(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20230511BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20230511BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F01N3/36 B ZAB
F01N3/025 101
B01D53/94 241
B01D53/94 280
(21)【出願番号】P 2019147826
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 貴之
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287507(JP,A)
【文献】特開2010-265786(JP,A)
【文献】特開2010-31833(JP,A)
【文献】特開2004-339971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/36
F01N 3/025
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガス通路に配置されて、排気ガス中の未燃燃料を酸化することで排気ガスを昇温させて排気ガスの浄化を行う浄化触媒装置と、
前記浄化触媒装置の上流側の排気ガス温度を検出する上流側排気温度検出装置と、
前記浄化触媒装置の下流側の排気ガス温度を検出する下流側排気温度検出装置と、
前記浄化触媒装置を排気ガスの流れ方向に沿って仮想的に複数のブロックに分割する仮想分割装置と、
前記上流側排気温度検出装置と前記下流側排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて複数の前記ブロック毎の床温を推定する床温推定装置と、
前記床温推定装置によって推定した複数の前記ブロック毎の床温に基づいて、前記ブロック毎の排気ガスの浄化率を取得する浄化率取得装置と、
前記浄化率取得装置によって取得した複数の前記ブロック毎の排気ガスの前記浄化率に基づいて
前記ブロック毎の燃料添加量を取得して、前記浄化触媒装置に対して添加する合計燃料添加量を算出する添加量算出装置と、
を備え、
前記浄化率取得装置は、
前記ブロックの前記推定された床温が所定の下限床温よりも小さければ、当該ブロックの前記浄化率として0を取得し、
前記添加量算出装置は、
前記ブロックの前記取得された浄化率が0であれば、当該ブロックの前記燃料添加量として0を取得する、
排気ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガス浄化装置において、
制御装置を備え、
前記浄化触媒装置は、
排気ガス中の未燃燃料を酸化する貴金属を担持する酸化触媒と、
前記酸化触媒の下流側に配置されて粒子状物質を捕集すると共に、前記貴金属を担持する粒子状物質除去フィルタと、
前記酸化触媒の下流側で、且つ、前記粒子状物質除去フィルタの上流側の排気ガス温度を検出する中間排気温度検出装置と、
を有し、
前記仮想分割装置は、
前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれを仮想的に複数のブロックに分割し、
前記床温推定装置は、
前記上流側排気温度検出装置と前記中間排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて、前記酸化触媒の複数の前記ブロック毎の床温を推定し、
前記中間排気温度検出装置と前記下流側排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて、前記粒子状物質除去フィルタの前記ブロック毎の床温を推定し、
前記浄化率取得装置は、
前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれの推定した複数の前記ブロック毎の床温に基づいて、前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれの前記ブロック毎の排気ガスの前記浄化率を取得し、
前記添加量算出装置は、
前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれの前記ブロック毎の排気ガスの前記浄化率に基づいて、前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタに対して添加する燃料添加量を算出
し、
前記制御装置は、
前記粒子状物質除去フィルタの前記ブロック毎に推定された床温に基づいて前記粒子状物質除去フィルタに捕集された前記粒子状物質の減少量を取得する、
排気ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気ガス浄化装置において、
排気ガス流量を取得する排気ガス流量取得装置を備え、
前記添加量算出装置は、
前記ブロックのそれぞれに対して予め適合された前記排気ガス流量及び前記浄化率と、前記ブロックの燃料添加量と、の関係に、前記取得された排気ガス流量及び前記取得された浄化率を適用することによって前記ブロック毎の燃料添加量を取得
する、
排気ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置において、
前記仮想分割装置は、
複数の前記ブロックが流れ方向に沿って積層されるように前記浄化触媒装置を仮想的に分割する、
排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置は、排気ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集して除去する粒子状物質除去フィルタ(通常、Diesel Particulate Filterと呼ばれ、以下、「DPF」という。)等の浄化処理部材を備えている。ここで、排気ガスを浄化処理するDPFは、排気ガス中の粒子状物質を捕集するものであることから、粒子状物質が堆積して目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにDPF内の粒子状物質を燃焼焼却させて、DPFの捕集機能を再生させる技術に関して種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された排気浄化装置では、排気通路には、排気ガス中に含まれるHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を酸化して浄化する酸化触媒コンバートと、粒子状物質(PM)を捕集するDPFとが順に配置されている。酸化触媒コンバータの上流側の排気通路には、第1排気温センサが配置されている。酸化触媒コンバータとDPFとの間の排気通路には、第2排気温センサが配置されている。更に、DPFの上流側圧力と下流側圧力との差圧を検出する差圧センサが設けられている。
【0004】
そして、差圧センサの出力信号に基づいてDPF内に堆積しているPM堆積量を推定し、所定量に達した場合には、DPFを再生するフィルタ再生動作が行われる。具体的には、エアフローメータの出力信号に基づいて推定される排気ガス流量と、第2排気温センサにより検出された排気ガス温度から推定される酸化触媒コンバータの温度(触媒床温)とから、排気ガス中に白煙を生じさせない総燃料供給量を求める。そして、総燃料供給量から燃焼室内に噴射する燃料量を減算して、燃料添加弁から供給可能な添加燃料量(A/F制限添加量)を求め、燃料添加タイミングにおいて、白煙を生じない添加燃料量を添加弁から酸化触媒コンバータに向けて添加するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された排気浄化装置では、酸化触媒コンバータの上流側半分の温度が、添加燃料を燃焼可能な温度に達して、酸化触媒コンバータが半活性している場合でも、酸化触媒コンバータの全体の温度(触媒床温)が添加燃料を燃焼可能な温度(触媒床温)に達するまで、燃料添加弁から燃料を添加することができない。また、DPFの内面に貴金属(例えば、白金(Pt)等)が担持されている場合には、酸化触媒コンバータは、減速により温度低下しているが、DPFの後半分は未だ高温(例えば、約500℃)である場合でも、燃料添加弁から燃料を添加してDPFを昇温させ、DPFの後半分に堆積している粒子状物質(PM)を燃焼させることができない。