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特許7275868水電解装置異常診断用プログラム及び水電解システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】水電解装置異常診断用プログラム及び水電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/06 20060101AFI20230511BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230511BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230511BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20230511BHJP
【FI】
C25B15/06
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019101687
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020196906
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 元
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-110481(JP,A)
【文献】特開2002-367650(JP,A)
【文献】特開2004-335448(JP,A)
【文献】特開2005-194564(JP,A)
【文献】特開2005-290557(JP,A)
【文献】特開2006-086130(JP,A)
【文献】特開2006-138004(JP,A)
【文献】特開2010-108815(JP,A)
【文献】特開2013-171701(JP,A)
【文献】特開2018-178175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0014326(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108107090(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 15/08
G01N 27/04 - 27/20
H01M 8/04 - 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに以下の手順を実行させるための水電解装置異常診断用プログラム。
(A)m個(m≧2)の単セルの積層体からなるn個(n≧1)のPEM形水電解スタックを備えた水電解システムにおいて、第iPEM形水電解スタック(1≦i≦n)が停止しているか否かを判断する手順A。
(B)前記第iPEM形水電解スタックの停止が検出された時には、前記第iPEM形水電解スタックに含まれる第j単セル(1≦j≦m)に対して、補助電源を用いて、電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない第k電圧Vi,j,k(1≦k≦p、p≧1)を電解時と同方向に印加し、前記Vi,j,kをメモリに記憶させる手順B。
(C)電流検出装置を用いて、前記Vi,j,kに対応する前記第j単セルの第k電流Ii,j,kを検出し、前記Ii,j,kを前記メモリに記憶させる手順C。
(D)前記第k電圧Vi,j,k及び前記第k電流Ii,j,kから前記第j単セルの抵抗Ri,j,kを算出し、前記Ri,j,kをメモリに記憶させる手順D。
(E)p≧2である場合において、複数の前記Ri,j,kを算出する時には、前記手順Bから前記手順Dまでをさらに(p-1)回繰り返す手順E。
(F)前記Ri,j,kの少なくとも1つ又はその組み合わせがしきい値Rc以下である時は、前記第iPEM形水電解スタックに異常がある旨を告知する手順F
【請求項2】
前記手順Bは、
電圧検出装置を用いて、停止状態にある前記第iPEM形水電解スタックの前記第j単セルのセル電圧CVi,jを検出する手順B1と、
前記CVi,jが1.0V以上1.3V以下であるか否かを判断する手順B2と、
前記CVi,jが1.0V以上1.3V以下である時には、前記第j単セルに、1.1V以上1.3V以下の前記Vi,j,kを印加する手順B3と、
を備えている請求項1に記載の水電解装置異常診断用プログラム。
【請求項3】
前記手順Bは、
前記CVi,jが0.6V以下であるか否かを判断する手順B4と、
前記CVi,jが0.6V以下である時には、前記第j単セルに、0.1V以上0.3V以下の前記Vi,j,kを印加する手順B5
をさらに備えている請求項2に記載の水電解装置異常診断用プログラム。
【請求項4】
以下の構成を備えた水電解システム。
(1)前記水電解システムは、
m個(m≧2)の単セルを備えたn個(n≧1)のPEM形水電解スタックと、
第iPEM形水電解スタック(1≦i≦n)に個別に電力を供給する主電源と、
前記第iPEM形水電解スタックの酸素極に、同時に又は個別に、水を供給する水供給装置と、
前記第iPEM形水電解スタックの停止時に、前記第iPEM形水電解スタックに含まれる第j単セル(1≦j≦m)に異常診断用の電圧を印加する補助電源と、
前記第j単セルに印加される電圧を検出する電圧検出装置と、
前記第j単セルを流れる電流を検出する電流検出装置と、
前記水電解システムを制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記制御装置には、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水電解装置異常診断用プログラムが格納されている。
【請求項5】
前記補助電源からの印加電圧を前記各第j単セルに切り換えて供給するための多段スイッチをさらに備えている請求項4に記載の水電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解装置異常診断用プログラム及び水電解システムに関し、さらに詳しくは、高分子電解質膜形(PEM形)水電解スタックにマイクロショートが発生したか否かを診断するための水電解装置異常診断用プログラム、及び、このようなプログラムを搭載した水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水電解装置としては、高分子電解質膜を隔膜に用いた水電解装置(PEM形水電解装置)、アルカリ電解液を隔壁で仕切った水電解装置、固体酸化物を電解質に用いた高温水電解装置などが知られている。これらの中でも、PEM形水電解装置は、水のみを用いて水素を発生させることができる、水素ガス中に水以外の不純物は含まれない、作動温度が低い、などの利点がある。
【0003】
PEM形水電解装置は、用途が異なる以外は、固体高分子形燃料電池と同様の構造を備えている。すなわち、PEM形水電解装置は、電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)を備えている。電極は、一般に、触媒層と、拡散層の2層構造をとる。MEAの両面には、さらに、ガス及び水を流通させるための流路を備えた集電体(セパレータ)が配置される。PEM形水電解装置は、通常、このようなMEAと集電体からなる単セルが複数個積層された構造(スタック構造)を備えている。
