、曲率半径が130.8mm以上の曲面に光学性積層体100を追従させた場合、ハーフミラー層30にクラックが生じてしまう可能性がある。
【0057】
なお、ハーフミラー層30の総厚とは、ハーフミラー層30の平均厚さのことを言う。この平均厚さは、例えば、基材の断面を露出させSEMまたはTEMを用いて求めた値とすることができる。
【0058】
ハーフミラー層30の総厚が5nmよりも薄かった場合、ハーフミラー層30は、ハーフミラーとしての効果を十分に発揮することができず、意匠性が低下する可能性がある。一方、ハーフミラー層30の総厚が500nmよりも厚かった場合、曲率半径が130.8mm以上の曲面に光学性積層体100を追従させた場合、ハーフミラー層30にクラックが生じてしまう可能性がある。
【0059】
また、高屈折率層31と低屈折率層32との屈折率差(光屈折率差)は、0.3以上2以下であるのが好ましく、0.4以上1.5以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得られる。
【0060】
このような屈折率の差は、例えば、高屈折率層31および低屈折率層32の構成材料を異ならせることにより発現することができる。これにより、上記のような屈折率の関係を比較的容易に得ることができる。
【0061】
また、高屈折率層31は、主としてCrで構成され、低屈折率層32は、主としてSiOで構成されているのが好ましい。これにより、上記のような屈折率の関係をより確実に得ることができる。
【0062】
また、高屈折率層31と第1基材10との屈折率差は、0.2以上1.5以下であるのが好ましく、0.3以上1.4以下であるのがより好ましい。これにより、ハーフミラー層30は、ハーフミラー層としての機能を十分に発揮することができる。
【0063】
また、低屈折率層32と接着剤層40との屈折率差は、0.05以上0.3以下であるのが好ましく、0.1以上0.28以下であるのがより好ましい。これにより、ハーフミラー層30は、ハーフミラー層としての機能を十分に発揮することができる。
【0064】
(コート層)
コート層60は、第1基材10とハーフミラー層30との間に設けられており、第1基材10とハーフミラー層30との密着性を高める機能を有する。
【0065】
コート層60の構成材料としては、上記効果を有していれば、特に限定されず、例えば、ウレタンアクリレート等のアクリレート、シリコーン、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、アクリレートであるのが好ましい。これにより、第1基材10とハーフミラー層30との密着性をより効果的に高めることができる。
【0067】
コート層60の厚さは、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、1μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、後述する本発明の効果をより効果的に得ることができる。
【0068】
(接着剤層)
接着剤層40(接合層)は、第2基材20と、ハーフミラー層30との間に設けられ、第2基材20とハーフミラー層30とを接合する機能を有する。
【0069】
接着剤層40は、光透過性を有する接着剤により構成されている。この接着剤としては、例えば、シリコーン系、ウレタン樹脂系、エポキシ系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。これにより、接合強度を十分に確保することができる。
【0070】
これらの中でも、接着剤層40は、シリコーン系接着剤またはウレタン樹脂系接着剤(ウレタン系接着剤)により構成されているのが好ましい。これにより、光学性積層体100を所望の形状に打抜き後、熱曲げを行い、インジェクション成形によりレンズ4と接合する際に、高温のインジェクション樹脂の熱による接着剤層40の劣化を防止することが出来る。
【0071】
さらには、接着剤層40は、シリル化ウレタン樹脂系の接着剤により構成されているのが好ましい。これにより、硬化時にガスが発生するのを防止することができる。特に、ハーフミラー層30は、ガスバリア性が比較的高いため、接着剤層40に気泡の残存が発生しやすいが、シリル化ウレタン樹脂系の接着剤を用いた場合、この気泡の残存を防止することができる。
【0072】
また、接着剤による接着は、液状接着剤を熱、UV、湿気などにより硬化させる方式、溶剤添加により液状となっている接着剤を乾燥(脱溶剤)した後に、熱、UV、湿気などにより硬化させる方式、接着シートをホットメルト、感圧、UVなどにより貼り合わせる方式などが挙げられる。
【0073】
接着剤層40の25℃における引張貯蔵弾性率は、コート層60の引張貯蔵弾性率よりも低いのが好ましく、具体的には、10MPa以下、特に、0.01MPa以上10MPa以下であるのが好ましく、0.1MPa以上9MPa以下であるのがより好ましい。これにより、後述するように、本発明の効果をより確実に得ることができる。
【0074】
接着剤層40の厚さは、特に限定されず、例えば、1μm以上300μm以下であるのが好ましく、5μm以上200μm以下であるのがより好ましい。
【0075】
このような接着剤層40により、第2基材20とハーフミラー層30とを良好に接合することができるとともに、後述する本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0076】