その結果、酸化触媒コンバータ及びDPFの昇温タイミングを逃し、DPFの再生時間の延長を余儀なくされる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、排気ガス中に白煙を生じさせないで、DPFの再生時間の短縮化を図ることができる排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、内燃機関の排気ガス通路に配置されて、排気ガス中の未燃燃料を酸化することで排気ガスを昇温させて排気ガスの浄化を行う浄化触媒装置と、前記浄化触媒装置の上流側の排気ガス温度を検出する上流側排気温度検出装置と、前記浄化触媒装置の下流側の排気ガス温度を検出する下流側排気温度検出装置と、前記浄化触媒装置を排気ガスの流れ方向に沿って仮想的に複数のブロックに分割する仮想分割装置と、前記上流側排気温度検出装置と前記下流側排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて複数の前記ブロック毎の床温を推定する床温推定装置と、前記床温推定装置によって推定した複数の前記ブロック毎の床温に基づいて、前記ブロック毎の排気ガスの浄化率を取得する浄化率取得装置と、前記浄化率取得装置によって取得した複数の前記ブロック毎の排気ガスの前記浄化率に基づいて前記ブロック毎の燃料添加量を取得して、前記浄化触媒装置に対して添加する合計燃料添加量を算出する添加量算出装置と、を備え、前記浄化率取得装置は、前記ブロックの前記推定された床温が所定の下限床温よりも小さければ、当該ブロックの前記浄化率として「0」を取得し、前記添加量算出装置は、前記ブロックの前記取得された浄化率が0であれば、当該ブロックの前記燃料添加量として「0」を取得する、排気ガス浄化装置である。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る排気ガス浄化装置において、前記浄化触媒装置は、排気ガス中の未燃燃料を酸化する貴金属を担持する酸化触媒と、前記酸化触媒の下流側に配置されて粒子状物質を捕集すると共に、前記貴金属を担持する粒子状物質除去フィルタと、前記酸化触媒の下流側で、且つ、前記粒子状物質除去フィルタの上流側の排気ガス温度を検出する中間排気温度検出装置と、を有し、前記仮想分割装置は、前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれを仮想的に複数のブロックに分割し、前記床温推定装置は、前記上流側排気温度検出装置と前記中間排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて、前記酸化触媒の複数の前記ブロック毎の床温を推定し、前記中間排気温度検出装置と前記下流側排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて、前記粒子状物質除去フィルタの前記ブロック毎の床温を推定し、前記浄化率取得装置は、前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれの推定した複数の前記ブロック毎の床温に基づいて、前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれの前記ブロック毎の排気ガスの前記浄化率を取得し、前記添加量算出装置は、前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタのそれぞれの前記ブロック毎の排気ガスの前記浄化率に基づいて、前記酸化触媒と前記粒子状物質除去フィルタに対して添加する燃料添加量を算出する、排気ガス浄化装置である。更に、第2の発明に係る排気ガス浄化装置は、前記粒子状物質除去フィルタの前記ブロック毎に推定された床温に基づいて前記粒子状物質除去フィルタに捕集された前記粒子状物質の減少量を取得する制御装置を備える。
【0010】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明又は第2の発明に係る排気ガス浄化装置において、排気ガス流量を取得する排気ガス流量取得装置を備え、前記添加量算出装置は、前記ブロックのそれぞれに対して予め適合された前記排気ガス流量及び前記浄化率と、前記ブロックの燃料添加量と、の関係に、前記取得された排気ガス流量及び前記取得された浄化率を適用することによって前記ブロック毎の燃料添加量を取得する、排気ガス浄化装置である。
【0011】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明のいずれか1つに係る排気ガス浄化装置において、前記仮想分割装置は、複数の前記ブロックが流れ方向に沿って積層されるように前記浄化触媒装置を仮想的に分割する、排気ガス浄化装置である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、排気ガス中の未燃燃料を酸化することで排気ガスを昇温させて排気ガスの浄化を行う浄化触媒装置を排気ガスの流れ方向に沿って仮想的に複数のブロックに分割する。そして、上流側排気温度検出装置と下流側排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて複数のブロック毎の床温を推定する。続いて、複数のブロック毎の床温に基づいて、ブロック毎の排気ガスの浄化率を取得する。その後、複数のブロック毎の排気ガスの浄化率に基づいて、浄化触媒装置に対して添加する燃料添加量が算出される。
【0013】
これにより、浄化触媒装置の各ブロック毎に、推定した床温に基づいて排気ガスの浄化率を取得し、その浄化率に基づいて各ブロック毎の燃料添加量を算出し、各ブロック毎の燃料添加量を合計することによって、触媒浄化装置に添加する燃料添加量を精度良く算出することができる。それにより、浄化触媒装置の上流側のブロックの床温が上昇して活性化され、下流側のブロックが活性化していない場合には、その上流側のブロックに相当する燃料添加が可能となる。また、浄化触媒装置の上流側のブロックの床温が低下して活性化せず、下流側のブロックが活性化している場合には、その下流側のブロックに相当する燃料添加が可能となる。
【0014】
従って、浄化触媒装置への燃料添加が可能な期間を従来よりも延長することができる。そうすることにより、例えば、粒子状物質除去フィルタの再生時間の短縮化を図ることができる。さらには、複数のブロック毎に燃料添加量を取得するため、燃料添加量の精度を上げることができ、排気ガス中の白煙をより高い精度で防止することができる。
【0015】
第2の発明によれば、上流側排気温度検出装置と中間排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて、酸化触媒の複数のブロック毎の床温が推定される。また、中間排気温度検出装置と下流側排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて、粒子状物質除去フィルタのブロック毎の床温が推定される。そして、酸化触媒と粒子状物質除去フィルタのそれぞれの推定した複数のブロック毎の床温に基づいて、ブロック毎の排気ガスの浄化率を取得する。酸化触媒と粒子状物質除去フィルタのそれぞれのブロック毎の排気ガスの浄化率に基づいて、酸化触媒と粒子状物質除去フィルタに対して添加する燃料添加量が算出される。
【0016】
これにより、酸化触媒と粒子状物質除去フィルタのそれぞれのブロック毎の排気ガスの浄化率に基づいて、各ブロック毎の燃料添加量を算出し、各ブロック毎の燃料添加量を合計することによって、酸化触媒と粒子状物質除去フィルタに添加する燃料添加量を精度良く算出することができる。それにより、酸化触媒の上流側のブロックの床温が上昇して活性化され、酸化触媒の下流側のブロックが活性化していない場合には、その上流側のブロックに相当する燃料添加が可能となる。また、酸化触媒の床温が低下して活性化せず、粒子状物質除去フィルタの下流側のブロックが活性化している場合には、その下流側のブロックに相当する燃料添加が可能となる。
【0017】
従って、酸化触媒と粒子状物質除去フィルタへの燃料添加が可能な期間を従来よりも延長することができる。そうすることにより、粒子状物質除去フィルタの再生時間の短縮化を図ることができる。さらには、酸化触媒と粒子状物質除去フィルタのそれぞれの複数のブロック毎に燃料添加量を取得するため、燃料添加量の精度を上げることができ、排気ガス中の白煙をより高い精度で防止することができる。
【0018】
第3の発明によれば、排気ガス流量と複数のブロック毎の排気ガスの浄化率とに基づいて、ブロック毎の燃料添加量を取得して、浄化触媒装置に対して添加する合計燃料添加量を算出することができる。これにより、浄化触媒装置に添加する燃料添加量を簡易な構成で取得することができ、排気ガス中の白煙を精度良く防止することができる。
【0019】
第4の発明によれば、浄化触媒装置は、複数のブロックが流れ方向に沿って積層されるように仮想的に分割されるため、上流側排気温度検出装置と下流側排気温度検出装置とによって検出されたそれぞれの排気ガス温度に基づいて複数のブロック毎の床温を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る排気ガス浄化装置を適用した内燃機関の構成の一例を説明する図である。
【
図2】実施形態に係る制御装置が実行する、DPFを再生するフィルタ再生処理の一例を示すメインフローチャートである。
【
図3】
図2に示す「PM堆積状態取得処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【
図4】
図2に示す「燃料添加量取得処理」のサブ処理を示す第1サブフローチャートである。
【
図5】
図2に示す「燃料添加量取得処理」のサブ処理を示す第2サブフローチャートである。
【
図6】
図2に示す「PMカウンタ更新処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【
