(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】光半導体素子
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
G02B6/12 351
(21)【出願番号】P 2019093396
(22)【出願日】2019-05-17
【審査請求日】2022-02-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100189201
【氏名又は名称】横田 功
(72)【発明者】
【氏名】下山 峰史
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-056347(JP,A)
【文献】特開2017-011020(JP,A)
【文献】特開2014-220267(JP,A)
【文献】国際公開第2012/160980(WO,A1)
【文献】特開2018-046258(JP,A)
【文献】特開平05-297421(JP,A)
【文献】特表2008-529058(JP,A)
【文献】米国特許第06167172(US,A)
【文献】国際公開第2009/153930(WO,A1)
【文献】特開2016-111108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路と、
前記光導波路に接続された光吸収領域と、
前記光吸収領域を挟んで両側に設けられた第1導電型領域及び第2導電型領域と、
前記第1導電型領域と前記第2導電型領域が短絡されるように、前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域に接続された導体とを備え
、
前記光吸収領域と、前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域と、前記導体とによって、光終端器が構成されることを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
前記光導波路は、前記光吸収領域の入力側端面にのみ接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記光導波路から前記光吸収領域に光がエバネッセント結合によって伝搬することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記導体は、少なくとも前記第1導電型領域に接続された部分と前記第2導電型領域に接続された部分が同電位になっており、前記光吸収領域に電界が印加されることを特徴とする、請求項1に記載の光半導体素
子。
【請求項5】
前記導体は、金属であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記第1導電型領域は、p型不純物がドーピングされたp型半導体領域であり、
前記光吸収領域は、非導電性の真性半導体領域であり、
前記第2導電型領域は、n型不純物がドーピングされたn型半導体領域であり、
PINダイオード構造になっていることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記光導波路は、使用する光の光子エネルギーよりもバンドギャップが大きい第1半導体層によって構成され、
前記光吸収領域は、使用する光の光子エネルギーよりもバンドギャップが小さい第2半導体層によって構成されることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項8】
前記光吸収領域は、前記第2半導体層の真性半導体領域によって構成され、
前記第1導電型領域は、前記第1半導体層のp型不純物がドーピングされたp型半導体領域によって構成され、
前記第2導電型領域は、前記第1半導体層のn型不純物がドーピングされたn型半導体領域によって構成されることを特徴とする、請求項
7に記載の光半導体素子。
【請求項9】
前記光吸収領域は、前記第2半導体層の真性半導体領域によって構成され、
前記第1導電型領域は、前記第2半導体層のp型不純物がドーピングされたp型半導体領域によって構成され、
前記第2導電型領域は、前記第2半導体層のn型不純物がドーピングされたn型半導体領域によって構成されることを特徴とする、請求項
7に記載の光半導体素子。
【請求項10】
前記光吸収領域は、前記第2半導体層の真性半導体領域によって構成され、
前記第1導電型領域は、前記第1半導体層のp型不純物がドーピングされたp型半導体領域によって構成され、
前記第2導電型領域は、前記第2半導体層のn型不純物がドーピングされたn型半導体領域によって構成されることを特徴とする、請求項
7に記載の光半導体素子。
【請求項11】
前記p型半導体領域は、前記導体に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域を含むことを特徴とする、請求項
8~
10のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項12】
前記n型半導体領域は、前記導体に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域を含むことを特徴とする、請求項1
1に記載の光半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば光集積回路などに用いられる光半導体素子に光終端器を設ける場合がある。
従来、光終端器としては、導波路端を光軸に対して傾斜させて、反射戻り光が導波路へ再結合することを防ぐ構造がある(例えば
図69、
図70参照)。
また、導波路端に光吸収領域を設け、光吸収によって反射を防ぐ構造もある(例えば
図71、
図72参照)。
【0003】
さらに、光吸収領域を備える受光器を光終端器として用いる構造もある(例えば
図73、
図74参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-200091号公報
【文献】特開2013-228466号公報
【文献】特開2007-139888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば
図69、
図70に示すような斜め端面を用いる構造では、完全に反射戻り光を防ぐことができず、光終端器としての性能は甚だ不十分である。
また、例えば
図71、
図72に示すような光吸収領域を用いる構造では、光吸収によって発生した電子・正孔対は電界等によってドリフトすることなく局所に留まり続けるため、比較的容易に吸収飽和を起こしてしまう。
【0006】
このため、光強度が増加した場合に十分に光が吸収し切れずに残存した光が反射し、光終端器としての特性を損なってしまう。
この場合、飽和が起こる光強度を上げる手段として、PINダイオード構造を利用することが考えられる。
しかしながら、この場合も、光起電力効果によってP型半導体領域とN型半導体領域の間に電位差が発生し、空乏層の電界強度を低下させるため、やはり光強度の増加と共に吸収飽和が発生することが避けられない。
【0007】
さらに、外部から電界を印加することで光吸収によって発生した電子・正孔対を分離させるために、例えば
図73、
図74に示すような受光器を光終端器として用いる構造を採用することも考えられる。
しかしながら、この場合、外部電源が必要であり、例えば外部電源を設置するコストや外部電源から電力を供給するコストが必要となるため、好ましくない。
【0008】
本発明は、外部電源を用いることなく、光強度が増加しても吸収飽和が生じにくくし、反射戻り光を確実に抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、光半導体素子は、光導波路と、光導波路に接続された光吸収領域と、光吸収領域を挟んで両側に設けられた第1導電型領域及び第2導電型領域と、第1導電型領域と第2導電型領域が短絡されるように、第1導電型領域及び第2導電型領域に接続された導体とを備え、光吸収領域と、第1導電型領域及び第2導電型領域と、導体とによって、光終端器が構成される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面として、外部電源を用いることなく、光強度が増加しても吸収飽和が生じにくくし、反射戻り光を確実に抑制できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態にかかる光半導体素子におけるエネルギーバンド図である。
【
図2】従来構造におけるエネルギーバンド図である。
【
図3】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の一例の構成を示す断面図である。
【