以上説明したような光学性積層体100では、ハーフミラー層30が表面(光学性積層体100の上面または下面)に露出していないため、ハーフミラー層30が摩耗したり、傷付いたりするのを防止することができる。よって、優れた光学特性を長期にわたって発揮することができる。
【0077】
なお、光学性積層体100の総厚は、特に限定されないが、0.1mm以上2.0mm以下であるのが好ましく、0.12mm以上1.8mm以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ4の湾曲面に確実に追従して貼着することができる。
【0078】
また、接着剤層40(第1の接合層)と第2基材20との間に偏光層および第2の接合層を設けても良い。これにより偏光機能を付与することができる。
【0079】
上記偏光層は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取出す機能を有している。これにより、光学性積層体100を介して目に入射する入射光は、偏光されたものとなる。
【0080】
偏光層の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上、100%以下であるのが好ましく、80%以上、100%以下であるのがより好ましい。また、偏光層の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、5%以上60%以下であるのが好ましく、10%以上50%以下であるのがより好ましい。
【0081】
このような偏光層の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、偏光層は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は、透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光層は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
【0083】
なお、上記二色性染料としては、例えば、クロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシドブラックなどが挙げられる。
【0084】
この偏光層の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
【0085】
次に、光学性積層体100の製造方法(本発明の光学性積層体の製造方法)について説明する。
【0086】
図4は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、ハーフミラー層形成工程を示す図である。図5は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、接着剤層塗布工程(介在層積層工程)を示す図である。図6は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、接合工程を示す図である。図7および図8は、本発明の光学性積層体の製造方法(第1実施形態)を説明するための断面図であって、打ち抜き工程を示す図である。
【0087】
本発明の光学性積層体の製造方法は、用意工程と、ハーフミラー層形成工程と、接着剤層塗布工程と、接合工程(積層工程)と、打ち抜き工程と、を有している。
【0088】
(1)用意工程
まず、前述したような第1基材10および第2基材20を用意するとともに、液状の接着剤50を用意する。液状の接着剤50は、硬化することにより、接着剤層40となる。
【0089】
また、液状の接着剤50としては、前述したようなもの挙げられる。また、液状の接着剤50の粘度は、0.01Pa・s以上1000Pa・s以下であるのが好ましく、0.1Pa・s以上500Pa・s以下であるのがより好ましい。これにより、厚さの制御が容易となる。
【0090】
(2)ハーフミラー層形成工程
まず、図4に示すように、第1基材10の一方の面上にコート層60を形成する。コート層60の形成方法としては、液状のコート層形成用材料を塗布して硬化させる方法等が挙げられる。
【0091】
次に、第1基材10のコート層60が形成された面上に高屈折率層31および低屈折率層32を順次積層する。これにより、第1基材10とハーフミラー層30とが積層された第1積層体100Aを得ることができる。
【0092】
この積層方法としては、蒸着法やスパッタリング法等の任意の方法を用いることができる。
【0093】
また、図示の構成では、ハーフミラー層30は、高屈折率層31および低屈折率層32が1層ずつ積層された2層構成であるが、3層以上積層してもよい。
【0094】
(3)接着剤層塗布工程
次に、図5に示すように、第2基材20の一方の面上に、接着剤50を塗布する。これにより、第2基材20と接着剤50とが積層された第2積層体100Bを得ることができる。また、接着剤50の塗布した厚さ、すなわち、乾燥前の厚さ(平均厚さ)は、1μm以上300μm以下であるのが好ましく、5μm以上100μm以下であるのがより好ましい。これにより、接着剤50を乾燥させた後、上述したような厚さを有する接着剤層40を得ることができる。
【0095】
(4)接合工程(積層工程)