図7】酸化触媒とDPFのそれぞれを流れ方向に分割した一例を示す図である。
【
図8】酸化触媒とDPFのそれぞれの浄化率と床温との関係の一例を示す図である。
【
図9】第1DOCブロックの燃料添加量を求めるマップの一例を示す図である。
【
図10】第2DOCブロックの燃料添加量を求めるマップの一例を示す図である。
【
図11】第1DPFブロックの燃料添加量を求めるマップの一例を示す図である。
【
図12】第2DPFブロックの燃料添加量を求めるマップの一例を示す図である。
【
図13】第1DPFブロックの床温とPM燃焼速度との関係の一例を示す図である。
【
図14】第2DPFブロックの床温とPM燃焼速度との関係の一例を示す図である。
【
図15】フィルタ再生処理の開始時における酸化触媒とDPFの各ブロック毎の床音及び排気ガス温度の温度変化の一例を示す図である。
【
図16】フィルタ再生処理の減速時における酸化触媒とDPFの各ブロック毎の床音及び排気ガス温度の温度変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る排気ガス浄化装置を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に係る排気ガス浄化装置を適用した内燃機関10の構成の一例を示している。内燃機関10は、ディーゼルエンジンである。尚、以下の説明において、DPF43は、粒子状物質除去フィルタ(Diesel Particulate Filter)に相当している。また、DPF43よりも下流側の排気通路に配置されて窒素酸化物(NOx)を無害化する選択還元触媒等については、記載を省略している。
【0022】
図1に示すように、内燃機関10の排気通路(排気ガス通路)12には、排気ガス浄化装置41が設けられている。また、排気ガス浄化装置41の内部には、上流側から、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)42、DPF43が設けられている。排気ガス浄化装置41は、排気ガス通路を構成し、上流側から下流側に排気ガスが通過する間に、排気ガスに含まれる有害物質を除去するものである。ここで、内燃機関10は、高効率で耐久性にも優れているが、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等の有害物質を、排気ガスと一緒に排出してしまうものである。
【0023】
酸化触媒(DOC)42は、セラミック製の円柱状等に形成されたセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、内面に白金(Pt)等の貴金属が担持されている。そして、酸化触媒(DOC)42は、所定の温度下で多数の貫通孔に排気ガスを通すことにより、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する。
【0024】
DPF43は、セラミックス材料等からなる多孔質な部材によって円柱状等に形成され、軸方向に多数の小孔が設けられたハニカム構造のセル状筒体をなし、各小孔は、隣同士で交互に異なる端部が目封じ部材によって閉塞されている。そして、DPF43は、上流側から各小孔に流入する排気ガスを多孔質材料に通すことで粒子状物質(PM)を捕集し、排気ガスのみを隣の小孔を通じて下流側へと流出させる。
【0025】
尚、本実施形態のDPF43は、各小孔の内面に白金(Pt)等の貴金属が担持されている。そして、後述のDPF再生処理(フィルタ再生処理)の際には、この貴金属が排気ガス中の未燃燃料を酸化して排気ガス温度を昇温する。尚、DPF43に担持された貴金属の量は、酸化触媒(DOC)42に担持された貴金属の量よりも少なくなるように設定されている。
【0026】
酸化触媒(DOC)42の上流側(排気ガス浄化装置41の上流側)には、燃料添加弁28と、排気温度検出装置36A(例えば、排気温度センサ)(上流側排気温度検出装置)と、が設けられている。燃料添加弁28は、微粒子が堆積したDPF43を再生するフィルタ再生処理(
図2参照)を実行する際(粒子状物質(PM)を燃焼焼却する際)に、酸化触媒(DOC)42内とDPF43内で排気ガスと反応させて排気ガスの温度を上昇させるための燃料を噴射する。また、酸化触媒(DOC)42の下流側、且つ、DPF43の上流側には、排気温度検出装置36B(例えば、排気温度センサ)(中間排気温度検出装置)が設けられている。
【0027】
DPF43の下流側には、排気温度検出装置36C(例えば、排気温度センサ)(下流側排気温度検出装置)が設けられている。また、排気ガス浄化装置41内における、酸化触媒(DOC)42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気圧力(排気管内圧力に相当)と、DPF43の下流側の排気管内圧力と、の差圧(圧力差)を検出する差圧センサ35が設けられている。
【0028】
燃料添加弁28は、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)50からの制御信号にて駆動される。制御装置50は、CPU、RAM、ROM、タイマ、EEPROM、不図示のバックアップRAM等を備えた公知のものである。CPUは、ROMに記憶された各種プログラムやマップに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、EEPROMは、例えば、内燃機関10の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
【0029】
また、EEPROMには、燃料添加量マップ記憶部501と、PM燃焼速度マップ記憶部502と、が設けられている。燃料添加量マップ記憶部501には、後述のように、酸化触媒(DOC)42を排気ガスの流れ方向に沿って仮想分割した第1DOCブロック42Aと第2DOCブロック42B(
図7参照)のそれぞれの燃料添加量を決定する際に使用する各燃料添加量マップM11、M12(
図9、
図10参照)が格納されている。
【0030】
また、燃料添加量マップ記憶部501には、後述のように、DPF43を排気ガスの流れ方向に沿って仮想分割した第1DPFブロック43Aと第2DPFブロック43B(
図7参照)のそれぞれの燃料添加量を決定する際に使用する各燃料添加量マップM21、M22(
図11、
図12参照)が格納されている。また、PM燃焼速度マップ記憶部502には、後述のように、DPF43を排気ガスの流れ方向に沿って仮想分割した第1DPFブロック43Aと第2DPFブロック43B(
図7参照)のそれぞれの床温とPM燃焼速度とを対応づけて記憶する各PM燃焼速度マップM31、M32(
図13、
図14参照)が格納されている。
【0031】
また、排気温度検出装置36A(上流側排気温度検出装置)は、酸化触媒(DOC)42の上流側の排気管内の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、排気温度検出装置36B(中間排気温度検出装置)は、酸化触媒(DOC)42の下流側、且つ、DPF43の上流側を流れる排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、排気温度検出装置36C(下流側排気温度検出装置)は、DPF43の下流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。差圧センサ35は、酸化触媒(DOC)42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気圧力(排気管内圧力に相当)と、DPF43の下流側の排気管内圧力と、の差圧に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0032】
制御装置50には、吸気通路11に設けられた吸入空気流量検出装置31(流量関連量検出装置に相当する。)(例えば、エアフローメータ)の検出信号、アクセル開度検出装置33の検出信号、回転検出装置34の検出信号、のそれぞれが入力されている。また、制御装置50には、上述した各排気温度検出装置36A、36B、36Cの検出信号、差圧センサ35の検出信号が入力されている。
【0033】
そして、制御装置50は、これらの入力された検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出することができる。また、制御装置50は、検出した内燃機関10の運転状態や、アクセル開度検出装置33からの検出信号に基づいた運転者からの要求に応じて、各インジェクタ14A~14Dから内燃機関10のシリンダ内に噴射する燃料量や、燃料添加弁28から噴射する燃料量を制御する制御信号を出力する。
【0034】
また、制御装置50は、各インジェクタ14A~14Dから噴射した毎秒当たりの燃料消費量(g/s)を所定時間(例えば、約10msec~100msec)毎に算出して、RAMに時系列的に記憶する。また、制御装置50は、吸入空気流量検出装置31から入力された検出信号から吸入空気流量GAを所定時間(例えば、約10msec~100msec)毎に算出して、RAMに時系列的に記憶する。また、制御装置50は、差圧センサ35から入力された検出信号から実際の差圧ΔPを所定時間(例えば、約10msec~100msec)毎に算出して、RAMに時系列的に記憶する。
