(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B66C 23/693 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B66C23/693 J
(21)【出願番号】P 2019151521
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 真人
(72)【発明者】
【氏名】長濱 和
(72)【発明者】
【氏名】頭師 正英
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4298128(US,A)
【文献】特開2012-166920(JP,A)
【文献】特開2012-96928(JP,A)
【文献】特開2011-207598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能に重なる第1ブーム及び第2ブームを有する伸縮ブームと、
前記第1ブームを前記第2ブームに対して伸縮方向に移動させる伸縮用アクチュエーターと、
前記伸縮用アクチュエータ-の可動部に設けられた電気的駆動源と、
前記伸縮用アクチュエーターと前記第1ブームとを連結する第1固定ピンと、
前記第1固定ピンを付勢して前記伸縮用アクチュエーターと前記第1ブームとの連結状態を維持する第1付勢機構と、
前記電気的駆動源の動力に基づいて動作し、前記第1固定ピンを挿抜することにより、前記伸縮用アクチュエータ-と前記第1ブームとの連結状態と非連結状態とを切り換える第1連結機構と、
前記第1ブームと前記第2ブームとを連結する第2固定ピンと、
前記第2固定ピンを付勢して前記第1ブームと前記第2ブームとの連結状態を維持する第2付勢機構と、
前記電気的駆動源の動力に基づいて動作し、前記第2固定ピンを挿抜することにより、前記第1ブームと前記第2ブームとの連結状態と非連結状態とを切り換える第2連結機構と、
前記電気的駆動源から前記第1連結機構及び前記第2連結機構への動力伝達経路に配置され、前記電気的駆動源の動力を任意に断続して前記第1連結機構及び前記第2連結機構に伝達するクラッチと、
を備える作業機。
【請求項2】
前記クラッチは、少なくとも、前記第1固定ピンが前記第1付勢機構の付勢力により復帰する際、及び/又は、前記第2固定ピンが前記第2付勢機構の付勢力により復帰する際に、前記電気的駆動源の動力を遮断する、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記電気的駆動源の駆動速度を減速して出力する減速機を備え、
前記クラッチは、前記電気的駆動源と前記減速機の間に配置される、請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記クラッチは、電磁クラッチ、機械式クラッチ、又はトルクダイオードで構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮ブームを備える作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のブーム要素が入れ子状(テレスコピック状ともいう)に重なって配置された伸縮ブームを備える移動式クレーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。伸縮ブームは、例えば、最も内側のブーム要素の内部に配置された伸縮用アクチュエーターによって、1段ずつ伸縮可能に構成される。
【0003】
具体的には、伸縮ブームにおいて、内外に隣り合うブーム要素同士は、ブーム連結ピン(以下、「Bピン」と称する)によって連結されている。Bピンによる連結が解除されると、外側のブーム要素に対して内側のブーム要素が伸縮方向に移動可能となる。移動可能なブーム要素は、シリンダー連結ピン(以下、「Cピン」と称する)によって、伸縮用アクチュエーターの可動部と連結される。伸縮用アクチュエーターは、例えば、ピストンロッド部及びシリンダー部を有する油圧シリンダーで構成され、シリンダー部が可動部として機能してブーム要素を伸縮させる。
【0004】
また、Bピン及びCピンの挿抜動作は、伸縮用アクチュエーターの可動部に設けられたピン挿抜用アクチュエーターによって排他的に制御され、Bピンによるブーム要素同士の連結状態と、Cピンによるシリンダー・ブーム間の連結状態とが、同時に解除されないようになっている(いわゆるインターロック)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来は、ピン挿抜用アクチュエーターとして油圧式のアクチュエーターが用いられており、伸縮ブームの周辺に、アクチュエーターに作動油を供給するための配管や油圧回路が設けられている。このため、伸縮ブームの周辺における設計が空間的に制限され、伸縮ブームを小型化及び軽量化する上で、制約となる虞がある。
また、作動油の粘度が環境温度等により変化するため、動作時間が不安定であり、特に低温環境において影響が大きく、動作不良の原因となる。
【0007】
本発明の目的は、伸縮ブームの周辺における設計の自由度及びブーム伸縮時の信頼性を向上できる作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業機は、
伸縮可能に重なる第1ブーム及び第2ブームを有する伸縮ブームと、
前記第1ブームを前記第2ブームに対して伸縮方向に移動させる伸縮用アクチュエーターと、
前記伸縮用アクチュエータ-の可動部に設けられた電気的駆動源と、
前記伸縮用アクチュエーターと前記第1ブームとを連結する第1固定ピンと、
前記第1固定ピンを付勢して前記伸縮用アクチュエーターと前記第1ブームとの連結状態を維持する第1付勢機構と、
前記電気的駆動源の動力に基づいて動作し、前記第1固定ピンを挿抜することにより、前記伸縮用アクチュエータ-と前記第1ブームとの連結状態と非連結状態とを切り換える第1連結機構と、
