(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】作業機械及びプロセッサ制御装置
(51)【国際特許分類】
A01G 23/08 20060101AFI20230511BHJP
A01G 23/099 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A01G23/08 A
A01G23/099
(21)【出願番号】P 2019124261
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【氏名又は名称】立石 博臣
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 修平
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-19702(JP,A)
【文献】特開2008-255597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/08
A01G 23/00
B27L 11/00
E02F 9/24
B27B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
キャブと、
作業アタッチメントと、
前記作業アタッチメントの先端に装着され、木材を保持して所定の動作を行うプロセッサと、
前記プロセッサの動作を制御するコントローラと、
を備え、
前記プロセッサは、
作業具本体と、
前記作業具本体を回動させる回動手段と、
前記作業具本体に設けられ前記木材を把持する把持手段と、
前記把持手段に把持された前記木材を長手方向に送材する送材手段と、
を有し、
前記作業アタッチメントの接続部には、回動角度を検出するための第1角度検出手段が設けられ、
前記回動手段には、前記作業具本体の回動角度を検出するための第2角度検出手段が設けられ、
前記コントローラは、
前記作業アタッチメントの寸法と、上面視において前記キャブの周囲に設定されるキャブ干渉領域とを記憶し、
前記作業アタッチメントの寸法と前記第1角度検出手段で検出された回動角度とに基づいて上面視における前記作業アタッチメントの先端位置を
所定周期で演算し、
上面視において、
前記所定周期で演算される前記作業アタッチメントの先端位置と前記キャブ干渉領域のうち旋回中心から最も離れた位置とを結ぶ直線が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を基準角度として演算し、
前記第2角度検出手段で検出された回動角度に基づいて、上面視において前記木材の長手方向が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を判定対象角度として演算し、
前記判定対象角度が前記基準角度よりも小さい場合には、前記送材手段による送材を停止又は減速することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記キャブ干渉領域は、前記把持手段で把持可能な前記木材の最大直径、前記木材の揺動域及び前記木材の形状の少なくとも1つを上面視における前記キャブの外形に加味して設定されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記プロセッサの寸法を記憶すると共に、前記把持手段に把持された木材が前記キャブに干渉しない最も高い位置を非干渉高さとして記憶し、
前記作業アタッチメントの寸法と、前記プロセッサの寸法と、前記第1角度検出手段で検出された回動角度とに基づいて前記把持手段に把持された木材の高さを演算し、
前記把持手段に把持された木材の高さが前記非干渉高さよりも低い場合には、前記判定対象角度が前記基準角度よりも小さい場合であっても、前記送材手段による送材を許容することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
作業機械であって、
キャブと、
作業アタッチメントと、
前記作業アタッチメントの先端に装着され、木材を保持して所定の動作を行うプロセッサと、
前記プロセッサの動作を制御するコントローラと、
を備え、
前記プロセッサは、
作業具本体と、
前記作業具本体を回動させる回動手段と、
前記作業具本体に設けられ前記木材を把持する把持手段と、
前記把持手段に把持された前記木材を長手方向に送材する送材手段と、
を有し、
前記回動手段には、前記木材の長手方向が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を検出する角度検出手段が設けられ、
