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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】収音装置、及び車載カラオケ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230511BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20230511BHJP
   H04R 3/02 20060101ALI20230511BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20230511BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R1/40 320A
H04R3/02
G10K15/04 302D
B60R11/02 S
B60R11/02 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019128903
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021016048
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸俊
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-288800(JP,A)
【文献】特開平03-293846(JP,A)
【文献】特開平07-023494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/40
H04R 3/02
G10K 15/04
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸に沿った双指向性を有し、前記第1の軸上で第1の間隔を隔てた第1の点と第2の点とに到来する音を収音する第1のマイクユニットと、
前記第1の軸に略重なる第2の軸に沿った双指向性を有し、前記第2の軸上で前記第1の間隔よりも短い第2の間隔を隔てた第3の点と第4の点とに到来する音を収音する第2のマイクユニットと、
前記第1のマイクユニットから出力される第1の出力信号と前記第2のマイクユニットから出力される第2の出力信号とを合成し、合成された信号を出力する合成部と、
を有する収音装置。
【請求項2】
前記第1のマイクユニットと前記第2のマイクユニットの少なくとも一方は、1つの振動板を有する双指向性マイクユニットである、請求項1に記載の収音装置。
【請求項3】
前記第1のマイクユニットは、前記双指向性マイクユニットであり、
前記第1の点に到来する音を前記第1のマイクユニットの振動板の一方の面に案内する第1の管と、
前記第2の点に到来する音を前記第1のマイクユニットの振動板の他方の面に案内する第2の管と、
を有する、請求項2に記載の収音装置。
【請求項4】
前記第1の管の長さは前記第2の管の長さに略等しい、請求項3に記載の収音装置。
【請求項5】
前記第1のマイクユニットは、前記第1の点に配置される第1の無指向性マイクと、前記第2の点に配置される第2の無指向性マイクと、前記第1の無指向性マイクの出力信号と前記第2の無指向性マイクの出力信号との差分に応じた信号を前記第1出力信号として生成する第1生成部とを有し、
前記第2のマイクユニットは、前記第3の点に配置される第3の無指向性マイクと、前記第4の点に配置される第4の無指向性マイクと、前記第3の無指向性マイクの出力信号と前記第4の無指向性マイクの出力信号との差分に応じた信号を前記第2出力信号として生成する第2生成部とを有する、
請求項1に記載の収音装置。
【請求項6】
前記第1の点、前記第2の点、前記第3の点、及び前記第4の点は、1つの直線上に設けられる、請求項5に記載の収音装置。
【請求項7】
前記第1のマイクユニットと前記第2のマイクユニットとを収納し、前記第1の点に対応する第1の開口と、前記第2の点に対応する第2の開口と、前記第3の点に対応する第3の開口と、前記第4の点に対応する第4の開口とが設けられたケースを有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の収音装置。
【請求項8】
前記合成部は、
前記第1の出力信号が入力される第1のローパスフィルタと、
前記第2の出力信号が入力される第2のローパスフィルタと、
前記第1のローパスフィルタの出力信号と前記第2のローパスフィルタの出力信号とを加算して出力する加算器と、を有し、
前記第1のローパスフィルタのカットオフ周波数は前記第2のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低い、請求項1から7までのいずれか1項に記載の収音装置。
【請求項9】
車両の車室に配置される第1のスピーカと、
前記第1のスピーカと向き合う第2のスピーカと、
前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの一方から他方に向かう方向と前記第1の軸及び前記第2の軸が交わるように前記車室に配置される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の収音装置と、
カラオケの伴奏音を表す音信号に前記収音装置の出力信号を加算して前記第1のスピーカと前記第2のスピーカとに出力する信号処理部と、
を有する車載カラオケ装置。
【請求項10】
車両の車室に配置される第1のスピーカと、
前記第1のスピーカと向き合う第2のスピーカと、
前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの一方から他方に向かう方向の中点に前記第1の軸と前記第2の軸の少なくとも一方が当該方向と略重なるように配置される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の収音装置と、
カラオケの伴奏音を表す音信号と前記収音装置の出力信号とを合成して前記第1のスピーカと前記第2のスピーカとに出力する信号処理部と、
を有する車載カラオケ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収音装置、及び車載カラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内に配置されたマイクユニットとスピーカとを用いて、車室内における複数の搭乗者間の会話を支援する技術、又は車室内でカラオケを楽しめるようにする技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、車両の搭乗者の音声を収音する超指向性マイクユニットと、この超指向性マイクユニットにより収音され、増幅された音声を出力するスピーカとを有する車内会話システムの発明が開示されている。特許文献1に開示の車内会話システムでは、ハウリングを抑圧する観点から、スピーカは、超指向性マイクユニットによる収音範囲外に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第31900554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の車内会話システムは、超指向性マイクユニットを用いるので、運転者の音声と助手席の同乗者の音声の両方を同時に収音することができない、という問題がある。
