(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】玉軸受の玉配置方法、玉軸受の製造方法及び製造装置、並びに機械及び車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16C 43/06 20060101AFI20230511BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F16C43/06
B23P21/00 303A
B23P21/00 306A
(21)【出願番号】P 2019118978
(22)【出願日】2019-06-26
(62)【分割の表示】P 2019512848の分割
【原出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018103734
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 弘平
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-047525(JP,A)
【文献】特開2016-056932(JP,A)
【文献】特開平09-225757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 43/04-43/06
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪との間に形成される環状空間の円周方向に沿った一領域に、複数の玉を装填する玉入れ工程と、
前記環状空間の前記一領域の円周方向外側に、装填した前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を配置する流れ止め工程と、
前記環状空間に前記流れ止め治具が配置された状態から、前記流れ止め治具を前記環状空間から抜き取りながら、前記複数の玉の間に、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢の先端を軸方向に順次挿入して、前記複数の玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け工程と、
をこの順に実施し、
前記玉入れ工程は、前記内輪及び前記外輪を水平面から前記一領域を上にして傾斜させ、前記外輪に対して前記内輪を前記一領域と反対側へ移動させ、前記環状空間を前記一領域において径方向へ広げてから前記玉を装填し、
前記流れ止め
工程は、前記内輪と前記外輪を水平に戻すとともに前記内輪を移動させ、前記外輪と前記内輪の中心を一致させる水平動作に合わせて
前記流れ止め治具を配置する玉軸受の玉配置方法。
【請求項2】
前記流れ止め工程は、前記流れ止め治具を、前記内輪及び前記外輪の軸方向に沿って前記環状空間に挿入する請求項1に記載の玉軸受の玉配置方法。
【請求項3】
前記玉入れ工程から前記玉分け工程までを、前記内輪及び前記外輪を水平搬送させずに連続して実施する請求項1又は2に記載の玉軸受の玉配置方法。
【請求項4】
外輪の中心に対して内輪の中心を偏心させて、前記内輪と前記外輪との間に形成される環状空間を、該環状空間の円周方向に沿った一領域で広げ、
前記外輪及び前記内輪を、前記内輪を偏心させた側と反対側を上に傾斜させて、前記外輪および前記内輪が傾斜した状態で前記環状空間の前記一領域に複数の玉を玉入れし、
前記外輪及び前記内輪を水平に戻すとともに前記内輪を移動させ、前記外輪と前記内輪の中心を一致させる水平動作に合わせて、前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を前記環状空間に挿入し、
前記流れ止め治具を前記環状空間から外しながら、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢を、前記複数の玉の間に挿入する玉軸受の玉配置方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の玉配置方法によって、前記内輪と前記外輪との間の前記環状空間に前記玉が等間隔に配置された玉軸受を製造する玉軸受の製造方法。
【請求項6】
内輪と外輪とを、前記内輪と前記外輪との間に環状空間を形成して保持させるワーク保持台と、
前記ワーク保持台に保持された前記内輪と前記外輪との間に形成される環状空間の円周方向に沿った一領域に、複数の玉を装填する玉入れ部と、
前記ワーク保持台に保持された前記内輪と前記外輪の軸方向垂直面を傾斜させる傾斜動作機構と、
前記外輪に対して前記内輪を前記一領域と反対側へ移動させ、前記環状空間を前記一領域において径方向へ広げる内輪移動機構と、
前記環状空間の前記一領域の円周方向外側に、装填した前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を配置する流れ止め機構と、