図4】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の一例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図5】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す断面図である。
【
図6】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図7】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す断面図である。
【
図8】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図9】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す断面図である。
【
図10】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図11】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す断面図である。
【
図12】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図13】本実施形態にかかる光半導体素子の第1構造(第1半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の一の例及び他の例におけるエネルギーバンド図であって、
図3、
図5、
図7、
図9、
図11中、X-X′線に沿った経路におけるエネルギーバンド図である。
【
図14】本実施形態にかかる光半導体素子の第2構造(第2半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の一例の構成を示す断面図である。
【
図15】本実施形態にかかる光半導体素子の第2構造(第2半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の一例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図16】本実施形態にかかる光半導体素子の第2構造(第2半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す断面図である。
【
図17】本実施形態にかかる光半導体素子の第2構造(第2半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図18】本実施形態にかかる光半導体素子の第2構造(第2半導体層に両極性の導電性領域を設ける場合)の一の例及び他の例におけるエネルギーバンド図であって、
図14、
図16中、X-X′線に沿った経路におけるエネルギーバンド図である。
【
図19】本実施形態にかかる光半導体素子の第3構造(第1及び第2半導体層の各々に別極性の導電性領域を設ける場合)の一例の構成を示す断面図である。
【
図20】本実施形態にかかる光半導体素子の第3構造(第1及び第2半導体層の各々に別極性の導電性領域を設ける場合)の一例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図21】本実施形態にかかる光半導体素子の第3構造(第1及び第2半導体層の各々に別極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す断面図である。
【
図22】本実施形態にかかる光半導体素子の第3構造(第1及び第2半導体層の各々に別極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図23】本実施形態にかかる光半導体素子の第3構造(第1及び第2半導体層の各々に別極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す断面図である。
【
図24】本実施形態にかかる光半導体素子の第3構造(第1及び第2半導体層の各々に別極性の導電性領域を設ける場合)の他の例の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図25】本実施形態にかかる光半導体素子の第3構造(第1及び第2半導体層の各々に別極性の導電性領域を設ける場合)の一の例及び他の例におけるエネルギーバンド図であって、
図19、
図21、
図23中、X-X′線に沿った経路におけるエネルギーバンド図である。
【
図26】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための断面図である。
【
図27】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図28】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図29】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図30】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図31】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図32】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図33】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図34】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図35】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図36】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図37】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図38】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図39】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な一の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図40】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための断面図である。
【
図41】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図42】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図43】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図44】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図45】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図46】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図47】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図48】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図49】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図50】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図51】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図52】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図53】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図54】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための断面図である。
【