【0004】
PEM形水電解装置の起動及び停止を繰り返すと、電解質膜は、その間に温度、圧力、及び/又は、含水率が変動し、膨潤・収縮を繰り返す。拡散層にはカーボン繊維や金属繊維(例えば、Ti繊維)からなる不織布が用いられることが多いため、電解質膜が膨潤・収縮を繰り返すと、拡散層を構成する導電性繊維の電解質膜への突き刺しが起こる。特に、金属繊維は、非常に細かく、かつ、硬いため、突き刺しが発生しやすい。
【0005】
「マイクロショート」とは、導電性物質(例えば、拡散層を構成する導電性繊維)が電解質膜を貫通し、酸素極と水素極が電気的に繋がった状態をいう。水電解効率を上げるために電解質膜を薄膜化すると、このようなマイクロショートの発生確率が高くなる。マイクロショートが発生すると、電解時に導電性繊維に電流が流れて発熱し、導電性繊維の周辺部にある電解質膜の焼損が進む。その結果、電解質膜にピンホールが形成される。ピンホールが形成されると、一方の電極側から他方の電極側に向かって水やガスが漏洩するという問題がある。
【0006】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、主電源装置により陽極-陰極間に通常運転電圧を印加する固体高分子電解質膜式水電解装置において、
(a)主電源装置を一時停止させ、補助電源装置により陽極-陰極間にピンホール検出電圧を印加し、
(b)ピンホール検出電圧の印加時における陽極-陰極間の電圧を検出し、
(c)検出された電圧を予め設定された閾値電圧と比較する
固体高分子電解質膜のピンホール検出方法が開示されている。
【0007】
同文献には、
(A)固体高分子電解質膜にピンホールが発生していない場合、陽極-陰極間の電圧は、補助電源装置の印加電圧と等しくなるのに対し、固体高分子電解質膜にピンホールが発生していると、固体高分子電解質膜を通して電子が流れるために、陽極-陰極間の電圧は、補助電源装置の印加電圧より小さな値となる点、及び、
(B)陽極-陰極間の電圧を検出することによって、ピンホールの発生を検知することができる点
が記載されている。
【0008】
水電解装置の深刻な故障を未然に防ぐためには、異常をより初期の段階(すなわち、ピンホールが形成される前のマイクロショートが発生した段階)で検出・判定するのが望ましい。しかしながら、マイクロショートの有無を正確に検知することが可能な方法が提案された例は、従来にはない。
特許文献1には電圧変化のみを用いてピンホールの発生を検知する方法が開示されている。しかし、この方法は電圧のみから間接的に抵抗値を推測する方法に過ぎず、判断を誤る可能性がある。クロスオーバーやガス透過などの影響を受ける電圧という指標一つで抵抗を予測するのは困難である。特に、電極内のガス圧が変化する(実用上の水電解システムでは水素極圧力を高くしているが、圧力は必ずしも安定ではない)と、圧力によってしきい値が変わるため、特許文献1の方法では、マイクロショートの検出はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-138004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、複数個のPEM形水電解スタックを備えた水電解システムにおいて、マイクロショートの有無を正確に検知することが可能な水電解装置異常診断用プログラムを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような水電解装置異常診断用プログラムを搭載した水電解システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る水電解装置異常診断用プログラムは、コンピュータに以下の手順を実行させるためのものからなる。
(A)m個(m≧2)の単セルの積層体からなるn個(n≧1)のPEM形水電解スタックを備えた水電解システムにおいて、第iPEM形水電解スタック(1≦i≦n)が停止しているか否かを判断する手順A。
(B)前記第iPEM形水電解スタックの停止が検出された時には、前記第iPEM形水電解スタックに含まれる第j単セル(1≦j≦m)に対して、補助電源を用いて、電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない第k電圧Vi,j,k(1≦k≦p、p≧1)を電解時と同方向に印加し、前記Vi,j,kをメモリに記憶させる手順B。
(C)電流検出装置を用いて、前記Vi,j,kに対応する前記第j単セルの第k電流Ii,j,kを検出し、前記Ii,j,kを前記メモリに記憶させる手順C。
(D)前記第k電圧Vi,j,k及び前記第k電流Ii,j,kから前記第j単セルの抵抗Ri,j,kを算出し、前記Ri,j,kをメモリに記憶させる手順D。
(E)p≧2である場合において、複数の前記Ri,j,kを算出する時には、前記手順Bから前記手順Dまでをさらに(p-1)回繰り返す手順E。
(F)前記Ri,j,kの少なくとも1つ又はその組み合わせがしきい値Rc以下である時は、前記第iPEM形水電解スタックに異常がある旨を告知する手順F
【0012】
本発明に係る水電解システムは、以下の構成を備えている。
(1)前記水電解システムは、
m個(m≧2)の単セルを備えたn個(n≧1)のPEM形水電解スタックと、
第iPEM形水電解スタック(1≦i≦n)に個別に電力を供給する主電源と、
前記第iPEM形水電解スタックの酸素極に、同時に又は個別に、水を供給する水供給装置と、
前記第iPEM形水電解スタックの停止時に、前記第iPEM形水電解スタックに含まれる第j単セル(1≦j≦m)に異常診断用の電圧を印加する補助電源と、
前記第j単セルに印加される電圧を検出する電圧検出装置と、
前記第j単セルを流れる電流を検出する電流検出装置と、
前記水電解システムを制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記制御装置には、本発明に係る水電解装置異常診断用プログラムが格納されている。
【発明の効果】
【0013】
PEM形水電解スタックが停止中である場合において、PEM形水電解スタックに含まれる各単セルに所定の電圧Vを印加し、単セルを流れる電流Iを検出すると、印加電圧V及び電流Iから、単セルの電極間の抵抗値Rを算出することができる。
電圧V単独では単セル内にあるマイクロショート以外の電流発生要因の影響を受けやすいのに対し、条件を選んで測定された電圧Vと電流Iとから求めた抵抗値Rはそのような要因の影響を受けにくい。そのため、算出された抵抗値Rとしきい値Rcとを対比すれば、マイクロショートが発生したか否かを正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】単セルの断面模式図である。
図2】本発明に係る水電解システムの模式図である。
図3】複数個のPEM形水電解スタックを備えた水電解システムの模式図である。
図4】正常な第j単セル、及びマイクロショートが生じている第j単セルに、それぞれ、異なる電圧Vを印加したときの電流Iの測定結果の一例である。
【0015】
図5】マイクロショートが生じている第j単セルに異なる電圧Vを印加したときの抵抗Rの測定結果の一例である。