前記環状空間に前記流れ止め治具が配置された状態から、前記流れ止め治具が前記環状空間から抜き取られる際に、前記複数の玉間に、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢の先端を軸方向に順次挿入して、前記複数の玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け部と、
を備え、
前記流れ止め機構は、前記傾斜動作機構が前記内輪と前記外輪を水平に戻すとともに、
前記内輪移動機構が前記内輪を移動させ
て前記外輪と前記内輪の中心を一致させる水平動作に合わせて
、前記流れ止め治具を配置する玉軸受の製造装置。
【請求項7】
前記流れ止め治具は、前記環状空間の円周方向に沿って湾曲し、且つ、前記環状空間への挿入方向に沿って窄まる板状に形成されている請求項6に記載の玉軸受の製造装置。
【請求項8】
前記流れ止め治具は、一対の側辺を有し、前記一対の側辺は、平面に展開した状態で直線状に形成され、且つ、前記環状空間に沿って湾曲させた状態で外側へ膨出する曲線状とされる請求項7に記載の玉軸受の製造装置。
【請求項9】
内輪と外輪とを、前記内輪と前記外輪との間に環状空間を形成して保持させるワーク保持台と、
前記ワーク保持台に保持された前記外輪に対して前記内輪を移動させ、前記環状空間に径方向へ広がる一領域を形成する内輪移動機構と、
前記ワーク保持台に保持された前記内輪と前記外輪の軸方向垂直面を傾斜させる傾斜動作機構と、
前記環状空間の円周方向に沿った一領域に、複数の玉を装填する玉入れ部と、
前記環状空間の前記一領域の円周方向外側に、装填した前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を配置する流れ止め機構と、
前記環状空間に前記流れ止め治具が配置された状態から、前記流れ止め治具が前記環状空間から抜き取られる際に、前記複数の玉の間に、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢の先端を軸方向に順次挿入して、前記複数の玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け部と、
を備え、
前記流れ止め機構は、前記傾斜動作機構が前記内輪と前記外輪を水平に戻すとともに、
前記内輪移動機構が前記内輪を移動させ
て前記外輪と前記内輪の中心を一致させる水平動作に合わせて
、前記流れ止め治具を配置する玉軸受の製造装置。
【請求項10】
請求項5に記載の玉軸受の製造方法を用いる機械の製造方法。
【請求項11】
請求項5に記載の玉軸受の製造方法を用いる車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉軸受の玉配置方法、玉軸受の製造方法及び製造装置、並びに機械及び車両の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
玉軸受の内外輪間に複数の玉を等間隔に配置させる技術として、例えば、特許文献1に開示される方法がある。この方法では、内外輪間に収容された複数の玉を円周方向の一つの領域に集め、集められた複数の玉を、内外輪間の円周方向における3つの領域に分配する。そして、各領域に分配された複数の玉の各玉間に、複数の作業矢を軸方向に順次挿入して、複数の玉を円周方向に等間隔に配列している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の玉配置技術では、内外輪の間に玉を入れる玉入れ工程と、玉を円周方向へ等間隔に配置させる玉分け工程と、の間に、内外輪間に収容された複数の玉を円周方向の一つの領域に集める玉集め工程を行う。また、玉入れ工程及び玉集め工程と、玉分け工程と、を別のポジションで行うため、玉入れ工程後にワークを次工程に搬送する必要がある。このように、上記の玉配置技術は、工程数が多く、工程の移行に手間を要するため、作業性の改善が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、内外輪へ玉入れして等間隔に配置させる玉配置作業の作業性を向上させることが可能な玉軸受の玉配置方法、玉軸受の製造方法及び製造装置、並びに機械及び車両の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 内輪と外輪との間に形成される環状空間の円周方向に沿った一領域に、複数の玉を装填する玉入れ工程と、
前記環状空間の前記一領域の円周方向外側に、装填した前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を配置する流れ止め工程と、
前記環状空間に前記流れ止め治具が配置された状態から、前記流れ止め治具を前記環状空間から抜き取りながら、前記複数の玉の間に、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢の先端を軸方向に順次挿入して、前記複数の玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け工程と、
をこの順に実施する玉軸受の玉配置方法。