図55】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図56】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図57】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図58】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図59】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図60】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図61】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図62】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図63】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図64】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図65】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図66】本実施形態にかかる光半導体素子の具体的な他の構成例を説明するための平面図(上面図)である。
【
図67】従来の光終端構造であって端面が導波方向に垂直な場合の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図68】従来の光終端構造であって端面が導波方向に垂直な場合の構成を示す斜視図である。
【
図69】従来の光終端構造であって端面を導波方向に対して傾けた場合の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図70】従来の光終端構造であって端面を導波方向に対して傾けた場合の構成を示す斜視図である。
【
図71】従来の光終端構造であって光吸収領域を設けた場合の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図72】従来の光終端構造であって光吸収領域を設けた場合の構成を示す斜視図である。
【
図73】従来の光終端構造であって受光器を設けた場合の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図74】従来の光終端構造であって受光器を設けた場合の構成を示す断面図であって、
図73のA-A′線に沿う断面図である。
【
図75】従来構造におけるビルトインの状態のエネルギーバンド図及び光入力下の状態のエネルギーバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光半導体素子について、
図1~
図75を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる光半導体素子は、例えば集積光回路内で用いられる光終端器(ターミネータ)に利用される。
本光半導体素子は、
図3~
図12、
図14~
図17、
図19~
図24に示すように、光導波路1と、光導波路1に接続された光吸収領域2と、光吸収領域2を挟んで両側に設けられた第1導電型領域3及び第2導電型領域4と、第1導電型領域3と第2導電型領域4が短絡されるように、第1導電型領域3及び第2導電型領域4に接続された導体5とを備える。なお、導電型領域を導電性領域ともいう。
【0013】
ここでは、導体5は、少なくとも第1導電型領域3に接続された部分と第2導電型領域4に接続された部分が同電位になっており、光吸収領域2に電界が印加されるようになっている。
つまり、導体5は、第1導電型領域3及び第2導電型領域4のそれぞれにオーミック接合されており、導体5の第1導電型領域3に接続された部分と第2導電型領域4に接続された部分とが同電位になっており(即ち、第1導電型領域3と第2導電型領域4とが同電位になっており)、光吸収領域2に電界が印加されるようになっている。
【0014】
また、光吸収領域2と、第1導電型領域3及び第2導電型領域4と、導体5とによって、光終端器6が構成されることが好ましい。
ここで、導体5は、第1導電型領域3から第2導電型領域4まで延びる一体型の導体であることが好ましい。
なお、導体5は、一つでなく、複数であっても良い。例えば、導体5は、第1導電型領域3に接続された第1導体と、第2導電型領域4に接続された第2導体と、これらの第1導体と第2導体を接続する第3導体とからなるものとしても良い。つまり、複数の導体を用い、これらが直接接合されるようにしても良い。
【0015】
また、例えば、第1導電型領域3から第2導電型領域4まで延びる一体型の導体を複数個所に設けても良い。
また、導体5は第1導電型領域3及び第2導電型領域4に接続されていれば良く、導体5がこれらの領域3、4に接する箇所は最低2箇所必要であるが、3箇所以上であっても良い(例えば
図7、
図8、
図21、
図22参照)。
【0016】
また、導体5は、金属(例えば金属膜)であることが好ましい。
本実施形態では、第1導電型領域3は、p型不純物がドーピングされたp型半導体領域であり、光吸収領域2は、非導電性の真性半導体領域であり、第2導電型領域4は、n型不純物がドーピングされたn型半導体領域であり、PINダイオード構造になっている。
また、本実施形態では、光導波路1は、使用する光の光子エネルギーよりもバンドギャップが大きい第1半導体層1X(例えばSi層)によって構成され、光吸収領域2は、使用する光の光子エネルギーよりもバンドギャップが小さい第2半導体層2X(例えばGe層)によって構成される。
【0017】
そして、本実施形態では、
図3~
図12に示すように、光吸収領域2は、第2半導体層2Xの真性半導体領域(例えばi-Ge)2Aによって構成され、第1導電型領域3は、第1半導体層1Xのp型不純物がドーピングされたp型半導体領域(例えばp-Si)3Aによって構成され、第2導電型領域4は、第1半導体層1Xのn型不純物がドーピングされたn型半導体領域(例えばn-Si)4Aによって構成される。なお、これを第1構造という。
【0018】
ここでは、この構造は、Si基板(半導体基板)7上に設けられており、SiO
2層(絶縁層)8で覆われている。
この場合、第2半導体層2Xの空乏層領域がp/n極性領域間に電気的に挟まれて、空乏層で発生した電子・正孔対が分離してそれぞれの極性領域に伝播できる経路を持つようになる。そして、このような経路に沿ったエネルギーバンド図は、
図13に示すようになる。
【0019】
ここで、第2半導体層2Xの真性半導体領域2Aは、第2半導体層2Xの少なくとも一部の領域であって、不純物濃度が小さい領域である。
また、第1半導体層1Xに、正負極性の異なる導電性の領域3A、4A(第1導電型領域3及び第2導電型領域4)が設けられ、電気的にこれらの導電性領域3A、4Aに挟まれた(両極性領域の間に直列に接続された)形の非導電性領域(非導電性の真性半導体領域2A)が第2半導体層2Xに設けられて、PINダイオード構造(pin型ダイオードの層構造)になっている。
【0020】
ここでは、極性の異なる導電性領域3A、4Aは第1半導体層1Xのみに設けられており、第2半導体層2Xの全体が非極性領域(非導電性領域)2Aになっている。
そして、上述のような構成を採用し、PIN構造のP/N両極性領域3A、4A(3、4)を導体5で短絡することによって、
図1に示すように、P/N両極性領域間の電位差の発生を防ぐことができる。
【0021】
つまり、上述のような構成を採用することで、光吸収領域2である空乏層で発生した電子・正孔対は短絡された導体5に運ばれ、導体5内で対消滅する。
これにより、光起電力効果による電界強度の低下は抑制され、光強度が増したとしても電子・正孔対は空間的に分離され続ける。この結果、バンド間遷移が起こり得る空の準位が供給され続けて吸収係数の低下が起こりにくくなり、光強度の大きな状態においても、光終端器6としての特性が維持されることになる。
【0022】
また、外部から電力を供給することなく、光吸収領域2に電界を印加することができるため、光吸収領域2で発生したフォトキャリアはドリフトによって両極性領域3A、4A(3、4)へと速やかに運ばれ、キャリアの局所的な溜まりこみを生じない。このため、吸収飽和が生じにくく、反射戻り光をほぼ完全に抑制することが可能となる。
このように、導体5が同電位となるように短絡されているため、外部から導体5間(第1導電型領域3と第2導電型領域4の間)の電位差を制御する機構を設けずに、光吸収領域2としての第2半導体層2Xの真性半導体領域2Aに電界が印加されるようにすることができ、第1半導体層1Xから入射される光が第2半導体層2Xに導かれ、光終端器6として用いることができる。
【0023】
なお、第1導電型領域3及び第2導電型領域4は、例えば
図3、
図4、
図9~
図12に示すように、光吸収領域2を挟んで水平方向の両側に設けられていても良いし、例えば
図5~
図8に示すように、光吸収領域2を挟んで垂直方向の両側に設けられていても良い。
また、例えば
図9、
図10に示すように、p型半導体領域3Aは、導体5に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域3AXを含み、n型半導体領域4は、導体5に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域4AXを含むものとするのが好ましい。