図6】本発明に係る水電解装置異常診断用プログラムのフロー図である。
図7図6に示すフロー図の続きである。
図8】第k電圧Vi,j,kの印加手順のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. PEM形水電解スタック]
図1に、単セルの断面模式図を示す。図1において、単セル22は、膜電極接合体(MEA)24と、MEA24の両側に配置された酸素極側セパレータ34及び水素極側セパレータ36とを備えている。また、MEA24は、電解質膜26と、電解質膜26の両面に接合された酸素極28及び水素極30とを備えている。
PEM形水電解スタック20は、このような単セル22が複数個積層されたものからなる。本発明において、PEM形水電解スタック20に含まれる単セル22の総数(m)は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な個数を選択することができる。また、水電解システムが複数個のPEM形水電解スタック20を備えている場合、各PEM形水電解スタック20に含まれる単セル22の総数(m)は、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
【0017】
電解質膜26には、一般に、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマなどの固体高分子電解質が用いられる。
酸素極28は、電極触媒と固体高分子電解質との複合体からなる触媒層28aと、導電性材料からなる多孔質の拡散層28bの2層構造を備えている。同様に、水素極30は、電極触媒と固体高分子電解質との複合体からなる触媒層30aと、導電性材料からなる多孔質の拡散層30bの2層構造を備えている。拡散層28b、30bには、一般に、導電性繊維からなる不織布が用いられる。導電性繊維としては、例えば、カーボンファイバー、Tiファイバー、ステンレス鋼ファイバーなどがある。
さらに、酸素極側セパレータ34及び水素極側セパレータ36には、それぞれ、ガス及び水を流通させるための流路が形成されている。
【0018】
このような単セル22(又は、PEM形水電解スタック20)の酸素極側セパレータ34の流路に水を供給しながら、主電源38を用いて酸素極28-水素極30間に直流電流を流すと、酸素極28側では、次の式(1)の反応が進む。生成したO2ガスは、余剰の水と共に酸素極側セパレータ34内の流路を通って外部に排出される。また、生成したH+は、電解質膜26内を拡散して水素極30側に達する。
2O → 2H+ + 2e- + 1/2O2 …(1)
【0019】
一方、水素極30側では、次の式(2)の反応が進む。生成したH2ガスは、水素極側セパレータ36内の流路を通って外部に排出される。この時、水素極側セパレータ36内の流路にも水を循環させると、H2ガスの排出が促進される。
2H+ + 2e- → H2 …(2)
【0020】
PEM形水電解スタック20を用いて水電解を行う場合、通常、電力事情や要求されるガス量に応じて、PEM形水電解スタック20の起動及び停止が繰り返される。起動及び停止が繰り返されると、電解質膜26の変形や拡散層28b、30bの毛羽立ちが原因で、導電性繊維の電解質膜26への突き刺しが起こる。
【0021】
導電性繊維が電解質膜26を貫通すると、導電性繊維を介して酸素極28と水素極30が導通する、いわゆる「マイクロショート」の状態となる。さらに、マイクロショートが生じたまま電解を継続すると、導電性繊維にも電流が流れる。その結果、貫通した導電性繊維の周囲にある電解質膜26が焼損し、ピンホールが形成される。ピンホールが形成されると、反応生成物である水素と酸素が混ざってしまい、純度の高いガスが得られない。マイクロショートは、このような致命的トラブルの一歩手前の状態である。致命的トラブルを回避するためには、ピンホールが形成される前段階であるマイクロショートの発生を検知する必要がある。
【0022】
[2. 水電解システム]
図2に、本発明に係る水電解システムの模式図を示す。図2において、水電解システム10は、
m個(m≧2)の単セルを備えたn個(n≧1)のPEM形水電解スタック20と、
第iPEM形水電解スタック20(1≦i≦n)に個別に電力を供給する主電源38と、
第iPEM形水電解スタック20の酸素極に、同時に又は個別に、水を供給する水供給装置40と、
第iPEM形水電解スタック20の停止時に、第iPEM形水電解スタック20に含まれる第j単セル(1≦j≦m)に異常診断用の電圧を印加する補助電源60と、
第j単セルに印加される電圧を検出する電圧検出装置62と、
第j単セルを流れる電流を検出する電流検出装置64と、
水電解システム10を制御する制御装置(図示せず)と
を備えている。
【0023】
図2に示す水電解システム10は、
(a)補助電源60からの印加電圧を各第j単セルに切り換えて供給するための多段スイッチ66、及び/又は、
(b)第iPEM形水電解スタック20の水素極に、同時に又は個別に、水を循環させる水循環装置70
をさらに備えていても良い。
【0024】
[2.1. PEM形水電解スタック]
PEM形水電解スタック(以下、単に「スタック」ともいう)20は、高分子電解質膜を隔膜に用いたm個(m≧2)の単セルが積層されたものからなる。スタック20の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
図2に示す例において、水電解システム10は、1個のスタック20が記載されているが、これは単なる例示である。スタック20の総数(n)は、1個以上であれば良く、目的に応じて最適な個数を選択することができる。
水電解システム10が2個以上のスタック20を備えている場合、スタック20の作動数及び作動させる個体は、目的に応じて任意に選択することができる。
【0025】
[2.2. 主電源]
主電源38は、スタック20に個別に電力を供給するためのものである。本発明において、主電源38の種類は、特に限定されない。主電源38は、商用電源であっても良く、あるいは、太陽光、風力などの再生可能エネルギー由来の電源であっても良い。
なお、水電解システム10が複数個のスタック20を備えている場合において、一部のスタック20のみを作動させる時には、電力調整器(図示せず)を用いて、必要な電力が一部のスタック20に分配される。
【0026】
[2.3. 水供給装置]
水供給装置40は、スタック20の酸素極に、電解の原料である水を供給するためのものである。水供給装置40の構造は、各スタック20の酸素極に、同時に又は個別に、必要量の水を供給可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
【0027】
スタック20の酸素極に水を供給しても、電力が供給されない限り電解は行われない。そのため、水供給装置40は、稼働しているか否かにかかわらず、すべてのスタック20に同時に水を供給するものであっても、電解そのものに支障は無い。しかし、異常診断時に酸素極側に水を供給し続けると、気液分離器から酸素が溶解している水が供給されるために、酸素極側の状態が安定しない場合がある。従って、水供給装置は、各スタック20に個別に水を供給可能なもの(換言すれば、異常診断時に、診断対象となっているスタック20への水の供給を停止させることが可能なもの)が好ましい。