この玉軸受の玉配置方法によれば、環状空間の円周方向に沿った一領域に複数の玉を装填する玉入れ工程と、作業矢によって玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け工程とを連続的に行うので、玉入れ工程で環状空間に入れた玉を一か所に集める玉集め工程を省略できる。したがって、玉軸受における玉配置作業の工数を削減して作業性を向上できる。また、玉集め工程での玉擦り動作をなくすことで、玉傷発生のリスクを低減できる。しかも、玉入れ工程から玉分け工程を連続的に行うことで、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代がない玉軸受であっても簡単に組み立てできる。
【0007】
(2) 前記玉入れ工程は、前記外輪に対して前記内輪を前記一領域と反対側へ移動させ、前記環状空間を前記一領域において径方向へ広げてから前記玉を装填する(1)に記載の玉軸受の玉配置方法。
この玉軸受の玉配置方法によれば、外輪に対して内輪を一領域と反対側へ移動させ、環状空間を一領域において径方向へ広げてから玉を装填するので、環状空間への玉入れを円滑に行うことができる。
【0008】
(3) 前記流れ止め工程は、前記流れ止め治具を、前記内輪及び前記外輪の軸方向に沿って前記環状空間に挿入する(1)又は(2)に記載の玉軸受の玉配置方法。
この玉軸受の玉配置方法によれば、一領域に集めて入れた玉の移動を流れ止め治具で規制して玉の散らばりを抑制できる。これにより、環状空間に入れた玉を散らすことなく、一か所に保持した状態で玉分けを行うことができる。
【0009】
(4) 前記玉入れ工程は、前記内輪及び前記外輪を水平面から前記一領域を上にして傾斜させる(1)~(3)のいずれか一つに記載の玉軸受の玉配置方法。
この玉軸受の玉配置方法によれば、環状空間の一領域に入れた玉が自重で下方側へ移動して順に配列される。これにより、玉入れ工程を円滑に行うことができる。
【0010】
(5) 前記玉入れ工程から前記玉分け工程までを、前記内輪及び前記外輪を水平搬送させずに連続して実施する(1)~(4)のいずれか一つに記載の玉軸受の玉配置方法。
この玉軸受の玉配置方法によれば、水平搬送させる際の玉の散らばりをなくすことができ、作業性の向上が図れる。
【0011】
(6) 外輪の中心に対して内輪の中心を偏心させて、前記内輪と前記外輪との間に形成される環状空間を、該環状空間の円周方向に沿った一領域で広げ、
前記外輪及び前記内輪を、前記内輪を偏心させた側と反対側を上に傾斜させて、前記環状空間の前記一領域に複数の玉を玉入れし、
前記外輪及び前記内輪を水平に戻しながら、前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を前記環状空間に挿入し、
前記流れ止め治具を前記環状空間から外しながら、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢を、前記複数の玉の間に挿入する玉軸受の玉配置方法。
この玉軸受の玉配置方法によれば、玉入れと、作業矢による玉分け工程とを連続的に行うので、玉入れにより環状空間に装填された複数の玉を一か所に集める玉集め工程を省略できる。したがって、玉軸受における玉配置作業の工数を削減して作業性を向上できる。また、玉集め工程での玉擦り動作をなくすことで、玉傷発生のリスクを低減できる。しかも、玉入れ工程から玉分け工程を連続的に行うことで、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代がない玉軸受であっても簡単に組み立てできる。
【0012】
(7) (1)~(6)のいずれか一つに記載の玉配置方法によって、前記内輪と前記外輪との間の前記環状空間に前記玉が等間隔に配置された玉軸受を製造する玉軸受の製造方法。
この玉軸受の製造方法によれば、内輪と外輪との間の環状空間に玉を円周方向へ等間隔に配置した玉軸受を簡単に製造できる。
【0013】
(8) 内輪と外輪とを、前記内輪と前記外輪との間に環状空間を形成して保持させるワーク保持台と、 前記ワーク保持台に保持された前記内輪と前記外輪との間に形成される環状空間の円周方向に沿った一領域に、複数の玉を装填する玉入れ部と、
前記環状空間の前記一領域の円周方向外側に、装填した前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を配置する流れ止め機構と、
前記環状空間に前記流れ止め治具が配置された状態から、前記流れ止め治具が前記環状空間から抜き取られる際に、前記複数の玉間に、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢の先端を軸方向に順次挿入して、前記複数の玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け部と、
を備える玉軸受の製造装置。