【0024】
この場合、これらの高不純物濃度領域3AX、4AXに導体5が接続されることになる。例えば、これらの高不純物濃度領域3AX、4AXが接続されるように、これらの高不純物濃度領域3AX、4AX上に導体5(例えば金属膜)を設けるのが好ましい。
このように、各極性の導電性領域3A、4Aは、複数の異なる不純物濃度を有する領域から成っていても良く、望ましくは導体5と接する領域で特に不純物濃度が高くなり、導体5との界面のオーミック接合における抵抗(コンタクト抵抗)が低くなるように形成するのが好ましい。
【0025】
また、例えば
図3~
図10に示すように、第2半導体層2Xは、第1半導体層1X上に設けられていても良いし、例えば
図11、
図12に示すように、第1半導体層1Xは、リセス1Yを備え、第2半導体層2Xは、リセス1Yに設けられていても良い。
そして、第1半導体層1Xは、リセス1Yを備え、第2半導体層2Xは、リセス1Yに設けられている場合、第2半導体層2Xが設けられる領域の第1半導体層1X(光導波路1)の厚さは、その他の領域の第1半導体層1Xの厚さに比べて薄くなる。
【0026】
このように、第1半導体層1Xと第2半導体層2Xの物理的な位置関係としては、光導波路1として作用する第1半導体層1Xに装荷される形で第2半導体層2Xを設け、光がエバネッセント結合によって伝播する形態をとっても良いし(例えば
図3~
図10参照)、第1半導体層1Xの一部にリセス(窪み)1Yを形成し、第2半導体層2Xをリセス1Y内に設けて、光がバット結合によって入射される形態をとっても良い(例えば
図11、
図12参照)。
【0027】
ところで、半導体の層構造や導体の接合構造等については、上述の構成に限られるものではなく、例えば
図14~
図17に示すように、光吸収領域2は、第2半導体層2Xの真性半導体領域(例えばi-Ge)2Aによって構成され、第1導電型領域3は、第2半導体層2Xのp型不純物がドーピングされたp型半導体領域(例えばp-Ge)2Bによって構成され、第2導電型領域4は、第2半導体層2Xのn型不純物がドーピングされたn型半導体領域(例えばn-Ge)2Cによって構成されるようにしても良い。なお、これを第2構造という。
【0028】
この場合も、第2半導体層2Xの空乏層領域がp/n極性領域間に電気的に挟まれて、空乏層で発生した電子・正孔対が分離してそれぞれの極性領域に伝播できる経路を持つようになる。そして、このような経路に沿ったエネルギーバンド図は、
図18に示すようになる。
また、第2半導体層2Xに、正負極性の異なる導電性の領域2B、2C(第1導電型領域3及び第2導電型領域4)が設けられ、電気的にこれらの導電性領域2B、2Cに挟まれた(両極性領域の間に直列に接続された)形の非導電性領域(非導電性の真性半導体領域2A)が第2半導体層2Xに設けられて、PINダイオード構造(pin型ダイオードの層構造)になる。
【0029】
ここでは、極性の異なる導電性領域2B、2C、及び、非極性領域(非導電性領域)2Aが、すべて第2半導体層2Xに設けられている。
また、第1導電型領域3及び第2導電型領域4は、例えば
図14~
図17に示すように、光吸収領域2を挟んで水平方向の両側に設けられている。
この場合も、導体5は、第1導電型領域3及び第2導電型領域4のそれぞれにオーミック接合され、導体5の第1導電型領域3に接続された部分と第2導電型領域4に接続された部分とが同電位になり(即ち、第1導電型領域3と第2導電型領域4とが同電位になり)、光吸収領域2に電界が印加されるようになっている。そして、上述の第1構造の場合と同様の作用、効果が得られる。
【0030】
なお、例えば
図16、
図17に示すように、p型半導体領域2Bは、導体5に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域2BXを含み、n型半導体領域2Cは、導体5に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域2CXを含むものとするのが好ましい。
この場合、これらの高不純物濃度領域2BX、2CXに導体5が接続されることになる。例えば、これらの高不純物濃度領域2BX、2CXが接続されるように、これらの高不純物濃度領域2BX、2CX上に導体5(例えば金属膜)を設けるのが好ましい。
【0031】
このように、各極性の導電性領域2B、2Cは、複数の異なる不純物濃度を有する領域から成っていても良く、望ましくは導体5と接する領域で特に不純物濃度が高くなり、導体5との界面のオーミック接合における抵抗(コンタクト抵抗)が低くなるように形成するのが好ましい。
また、ここでは、例えば
図14~
図17に示すように、第2半導体層2Xは、第1半導体層1X上に設けられており、光導波路1として作用する第1半導体層1Xに装荷される形で第2半導体層2Xが設けられており、光がエバネッセント結合によって伝播する形態となっているが、第1半導体層にリセスを形成して第2半導体層に光がバット結合によって入射される形態をとっても良い。
【0032】
ところで、例えば
図19~
図24に示すように、光吸収領域2は、第2半導体層2Xの真性半導体領域(例えばi-Ge)2Aによって構成され、第1導電型領域3は、第1半導体層1Xのp型不純物がドーピングされたp型半導体領域(例えばp-Si)3Aによって構成され、第2導電型領域4は、第2半導体層2Xのn型不純物がドーピングされたn型半導体領域(例えばn-Ge)2Cによって構成されるようにしても良い。なお、これを第3構造という。
【0033】
この場合も、第2半導体層2Xの空乏層領域がp/n極性領域間に電気的に挟まれて、空乏層で発生した電子・正孔対が分離してそれぞれの極性領域に伝播できる経路を持つようになる。そして、このような経路に沿ったエネルギーバンド図は、
図25に示すようになる。
また、第1半導体層1X及び第2半導体層2Xに、正負極性の異なる導電性の領域3A、2C(第1導電型領域3及び第2導電型領域4)が設けられ、電気的にこれらの導電性領域3A、2Cに挟まれた(両極性領域の間に直列に接続された)形の非導電性領域(非導電性の真性半導体領域2A)が第2半導体層2Xに設けられて、PINダイオード構造(pin型ダイオードの層構造)になる。
【0034】
ここでは、極性の異なる導電性領域3A、2Cは第1半導体層1X及び第2半導体層2Xのそれぞれに設けられており、第2半導体層2Xに非極性領域(非導電性領域)2Aが設けられている。
また、第1導電型領域3及び第2導電型領域4は、例えば
図19~
図24に示すように、光吸収領域2を挟んで垂直方向の両側に設けられていても良い。
【0035】
この場合も、導体5は、第1導電型領域3及び第2導電型領域4のそれぞれにオーミック接合され、導体5の第1導電型領域3に接続された部分と第2導電型領域4に接続された部分とが同電位になり(即ち、第1導電型領域3と第2導電型領域4とが同電位になり)、光吸収領域2に電界が印加されるようになっている。そして、上述の第1構造の場合と同様の作用、効果が得られる。
【0036】
また、導体5は第1導電型領域3及び第2導電型領域4に接続されていれば良く、導体5がこれらの領域に接する箇所は最低2箇所必要であるが、3箇所以上であっても良い(例えば
図21参照)。
なお、例えば
図23、
図24に示すように、p型半導体領域3Aは、導体5に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域3AXを含むものとするのが好ましい。
【0037】
この場合、これらの高不純物濃度領域3AXに導体5が接続されることになる。例えば、これらの高不純物濃度領域3AXが接続されるように、これらの高不純物濃度領域3AX上に導体5(例えば金属膜)を設けるのが好ましい。
このように、各極性の導電性領域3Aは、複数の異なる不純物濃度を有する領域から成っていても良く、望ましくは導体5と接する領域で特に不純物濃度が高くなり、導体5との界面のオーミック接合における抵抗(コンタクト抵抗)が低くなるように形成するのが好ましい。
【0038】
また、ここでは、例えば
図19~
図24に示すように、第2半導体層2Xは、第1半導体層1X上に設けられており、光導波路1として作用する第1半導体層1Xに装荷される形で第2半導体層2Xを設けられており、光がエバネッセント結合によって伝播する形態をとっているが、第1半導体層にリセスを形成して第2半導体層に光がバット結合によって入射される形態をとっても良い。
【0039】
ところで、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)では、Si-Photonicsの分野で一般的に用いられる半導体材料であるSiを第1半導体層1X、Geを第2半導体層2Xとして用いた場合を例に挙げて示しているが、材料はこれに限られるものではなく、第1半導体層1Xは、所望の光に対して比較的透明であって光導波路1として用いるのに適していて、第2半導体層2Xは、バンドギャップが小さく所望の光をバンド間遷移により吸収できる材料という組み合わせであれば良い。