前記コントローラは、上面視において、前記作業アタッチメントの先端が最も機械側に近づいた場合の前記作業アタッチメントの先端位置と前記キャブの周囲に設定されるキャブ干渉領域のうち旋回中心から最も離れた位置とを結ぶ直線が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度よりも前記角度検出手段によって検出された角度が小さい場合には、前記送材手段による送材を停止又は減速することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
キャブを備える作業機械において作業アタッチメントの先端に装着され、木材を保持して所定の動作を行うプロセッサを制御するプロセッサ制御装置において、
前記プロセッサは、
作業具本体と、
前記作業具本体を回動させる回動手段と、
前記作業具本体に設けられ前記木材を把持する把持手段と、
前記把持手段に把持された前記木材を長手方向に送材する送材手段と、
を有し、
前記作業アタッチメントの接続部には、回動角度を検出するための第1角度検出手段が設けられ、
前記回動手段には、前記作業具本体の回動角度を検出するための第2角度検出手段が設けられ、
前記プロセッサ制御装置は、
前記作業アタッチメントの寸法と、上面視において前記キャブの周囲に設定されるキャブ干渉領域とを記憶し、
前記作業アタッチメントの寸法と前記第1角度検出手段で検出された回動角度とに基づいて上面視における前記作業アタッチメントの先端位置を
所定周期で演算し、
上面視において、
前記所定周期で演算される前記作業アタッチメントの先端位置と前記キャブ干渉領域のうち旋回中心から最も離れた位置とを結ぶ直線が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を基準角度として演算し、
前記第2角度検出手段で検出された回動角度に基づいて、上面視において前記木材の長手方向が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を判定対象角度として演算し、
前記判定対象角度が前記基準角度よりも小さい場合には、前記送材手段による送材を停止又は減速することを特徴とすることを特徴とするプロセッサ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を保持して所定の動作を行うプロセッサを作業アタッチメント先端に装着した作業機械及びそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械において、林業用のアタッチメントとしてプロセッサを取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、プロセッサで把持された木材が作業機械に接触する虞がないかどうかを判断する機能を備えたプロセッサ制御装置が提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2においては、フロント作業機(1A)の角度センサ(8a~8c)や油圧モータ(102)の角度センサ(8d)の値、更には、木材の直径情報や送材装置(107)よりも先に出ている木材の長さ情報などにより、現在把持している木材の位置が演算される(特許文献2の
図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3799394号公報
【文献】特開2012-19702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2においては、木材の位置を演算するのに木材の長さ情報が用いられている。そして、特許文献2では、木材の長さ情報について、オペレータが目視して概略の長さを入力する、或いは、木材把持後に木材端部を特定の位置まで送り、その位置から送った距離を計測するとされている。
【0006】
しかし、オペレータが目視して概略の長さを入力する方法では、入力された値が不正確であった場合、木材が作業機械に接触するか否かの判断を誤る可能性があり、必ずしも安全とは言えない。
【0007】
また、木材端部を特定の位置まで送って距離を計測する方法では、木材を送材する最中に木材とキャブとが衝突する可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、プロセッサを用いた木材の送材に際し、木材がキャブに衝突するのを確実に回避することが可能な作業機械及びそれに関連する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械であって、キャブと、作業アタッチメントと、前記作業アタッチメントの先端に装着され、木材を保持して所定の動作を行うプロセッサと、前記プロセッサの動作を制御するコントローラと、を備え、前記プロセッサは、作業具本体と、前記作業具本体を回動させる回動手段と、前記作業具本体に設けられ前記木材を把持する把持手段と、前記把持手段に把持された前記木材を長手方向に送材する送材手段と、を有し、前記作業アタッチメントの接続部には、回動角度を検出するための