(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/409 20060101AFI20230511BHJP
G05B 19/414 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G05B19/409 Z
G05B19/414 R
(21)【出願番号】P 2019089257
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 康介
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096175(JP,A)
【文献】特開2009-175905(JP,A)
【文献】特開2015-167016(JP,A)
【文献】特開2015-233223(JP,A)
【文献】特開2016-167724(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010396(WO,A1)
【文献】特許第5312592(JP,B2)
【文献】特開2002-278938(JP,A)
【文献】国際公開第2013/093845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
B25J 1/00-21/02
G06F 21/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、
前記機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる前記機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、
それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、前記制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、
前記制御部は、
前記端末のそれぞれに対応して、前記複数種類の作業ごとの前記禁止状態又は前記許可状態を記憶する記憶部と、
前記複数の端末のうち、前記工作機械の所定位置から最も距離が短い端末を判定する判定部と、
前記工作機械の所定位置からの距離に基づき、前記複数の端末の中から1つの前記端末を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記端末について、前記記憶部に記憶された前記禁止状態又は前記許可状態を設定する設定部と、を備え
、
前記選択部は、前記判定部により判定された前記端末を選択する、工作機械システム。
【請求項2】
ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、
前記機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる前記機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、
それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、前記制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、
前記制御部は、
前記端末のそれぞれに対応して、前記複数種類の作業ごとの前記禁止状態又は前記許可状態を記憶する記憶部と、
前記工作機械の所定位置からの距離に基づき、前記複数の端末の中から1つの前記端末を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記端末について、前記記憶部に記憶された前記禁止状態又は前記許可状態を設定する設定部と、を備え、
前記設定部は、予め設定された所定時間において、設定した前記禁止状態又は前記許可状態を維持する、工作機械システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記所定時間が経過する前において、選択されている前記端末との距離が所定範囲である場合に、既に設定している前記禁止状態又は前記許可状態を次の前記所定時間において継続させる、請求項2に記載の工作機械システム。
【請求項4】
ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、
前記機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる前記機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、
それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、前記制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、
前記制御部は、
前記端末のそれぞれに対応して、前記複数種類の作業ごとの前記禁止状態又は前記許可状態を記憶する記憶部と、
前記工作機械の所定位置からの距離に基づき、前記複数の端末の中から1つの前記端末を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記端末について、前記記憶部に記憶された前記禁止状態又は前記許可状態を設定する設定部と、を備え、
前記制御部と前記複数の端末との無線通信が可能な通信エリアが予め設定され、
前記選択部は、前記通信エリア内の前記複数の端末のうち、前記工作機械の所定位置から最も距離が短い前記端末を選択する、工作機械システム。
【請求項5】
ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、
前記機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる前記機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、
それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、前記制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、
前記制御部は、
前記端末のそれぞれに対応して、前記複数種類の作業ごとの前記禁止状態又は前記許可状態を記憶する記憶部と、
前記工作機械の所定位置からの距離に基づき、前記複数の端末の中から1つの前記端末を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記端末について、前記記憶部に記憶された前記禁止状態又は前記許可状態を設定する設定部と、を備え、
前記工作機械の所定位置は、前記工作機械に備える操作盤の位置、又は前記工作機械に対するメンテナンス作業位置である、工作機械システム。
【請求項6】
前記複数の端末は、前記制御部と無線通信を行い、
前記作業を行うための操作部を有し、