【0005】
運転者の音声と助手席の同乗者の音声の両方を同時に収音できるようにするために双指向性マイクユニットを用いることが考えられる。双指向性マイクユニットは低音域の感度が低いので、双指向性マイクユニットの出力信号に対して低音域の音量を電気的に増幅する信号処理を施すことがある。しかし、低音域の音量を電気的に増幅すると、自己ノイズも同じ比率で増幅され、S/N比が低下する、といった不具合がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、S/N比を低下させることなく双指向性を有する収音装置の低音域の感度を改善する技術を提供することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る収音装置の一態様は、第1の軸に沿った双指向性を有し、前記第1の軸上で第1の間隔を隔てた第1の点と第2の点とに到来する音を収音する第1のマイクユニットと、前記第1の軸に略重なる第2の軸に沿った双指向性を有し、前記第2の軸上で前記第1の間隔よりも短い第2の間隔を隔てた第3の点と第4の点とに到来する音を収音する第2のマイクユニットと、前記第1のマイクユニットから出力される第1の出力信号と前記第2のマイクユニットから出力される第2の出力信号とを合成し、合成された信号を出力する合成部と、を有する。
【0008】
また、本開示に係る車載カラオケ装置の一態様は、車両の車室に配置される第1のスピーカと、前記第1のスピーカと向き合う第2のスピーカと、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの一方から他方に向かう方向と前記第1の軸及び前記第2の軸が交わるように前記車室に配置される、上記収音装置と、カラオケの伴奏音を表す音信号に前記収音装置の出力信号を加算して前記第1のスピーカと前記第2のスピーカとに出力する信号処理部と、を有する。
【0009】
また、本開示に係る車載カラオケ装置の一態様は、車両の車室に配置される第1のスピーカと、前記第1のスピーカと向き合う第2のスピーカと、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの一方から他方に向かう方向の中点に前記第1の軸と前記第2の軸の少なくとも一方が当該方向と略重なるように配置される上記収音装置と、カラオケの伴奏音を表す音信号と前記収音装置の出力信号とを合成して前記第1のスピーカと前記第2のスピーカとに出力する信号処理部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る収音装置10Aを含む車載カラオケ装置1Aの構成例を示す図である。
図2】車載カラオケ装置1Aが設置される車両Cの車室CRにおける収音装置10A、スピーカ20-1及びスピーカ20-2の配置例を示す図である。
図3】収音装置10Aをz軸方向から見た平面図である。
図4】収音装置10AのXX´線に沿った断面図である。
図5】収音装置10AをX´方向から見た側面図である。
図6】マイクユニット110Aの指向特性のシミュレーションを説明するための図である。
図7】収音装置10Aに含まれるマイクユニット110A-1の指向特性を示す図である。
図8】収音装置10Aに含まれるマイクユニット110A-2の指向特性を示す図である。
図9】収音装置10Aに含まれるマイクユニット110A-1及びマイクユニット110A-2の各々の周波数特性の一例を示す図である。
図10】マイクユニット110A-1から出力される第1の出力信号S1、ローパスフィルタ122-1、及びローパスフィルタ122-1の出力信号S1´の周波数特性の一例を示す図である。
図11】マイクユニット110A-2から出力される第2の出力信号S2、ローパスフィルタ122-2、及びローパスフィルタ122-2の出力信号S2´の周波数特性の一例を示す図である。
図12】出力信号S1´、出力信号S2´及び合成部120Aの出力信号SSの周波数特性の一例を示す図である。
図13】第2実施形態に係る収音装置10Bを含む車載カラオケ装置1Bの構成例を示す図である。
図14】収音装置10Bの平面図である。
図15】収音装置10BのXX´線に沿った断面図である。
図16】収音装置10BをX´方向から見た側面図である。
図17】第3実施形態に係る収音装置10Cを含む車載カラオケ装置1Cの構成例を示す図である。
図18】収音装置10Cの平面図である。
図19】収音装置10CのXX´線に沿った断面図である。
図20】変形例(1)における収音装置10A、スピーカ20-1及びスピーカ20-2の配置例を示す図である。
図21】変形例(2)の車載カラオケ装置を説明するための図である。
図22】変形例(2)の車載カラオケ装置を説明するための図である。
図23】変形例(3)の収音装置10Dの構成例を示す図である。
図24】収音装置10Dの平面図である。
図25】収音装置10DのXX´線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示に係る実施の形態を説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜異なる。また、以下に記載する実施の形態は、本開示の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0012】
<1.第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係る収音装置10Aを含む車載カラオケ装置1Aの構成例を示す図である。図1に示すように、車載カラオケ装置1Aは、収音装置10Aの他に、スピーカ20-1及びスピーカ20-2と、信号処理部30と、を備える。図1に示す車載カラオケ装置1Aにおいて、収音装置10Aは双指向性を有する。収音装置10Aは、運転者の歌声及び助手席の搭乗者の歌声を収音する。収音装置10Aは、収音した音声の音波形を表す出力信号SSを信号処理部30に与える。信号処理部30には、図示せぬ音源からカラオケの伴奏音の波形を表す伴奏音信号が与えられる。信号処理部30は、例えばDSP(Digital Signal Processor)である。信号処理部30は、収音装置10Aの出力信号SSに伴奏音信号を加算し、加算結果をスピーカ20-1とスピーカ20-2とに振り分けて出力する。