第1角度検出手段が設けられ、前記回動手段には、前記作業具本体の回動角度を検出するための第2角度検出手段が設けられ、前記コントローラは、前記作業アタッチメントの寸法と、上面視において前記キャブの周囲に設定されるキャブ干渉領域とを記憶し、前記作業アタッチメントの寸法と前記第1角度検出手段で検出された回動角度とに基づいて上面視における前記作業アタッチメントの先端位置を演算し、上面視において、前記作業アタッチメントの先端位置と前記キャブ干渉領域のうち旋回中心から最も離れた位置とを結ぶ直線が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を基準角度として演算し、前記第2角度検出手段で検出された回動角度に基づいて、上面視において前記木材の長手方向が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を判定対象角度として演算し、前記判定対象角度が前記基準角度よりも小さい場合には、前記送材手段による送材を停止又は減速することを特徴とする作業機械を提供している。
【0010】
ここで、前記キャブ干渉領域は、前記把持手段で把持可能な前記木材の最大直径、前記木材の揺動域及び前記木材の形状の少なくとも1つを上面視における前記キャブの外形に加味して設定されるのが好ましい。
【0011】
また、前記コントローラは、前記プロセッサの寸法を記憶すると共に、前記把持手段に把持された木材が前記キャブに干渉しない最も高い位置を非干渉高さとして記憶し、前記作業アタッチメントの寸法と、前記プロセッサの寸法と、前記第1角度検出手段で検出された回動角度とに基づいて前記把持手段に把持された木材の高さを演算し、前記把持手段に把持された木材の高さが前記非干渉高さよりも低い場合には、前記判定対象角度が前記基準角度よりも小さい場合であっても、前記送材手段による送材を許容するのが好ましい。
【0012】
また、本発明は、作業機械であって、キャブと、作業アタッチメントと、前記作業アタッチメントの先端に装着され、木材を保持して所定の動作を行うプロセッサと、前記プロセッサの動作を制御するコントローラと、を備え、前記プロセッサは、作業具本体と、前記作業具本体を回動させる回動手段と、前記作業具本体に設けられ前記木材を把持する把持手段と、前記把持手段に把持された前記木材を長手方向に送材する送材手段と、を有し、前記回動手段には、前記木材の長手方向が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を検出する角度検出手段が設けられ、前記コントローラは、上面視において、前記作業アタッチメントの先端が最も機械側に近づいた場合の前記作業アタッチメントの先端位置と前記キャブの周囲に設定されるキャブ干渉領域のうち旋回中心から最も離れた位置とを結ぶ直線が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度よりも前記角度検出手段によって検出された角度が小さい場合には、前記送材手段による送材を停止又は減速することを特徴とする作業機械を更に提供している。
【0013】
また、本発明は、キャブを備える作業機械において作業アタッチメントの先端に装着され、木材を保持して所定の動作を行うプロセッサを制御するプロセッサ制御装置において、前記プロセッサは、作業具本体と、前記作業具本体を回動させる回動手段と、前記作業具本体に設けられ前記木材を把持する把持手段と、前記把持手段に把持された前記木材を長手方向に送材する送材手段と、を有し、前記作業アタッチメントの接続部には、回動角度を検出するための第1角度検出手段が設けられ、前記回動手段には、前記作業具本体の回動角度を検出するための第2角度検出手段が設けられ、前記プロセッサ制御装置は、前記作業アタッチメントの寸法と、上面視において前記キャブの周囲に設定されるキャブ干渉領域とを記憶し、前記作業アタッチメントの寸法と前記第1角度検出手段で検出された回動角度とに基づいて上面視における前記作業アタッチメントの先端位置を演算し、上面視において、前記作業アタッチメントの先端位置と前記キャブ干渉領域のうち旋回中心から最も離れた位置とを結ぶ直線が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を基準角度として演算し、前記第2角度検出手段で検出された回動角度に基づいて、上面視において前記木材の長手方向が前記作業アタッチメントの中心線に対してなす鋭角の角度を判定対象角度として演算し、前記判定対象角度が前記基準角度よりも小さい場合には、前記送材手段による送材を停止又は減速することを特徴とすることを特徴とするプロセッサ制御装置を更に提供している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業アタッチメントの先端位置とキャブ干渉領域のうち旋回中心から最も離れた位置とを結ぶ直線が作業アタッチメントの中心線に対してなす角度を基準角度として演算すると共に、上面視において木材の長手方向が作業アタッチメントの中心線に対してなす角度を判定対象角度として演算する。そして、判定対象角度が基準角度よりも小さい場合には、送材手段による送材を停止又は減速する。そのため、プロセッサを用いた木材の送材に際し、木材がキャブに衝突するのを確実に回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による油圧ショベル(作業機械)を示す側面図。