前記第1ブームと前記第2ブームとを連結する第2固定ピンと、
前記第2固定ピンを付勢して前記第1ブームと前記第2ブームとの連結状態を維持する第2付勢機構と、
前記電気的駆動源の動力に基づいて動作し、前記第2固定ピンを挿抜することにより、前記第1ブームと前記第2ブームとの連結状態と非連結状態とを切り換える第2連結機構と、
前記電気的駆動源から前記第1連結機構及び前記第2連結機構への動力伝達経路に配置され、前記電気的駆動源の動力を任意に断続して前記第1連結機構及び前記第2連結機構に伝達するクラッチと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、伸縮ブームの周辺における設計の自由度及びブーム伸縮時の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る移動式クレーンの走行時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、移動式クレーンの作業時の状態を示す図である。
【
図3】
図3A~
図3Cは、伸縮ブームの構造及び伸長動作を説明するための模式図である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、伸縮ブームの構造及び伸長動作を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、ピン挿抜用アクチュエーターの斜視図である。
【
図7】
図7は、ピン挿抜用アクチュエーターをZ方向+側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、ピン挿抜用アクチュエーターをY方向+側から見た側面図である。
【
図9】
図9は、ピン挿抜用アクチュエーターとBピン保持部とが係合している状態を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、ピン挿抜用アクチュエーターとBピン保持部とが係合している状態をX方向-側から見た正面図である。
【
図11】
図11は、ピン挿抜用アクチュエーターの内部構造を示す図である。
【
図12】
図12は、ピン挿抜用アクチュエーターの内部構造を示す図である。
【
図13】
図13は、ピン挿抜用アクチュエーターの内部構造を示す図である。
【
図14】
図14は、ピン挿抜用アクチュエーターの構成を模式的に示す図である。
【
図15】
図15A、
図15Bは、シリンダー連結モジュールの抜き状態及びブーム連結モジュールの抜き状態を示す図である。
【
図19】
図19は、伸縮ブームの伸長動作時の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図20】
図20は、モーターアシスト処理を適用した伸縮ブームの伸長動作時の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態では、本発明に係る作業機の一例である移動式クレーン1について説明する。
【0012】
<移動式クレーン>
図1は、本発明の一実施の形態に係る移動式クレーン1の走行時の状態を示す図である。
図2は、移動式クレーン1の作業時の状態を示す図である。
図1、
図2に示す移動式クレーン1は、上部旋回体10及び下部走行体20を備える、いわゆるラフテレーンクレーンである。
【0013】
上部旋回体10は、旋回フレーム11、キャビン12(運転室)、起伏シリンダー13、ジブ14、フック15、ブラケット16、伸縮ブーム30、カウンターウエイトCW、及び巻上装置(ウインチ、図示略)等を備える。
【0014】
旋回フレーム11は、旋回支持体(図示略)を介して、下部走行体20に旋回可能に支持される。旋回フレーム11に対して、キャビン12、起伏シリンダー13、ブラケット16、伸縮ブーム30、カウンターウエイトCW、及び巻上装置(図示略)等が取り付けられる。
キャビン12は、例えば、旋回フレーム11の前部に配置される。キャビン12には、オペレーターが着座するシート、各種計器類の他、クレーン作業及び走行運転を行う際に使用する操作部、表示部及び音声出力部等が配置される。
起伏シリンダー13は、旋回フレーム11と伸縮ブーム30との間に架設される。起伏シリンダー13の伸縮により、所定の起伏角度範囲(例えば、0°~84°)で伸縮ブーム30が起伏される。
ジブ14は、揚程を拡大する場合に、伸縮ブーム30の先端(ブームヘッド)に回動可能に装着される。ジブ14は、前方に向けて回動することにより、伸縮ブーム30の前方に張り出される。
フック15は、かぎ形状を有する吊り具であり、主巻フック及び補巻フックを有する。フック15は、伸縮ブーム30の先端部又はジブ14の先端部のシーブに掛け回されたワイヤーロープ19に取り付けられる。巻上装置(図示略)によるワイヤーロープ19の巻上げ又は繰出しに伴い、フック15が昇降する。
カウンターウエイトCWは、旋回フレーム11の後部に装着される。カウンターウエイトCWは複数の単位ウエイトを有し、単位ウエイトの組合せによって異なる重量となるように設定することができる。
【0015】
伸縮ブーム30は、支持軸(フートピン、符号略)を介して、ブラケット16に回動可能に取り付けられる。伸縮ブーム30は、先端ブーム31、中間ブーム32、及び基端ブーム33を含む複数のブーム要素を有し、これらのブーム要素が入れ子状に重なって配置されている(いわゆるテレスコピック構造)。複数のブーム要素のうち、先端ブーム31及び中間ブーム32は、内部に配置された伸縮用アクチュエーター40(
図5参照)が伸縮することにより、基端ブーム33に対して、伸縮方向にスライドして伸縮する。一方、基端ブーム33は、伸縮方向へ移動不能となっている。伸縮ブーム30は、内側に配置されたブーム要素(つまり、先端ブーム31)から順に伸長することにより、
図1に示す収縮状態から
図2に示す伸長状態に状態遷移する。
【0016】