【0028】
図2において、水供給装置40は、酸素極側循環ポンプ42と、酸素極側気液分離器44とを備えている。酸素極側循環ポンプ42は、水をスタック20の酸素極に供給するためのものである。スタック20の個数が2個以上である場合において、各スタック20の酸素極に個別に水を供給するためには、
(a)酸素極側循環ポンプ42を、各スタック20毎に設置するか、あるいは、
(b)1個の酸素極側循環ポンプ42を、開閉バルブを介して複数個のスタック20に接続する
のが好ましい。
【0029】
酸素極側気液分離器44は、スタック20の酸素極に供給される水を一時的に貯蔵すると同時に、スタック20の酸素極側から排出される水と酸素ガスとの混合物を回収し、混合物を水と酸素ガスに分離するためのものである。スタック20が複数個ある場合、酸素極側気液分離器44は、スタック20毎に設置されていても良く、あるいは、複数のスタック20で共用されていても良い。
【0030】
酸素極側循環ポンプ42の入口は、配管46aを介して酸素極側気液分離器44の排水口に接続されている。配管46aには、水を排出するためのドレンバルブ48aが設けられている。酸素極側循環ポンプ42の出口は、配管46bを介してスタック20の酸素極側マニホールド(図示せず)の入口に接続されている。
【0031】
酸素極側気液分離器44の排水導入口は、配管46cを介してスタック20の酸素極側マニホールド(図示せず)の出口に接続されている。酸素極側気液分離器44の給水口は、配管46dを介して原料水の供給源(図示せず)に接続されている。配管46dには、給水バルブ48bが設けられている。
酸素極側気液分離器44の排気口は、配管46eを介して酸素消費源(図示せず)に接続され、又は大気に開放されている。配管46eには、圧力計50が設けられている。
【0032】
[2.4. 補助電源]
補助電源60は、第iPEM形水電解スタック(1≦i≦n)20の停止時に、第iPEM形水電解スタック20に含まれる第j単セル(1≦j≦m)に異常診断用の電圧を印加するためのものである。
補助電源60は、第j単セルに異常診断用の電圧を印加可能なものである限りにおいて、特に限定されない。第j単セルの異常診断を正確に行うためには、補助電源60は、第j単セルの大きさに見合った容量を持つものが好ましい。
なお、主電源38がワイドレンジの電源である場合、すなわち、異常診断に適した電圧を印加することが可能なものである場合、別個の補助電源60を設置することに代えて、主電源38を補助電源60として用いることもできる。
【0033】
[2.5. 電圧検出装置、及び電流検出装置]
電圧検出装置62は、第j単セルに印加される電圧を検出するためのものである。また、電流検出装置64は、第j単セルを流れる電流を検出するためのものである。電圧検出装置62及び電流検出装置64は、第j単セルの電圧及び電流を検出することが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
例えば、補助電源60とは別個に、電圧検出装置62及び電流検出装置64を設置しても良い。あるいは、補助電源60として使用可能な電源には、電圧及び電流を検出する装置を備えているものがある。そのような場合には、補助電源60に内蔵されている装置を電圧検出装置62及び電流検出装置64として用いても良い。
【0034】
[2.6. 多段スイッチ]
水電解システム10は、補助電源60からの印加電圧を各第j単セルに切り換えて供給するための多段スイッチ66を備えていても良い。例えば、スタック20に含まれる単セルの総数(m)が相対的に少ない場合、単セル毎に補助電源60を設置することもできる。しかしながら、単セルの総数(m)が多くなるほど、単セル毎に補助電源60を設置するのが困難となる。このような場合、多段スイッチ66を用いて補助電源60からの印加電圧を各単セルに切り換えて供給するのが好ましい。多段スイッチ66の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
【0035】
[2.7. 水循環装置]
水電解システム10は、第iPEM形水電解スタック20の水素極に、同時に又は個別に、水を循環させる水循環装置70をさらに備えていても良い。水を電気分解する場合において、水素極側には、必ずしも水を供給する必要がない。しかし、水素極側に水を循環させると、水素極からの水素ガスの離脱を促進させることができる。
【0036】
また、異常診断時に水素極に水素ガスが残っていると、水素極の電位を0Vに維持できるという利点はあるが、
(a)部材の水素脆化の可能性が高まる、
(b)水素に還元力があるために、水素極部材が過度に還元されてしまう(性能低下や寿命低下に繋がる)、
(c)水素が対極に透過し、酸素極部材を還元してしまう
などの問題が生じる場合がある。このような場合には、水素極側に水を循環させ、水素極から残留水素ガスを排出するのが好ましい。
【0037】
図2において、水循環装置70は、水素極側循環ポンプ72と、水素極側気液分離器74とを備えている。水素極側循環ポンプ72は、水をスタック20の水素極に供給するためのものである。スタック20の個数が2個以上である場合において、各スタック20の水素極に個別に水を循環させるためには、
(a)水素極側循環ポンプ72を、各スタック20毎に設置するか、あるいは、
(b)1個の水素極側循環ポンプ72を、開閉バルブを介して複数個のスタック20に接続する
のが好ましい。
【0038】
水素極側気液分離器74は、スタック20の水素極に循環させる水を一時的に貯蔵すると同時に、スタック20の水素極側から排出される水と水素ガスとの混合物を回収し、混合物を水と水素ガスに分離するためのものである。スタック20が複数個ある場合、水素極側気液分離器74は、スタック20毎に設置されていても良く、あるいは、複数のスタック20で共用されていても良い。
【0039】
水素極側循環ポンプ72の入口は、配管76aを介して水素極側気液分離器74の排水口に接続されている。配管76aには、水を排出するためのドレンバルブ78aと、フローストップバルブ78bが設けられている。フローストップバルブ78bは、ポンプ72停止時の流路封止が不十分な場合に、水素や水がスタック20に逆流するのを防ぐためのものである。配管76aにフローストップバルブ78bを設けることにより、水素や水が逆流することで水素極内の面内温度分布などの面内の状況が意図しない状況に陥るのを防ぐことができる。水素極側循環ポンプ72の出口は、配管76bを介してスタック20の水素極側マニホールド(図示せず)の入口に接続されている。
【0040】
水素極側気液分離器74の排水導入口は、配管76cを介してスタック20の水素極側マニホールド(図示せず)の出口に接続されている。
水素極側気液分離器74の排水口は、配管76dを介して酸素極側気液分離器44に接続されている。さらに、配管76dには、ニードルバルブ78cと、水移動ライン中間バルブ78dが設けられている。水電解を行うと、電解質膜内を移動するプロトンに伴われて水分子が最大で5個程度、酸素極から水素極に移動する。配管76dは、水素極側に移動した大量の水を酸素極側に戻すためのものである。
【0041】