【0013】
図2は、車載カラオケ装置1Aを搭載した車両Cの平面図である。車両Cの車室CRには、矩形に配置された4つの座席51~54と、天井6と、フロントライトドア71と、フロントレフトドア72と、リアライトドア73と、リアレフトドア74と、が配置される。車両Cが日本向けの製品である場合、座席51は運転席であり、座席52は助手席である。但し、車両Cが米国又は欧米向けの製品である場合、座席51は助手席であり、座席52は運転席である。以下の説明では車両Cが日本向けの製品であることを想定する。座席53は後部右座席であり、座席54は後部左座席である。座席51~54の各々は、布又は革を素材とする材質である。座席51~54は、共通の方向を向いている。
【0014】
図2では詳細な図示を省略したが、収音装置10A、スピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々はオーディオケーブルなどの信号線を介して信号処理部30に接続されている。図2では信号処理部30の図示も省略されているが、信号処理部30は車両Cの運転席側のコンソールに配置されている。
【0015】
スピーカ20-1は、車両Cの車室CRに配置される第1のスピーカの一例であり、スピーカ20-2は第1のスピーカと向き合う第2のスピーカの一例である。具体的には、スピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々は所謂ドアスピーカである。スピーカ20-1は、その放音面を座席51に向けた姿勢でフロントライトドア71に配置される。スピーカ20-2はその放音面を座席52に向けた姿勢でフロントレフトドア72に配置される。
【0016】
収音装置10Aは、スピーカ20-1からの距離とスピーカ20-2からの距離とが略等しい位置に設けられる。なお、スピーカ20-1からの距離とスピーカ20-2からの距離とが略等しいとは、スピーカ20-1とスピーカ20-2とを結ぶ線分の中点に収音装置10Aが設けられる場合の他に、技術上の誤差の範囲で上記中点の近傍に収音装置10Aが設けられる場合を含む、という意味である。収音装置10Aの具体的な設置場所としては、車両のダッシュボード、サンバイザ、ルームミラーの背面又は天井6等が挙げられる。
【0017】
収音装置10Aは、スピーカ20-1からスピーカ20-2を見た方向と鉛直方向とに対して当該収音装置10Aの指向軸が略直交する姿勢で配置される。以下では、車室CRにおいてスピーカ20-1からスピーカ20-2へ向かう方向をy軸方向、鉛直方向をz軸方向、y軸方向及びz軸方向の両方に直交する方向をx軸方向と呼ぶ。本実施形態では、収音装置10Aの指向軸はx軸方向に沿っている。なお、収音装置10Aの指向軸がy軸方向及びz軸方向に略直交するとは、厳密に直交する場合の他に技術上の誤差の範囲で直交する場合を含む、という意味である。収音装置10Aを上記姿勢で設けることで、収音装置10Aが感度を有さない方向にスピーカ20-1及びスピーカ20-2が位置することとなり、ハウリングの発生を回避することができる。また、図2に示す配置態様によれば、ロードノイズ等の任意の方向から到来し得るノイズについて、感度を有さない方向から到来するノイズを収音対象から除外することが可能になる。さらに、図2に示す配置態様によれば、収音装置10Aの指向軸方向に運転者等の歌唱音声の音源が位置するため、十分な拡声効果が得られる。
【0018】
前述したように、振動板を1つだけ有する双指向性マイクユニット等の双指向性を有する従来の収音装置には、低音域の感度が低いという欠点があり、低音域の音量を電気的に持ち上げるなどの対策を施す必要があった。これに対して、本実施形態における収音装置10Aは、低音域の感度が向上するように構成されており、低音域の電気的な増幅は不要である。以下、収音装置10Aを中心に説明する。
【0019】
図1には、収音装置10Aの電気的な構成の一例が示されている。
図1に示すように、収音装置10Aは、マイクユニット110A-1及びマイクユニット110A-2と、合成部120Aとを有する。マイクユニット110A-1は第1の軸に沿った双指向性を有する第1のマイクユニットの一例であり、マイクユニット110A-2は第2の軸に沿った双指向性を有する第2のマイクユニットの一例である。以下では、マイクユニット110A-1とマイクユニット110A-2の各々を区別する必要がない場合には、「マイクユニット110A」と表記する。マイクユニット110Aは、1つの振動板を有する双指向性マイクユニット112と、双指向性マイクユニット112の出力信号を増幅して合成部120Aに出力するアンプ114とを備える。合成部120Aは、マイクユニット110A-1から出力される第1の出力信号S1とマイクユニット110A-2から出力される第2の出力信号S2とを加算し、その加算結果である出力信号SSを信号処理部30に出力する。
【0020】
図3は、z方向から見た収音装置10Aの平面図である。図3におけるXX´線は収音装置10Aの指向軸に沿っている。図4図3におけるXX´線に沿った平面、すなわち収音装置10Aの指向軸を含む平面による収音装置10Aの断面の一例を示す図である。そして、図5はX´側から見た収音装置10Aの側面図である。図4及び図5において、符号112-1aはマイクユニット110A-1における双指向性マイクユニット112の振動板を指し、符号112-2aはマイクユニット110A-2における双指向性マイクユニット112の振動板を指す。図3及び図4においてA1A1´線は第1の軸に沿った線分であり、A2A2´線は第2の軸に沿った線分である。また、図3図5において符号130は、合成部120Aの設けられる基板を指し、符号140Aはマイクユニット110A-1及びマイクユニット110A-2を収納するケースを指す。つまり、本実施形態における収音装置10Aは、マイクユニット110A及び合成部120Aの他に、基板130とケース140Aとを有する。
【0021】
収音装置10Aにおいて、マイクユニット110A-1は、製造技術上の誤差を含む範囲で第1の軸とXX´線とが平行になるように設けられる。同様に、収音装置10Aにおいて、マイクユニット110A-2は、製造技術上の誤差を含む範囲で第2の軸がXX´線と平行になるように設けられる。そして、マイクユニット110A-1とマイクユニット110A-2とは、図3に示すように、第1の軸と第2の軸とがz軸方向から見た時に重なるように設けられる。また、マイクユニット110A-1とマイクユニット110A-2とは、第1の軸と第2の軸の間のz軸方向の距離は十分に小さくなるように設けられる。第1の軸と第2の軸の間のz軸方向の距離を十分に小さくするのは、マイクユニット110A-1により収音される音とマイクユニット110A-2により収音される音についての音圧差及び位相差が十分に小さく、マイクユニット110A-1により収音される音とマイクユニット110A-2により収音される音とが同じと見做せるようにするためである。即ち、第1の軸と第2の軸とは略重なる。略重なるとは、第1の軸と第2の軸とが、完全に重なる場合のみならず、第1の軸と第2の軸とが離れている場合を含む。但し、第1の軸と第2の軸とが離れている場合であっても、マイクユニット110A-1により収音される音とマイクユニット110A-2により収音される音とが、実質的に同じとなる。