【0035】
燃料添加弁28から排気ガス中に噴射された燃料は、酸化触媒(DOC)42に担持された貴金属によって排気ガス中に残った酸素との酸化反応が生じて燃焼し、その発熱により排気ガス温度が上昇する。また、DPF43内に流入した未燃燃料は、DPF43に担持された貴金属によって、排気ガス中に残った酸素との酸化反応が生じて燃焼し、その発熱により排気ガス温度が上昇する。
【0036】
そして、この高温になった排気ガスによりDPF43の床温が上昇して、所定温度以上(例えば、500℃以上)になると、DPF43内に堆積した粒子状物質(PM)が燃焼焼却される。このような状態を所定の時間、維持することによってDPF43内に堆積した粒子状物質(PM)を燃焼させて除去し、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するというDPF43の捕集機能を回復(再生)させることができる(いわゆる、フィルタ再生処理である。)。
【0037】
吸入空気流量検出装置31(例えば、吸気流量センサ)は、内燃機関10の吸気通路11に設けられて内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。アクセル開度検出装置33(例えば、アクセル開度センサ)は、運転者が操作するアクセルの開度(すなわち、運転者の要求負荷)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。回転検出装置34(例えば、回転センサ)は、例えば、内燃機関10のクランクシャフトの回転数(すなわち、エンジン回転数)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0038】
[フィルタ再生処理]
次に、上記のように構成された内燃機関10において、制御装置50によるDPF43に捕集された粒子状物質(PM)を燃焼させて除去するフィルタ再生処理の一例について
図2乃至
図16に基づいて説明する。尚、制御装置50は、内燃機関10の運転中に、所定時間間隔(例えば、数10msec~数100msec間隔)にて、
図2のフローチャートに示される処理手順を繰り返し実行する。
【0039】
図2に示すように、先ず、ステップS11において、制御装置50は、DPF再生要求フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。DPF再生要求フラグは、DPF43に堆積した粒子状物質(PM)が所定PM堆積量W3(例えば、約50g)に達し、DPF43を再生して捕集機能を回復させる必要がある旨を表している。尚、DPF再生要求フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。
【0040】
そして、DPF再生要求フラグが「ON」に設定されていると判定された場合には(S11:YES)、制御装置50は、後述のステップS15の処理に進む。一方、DPF再生要求フラグが「OFF」に設定されていると判定された場合には(S11:NO)、制御装置50は、ステップS12の処理に進む。ステップS12において、制御装置50は、「PM堆積状態取得処理」のサブ処理を実行した後、ステップS13の処理に進む。「PM堆積状態取得処理」は、所定時間間隔(例えば、数10msec~数100msec間隔)の間にDPF43に捕集される、即ち、DPF43に堆積する粒子状物質(PM)の堆積量(PM堆積量)を取得する処理である。
【0041】
[PM堆積状態取得処理]
ここで、「PM堆積状態取得処理」のサブ処理の詳細について
図3に基づいて説明する。
図3に示すように、先ず、ステップS111において、制御装置50は、アクセル開度検出装置33、回転検出装置34等からの検出信号から、内燃機関10のエンジン回転数やエンジン負荷(燃料噴射量)等の運転状態を取得してRAMに記憶した後、ステップS112の処理に進む。
【0042】
ステップS112において、制御装置50は、内燃機関10の運転状態と粒子状物質(PM)の単位時間当たり堆積量との関係を示した不図示のマップに基づいて、所定時間間隔(例えば、数10msec~数100msec間隔)における、DPF43への粒子状物質(PM)の堆積量を算出して、ステップS113の処理に進む。ステップS113において、制御装置50は、上記ステップS112で算出した粒子状物質(PM)の堆積量(以下、「PM堆積量」ともいう。)を前回算出したDPF43のPM堆積量に加算してEEPROMに記憶した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS13の処理に進む。
【0043】
具体的には、ステップS113において、制御装置50は、上記ステップS112で算出したPM堆積量に相当するカウント値を、EEPROMに設けられたDPF43の全体に累積堆積したPM堆積量を表すPMカウンタのカウント値に加算して、当該PMカウンタを更新した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS13の処理に進む。従って、EEPROMに設けられたPMカウンタのカウント値は、DPF43の全体に累積堆積した粒子状物質(PM)の堆積量(PM堆積量)を示している。
【0044】
次に、
図2に示すように、ステップS13において、制御装置50は、PMカウンタのカウント値をEEPROMから読み出し、PMカウンタのカウント値が再生開始閾値C1以上であるか否かを判定する。つまり、制御装置50は、DPF43に堆積した粒子状物質(PM)を燃焼して、DPF43を再生する必要があるか否かを判定する。そして、PMカウンタのカウント値が再生開始閾値C1未満であると判定した場合、つまり、DPF43を再生する必要がないと判定した場合には(S13:NO)、制御装置50は、当該処理を終了する。
【0045】
一方、PMカウンタのカウント値が再生開始閾値C1以上であると判定した場合、つまり、DPF43を再生する必要があると判定した場合には(S13:YES)、制御装置50は、ステップS14の処理に進む。ステップS14において、制御装置50は、DPF43を再生する必要がある旨を表すDPF再生要求フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶した後、ステップS15の処理に進む。
【0046】
ステップS15において、制御装置50は、排気温度検出装置36Aを介して酸化触媒(DOC)42に流入する排気ガス温度TGを検出する。そして、制御装置50は、排気ガス温度TGが燃料添加許可温度TS以上であるか否かを判定する。つまり、制御装置50は、酸化触媒(DOC)42に流入する排気ガスの温度が、燃料添加弁28を介して燃料を添加する許可温度以上になっているか否かを判定する。尚、燃料添加許可温度TSは、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得されて、例えば、約300℃に設定され、予めROMに記憶されている。
【0047】
そして、排気ガス温度TGが燃料添加許可温度TSよりも低いと判定された場合には(S15:NO)、制御装置50は、酸化触媒(DOC)42に流入する排気ガス温度TGが燃料添加許可温度TS以上に上昇するまで待つ。一方、排気ガス温度TGが燃料添加許可温度TS以上であると判定された場合には(S15:YES)、制御装置50は、ステップS16の処理に進む。ステップS16において、制御装置50は、燃料添加弁28による燃料添加が許可された旨を表す燃料添加許可フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶した後、ステップS17の処理に進む。尚、燃料添加許可フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。
【0048】
ステップS17において、制御装置50は、「燃料添加量取得処理」のサブ処理を実行した後、ステップS18の処理に進む。「燃料添加量取得処理」は、燃料添加弁28から排気ガス中に添加(供給)する燃料の添加量を取得する処理である。
【0049】
[燃料添加量取得処理]
ここで、「燃料添加量取得処理」のサブ処理の詳細について
図4、
図5、
図7~
図12に基づいて説明する。
図4に示すように、先ず、ステップS211において、制御装置50は、各排気温度検出装置36A~36Cによって、それぞれの位置における各排気ガス温度T1~T3を検出して、RAMに記憶した後、ステップS212の処理に進む。
【0050】
例えば、
図7に示すように、制御装置50は、排気温度検出装置36Aによって、酸化触媒(DOC)42の上流側の排気ガス温度T1を検出してRAMに記憶する。また、制御装置50は、排気温度検出装置36Bによって、酸化触媒(DOC)42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気ガス温度T2を検出してRAMに記憶する。また、制御装置50は、排気温度検出装置36Cによって、DPF43の下流側の排気ガス温度T3を検出してRAMに記憶する。
【0051】