前記制御部は、前記操作部の操作に基づいて前記機械動作を制御する、請求項1
から請求項
5のいずれか一項に記載の工作機械システム。
【請求項7】
前記設定部は、選択されている前記端末が前記工作機械の所定位置から所定距離を超えて離れた場合、既に設定している前記禁止状態又は前記許可状態を解消させる、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の工作機械システム。
【請求項8】
前記選択部は、前記工作機械の所定位置からの距離と、前記端末が割り当てられた作業者に関連付けられた優先度とに基づいて、前記複数の端末の中から1つの前記端末を選択する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の工作機械システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記選択部により選択された前記端末に関する情報、及び前記設定部により設定された前記禁止状態又は前記許可状態に関する情報の一方又は双方を前記工作機械に備える表示部に表示させる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械では、ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作に関して、作業者による手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業が行われている。このような各作業を行うに際して、作業者が行う作業に応じて作業の禁止又は許可を設定する(作業者の認証を行う)ことが必要な場合がある。例えば、工作機械においてワークの加工に関するパラメータ等を変更できる権限を持った作業者が、操作盤等によりパスワードを入力することでその作業の許可が設定され、その工作機械においてパラメータの変更などの作業を行うことができるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の工作機械では、一定期間ごとに認証を行っており、作業者は、操作盤等を操作してパスワードの入力を行っている。操作盤等にパスワードを入力する作業は、作業者にとって面倒であるだけでなく、その工作機械に対する使用を一時中断してパスワードの入力を行うので効率が良くない。また、工作機械が設置される環境は、クリーンな環境でないことが多く、工作機械を使用する際、加工により生じた切り屑、加工時に供給されたクーラント等により、作業者の手が汚れる場合がある。このような状態で操作盤等にパスワードを入力すると、操作盤等が汚れてしまい、次の入力等に支障が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、作業者による工作機械に対する各種作業の禁止又は許可を容易に設定することで作業者の負担を軽減することが可能な工作機械システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る工作機械システムは、ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、制御部は、端末のそれぞれに対応して、複数種類の作業ごとの禁止状態又は許可状態を記憶する記憶部と、複数の端末のうち、工作機械の所定位置から最も距離が短い端末を判定する判定部と、工作機械の所定位置からの距離に基づき、複数の端末の中から1つの端末を選択する選択部と、選択部により選択された端末について、記憶部に記憶された禁止状態又は許可状態を設定する設定部と、を備え、選択部は、判定部により判定された端末を選択する。
本発明の態様に係る工作機械システムは、ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、制御部は、端末のそれぞれに対応して、複数種類の作業ごとの禁止状態又は許可状態を記憶する記憶部と、工作機械の所定位置からの距離に基づき、複数の端末の中から1つの端末を選択する選択部と、選択部により選択された端末について、記憶部に記憶された禁止状態又は許可状態を設定する設定部と、を備え、設定部は、予め設定された所定時間において、設定した禁止状態又は許可状態を維持する。
本発明の態様に係る工作機械システムは、ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、制御部は、端末のそれぞれに対応して、複数種類の作業ごとの禁止状態又は許可状態を記憶する記憶部と、工作機械の所定位置からの距離に基づき、複数の端末の中から1つの端末を選択する選択部と、選択部により選択された端末について、記憶部に記憶された禁止状態又は許可状態を設定する設定部と、を備え、制御部と複数の端末との無線通信が可能な通信エリアが予め設定され、選択部は、通信エリア内の複数の端末のうち、工作機械の所定位置から最も距離が短い端末を選択する。
本発明の態様に係る工作機械システムは、ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、制御部は、端末のそれぞれに対応して、複数種類の作業ごとの禁止状態又は許可状態を記憶する記憶部と、工作機械の所定位置からの距離に基づき、複数の端末の中から1つの端末を選択する選択部と、選択部により選択された端末について、記憶部に記憶された禁止状態又は許可状態を設定する設定部と、を備え、工作機械の所定位置は、工作機械に備える操作盤の位置、又は工作機械に対するメンテナンス作業位置である。
本発明の態様に係る工作機械システムは、ワークの加工及び搬送の一方又は双方である機械動作を行う工作機械と、機械動作を制御するとともに、作業者によって行われる機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について、作業を禁止する禁止状態又は作業を許可する許可状態に設定する制御部と、それぞれが複数の作業者それぞれに予め割り当てられ、制御部と通信可能な可搬式の複数の端末と、を備える工作機械システムであって、制御部は、端末のそれぞれに対応して、複数種類の作業ごとの禁止状態又は許可状態を記憶する記憶部と、工作機械の所定位置からの距離に基づき、複数の端末の中から1つの端末を選択する選択部と、選択部により選択された端末について、記憶部に記憶された禁止状態又は許可状態を設定する設定部と、を備える。
【0007】
また、制御部は、複数の端末のうち、工作機械の所定位置から最も距離が短い端末を判定する判定部を更に備え、選択部は、判定部により判定された端末を選択してもよい。また、複数の端末は、制御部と無線通信を行い、作業を行うための操作部を有し、制御部は、操作部の操作に基づいて機械動作を制御してもよい。また、設定部は、選択されている端末が工作機械の所定位置から所定距離を超えて離れた場合、既に設定している禁止状態又は許可状態を解消させてもよい。また、設定部は、予め設定された所定時間において、設定した禁止状態又は許可状態を維持してもよい。また、設定部は、所定時間が経過する前において、選択されている端末との距離が所定範囲である場合に、既に設定している禁止状態又は許可状態を次の所定時間において継続させてもよい。また、制御部と複数の端末との無線通信が可能な通信エリアが予め設定され、選択部は、通信エリア内の複数の端末のうち、工作機械の所定位置から最も距離が短い端末を選択してもよい。また、選択部は、工作機械の所定位置からの距離と、端末が割り当てられた作業者に関連付けられた優先度とに基づいて、複数の端末の中から1つの端末を選択してもよい。