【0022】
図3図5に示すように、ケース140Aは、XX´線方向を長手方向とする筒状部材である第1部材142と、同じくXX´線方向を長手方向とする筒状部材である第2部材144と、を連結して形成される。図3及び図4に示すように、第2部材144の長手方向の長さは、第1部材142の長手方向の長さよりも短い。図3に示すように第1部材142の長手方向の長さはD1であり、第2部材144の同方向の長さはD2(D2<D1)である。本実施形態では、D1は50mm、D2は20mmである。図4に示すように、第1部材142のx軸方向の両端には開口152-1と開口152-2とが設けられており、第2部材144のx軸方向の両端には開口152-3と開口152-4とが設けられている。以下では、第1部材142のx軸方向の両端からx軸方向に等距離の位置を「第1部材142の中心」と呼び、第2部材144のx軸方向の両端からx軸方向に等距離の位置を「第2部材144の中心」と呼ぶ。
【0023】
図3及び図4に示すようにケース140Aは、第1部材142の中心と第2部材144の中心とがz軸に沿った直線上に並ぶように、第1部材142に第2部材144を連結して形成される。マイクユニット110A-1の振動板112-1aは第1部材142の中心又は技術上の誤差の範囲で当該中心の近傍に設けられる。振動板112-1aは、一方の面が開口152-1に向き、他方の面が開口152-2に向く姿勢で第1部材142の内部空間に設けられる。マイクユニット110A-2の振動板112-2aは第2部材144の中心又は技術上の誤差の範囲で当該中心の近傍に設けられる。振動板112-2aは、一方の面が開口152-3に向き、他方の面が開口152-4に向く姿勢で第2部材144の内部空間に設けられる。前述したように第2部材144は第1部材142に連結されているので、収音装置10Aでは、マイクユニット110A-2はマイクユニット110A-1に連結されている。
【0024】
音源から放射され開口152-1に到来する音は、第1部材142の内部空間を経由して振動板112-1aの一方の面に案内される。同様に、音源から放射され開口152-2に到来する音は、第1部材142の内部空間を経由して振動板112-1aの他方の面に案内される。つまり、第1部材142は、図4に示すように、開口152-1上かつ第1の軸上の第1の点P1に到来する音を振動板112-1aの一方の面に案内する第1の管162の役割を果たす。また、第1部材142は、図4に示すように、開口152-2上かつ第2の軸上の第2の点P2に到来する音を振動板112-1aの他方の面に案内する第2の管164の役割を果たす。第1部材142のx軸方向の長さはD1であるため、マイクユニット110A-1における音の収音位置である第1の点P1及び第2の点P2は、第1の軸上に間隔D1を隔てて並ぶ。
【0025】
マイクユニット110A-1において振動板112-1aは、第1部材142の中心又はその近傍に設けられているため、第1の管162の管長と第2の管164の管長は略等しい。第1の管162の管長と第2の管164の管長が略等しいため、振動板112-1aの一方の面に案内された音と振動板112-1aの他方の面に案内された音の位相差は、第1の点P1に到来した音と第2の点P2に到来した音の位相差に略等しい。マイクユニット110A-1では、その指向軸である第1の軸上に間隔D1を隔てて並ぶ第1の点P1及び第2の点P2の各々に到来する音の音圧差に応じて振動板112-1aが振動し、この振動が電気信号へ変換されて出力される。同様に、マイクユニット110A-2では、第2の軸上かつ開口152-3上の第3の点P3(図4参照)及び第2の軸上かつ開口152-4上の第4の点P4(図4参照)の各々に到来する音の音圧差に応じて振動板112-2aが振動し、この振動が電気信号へ変換されて出力される。第2部材144のx軸方向の長さはD2であるため、マイクユニット110A-2における音の収音位置である第3の点P3及び第4の点P4は、第2の軸上に間隔D2を隔てて並ぶ。
【0026】
図6は、マイクユニット110Aの指向特性を検証するためのシミュレーションを説明するための図である。このシミュレーションでは、図6に示すように、第1部材142の中心又は第2部材144の中心である点CPから見て、XX´線との為す角度θの方向に距離L(本実施形態では、L=500mm)を隔てた位置にある音源SPから音が放射されるとする。音源SPから放射される音波は球面状に広がる。このため、音源SPから放射される音の周波数がfである場合、音源SPから距離Lを隔てた位置における音圧の振幅を1とすると、第1の点P1(第3の点P3)における音圧PAと第2の点P2(第4の点P4)における音圧PBは以下の数1及び数2で算出される。
【数1】

【数2】

なお、数1及び数2において、jは虚数単位であり、πは円周率であり、eは自然対数の底である。また、数1におけるtはL/c(cは音速)であり、数2におけるtはL/cである。また、数1におけるLは以下の数3にしたがって算出され、数2におけるLは以下の数4にしたがって算出される。
【数3】

【数4】
【0027】
f=10Hz,100Hz,1000Hzの各周波数について、0≦θ<360°の範囲で角度θを変えつつ音圧PAと音圧PBとの差圧の絶対値を計算すると、マイクユニット110A-1については、図7に示す指向特性が得られ、マイクユニット110A-2については、図8に示すように指向特性が得られる。図7及び図8を参照すれば明らかなように、マイクユニット110Aによれば、10Hz,100Hz,及び1000Hzの各周波数について双指向性が得られる。
【0028】
図9は、第1の出力信号S1により表される差圧の周波数特性FT1及び第2の出力信号S2により表される差圧の周波数特性FT2の一例を示す図である。図9を参照すれば明らかなように、マイクユニット110A-1はマイクユニット110A-2に比較して低音域から5000Hz付近にかけての感度が向上していることが判る。この理由は以下の通りである。この音域においては、第1の点P1に到来した音の位相と第2の点P2に到来した音の位相との差が、第3の点P3に到来した音の位相と第4の点P4に到来した音の位相の差よりも大きくなる。よって、マイクユニット110A-1はマイクユニット110A-2に比較して低音域における感度が高くなる。なお、マイクユニット110A-1では、第1の点P1と第2の点P2の間の距離D1の波長を有する周波数、すなわちfD1=c/D1、及びその整数倍の周波数において、第1の点P1に到来した音の位相と第2の点P2に到来した音の位相が一致するため、感度は極小となり、図9の周波数特性FT1に示すように、7000Hz及びその整数倍の周波数に急峻なディップを生ずる。また、距離D1が半波長となる周波数、すなわちfD1P=2c/D1、及びその奇数倍の周波数において、第1の点P1に到来した音の位相と第2の点P2に到来した音の位相の差が180°となるため、感度は極大となり、図9の周波数特性FT1に示すように、3500Hz及びその奇数倍の周波数にピークを生ずる。マイクユニット110A-2についても同様にディップとピークを生ずる。