続いて、ステップS212において、制御装置50は、上記ステップS211で検出した各排気ガス温度T1~T3に基づいて酸化触媒(DOC)42とDPF43をそれぞれ流れ方向に沿って積層されるように仮想的に2分割して、各ブロック毎の床温を推定して、RAMに記憶した後、ステップS213の処理に進む。
【0052】
具体的には、
図7に示すように、制御装置50は、略円柱状に構成された酸化触媒(DOC)42を流れ方向に沿って積層されるように略等しい体積の第1DOCブロック42Aと第2DOCブロック42Bに仮想的に2分割する。そして、制御装置50は、各排気ガス温度T1、T2と、第1DOCブロック42Aの中心軸上の流れ方向中央位置における床温TO1との関係を対応づけた不図示の温度マップMP1に基づいて、第1DOCブロック42Aの床温TO1を算出(推定)して、RAMに記憶する。また、制御装置50は、各排気ガス温度T1、T2と、第2DOCブロック42Bの中心軸上の流れ方向中央位置における床温TO2との関係を対応づけた不図示の温度マップMP2に基づいて、第2DOCブロック42Bの床温TO2を算出(推定)して、RAMに記憶する。
【0053】
また、制御装置50は、略円柱状に構成されたDPF43を流れ方向に沿って積層されるように略等しい体積の第1DPFブロック43Aと第2DPFブロック43Bに仮想的に2分割する。そして、制御装置50は、各排気ガス温度T2、T3と、第1DPFブロック43Aの中心軸上の流れ方向中央位置における床温TP1との関係を対応づけた不図示の温度マップMP3に基づいて、第1DPFブロック43Aの床温TP1を算出(推定)して、RAMに記憶する。また、制御装置50は、各排気ガス温度T2、T3と、第2DPFブロック43Bの中心軸上の流れ方向中央位置における床温TP2との関係を対応づけた不図示の温度マップMP4に基づいて、第2DPFブロック43Bの床温TP2を算出(推定)して、RAMに記憶する。
【0054】
尚、不図示の各温度マップMP1~MP4は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により取得されて、予めROMに記憶されている。
【0055】
図4に示すように、ステップS213において、制御装置50は、酸化触媒(DOC)42の上流側の部分である第1DOCブロック42Aの床温TO1をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、ROMから「DOC下限床温TC1」を読み出し、今回の第1DOCブロック42Aの床温TO1が「DOC下限床温TC1」以上の床温であるか否かを判定する。尚、「DOC下限床温TC1」は、酸化触媒(DOC)42の浄化率が約10%になるときの床温に対応している(
図8参照)。
【0056】
そして、今回の第1DOCブロック42Aの床温TO1が「DOC下限床温TC1」よりも低い床温であると判定した場合には(S213:NO)、制御装置50は、ステップS214の処理に進む。ステップS214において、制御装置50は、第1DOCブロック42Aの浄化率を「0%」に設定して、RAMに記憶した後、後述のステップS216の処理に進む。
【0057】
一方、今回の第1DOCブロック42Aの床温TO1が「DOC下限床温TC1」以上の床温であると判定した場合には(S213:YES)、制御装置50は、ステップS215の処理に進む。ステップS215において、制御装置50は、
図8に示す酸化触媒(DOC)42の床温と浄化率(炭化水素(HC)又は一酸化炭素(CO)の酸化される割合)との関係を対応づけた実線61で示す2次元マップM1を用いて、第1DOCブロック42Aの床温TO1に対応する第1DOCブロック42Aの浄化率を取得して、RAMに記憶した後、ステップS216の処理に進む。
【0058】
図8に示すように、2次元マップM1では、酸化触媒(DOC)42の床温がDOC下限床温TC1以上(例えば、約150℃~180℃以上)の床温になると、床温に対応する浄化率が急激に上昇する。尚、酸化触媒(DOC)42の床温に対応する浄化率を取得する2次元マップM1は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得され、マップや数式によりROMに予め記憶されている。
【0059】
図4に示すように、ステップS216において、制御装置50は、酸化触媒(DOC)42の下流側の部分である第2DOCブロック42Bの床温TO2をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、ROMから「DOC下限床温TC1」を読み出し、今回の第2DOCブロック42Bの床温TO2が「DOC下限床温TC1」以上の床温であるか否かを判定する。
【0060】
そして、今回の第2DOCブロック42Bの床温TO2が「DOC下限床温TC1」よりも低い床温であると判定した場合には(S216:NO)、制御装置50は、ステップS217の処理に進む。ステップS217において、制御装置50は、第2DOCブロック42Bの浄化率を「0%」に設定して、RAMに記憶した後、後述のステップS219の処理に進む。
【0061】
一方、今回の第2DOCブロック42Bの床温TO2が「DOC下限床温TC1」以上の床温であると判定した場合には(S216:YES)、制御装置50は、ステップS218の処理に進む。ステップS218において、制御装置50は、
図8に示す酸化触媒(DOC)42の床温と浄化率(炭化水素(HC)又は一酸化炭素(CO)の酸化される割合)との関係を対応づけた実線61で示す2次元マップM1を用いて、第2DOCブロック42Bの床温TO2に対応する第2DOCブロック42Bの浄化率を取得して、RAMに記憶した後、ステップS219の処理に進む。
【0062】
ステップS219において、制御装置50は、DPF43の上流側の部分である第1DPFブロック43Aの床温TP1をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、ROMから「DPF下限床温TC2」を読み出し、今回の第1DPFブロック43Aの床温TP1が「DPF下限床温TC2」以上の床温であるか否かを判定する。尚、「DPF下限床温TC2」は、DPF43の浄化率が約10%になるときの床温に対応している(
図8参照)。また、DPF43に担持されている白金(Pt)等の貴金属の量は、酸化触媒(DOC)42に担持されている貴金属の量よりも少ないため、「DPF下限床温TC2」は、「DOC下限床温TC1」よりも高い床温(例えば、約200℃)に設定される。
【0063】
そして、今回の第1DPFブロック43Aの床温TP1が「DPF下限床温TC2」よりも低い床温であると判定した場合には(S219:NO)、制御装置50は、ステップS220の処理に進む。ステップS220において、制御装置50は、第1DPFブロック43Aの浄化率を「0%」に設定して、RAMに記憶した後、後述のステップS222の処理に進む。
【0064】
一方、今回の第1DPFブロック43Aの床温TP1が「DPF下限床温TC2」以上の床温であると判定した場合には(S219:YES)、制御装置50は、ステップS221の処理に進む。ステップS221において、制御装置50は、
図8に示すDPF43の床温と浄化率(炭化水素(HC)又は一酸化炭素(CO)の酸化される割合)との関係を対応づけた実線62で示す2次元マップM2を用いて、第1DPFブロック43Aの床温TP1に対応する第1DPFブロック43Aの浄化率を取得して、RAMに記憶した後、ステップS222の処理に進む。
【0065】
図8に示すように、2次元マップM2では、DPF43の床温がDPF下限床温TC2以上(例えば、約200℃以上)の床温になると、床温に対応する浄化率が急激に上昇する。尚、DPF43の床温に対応する浄化率を取得する2次元マップM2は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得され、マップや数式によりROMに予め記憶されている。
【0066】
図4に示すように、ステップS222において、制御装置50は、DPF43の下流側の部分である第2DPFブロック43Bの床温TP2をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、ROMから「DPF下限床温TC2」を読み出し、今回の第2DPFブロック43Bの床温TP2が「DPF下限床温TC2」以上の床温であるか否かを判定する。
【0067】
そして、今回の第2DPFブロック43Bの床温TP2が「DPF下限床温TC2」よりも低い床温であると判定した場合には(S222:NO)、制御装置50は、ステップS223の処理に進む。ステップS223において、制御装置50は、第2DPFブロック43Bの浄化率を「0%」に設定して、RAMに記憶した後、後述のステップS225の処理(
図5参照)に進む。
【0068】
一方、今回の第2DPFブロック43Bの床温TP2が「DPF下限床温TC2」以上の床温であると判定した場合には(S222:YES)、制御装置50は、ステップS224の処理に進む。ステップS224において、制御装置50は、
図8に示すDPF43の床温と浄化率(炭化水素(HC)又は一酸化炭素(CO)の酸化される割合)との関係を対応づけた実線62で示す2次元マップM2を用いて、第2DPFブロック43Bの床温TP2に対応する第2DPFブロック43Bの浄化率を取得して、RAMに記憶した後、ステップS225(