また、先端ブーム31の先端部には、シーブ(符号略)を有するブームヘッド(符号略)が配置される。また、ブームヘッドには、バケットなどの作業用アタッチメントが取り付けられる場合もある。なお、伸縮ブーム30において、中間ブーム32の段数は特に限定されない。
【0017】
下部走行体20は、車体フレーム21、車輪22、23、アウトリガーOR1、OR2、及びエンジン(図示略)等を備える。
【0018】
車輪22、23には、トランスミッション(図示略)を介してエンジンの駆動力が伝達される。移動式クレーン1は、エンジンの駆動力によって車輪22、23が回転することにより走行する。また、車輪22、23の操舵角(走行方向)は、キャビン12に設けられたハンドル(図示略)の操作に伴い変化する。
【0019】
アウトリガーOR1、OR2は、走行時には車体フレーム21に収納される。一方、アウトリガーOR1、OR2は、作業時(上部旋回体10の動作時)に、水平方向及び垂直方向に張り出し、車体全体を持ち上げて支持し、姿勢を安定させる。
【0020】
このように、移動式クレーン1は、下部走行体20の走行部に車輪22、23を使用した自走クレーンであり、一つの運転室から走行操作とクレーン操作を行うことができる。
なお、移動式クレーンとしては、ラフテレーンクレーンの他に、例えば、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、又は積載形トラッククレーン(カーゴクレーンともいう)が挙げられる。
【0021】
<伸縮ブーム>
図3A~
図3C及び
図4A~
図4Cは、伸縮ブーム30の構造及び伸長動作を説明するための模式図である。
図3A~
図3C及び
図4A~
図4Cは、伸縮ブーム30の幅方向に沿う縦断面であり、図中右側が伸縮ブーム30の基端側、図中左側が伸縮ブーム30の先端側である。ここでは、説明を簡略化するため、中間ブーム32が1段編成の伸縮ブーム30を例示して説明する。
【0022】
図3A~
図3C及び
図4A~
図4Cに示すように、伸縮ブーム30は、従来から知られている伸縮ブームとほぼ同様の構成を有する。伸縮ブーム30は、例えば、伸縮軸に関して、幅方向に対称な構造を有する。伸縮ブーム30の内部には、伸縮ブーム30を伸縮させるための伸縮装置Aが配置される。
【0023】
伸縮ブーム30において、先端ブーム31と中間ブーム32は、先端ブーム31に設けられたブーム連結ピン(以下、「Bピン」と称する)315によって連結され、中間ブーム32と基端ブーム33は、中間ブーム32に設けられたBピン325によって連結される。また、先端ブーム31、中間ブーム32、基端ブーム33は、それぞれ、シリンダー連結ピン(以下、「Cピン」と称する)150によって、伸縮用アクチュエーター40と連結される。Cピン150により伸縮用アクチュエーター40と連結された先端ブーム31又は中間ブーム32が、伸縮対象のブーム要素となる。
【0024】
先端ブーム31は、筒形状を有し、伸縮装置Aを収容可能な内部空間を有する。先端ブーム31は、基端部に、Cピン受部311、Bピン保持部314、及びBピン315を有する。
【0025】
一対のCピン受部311は、それぞれ、ピン挿抜用アクチュエーター50に設けられたCピン150(第1固定ピン)と係脱可能に構成される。Cピン受部311は、例えば、互いに同軸上に配置される。
Bピン保持部314は、Cピン受部311の基端側において、先端ブーム31のフレームに固定され、Bピン315(第2固定ピン)を進退可能に保持する。一対のBピン315は、Bピン保持部314に、例えば、同軸となるように配置され、付勢部材の付勢力により、外側の中間ブーム32に向かって、互いに反対方向に付勢される。つまり、Bピン315は、先端ブーム31の伸縮が行われない通常時は、付勢部材の付勢力により、中間ブーム32の基端側Bピン受部322又は先端側Bピン受部323に挿通され、この状態で維持される。
【0026】
中間ブーム32は、筒形状を有し、先端ブーム31を収容可能な内部空間を有する。中間ブーム32は、基端部に、Cピン受部321、基端側Bピン受部322及びBピン保持部324を有し、先端部に、先端側Bピン受部323を有する。
【0027】
一対のCピン受部321は、それぞれ、Cピン150(第1固定ピン)と係脱可能に構成される。Cピン受部321は、例えば、互いに同軸上に配置される。
一対の基端側Bピン受部322は、Cピン受部321の基端側に設けられ、互いに同軸上に配置される。一対の先端側Bピン受部323は、中間ブーム32の先端部に設けられ、互いに同軸上に配置される。基端側Bピン受部322及び先端側Bピン受部323は、それぞれ、先端ブーム31のBピン315を挿抜可能に構成される。
Bピン保持部324は、基端側Bピン受部322よりも基端側において、中間ブーム32のフレームに固定され、Bピン325(第2固定ピン)を進退可能に保持する。一対のBピン325は、Bピン保持部324に、例えば、同軸となるように配置され、付勢部材の付勢力により、外側の基端ブーム33に向かって、互いに反対方向に付勢される。つまり、Bピン325は、中間ブーム32の伸縮が行われない通常時は、付勢部材の付勢力により、基端ブーム33の基端側Bピン受部332又は先端側Bピン受部333に挿通され、この状態で維持される。
【0028】
基端ブーム33は、筒形状を有し、中間ブーム32を収容可能な内部空間を有する。基端ブーム33は、基端部に、基端側Bピン受部332を有し、先端部に、先端側Bピン受部333を有する。
【0029】
一対の基端側Bピン受部332は、互いに同軸上に配置される。一対の先端側Bピン受部333は、基端ブーム33の先端部に設けられ、互いに同軸上に配置される。基端側Bピン受部332及び先端側Bピン受部333は、それぞれ、中間ブーム32のBピン325を挿抜可能に構成される。
【0030】
Bピン315、325は、ピン挿抜用アクチュエーター50が備えるブーム連結モジュール200の動作に基づいて、自身の軸方向に変位する。