ニードルバルブ78cは、水素極側気液分離器74から酸素極側気液分離器44への水移動が急激に進むのを避けるためのものである。特に、フローメーター84の下流側に背圧弁(図示せず)を設け、水素極内の圧力を高めた場合、水移動ライン中間バルブ78dが開くと、水が急速に酸素極側気液分離器44に向かって流れるため、水素極内の圧力が急激に低下するおそれがある。急激な圧力変化は、スタック20の劣化を促進させる可能性がある。ニードルバルブ78cがあると、このような急激な圧力変化を抑制することができる。
【0042】
水移動ライン中間バルブ78dは、電極反応に伴い水素極に移動した水を電極反応に再利用するためのものであり、水素極と酸素極側気液分離器44との間に設けられる。水移動ライン中間バルブ78dがあると、水素極と酸素極との間のガス混合を抑制することができる。また、水素極と酸素極に差圧がある場合に、差圧を保つことができる。
【0043】
水素極側気液分離器74の排気口は、配管76eを介して水素消費源(図示せず)に接続されている。さらに、配管76eには、除湿器80、圧力計82、及びフローメータ84が設けられている。
【0044】
[2.8. 制御装置]
制御装置(図示せず)は、水電解システム10の動作を制御するためのものである。制御装置は、水電解システム10の一般的動作を制御する手段に加えて、第j単セルのマイクロショートを検出するための手段を備えている。マイクロショートを検出するための手段の詳細については、後述する。
【0045】
[2.9. 多相化された水電解システム]
図3に、複数個のPEM形水電解スタックを備えた水電解システムの模式図を示す。図3において、水電解システム10’は、合計12個のスタック20と、主電源38と、電力調整器52と、二次電池54と、水素タンク56とを備えている。
【0046】
上述したように、スタック20の作動数及び作動させる個体は、目的に応じて任意に選択することができる。図3に示す例では、合計4個のスタック20を作動させている。作動しているスタック20の数によらず、作動中のスタック20の水素極において生成した水素ガスは、水素タンク56に貯蔵される。
なお、電気分解の際には、スタック20の酸素極において酸素が生成する。生成した酸素は、通常、大気中に排出されるが、生成した酸素を酸素タンク(図示せず)に貯蔵し、他の用途に用いても良い。
【0047】
電力調整器52は、主電源38から供給される電力の全部又は一部をスタック20のいずれか1以上に分配するためのものである。電力調整器52には、二次電池54が接続されている。二次電池54は、電力と水素の需給バランスが崩れた時に、余剰電力を一時的に貯蔵するためのものである。二次電池54に貯蔵された電力は、電力が不足した時にスタック20に供給され、電解に利用される。
水電解システム10’に関するその他の点については、図2に示す水電解システム10と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
[3. マクロショートの検出方法]
本発明に係るマイクロショートの検出方法は、以下の工程を備えている。
(a)m個(m≧2)の単セルの積層体からなるn個(n≧1)のPEM形水電解スタック20を備えた水電解システム10において、第iPEM形水電解スタック20i(1≦i≦n)が停止しているか否かを判断する工程a。
(b)第iPEM形水電解スタック20iの停止が検出された時には、第iPEM形水電解スタック20iに含まれる第j単セル22j(1≦j≦m)に対して、補助電源60を用いて、電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない第k電圧Vi,j,k(1≦k≦p、p≧1)を電解時と同方向に印加する工程b。
(c)電流検出装置を用いて、Vi,j,kに対応する第j単セル22jの第k電流Ii,j,kを検出する工程c。
(d)第k電圧Vi,j,k及び第k電流Ii,j,kから第j単セル22jの抵抗Ri,j,kを算出する工程d。
(e)p≧2である場合において、複数のRi,j,kを算出する時には、工程(b)から工程(d)までをさらに(p-1)回繰り返す工程e。
(f)Ri,j,kの少なくとも1つ又はその組み合わせがしきい値Rc以下であるか否かを判断する工程f。
【0049】
[3.1. 工程a]
まず、m個(m≧2)の単セルの積層体からなるn個(n≧1)のPEM形水電解スタック20を備えた水電解システム10において、第iPEM形水電解スタック20i(1≦i≦n)が停止しているか否かを判断する(工程a)。
マイクロショートの有無を判定するためには、第iスタック20iは停止している必要がある。これは、電解時に流れる総電流値に比べて、マイクロショートしている箇所に流れる電流値が微弱であるためである。
【0050】
例えば、面積:400cm2のセルに、抵抗値:0.3Ωの繊維の突き刺しが生じたとする。電解条件が電流密度:3A/cm2、電圧:2Vである場合、総電流は、400cm2×3A/cm2=1200Aである。一方、繊維に流れる電流は、2V/0.3Ω=0.7Aとなり、総電流の0.6%に過ぎない。そのため、電解中に電流変化に基づいてマイクロショートの発生の有無を検出するのは難しい。
【0051】
この問題を解決するために、交流抵抗を測定することも考えられる。しかし、交流抵抗測定を実施しても、やはり検出不能であることは同じである。また、突き刺しが起きてもすぐに水素濃度に影響が出るわけではないので、ガス透過量で突き刺しを判断することもできない。さらに、突き刺しによる総合効率の低下も僅かであり、これによる熱の放出も小さいため、セル温度の変化から突き刺しの有無を判別することもできない。
【0052】
そのため、突き刺しの有無を判別するためには、検査対象である第iスタック20iを停止させる必要がある。図3に示すような多相化されたシステムであれば、システム全体を停止させることなく、検査対象である第iスタック20iのみを意図的に停止させることができる。そのため、多相化されたシステムは、こうした劣化判定を実施するシステムとして適合性が良い。
【0053】
なお、第iスタック20iの電解を停止させた直後は、酸素極側循環ポンプ42による水の供給を一定時間継続させ、酸素極から酸素ガスを排出するのが好ましい。これは、酸素極側に酸素ガスが残っており、かつ、水素極側に水素が残っている状態で第j単セル22jに異常診断用の電圧を印加すると、マイクロショート以外の要因で電流が流れる可能性(例えば、電解反応又は燃料電池反応が起こる可能性)があるためである。酸素極側の水を供給し続ける時間は、目的に応じて最適な時間を選択することができる。通常、電解反応時と同じポンプ出力を与えた場合、1分程度、水の供給を継続すれば、酸素極側から大半の酸素ガスを排出することができる。
【0054】
一方、水電解システム10が水素極側循環ポンプ72を備えている場合、水素極側循環ポンプ72は、電解停止と同時に停止させるのが好ましい。これは、異常診断時に水素極側に水素ガスが残留していると、水素極の電位が0Vに維持されるために、印加電圧を適正範囲に制御するのが容易化するためである。
【0055】
[3.2. 工程b~工程d]