【
図3】プロセッサ制御装置(コントローラ)を示す制御ブロック図。
【
図4】キャブ干渉領域を示した油圧ショベルの概略平面図。
【
図5】非干渉高さを示した油圧ショベルの概略側面図。
【
図6】コントローラ(制御部)による動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1.実施形態>
本発明の実施形態による作業機械及びプロセッサ制御装置について、
図1から
図6を参照しながら説明する。以下、本発明に係る作業機械として、油圧ショベル1(
図1参照)を例示する。また、本発明に係るプロセッサ制御装置として、油圧ショベル1のコントローラ7(
図3参照)を例示する。
【0017】
油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に鉛直軸のまわりに旋回自在に搭載される上部旋回体3とを備えて構成される。
【0018】
上部旋回体3のベースとなるアッパーフレーム30上には、キャブ31等の各種設備や機器類が搭載されている。また、アッパーフレーム30の前部には、作業アタッチメント4が取り付けられている。
【0019】
作業アタッチメント4は、アッパーフレーム30に対して起伏可能なブーム41と、ブーム41の先端に回動可能に連結されるアーム43とを備えて構成される。また、アーム43の先端には、後に詳述するプロセッサ(造材機)5が装着されている。
【0020】
作業アタッチメント4には、アーム43の先端位置を演算するため、ブーム41、アーム43、プロセッサ5の各接続部(リンク部)には角度センサ6A~6Cが設けられている。角度センサ6A~6Cで検出された角度は、後述のコントローラ7(
図3参照)に入力される。なお、角度センサ6A~6Cは、本発明に係る第1角度検出手段である。
【0021】
プロセッサ5は、樹木を伐採して木材及び残材を製造するための作業機(アタッチメント)であり、例えば、伐採された木材を保持して所定の長さ毎に切断することが可能である。
【0022】
図2に示すように、プロセッサ5は、取付部51、支持部材52、油圧モータ53、作業具本体54、グラップル55及び送材装置56などを備えて構成される。
【0023】
取付部51は作業アタッチメント4(アーム43)の先端に装着する部分であり、支持部材52は油圧モータ53を取付部51に取り付けるための部材である。
【0024】
油圧モータ53は、作業具本体54を回動させるためのモータであり、本発明に係る回動手段の一例である。
【0025】
油圧モータ53の回動軸には、作業具本体54の回動角度を検出するための角度センサ6D(図示せず、
図3参照)が設けられている。角度センサ6Dで検出された角度は、後述のコントローラ7(
図3参照)に入力される。なお、角度センサ6Dは、本発明に係る第2角度検出手段の一例である。
【0026】
作業具本体54は、油圧モータ53の下部に取り付けられる部材であり、油圧モータ53の駆動に伴って油圧モータ53の回動軸回りに回動する。
【0027】
グラップル55は、木材を把持するための部材であり、開閉自在な一対のグラップルアーム55A,55Bを備えている。なお、グラップル55は、本発明に係る把持手段の一例である。
【0028】
送材装置56(56A,56B)は、グラップル55に把持された木材を長手方向に送り動作させるための装置であり、グラップルアーム55A,55Bにそれぞれ設けられている。なお、送材装置56は、本発明に係る送材手段の一例である。
【0029】
上述したプロセッサ5は、上述したもの以外にも、把持した木材を切断するためのチェーンソー、木材の送り量を計測するための測長装置、木材の枝払いを行うカッタ等を備えている。ただし、これらは本発明とは直接関係しないため、ここでは、図示及び説明を省略している。
【0030】
油圧ショベル1は、上述したプロセッサ5の各種動作を制御することが可能なコントローラ7(
図3参照)を備えている。
【0031】
図3に示すように、コントローラ7は、記憶部71と、演算部73と、制御部75とを備えて構成される。
【0032】
記憶部71は、プロセッサ5の送材装置56を制御するのに用いる各種の情報を記憶する処理部である。
【0033】
具体的には、記憶部71は、上部旋回体3、作業アタッチメント4(ブーム41及びアーム43)及びプロセッサ5の各寸法を記憶する。これらの各寸法は、アーム43の先端位置の座標情報を算出する際に用いられる。