具体的には、Bピン315は、中間ブーム32の基端側Bピン受部322又は先端側Bピン受部323に架け渡されるように挿通される。これにより、先端ブーム31と中間ブーム32とが連結され、連結状態となる。一方、Bピン315が、中間ブーム32の基端側Bピン受部322又は先端側Bピン受部323から抜脱されると、先端ブーム31と中間ブーム32との連結が解除され、非連結状態となる。
Bピン325は、基端ブーム33の基端側Bピン受部332又は先端側Bピン受部333に架け渡されるように挿通される。これにより、中間ブーム32と基端ブーム33とが連結され、連結状態となる。一方、Bピン325が、基端ブーム33の基端側Bピン受部332又は先端側Bピン受部333から抜脱されると、中間ブーム32と基端ブーム33との連結が解除され、非連結状態となる。
【0031】
先端ブーム31は、Bピン315により中間ブーム32と連結された連結状態において、中間ブーム32に対して伸縮方向に移動不能となり、非連結状態において、中間ブーム32に対して伸縮方向に移動可能となる。同様に、中間ブーム32は、Bピン325により基端ブーム33と連結された連結状態において、基端ブーム33に対して伸縮方向に移動不能となり、非連結状態において、基端ブーム33に対して伸縮方向に移動可能となる。
【0032】
Cピン150は、ピン挿抜用アクチュエーター50が備えるシリンダー連結モジュール100の動作に基づいて、自身の軸方向に変位する。
具体的には、先端ブーム31、及び中間ブーム32は、Cピン150がCピン受部311、321に係合した係合状態、又は、Cピン150がCピン受部311、321から脱離した非係合状態のいずれか一方の状態をとる。先端ブーム31及び中間ブーム32は、係合状態において、伸縮用アクチュエーター40の可動部(本実施の形態では、シリンダー部42)とともに伸縮方向に移動可能となる。中間ブーム32が移動するときは、Bピン315を介して中間ブーム32に連結されている先端ブーム31も一緒に伸縮方向に移動する。
【0033】
伸縮ブーム30の伸長動作を簡単に説明すると、以下のとおりである。
図3Aは、伸縮ブーム30の全縮状態を示している。この状態では、先端ブーム31は、中間ブーム32内に収容され、中間ブーム32に対してBピン315を介して連結されており、伸長方向(
図3C参照)に移動不能である。また、先端ブーム31のCピン受部311にCピン150が係合しており、先端ブーム31とシリンダー部42とが係合状態となっている。
図3Bに示すように、中間ブーム32の基端側Bピン受部322からBピン315が抜脱され(
図3Bの破線で囲まれた部分参照)、先端ブーム31と中間ブーム32は非連結状態となり、先端ブーム31は、伸長方向に移動可能となる。
図3Cに示すように、伸縮用アクチュエーター40が動作してシリンダー部42が伸長方向に移動することに伴い、先端ブーム31が先端側に移動する。
【0034】
図4Aに示すように、先端ブーム31が所定位置まで移動した後、中間ブーム32の先端側Bピン受部323にBピン315が挿通され(
図4Aの破線で囲まれた部分参照)、先端ブーム31と中間ブーム32は連結状態となり、先端ブーム31は、伸長方向に移動不能となる。
図4Bに示すように、先端ブーム31のCピン受部311とCピン150との係合が解除され(
図4Bの破線で囲まれた部分参照)、先端ブーム31から分離してシリンダー部42だけが収縮状態に復帰可能となる。
そして、
図4Cに示すように、シリンダー部42が収縮状態に復帰し、中間ブーム32のCピン受部321とCピン150とが係合して、中間ブーム32とシリンダー部42とが係合状態となる。
なお、中間ブーム32を伸長する場合には、上記と同様の動作が行われる。また、先端ブーム31又は中間ブーム32を収縮する場合には、上記と逆方向の動作が行われる。
【0035】
<伸縮装置>
上述した伸縮ブーム30の伸長動作及び収縮動作は、伸縮ブーム30に内蔵された伸縮装置Aによって行われる。伸縮装置Aは、伸縮ブーム30の全縮状態(
図3Aに示す状態)において、先端ブーム31の内部空間に配置される。伸縮装置Aの詳細な構成について、以下に説明する。
【0036】
図5は、伸縮装置Aの外観斜視図である。以下において、伸縮装置Aを構成する各構成要素については、伸縮装置Aに組み込まれた状態を基準として、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。直交座標系(X,Y,Z)において、X方向は、伸縮ブーム30の伸縮方向に一致する。X方向+側は、伸縮ブーム30の先端側であり、X方向-側は、伸縮ブーム30の基端側である。Z方向は、例えば、伸縮ブーム30の起伏角度が0°の倒伏状態において、移動式クレーン1の上下方向に一致する。Y方向は、X方向及びZ方向と直交し、例えば、伸縮ブーム30の幅方向に一致する。
【0037】
図5に示すように、伸縮装置Aは、伸縮用アクチュエーター40及びピン挿抜用アクチュエーター50を備える。ピン挿抜用アクチュエーター50は、例えば、伸縮用アクチュエーター40の基端側に、シリンダー部42とともに移動可能に配置される。
【0038】
伸縮用アクチュエーター40は、ピストンロッド部41(
図3A等参照)及びシリンダー部42を有する油圧シリンダーである。伸縮用アクチュエーター40は、Cピン150(
図3A等参照)を介してシリンダー部42に連結されたブーム要素(例えば、先端ブーム31又は中間ブーム32)を伸縮方向に移動させる。シリンダー部42は、例えば、レール付きのシリンダーフレーム43を有する。シリンダーフレーム43のレール(図示略)は、伸縮ブーム30に設けられたレール溝に係合される。これにより、シリンダー部42は、伸縮ブーム30に沿って、伸縮方向に安定した姿勢で摺動することができる。なお、伸縮用アクチュエーター40の主要構造は、公知の油圧シリンダーとほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0039】
ピン挿抜用アクチュエーター50の構成を
図6~
図10に示す。
図6~
図8は、それぞれ、ピン挿抜用アクチュエーター50の斜視図、Z方向+側から見た平面図、Y方向+側から見た側面図である。