この玉軸受の製造装置によれば、玉入れ部によって環状空間の円周方向に沿った一領域に複数の玉を装填する玉入れ工程と、玉分け部の作業矢によって玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け工程とを連続的に行える。これにより、玉入れ工程で環状空間に入れた玉を一か所に集める玉集め工程を省略できる。したがって、玉軸受における玉配置作業の工数を削減して作業性を向上できる。また、玉集め工程での玉擦り動作をなくすことで、玉傷発生のリスクを低減できる。しかも、玉入れから玉分けを連続的に行うことで、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代がない玉軸受も簡単に組み立てることができる。
【0014】
(9) 前記外輪に対して前記内輪を前記一領域と反対側へ移動させ、前記環状空間を前記一領域において径方向へ広げる内輪移動機構を備える(8)に記載の玉軸受の製造装置。
この玉軸受の製造装置によれば、環状空間の一領域を径方向に広げることで、環状空間への玉入れを簡単に行うことができ、作業性をさらに向上できる。
【0015】
(10) 前記ワーク保持台に保持された前記内輪と前記外輪の軸方向垂直面を傾斜させる傾斜動作機構を備える(8)又は(9)に記載の玉軸受の製造装置。
この玉軸受の製造装置によれば、環状空間の一領域に入れた玉が自重で下方側へ移動して順に配列される。これにより、玉入れ部による玉入れ作業を円滑に行うことができる。
【0016】
(11) 前記流れ止め治具は、前記環状空間の円周方向に沿って湾曲し、且つ、前記環状空間への挿入方向に沿って窄まる板状に形成されている(8)~(10)のいずれか一つに記載の玉軸受の製造装置。
この玉軸受の製造装置によれば、環状空間の円周方向に沿って湾曲し、環状空間への挿入方向に沿って窄まる板状に形成された流れ止め治具によって、環状空間内の玉の移動を良好に規制できる。
【0017】
(12) 前記流れ止め治具は、一対の側辺を有し、前記一対の側辺は、平面に展開した状態で直線状に形成され、且つ、前記環状空間に沿って湾曲させた状態で外側へ膨出する曲線状とされる(11)に記載の玉軸受の製造装置。
この玉軸受の製造装置によれば、流れ止め治具の環状空間への挿し込み及び抜き取りの際に、環状空間内の玉に対して外側へ膨出する曲線状の側辺が滑らかに接触するので、流れ止め治具と玉との接触による玉傷発生を抑制できる。
【0018】
(13) 内輪と外輪とを、前記内輪と前記外輪との間に環状空間を形成して保持させるワーク保持台と、
前記ワーク保持台に保持された前記外輪に対して前記内輪を移動させ、前記環状空間に径方向へ広がる一領域を形成する内輪移動機構と、
前記ワーク保持台に保持された前記内輪と前記外輪の軸方向垂直面を傾斜させる傾斜動作機構と、
前記環状空間の円周方向に沿った一領域に、複数の玉を装填する玉入れ部と、
前記環状空間の前記一領域の円周方向外側に、装填した前記複数の玉を前記一領域内に留める流れ止め治具を配置する流れ止め機構と、
前記環状空間に前記流れ止め治具が配置された状態から、前記流れ止め治具が前記環状空間から抜き取られる際に、前記複数の玉の間に、前記玉の数に応じて突設される複数の作業矢の先端を軸方向に順次挿入して、前記複数の玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け部と、
を備える玉軸受の製造装置。
この玉軸受の製造装置によれば、玉入れ部によって環状空間の円周方向に沿った一領域に複数の玉を装填する玉入れ工程と、玉分け部の作業矢によって玉を円周方向に等間隔に配置する玉分け工程とを連続的に行うことができる。これにより、玉入れ工程で環状空間に入れた玉を一か所に集める玉集め工程を省略できる。したがって、玉軸受における玉配置作業の工数を削減して作業性を向上できる。また、玉集め工程での玉擦り動作をなくすことで、玉傷発生のリスクを低減できる。しかも、玉入れから玉分けを連続的に行うことで、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代がない玉軸受であっても簡単に組み立てることができる。
また、内輪移動機構によって環状空間の一領域を径方向に広げることで、環状空間への玉入れを簡単に行うことができ、作業性をさらに向上できる。
さらに、傾斜動作機構によってワーク保持台に保持された内輪と外輪の軸方向垂直面を傾斜させることで、環状空間の一領域に入れた玉が自重で下方側へ移動して順に配列される。これにより、玉入れ部による玉入れ作業を円滑に行える。
【0019】
(14) (7)に記載の玉軸受の製造方法を用いる機械の製造方法。
この機械の製造方法によれば、内輪と外輪との間の環状空間に玉を円周方向へ等間隔に配置された玉軸受を用いた機械を簡単に製造できる。
【0020】
(15) (7)に記載の玉軸受の製造方法を用いる車両の製造方法。
この車両の製造方法によれば、内輪と外輪との間の環状空間に玉を円周方向へ等間隔に配置された玉軸受を用いた車両を簡単に製造できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内外輪へ玉入れして等間隔に配置させる玉配置作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る玉軸受の製造装置の構成を示す概略側面図である。