【0040】
例えば、第1半導体層1Xは、Siからなり、第2半導体層2Xは、Si(x)Ge(1-x)(0≦x<1)からなるものとすれば良い。
また、例えば、第1半導体層1Xは、Siからなり、第2半導体層2Xは、Ge(1-x)Sn(x)(0≦x<1)からなるものとしても良い。
また、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)では、光導波路1は、光吸収領域2への光入射領域に導波路幅が変化するテーパ構造1Zを備える。ここでは、第1半導体層1Xで構成された光導波路1が、第2半導体層2Xで構成されるメサ近傍において導波路幅が変化するテーパ構造1Zを有する。
【0041】
ところで、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)のような構成を採用しているのは、以下の理由による。
小型、低電力で大容量な光送受信器を実現するために、電子回路との親和性が高いSi基板上に光部品を構成するSi-Photonicsと呼ばれる分野の研究・開発が活発になっている。
【0042】
Si-Photonicsの大きな利点は、CMOS製造に用いられる高精細プロセス技術を生かして、多数の要素デバイスから構成される大規模な光集積回路を容易に製造できる点にある。
このような光集積回路内、例えばデータセンター向けトランシーバ用光回路内には、発光素子(レーザ)、分岐された光路間の干渉を利用した光変調器、光強度制御を目的として光導波路から一部光を分岐して光強度をモニタする受光器など、外部に対する光入出力機構などが集積され、これらの部品間が多数の光分岐で接続されている。
【0043】
そして、分岐された光路の一部は、要素デバイスへと導かれることなく終端する必要が生じる場合がある。
例えば、以下のような場合である。
集積型光送信機において、通常は集積回路外へ送信する光信号を内部に戻して自己診断を行なう内部ループバックと呼ばれる機能がある。
【0044】
回路外に送信する場合には光ファイバ等への結合損によって光強度が劣化するが、内部ループバックの際に同じ条件を模すために一部の光を分岐させて捨てる必要があり、このような場合に光終端器が使用される。
集積回路内のレーザは反射戻り光によって不安定化し易いため、光終端器には極限まで光反射を抑制する性能が要求される。
【0045】
ところで、光終端器の従来技術としては、導波路端を光軸に対して傾斜させて、反射戻り光が導波路へ再結合することを防ぐ方法がある(例えば
図69、
図70参照)。
導波路端が光の導波方向に対して垂直に途切れる場合(例えば
図67、
図68参照)に比べ、端面での反射光が導波方向に対して角度を持つため、再結合しにくくなり、簡便に形成できる光終端器として用いられる。
【0046】
また、導波路端に光吸収領域を接続し、光吸収によって反射を防ぐ方法もある(例えば
図71、
図72参照)。
さらに、これを発展させ、光吸収領域を受光器に加工して光終端器として用いる方法もある(例えば
図73、
図74参照)。
なお、
図73、
図74では、一般的な受光器の例としてPIN型半導体に逆バイアスを印加する構造を示している。
【0047】
しかしながら、上述の
図69、
図70に示したような斜め端面を用いる構造は簡便に形成できる利点はあるが、この単純な構造では完全に戻り光を防げるわけではない。例えば数%程度の反射発生を防ぐことはできず、このため、光源の安定性を損ねるため、光終端器としての性能は甚だ不十分である。
また、
図71、
図72に示したような光吸収領域を用いる構造では、光吸収機構として半導体のバンド間遷移を用いる場合、光吸収係数は始状態の満たされた電子の(価電子帯の)状態密度と終状態の空の電子の(伝導帯の)状態密度に比例する。
【0048】
電界が印加されない半導体材料においては、光吸収によって発生した電子・正孔対は電界等によってドリフトすることなく局所に留まり続けるため、価電子帯の正孔が増加(即ち、満たされた電子が減少)し、伝導帯の電子が増加(即ち、空の電子が減少)した状態が引き起こされ、吸収係数が低下する。つまり、比較的容易に吸収飽和を起こしてしまう。
【0049】
このため、光強度が増加した場合に十分に光が吸収し切れずに残存した光が反射し、光終端器としての特性を損なってしまう。
このような吸収飽和の発生を完全に防ぐことはできないが、飽和が起こる光強度を上げる手段として、PINダイオード構造を利用する方法がある。
PINダイオード構造では、多数キャリアの拡散によってビルトインポテンシャルが発生し、空乏層に電界が印加されるため、光吸収によって発生した電子・正孔対が空間的に分離される。このため、上述の吸収係数の低下が起こりにくくなる(例えば
図75の左側のビルトインの状態参照)。
【0050】
しかしながら、このような構造でも、光起電力効果によってP/N両極性領域間に電位差が発生し、空乏層の電界強度を低下させるため、やはり光強度の増加と共に吸収飽和が発生することが避けられない(例えば
図75の右側の光入力下の状態参照)。
さらに、飽和光強度を増加して実用上問題のない機能を持たせるには、外部から電界を印加することで、光吸収によって発生した電子・正孔対を分離させることが有効であり、その手段として、
図73、
図74に示したような受光器構造を光終端器として用いることができる。
【0051】
ただし、この場合には、外部電源が必要であり、外部電源を設置するコスト、外部電源から電力を供給するコストが必要となる。
例えば、データセンター向けトランシーバを初めとした送受信機には低コスト性や低消費電力特性が要求されるため、光終端器のために余計な電気回路を構成する費用や、光終端器のために余計な電力消費が発生することは避けなければならない。
【0052】
なお、光吸収機構としては、上述の半導体バンド間遷移の他にも色々と考えられる。
ただし、Si-Photonicsの利点であるCMOS製造プロセスとの親和性を生かすには、材料としては半導体を用いることが望ましい。
半導体内の光吸収機構としては、バンド間遷移の他に、a)バンド-不純物準位間遷移、b)不純物準位間遷移、c)励起子吸収、d)自由キャリア吸収などがある。
【0053】
しかし、a)、b)、c)は、いずれも吸収波長帯が狭く特定の波長の光にしか適用できないことに加え、バンド間吸収に比べて更に吸収飽和を起こし易いため、光終端器として用いるのは不適当である。
また、d)についても、一般的にバンド間吸収に比べて吸収係数がかなり小さく、十分な光吸収を起こすには大面積を必要とするため、小型化が要求される集積素子内の部品としては不適当である。
【0054】
そこで、外部電源を用いることなく(即ち、外部から電力を供給することなく)、光強度が増加しても吸収飽和が生じにくくし、反射戻り光を確実に抑制できるようにすべく、上述の実施形態及び変形例のような構成を採用している。
そして、上述の実施形態及び変形例のような構成を採用することで、以下のような作用、効果が得られる。
【0055】
上述のように、従来構造のうち、外部電界を印加しない状態で半導体のバンド間遷移を利用した場合、容易に吸収飽和が発生するということが課題である。
単に光吸収領域を設けるだけの構造に比べて飽和し難いPINダイオード構造であっても、光起電力によって空乏層の電界強度が低下して吸収飽和が比較的低い強度で発生してしまう(例えば
図2参照)。
【0056】
これに対し、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)のような構成を採用し、PIN構造のP/N両極性領域を導体で短絡することによって、P/N両極性領域間の電位差の発生を防ぐことができる(例えば
図1参照)。
つまり、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)のような構成を採用することで、光吸収領域2である空乏層で発生した電子・正孔対は短絡された導体に運ばれ、導体5内で対消滅する。
【0057】
これにより、光起電力効果による電界強度の低下は抑制され、光強度が増したとしても電子・正孔対は空間的に分離され続ける。
この結果、バンド間遷移が起こり得る空の準位が供給され続けて吸収係数の低下が起こりにくくなり、光強度の大きな状態においても、光終端器6としての特性が維持されることになる。
【0058】
また、外部から電力を供給することなく、光吸収領域2に電界を印加することができるため、光吸収領域2で発生したフォトキャリアはドリフトによって両極性領域3、4へと速やかに運ばれ、キャリアの局所的な溜まりこみを生じない。このため、吸収飽和が生じにくく、反射戻り光をほぼ完全に抑制することが可能となる。
また、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)のような構成では、空乏層の電界強度を維持するために外部の電源を必要としない。