図9、
図10は、それぞれ、ピン挿抜用アクチュエーター50とBピン保持部314とが係合している状態の斜視図、X方向-側から見た正面図である。
図6~
図10では、一対のCピン150を「Cピン150A、150B」として区別して示している。また、
図9、
図10では、一対のBピン315を「Bピン315A、315B」として区別して示している。
【0040】
図6~
図8に示すように、ピン挿抜用アクチュエーター50は、シリンダー部42のX方向-側(基端側)に配置され、シリンダー部42とともに、伸縮方向に移動するようになっている。ピン挿抜用アクチュエーター50は、電動モーター51(電気的駆動源)、ブレーキ52、伝達機構53、位置検出装置54、ロック機構55(
図11等参照)、シリンダー連結モジュール100(第1連結装置)及びブーム連結モジュール200(第2連結装置)を備える。伝達機構53は、クラッチ61、減速機62及びトルクリミッター63を含む(
図14参照)。
【0041】
各構成要素は、ハウジング58内に配置され、ユニット化されている。これにより、ピン挿抜用アクチュエーター50の小型化、生産性の向上、及び、システムの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、ハウジング58は、箱状の第1ハウジング581及び箱状の第2ハウジング582を有する。
【0042】
第1ハウジング581は、内部空間に、シリンダー連結モジュール100を収容する。シリンダー連結モジュール100のCピン150A、150Bは、それぞれ、例えば第1ハウジング581のY方向両端部から進退可能に配置される。第1ハウジング581には、伸縮用アクチュエーター40のピストンロッド部41(
図3A等参照)がX方向に挿通される。第1ハウジング581のX方向+側の側壁には、シリンダー部42の端部が固定される。
【0043】
第2ハウジング582は、第1ハウジングのZ方向+側に設けられる。第2ハウジング582は、内部空間に、ブーム連結モジュール200を収容する。ブーム連結モジュール200のBピン用ラックバー220Aは、例えば第2ハウジング582のY方向一端部から進退可能に配置され、Bピン用ラックバー220Bは、例えば他端部から進退可能に配置される。また、第2ハウジング582には、伝達機構53の伝達軸56(
図12参照)がX方向に挿通される。
【0044】
電動モーター51は、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200を動作させる電気的駆動源である。電動モーター51は、例えば、電磁力を利用して回転運動を出力する回転式モーターで構成される。回転式モーターとしては、例えば、ブラシモーター(DCモーター)、ブラシレスDCモーター、ステッピングモーター等、各種の電磁モーターを適用できる。電動モーター51の動作は、制御装置70(
図14参照)によって制御される。
【0045】
電動モーター51は、伝達機構53を介して、第2ハウジング582に支持される。電動モーター51の出力軸(図示略)は、X方向に延在する。電動モーター51は、例えば、伝達機構53の機械要素としてピストンロッド部41の外周に配置されたリングギヤ(図示略)と電動モーター51の出力軸が噛合するように配置される。電動モーター51をこのような配置とすることにより、Y方向及びZ方向におけるピン挿抜用アクチュエーター50の小型化を図ることができる。
【0046】
電動モーター51は、大型薄型モーターや面対向モーター等の偏平モーターを適用して、シリンダーフレーム43内に配置することもできる。この場合、コンパクトな構成が可能となる上、シリンダーフレーム43が保護カバーとして機能し、ブーム伸縮動作中の干渉による破損リスクを低減できる。また、モーター外径が大きいことを活かして、モーターの出力軸から直接大径のリングギヤに動力を伝達することにより、減速比を小さくすることができ、Cピン用付勢機構160又はBピン用付勢機構240による入り動作中のイナーシャを低減することもできる。
【0047】
電動モーター51は、電力供給用ケーブルを介して、例えば、上部旋回体10(
図1参照)に配置された電源装置(図示略)と接続される。また、電動モーター51は、制御信号伝送用ケーブルを介して、例えば、上部旋回体10に配置された制御装置70と接続される。これらのケーブルは、伸縮ブーム30の基端部又は上部旋回体10(
図1参照)に設けられたコードリールにより、繰り出し及び巻き取り可能である。
電力供給用ケーブル及び制御信号伝送用ケーブルは、配線スペースが小さく、自由に引き回すことができるので、油圧アクチュエーターの配管や油圧回路を設ける場合に比較して、伸縮ブーム30周りの設計の自由度が格段に向上する。
【0048】
また、電動モーター51は、手動ハンドル(図示略)により操作可能な手動操作部511を有する。手動操作部511は、ピン挿抜用アクチュエーター50(具体的には、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200)の状態遷移を、手動で行うためのものである。モーター故障時などに、手動ハンドルにより手動操作部511を回すことにより、電動モーター51の出力軸が回転してピン挿抜用アクチュエーター50の状態を遷移し、Bピン315、325及びCピン150を挿抜することができる。
【0049】
本実施の形態では、1個の電動モーター51により、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200を動作させる。なお、電動モーター51として、シリンダー連結モジュール100用モーターと、ブーム連結モジュール200用モーターを別々に設けてもよい。例えば、伝達機構53のリングギヤ(図示略)に電動モーター51の出力軸が接続される場合、リングギヤの外周であれば電動モーター51の配置は特に制限されないため、電動モーター51として複数台の小型モーターを容易に配置することができる。また、モーターの台数を増減することで必要なトルクを得ることができるので、1種類のモーターで対応でき、他機種の設計にも容易に適用することができる。