【0029】
本実施形態の収音装置10Aでは、マイクユニット110A-1から出力される第1の出力信号S1とマイクユニット110A-2から出力される第2の出力信号S2とを合成することで低音域における感度の向上が実現される。なお、マイクユニット110A-1では、波長/4が第1の管162及び第2の管164の管長(D1/2)の奇数倍となる音について管共鳴が発生し得る。この管共鳴の基本モードの周波数はfDT=c/(2×D1)であり、マイクユニット110A-1の極大感度となる周波数fD1Pと一致する。この管共鳴の影響については後述するローパスフィルタ122-1により回避可能である。なお、管共鳴の影響をより確実に回避するために第1の管162及び第2の管164の各々の内部或いは開口152-1及び開口152-2に吸音材を設置してもよい。
【0030】
合成部120Aは、図1に示すように、ローパスフィルタ122-1及びローパスフィルタ122-2と、加算器124とを有する。なお、図1において「ローパスフィルタ」は「LPF」と略記されている。ローパスフィルタ122-1は、第1の出力信号S1に含まれる周波数成分のうち、カットオフ周波数F1よりも低い周波数の信号成分を出力信号S1´として加算器124へ出力する。ローパスフィルタ122-2は、第2の出力信号S2に含まれる信号成分のうち、カットオフ周波数F2よりも低い周波数の信号成分を出力信号S2´として加算器124へ出力する。加算器124は、ローパスフィルタ122-1の出力信号S1´とローパスフィルタ122-2の出力信号S2´とを加算して得られる出力信号SSを信号処理部30に出力する。合成部120Aにおける信号処理を、アナログ信号処理とした場合には、デジタル信号処理の様に遅延が発生することはない。
【0031】
図10は、周波数特性FT1、ローパスフィルタ122-1の周波数特性FL1、及び出力信号S1´の周波数特性FT1´の一例を示す図である。また、図11は、周波数特性FT2、ローパスフィルタ122-2の周波数特性FL2、及び出力信号S2´の周波数特性FT2´の一例を示す図である。ローパスフィルタ122-1を用いて第1の出力信号S1から出力信号S1´を生成するのは、第1の出力信号S1において7000Hz以上の周波数帯域に現れるディップを軽減するためである。同様に、ローパスフィルタ122-2を用いて第2の出力信号S2から出力信号S2´を生成するのは、第2の出力信号S2において11000Hz以上の周波数帯域に現れるディップを軽減するためである。このように、第1の出力信号S1では、第2の出力信号S2に比較して低い周波数帯域にディップが現れるため、カットオフ周波数F1はカットオフ周波数F2よりも低く定められている。例えば、カットオフ周波数F1は795Hzであり、カットオフ周波数F2は4547Hzである。
【0032】
図12は、周波数特性FT1´、周波数特性FT2´、及び出力信号SSの表す差圧の周波数特性FTSの一例を示す図である。図12を参照すると、出力信号S1´に比較して出力信号SSでは、10Hzから100000Hzまでの略全ての周波数において差圧が大きくなっており、特に7000Hz付近のディップが解消されていることが判る。また、図12を参照すると、出力信号S2´に比較して出力信号SSでは、100Hz付近では差圧が約11db大きくなっており、1000Hz付近では差圧が約8db大きくなっており、7000Hz以上の周波数では両者の差圧は略同等となっていることが判る。このように、本実施形態の収音装置10Aによれば、マイクユニット110A-1又はマイクユニット110A-2を単独で用いた場合に比較して低音域の感度が向上するので、低音域の信号成分を電気的に増幅する必要はない。
【0033】
以上説明したように本実施形態の収音装置10Aは、マイクユニット110A-1と、マイクユニット110A-2と、合成部120Aと、を有する。マイクユニット110A-1は、第1の軸に沿った双指向性を有し、第1の軸上で第1の間隔を隔てた第1の点P1と第2の点P2とに到来する音を収音する第1のマイクユニットである。マイクユニット110A-2は、第1のマイクユニットに連結され、第1の軸に並行な第2の軸に沿った双指向性を有し、第2の軸上で第1の間隔よりも短い第2の間隔を隔てた第3の点P3と第4の点P4とに到来する音を収音する第2のマイクユニットである。そして、合成部120Aは、第1のマイクユニットから出力される第1の出力信号と第2のマイクユニットから出力される第2の出力信号とを合成し、合成された信号を出力する。このような構成としたため、本実施形態の収音装置10Aによれば、低音域の電気的な増幅は必要なく、S/N比を低下させることなく低音域の感度を向上させることが可能になる。
【0034】
<2.第2実施形態>
図13は、本開示の第2実施形態による収音装置10Bを含む車載カラオケ装置1Bの構成例を示す図である。図13では、図1におけるものと同一の構成要素には図1におけるものと同じ符号が付されている。図13図1とを比較すれば明らかなように、車載カラオケ装置1Bと車載カラオケ装置1Aとの相違点は、収音装置10Aに代えて収音装置10Bを設けた点である。収音装置10Bは、収音装置10Aと同様に双指向性を有する。詳細な図示は省略したが、収音装置10Bは、収音装置10Aと同様に、スピーカ20-1とスピーカ20-2の一方から他方を見た方向と当該収音装置10Bの指向軸とが直交する姿勢で配置される。スピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々から出力される音が収音装置10Bにより収音され、ハウリングが発生すること、を回避するためである。
【0035】
図13図1とを比較すれば明らかなように、収音装置10Bと収音装置10Aとの相違点は、マイクユニット110A-1及びマイクユニット110A-2に代えてマイクユニット110B-1及びマイクユニット110B-2を設けた点である。マイクユニット110B-1は第1実施形態におけるマイクユニット110A-1と同様に第1の軸に沿った双指向性を有する第1のマイクユニットの一例であり、マイクユニット110B-2は第1実施形態におけるマイクユニット110A-2と同様に第2の軸に沿った双指向性を有する第2のマイクユニットの一例である。図13に示すように、収音装置10Bでは、マイクユニット110B-1から第1の出力信号S1が出力され、マイクユニット110B-2から第2の出力信号S2が出力される。以下では、マイクユニット110B-1とマイクユニット110B-2とを区別する必要がない場合には、「マイクユニット110B」と表記する。マイクユニット110Bとマイクユニット110Aとの相違点は、双指向性マイクユニット112及びアンプ114に代えて、無指向性マイクユニット113-1及び無指向性マイクユニット113-2と、アンプ114-1及びアンプ114-2と、減算器116とを設けた点である。