【0059】
このため、光終端器6の機能に対して余分な電子回路を必要とせず、製造コストの面で有利である。また、電力供給が必要でないため、消費電力の観点からも優れている。
特に、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)のものは、光集積素子内の光終端を実現するものであり、集積素子内の光導波路1に接続する形態を前提としている。
【0060】
このため、光導波路1となる第1半導体層1Xと、バンド間遷移によって光を吸収する第2半導体層2Xとから構成される。
ここで、第1半導体層1Xを構成する第1半導体は光を透過し、第2半導体層2Xを構成する第2半導体は光を吸収する性質を持つことが重要であり、第1半導体層1Xのバンドギャップは使用する波長の光子エネルギーよりも大きく、第2半導体層2Xのバンドギャップは使用する波長の光子エネルギーよりも小さいことが望ましい。
【0061】
この場合、第1半導体層1Xから第2半導体層2Xへと光が導入されるように構成される。
また、上述の実施形態(具体的には第1構造、第2構造、第3構造;例えば
図3~
図25参照)では、PINダイオード型の構造を有する。
この場合、第2半導体層2Xの光吸収領域2にはi型領域2A(真性半導体領域;非導電性領域;空乏領域)が含まれるようにする。
【0062】
そして、p型領域(p型半導体領域;第1導電型領域)及びn型領域(n型半導体領域;第2導電型領域)の配置にはいくつか考えられ、p/n両極性とも第1半導体層1Xに設けても良いし(例えば
図3~
図12参照)、両極性とも第2半導体層2Xに設けても良いし(例えば
図14~
図17参照)、各極性が第1、第2半導体層1X、2Xに別個に設けられても良い(例えば
図19~
図24参照)。
【0063】
いずれの場合も、第2半導体層2Xの空乏層領域がp/n極性領域間に電気的に挟まれて、空乏層で発生した電子・正孔対が分離してそれぞれの極性領域に伝播できる経路を持つように設ければ良い。
ここで、
図13、
図18、
図25は、このような経路に沿ったエネルギーバンド図をそれぞれの場合に対して示している。
【0064】
また、例えば
図9、
図10、
図16、
図17、
図23、
図24に示すように、p/n極性の導電性領域は、複数の異なる不純物濃度を有する領域から成っていても良く、望ましくは導体5と接する領域で特に不純物濃度が高くなるように形成され、導体5との界面のオーミック接合における抵抗(コンタクト抵抗)が低くなるようにするのが望ましい。
特に、例えば
図9、
図10、
図23、
図24に示すように、第1半導体層1Xと第2半導体層2Xの界面が導電性領域(不純物半導体領域)の場合に、不純物濃度が高すぎると結晶欠陥が増加して信頼性等の観点で好ましくない場合があるため、導体5との界面のみ不純物濃度を高くすることが望ましい場合がある。
【0065】
また、例えば
図3~
図10、
図14~
図17、
図19~
図24に示すように、第1半導体層1Xに第2半導体層2Xが装荷された構造をとっても良いし、例えば
図11、
図12に示すように、第1半導体層1Xに窪み(リセス)1Yを設けて、その窪み1Yに第2半導体層2Xを埋め込む構造をとっても良い。
前者は、第1半導体層1Xで形成される光導波路1からの入射光がエバネッセント光結合によって徐々に第2半導体層2Xへと伝播して吸収される構造である。後者は、バット結合によって、直接、第2半導体層2Xへ光が結合する構造であり、より短い構造で光を吸収可能であるという利点を持つ。
【0066】
以下、
図26~
図66を参照しながら、具体的な構成例について説明する。
ここでは、データセンター向けトランシーバ用途に用いるSi基板上光集積回路の一部に本発明の構造を適用する場合を例に挙げて説明する。
まず、一の構成例について、
図26~
図39を参照しながら説明する。
ここでは、
図9、
図10に示すような構造(第1構造)の光半導体素子を作製する場合を例に挙げて説明する。
【0067】
例えば、
図26に示すように、Si基板7上にSiO
2層(BOX層と呼ばれる)8Xが形成され、さらにその上部に薄いSi層1Xが形成されたSOI(Si on Insulator)基板9が用いられる。
ここでは、SOI基板9を構成するSi基板7の厚さは例えば約750μm、SiO
2層8Xの厚さは例えば約2μm、上部のSi層(SOI層)1Xの厚さは例えば約250nmである。
【0068】
以降、簡便化のため、一部を除いて、Si基板7は図示を省略して示している。また、光集積回路には、変調器や受光器等で本構造以外にもドーピングなどの工程を必要とする構造もあるが、ここでは、そのような工程も省略している。
まず、
図27に示すように、例えばEB(Electron Beam)リソグラフィーとICP(Inductive Coupled Plasma)ドライエッチングによって、上部のSi層(第1半導体層)1Xを加工して、所望の導波路形状(光導波路)を得る。
【0069】
ここでは、
図28の上面図に示すように、入射光をGe吸収層2X(Ge層;第2半導体層;光吸収領域2)へと導くSi導波路1が形成される。つまり、導波モードを広げるSiモード変換部(光入射領域に設けられた導波路幅が変化するテーパ構造1Z)と、その後にGe層2Xで構成されるメサ(Geメサ)を形成してPD構造を設ける幅広のSi台座部1Sとを含むSi導波路1が形成される。
【0070】
次に、
図28に示すように、全面に例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク10を形成した上でイオン注入を行ない、Si台座部1Sの一部にp型の導電性を持たせて、p型領域3A(p型半導体領域;第1導電型領域3)を形成する。
例えば、B(ボロン)イオンを注入し、不純物濃度が約2E18[cm
-3]となるようにする。
【0071】
その後、
図29に示すように、レジストを除去し、再度、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク11を形成して、Si台座部1Sの別の一部にp
+型の導電性を持たせて、p
+型領域3AX(高不純物濃度領域)を形成する。
例えば、Bイオンを注入し、不純物濃度が約1E19[cm
-3]となるようにする。
同様に、レジストマスク形成とイオン注入を繰り返し、
図30に示すように、n型領域4A(n型半導体領域;第2導電型領域4)及びn
+型領域4AX(高不純物濃度領域)を形成する。
【0072】
ここで、n型領域形成時には、例えば、P(燐)イオンを注入し、不純物濃度を約2E18[cm
-3]とし、n
+型領域形成時には、同じくP(燐)イオンを注入し、不純物濃度を1E19[cm
-3]とする。
なお、
図30は、これらの工程後にレジストを除去した状態の上面図である。
その後、
図31に示すように、SiO
2膜8Yを例えばCVD法によって約20nmの厚さで全面に成膜し、注入した不純物を活性化するためのアニールを行なう。
【0073】
例えば、約1000℃の雰囲気に約1分程度置くことでドーパントが活性化される。
次いで、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク12を形成する。
次に、
図32に示すように、このマスク12を用いてドライエッチングによってSiO
2膜8Yをパターン化してGe選択成長用のマスクを形成する。この場合、SiO
2膜8Yで覆われていない部分のみにGe層が成膜される。
【0074】
なお、理解を容易にするためマスクとなるSiO
2膜は半透明で図示している。
次に、
図33に示すように、前工程で用意した基板上に、例えばLP-CVD法によって、Ge層2Xを成長してメサ形状を形成する。
ここで、Ge層厚は約300nmとする。Geメサの寸法は、例えば全長約30μm、全幅約2μmとする。
【0075】
次に、
図34に示すように、例えばCVD法によって全面にSiO
2膜8Zを成膜し、
図35に示すように、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク13を形成し、これを用いてドライエッチングによってSiO
2膜8Zを加工(整形)して、
図36に示すように、Si層1Xに形成されたp
+型領域3AX及びn
+型領域4AX(p/n両極性領域)上にメタルコンタクトを形成する領域だけが露出するようなコンタクトホール14、15を形成する。
【0076】
続いて、
図37に示すように、例えばスパッタリング法によってAl膜5Xを成膜した後、
図38に示すように、例えばフォトリソグラフィーによってAl膜5Xを残す領域のみにレジストマスク16を形成し、
図39に示すように、例えばドライエッチングによってAl膜5Xを加工(整形)して、p/n両極性領域3AX、4AX上のコンタクトホール14、15内及びこれらを繋ぐ形にAl膜5(金属膜;第1導電型領域3と第2導電型領域4が短絡されるように第1導電型領域3から第2導電型領域4まで延びる導体5)を形成する。なお、Al膜をAl電極ともいう。