【0050】
ブレーキ52は、電動モーター51に対して制動力を付与する。ブレーキ52は、例えば、電磁力を利用して制動を行う電磁ブレーキで構成される。ブレーキ52の動作は、制御装置70によって制御される。
【0051】
ブレーキ52は、電動モーター51の停止状態(非通電状態)において、電動モーター51の出力軸の回転を規制する。ブレーキ52は、例えば、シリンダー連結モジュール100の抜き状態又はブーム連結モジュール200の抜き状態において動作する。これにより、電動モーター51の停止状態において、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200の抜き状態が維持される。モータートルクにより抜き状態を維持する場合に比較して、省電力化を図ることができ、また、ロック状態となることによる電動モーター51の発熱を防止することができる。
【0052】
また、ブレーキ52は、制動時において、シリンダー連結モジュール100又はブーム連結モジュール200に所定の大きさの外力が作用した場合には、電動モーター51の回転(つまり、滑り)を許容してもよい。これにより、ピン挿抜用アクチュエーター50の機械要素(例えば、電動モーター51及び各ギヤなど)が、過負荷により損傷するのを防止することができる。
【0053】
ブレーキ52は、伝達機構53の減速機62よりも前段に配置されるのが好ましい。前段とは、電動モーター51の動力がシリンダー連結モジュール100又はブーム連結モジュール200に伝達される動力伝達経路における上流側(X方向-側)であり、電動モーター51の上流側を含む。一方、後段とは、電動モーター51の動力伝達経路における下流側(X方向+側)である。本実施の形態では、ブレーキ52は、電動モーター51よりもX方向-側(つまり、電動モーター51を中心として伝達機構53と反対側)に、電動モーター51と同軸上に配置されている。ブレーキ52をこのような配置とすることにより、Y方向及びZ方向におけるピン挿抜用アクチュエーター50の小型化を図ることができる。また、ブレーキ52を減速機62よりも前段に配置する場合、減速機62よりも後段に配置する場合に比較して、電動モーター51の停止状態を維持するために必要なブレーキトルクが小さくなるので、ブレーキ52の小型化を図ることができる。
【0054】
なお、ブレーキ52には、機械式又は電磁式などの各種ブレーキ装置を適用することができる。また、ブレーキ52の位置は、本実施形態の位置に限定されない。
【0055】
伝達機構53は、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200に、電動モーター51の動力(つまり、回転運動)を伝達する。伝達機構53は、第2ハウジング582に配置される。伝達機構53は、クラッチ61、減速機62、及びトルクリミッター63等を有する(
図14参照)。伝達機構53は、例えば、ピストンロッド部41の外周に配置されるリングギヤ(図示略)と、リングギヤに噛合する伝達ギヤを有し、クラッチ61、減速機62、及びトルクリミッター63は、伝達ギヤに接続された伝達軸56に配置される。
【0056】
クラッチ61は、電動モーター51の動力を伝達する動力伝達経路に配置され、動力を任意に断続してシリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200に伝達する。クラッチ61は、例えば、動力伝達経路において、減速機62の前段(本実施の形態では、電動モーター51と減速機62の間)に配置される。クラッチ61をこのような配置とすることにより、クラッチ61の伝達トルク容量を小さくすることができ、クラッチ61の小型化を図ることができる。
【0057】
クラッチ61には、例えば、電磁クラッチ、機械式クラッチ、又はトルクダイオードを適用することができる。これらの構成は公知であるので、簡単に説明する。
【0058】
電磁クラッチは、入力軸から出力軸への動力伝達を、電磁的に伝達/遮断する機械要素である。電磁クラッチを適用する場合、クラッチ61の動作は、例えば、制御装置70によって制御される。なお、クラッチ61の動作を電動モーター51と連動させる場合、クラッチ61を個別に制御する必要はない。
【0059】
機械式クラッチは、入力軸と出力軸が互いに噛み合うことにより動力を伝達する機械要素である。機械式クラッチを適用する場合、クラッチ61は、入力軸から出力軸へ動力を伝達する一方、出力軸から入力軸への動力は遮断し、一方向のみに動力を伝達するワンウェイクラッチが好適である。
トルクダイオードは、入力軸から出力軸へ動力を伝達する一方、出力軸から入力軸への動力は遮断する機械要素である。
機械式クラッチ及びトルクダイオードを適用する場合、制御装置70等による電気的な制御は不要である。
【0060】
減速機62は、電動モーター51の回転を減速して出力する。減速機62は、例えば、減速機ケース(符号略)に収容された遊星歯車機構で構成され、入力軸及び出力軸はX方向に延在する。減速機62をこのような配置とすることにより、Y方向及びZ方向におけるピン挿抜用アクチュエーター50の小型化を図ることができる。
【0061】
トルクリミッター63は、電動モーター51の動力を伝達する動力伝達経路に配置され、動力伝達経路を構成する機械要素(例えば、電動モーター51)に作用するトルクを所定値以下に保持する過負荷保護装置である。トルクリミッター63は、例えば、動力伝達経路において、減速機62の後段に配置される。トルクリミッター63をこのような配置とすることにより、減速機62の前段に配置する場合に比較して、トルク設定値の公差やばらつきの影響を小さくすることができる。また例えば、トルクリミッター63は、動力伝達経路において、減速機62の前段に配置されてもよい。この場合、トルク設定値が小さくなるので、トルクリミッター63の小型化を図ることができる。