次いで、乾燥させる前に、接着剤50とハーフミラー層30とが接触するように、第1積層体100Aと第2積層体100Bとを積層する。そして、積層した状態で接着剤50を乾燥させることにより、図6に示すように、ハーフミラー層30と第2基材20とが接合された積層体である光学性積層体100を得ることができる。また、さらに、乾燥した接着剤を硬化させてもよい。
【0096】
(5)打ち抜き工程
そして、図7および図8に示すように、台座800上に光学性積層体100を載置し、刃700を用いて光学性積層体100を所定の形状に打ち抜く。なお、本工程で用いる刃700は、リング状をなし、内周面702と、内周面702に対し外周側の刃面701とを有する。刃面701は、例えば、片刃、両刃、片二段刃、両二段刃等で構成されている。
【0097】
この刃700を光学性積層体100の一方の面側から他方の面側に向って貫通させるように打ち抜くことにより、刃700のリング形状の内側に対応した形状、すなわち、内周面702に囲まれる形状の光学性積層体100を得ることができる。
【0098】
ここで、本工程では、光学性積層体100を、第1基材10が台座800と接触するように載置して、第2基材20側からその厚さ方向に刃700を入れて打ち抜く。すなわち、第2基材20、接着剤層40、ハーフミラー層30、コート層60および第1基材10の順で光学性積層体100を切断する。これにより、刃700が光学性積層体100を切断しているとき、特に、ハーフミラー層30と接触する際、ハーフミラー層30の上側に位置する接着剤層40がクッション材となり、ハーフミラー層30と刃700が接触する際の衝撃を吸収することができる。よって、ハーフミラー層30と刃700が接触する際の衝撃がハーフミラー層30にダイレクトに伝わるのを緩和することができる。従って、ハーフミラー層30と刃700が接触する際にハーフミラー層30にクラックが生じたり、剥離してしまったりするのを防止することができる。その結果、光学特性の高い光学性積層体100を製造することができる。
【0099】
図7および図8に示す構成とは反対、すなわち、第1基材10、コート層60、ハーフミラー層30、接着剤層40および第2基材20の順で切断した場合は、ハーフミラー層30を切断する直前に接触する層は、コート層60であり、前述したような効果は得られない。
【0100】
また、接着剤層40の25℃における引張貯蔵弾性率を前述したような数値範囲に設定することにより、十分な緩衝作用を発揮することができ、本発明の効果をより確実に得ることができる。
【0101】
接着剤層40の25℃における引張貯蔵弾性率が高すぎると、本発明の効果を得ることはできるが、薄れる可能性がある。一方、接着剤層40の25℃における引張貯蔵弾性率が低すぎると、ハーフミラー層30と第2基材20との接合強度が不十分となる可能性がある。
【0102】
また、接着剤層40の厚さを前述したような数値範囲に設定することにより、十分な緩衝作用を発揮することができ、本発明の効果をより確実に得ることができる。接着剤層40の厚さが厚すぎると、光学性積層体100の厚さが過剰に厚くなってしまう可能性がある。一方、接着剤層40の厚さが薄すぎると、ハーフミラー層30と第2基材20との接合強度が不十分となる可能性がある。
【0103】
また、このような本工程では、接着剤層40、ハーフミラー層30およびコート層60の順で切断する構成であるため、ハーフミラー層30と刃700が接触する際の衝撃を、ハーフミラー層30を介してコート層60においても吸収することができる。よって、上記効果をより効果的に得られる。
【0104】
また、コート層60の25℃における引張貯蔵弾性率を前述したような数値範囲に設定することにより、十分な緩衝作用を発揮することができ、本発明の効果をより効果的に得ることができる。
【0105】
また、コート層60の厚さを前述したような数値範囲に設定することにより、十分な緩衝作用を発揮することができ、本発明の効果をより効果的に得ることができる。
【0106】
また、刃700では、外周部に刃面701が形成され、内周面702が垂直方向(リング状の中心軸と平行な方向)に形成されていることにより、打ち抜かれた光学性積層体100の端面を可及的に厚さ方向と平行にすることができる。
【0107】
また、刃700は、先端角度θが10°以上70°以下であるのが好ましく、20°以上60°以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得ることができる。なお、このような先端角度θの好ましい値は、両刃でも同様である。
【0108】
また、刃700の打ち抜く速度(1分間あたりの打ち抜き数)は、10spm以上200spm以下であるのが好ましく、20spm以上150spm以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0109】