【0034】
また、記憶部71は、上面視においてキャブ31の周囲に設定されたキャブ干渉領域AR(
図4参照)の座標情報を記憶する。
【0035】
ところで、上述したグラップル55で把持された木材(丸太)にはこぶや曲がりが存在する。また、グラップル55で把持された木材は作業中に揺動することがある。そこで、本実施形態では、キャブ干渉領域ARは、グラップル55で把持可能な木材の最大直径、木材の揺動域及び木材の形状が上面視におけるキャブ31の外形に加味されて設定されている。
【0036】
図4に示すように、キャブ干渉領域ARは、キャブ31を包囲する上面視矩形状の領域として設定されている。これに伴い、本実施形態では、記憶部71は、キャブ干渉領域ARの4つの頂点の座標情報を記憶しているものとする。
【0037】
また、記憶部71は、グラップル55に把持された木材がキャブ31に干渉しない最も高い位置を非干渉高さHT1(
図5参照)として記憶する。非干渉高さHT1は、グラップル55で把持可能な木材の最大直径、木材の揺動域及び木材の形状を考慮し、キャブ31の下端よりも下方に設定される。
【0038】
演算部73は、送材装置56の動作を制御するための基準角度θ1(
図4参照)及び判定対象角度θ2(
図4参照)を演算する処理部である。
【0039】
図4に示す基準角度θ1は、アーム43の先端位置P1とキャブ干渉領域ARとに基づいて定まる角度である。具体的には、演算部73は、基準角度θ1に先行してアーム43の先端位置P1を算出する。アーム43の先端位置P1は、上部旋回体3及び作業アタッチメント4(ブーム41及びアーム43)の各寸法と角度センサ6A~6Cで検出された回動角度とに基づいて算出される。なお、本実施形態では、アーム43の先端位置P1は、上面視における座標情報として算出されるものとする。また、アーム43の先端位置P1は、作業アタッチメント4の操作に応じて変化するため、所定の周期で算出され続けるものとする。
【0040】
この後、演算部73は、算出されたアーム43の先端位置P1を用いて基準角度θ1を演算する。具体的には、演算部73は、上面視において、アーム43の先端位置P1とキャブ干渉領域ARのうち旋回中心から最も離れた位置P2とを結ぶ直線BLが作業アタッチメント4の中心線CLに対してなす鋭角の角度を基準角度θ1として演算する。
【0041】
他方、判定対象角度θ2は、上述した基準角度θ1と比較するための角度である。演算部73は、角度センサ6Dで検出された回動角度に基づいて、上面視において木材の長手方向が作業アタッチメント4の中心線CLに対してなす鋭角の角度を判定対象角度θ2として演算する。
【0042】
また、演算部73は、上部旋回体3、作業アタッチメント4(ブーム41及びアーム43)及びプロセッサ5の各寸法と角度センサ6A~6Cで検出された回動角度とに基づいて、グラップル55に把持された木材の高さHT2を演算する。
【0043】
制御部75は、送材装置56の動作を制御する処理部である。具体的には、制御部75は、
図6に示すフローチャートの処理を実行する。
【0044】
まず、ステップS1において、制御部75は、演算部73で演算された木材の高さHT2(
図5)が記憶部71に記憶された非干渉高さHT1(
図5)よりも低いか否かを判定する。ここで、木材の高さHT2が非干渉高さHT1よりも低い(すなわち、木材がキャブ31に接触する可能性がない)と判定された場合(S1:YES)、処理はステップS4に進む。そして、ステップS4において、制御部75は、送材装置56の動作を許容する(送材装置56に動作を許容する信号を出力する)。
【0045】
一方、木材の高さHT2が非干渉高さHT1よりも高いと判定された場合(S1:NO)、処理はステップS2に進む。
【0046】
ステップS2において、制御部75は、演算部73で演算された判定対象角度θ2が同じく演算部73で演算された基準角度θ1よりも小さいか否かを判定する。ここで、判定対象角度θ2が基準角度θ1よりも大きい(すなわち、木材がキャブ31に接触する可能性がない)と判定された場合(S2:YES)、処理は上述したステップS4に進み、送材装置56の動作が許容される。
【0047】
一方、判定対象角度θ2が基準角度θ1よりも小さい(すなわち、木材がキャブ31に接触する可能性がある)と判定された場合(S2:YES)、処理は上述したステップS3に進む。
【0048】
ステップS3において、制御部75は、送材装置56の動作を停止する(送材装置56に動作を停止する信号を出力する)。
【0049】