【
図2】
図1に示す玉軸受の製造装置の動作を示す概略側面図である。
【
図4】
図4(A)~(D)は、流れ止め治具を示す図である。
図4(A)は正面図である。
図4(B)は側面図である。
図4(C)は下面図である。
図4(D)は上面図である。
【
図7】ワークに対する流れ止め治具及び玉分け部の配置を説明する斜視図である。
【
図8】玉配置作業を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9(A)および(B)は、玉入れ工程を説明する図である。
図9(A)は、玉を入れる前のワークの斜視図である。
図9(B)は玉を入れた後のワークの斜視図である。
【
図10】
図10(A)および(B)は、環状空間への玉の収容状態を示す図である。
図10(A)は、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代がないワークの平面図である。
図10(B)は、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代のあるワークの平面図である。
【
図11】流れ止め工程を説明する、ワークと流れ止め治具の斜視図である。
【
図12】玉分け工程を説明するための、ワークと流れ止め治具と玉分け部の斜視図である。
【
図13】玉分け工程における玉の動きを説明する模式図である。
【
図14】玉分け工程によって玉が配置された状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る玉軸受の製造装置の構成を示す概略側面図である。
図2は、
図1に示す玉軸受の製造装置の動作を示す概略側面図である。
【0024】
本実施形態に係る玉軸受の製造装置100は、基台13に回転軸14を介して設置された玉配置ユニット15を有する。玉配置ユニット15は、ワーク保持台17と、内輪移動機構18と、玉入れ部19と、傾斜動作機構21と、流れ止め機構23と、玉分け部25と、を備える。
【0025】
玉配置ユニット15は、その上部に設けられたワーク保持台17が水平に配置された水平状態(
図1の状態)と、ワーク保持台17が水平面に対して傾斜角θで傾いた傾斜状態(
図2の状態)と、の間で、傾斜動作機構21によって揺動される。
【0026】
ワーク保持台17は、玉配置ユニット15の上部でワークWを保持する。ワーク保持台17は保持部41を有する。この保持部41には、上方からワークWが嵌め込まれる。また、ワーク保持台17には、保持部41に近接及び離間する方向へ移動するロック部材43が設けられる。ワークWは、保持部41に嵌め込まれた状態でロック部材43により押し当てられて、ワーク保持台17に固定される。
【0027】
図3に示すように、ワークWは、内輪1と、外輪3と、転動体である複数(本例では13個)の玉7と、を有する。内輪1と外輪3との間の環状空間5に複数の玉7が円周方向に等間隔に配置される。玉7は、保持器(図示略)によって保持される。すなわち、ワークWは、玉軸受9である。本構成の玉軸受の製造装置100は、内輪1と外輪3との間の環状空間5に複数の玉7を入れて、複数の玉7を円周方向において等間隔に配置させる。
【0028】
図1,
図2に示す内輪移動機構18は、内輪支持軸39を有する。内輪支持軸39は、ワーク保持台17の保持部41に保持されたワークWの内輪1に、下方から挿入される。この内輪支持軸39は、玉配置ユニット15の傾斜動作と共に傾斜され、ワークWの軸芯と常に同軸に配置される。
【0029】
玉入れ部19は、玉配置ユニット15の上面に設けられた支持部45に支持される。支持部45は、玉配置ユニット15の上面に立設された柱部47と、柱部47の上端からワーク保持台17へ向かって延びるアーム部49と、を有する。玉入れ部19は、アーム部49の先端に支持される。玉入れ部19は、ワーク保持台17の保持部41に保持されたワークWにおける、内輪1と外輪3との間の環状空間5(
図3参照)に複数の玉7を挿入する。
【0030】
流れ止め機構23は、支持部45のアーム部49の先端に支持される。流れ止め機構23は、ワーク保持台17に対して昇降する流れ止め治具51を備える。流れ止め治具51は、下降駆動されることで、その先端部がワーク保持台17の保持部41に保持されたワークWにおける内輪1と外輪3との間の環状空間5(
図3参照)に挿入される。
【0031】
流れ止め治具51は、
図4(A)~(D)に示すように、環状空間5の円周方向に沿って湾曲し、環状空間5への挿入方向(
図4(A),(B)の下方)に沿って窄まる板状に形成される。
【0032】
図5は流れ止め治具51の展開図である。
流れ止め治具51は、平面に展開した状態で一対の側辺55が直線状に形成される。この流れ止め治具51は、環状空間5に沿って湾曲させた状態で、一対の側辺55が外側へ膨出する曲線状となる。流れ止め治具51は、
図4(C)に示すように、その根元部分における円周方向の長さが、環状空間5に入れた玉7を一か所に集めた際に形成される空間部分の円周方向の長さよりも僅かに小さい。
【0033】
図6は玉分け部25の斜視図である。