以上説明したように、本発明の光学性積層体の製造方法は、光透過性を有する第1基材10と、第1基材10に積層され、高屈折率層31と、高屈折率層31よりも光屈折率が低い少なくとも1層の低屈折率32層と、を有し、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層30と、光透過性を有し、ハーフミラー層30の第1基材10とは反対側に設けられた第2基材20と、光透過性を有し、ハーフミラー層30と第2基材20との間に設けられ、ハーフミラー層30と第2基材20とを接合する接着剤層40(接合層)と、を備える光学性積層体100を製造する光学性積層体の製造方法であって、光学性積層体100を、第2基材20側からその厚さ方向に刃700を入れて打ち抜く打ち抜き工程を有する。これにより、刃700が光学性積層体100を切断しているとき、特に、ハーフミラー層30と接触する際、ハーフミラー層30の上側に位置する接着剤層40がクッション材となり、ハーフミラー層30と刃700が接触する際の衝撃を吸収することができる。よって、ハーフミラー層30と刃700が接触する際の衝撃がハーフミラー層30にダイレクトに伝わるのを緩和することができる。よって、ハーフミラー層30と刃700が接触する際にハーフミラー層30にクラックが生じたり、剥離してしまったりするのを防止することができる。その結果、光学特性の高い光学性積層体100を製造することができる。
【0110】
なお、本実施形態では、刃700は、外周部に刃面701を有する片刃で構成されていう場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、内周部に刃面701を有する片刃や、内周面および外周面に刃面701を有する両刃であってもよい。
【0111】
また、本実施形態では、接着剤50を乾燥または乾燥・硬化させて接着剤層40としてから打ち抜き工程を行った場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、接着剤50を硬化させる前に打ち抜き工程を行い、その後、接着剤50を乾燥または乾燥・硬化させてもよい。
【0112】
<第2実施形態>
図9および図10は、本発明の光学性積層体の製造方法(第2実施形態)を説明するための断面図であって、打ち抜き工程を示す図である。
【0113】
以下、これらの図を参照して本発明の光学性積層体の製造方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0114】
本実施形態は、打ち抜き工程において保護層を積層して打ち抜くこと以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0115】
図9および図10に示すように、打ち抜き工程では、光学性積層体100の両面側、すなわち、第1基材10の、ハーフミラー層と反対側の面上に保護層70を積層するとともに、第2基材20の接着剤層40と反対側の面上に保護層80を積層した状態で打ち抜き工程を行う。
【0116】
換言すれば、接合工程と打ち抜き工程との間に、光学性積層体100の両面側に保護層70および保護層80をそれぞれ積層する積層工程(マスキング工程)を有する。保護層70、80の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(PE、PP等)が挙げられる。
【0117】
保護層70および保護層80は、本実施形態では、同じ構成材料でかつ同じ引張貯蔵弾性率を有するが、これらは異なっていてもよい。
【0118】
保護層70および保護層80の25℃における引張貯蔵弾性率は、第1基材10および第2基材20よりも低く、0.1GPa以上3GPa以下であるのが好ましく、0.5GPa以上2GPa以下であるのがより好ましい。これにより、以下に述べる効果をより顕著に得られる。
【0119】
保護層70および保護層80の厚さは、10μm以上200μm以下であるのが好ましく、20μm以上100μm以下であるのがより好ましい。これにより、以下に述べる効果をより顕著に得られる。
【0120】
このような保護層70および保護層80は、剥離可能なマスキングシートであるのが好ましい。これにより、打ち抜き工程後、光学性積層体100をレンズ4に積層するまでの間、光学性積層体100を保護することができる。
【0121】
このような保護層70および保護層80が積層された光学性積層体100の一方側(図示の構成では、第2基材20側、すなわち、保護層80側)から打ち抜くことにより、刃700が光学性積層体100と接触する際、保護層80がクッション材となり、光学性積層体100と刃700とが接触する際の衝撃を吸収することができる。これにより、光学性積層体100と刃700とが接触する際の衝撃が、光学性積層体100にダイレクトに伝わるのを緩和することができる。よって光学性積層体100と刃700が接触する際にハーフミラー層30にクラックが生じたり、剥離してしまったりするのを防止することができる。その結果、光学特性の高い光学性積層体100を製造することができる。
【0122】
このように、本実施形態では、光学性積層体100の両面側に、第1基材10および第2基材20よりも引張貯蔵弾性率が低い保護層70および保護層80を積層した状態で、光学性積層体100を打ち抜く。これにより、光学性積層体100と刃700とが接触する際の衝撃が、光学性積層体100にダイレクトに伝わるのを緩和することができる。よって光学性積層体100と刃700が接触する際にハーフミラー層30にクラックが生じたり、剥離してしまったりするのを防止することができる。その結果、光学特性の高い光学性積層体100を製造することができる
【0123】
以上、本発明の光学性積層体の製造方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、光学性積層体の製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0124】