【0008】
また、制御部は、選択部により選択された端末に関する情報、及び設定部により設定された禁止状態又は許可状態に関する情報の一方又は双方を工作機械に備える表示部に表示させてもよい。また、工作機械の所定位置は、工作機械に備える操作盤の位置、又は工作機械に対するメンテナンス作業位置であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記した工作機械システムによれば、工作機械の所定位置からの端末の距離に応じて、各種作業がそれぞれ禁止状態又は許可状態に自動的に設定される。このため、作業者が操作盤等にパスワードを入力する手間を省くことができ、作業者の負担を軽減することができる。また、作業者による操作盤等の入力が不要であるので、入力ミス等がなく、工作機械における各作業の禁止状態又は許可状態の設定(工作機械における認証)を正確かつ容易に行うことができる。
【0010】
また、制御部が、複数の端末のうち、工作機械の所定位置から最も距離が短い端末を判定する判定部を更に備え、選択部が、判定部により判定された端末を選択する構成では、無線通信を行っている複数の端末との間の電波強度を用いることにより、最も距離が短い端末を容易に選択できる。また、複数の端末が、制御部と無線通信を行い、作業を行うための操作部を有し、制御部が、操作部の操作に基づいて機械動作を制御する構成では、端末の操作部を操作することで、工作機械に対する作業を行うことができる。また、設定部は、選択されている端末が工作機械の所定位置から所定距離を超えて離れた場合、既に設定している禁止状態又は許可状態を解消させる構成では、不要な禁止状態又は許可状態が維持されることを防止し、禁止状態又は許可状態を適切に設定することができる。また、設定部は、予め設定された所定時間において、設定した禁止状態又は許可状態を維持する構成では、所定時間を超えた場合に、設定した禁止状態又は許可状態を解消させるので、不要に禁止状態又は許可状態が継続されるのを防止できる。また、設定部が、所定時間が経過する前において、選択されている端末との距離が所定範囲である場合に、その端末に既に設定している禁止状態又は許可状態を次の所定時間において継続させる構成では、端末を所有する作業者に対して禁止状態又は許可状態を継続して設定することができ、不要なタイムアウトを防止するとともに、工作機械を離れて所定時間が経過したときには、設定した禁止状態又は許可状態を確実に解消させることができる。また、制御部と複数の端末との無線通信が可能な通信エリアが予め設定され、選択部が、通信エリア内の複数の端末のうち、工作機械の所定位置から最も距離が短い端末を選択する構成では、禁止状態又は許可状態を設定する対象が通信エリア内において通信可能な端末に限定されるので、工作機械から離れている端末を除外することで制御部の処理負担を軽減できる。また、選択部が、工作機械の所定位置からの距離と、端末が割り当てられた作業者に関連付けられた優先度とに基づいて、複数の端末の中から1つの端末を選択する構成では、優先度の高い作業者の端末に応じて、適切に禁止状態又は許可状態を設定することができる。
【0011】
また、制御部が、選択部により選択された端末に関する情報、及び設定部により設定された禁止状態又は許可状態に関する情報の一方又は双方を工作機械に備える表示部に表示させる構成では、作業者等が表示部を見ることにより、設定された禁止状態又は許可状態に関する情報を容易に確認することができる。また、工作機械の所定位置が、工作機械に備える操作盤の位置、又は工作機械に対するメンテナンス作業位置である構成では、操作盤の操作又はメンテナンス作業を行うために近づいてきた作業者の端末に応じて、適切な禁止状態又は許可状態を早期に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る工作機械システムの一例を示す図である。
【
図2】工作機械の操作又は作業と、それぞれの操作又は作業に対して付与される権限の種類との関係の一例を示す表である。
【
図3】記憶部に記憶されるデータテーブルの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る制御部による工作機械の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】工作機械システムの動作の一例を示す模式図である。
【
図6】工作機械システムの動作の他の例を示す模式図である。
【
図7】工作機械システムの動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図8】工作機械システムの動作の他の例を模式的に示す図である。
【
図9】工作機械システムの動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図10】工作機械システムの動作の他の例を模式的に示す図である。
【
図11】工作機械システムの動作の他の例を模式的に示す図である。
【
図12】工作機械システムの動作の他の例を模式的に示す図である。
【
図13】(A)及び(B)は、表示部の表示内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する形態に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。
【0014】
図1は、本実施形態に係る工作機械システムSYSの一例を示す図である。
図1に示すように、工作機械システムSYSは、工作機械100と、複数の端末T(T1、T2、T3、…)とを備える。端末Tは、特定の端末を指す場合は端末T1等と称し、任意の端末を指す場合は端末Tと称する。本実施形態では、1台の工作機械100と複数の端末Tとが設けられる場合を例に挙げて説明するが、この形態に限定されず、工作機械100が複数配置され、各工作機械100と端末Tとが通信可能であってもよい。複数の端末Tのそれぞれは、工作機械100に備える制御部CONTとの間で無線通信が可能である。
【0015】
工作機械100は、例えば旋盤であり、加工対象であるワークを主軸に保持し、ワークを回転させながらバイト等の加工工具により切削加工を行う。なお、工作機械100は、旋盤であることに限定されず、例えば、フライス盤、マシニングセンタ、レーザ加工機等の他の種類の工作機械100であってもよい。また、複数の工作機械100が配置される場合、同一の種類の工作機械100が複数配置されてもよいし、異なる種類の工作機械100が複数配置されてもよい。