図5参照)の処理に進む。
【0069】
図5に示すように、ステップS225において、制御装置50は、吸入空気流量検出装置31から入力された検出信号から吸入空気流量GA[g/sec]を算出する。また、制御装置50は、現在から所定時間(例えば、1秒)前までに各インジェクタ14A~14Dに指示した燃料噴射量をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、吸入空気流量GAと燃料噴射量の合計値を排気ガス流量[g/sec]としてRAMに記憶した後、ステップS226の処理に進む。尚、制御装置50は、吸入空気流量検出装置31から入力された検出信号から吸入空気流量GA[g/sec]を算出し、排気ガス流量[g/sec]としてRAMに記憶してもよい。
【0070】
ステップS226において、制御装置50は、酸化触媒(DOC)42の上流側の部分である第1DOCブロック42Aの今回の浄化率[%]と、上記ステップS225で取得した今回の排気ガス流量[g/sec]と、をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、
図9に示す第1DOCブロック42Aの燃料添加量マップM11を用いて、第1DOCブロック42Aの今回の浄化率[%]と、今回の排気ガス流量[g/sec]と、に対応する燃料添加量[mm
3/sec]を算出して、第1DOCブロック42Aの燃料添加量[mm
3/sec]としてRAMに記憶した後、ステップS227の処理に進む。
【0071】
ここで、
図9に示すように、第1DOCブロック42Aの燃料添加量マップM11は、第1DOCブロック42Aの浄化率[%]と排気ガス流量[g/sec]とをパラメータとして、第1DOCブロック42Aに対して添加する白煙が出ない燃料添加量[mm
3/sec]をCAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により求めた値をマップ化したものであって、ROMに予め記憶されている。従って、第1DOCブロック42Aの浄化率が「0」[%]に対応する燃料添加量は、「0」[mm
3/sec]に設定されている。尚、
図9に示す第1DOCブロック42Aの燃料添加量マップM11において、浄化率と排気ガス流量がマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にて燃料添加量[mm
3/sec]を算出する。
【0072】
図5に示すように、ステップS227において、制御装置50は、酸化触媒(DOC)42の下流側の部分である第2DOCブロック42Bの今回の浄化率[%]と、上記ステップS225で取得した今回の排気ガス流量[g/sec]と、をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、
図10に示す第2DOCブロック42Bの燃料添加量マップM12を用いて、第2DOCブロック42Bの今回の浄化率[%]と、今回の排気ガス流量[g/sec]と、に対応する燃料添加量[mm
3/sec]を算出して、第2DOCブロック42Bの燃料添加量[mm
3/sec]としてRAMに記憶した後、ステップS228の処理に進む。
【0073】
ここで、
図10に示すように、第2DOCブロック42Bの燃料添加量マップM12は、第2DOCブロック42Bの浄化率[%]と排気ガス流量[g/sec]とをパラメータとして、第2DOCブロック42Bに対して添加する白煙が出ない燃料添加量[mm
3/sec]をCAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により求めた値をマップ化したものであって、ROMに予め記憶されている。従って、第2DOCブロック42Bの浄化率が「0」[%]に対応する燃料添加量は、「0」[mm
3/sec]に設定されている。尚、
図10に示す第2DOCブロック42Bの燃料添加量マップM12において、浄化率と排気ガス流量がマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にて燃料添加量[mm
3/sec]を算出する。
【0074】
図5に示すように、ステップS228において、制御装置50は、DPF43の上流側の部分である第1DPFブロック43Aの今回の浄化率[%]と、上記ステップS225で取得した今回の排気ガス流量[g/sec]と、をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、
図11に示す第1DPFブロック43Aの燃料添加量マップM21を用いて、第1DPFブロック43Aの今回の浄化率[%]と、今回の排気ガス流量[g/sec]と、に対応する燃料添加量[mm
3/sec]を算出して、第1DPFブロック43Aの燃料添加量[mm
3/sec]としてRAMに記憶した後、ステップS229の処理に進む。
【0075】
ここで、
図11に示すように、第1DPFブロック43Aの燃料添加量マップM21は、第1DPFブロック43Aの浄化率[%]と排気ガス流量[g/sec]とをパラメータとして、第1DPFブロック43Aに対して添加する白煙が出ない燃料添加量[mm
3/sec]をCAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により求めた値をマップ化したものであって、ROMに予め記憶されている。従って、第1DPFブロック43Aの浄化率が「0」[%]に対応する燃料添加量は、「0」[mm
3/sec]に設定されている。尚、
図11に示す第1DPFブロック43Aの燃料添加量マップM21において、浄化率と排気ガス流量がマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にて燃料添加量[mm
3/sec]を算出する。
【0076】
図5に示すように、ステップS229において、制御装置50は、DPF43の下流側の部分である第2DPFブロック43Bの今回の浄化率[%]と、上記ステップS225で取得した今回の排気ガス流量[g/sec]と、をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、
図12に示す第2DPFブロック43Bの燃料添加量マップM22を用いて、第2DPFブロック43Bの今回の浄化率[%]と、今回の排気ガス流量[g/sec]と、に対応する燃料添加量[mm
3/sec]を算出して、第2DPFブロック43Bの燃料添加量[mm
3/sec]としてRAMに記憶した後、ステップS230の処理に進む。
【0077】
ここで、
図12に示すように、第2DPFブロック43Bの燃料添加量マップM22は、第2DPFブロック43Bの浄化率[%]と排気ガス流量[g/sec]とをパラメータとして、第2DPFブロック43Bに対して添加する白煙が出ない燃料添加量[mm
3/sec]をCAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により求めた値をマップ化したものであって、ROMに予め記憶されている。従って、第2DPFブロック43Bの浄化率が「0」[%]に対応する燃料添加量は、「0」[mm
3/sec]に設定されている。尚、
図12に示す第2DPFブロック43Bの燃料添加量マップM22において、浄化率と排気ガス流量がマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にて燃料添加量[mm
3/sec]を算出する。
【0078】
図5に示すように、ステップS230において、制御装置50は、第1DOCブロック42A、第2DOCブロック42B、第1DPFブロック43A、及び、第2DPFブロック43Bのそれぞれの燃料添加量[mm
3/sec]をRAMから読み出し、合計して、燃料添加弁28から添加(供給)する燃料の「合計添加量」[mm
3/sec]としてRAMに記憶した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS18の処理に進む。
【0079】
図2に示すように、ステップS18において、制御装置50は、燃料添加弁28から燃料を添加する燃料添加実行タイミングを迎えたか否かを判定する。この燃料実行タイミングとは、例えば、第1番気筒が排気行程を迎えるタイミング、つまり、クランク角度で720°回転する毎に燃料添加実行タイミングを迎える。これにより、第1番気筒の排気行程に同期させて、燃料添加弁28から燃料添加を行うことで、添加燃料が排気ガスに拡散し易くなる。
【0080】
そして、燃料添加弁28から燃料を添加する燃料添加実行タイミングを迎えていないと判定した場合には(S18:NO)、制御装置50は、当該処理を終了する。一方、燃料添加弁28から燃料を添加する燃料添加実行タイミングを迎えたと判定した場合には(S18:YES)、制御装置50は、ステップS19の処理に進む。ステップS19において、制御装置50は、上記ステップS230で算出した燃料の「合計添加量」[mm
3/sec]をRAMから読み出し、この「合計添加量」[mm
3/sec]に、
図2に示す処理を起動する間隔の時間(例えば10[msec]間隔で起動する場合は10[msec]である)を乗算して算出した燃料添加量[mm