上述した実施形態によれば、作業アタッチメントの先端位置P1とキャブ干渉領域ARのうち旋回中心から最も離れた位置P2とを結ぶ直線BLが作業アタッチメント4の中心線CLに対してなす鋭角の角度を基準角度θ1として演算すると共に、上面視において木材の長手方向が作業アタッチメント4の中心線CLに対してなす鋭角の角度を判定対象角度θ2として演算する。そして、判定対象角度θ2が基準角度θ1よりも小さいと判定した場合には、送材装置56による送材を停止する。そのため、プロセッサ5を用いた木材の送材に際し、木材がキャブ31に衝突するのを確実に回避することが可能である。
【0050】
また、上述した実施形態によれば、キャブ干渉領域ARは、グラップル55で把持可能な木材の最大直径、木材の揺動域及び木材の形状が上面視におけるキャブ31の外形に加味されて設定されている。すなわち、送材作業におけるゆらぎを考慮して、キャブ31の外形よりも若干広くなるように設定されている。そのため、キャブ干渉領域ARをより実際の作業に即した適切な範囲に設定することができ、木材がキャブ31に干渉するのを確実に防ぎつつ、送材装置56の動作が必要以上に制限されない。
【0051】
また、上述した実施形態では、木材の高さHT2が非干渉高さHT1よりも低いと判定された場合(
図6のS1:YES)、送材装置56の動作が許容される(S4)。すなわち、木材が比較的低い位置に存在し、キャブ31に接触する可能性がない場合には、送材装置56の動作が制限されないようになっている。よって、送材装置56の動作が必要以上に制限されず、作業性が損なわれない。
【0052】
<2.変形例>
本発明による作業機械及びプロセッサ制御装置は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0053】
上述した実施形態では、刻々と変動するアーム43の先端位置P1(変動値)が演算され、演算された先端位置P1を用いて更に基準角度θ1(変動値)が演算される場合を例示したが、これに限定されない。
【0054】
例えば、アーム43の先端が最も機械側に近づいた場合のアーム43の先端位置P0(固定値)を用いて予め基準角度θ0(固定値)を演算して記憶部71に記憶しておくようにしてもよい。
【0055】
かかる変形例においては、アーム43の先端位置P1を演算する必要がないため、上述した実施形態で説明した角度センサ6A~6Cを設ける必要がない。
【0056】
また、角度センサ6Dの代わりに近接センサを用いてもよい。詳細には、取付部51に近接センサを設け、油圧モータ53に検出体を設けるようにしてもよい。その際、油圧モータ53に設けられる検出体は、木材の長手方向が作業アタッチメント4の中心線CLに対してなす鋭角が所定の角度となるタイミングで近接センサに検出される位置に配置すればよい。そして、近接センサがONになると、制御部75は、送材装置56の動作を停止するようにすればよい。ここで、近接センサ及び検出体は、本発明に係る角度検出手段の一例である。このような構成によれば、上記実施形態で説明した演算処理が不要になり、コントローラ7の構成を簡略できる。また、角度センサ6A~6Cや角度センサ6Dを設けずに済むため、コストを低減することも可能である。
【0057】
なお、上述した変形例では、アーム43の先端が最も機械側に近づいた場合、換言すれば、木材接触の可能性が最も高い場合のアーム43の先端位置P0を用いて予め基準角度θ0が演算されている。よって、アーム43の先端が前方へ離れた場合に基準角度θ0を用いて送材装置56を制御すれば、木材がキャブ31に接触する可能性はない。
【0058】
また、上述した実施形態では、木材の高さHT2が非干渉高さHT1よりも低い場合に(
図6のS1:YES)、送材装置56の動作が許容される制御(S4)を例示したが、これに限定されない。木材の高さHT2が非干渉高さHT1よりも低いか否かに関係なく、判定対象角度θ2が基準角度θ1よりも小さいと判定された場合は、常に、送材装置56の動作を停止するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、
図6のステップS3において送材装置56の動作を完全に停止する場合を例示したが、これに限定されず、送材装置56の動作を減速するようにしてもよい。その際、木材のキャブ31への衝突を回避すべく、送材装置56の動作(送材スピード)が極めて低速となるように制御するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように本発明による作業機械は、アーム先端に装着されるプロセッサを用いて木材を送材するのに適している。
【符号の説明】
【0061】
1 油圧ショベル、2 下部走行体、3 上部旋回体、4 作業アタッチメント、
5 プロセッサ、6A~6C 角度センサ、6D 角度センサ、7 コントローラ、
30 アッパーフレーム、31 キャブ、41 ブーム、43 アーム、
51 取付部、52 支持部材、53 油圧モータ、54 作業具本体、
55 グラップル、55A,55B グラップルアーム、56 送材装置、
71 記憶部、73 演算部、75 制御部、
AR キャブ干渉領域、θ1 基準角度、θ2 判定対象角度