【0016】
工作機械100は、ワークの加工、及びワークの搬送の一方又は双方である機械動作を行う。作業者は、このような機械動作に関する、手動操作、手動設定を含む複数種類の各作業について作業を行う。ただし、各作業者においては、複数種類の作業のうち、工作機械100に対して行うことができる作業が予め決められている。作業者が行う作業としては、例えば、ワークを加工する工具の動作又は操作(工具の移動を決定するパラメータの変更等)に関する作業、ワークを搬送するローダ(搬送装置)の動作に関する作業、工具等の工作機械100を構成する部品を交換に関する作業、クーラント等のワークの加工に必要な消耗品の補充又は補給に関する作業など、複数種類の作業がある。なお、ワークを加工する工具の動作又は操作に関する作業、及び、ローダの動作に関する作業は、実際にワークを加工する際の工作機械100の動作を設定するために必要な作業である。また、部品の交換に関する作業、及び、消耗品の補充又は補給に関する作業は、ワークを加工する前の準備のために必要な作業である。工作機械100は、作業者ごとに行うことができる作業と、行うことができない作業とを設定している。工作機械100は、作業者を識別して(認証して)、その作業者が行うことができない作業については禁止状態とし、作業者が行うことができる作業については許可状態と設定することで、その作業が認められた作業者により行えるようにしている。なお、上記した作業の詳細、及び工作機械システムSYSにおいて禁止状態又は許可状態の設定手順等については後述する。
【0017】
工作機械100は、制御部CONTを有する。制御部CONTは、工作機械100を構成する機械動作(可動部分等)を統括的に制御する。また、工作機械100は、工作機械100の加工エリアに対してワークを搬入又は搬出するローダ(搬送装置)を含んで構成される。制御部CONTは、このローダの機械動作を制御する。制御部CONTは、例えば、コンピュータが用いられ、数値制御装置及びプログラマブルコントローラを有する。制御部CONTは、例えばワークの加工を制御する加工制御部を有する。制御部CONTは、図示しない上位制御装置との間で有線または無線による通信が可能である。上位制御装置は、複数の工作機械100及びその他の装置を統括して制御する。
【0018】
制御部CONTは、入力部10と、表示部20と、記憶部30と、処理部40と、通信部50とを有する。入力部10は、例えば、操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス、トラックボールなどが用いられる。入力部10は、作業者(オペレータ)からの入力を検出し、入力された情報を処理部40に供給する。入力部10は、操作盤11を有する。操作盤11は、例えばワークの加工プログラム、ワークの素材、工具の種類等の加工条件等を作業者の操作により入力する。なお、加工条件は、上位制御装置から送られて、操作盤11により加工条件を修正、補正する構成であってもよい。
【0019】
表示部20は、例えば液晶ディスプレイなどであり、処理部40から供給されるデータあるいは画像を表示する。例えば、表示部20は、入力部10又は操作盤11において情報を入力する場合、入力用の画像等を表示させてもよい。表示部20に表示させる画面のデータについては、予め記憶部30に記憶されており、画面内のいずれかが選択された場合に次に表示する画面などが記憶部30に記憶されている。
【0020】
記憶部30は、入力部10により入力されたデータの他に、処理部40により演算等の処理を行うためのプログラム及び各種データが記憶される。また、記憶部30は、端末Tのそれぞれに対応して、工作機械100において設定されるべき複数種類の作業ごとの禁止状態又は許可状態を記憶する。すなわち、記憶部30は、複数の端末T(T1、T2、T3、…)と、端末(T1、T2、T3、…)のそれぞれの所有者(作業者)における作業ごとの禁止状態又は許可状態を特定するためのデータテーブルDTを記憶している。データテーブルDTの詳細については後述する。
【0021】
処理部40は、記憶部30に記憶された各種プログラム及び各種データに基づいて、各種の演算等の処理を行う。処理部40は、選択部41と、判定部42と、設定部43と、表示制御部44とを有する。選択部41は、工作機械100の所定位置からの距離に基づき、複数の端末Tの中から1つの端末Tを選択する。判定部42は、例えば、無線通信を行っている複数の端末Tのうち、工作機械100の所定位置から最も距離が短い端末Tを判定する。なお、判定部42における判定の手法については後述する。選択部41は、判定部42により判定された端末Tを選択する。本実施形態において、所定位置は、例えば操作盤11(入力部10)が設けられる位置に設定することができる。ただし、所定位置は、操作盤11以外の他の位置に設定されてもよい。
【0022】
設定部43は、選択部41が選択した端末Tに応じて(すなわち端末Tの所有者に応じて)、工作機械100において記憶部30に記憶された作業ごとの禁止状態又は許可状態を設定する。設定部43は、予め設定された所定時間において、設定されている禁止状態又は許可状態を維持する。なお、所定時間は、作業内容に応じて異なる時間に設定してもよいし、作業内容に関わらず一定時間(例えば、1分、10分、1時間など)に設定してもよい。選択部41は、所定時間が経過すると、設定した禁止状態又は許可状態を解消させる。ただし、設定部43は、所定時間が経過する前において、端末Tとの距離が所定範囲である場合に、その端末Tに応じて設定されている禁止状態又は許可状態を次の所定時間において継続させる。また、設定部43は、作業者(端末T)が工作機械100の所定位置から所定距離(例えば、
図5の距離L参照)を超えて離れた場合、又はその作業者(端末T)より工作機械100の所定位置からの距離が短い他の作業者(端末T)が現れた場合、すでに設定している禁止状態又は許可状態を解消させてもよい。その結果、不要な禁止状態又は許可状態が維持されることを防止し、他の作業者(端末T)に応じて適切な禁止状態又は許可状態を付与することができる。
【0023】
また、選択部41は、選択部41により選択された端末Tが複数ある場合、工作機械100の所定位置からの距離と、端末Tの所有者(作業者)に関連付けられた優先度とに基づいて、その端末Tに応じた禁止状態又は許可状態を設定してもよい。例えば、所定位置との距離が同一又はほぼ同一な端末Tが複数ある場合(あるいは同一の通信エリア内に端末Tが複数ある場合)、各端末Tの所有者(作業者)に関連付けられた優先度から、優先度が高い方(例えば、高度な技量を要する作業者)の禁止状態又は許可状態を設定してもよい。その結果、工作機械100近傍に作業者とその作業者を指導する指導者がいる場合、指導者の端末Tに応じた禁止状態又は許可状態を設定して、指導を受ける作業者単独では認められない工作機械100への作業を、指導者の指導の下に行うことが可能となる。
【0024】