また、本発明の光学性積層体の製造方法の各工程は、同様の機能を発揮し得る任意の工程と置換することができる。また、任意の工程が付加されていてもよい。
【0125】
なお、本発明の光学性積層体の製造方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0126】
また、光学性積層体は、自動車、オートバイ、鉄道等の車両や、航空機、船舶、住宅等の窓部材に積層して用いることもできる。
【0127】
また、前記各実施形態では、ハーフミラー層は、2層である場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、1層または3層以上であってもよい。
【実施例
【0128】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.光学性積層体の形成
(実施例1)
まず、100質量部のビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「H3000」)を押し出し成形により、2枚の基材を得、これらを第1基材および第2基材とした。
【0129】
そして、第1基材の一方の面上に、グラビア塗工することにより、アクリレート樹脂で構成された厚さ5μmのコート層を形成した。次いで、コート層上に真空蒸着法により、表1に示すような第1層(高屈折率層)および第2層(低屈折率層)を積層してハーフミラー層を形成し、第1積層体を得た。
【0130】
一方で、第2基材の一方の面上に、硬化後の厚さが、50μmになるように、コニシ製ボンドウルトラ多用途クリア(シリル化ウレタン樹脂系)を塗布し、第2積層体を得た。
【0131】
そして、第1積層体と第2積層体とを、ハーフミラー層と接着剤層とが接触するように貼り合わせ、25℃、湿度50%環境下で7日間養生して接着剤層を硬化させて、光学性積層体を得た。
【0132】
そして、内径が80mmのリング状の刃を用意し、第2基材側から打ち抜いて所望の形状の光学性積層体を得た。なお、刃は、先端角度θが30°の両刃であり、45tの打ち抜きプレス機にて打ち抜く速度(1分間あたりの打ち抜き数)は、35spmであった。
【0133】
(実施例2)
光学性積層体の両面側、すなわち、第1基材のハーフミラー層と反対側の面上に保護層を積層するとともに、第2基材の接着剤層と反対側の面上に保護層を積層した状態で打ち抜きを行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の光学性積層体を得た。
【0134】
なお、表1では、第1基材側の保護層を第1保護層とし、第2基材側の保護層を第2保護層としている。
【0135】
(実施例3~10)
各部の構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3~10の光学性積層体を得た。
なお、実施例10のウレタン樹脂系接着剤は、二液湿気硬化型ポリウレタン接着剤を用いた。
【0136】
(比較例1)
第1基材側から打ち抜いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の光学性積層体を得た。
【0137】
なお、表1中のハーフミラー層では、「高屈折率層」および「低屈折率層」を、第1基材側から積層されている順に、上から記載している。
【0138】
2.評価
各実施例および比較例の光学性積層体を、以下の方法で評価した。
【0139】
<ハーフミラー層観察>
光学性積層体の縁部においてハーフミラー層が損傷しているか否かを光学性積層体の一方の面側から目視で観察し、以下のように評価した。なお、ハーフミラー層が損傷していた場合、その部分は、周囲と色が異なっている。
【0140】
A:損傷が全くない。
B:若干の損傷はあるが色の変化はほとんど気にならない。
C:若干の損傷はあり、色の変化が若干気になるが、光学特性は問題ない。
D:損傷が目立つ。
【0141】
<気泡観察>
デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、「VHX-1000」)を用いて、観察を行い、気泡の大きさを測定し、次のように評価した。
【0142】
A:気泡が発生していない。
B:気泡が僅かに発生していた。
C:気泡が大量に発生していた。
評価結果を表1に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1に示したように、各実施例における光学性積層体では、比較例以上に、ハーフミラー層の損傷が少なく、満足のいく結果となった。
【符号の説明】
【0145】
1 光学部品
1' 光学部品
2 フレーム
21 リム部
22 ブリッジ部
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
3 光学性積層体付レンズ
4 レンズ
5 装着部
6 ツバ
7 光透過性部材
100 光学性積層体
100A 第1積層体
100B 第2積層体
10 第1基材
20 第2基材
30 ハーフミラー層
31 高屈折率層
32 低屈折率層
40 接着剤層
50 接着剤
60 コート層
70 保護層
80 保護層
700 刃
701 刃面
702 内周面
800 台座
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10