【0077】
このようにして、
図9、
図10に示すような構造(第1構造)の光半導体素子を作製することができる。
なお、上述の工程中、
図28~
図30の工程において、4回のイオン注入の代わりに、2回のp型及びn型イオン注入のみを行なうように変更し、後は上述と全く同じ工程で、
図3、
図4に示すような構造(第1構造)の光半導体素子を作製することができる。
【0078】
また、上述の工程中、
図32の工程の後、SiO
2膜8Yをマスクとして、SOI層1Xを例えば深さ約100nmだけエッチングしてリセス1Yを形成し、その状態で例えばLP-CVD法によってGe層2Xを成長してリセス1Y内にメサ形状を形成し、後は上述の
図34~
図39と同じ工程を実施することで、
図11、
図12に示すような構造(第1構造)の光半導体素子を作製することができる。
【0079】
次に、他の構成例について、
図40~
図53を参照しながら説明する。
ここでは、
図21、
図22に示すような構造と
図23、
図24に示すような構造とを組み合わせた構造(第3構造)の光半導体素子を作製する場合を例に挙げて説明する。
まず、加工前の基板断面及びSOI層の加工については、
図40、
図41に示すように、上述の一の構成例の場合(
図26、
図27参照)における説明と同様である。
【0080】
次に、
図42に示すように、全面に例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク17を形成した上でイオン注入を行ない、Si台座部1Sの一部にp型の導電性を持たせて、p型領域3A(p型半導体領域;第1導電型領域3)を形成する。
例えば、B(ボロン)イオンを注入し、不純物濃度が約2E18[cm
-3]となるようにする。
【0081】
その後、
図43に示すように、レジストを除去し、再度、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク18を形成して、Si台座部1Sの別の一部にp
+型の導電性を持たせて、p
+型領域3AX(高不純物濃度領域)を形成する。
例えば、Bイオンを注入し、不純物濃度が約1E19[cm
-3]となるようにする。
この工程後にレジストを除去した状態の上面図が
図44である。
【0082】
その後、
図45に示すように、SiO
2膜8Yを例えばCVD法によって約20nmの厚さで全面に成膜し、注入した不純物を活性化するためのアニールを行なう。
例えば、約1000℃の雰囲気に約1分程度置くことでドーパントが活性化される。
次いで、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク19を形成する。
次に、
図46に示すように、このマスク19を用いてドライエッチングによってSiO
2膜8Yをパターン化してGe選択成長用のマスクを形成する。この場合、SiO
2膜8Yで覆われていない部分のみにGe層2Xが成膜される。
【0083】
なお、理解を容易にするためマスクとなるSiO
2膜8Yは半透明で図示している。
次に、
図47に示すように、前工程で用意した基板上に、例えばLP-CVD法によって、Ge層2Xを成長してメサ形状を形成する。
ここで、Ge層厚は約300nmとする。Geメサの寸法は、例えば全長約30μm、全幅約5μmとする。
【0084】
次に、
図48に示すように、例えばCVD法によって全面にSiO
2膜8Zを成膜し、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク(図示せず)を形成した上でイオン注入を行ない、Geメサ2Xの一部にn型の導電性を持たせて、n型領域2C(n型半導体領域;第2導電型領域4)を形成する。
例えば、P(燐)イオンを注入し、不純物濃度が約1E19[cm
-3]となるようにする。
【0085】
その後、フォトレジストを除去し、Geメサに注入した不純物を活性化するアニールを行なう。
例えば、約600℃の雰囲気に約10秒程度置くことでドーパントが活性化される。
次に、
図49に示すように、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク20を形成し、これを用いてドライエッチングによってSiO
2膜8Zを加工(整形)して、
図50に示すように、Si層1Xに形成されたp
+型領域3AX及びGeメサ2Xに形成されたn型領域2C(p/n両極性領域)上にメタルコンタクトを形成する領域だけが露出するようなコンタクトホール21~23を形成する。
【0086】
続いて、
図51に示すように、例えばスパッタリング法によってAl膜5Xを成膜した後、
図52に示すように、例えばフォトリソグラフィーによってAl膜5Xを残す領域のみにレジストマスク24を形成し、
図53に示すように、例えばドライエッチングによってAl膜5Xを加工(整形)して、p/n両極性領域3AX、2C上のコンタクトホール21~23内及びこれらを繋ぐ形にAl膜5(金属膜;第1導電型領域3と第2導電型領域4が短絡されるように第1導電型領域3から第2導電型領域4まで延びる導体5)を形成する。なお、Al膜をAl電極ともいう。
【0087】
このようにして、
図21、
図22に示すような構造と
図23、
図24に示すような構造とを組み合わせた構造(第3構造)の光半導体素子を作製することができる。
なお、上述の工程において、
図43の工程を省略し、後は上述と同様の工程を実施することで、
図21、
図22に示すような構造(第3構造)の光半導体素子を作製することができる。
【0088】
また、上述の工程において、
図43、
図49、
図50、
図52、
図53の工程で、p
+型領域3AX及びこれに繋がるAl膜5を片側のみとすることで、
図23、
図24に示すような構造(第3構造)の光半導体素子を作製することができる。
また、上述の工程において、
図43の工程を省略し、
図49、
図50、
図52、
図53の工程で、Al膜5を片側のみとすることで、
図19、
図20に示すような構造(第3構造)の光半導体素子を作製することができる。
【0089】
また、上述の工程において、
図43の工程を省略し、
図47の工程に続いて、例えばLP-CVD法によってGe層2X上にSi層(第1半導体層)を被せる形で成長し、後は上述と同様の工程を実施することで、
図7、
図8に示すような構造(第1構造)の光半導体素子を作製することができる。
また、上述の工程において、
図43の工程を省略し、
図47の工程に続いて、例えばLP-CVD法によってGe層2X上にSi層を被せる形で成長し、
図49、
図50、
図52、
図53の工程で、Al膜5を片側のみとすることで、
図5、
図6に示すような構造(第1構造)の光半導体素子を作製することができる。
【0090】
次に、他の構成例について、
図54~
図66を参照しながら説明する。
ここでは、
図16、
図17に示すような構造(第2構造)の光半導体素子を作製する場合を例に挙げて説明する。
まず、加工前の基板断面及びSOI層の加工については、
図54、
図55に示すように、上述の一の構成例の場合(
図26、
図27参照)における説明と同様である。
【0091】
次に、
図56に示すように、SiO
2膜8Yを例えばCVD法によって約20nmの厚さで全面に成膜する。
次いで、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク25を形成する。
次に、
図57に示すように、このマスク25を用いてドライエッチングによってSiO
2膜8Yをパターン化してGe選択成長用のマスクを形成する。この場合、SiO
2膜8Yで覆われていない部分のみにGe層が成膜される。
【0092】
なお、理解を容易にするためマスクとなるSiO
2膜は半透明で図示している。
次に、
図58に示すように、前工程で用意した基板上に、例えばLP-CVD法によって、Ge層2Xを成長してメサ形状を形成する。
ここで、Ge層厚は約300nmとする。Geメサの寸法は、例えば全長約30μm、全幅約10μmとする。
【0093】
次に、
図59に示すように、例えばフォトリソグラフィーによって全面にレジストマスク26を形成した上でイオン注入を行ない、Geメサ2Xの一部にp型の導電性を持たせて、p型領域2B(p型半導体領域;第1導電型領域3)を形成する。
例えば、B(ボロン)イオンを注入し、不純物濃度が約2E18[cm
-3]となるようにする。
【0094】
その後、レジストを除去し、再度、
図60に示すように、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク27を形成して、Geメサ2Xのp型領域2Bの一部にp
+型の導電性を持たせて、p
+型領域2BX(高不純物濃度領域)を形成する。
例えば、Bイオンを注入し、不純物濃度が約1E19[cm
-3]となるようにする。
同様に、レジストマスク形成とイオン注入を繰り返し、
図61に示すように、n型領域2C(n型半導体領域;第2導電型領域4)及びn