設定部43は、記憶部30に記憶されているデータテーブルDTに基づいて禁止状態又は許可状態を設定する。データテーブルDTには、その端末Tの所有者(作業者)が行うことができる作業と、作業者に関連付けられた優先度とが記憶されているので、設定部43は、データテーブルDTの情報を参照することにより、容易に禁止状態又は許可状態を設定することができる。
【0025】
表示制御部44は、表示部20の表示動作を制御する。表示制御部44は、禁止状態又は許可状態が設定された端末Tに関する情報、及び設定された禁止状態又は許可状態に関する情報の一方又は双方を表示部20に表示させる。通信部50は、複数の端末Tとの間で無線通信を行う。通信部50は、複数の端末Tに対して、工作機械100に対する禁止状態又は許可状態の設定に関する設定情報を送信する。
【0026】
端末Tは、作業者M1、M2、M3、・・・・にそれぞれ割り当てられる。端末Tは、作業者M1等において携帯可能な可搬式の携帯端末である。本実施形態において、端末T1の所有者は、作業者M1である。端末T2の所有者は、作業者M2である。端末T3の所有者は、作業者M3である。作業者一名に対して1台の端末Tが割り当てられているが、作業者一名に対して複数の端末Tが割り当てられてもよい。端末Tは、通信部60と、処理部70と、操作部80と、表示部90とを有する。通信部60は、工作機械100の通信部50と通信可能である。また、通信部60は、通信部50以外の通信部と通信可能である。
【0027】
処理部70は、通信部50により送受信する情報、及び操作部80により入力された情報を処理する。また、処理部70は、表示部90に表示する情報を処理する。操作部80は、例えば、タッチパネル、ダイアル、ボタンなどが用いられる。操作部80は、作業者の操作により、その操作情報を処理部70に供給する。処理部70は、操作部80による操作情報を、通信部50を介して工作機械100の制御部CONTに送信する。工作機械100の制御部CONTは、操作部80の操作に基づいて各種機械動作を制御する。すなわち、工作機械100に対する作業を、携帯Tの操作部80を操作することにより行うことができる。表示部90は、通信部50により送受信する情報、及び操作部80により操作された情報などが表示される。なお、端末Tは、音声を出力可能なスピーカ、音声を入力可能なマイクを備えていてもよい。また、端末Tは、自身の位置を取得するためのGPSアンテナ又は局所的位置検出システムに用いられるアンテナを備えてもよい。
【0028】
工作機械100において、上記した作業に関する禁止状態又は許可状態が設定された場合に、作業者は、禁止状態に設定された作業については行うことができず、許可状態に設定された作業については行うことが可能となる。
図2は、工作機械100における各種類の作業と、それぞれの作業に対して設定されるべき禁止状態又は許可状態との関係の一例を示す表である。
図2に示す表は、例えば、データ形式で記憶部30に記憶されていてもよいし、図示しない上位制御装置の記憶部に記憶され、制御部CONTが上位制御装置から適宜取得してもよい。
【0029】
工作機械100において、作業者M1等には、
図2に示すように、項目A1~A20に示される作業について、それぞれ禁止状態又は許可状態が設定される。この項目は、ワークを加工する工具の動作又は操作に関する作業、搬送装置の動作に関する作業、工具等の工作機械100を構成する部品を交換に関する作業、クーラント等のワークの加工に必要な消耗品の補充又は補給に関する作業に基づいて設定されており、例えば連動起動・サイクル停止操作(A1)、補正入力操作(A2)、工具残寿命入力操作(A3)、工具寿命設定操作(A4)、ワークカウンタ・品質チェックカウンタ設定操作(A5)、手動操作(A6)、ローダ手動操作(A7)、ローダ教示操作(A8)、加工プログラム編集操作(A9)、ローダプログラム編集操作(A10)、運転モード設定操作(A11)、PMCパラメータ入力操作(A12)、各種設定操作(A13)、ローダ設定操作(A14)、タイマ設定操作(A15)、シグナルタワー設定操作(A16)、着座確認設定操作(A17)、機外計測設定操作(A18)、ツールオプション設定操作(A19)、その他設定操作(A20)が含まれる。なお、
図2に示す項目A1~A20は、一例であって、項目A1~A20の少なくとも1つが除外されてもよいし、項目A1~A20以上の項目が設定されてもよい。
【0030】
この項目A1~A20に関して、禁止状態又は許可状態を設定するための設定種類が例えば8段階に分けられている。
図2に示すように、設定種類1では、項目A1、A6、A7については許可状態に設定され、他の項目については禁止状態に設定される。設定種類2では、項目A1~A3、A5~A7については許可状態に設定され、他の項目については禁止状態に設定される。設定種類3では、項目A1、A9、A17~A19については許可状態に設定され、他の項目については禁止状態に設定される。設定種類4では、項目A1、A4、A6、A7、A11~A13、A15については許可状態に設定され、他の項目については禁止状態に設定される。設定種類5では、項目A1、A7、A8、A10~A14、A16については許可状態に設定され、他の項目については禁止状態に設定される。設定種類6、7では、すべての項目について禁止状態に設定される。設定種類8では、すべての項目について許可状態に設定される。これら設定種類1~8は、作業者ごとに設定される。なお、設定種類1~8における項目の組み合わせは、上記に限定されない。また、設定種類が8つであることに限定されず、7つ以下、又は9つ以上の種類に分けられてもよい。
【0031】
図3は、記憶部30に記憶されるデータテーブルDTの一例を示す図である。
図3に示すように、データテーブルDTには、複数の端末T(T1、T2、T3、T4、…)と、端末Tのそれぞれの所有者(作業者M1、M2、M3、M4、…)と、作業者(端末T)に応じて設定されるべき作業ごとの禁止状態又は許可状態(設定種類2、8、1、6、…)と、作業者に関連付けられた優先度とが対応付けられている。例えば、端末T1は、作業者M1に割り当てられており、設定種類2に設定され、優先度が8となっている。設定種類2は、
図2に示すように、連動起動・サイクル停止操作(A1)、手動操作(A6)、及びローダ手動操作(A7)については許可状態に設定され、他の項目については禁止状態に設定される。優先度は、1から順に優先度が高くなるように設定されており、優先度8は、優先度の順位としては8番目であることを示している。なお、端末T1以外の他の端末T2等については、説明を省略する。
【0032】
本実施形態では、例えば、通信している複数の端末Tのうち、工作機械100の通信部50で受信した電波強度が最も強い端末を最も近い端末Tと判定し、その端末Tを選択する。端末Tは、一定間隔で所定情報(例えば、端末TのID情報など)を発信しており、工作機械100の通信部50は、この所定情報を受信した際の電波強度を比較して、複数の端末Tのうち電波強度が最も強い端末Tを最も近い端末Tと判定し、その端末Tを選択する。また、端末TがGPSアンテナ又は局所的位置検出システムに用いられるアンテナから受信した情報に基づいて、自身の位置を取得している場合は、その位置情報を端末Tの通信部60から発信する。工作機械100の通信部50は、端末Tから位置情報を受信して、予め得ているマップ情報から端末Tの位置を判断して、複数の端末Tのうち最も近い端末Tを判定し、その端末Tを選択してもよい。