次に、第iPEM形水電解スタック20iの停止が検出された時には、第iPEM形水電解スタック20iに含まれる第j単セル22j(1≦j≦m)に対して、補助電源60を用いて、電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない第k電圧Vi,j,k(1≦k≦p、p≧1)を電解時と同方向に印加する(工程b)。次いで、電流検出装置64を用いて、Vi,j,kに対応する第j単セル22jの第k電流Ii,j,kを検出する(工程c)。さらに、第k電圧Vi,j,k及び第k電流Ii,j,kから第j単セル22jの抵抗Ri,j,kを算出する(工程d)。
【0056】
[3.2.1. 印加電圧の大きさ]
第j単セル22jに印加される第k電圧Vi,j,kは、電解反応(すなわち、酸素発生反応)及び燃料電池反応(すなわち、酸素還元反応)のいずれも生じない電圧である必要がある。これは、マイクロショート以外の原因で流れる電流を極力小さくするためである。第k電圧Vi,j,kの大きさは、電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない電圧である限りにおいて、特に限定されない。
【0057】
「電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない電圧」は、第j単セル22j内に残留している酸素ガス量及び水素ガス量に依存する。また、第j単セル22j内に残留しているガス量は、第j単セル22jのセル電圧CVi,jを検出することにより、間接的に知ることができる。そのため、印加電圧の大きさ及び電圧の印加時期は、CVi,jに応じて、最適なものを選択するのが好ましい。以下に、CVi,jを用いた印加電圧の大きさ及び電圧の印加時期の決定方法について説明する。
【0058】
[A. CVi,j>1.3Vの場合]
第iスタック20iを停止させた直後は、酸素極及び水素極には、それぞれ、相対的に多量の酸素ガス及び水素ガスが残留している。この場合、第j単セル22jのセル電圧CVi,jは、通常、1.3Vを超える。CVi,jが1.3Vを超えている場合において、補助電源60を用いて第j単セル22jに電圧を印加した時には、第j単セル22j内において電解反応が進行するおそれがある。このような場合には、CVi,jが1.3V以下となるまで待機するのが好ましい。
【0059】
その間、酸素極側循環ポンプ42を用いて酸素極に水を供給し続け、酸素極内に残留している酸素ガスを排出するのが好ましい。
一方、水素極側循環ポンプ72を備えているシステムにおいて、異常診断用の電圧印加時に水素極側の電位を0Vに維持するためには、第iスタック20iの停止と同時に水素極側循環ポンプ72も停止させ、水素極内に水素ガスを残留させておくのが好ましい。
【0060】
[B. 1.0V≦CVi,j≦1.3Vの場合]
第iスタック20iを停止させた後、酸素極への水の供給(酸素極からの酸素ガスの排出)を所定時間継続すると、水素極側には高濃度の水素ガスが残留しており、かつ、酸素極側には中~低濃度の酸素ガスが残留している状態となる。この場合、第j単セル22jのセル電圧CVi,jは、1.0~1.3Vの範囲となる。CVi,jがこの範囲にある場合、水電解反応は起こらない。また、燃料電池反応は、起きたとしてもその反応量は僅かである。
【0061】
そのため、CVi,jが1.0~1.3Vの範囲にある場合、
(a)第iスタック20iの酸素極への水の供給が継続されている時には、酸素極への水の供給を停止させ、
(b)補助電源60を用いて第j単セル22jに1.0~1.3Vの第k電圧Vi,j,kを印加し、電流Ii,j,kの測定及び抵抗値Ri,j,kの算出を実施する
のが好ましい。
【0062】
マイクロショートが無い時でも電流が計測されるが、通常、その値は安定しない。これは、電気二重層のいわゆるコンデンサー成分の充電や放電が起きるためである。
一方、マイクロショートがある場合、測定を開始してから数秒程度で安定して電流が流れる。コンデンサ成分の充放電が終了するのに十分な時間(補助電源60にもよるが数秒以内)が経過すると、第j単セル22jを流れる電流Ii,j,kは、コンデンサー成分による電流に対してある程度大きい値となる。第k電圧Vi,j,kを電流Ii,j,kで割ることで、抵抗Ri,j,kを求めることができる。
【0063】
マイクロショートが起きている場合、算出された抵抗Ri,j,kは、マイクロショートの原因物質である導電性繊維の抵抗とオーダーが一致する。例えば、拡散層28b、30bに用いられる導電性繊維の抵抗が50mΩである場合、マイクロショート発生時の抵抗Ri,j,kは、50~500mΩ程度となる。Ri,j,kに幅があるのは、導電性繊維が必ずしも電解質膜26に対して垂直に突き刺さっているとは限らないためと考えられる。
【0064】
[C. 0.6V<CVi,j<1.0Vの場合]
第iスタック20iを停止させた後、一定時間が経過した時には、酸素極側への水の供給も停止されている。酸素極側への水の供給が停止され一定時間が経過すると、酸素や水素がクロスオーバーで消費されたり、気泡として残留している水素や酸素が系外に排出され、セル内のガス圧力が低下する。セル電圧が1.0~0.6V程度ある段階では、水素極側の電位はまだ0V付近にあり、水素極側の状況はセル電圧CVi,jにはほとんど影響しないため、特に、酸素極の状態がCVi,jを決める要因となる。そのため、電極内の酸素の減少に伴い、第j単セル22jのCVi,jは1.0V未満に下がる。
【0065】
しかし、CVi,jが1.0~0.6V程度である場合、酸素極内に酸素が未だ残留している。この状態で第j単セル22jに異常診断用の電圧を印加した時には、印加に用いた回路を通じて電流が流れるため、セルの燃料電池反応が起こりうる。そのため、マイクロショートの情報以外の情報が検出されてしまう。
少なくとも、CVi,jが0.6V以下になれば、電圧印加すると速やかに電極表面の酸素が消費される。また、消費された分を補填するだけの酸素が電極表面に到達するまでの時間がかかるため、燃料電池反応がほぼ起きない。そのため、このような場合には、CVi,jが0.6V以下となるまで待機するのが好ましい。
【0066】
[D. CVi,j≦0.6Vの場合]
CVi,jが0.6V以下である場合、第iスタック20iを停止させてから相当な時間が経過しており、酸素極側からの酸素ガスの排出がかなり進んで、残留ガスが少ない状態と考えられる。但し、水素極側には、水素ガスが残留している可能性がある。
【0067】
もし、水素が比較的高濃度で残留している状態で第k電圧Vi,j,kを印加する場合において、本来の水素極に対し負の電圧を印加する(本来の水素極に直流電源のプラス極を接続する)と、酸素極で水素発生が起こる。逆に、酸素極側に水素ガスが含まれる場合において、本来の水素極に対し正の電圧を印加する(本来の水素極に直流電源のマイナス極を接続する)と、酸素極側の水素がプロトンになり、それが本来の水素極へ運ばれ、触媒表面で水素ガスに変わる。これは、水素の電気化学的輸送(いわゆる水素ポンプ)である。こうなると、マイクロショートの情報が埋もれてしまい、好ましくない。
【0068】
例えば、酸素極側の水には、通常、酸素ガスが含まれる。その場合、酸素極の電位は、0.8V程度となる。一方、水素極側に僅かな水素ガスが残っている場合、水素極の電位は0.2V程度であるので、CVi,jは0.6V程度となる。また、水素極側に水素ガスが全く残っていない場合、水素極の電位は0.4V程度であるので、CVi,jは0.4V程度となる。
【0069】