玉分け部25は、環状に形成された土台部61と、長さが異なる複数の作業矢63と、を有する。作業矢63は、土台部61に立設されており、円周方向に等間隔に配置される。玉分け部25は、玉7の数と同数(本例では13本)の作業矢63を備える。これら作業矢63の1本は、基準作業矢63Aとされており、他の作業矢63は、基準作業矢63Aの周方向両側の対称位置に配置される。基準作業矢63Aは、両隣の作業矢63よりも短い。基準作業矢63Aの周方向両側の対称位置に配置された作業矢63は、基準作業矢63Aから離れるにしたがって軸長が次第に長くなっている。
基準作業矢63Aの先端部は、平面形状である。基準作業矢63A以外の作業矢63の先端部は、基準作業矢63Aから周方向に離れるにしたがって先端側に延びる傾斜面である。
基準作業矢63Aの周方向両側の対称位置に配置された作業矢63は、互いに形状が同一とされているが、必ずしも同一でなくてもよい。
【0034】
図7(A)~(C)はワークWに対する流れ止め治具51及び玉分け部25の配置を説明する斜視図である。
流れ止め機構23(
図1,
図2参照)の流れ止め治具51と、玉分け部25とは、ワーク保持台17の保持部41に保持されるワークWを挟んだ上下に配置される。
図1および
図2の例の場合、ワークWの上方に流れ止め治具51が配置され、ワークWの下方に玉分け部25が配置される。そして、傾斜動作機構21によってワーク保持台17が傾いた傾斜状態(
図2の状態)において、玉分け部25の基準作業矢63Aが、ワークWの傾斜の下方側となるように配置される。なお、ワークWの上方に玉分け部25が配置され、ワークWの下方に流れ止め治具51が配置されてもよい。
【0035】
次に、上記の玉軸受の製造装置100によってワークWに玉入れして玉軸受を製造する場合について、
図8に示すフローチャートに沿って工程毎に説明する。
【0036】
(ワーク固定工程)
水平状態の玉配置ユニット15に対して、搬送されるワークWをワーク保持台17の保持部41に保持させる(ステップS1)。このとき、内輪1は、その内周に内輪支持軸39が挿入されて支持され、外輪3は、ロック部材43によって保持部41に固定される。
【0037】
(傾斜動作工程)
傾斜動作機構21によって玉配置ユニット15を、ワーク保持台17が水平面に対して傾斜角θで傾いた傾斜状態とする(ステップS2)。このとき、内輪移動機構18の内輪支持軸39を玉配置ユニット15の傾斜動作と共に傾斜させる。さらに、内輪移動機構18の内輪支持軸39の中心軸を、ワークWの中心軸に対する直交面において傾斜の下方側(
図2の左方側)に変位した位置に配置させる。このようにすると、外輪3中心に対して内輪1の中心が傾斜の下方側に偏心する。これにより、内輪1と外輪3との間の環状空間5は、傾斜の下方側が狭まり、傾斜の上方側が広がった状態となる。
【0038】
(玉入れ工程)
図9(A),(B)は玉入れ工程を説明する説明図である。
図9(A)に示すように、ワーク保持台17(
図1,
図2参照)に保持させた内輪1と外輪3との間の環状空間5に、玉入れ部19から玉7を入れる(ステップS3)。このとき、環状空間5は、傾斜の上方側が広がった状態となっており、玉入れ部19によって環状空間5へ玉7を容易かつ円滑に装填できる。また、玉7は自重により装填箇所に留まることなく左右へ転がって移動する。これにより、玉7を装填する際に、既に装填された玉7が邪魔にならない。そして、
図9(B)に示すように、この環状空間5に入れた玉7は、傾斜の上方側で広くなった領域に集められた状態で収容される。つまり、環状空間5に入れられた玉7は、環状空間5の円周方向に沿った一領域に集められた状態で収容される。
【0039】
(水平動作工程)
傾斜動作機構21によって玉配置ユニット15を、ワーク保持台17が水平となる水平状態(
図1の状態)に戻す(ステップS4)。このとき、内輪支持軸39の中心軸をワークWの軸芯と同軸となる位置に移動させる。これにより、外輪3及び内輪1の中心が一致され、環状空間5が円周方向に均等な隙間となる。
【0040】
すると、
図10(A)に示すように、環状空間5では、玉7が一領域に集まり、この一領域の円周方向外側が玉7のない空間部分となる。内輪1と外輪3の間に玉7が保持される変形代がないワークでは、この空間部分の領域αは、180°以上の範囲となる。なお、ワークWが、内輪1と外輪3の溝に玉7が保持される変形代を有する場合、
図10(B)に示すように、一領域の円周方向外側における玉7が存在しない空間部分の領域αは、180°未満の範囲となる。
【0041】
(流れ止め工程)
図11は流れ止め工程を説明するワークWと流れ止め治具51の斜視図である。
ワークWの環状空間5における玉7のない空間部分に、流れ止め機構23の流れ止め治具51を上方から内輪1及び外輪3の軸方向に沿って挿入する(ステップS5)。ここで、外輪3及び内輪1の中心を一致させると、一領域に集められていた玉7は、玉7のない空間部分へ転がって移動可能となる。しかし、環状空間5に流れ止め治具51を挿入して配置することで、装填された玉7の移動を規制し、玉7を一領域内に留めることができる。この流れ止め治具51の環状空間5への挿入動作は、玉配置ユニット15を水平に戻すとともに内輪1を移動させ、外輪3と内輪1との中心を一致させる水平動作に合わせて実施する。また、玉配置ユニット15を水平にした後に実施してもよい。