【0033】
また、工作機械100は、制御部CONTと複数の端末Tとの無線通信が可能な通信エリアAR(
図5等参照)を予め設定してもよい。例えば、通信エリアARは、ビーコンが用いられてもよい。工作機械100から出力される電波(あるいは赤外線のような高周波の電磁波)の強度を調整し、受信可能な範囲を通信エリアARに設定し、端末Tがこの電波を受信したことを工作機械100に送信することで、端末Tが通信エリアARに入っていることを認識する構成が適用されてもよい。
【0034】
次に、以上のように構成された工作機械システムSYSの動作をついて説明する。
図4は、本実施形態に係る工作機械システムSYSにおいて、制御部CONTによる工作機械100の動作の一例を示すフローチャートである。
図5及び
図6は、工作機械システムSYSの動作の一例を示す模式図である。なお、
図5及び
図6において、作業者M1等は省略し、作業者M1等が所持する端末T1等について示している。
【0035】
複数の作業者M1等(
図1参照)が移動して、そのうちの作業者M1(端末T1を所持)が工作機械100に近づいている。先ず、選択部41(又は判定部42)は、無線通信を行っている端末Tが工作機械100の通信エリアAR内に存在するか否かを判定する(ステップS1)。
図5に示すように、工作機械100の通信エリアAR内では端末T1及びT2と通信可能な状態となっており、端末T3は通信エリアARには入っていない。すなわち、工作機械100と通信可能な端末Tは、端末T1と端末T2である。なお、通信エリアARは、例えば、操作盤11から距離Lの範囲に設定されている。距離Lは、任意に設定可能であり、工作機械100の周辺領域に設定されてもよい。
【0036】
通信エリアARが、ビーコン等により工作機械100の周辺領域に設定される場合は、工作機械100を中心とした狭い範囲に通信エリアARが設定される。従って、工作機械100から離れると通信エリアAR外となるので、通信エリアAR内に存在する端末T(すなわち、工作機械100を使用するために近づいている作業者が所持する端末T)を限定することができる。なお、ステップS1において、狭い通信エリアARを設定することに限定されない。例えば、工作機械100が設置されている建屋内全体が通信エリアARであってもよい。この場合、工作機械100は、端末T1、T2、T3、・・・と通信可能な状態となる。
【0037】
ステップS1において、選択部41(又は判定部42)は、通信部50を介して端末Tの信号を受信した場合、通信エリアAR内に端末T1、T2が存在すると判定する。なお、選択部41は、通信エリアAR内に端末Tが存在しないと判定した場合(ステップS1のNo)、ステップS1の処理を繰り返し実行する。ステップS1において、通信エリアAR内に端末Tが存在すると判定する場合(ステップS1のYES)、判定部42は、工作機械100の所定位置である操作盤11の位置から最も距離が短い端末Tを判定する(ステップS2)。ステップS2において、判定部42は、端末Tからの電波の強度、又は端末Tからの信号に含まれる位置情報に基づいて、所定位置と端末Tとの距離を判断する。
【0038】
図5に示す例では、所定位置である操作盤11から端末T1までが距離L1であり、操作盤11から端末T2までが距離L2である。距離L1は、距離L2より短い。端末T1が端末T2より操作盤11からの距離が短いことは、上記したように端末Tからの電波強度、又は位置情報により判断される。また、端末T1、T2から送信される情報にはその端末Tを特定するID情報が含まれている。判定部42は、端末Tから受信した電波の強度、又は位置情報により、端末T1が操作盤11の位置から最も距離が短いと判定する。なお、端末T3は、通信エリアAR外であるため工作機械100と通信可能な状態ではない。従って、端末T3は、選択部41による選択の対象とならない。すなわち、狭い通信エリアARとすることにより、選択部41による選択の対象である端末Tの数を限定することができ、選択部41(制御部CONT)の処理負担を軽減できる。ステップS2において、判定部42により操作盤11の位置から最も距離が短いと判定された端末T1は、選択部41により複数の端末T1、T2、・・・の中から1つの端末T1として選択される。
【0039】
続いて、設定部43は、選択部41が選択した最も距離が近い端末T1に応じて(その端末T1を所有する作業者M1応じて)、作動ごとの禁止状態又は許可状態を設定する(ステップS3)。この作業ごとの禁止状態又は許可状態の設定は、例えば、工作機械100の使用に関する権限を付与することに相当する。設定部43は、記憶部30に記憶されているデータテーブルDT(
図3参照)を参照して、作業者M1の設定種類2から、動起動・サイクル停止操作(A1)、手動操作(A6)、及びローダ手動操作(A7)については許可状態に設定し、他の作業については禁止状態に設定する。このように、端末T1の所有者(作業者M1)に応じて、適切な禁止状態又は許可状態を設定することができる。また、ステップS3において、設定部43は、禁止状態又は許可状態を設定する際、所定時間のカウントを開始する。
【0040】
続いて、設定部43は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において、所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS4のNo)、ステップS4の動作を繰り返し実行する。すなわち、所定時間が経過するまでは、すでに設定している禁止状態又は許可状態が維持される。従って、所定時間中に端末T1以外の端末Tが近づいても(例えば、端末T1以外の端末Tと操作盤11との距離が距離L1より短くなっても)、現在の禁止状態又は許可状態が維持される。なお、ステップS4において、設定部43により所定時間が経過したと判定された場合(ステップS4のYES)、設定部43は、端末T1に応じて設定していた禁止状態又は許可状態を解消する(ステップS5)。
【0041】
なお、禁止状態又は許可状態が解消された後は、他の端末T(他の作業者M2等)に権限を付与することが可能な状態となる。制御部CONTは、ステップS1以降の動作を繰り返し実行する。例えば、
図6に示すように、端末T1が工作機械100から離れて、端末T2が工作機械100に近づき、さらに端末T3が通信エリアARに入ってくる場合がある。
図6に示す例では、距離L2は、距離L1より短くなっており、操作盤11と端末Tとの距離L3は、距離L1、L2より長い。
【0042】
従って、