水素極電位が0.2Vや0.4Vにある時に第j単セル22jに1.0~1.3Vの第k電圧Vi,j,kを印加すると、水素極電位が高く、かつ印加電圧が高めであるほど、瞬間的には、酸素極の電位が酸素の平衡電位1.2Vを超えて、わずかに酸化電流が流れ始める。その分の電流が、対極では還元電流として流れ始め、電極表面に水素が付着し始める。その結果、水素極電位が0V近くになる。このように、第j単セル20jにおいて電解反応が生じるおそれがある。
【0070】
CVi,jが0.6V以下である場合には、水素極電位が0.2Vや0.4Vにある可能性がある。しかし、この時、補助電源60を用いて第j単セル22jに0.1~0.3Vの第k電圧Vi,j,kを印加しても、酸素極電位は高々0.7Vであり、酸化電流が流れる条件ではない。従って、対極が0Vになることはない。このように、こうした条件では、電極反応が起きないため、それに伴う電流発生がおきない。従って、CVi,jが0.6V以下である場合には、補助電源60を用いて第j単セル22jに0.1~0.3Vの第k電圧Vi,j,kを印加し、電流Ii,j,kの測定及び抵抗値Ri,j,kの算出を実施するのが好ましい。
【0071】
CVi,jが0.6V以下であり、かつ、水素極側に水素ガスが残留していない場合には、水素の電気化学的輸送に起因する電流は流れない。
一方、水素極側に水素ガスが残留している場合には、水素の電気化学的輸送に起因する電流が流れる場合がある。そのような場合において、水素極側循環ポンプ72を備えている時には、CVi,jが0.6V以下になる前後において水素極側循環ポンプ72を再起動させ、水素極側から水素ガスを排出するのが好ましい。
【0072】
[3.3. 工程e]
異常診断時に第j単セル22jに印加する第k電圧Vi,j,k(1≦k≦p)の水準(p)は、1個でも良く、あるいは、2個以上であっても良い。また、予め設定された水準の数pが2以上である場合であっても、そのうちの一つを用いて異常診断を行っても良い。
一方、p≧2である場合において、複数のRi,j,kを算出する時には、工程(b)から工程(d)までをさらに(p-1)回繰り返す(工程e)。上述したように、異常診断する際に、マイクロショート以外の要因により電流が流れる場合がある。そのような場合、予め複数水準の電圧を設定し、一つの第j単セル22jに対して異なる条件で抵抗Ri,j,kを測定し、複数のRi,j,kを用いて総合的に判断するのが好ましい。
【0073】
図4に、正常な第j単セル、及びマイクロショートが生じている第j単セルに、それぞれ、異なる電圧(第1電圧Vi,j,1~第3電圧Vi,j,3)を印加したときの電流(第1電流Ii,j,1~第3電流Ii,j,3)の測定結果の一例を示す。図4に示すように、正常な第j単セル20jに異なる電圧を印加しても、電流はほとんど変化しない。
一方、マイクロショートが生じている第j単セル20jに異なる電圧を印加すると、電圧に比例して電流も大きくなる。
【0074】
図5に、マイクロショートが生じている第j単セルに異なる電圧Vを印加したときの抵抗Rの測定結果の一例を示す。マイクロショートが生じている場合、電流は電圧にほぼ比例する。そのため、各電圧毎に抵抗(第1抵抗Ri,j,1~第3抵抗Ri,j,3)を算出すると、理想的には、算出された各抵抗Ri,j,kがほぼ一致する。
なお、実際には、複数の抵抗Ri,j,kが必ずしも一致しない場合もある。そのような場合には、複数個の抵抗Ri,j,kの大きさを考慮して、総合的に判断するのが好ましい。
【0075】
[3.4. 工程f]
次に、Ri,j,kの少なくとも1つ又はその組み合わせがしきい値Rc以下であるか否かを判断する(工程f)。
第j単セル22jにマイクロショートが発生した場合、第j単セル22jの抵抗Ri,j,kは、マイクロショートが無い場合に比べて小さくなる。そのため、予めしきい値Rcを設定しておき、Ri,j,kの少なくとも1つ又はその組み合わせがしきい値Rc以下であれば、マイクロショートが発生したと判断することができる。
【0076】
ここで、「Ri,j,kの少なくとも1つ又はその組み合わせがしきい値Rc以下であるか否かを判断する」とは、
(a)算出された1個以上のRi,j,kとしきい値Rcとをそれぞれ直接対比し、1個以上のRi,j,kがRc以下である時にマイクロショートが発生したと判断すること、又は、
(b)2個以上のRi,j,kに基づいて算出された変数(例えば、Ri,j,kの平均値)とRcとを対比し、その変数がRc以下である時にマイクロショートが発生したと判断すること
をいう。
しきい値Rcの値は、特に限定されるものではなく、マイクロショートの原因物質の組成や、目的に応じて最適な値を選択することができる。
【0077】
[4. 水電解装置異常診断用プログラム]
図6図7に、本発明に係る水電解装置異常診断用プログラムのフロー図を示す。本発明に係る水電解装置異常診断用プログラムは、コンピュータに以下の手順を実行させるためのものからなる。
【0078】
まず、ステップ1(以下、単に「S1」ともいう)において、PEM形水電解スタックを識別するための変数iに初期値1を代入する。
次に、S2において、m個(m≧2)の単セルの積層体からなるn個(n≧1)のPEM形水電解スタックを備えた水電解システムにおいて、第iPEM形水電解スタック(1≦i≦n)が停止しているか否かが判断される(手順A)。第iスタック(ここでは、第1スタック)が可動中である場合(S2:NO)には、マイクロショートの検出が困難である。この場合には、S3に進む。S3では、変数iに1が加算される。
【0079】
次に、S4において、変数iがスタックの総数(n)を超えている否かが判断される。i>nでない場合(S4:NO)には、診断が行われていないスタックが残っていることを意味する。この場合には、S2に戻る。そして、i>nとなるまで、上述したS2~S4の各ステップを繰り返す。
一方、i>nである場合(S4:YES)には、その時点で停止しているスタックがないことを意味する。この場合には、S5に進む。S5では、制御を継続するか否かが判断される。制御を継続する場合(S5:YES)には、S1に戻り、制御を終了させるまで、上述したS1~S5の各ステップを繰り返す。
【0080】
一方、S2において、第iスタックが停止中である場合(S2:YES)には、S11に進む。S11では、第iスタックに含まれる単セルを識別するための変数jに初期値1を代入する。次に、S12において、第j単セルへの印加電圧の水準を識別するための変数kに初期値1を代入する。
次に、13において、第iPEM形水電解スタックに含まれる第j単セル(1≦j≦m)に対して、補助電源を用いて、電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない第k電圧Vi,j,k(1≦k≦p、p≧1)を電解時と同方向に印加し、前記Vi,j,kをメモリに記憶させる(手順B)。Vi,j,kの印加手順の詳細については、後述する。
【0081】
次に、S14において、電流検出装置を用いて、Vi,j,kに対応する第j単セルの第k電流Ii,j,kを検出し、Ii,j,kをメモリに記憶させる(手順C)。さらに、S15において、第k電圧Vi,j,k及び第k電流Ii,j,kから第j単セルの抵抗Ri,j,kを算出し、Ri,j,kをメモリに記憶させる(手順D)。次に、S16に進む。S16では、変数kに1を加算する。
【0082】