【0042】
(玉分け工程)
図12は玉分け工程を説明するためのワークWと流れ止め治具51と玉分け部25の斜視図である。
環状空間5に流れ止め治具51が配置された状態から、流れ止め治具51を環状空間5から抜き取りながら、ワークWに対して玉分け部25を上昇させ、環状空間5に複数の作業矢63を挿入する。これにより、環状空間5に配置された複数の玉7の間に、玉7の数に応じて突設される複数の作業矢63の先端が軸方向に順次挿入され、複数の玉7を円周方向に等間隔に配置させる(ステップS6)。
【0043】
図13は玉分け工程における玉7の動きを説明する模式図である。
【0044】
流れ止め治具51および玉分け部25の上昇速度は略同一である。したがって、流れ止め治具51および玉分け部25が上昇する際に、流れ止め治具51と玉分け部25との相対位置は殆ど変化しない。すなわち、流れ止め治具51および玉分け部25と、玉7と、の相対位置が変化する。
【0045】
図13の例では、環状空間5に配置させた流れ止め治具51を抜き取りながら玉分け部25の作業矢63を環状空間5に挿し込む際の玉7の位置を、高さ位置H
1~H
6で段階的に示している。高さ位置H
1~H
6は、流れ止め治具51および玉分け部25に対する、玉7の相対位置を示すものである。
【0046】
玉分け工程の開始時では、玉7と、流れ止め治具51および玉分け部25と、の相対位置が、高さ位置H1における位置関係となっている。つまり、流れ止め治具51が環状空間5の玉7のない空間部分に挿し込まれた状態となっている。
【0047】
流れ止め治具51および玉分け部25に対する玉7の相対位置が高さ位置H
1となる際には、玉分け部25の上昇に伴い、2本の最長の作業矢63(
図13中、左右両端の2本の作業矢63)の間に、玉7(
図10Aにおける13個の玉7のうち、周方向中央に位置する7番目の玉)が入り込む。そして、残りの12個の玉7は、2本の最長の作業矢63よりも流れ止め治具51側へ押し出される。
【0048】
なお、高さ位置H
1~H
6における複数の玉6のうち、作業矢63の周方向外側(
図13中、左右両側)に分けられた玉7は、
図13中の図示を省略した。
【0049】
この状態から、流れ止め治具51と玉分け部25とが共に、
図13中矢印で示すように上昇する。
【0050】
流れ止め治具51および玉分け部25に対する玉7の相対位置が高さ位置H
1からH
2となる際には、玉分け部25の上昇によって、2番目に長い2本の作業矢63(
図13中、左右両端から数えて2番目の2本の作業矢63)が、
図13中の高さ位置H
1の両端の玉7同士の間に入り込み、残りの10個の玉7が流れ止め治具51側へ押し出される。
【0051】
流れ止め治具51および玉分け部25に対する玉7の相対位置が高さ位置H
2からH
3となる際には、3番目に長い2本の作業矢63(
図13中、左右両端から数えて3番目の2本の作業矢63)が玉7の間に入り込み、残りの8個の玉7が流れ止め治具51側へ押し出される。
【0052】
流れ止め治具51および玉分け部25に対する玉7の相対位置が高さ位置H
3からH
4となる際には、4番目に長い2本の作業矢63(
図13中、左右両端から数えて4番目の2本の作業矢63)が玉7の間に入り込み、残りの6個の玉7が流れ止め治具51側へ押し出される。
【0053】
流れ止め治具51および玉分け部25に対する玉7の相対位置が高さ位置H
4からH
5となる際には、5番目に長い2本の作業矢63(
図13中、左右両端から数えて5番目の2本の作業矢63)が玉7の間に入り込み、残りの4個の玉7が流れ止め治具51側へ押し出される。
【0054】
最後に、流れ止め治具51および玉分け部25に対する玉7の相対位置が高さ位置H
5からH
6となると、2本の最短の作業矢63(
図13中、左右両端から数えて6番目の作業矢63)が玉7の間に入り込み、残りの2個の玉7が流れ止め治具51側へ押し出される。
【0055】
このとき、高さ位置H5で流れ止め治具51の一対の側辺55に接していた2個の玉7が、基準作業矢63Aに接した状態となる。そして、これら2個の玉7は、基準作業矢63Aと、2本の最短の作業矢63Aと、の間に入り込む。
【0056】
最終的には
図14に示すように、環状空間5に収容されていた各玉7の間に、玉分け部25の作業矢63がそれぞれ入り込み、複数の玉7が円周方向に等間隔に配置される。
【0057】