【0036】
マイクユニット110Bでは、無指向性マイクユニット113-1の出力信号はアンプ114-1による増幅を経て減算器116に入力される。同様に、無指向性マイクユニット113-2の出力信号はアンプ114-2による増幅を経て減算器116に入力される。本実施形態では、アンプ114-1におけるゲインとアンプ114-2におけるゲインは同じ値である。減算器116は、アンプ114-1の出力信号からアンプ114-2の出力信号を減算して合成部120Aに出力する。マイクユニット110B-1では、アンプ114-1、アンプ114-2及び減算器116は、マイクユニット110B-2における無指向性マイクユニット113-1及び無指向性マイクユニット113-2の各々の出力信号の差分に応じた信号を、第1の出力信号S1として生成する第1の生成部の役割を果たす。同様に、マイクユニット110B-2では、アンプ114-1、アンプ114-2及び減算器116は、マイクユニット110B-2における無指向性マイクユニット113-1及び無指向性マイクユニット113-2の各々の出力信号の差分に応じた信号を、第2の出力信号S2として生成する第2の生成部の役割を果たす。これにより、マイクユニット110Bでは、無指向性マイクユニット113-1と無指向性マイクユニット113-2とが並ぶ方向に指向軸を有する双指向性が実現される。
【0037】
図14は、収音装置10Bの平面図であり、図15は、収音装置10Bの指向軸に沿ったXX´線による断面図であり、図16は、収音装置10BをX´方向から見た側面図である。図14図16において符号130は、合成部120Aの設けられる基板を指し、符号140Bは、マイクユニット110B-1及びマイクユニット110B-2を収納するケースを指す。また、図14及び図15におけるA1A1´線は第1の軸に沿った線分であり、A2A2´線は第2の軸に沿った線分である。図14及び図15に示すように本実施形態ではA1A1´線とA2A2´線はXX´線と一致する。
【0038】
図14図16に示すように、ケース140Bは、扁平かつ略直方体状に形成されている。ケース140Bの平面には、収音装置10Bの指向軸に沿うXX´線上に並ぶ第1の点P1、第2の点P2、第3の点P3、及び第4の点P4の各収音位置に対応する開口152-1、152-2、152-3及び152-4が設けられる。図14に示すように、第1の軸に沿った第1の点P1と第2の点P2の間隔はD1であり、第1の点P1及び第2の点P2はケース140Bの中心から見て対称に配置される。また、第2の軸に沿った第3の点P3と第4の点P4の間隔はD2であり、第3の点P3及び第4の点P4はケース140Bの中心から見て対称に配置される。図14に示すように本実施形態においても、D2<D1である。
【0039】
図14及び図15に示すように、開口152-1にはマイクユニット110B-1の無指向性マイクユニット113-1が設けられており、開口152-2にはマイクユニット110B-1の無指向性マイクユニット113-2が設けられている。つまり、マイクユニット110B-1は、その指向軸である第1の軸上に設けられる第1の点P1に到来する音と第2の点P2に到来する音とを収音し、両者の差分に応じた第1の出力信号S1を出力する。これにより、マイクユニット110A-1と同様の周波数特性が得られる。
【0040】
また、図14及び図15に示すように、開口152-3にはマイクユニット110B-2の無指向性マイクユニット113-1が設けられており、開口152-4にはマイクユニット110B-2の無指向性マイクユニット113-2が設けられている。つまり、マイクユニット110B-2は、その指向軸である第2の軸上に設けられる第3の点P3に到来する音と第4の点P4に到来する音とを収音し、両者の差分に応じた第2の出力信号S2を出力する。これにより、マイクユニット110A-2と同様の周波数特性が得られる。
【0041】
収音装置10Bでは、マイクユニット110B-1から出力される第1の出力信号S1とマイクユニット110B-2から出力される第2の出力信号S2とが合成部120Aによって合成され、その合成結果が出力信号SSとして信号処理部30に出力される。このため、本実施形態の収音装置10Bによっても、低音域を電気的に増幅する必要はなく、S/N比を低下させることなく低音域の感度を向上させることが可能になる。
【0042】
<3.第3実施形態>
図17は、本開示の第3実施形態による収音装置10Cを含む車載カラオケ装置1Cの構成例を示す図である。図17では、図13におけるものと同一の構成要素には図1におけるものと同じ符号が付されている。図17図13とを比較すれば明らかなように、車載カラオケ装置1Cと車載カラオケ装置1Bとの相違点は、収音装置10Bに代えて収音装置10Cを設けた点である。収音装置10Cは、収音装置10Bと同様に双指向性を有する。収音装置10Cは、収音装置10Bと同様に、スピーカ20-1とスピーカ20-2の一方から他方を見た方向と当該収音装置10Cの指向軸とが直交する姿勢で配置される。スピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々から出力される音が収音装置10Cにより収音され、ハウリングが発生すること、を回避するためである。
【0043】
図17図13とを比較すれば明らかなように、収音装置10Cと収音装置10Bとの相違点は、マイクユニット110B-1及びマイクユニット110B-2に加えてマイクユニット110B-3を設けた点と、合成部120Aに代えて合成部120Bを設けた点、である。マイクユニット110B-3は、第3の軸に沿った双指向性を有する第3のマイクユニットの一例である。図17を参照すれば明らかなように、マイクユニット110B-3の構成は、マイクユニット110B-1及びマイクユニット110B-2の構成と同一である。
【0044】
図18は、収音装置10Cの平面図であり、図19は、収音装置10Cの指向軸に沿ったXX´線による断面図である。なお、収音装置10CをX´方向から見た側面図については収音装置10Bの側面図(図16参照)と同様であるため、図示を省略した。図18及び図19において符号130は、合成部120Bの設けられる基板を指し、符号140Cは、マイクユニット110B-1、マイクユニット110B-2及びマイクユニット110B-3を収納するケースを指す。また、図18及び図19におけるA1A1´線はマイクユニット110B-1の指向軸である第1の軸に沿った線分であり、A2A2´線はマイクユニット110B-2の指向軸である第2の軸に沿った線分である。そして、図18及び図19におけるA3A3´線は、マイクユニット110B-3の指向軸である第3の軸に沿った線分である。図18及び図19に示すように本実施形態ではA1A1´線、A2A2´線及びA3A3´線はXX´線と一致する。