3]の燃料を燃料添加弁28を介して排気ガス中に添加(供給)した後、ステップS20の処理に進む。
【0081】
ステップS20において、制御装置50は、「PMカウンタ更新処理」のサブ処理を実行した後、ステップS21の処理に進む。「PMカウンタ更新処理」は、不図示のPMカウンタから燃焼焼却した粒子状物質(PM)に相当するカウント値を減算する処理である。
【0082】
[PMカウンタ更新処理]
ここで、「PMカウンタ更新処理」のサブ処理の詳細について
図6、
図13及び
図14に基づいて説明する。
図6に示すように、先ず、ステップS311において、制御装置50は、各排気温度検出装置36B、36Cによって、DPF43の上流側の排気ガス温度T2(
図7参照)と、DPF43の下流側の排気ガス温度T3(
図7参照)と、を検出してRAMに記憶した後、ステップS312の処理に進む。
【0083】
ステップS312において、制御装置50は、略円柱状に構成されたDPF43を流れ方向に沿って積層されるように略等しい体積の第1DPFブロック43Aと第2DPFブロック43Bに仮想的に2分割する(
図7参照)。そして、制御装置50は、各排気ガス温度T2、T3と、第1DPFブロック43Aの中心軸上の流れ方向中央位置における床温TP1との関係を対応づけた不図示の温度マップMP3に基づいて、第1DPFブロック43Aの床温TP1(
図7参照)を算出(推定)して、RAMに記憶する。
【0084】
また、制御装置50は、各排気ガス温度T2、T3と、第2DPFブロック43Bの中心軸上の流れ方向中央位置における床温TP2との関係を対応づけた不図示の温度マップMP4に基づいて、第2DPFブロック43Bの床温TP2(
図7参照)を算出(推定)して、RAMに記憶した後、ステップS313の処理に進む。
【0085】
ステップS313において、制御装置50は、DPF43の上流側の部分である第1DPFブロック43Aの床温TP1をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、ROMから「第1DPF燃焼下限温度TD1」を読み出し、今回の第1DPFブロック43Aの床温TP1が「第1DPF燃焼下限温度TD1」以上の床温であるか否かを判定する。尚、「第1DPF燃焼下限温度TD1」は、粒子状物質(PM)が燃焼焼却される下限温度であって、例えば、約500℃~600℃である。
【0086】
そして、今回の第1DPFブロック43Aの床温TP1が「第1DPF燃焼下限温度TD1」未満の床温であると判定した場合には(S313:NO)、制御装置50は、後述のステップS316の処理に進む。一方、今回の第1DPFブロック43Aの床温TP1が「第1DPF燃焼下限温度TD1」以上の床温であると判定した場合には(S313:YES)、制御装置50は、ステップS314の処理に進む。
【0087】
ステップS314において、制御装置50は、
図13に示す第1DPFブロック43Aの床温とPM燃焼速度との関係を対応づけたPM燃焼速度マップM31を用いて、上記ステップS312で算出した第1DPFブロック43Aの床温TP1に対応するPM燃焼速度を取得して、RAMに記憶した後、ステップS315に進む。
【0088】
図13には、第1DPFブロック43Aの床温TP1とPM燃焼速度との関係の一例が示されている。
図13に示すように、PM燃焼速度マップM31では、第1DPFブロック43Aの床温TP1が高くなるほど、粒子状物質(PM)の燃焼するPM燃焼速度は速くなる。尚、PM燃焼速度を取得するPM燃焼速度マップM31は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得され、マップや数式によりROMに予め記憶されている。
【0089】
図6に示すように、ステップS315において、PM燃焼速度は、第1DPFブロック43A内において、単位体積当たりの、且つ、単位時間当たりの粒子状物質(PM)の燃焼量であることから、制御装置50は、第1DPFブロック43Aの床温TP1に対応するPM燃焼速度をRAMから読み出すと共に、ROMから第1DPFブロック43Aの体積を読み出す。そして、制御装置50は、PM燃焼速度に第1DPFブロック43Aの体積と所定時間(例えば、燃料添加弁28による燃料の噴射間隔の時間である。)とを乗算して、所定時間内に第1DPFブロック43A内で燃焼される粒子状物質(PM)の燃焼量を算出する。
【0090】
続いて、制御装置50は、算出した粒子状物質(PM)の燃焼量に相当するカウント値を、EEPROMに設けられたPMカウンタのカウント値から減算した後、ステップS316に進む。つまり、制御装置50は、DPF43内に堆積したPM堆積量から、所定時間(例えば、燃料添加弁28による燃料の噴射間隔の時間である。)内に第1DPFブロック43A内で燃焼される粒子状物質(PM)の燃焼量を減算した後、ステップS316に進む。
【0091】
ステップS316において、制御装置50は、DPF43の下流側の部分である第2DPFブロック43Bの床温TP2をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、ROMから「第2DPF燃焼下限温度TD2」を読み出し、今回の第2DPFブロック43Bの床温TP2が「第2DPF燃焼下限温度TD2」以上の床温であるか否かを判定する。尚、「第2DPF燃焼下限温度TD2」は、粒子状物質(PM)が燃焼焼却される下限温度であって、例えば、約500℃~600℃である。
【0092】
そして、今回の第2DPFブロック43Bの床温TP2が「第2DPF燃焼下限温度TD2」未満の床温であると判定した場合には(S316:NO)、制御装置50は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS21の処理に進む。一方、今回の第2DPFブロック43Bの床温TP2が「第2DPF燃焼下限温度TD2」以上の床温であると判定した場合には(S316:YES)、制御装置50は、ステップS317の処理に進む。
【0093】
ステップS317において、制御装置50は、
図14に示す第2DPFブロック43Bの床温とPM燃焼速度との関係を対応づけたPM燃焼速度マップM32を用いて、上記ステップS312で算出した第2DPFブロック43Bの床温TP2に対応するPM燃焼速度を取得して、RAMに記憶した後、ステップS318に進む。
【0094】
図14には、第2DPFブロック43Bの床温TP2とPM燃焼速度との関係の一例が示されている。
図14に示すように、PM燃焼速度マップM32では、第2DPFブロック43Bの床温TP2が高くなるほど、粒子状物質(PM)の燃焼するPM燃焼速度は速くなる。尚、PM燃焼速度を取得するPM燃焼速度マップM32は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得され、マップや数式によりROMに予め記憶されている。
【0095】
図6に示すように、ステップS318において、PM燃焼速度は、第2DPFブロック43B内において、単位体積当たりの、且つ、単位時間当たりの粒子状物質(PM)の燃焼量であることから、制御装置50は、第2DPFブロック43Bの床温TP2に対応するPM燃焼速度をRAMから読み出すと共に、ROMから第2DPFブロック43Bの体積を読み出す。そして、制御装置50は、PM燃焼速度に第2DPFブロック43Bの体積と所定時間(例えば、燃料添加弁28による燃料の噴射間隔の時間である。)とを乗算して、所定時間内に第2DPFブロック43B内で燃焼される粒子状物質(PM)の燃焼量を算出する。
【0096】
続いて、制御装置50は、算出した粒子状物質(PM)の燃焼量に相当するカウント値を、EEPROMに設けられたPMカウンタのカウント値から減算した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS21の処理に進む。つまり、制御装置50は、DPF43内に堆積したPM堆積量から、所定時間(例えば、燃料添加弁28による燃料の噴射間隔の時間である。)内に第2DPFブロック43B内で燃焼される粒子状物質(PM)の燃焼量を減算した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS21の処理に進む。
【0097】
図2に示すように、ステップS21において、制御装置50は、EEPROMに設けられたPMカウンタのカウント値を読み出し、PMカウンタのカウント値が「再生終了閾値C2」よりも小さいか否かを判定する。つまり、制御装置50は、DPF43内の粒子状物質(PM)のほぼ全量が燃焼焼却されたか否かを判定する。そして、PMカウンタのカウント値が「再生終了閾値C2」以上であると判定した場合には(S21:NO)、制御装置50は、DPF43内の粒子状物質(PM)が、未だ全て燃焼焼却されていないと判定して、当該処理を終了する。
【0098】