図4に示すフローチャートに従い、ステップS1において、選択部41は、端末T1、T2、T3が通信エリアAR内に存在すると判定した後、ステップS2において、選択部41により最も近い距離の端末として端末T2が選択される。続いて、ステップS3において、設定部43は、端末T2に応じて(端末T2を所有する作業者M2に応じて)禁止状態又は許可状態を設定する。作業者M2は、設定種類8であるので(
図2参照)、項目A1からA20の全ての作業について許可状態に設定される。なお、ステップS4において、所定時間が経過したか否かが判断され、されに、ステップS5において、設定された禁止状態又は許可状態が所定時間の経過後に解消される点は上記と同様である。
【0043】
図7は、工作機械システムSYSの動作の他の例を示すフローチャートである。
図8は、工作機械システムSYSの動作の他の例を模式的に示す図である。なお、
図8において、作業者M1等は省略し、作業者M1等が所持する端末T1等について示している。
図7に示すように、ステップS3において禁止状態又は許可状態が設定された後、選択部41(又は判定部42)は、所定時間に達するか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11は、所定時間が経過する直前に実行される。所定時間に達しないと判定された場合(ステップS11のNO)、選択部41は、所定時間に達するまでステップS11の判定を繰り返して行う。
【0044】
所定時間に達すると判定された場合(ステップS11のYES)、選択部41(又は判定部42)は、禁止状態又は許可状態を設定している端末Tとの距離が所定範囲内か否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において、選択部41(又は判定部42)は、例えば予め設定された所定範囲AR2に基づいて判定を行う。所定範囲AR2は、例えば記憶部30に記憶させておくことができる。
図8に示す例では、所定範囲AR2内に端末T1と端末T2とが入っており、距離L2が距離L1より短くなっている。
【0045】
続いて、禁止状態又は許可状態を設定している端末T1との距離が所定範囲AR2内であると判定された場合(ステップS12のYES)、設定部43は、その端末T1に設定している禁止状態又は許可状態を継続させる(ステップS13)。すなわち、設定部42は、先の所定時間に続いて次の所定時間について、端末T1に応じて設定された禁止状態又は許可状態を継続する。この結果、端末T1に応じた禁止状態又は許可状態を継続することができ、不要なタイムアウトを防止することができる。例えば、作業者M1(端末t1を所持)が作業中に一時的に工作機械100を離れる場合などにおいて、他の端末Tが操作盤11に近づくことで他の端末Tに応じた禁止状態又は許可状態に切り替わり、作業した内容が継続できなくなるなどの不都合を回避することが可能となる。
【0046】
その後、処理部40は、ステップS11以降の処理を繰り返し実行させる。一方、禁止状態又は許可状態を設定している端末T1との距離が所定範囲AR2内ではないと判定された場合(ステップS12のNO)、先に設定している禁止状態又は許可状態の継続を行うことなく、ステップS4以降の処理を行わせる。すなわち、ステップS4において、所定時間が経過したかが判定され、工作機械100を離れて所定時間が経過したときには、先に設定された禁止状態又は許可状態が解消される。このように、所定範囲AR2内に端末T1がある限り先に設定された禁止状態又は許可状態が維持され、所定範囲AR2から端末T1が離れたときには先に設定された禁止状態又は許可状態を所定時間経過後に確実に解消させることができる。
【0047】
図9は、工作機械システムSYSの動作の他の例を示すフローチャートである。
図10は、工作機械システムSYSの動作の他の例を模式的に示す図である。なお、
図10において、作業者M1等は省略し、作業者M1等が所持する端末T1等について示している。
図9に示すように、ステップS2において判定部42が操作盤11に最も近い端末Tを判定した後、判定部42は、判定した端末Tが複数であるか否かを判定する(ステップS21)。ステップS2において、判定部42は、通信可能な複数の端末Tとの距離が同一又はほぼ同一である場合には、最も近い端末Tが複数存在すると判定してもよい。ステップS21では、ステップS2において、判定部42により判定された端末Tが複数であるか否かを判定する。
【0048】
判定された端末が複数である場合(ステップS21のYES)、判定された端末Tを所有する作業者Mに対応付けられる優先度に基づいて端末Tが選択され、その端末Tに応じた禁止状態又は許可状態を設定付与する(ステップS22)。すなわち、ステップS22では、選択部41が、工作機械100の所定位置である操作盤11からの距離と、端末Tが割り当てられた作業者に関連付けられた優先度とに基づいて、複数の端末Tの中から1つの端末Tを選択し、設定部43が、その端末Tに応じた禁止状態又は許可状態を設定する。
図10に示す例では、端末T1と端末T2とが共に最も近い端末Tであると判定されている。端末T1は設定種類2であり、端末T2は設定種類8である。また、端末T1は優先度が8であり、端末T2は優先度が1である。端末T2が割り当てられた作業者M2は、作業者M1より作業可能な項目が多い。この場合、選択部41は、端末T1、T2に割り当てられた作業者に対応付けられた優先度に応じて、例えば、より優先度が高い(作業可能な項目が多い)優先度8が与えられている端末T2を選択する。端末T2が選択されると、設定部43は、端末T2に応じて、設定種類8に相当する許可状態を設定する。なお、
図2に示すように、設定種類8では禁止状態に設定すべき項目がないので禁止状態の設定はしない。この結果、例えば、作業者M2の存在(監視)の下で、許可されていない作業を作業者M1が実施可能となり、許可を得ていない作業の指導(教示)が可能となる。なお、判定した端末Tが複数ではないと判定された場合(ステップS21のNO)、ステップS22の処理を行うことなく、ステップS4以降の処理が行われる。
【0049】
なお、上記した実施形態において、作業可能な項目が多い作業者の優先度が高い場合(
図2参照)を例に挙げて説明したが、この形態に限定されない。例えば、工作機械100において実行すべき優先順位の高い操作等、重要な操作に関する作業を行うことができる作業者の優先度を高くする形態であってもよい。
【0050】
図11は、工作機械システムSYSの動作の他の例を模式的に示す図である。なお、
図11において、作業者M1等は省略し、作業者M1等が所持する端末T1等について示している。
図11に示すように、判定部42は、工作機械100の所定位置と複数の端末Tとの距離を検出する際、工作機械100における複数の所定位置との距離を検出して、最も距離が短い端末Tを判定してもよい。複数の所定位置は、例えば、
図11に示すように、操作盤11の他に、メンテナンス作業位置MP1、MP2がある。メンテナンス作業位置MP1、MP2は、それぞれ工作機械100の構成部品の保守、点検、交換、又は消耗品の補充などの作業を行う位置である。
【0051】