その後、玉7を保持する保持器(図示略)を環状空間5に嵌め込むことで、玉7が均等に配置されて転動可能に保持された玉軸受とされる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る玉軸受の玉配置方法によれば、環状空間5の円周方向に沿った一領域に複数の玉7を装填する玉入れ工程と、作業矢36によって玉7を円周方向に等間隔に配置する玉分け工程と、を連続的に行う。したがって、玉入れ工程で環状空間5に入れた玉7を一か所に集める玉集め工程を省略できる。また、玉軸受における玉配置作業の工数を削減して作業性を向上できる。また、玉集め工程での玉擦り動作をなくすことで、玉傷発生のリスクを低減できる。しかも、玉入れ工程から玉分け工程を連続的に行うことで、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代がない玉軸受であっても簡単に組み立てできる。
【0059】
また、玉入れ工程では、外輪3に対して内輪1を一領域と反対側へ移動させ、環状空間5を一領域において径方向へ広げてから玉7を装填する。したがって、環状空間5への玉入れを円滑に行える。
【0060】
しかも、流れ止め工程は、流れ止め治具51を、内輪1及び外輪3の軸方向に沿って環状空間5に挿入する。したがって、一領域に集めて入れた玉7の移動を流れ止め治具51で規制して玉7の散らばりを抑制できる。これにより、環状空間5に挿入した複数の玉7を散らすことなく、一か所に保持した状態で玉分けを行える。
【0061】
また、玉入れ工程では、内輪1及び外輪3を水平面から一領域を上にして傾斜させる。したがって、環状空間5の一領域に入れた玉7が、その自重で下方側へ移動して順に配列される。これにより、玉入れ工程を円滑に行える。
【0062】
また、玉入れ工程から玉分け工程までを、内輪1及び外輪3を水平搬送させずに連続して実施できる。したがって、水平搬送させる際の玉7の散らばりをなくすことができ、作業性の向上が図れる。
【0063】
そして、上記の玉配置方法によって、内輪1と外輪3との間の環状空間5に玉7が等間隔に配置された玉軸受を製造する玉軸受の製造方法によれば、内輪1と外輪3との間の環状空間5に玉7を円周方向へ等間隔に配置した玉軸受を簡単に製造できる。
【0064】
また、本実施形態に係る玉軸受の製造装置100によれば、玉入れ部19によって環状空間5の円周方向に沿った一領域に複数の玉7を装填する玉入れ工程と、玉分け部25の作業矢36によって玉7を円周方向に等間隔に配置する玉分け工程と、を連続的に行うことができる。これにより、玉入れ工程で環状空間5に入れた玉7を一か所に集める玉集め工程を省略できる。したがって、玉軸受における玉配置作業の工数を削減して作業性を向上できる。また、玉集め工程での玉擦り動作をなくすことで、玉傷発生のリスクを低減できる。しかも、玉入れ工程から玉分け工程を連続的に行うことで、内輪と外輪の間に玉が保持される変形代がない玉軸受であっても簡単に組み立てできる。
【0065】
また、内輪移動機構18によって、外輪3に対して内輪1を一領域と反対側へ移動させ、環状空間5を一領域において径方向へ広げることで、環状空間5への玉入れを簡単に行え、作業性をさらに向上できる。
【0066】
しかも、傾斜動作機構21によって、ワーク保持台17に保持された内輪1と外輪3の軸方向垂直面を傾斜させることで、環状空間5の一領域に入れた玉7が自重で下方側へ移動して順に配列される。これにより、玉入れ部19による玉入れ作業を円滑に行える。
【0067】
また、流れ止め治具51は、環状空間5の円周方向に沿って湾曲し、環状空間5への挿入方向に沿って窄まる板状に形成される。これにより、流れ止め治具51によって、環状空間5内の玉7の移動を良好に規制できる。
【0068】
また、流れ止め治具51は、一対の側辺55が、平面に展開した状態で直線状に形成され、環状空間5に沿って湾曲させた状態で外側へ膨出する曲線状とされる。したがって、流れ止め治具51の環状空間5への挿し込み及び抜き取りの際に、環状空間5内の玉7に対して外側へ膨出する曲線状の一対の側辺55が滑らかに接触するので、流れ止め治具51と玉7との接触による玉傷発生を抑制できる。
【0069】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0070】
上記した転がり軸受の製造方法は、転がり軸受を備える各種の機械(器械等の動力が手動のものも含む)の製造にも適用可能である。例えば、レール、スライダー等の直動案内装置、ねじ軸、ナット等のボールねじ装置やねじ装置、直動案内軸受とボールねじとを組み合わせた装置やXYテーブル等のアクチュエータ、等の直動装置への適用が可能である。
また、ステアリングコラム、自在継手、中間ギア、ラックアンドピニオン、電動パワーステアリング装置、ウォーム減速機、トルクセンサ等の操舵装置への適用が可能である。
そして、上記機械、操舵装置等を含む車両、工作機械、住宅機器等、広く適用することができる。
これにより得られた機械、車両等によれば、従来よりも低コストで、且つ、高品位な構成にできる。
【0071】
本出願は、2018年5月30日出願の日本特許出願2018-103734に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 内輪
3 外輪
5 環状空間
7 玉
9 玉軸受
17 ワーク保持台
18 内輪移動機構
19 玉入れ部
21 傾斜動作機構
23 流れ止め機構
25 玉分け部
51 流れ止め治具
55 側辺
63 作業矢
100 玉軸受の製造装置