一方、PMカウンタのカウント値が「再生終了閾値C2」よりも小さいと判定した場合には(S21:YES)、制御装置50は、DPF43内の粒子状物質(PM)のほぼ全量が燃焼焼却されたと判定し、燃料添加弁28による燃料の噴射(添加)を終了して、ステップS22に進む。ステップS22において、制御装置50は、DPF再生要求フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して再度RAMに記憶した後、ステップS23に進む。ステップS23において、制御装置50は、燃料添加弁28による燃料添加が許可された旨を表す燃料添加許可フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0099】
[フィルタ再生処理の一例]
ここで、DPF43のフィルタ再生処理の一例について
図15及び
図16に基づいて説明する。尚、
図15及び
図16において、一点鎖線71は、排気温度検出装置36Aによって検出された酸化触媒(DOC)42の上流側の排気ガス温度T1の温度変化の一例を示している。破線72は、酸化触媒(DOC)42の上流側の部分である第1DOCブロック42Aの床温TO1の温度変化の一例を示している。実線73は、酸化触媒(DOC)42の下流側の部分である第2DOCブロック42Bの床温TO2の温度変化の一例を示している。
【0100】
二点鎖線74は、排気温度検出装置36Bによって検出された酸化触媒(DOC)42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気ガス温度T2の温度変化の一例を示している。太破線75は、DPF43の上流側の部分である第1DPFブロック43Aの床温TP1の温度変化の一例を示している。太実線76は、DPF43の下流側の部分である第2DPFブロック43Bの床温TP2の温度変化の一例を示している。太一点鎖線77は、排気温度検出装置36Cによって検出されたDPF43の下流側の排気ガス温度T3の温度変化の一例を示している。
【0101】
図15に示すように、DPF43のフィルタ再生処理が開始された場合には、破線72で示すように、時間TS1[sec]において、酸化触媒(DOC)42の上流側の部分を構成する第1DOCブロック42Aの床温TO1は、DOC下限床温TC1(例えば、約150℃~180℃)以上の約200℃になり活性化される。このため、第1DOCブロック42Aの床温TO1に対応する燃料添加量が取得されて、燃料添加弁28から白煙が出ない添加量の燃料の添加(供給)が開始されて、排気ガス温度が上昇する。
【0102】
一方、二点鎖線74で示すように、排気温度検出装置36Bによって検出された酸化触媒(DOC)42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気ガス温度T2の温度が、DOC下限床温TC1(例えば、約150℃~180℃)以上の約200℃になる時点は、時間TS2[sec]である。従って、DPF43の従来のフィルタ再生の燃料添加弁28による燃料の添加(供給)開始時点よりも、時間ΔTS=TS2-TS1[sec]だけ早い時点で、燃料添加弁28から燃料の添加(供給)が開始される。
【0103】
その結果、酸化触媒(DOC)42からDPF43へ流出する排気ガス温度T2を従来よりも時間ΔTS=TS2-TS1[sec]だけ早い時点から上昇させることができる。これにより、DPF43の上流側部分を構成する第1DPFブロック43Aの床温TP1が、第1DPF燃焼下限温度TD1(例えば、500℃)以上の床温となる時点を早め、DPF43のフィルタ再生を従来よりも早く開始することができる。従って、DPF43の再生時間の短縮化を図ることができる。
【0104】
また、
図16に示すように、車両が減速して、酸化触媒(DOC)42に流入する排気ガス温度T1が低下した場合には、太破線75で示すように、DPF43の上流側の部分を構成する第1DPFブロック43Aの床温TP1は、時間TG1[sec]以降において、第1DPF燃焼下限温度TD1(例えば、500℃)よりも低い温度となる。一方、太実線76で示すように、DPF43の下流側の部分を構成する第2DPFブロック43Bの床温TP2は、時間TG1[sec]以降においても、時間TG2[sec]まで、第2DPF燃焼下限温度TD2(例えば、500℃)よりも高い温度となり、活性化されている。
【0105】
ここで、太破線75と太実線76で示すように、第1DPFブロック43Aの床温TP1、及び、第2DPFブロック43Bの床温TP2は、時間TG1[sec]以降においても、時間TG2[sec]まで、DPF下限床温TC1及びDPF下限床温TC2(例えば、約200℃)以上の温度(℃)である。その結果、時間TG1[sec]以降においても、白煙が出ない添加量の燃料が、燃料添加弁28から継続して添加(供給)される。
【0106】
これにより、第2DPFブロック43Bの床温TP2は、時間TG2[sec]以降においても、第2DPF燃焼下限温度TD2(例えば、500℃)よりも高い温度となるため、上記ステップS317の処理が実行されて、第2DPFブロック43Bの床温TP2に対応するPM燃焼速度が取得される。そして、上記ステップS318の処理が実行されて、第2DPFブロック43B内で燃焼焼却される粒子状物質(PM)の燃焼量が算出され、DPF43内に堆積した粒子状物質(PM)のPM堆積量から減算することができる。
【0107】
その結果、DPF43内に捕集された粒子状物質(PM)の燃焼焼却を、第1DPFブロック43Aの床温TP1が、第1DPF燃焼下限温度TD1(例えば、500℃)よりも低い温度となる時間TG1[sec]よりも、更に、時間ΔTG=TG2-TG1[sec]だけ遅い時間TG2[sec]以降まで延長することができる。従って、DPF43のフィルタ再生は、従来のフィルタ再生の終了時点よりも遅い時点まで継続されるため、DPF43の再生時間の更なる短縮化を図ることができる。
【0108】
また、制御装置50は、酸化触媒(DOC)42の上流側部分を構成する第1DOCブロック42Aと、酸化触媒(DOC)42の下流側部分を構成する第2DOCブロック42Bと、DPF43の上流側部分を構成する第1DPFブロック43Aと、DPF43の下流側部分を構成する第2DPFブロック43Bとの、それぞれにおいて、燃料添加弁28から添加される燃料の白煙が出ない添加量を算出して、これらの合計添加量を算出する。これにより、燃料添加弁28から添加される燃料添加量の精度を上げることができ、排気ガス中の白煙をより高い精度で防止することができる。
【0109】
ここで、排気ガス浄化装置41は、浄化触媒装置の一例として機能する。排気温度検出装置36Aは、上流側排気温度検出装置の一例として機能する。排気温度検出装置36Bは、中間排気温度検出装置の一例として機能する。排気温度検出装置36Cは、下流側排気温度検出装置の一例として機能する。制御装置50は、仮想分割装置、床温推定装置、浄化率取得装置、添加量算出装置、排気ガス流量取得装置の一例として機能する。
【0110】
本発明の排気ガス浄化装置は、前記実施形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、改良、追加、削除が可能である。尚、以下の説明において上記
図1~
図16の前記実施形態に係る内燃機関10等と同一符号は、前記実施形態に係る内燃機関10等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0111】
(A)例えば、前記実施形態では、上記ステップS19の処理において、制御装置50は、燃料添加弁28を介して、排気ガス中に未燃燃料を添加(供給)したが、各インジェクタ14A~14Dを介して、いわゆるポスト噴射によって排気ガス中に未燃燃料を供給するようにしてもよい。
【0112】
(B)また、例えば、酸化触媒(DOC)42とDPF43は、それぞれ、流れ方向に沿って積層されるように3つ以上のブロックに仮想的に分割するようにしてもよい。これにより、各ブロック毎の床温を推定することによって、燃料添加弁28によって添加する燃料を各ブロック毎に高精度に算出して、DPF43の再生処理の期間を更に延長することができる。
【0113】
(C)また、例えば、酸化触媒(DOC)42を設けないで、DPF43に担持される白金(Pt)等の貴金属の量を多くして、DPF43だけを設ける場合においても、制御装置50は、DPF43を流れ方向に沿って積層されるように仮想的に複数のブロックに分割するようにしてもよい。そして、DPF43の床温を、各排気温度検出装置36B、36Cによって検出された排気ガス温度に基づいて、各ブロック毎に算出し、燃料添加弁28によって添加する白煙のでない燃料の添加量を各ブロック毎に求めるようにしてもよい。これにより、前記実施形態と同様に、DPF43のフィルタ再生の期間を、従来のフィルタ再生の期間よりも延長することができ、DPF43の再生時間の短縮化を図ることができる。
【0114】
(D)前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 内燃機関
12 排気通路(排気ガス通路)
28 燃料添加弁
31 吸入空気流量検出装置
36A~36C 排気温度検出装置
41 排気ガス浄化装置
42 酸化触媒(DOC)
42A 第1DOCブロック
42B 第2DOCブロック
43 粒子状物質除去フィルタ(DPF)
43A 第1DPFブロック
43B 第2DPFブロック
50 制御装置
501 燃料添加量マップ記憶部
502 PM燃焼速度マップ記憶部