【0045】
図18及び図19に示すように、ケース140Cは、扁平かつ略直方体状に形成されている。ケース140Cの平面には、収音装置10Cの指向軸に沿うXX´線上に並ぶ第1の点P1、第2の点P2、第3の点P3、第4の点P4、第5の点P5、及び第6の点P6の各収音位置に対応する開口152-1、152-2、152-3、152-4、152-5、及び152-6が設けられている。図18に示すように、第1の軸に沿った第1の点P1と第2の点P2の間隔はD1であり、第1の点P1及び第2の点P2はケース140Cの中心から見て対称に配置される。また、第2の軸に沿った第3の点P3と第4の点P4の間隔はD2であり、第3の点P3及び第4の点P4はケース140Cの中心から見て対称に配置される。そして、第3の軸に沿った第5の点P5と第6の点P6の間隔はD3であり、第5の点P5及び第6の点P6はケース140Cの中心から見て対称に配置される。図18に示すように本実施形態では、D2<D1<D3である。
【0046】
図18及び図19に示すように、開口152-1にはマイクユニット110B-1の無指向性マイクユニット113-1が設けられており、開口152-2にはマイクユニット110B-1の無指向性マイクユニット113-2が設けられている。つまり、本実施形態におけるマイクユニット110B-1も、第2実施形態におけるマイクユニット110B-1と同様に双指向性を有し、マイクユニット110A-1と同様の周波数特性を有する。また、図18及び図19に示すように、開口152-3にはマイクユニット110B-2の無指向性マイクユニット113-1が設けられており、開口152-4にはマイクユニット110B-2の無指向性マイクユニット113-2が設けられている。つまり、本実施形態におけるマイクユニット110B-2も、第2実施形態におけるマイクユニット110B-2と同様に双指向性を有し、マイクユニット110A-2と同様の周波数特性を有する。
【0047】
図18及び図19に示すように、開口152-5にはマイクユニット110B-3の無指向性マイクユニット113-1が設けられており、開口152-6にはマイクユニット110B-3の無指向性マイクユニット113-2が設けられている。つまり、マイクユニット110B-3は、第5の点P5に到来する音と第6の点P6に到来する音とを収音し、両者の差分に応じた信号を第3の出力信号S3として出力する。これにより、マイクユニット110B-3の双指向性が実現される。また、マイクユニット110B-3による音の収音位置である第5の点P5と第6の点P6の間隔D3は、間隔D1よりも大きいので、マイクユニット110B-3はマイクユニット110B-1よりも低音域の感度が高くなる。
【0048】
図17図13とを比較すれば明らかなように、合成部120Bと合成部120Aとの相違点は、以下の2点である。第1の相違点は、ローパスフィルタ122-1及びローパスフィルタ122-2に加えてローパスフィルタ122-3を有する点である。ローパスフィルタ122-3には、マイクユニット110B-3から出力される第3の出力信号S3が与えられる。ローパスフィルタ122-3は、第3の出力信号S3に含まれる信号成分のうち、カットオフ周波数F3より低い周波数の信号成分を出力信号S3´として通過させる。本実施形態では、カットオフ周波数F3はローパスフィルタ122-1のカットオフ周波数F1よりも低い周波数である。合成部120Bと合成部120Aとの第2の相違点は、加算器124において、出力信号S1´、出力信号S2´及び出力信号S3´を加算して出力信号SSを生成する点である。このように、合成部120Bは、第1の出力信号S1と第2の出力信号S2と第3の出力信号S3とを合成して出力信号SSを生成する点が合成部120Aと異なる。
【0049】
本実施形態の収音装置10Cによっても、低音域の電気的な増幅は必要ないので、S/N比を低下させることなく低音域の感度を向上させることが可能になる。また、本実施形態におけるマイクユニット110B-3は、マイクユニット110B-1よりも低音域の感度が高いため、収音装置10Cの低音域の感度は収音装置10Bよりも高くなる。
【0050】
<4.変形例>
以上の実施態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0051】
<4-1.変形例1>
図20に示すように、収音装置10Aの指向軸がy軸方向となるように収音装置10Aを配置して車載カラオケ装置1Aを構成してもよい。収音装置10Aがスピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々から略等距離の位置に配置され、かつスピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々から同相の音を出力するのであれば、スピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々から出力される音は、振動板112-1a及び振動板112-2aの位置で互いに打消し合う。このため、図20に示すように収音装置10Aを配置してもハウリングの発生を回避することができる。図20に示す配置態様は、歌唱音声の音量を抑えてスピーカ20-1及びスピーカ20-2の各々から出力する場合に効果的である。また、図20に示す配置態様では、座席51(或いは座席52)に座る歌唱者から第1の点P1(図4参照)に到来する音と第2の点P2(図4参照)に到来する音との位相差が大きくなるので、図2に示す配置態様に比較してさらに低音域の感度が向上する。収音装置10Bについても同様に、指向軸がy軸方向となるように配置して車載カラオケ装置を構成してもよく、収音装置10Cについても同様に、指向軸がy軸方向となるように配置して車載カラオケ装置を構成してもよい。
【0052】
<4-2.変形例2>
第1実施形態の車載カラオケ装置1Aには、各々ドアスピーカであるスピーカ20-1とスピーカ20-2とが含まれていた。しかし、本開示の適用対象の車載カラオケ装置は、図21に示すように、各々Aピラースピーカであるスピーカ20-3とスピーカ20-4とを含む車載カラオケ装置であってもよい。なお、図21では、収音装置10Aとスピーカ20-1~20-4とに接続される信号処理部30の図示は省略されている。また、第1実施形態の車載カラオケ装置1Aには収音装置10Aが1つ含まれていた。しかし、本開示の適用対象の車載カラオケ装置は、図22に示すように、複数の収音装置(図22に示す例では、それぞれ座席52と座席51に対応させて配置される収音装置10A-1及び収音装置10A-2)を含んでいてもよい。図22においても、収音装置10A-1及び収音装置10A-2とスピーカ20-1~20-2とに接続される信号処理部30の図示は省略されている。