図11に示す例では、メンテナンス作業位置MP1から端末T1までが距離L1であり、操作盤11から端末T2までが距離L2であり、メンテナンス作業位置MP2から端末T3までが距離L3となっている。距離L1は、距離L2及び距離L3より短くなっている。判定部42は、所定位置からの距離が最も近い端末が端末T1であると判定し、選択部41により端末T1が選択される。端末T1が選択されると、設定部43は、端末T1に応じて禁止状態又は許可状態を設定する。すなわち、工作機械100のメンテナンス作業を行うために、メンテナンス作業位置MP1に近づいてきた作業者の端末T1に応じて禁止状態又は許可状態が設定される。このように、工作機械100に複数の所定位置が設定される場合において、適切な禁止状態又は許可状態を早期に設定することができる。
【0052】
図12は、工作機械システムSYSの動作の他の例を模式的に示す図である。なお、
図12において、作業者M1等は省略し、作業者M1等が所持する端末T1等について示している。
図12に示すように、複数の工作機械100、100Aが近接して配置されている場合において、複数の工作機械100、100Aの通信エリアAR同士が重複する場合がある。このとき、一方の工作機械100の通信エリアARに入った端末T1が、他方の工作機械100Aの通信エリアARに入ってしまう場合がある。
【0053】
このような場合、工作機械100において端末T1に応じた禁止状態又は許可状態が設定され、さらに、工作機械100Aにおいて端末T1に応じた禁止状態又は許可状態が設定されると、作業者M1(端末T1を所持)が工作機械100において作業を行っている間、別の工作機械100Aに対して他の作業者(他の端末T)に応じた禁止状態又は許可状態に設定できないので、工作機械100Aに対する作業を行うことができなくなる場合がある。従って、本実施形態では、工作機械100において端末T1に応じた禁止状態又は許可状態が設定されている間は、他の工作機械100Aには端末T1に応じた禁止状態又は許可状態が設定されないようにしている。
【0054】
例えば、工作機械100において端末T1に応じた禁止状態又は許可状態が設定された場合、工作機械100の制御部CONTから端末T1に応じた禁止状態又は許可状態を設定中であることを示す情報が工作機械100Aの制御部CONTに送られる。工作機械100Aの制御部CONTは、この情報に基づいて端末T1に応じた禁止状態又は許可状態を設定しないと判断することも可能である。また、例えば、工作機械100において禁止状態又は許可状態が設定されたことを端末T1が工作機械100Aに送信し、この送信に基づいて工作機械100Aでは端末T1に応じた禁止状態又は許可状態を設定しないと判断することも可能である。このように、複数の工作機械100、100Aが近接して配置されている場合、1台の工作機械100において端末Tに応じた禁止状態又は許可状態が設定された時には、同時に他の工作機械100Aには同じ端末Tに応じた禁止状態又は許可状態を設定しないことにより、他の工作機械100Aに別の端末Tに応じた禁止状態又は許可状態を設定することができる。
【0055】
図13(A)及び(B)は、工作機械100の表示部20の表示内容の一例を示す図である。表示制御部44(
図1参照)は、禁止状態又は許可状態が設定された端末Tに関する情報、及び設定された禁止状態又は許可状態に関する情報の一方又は双方を表示部20に表示させることができる。
図13(A)及び(B)に示す例において、表示制御部44は、端末Tが割り当てられた作業者の識別情報21と、禁止状態又は許可状態の対象となる複数の作業内容情報22とを表示部20に表示させることができる。なお、作業内容情報22には、許可状態の対象となる複数の作業内容を表示させ、禁止状態の対象となる複数の作業内容を表示させなくてもよい。
【0056】
工作機械100に禁止状態又は許可状態が付与されていない場合、
図13(A)に示すように、作業者の識別情報21については表示されない。また、作業内容情報22については、各項目が薄く表示されるだけの状態となっている。表示部20が入力部10としてタッチパネル(操作盤11)である場合、各作業内容情報22は、作業者にタッチされることで、工作機械100に関して作業可能な情報を表示する画面に遷移する。作業可能な情報は、例えば、
図2に示す項目の各操作に対応して表示される。
【0057】
また、工作機械100において、端末Tに応じて禁止状態又は許可状態が設定された場合、
図13(B)に示すように、識別情報21には、端末Tが割り当てられている作業者M1等の情報(例えば社員番号など)が表示される。また、その端末Tに応じた禁止状態又は許可状態の対象となる作業内容に基づいて、許可状態に設定された作業内容情報22が、
図13(A)の表示に比べて濃く表示される。この結果、作業者等が表示部20を見ることにより、設定された禁止状態又は許可状態に関する情報を容易に確認することができる。なお、
図13に示す内容は、表示部20に表示する一例であって、この表示に限定されない。例えば、禁止状態又は許可状態が設定されたタイミングで、許可状態に設定された作業の一覧が表示部20に表示される形態であってもよい。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る工作機械システムSYSによれば、工作機械100に対して作業を行う際、作業者Mが所有する端末Tと、工作機械100の所定位置との距離に基づいて、その端末Tに応じた禁止状態又は許可状態が自動的に設定される。このため、作業者が操作盤11等にパスワードを入力する手間を省くことができ、作業者の負担を軽減することができる。また、作業者による操作盤11等の入力が不要であるので、入力ミス等がなく、工作機械100に対する作業可能な状態を正確かつ容易に行うことができる。
【0059】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、工作機械100ごとに禁止状態又は許可状態が設定され、同じ作業者であっても工作機械100ごとに異なる禁止状態又は許可状態が設定される形態であってもよい。
【0060】
また、上記した実施形態において、工作機械100の所定位置が操作盤11の位置又はメンテナンス作業位置MP1、MP2である場合を例に挙げて説明したが、この形態に限定されない。工作機械100の所定位置は、他の位置であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
L1、L2、L3・・・距離
T、T1、T2、T3・・・端末
AR・・・通信エリア
AR2・・・所定範囲
DT・・・データテーブル
MP1、MP2・・・メンテナンス作業位置(所定位置)
CONT・・・制御部
SYS・・・工作機械システム
10・・・入力部
11・・・操作盤(所定位置)
20・・・表示部
21・・・識別情報
22・・・操作内容情報
30・・・記憶部
40・・・処理部
41・・・選択部
42・・・判定部
43・・・設定部
44・・・表示制御部
50・・・通信部
80・・・操作部
100・・・工作機械