次に、S17において、変数kが印加電圧の水準の総数(p)を超えている否かが判断される。k>pでない場合(S17:NO)には、選択可能な印加電圧が残っていることを意味する。この場合には、S13に戻る。そして、k>pとなるまで、上述したS13~S17の各ステップを繰り返す(手順E)。
一方、k>pである場合(S17)には、選択可能な印加電圧が残っていないことを意味する。この場合には、S18に進む。なお、印加電圧が1水準である場合、S12、16、S17を省略することができる。
【0083】
次に、S18では、Ri,j,kの少なくとも1つ又はその組み合わせがしきい値Rc以下であるか否か(以下、これを単に「Ri,j,k≦Rcであるか否か」ともいう)が判断される。Ri,j,k≦Rcでない場合(S18:NO)には、第j単セルにマイクロショートが発生していない可能性が高い。この場合には、S19に進み、変数jに1を加算する。
次に、S20において、変数jが単セルの総数(m)を超えている否かが判断される。j>mでない場合(S20:NO)には、選択可能な単セルが残っていることを意味する。この場合には、S12に戻り、j>mとなるまで上述したS12~S20の各ステップを繰り返す。さらに、j>mである場合(S20:YES)には、選択可能な単セルが残っていないことを意味する。この場合には、S3に戻り、上述したS3~S5及びS11~S20の各ステップを繰り返す。
【0084】
一方、Ri,j,k≦Rcである場合(S18:YES)には、第j単セルにマイクロショートが発生した可能性が高い。その場合には、S21に進み、第iスタックの異常を告知する(手順F)。告知方法は、特に限定されない。告知方法としては、例えば、
(a)制御装置のモニターに異常が生じたスタック20の識別番号iを表示させる方法、
(b)警告音、警告ランプ等を用いて、操作者に告知する方法
などがある。
その後、S3に戻る。そして、制御を終了させる(S5:YES)まで、上述したS1~S5、及びS11~S30の各ステップを繰り返す。
【0085】
図8に、第k電圧Vi,j,kの印加手順のフロー図を示す。第j単セル(1≦j≦m)に対する、電解反応及び燃料電池反応のいずれも生じない第k電圧Vi,j,kの印加(S13)は、具体的には、以下の手順で行うのが好ましい。
【0086】
すなわち、図7のS12において、変数kに初期値1を代入した後、図8のS131に進む。S131では、電圧検出装置を用いて、停止状態にある第iPEM形水電解スタックの第j単セルのセル電圧CVi,jを検出する(手順B1)。次に、S132では、CVi,jが1.0V以上1.3V以下であるか否かが判断される(手順B2)。CVi,jが1.0V以上1.3V以下である場合(S132:YES)には、S133に進む。
S133では、酸素極側循環ポンプが作動している時には、これを停止させる。次に、S134において、第j単セルに、1.1V以上1.3V以下のVi,j,kを印加する(手順B3)。その後、図7のS14に進み、上述した手順(すなわち、Ii,j,kの検出、Ri,j,kの算出、及び、Ri,j,kとRcとの対比)を繰り返す。
【0087】
CVi,jが1.0V以上1.3V以下でない場合(S132:NO)には、S135に進む。S135では、CVi,jが0.6V以下か否かが判断される(手順B4)。CVi,jが0.6V以下でない場合(S135:NO)には、正確な異常診断ができないので、S132に戻る。そして、CVi,jが0.6V以下となるまで、上述したS132及び135の各ステップを繰り返す。
一方、CVi,jが0.6V以下である場合(S135:YES)には、S136に進み、第j単セルに、0.1V以上0.3V以下のVi,j,kを印加する(手順B5)。その後、図7のS14に進み、上述した手順(すなわち、Ii,j,kの検出、Ri,j,kの算出、及び、Ri,j,kとRcとの対比)を繰り返す。
【0088】
[4. 作用]
マイクロショート1箇所あたりの抵抗は、数十mΩ~数百mΩである。しかし、実用サイズである数十cm2~数百cm2の大面積のセルの場合、電解質膜の抵抗は、それよりさらに小さい値(数mΩ以下)となる。そのため、水電解装置の作動中に単セルの電圧変化を計測しても、マイクロショートによる電圧変化は印加電圧に比べて著しく小さいので、マイクロショートを検出するのは困難である。また、電解条件によっては、電解反応や燃料電池反応の反応電流や二重層成分の充放電電流が流れるため、マイクロショートの情報はそれらに埋もれてしまい、検出が難しい。
【0089】
さらに、外部電源を用いて電位や電流を制御した場合や、電極に応答する活性のあるガス(例えば、酸素や水素)を共存させ電極電位を制御した場合と異なり、電極周辺のガス環境や電気的な接続を制御しない状態で電圧を計測しようとすると、電源の状態や残留するガスの状態が規定できず、結果として電極の電位が安定しない。そのため、測定前の前歴次第では、電極で何等かの反応が起き、マイクロショートの情報が埋もれてしまう可能性もある。また、状態によっては、たまたはマイクロショートの情報が見える可能性もある。このように条件を規定せずに測定をすると、マイクロショートの情報が検出できるかどうか定かでない。
【0090】
また、停止後の電圧変化には、ガスのクロスリーク、クロスオーバーなども反映されるため、電極間のガス圧力差に応じて、変化の速さが変わる。このように、マイクロショート以外の情報も反映されるため、安定した計測が行えない。そのため、電極間の電圧を検出する方法(特許文献1)では、マイクロショートの発生を安定的に検出することができない。さらには、この方法のように、電圧のみを検出する方法では、その変化の速度から抵抗の存在を推測しているに過ぎず、直接的な測定とは言えず、それがマイクロショートによるものかを判断できない。
【0091】
これに対し、PEM形水電解スタックが停止中である場合において、PEM形水電解スタックに含まれる各単セルに所定の電圧Vを印加し、単セルを流れる電流Iを検出すると、印加電圧V及び電流Iから、単セルの電極間の抵抗値Rを算出することができる。これにより抵抗値Rがマイクロショートの一般的な値の範囲に入っていれば、検出された現象がマイクロショートである可能性が高いと判断できる。
このように、外部に電流が流れるような構成で計測をすると、電流Vとそれに対応する電流Iが得られ、抵抗値Rを算出することができる。この値が安定していないようであれば測定条件が安定していない可能性があると判断することもできる。
【0092】
電圧V単独では単セル内にあるマイクロショート以外の電流発生要因の影響を受けやすいのに対し、条件を選んで測定された電圧Vと電流Iとから求めた抵抗値Rはそのような要因の影響を受けにくい。そのため、算出された抵抗値Rとしきい値Rcとを対比すれば、マイクロショートが発生したか否かを正確に判断することができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る水電解システムは、燃料電池車に水素を供給するための水素ステーションに設置される水素源として用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
10 水電解システム
20 PEM形水電解スタック
22 単セル
38 主電源
60 補助電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8