【0053】
<4-3.変形例3>
上述の各実施形態では収音装置10A、10B、及び10Cの車載カラオケ装置への適用例を説明したが、収音装置10A、10B、及び10Cを車載ハンズフリー電話へ適用してもよい。また、収音装置10A、10B、及び10Cの適用対象は車載装置に限定される訳ではない。例えば住宅の居間などに設置されるカラオケ装置やハンズフリー電話に収音装置10A、10B、及び10Cを適用してもよい。
【0054】
<4-4.変形例4>
図23図24及び図25に示すように、マイクユニット110B-1と、マイクユニット110A-2と、合成部120Aとを組み合わせて収音装置10Dを構成してもよい。図23は、収音装置10Dの電気的な構成例を示す図であり、図24は収音装置10Dの平面図、図25は収音装置10DのXX´線に沿った断面図である。図23図24及び図25に示す収音装置10Dによっても、低音域の電気的な増幅は必要ないので、S/N比を低下させることなく低音域の感度を向上させることが可能になる。
【0055】
<5.実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様>
上述した実施形態及び各変形例の少なくとも1つから以下の態様が把握される。
収音装置の一態様は、第1の軸に沿った双指向性を有し、前記第1の軸上で第1の間隔を隔てた第1の点と第2の点とに到来する音を収音する第1のマイクユニットと、前記第1の軸に略重なる第2の軸に沿った双指向性を有し、前記第2の軸上で前記第1の間隔よりも短い第2の間隔を隔てた第3の点と第4の点とに到来する音を収音する第2のマイクユニットと、前記第1のマイクユニットから出力される第1の出力信号と前記第2のマイクユニットから出力される第2の出力信号とを合成し、合成された信号を出力する合成部と、を有することが好ましい。この態様によれば、第1の軸及び第2の軸に沿った双指向性を実現しつつ、低音域の感度が向上する。
【0056】
上述した収音装置の一態様として、第1の軸に沿った双指向性を有し、前記第1の軸上で第1の間隔を隔てた第1の点と第2の点とに到来する音を収音する第1のマイクユニットと、前記1のマイクユニットに連結され、前記第1の軸に並行な第2の軸に沿った双指向性を有し、前記第2の軸上で前記第1の間隔よりも短い第2の間隔を隔てた第3の点と第4の点とに到来する音を収音する第2のマイクユニットと、前記第1のマイクユニットから出力される第1の出力信号と前記第2のマイクユニットから出力される第2の出力信号とを合成し、合成された信号を出力する合成部と、を有することが好ましい。この態様によっても、第1の軸及び第2の軸に沿った双指向性を実現しつつ、低音域の感度を向上させることができる。
【0057】
上述した収音装置の一態様として、前記第1のマイクユニットと前記第2のマイクユニットの少なくとも一方は、1つの振動板を有する双指向性マイクユニットである、ことが好ましい。
【0058】
上述した収音装置の一態様として、前記第1のマイクユニットは、前記双指向性マイクユニットであり、前記第1の点に到来する音を前記第1のマイクユニットの振動板の一方の面に案内する第1の管と、前記第2の点に到来する音を前記第1のマイクユニットの振動板の他方の面に案内する第2の管と、を有することがさらに好ましい。さらに、前記第1の管の長さは前記第2の管の長さに略等しい、ことが好ましい。
【0059】
上述した収音装置の別の一態様として、前記第1のマイクユニットは、前記第1の点に配置される第1の無指向性マイクと、前記第2の点に配置される第2の無指向性マイクと、前記第1の無指向性マイクの出力信号と前記第2の無指向性マイクの出力信号との差分に応じた信号を前記第1出力信号として生成する第1生成部とを有し、前記第2のマイクユニットは、前記第3の点に配置される第3の無指向性マイクと、前記第4の点に配置される第4の無指向性マイクと、前記第3の無指向性マイクの出力信号と前記第4の無指向性マイクの出力信号との差分に応じた信号を前記第2出力信号として生成する第2生成部とを有する、ことが好ましく、前記第1の点、前記第2の点、前記第3の点、及び前記第4の点は、1つの直線上に設けられる、ことがさらに好ましい。
【0060】
上述した収音装置の一態様として、前記第1のマイクユニットと前記第2のマイクユニットとを収納し、前記第1の点に対応する第1の開口と、前記第2の点に対応する第2の開口と、前記第3の点に対応する第3の開口と、前記第4の点に対応する第4の開口とが設けられたケースを有する、ことが好ましい。
【0061】
上述した収音装置の一態様として、前記合成部は、前記第1の出力信号が入力される第1のローパスフィルタと、前記第2の出力信号が入力される第2のローパスフィルタと、前記第1のローパスフィルタの出力信号と前記第2のローパスフィルタの出力信号とを加算して出力する加算器と、を有し、前記第1のローパスフィルタのカットオフ周波数は前記第2のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低い、ことが好ましい。
【0062】
また、車載カラオケ装置の一態様として、車両の車室に配置される第1のスピーカと、前記第1のスピーカと向き合う第2のスピーカと、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの一方から他方に向かう方向と前記第1の軸及び前記第2の軸が交わるように前記車室に配置される、上述のいずれか1の態様の収音装置と、カラオケの伴奏音を表す音信号に前記収音装置の出力信号を加算して前記第1のスピーカと前記第2のスピーカとに出力する信号処理部と、を有する。
【0063】
また、車載カラオケ装置の一態様として、車両の車室に配置される第1のスピーカと、前記第1のスピーカと向き合う第2のスピーカと、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの一方から他方に向かう方向の中点に前記第1の軸と前記第2の軸の少なくとも一方が当該方向と略重なるように配置される、上述のいずれか1の態様の収音装置と、カラオケの伴奏音を表す音信号と前記収音装置の出力信号とを合成して前記第1のスピーカと前記第2のスピーカとに出力する信号処理部と、を有する。
【符号の説明】
【0064】
1A,1B、1C…車載カラオケ装置、10A,10B,10C、10D…収音装置、20-1,20-2…スピーカ、30…信号処理部、110A,110A-1,110A-2,110B,110B-1,110B-2,110B-3…マイクユニット、112…双指向性マイクユニット、113-1,113-2…無指向性マイクユニット、114,114-1,114-2…アンプ、116…減算器、120A,120B…合成部、122-1,122-2,122-3…ローパスフィルタ、124…加算器。
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