+型領域2CX(高不純物濃度領域)を形成する。
【0095】
ここで、n型領域形成時には、例えば、P(燐)イオンを注入し、不純物濃度を約2E18[cm
-3]とし、n
+型領域形成時には、同じくP(燐)イオンを注入し、不純物濃度を1E19[cm
-3]とする。
なお、
図61は、これらの工程後にレジストを除去した状態の上面図である。
その後、注入した不純物を活性化するためのアニールを行なう。
【0096】
例えば、約600℃の雰囲気に約10秒程度置くことでドーパントが活性化される。
次に、
図62に示すように、例えばCVD法によって全面にSiO
2膜8Zを成膜し、例えばフォトリソグラフィーによってレジストマスク28を形成し、これを用いてドライエッチングによってSiO
2膜8Zを加工(整形)して、
図63に示すように、Geメサ2Xに形成されたp
+型領域2BX及びn
+型領域2CX(p/n両極性領域)上にメタルコンタクトを形成する領域だけが露出するようなコンタクトホール29、30を形成する。
【0097】
続いて、
図64に示すように、例えばスパッタリング法によってAl膜5Xを成膜した後、
図65に示すように、例えばフォトリソグラフィーによってAl膜5Xを残す領域のみにレジストマスク31を形成し、
図66に示すように、例えばドライエッチングによってAl膜5Xを加工(整形)して、p/n両極性領域2BX、2CX上のコンタクトホール29、30内及びこれらを繋ぐ形にAl膜5X(金属膜;第1導電型領域3と第2導電型領域4が短絡されるように第1導電型領域3から第2導電型領域4まで延びる導体5)を形成する。なお、Al膜をAl電極ともいう。
【0098】
このようにして、
図16、
図17に示すような構造(第2構造)の光半導体素子を作製することができる。
なお、上述の工程中、
図59~
図61の工程において、4回のイオン注入の代わりに、2回のp型及びn型イオン注入のみを行なうように変更すれば、後は上述と全く同じ工程によって、
図14、
図15に示すような構造(第2構造)の光半導体素子を作製することができる。
【0099】
なお、本発明は、上述した実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
以下、上述の実施形態及び変形例に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
光導波路と、
前記光導波路に接続された光吸収領域と、
前記光吸収領域を挟んで両側に設けられた第1導電型領域及び第2導電型領域と、
前記第1導電型領域と前記第2導電型領域が短絡されるように、前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域に接続された導体とを備えることを特徴とする光半導体素子。
【0100】
(付記2)
前記導体は、少なくとも前記第1導電型領域に接続された部分と前記第2導電型領域に接続された部分が同電位になっており、前記光吸収領域に電界が印加されることを特徴とする、付記1に記載の光半導体素子。
(付記3)
前記光吸収領域と、前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域と、前記導体とによって、光終端器が構成されることを特徴とする、付記1又は2に記載の光半導体素子。
【0101】
(付記4)
前記導体は、金属であることを特徴とする、付記1~3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記5)
前記第1導電型領域は、p型不純物がドーピングされたp型半導体領域であり、
前記光吸収領域は、非導電性の真性半導体領域であり、
前記第2導電型領域は、n型不純物がドーピングされたn型半導体領域であり、
PINダイオード構造になっていることを特徴とする、付記1~4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0102】
(付記6)
前記光導波路は、使用する光の光子エネルギーよりもバンドギャップが大きい第1半導体層によって構成され、
前記光吸収領域は、使用する光の光子エネルギーよりもバンドギャップが小さい第2半導体層によって構成されることを特徴とする、付記1~4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0103】
(付記7)
前記光吸収領域は、前記第2半導体層の真性半導体領域によって構成され、
前記第1導電型領域は、前記第1半導体層のp型不純物がドーピングされたp型半導体領域によって構成され、
前記第2導電型領域は、前記第1半導体層のn型不純物がドーピングされたn型半導体領域によって構成されることを特徴とする、付記6に記載の光半導体素子。
【0104】
(付記8)
前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域は、前記光吸収領域を挟んで水平方向の両側に設けられていることを特徴とする、付記7に記載の光半導体素子。
(付記9)
前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域は、前記光吸収領域を挟んで垂直方向の両側に設けられていることを特徴とする、付記7に記載の光半導体素子。
【0105】
(付記10)
前記光吸収領域は、前記第2半導体層の真性半導体領域によって構成され、
前記第1導電型領域は、前記第2半導体層のp型不純物がドーピングされたp型半導体領域によって構成され、
前記第2導電型領域は、前記第2半導体層のn型不純物がドーピングされたn型半導体領域によって構成されることを特徴とする、付記6に記載の光半導体素子。
【0106】
(付記11)
前記光吸収領域は、前記第2半導体層の真性半導体領域によって構成され、
前記第1導電型領域は、前記第1半導体層のp型不純物がドーピングされたp型半導体領域によって構成され、
前記第2導電型領域は、前記第2半導体層のn型不純物がドーピングされたn型半導体領域によって構成されることを特徴とする、付記6に記載の光半導体素子。
【0107】
(付記12)
前記p型半導体領域は、前記導体に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域を含むことを特徴とする、付記7~11のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記13)
前記n型半導体領域は、前記導体に接続される領域にそれ以外の領域よりも不純物濃度が高い高不純物濃度領域を含むことを特徴とする、付記12に記載の光半導体素子。
【0108】
(付記14)
前記第2半導体層は、前記第1半導体層上に設けられていることを特徴とする、付記7~13のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記15)
前記第1半導体層は、リセスを備え、
前記第2半導体層は、前記リセスに設けられていることを特徴とする、付記7~13のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0109】
(付記16)
前記第1半導体層は、Siからなり、
前記第2半導体層は、Si(x)Ge(1-x)(0≦x<1)からなることを特徴とする、付記6~15のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記17)
前記第1半導体層は、Siからなり、
前記第2半導体層は、Ge(1-x)Sn(x)(0≦x<1)からなることを特徴とする、付記6~15のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0110】
(付記18)
前記光導波路は、前記光吸収領域への光入射領域に導波路幅が変化するテーパ構造を備えることを特徴とする、付記1~17のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【符号の説明】
【0111】
1 光導波路
1X 第1半導体層(Si層)
1Y リセス
1Z テーパ構造
1S Si台座部
2 光吸収領域
2X 第2半導体層(Ge層;Geメサ)
2A 真性半導体領域
2B p型半導体領域(p型領域)
2BX 高不純物濃度領域
2C n型半導体領域(n型領域)
2CX 高不純物濃度領域
3 第1導電型領域
3A p型半導体領域
3AX 高不純物濃度領域(p+型領域)
4 第2導電型領域
4A n型半導体領域
4AX 高不純物濃度領域(n+型領域)
5 導体(Al膜)
5X Al膜
6 光終端器
7 Si基板(半導体基板)
8 SiO2膜(絶縁膜)
8X SiO2層(BOX層)
8Y SiO2膜
8Z SiO2膜
9 SOI基板
10~13 レジストマスク
14、15 コンタクトホール
16~20 レジストマスク
21~23 コンタクトホール
24~28 レジストマスク
29、30 コンタクトホール
31 レジストマスク