【0062】
なお、電動モーター51を駆動したままトルクリミッター63が滑り続けることで、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200に所定のトルクを与え続けることができる。したがって、トルクリミッター63をブレーキ52の代用として使用し、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200の抜き状態を維持することができる。また、電動モーター51はロック状態とならないので、過負荷による発熱も生じない。
【0063】
トルクリミッター63は、例えば、クラッチ61の出力軸(伝達機構53の伝達軸56)に取り付けられ、所定値よりも大きいトルクが生じた場合に、入力側要素と出力側要素が滑りながら接合する摩擦式トルクリミッターで構成される。
【0064】
位置検出装置54は、電動モーター51の出力(例えば、出力軸の回転)に基づいて、Cピン150及びBピン315、325の変位を検出する。位置検出装置54は、例えば、Cピン150又はBピン315、325の基準位置(
図17A及び
図18A参照)からの移動方向(回転方向)及び移動量(回転角度)を検出する。
【0065】
位置検出装置54は、例えば、ロータリーエンコーダーやポテンショメーター等の角度センサーで構成され、電動モーター51の出力軸の回転量に応じた情報(例えば、パルス信号、コード信号)を出力する。ロータリーエンコーダーは、入力軸の回転変位を、内蔵した格子円盤を利用して検出し、出力する。ポテンショメーターは、回転角度の変化を抵抗値の変化に変換して出力する。
ロータリーエンコーダーの出力方式は特に限定されず、測定開始位置からの回転量(回転角度)に応じたパルス信号(相対角度信号)を出力するインクリメンタル方式でもよいし、基準点に対して絶対的な角度位置に対応したコード信号(絶対角度信号)を出力するアブソリュート方式でもよい。
位置検出装置54をアブソリュート方式のロータリーエンコーダーで構成した場合、非通電状態から通電状態に復帰した場合でも、Cピン150及びBピン315、325の絶対位置を検出することができる。
【0066】
位置検出装置54は、電動モーター51の出力軸に直接設けられてもよいし、電動モーター51の出力軸とともに回転する回転部材(例えば、回転軸、ギヤなど)に設けられてもよい。
本実施形態では、位置検出装置54は、伝達機構53(トルクリミッター63)の後段(X方向+側)において、伝達軸56に設けられ、伝達軸56の回転量に応じた情報を出力する。この場合、位置検出装置54には、伝達軸56の回転数(回転速度)に対して十分な分解能が得られるロータリーエンコーダーが好適である。
なお、伝達軸56には、シリンダー連結モジュール100のCピン用欠歯歯車110、及び、ブーム連結モジュール200のBピン用欠歯歯車210が固定されているため、位置検出装置54の検出結果は、Cピン用欠歯歯車110及びBピン用欠歯歯車210の回転量に応じた情報ともいえる。
【0067】
なお、位置検出装置54は、上述のロータリーエンコーダーに限定されず、例えば、リミットスイッチで構成されてもよいし、近接センサーで構成されてもよい。リミットスイッチは、減速機62よりも後段に配置され、電動モーター51の出力に基づいて機械的に作動する。また、近接センサは、減速機62よりも後段において、電動モーター51の出力に基づいて回転する回転部材に対向して配置され、上記回転部材との距離に基づいて検出信号を出力する。位置検出装置54の検出結果は、制御装置70に出力される。
ただし、近接センサーやリミットスイッチは、例えば、Cピン150及びBピン315、325それぞれの入り状態及び抜き状態を検出できる位置に設けられ、Cピン150及びBピン用ラックバー220A、220Bと少なくとも同数だけ必要となる。これに対して、ロータリーエンコーダーを適用した場合、1つの検出センサーにより、Cピン150及びBピン315、325それぞれの状態を検出できるので、部品点数を低減でき、低コスト化を図ることができる。
【0068】
また、位置検出装置54の配置は、本実施形態に限定されない。例えば、位置検出装置54は、減速機62よりも前段に配置されてもよい。すなわち、位置検出装置54は、減速機62により減速される前の電動モーター51の回転に基づいて、制御装置70に出力する情報を取得してもよい。位置検出装置54が減速機62の前段に配置される方が、減速機62の後段に配置される場合に比較して、高い分解能を得ることができる。
【0069】
制御装置70は、例えば、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置としてのROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)、入力端子、出力端子などを有する車載コンピュータである。制御装置70は、位置検出装置54の出力に基づいて、Cピン150又はBピン315、325の位置に関する情報を演算する。演算においては、位置検出装置54の出力と、Cピン150及びBピン315、325の位置に関する情報(例えば、基準位置からの移動量)との相関関係を示すデータ(テーブル、マップなど)が用いられる。このデータは、例えば、ROMに記憶される。
【0070】
制御装置70は、例えば、位置検出装置54の出力に基づく演算により、Cピン150と、先端ブーム31又は中間ブーム32のCピン受部311、321とが、係合状態(例えば、
図3Aに示す状態)にあるか非係合状態(例えば、
図4Bに示す状態)にあるか、すなわち、ピン挿抜用アクチュエーター50と先端ブーム31又は中間ブーム32との連結状態を判断する。
また、制御装置70は、伸縮対象が先端ブーム31である場合、位置検出装置54の検出結果に基づく演算により、先端ブーム31のBピン315と中間ブーム32とが、係合状態(
図3A、
図3C等参照)にあるか、非係合状態(
図3B参照)にあるか、すなわち、先端ブーム31と中間ブーム32との連結状態を判断する。同様に、制御装置70は、伸縮対象が中間ブーム32である場合、位置検出装置54の検出結果に基づく演算により、中間ブーム32と基端ブーム33との連結状態を判断する。
制御装置70は、演算結果に基づいて、例えば、電動モーター51、ブレーキ52、クラッチ61等の動作制御を含む、ピン挿抜用アクチュエーター50の各種制御を実行する。なお、ピン挿抜用アクチュエーター50の各種制御を実行するに際して、例えば、伸縮ブーム30や伸縮用アクチュエーター40に設けられる各種センサーを用いて、伸縮ブーム30又は伸縮用アクチュエーター40の状態を示す情報を取得してもよい。
【0071】
図11~
図14を参照して、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200について説明する。
図11~
図13は、ピン挿抜用アクチュエーター50の内部構造を示す図である。
図14は、ピン挿抜用アクチュエーター50の構成を模式的に示す図である。
図11~
図14では、電動モーター51が停止状態であり、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200が動作していない中立状態を示している。中立状態では、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200は、ともに入り状態となっている。中立状態は、例えば、Cピン用ラックバー120及びBピン用ラックバー220A、220Bの移動がストッパー(図示略)により機械的に規制されることにより保持される。なお、Cピン用付勢機構160の付勢力とBピン用付勢機構240の付勢力が釣り合うことにより、中立状態が保持されるように構成してもよい。
【0072】
また、ブーム連結モジュール200の抜き状態及びシリンダー連結モジュール100の抜き状態を
図15A、
図15Bに示す。
図15Aに示すように、シリンダー連結モジュール100の抜き状態において、ブーム連結モジュール200は、入り状態に保持される。
図15Bに示すように、ブーム連結モジュール200の抜き状態において、シリンダー連結モジュール100は、入り状態に保持される。
【0073】
シリンダー連結モジュール100は、電動モーター51の動力(つまり、回転運動)に基づいて動作し、入り状態(
図11参照)と、抜き状態(
図15A参照)との間を状態遷移する。
シリンダー連結モジュール100の入り状態とは、先端ブーム31又は中間ブーム32のCピン受部311、321とCピン150とを係合させ、それぞれのブーム要素とピン挿抜用アクチュエーター50とを連結する状態である。この連結状態では、シリンダー部42及びピン連結用アクチュエーター50とともに、先端ブーム31及び中間ブーム32が移動可能となる(
図3B、
図15B等参照)。
一方、シリンダー連結モジュール100の抜き状態とは、先端ブーム31又は中間ブーム32のCピン受部311、321からCピン150を脱離させ、それぞれのブーム要素とピン連結用アクチュエーター50とを分離する状態である。この非連結状態では、シリンダー部42及びピン連結用アクチュエーター50は、それぞれのブーム要素から独立して移動可能となる(
図4B、
図15A等参照)。
【0074】
ブーム連結モジュール200は、電動モーター51の動力(つまり、回転運動)に基づいて動作し、入り状態(
図11参照)と、抜き状態(
図15B参照)との間を状態遷移する。
ブーム連結モジュール200の入り状態とは、例えば、中間ブーム32の基端側Bピン受部322又は先端側Bピン受部323にBピン315を挿通させ、先端ブーム31と中間ブーム32とを連結する状態である。この連結状態では、先端ブーム31は、中間ブーム32に対して伸縮方向に移動不能となる(
図3A、
図15A等参照)。
一方、ブーム連結モジュール200の抜き状態とは、例えば、中間ブーム32の基端側Bピン受部322又は先端側Bピン受部323からBピン315を脱離させ、先端ブーム31と中間ブーム32とを分離する状態である。この非連結状態では、先端ブーム31は、中間ブーム32に対して、伸縮方向に移動可能となる(
図3B、
図15B等参照)。
【0075】
シリンダー連結モジュール100は、
図11~
図14に示すように、Cピン用欠歯歯車110、Cピン用ラックバー120、第1歯車群130、第2歯車群140、Cピン150、及び、Cピン用付勢機構160を有する。各機械要素110~160は、第1連結機構の構成部材の一例である。以下の説明では、Cピン150を、「Cピン150A、150B」として区別して示す。
【0076】
なお、本実施形態では、シリンダー連結モジュール100に、一対のCピン150A、150Bが組み込まれているが、Cピン150A、150Bは、シリンダー連結モジュール100から独立して設けられてもよい。
【0077】
Cピン用欠歯歯車110は、略円輪板状の歯車であり、外周面の一部に歯部111(
図12参照)を有する。Cピン用欠歯歯車110は、伝達機構53の伝達軸56に外嵌固定され、伝達軸56とともに回転する。Cピン用欠歯歯車110は、ブーム連結モジュール200のBピン用欠歯歯車210とともにスイッチギヤG(
図14参照)を構成する。電動モーター51の動力は、スイッチギヤGにより、シリンダー連結モジュール100とブーム連結モジュール200のうちの何れか一方に択一的に伝達される。
【0078】
本実施形態では、スイッチギヤGを構成するCピン用欠歯歯車110及びBピン用欠歯歯車210はそれぞれ、第1連結機構であるシリンダー連結モジュール100及び第2連結機構であるブーム連結モジュール200に組み込まれているが、スイッチギヤGは、第1連結機構及び第2連結機構から独立して設けられてもよい。
また、スイッチギヤGは、Cピン用欠歯歯車110及びBピン用欠歯歯車210として機能すればよく、例えば、
図14に示すように、1つの欠歯歯車で構成されてもよい。
【0079】
以下の説明において、シリンダー連結モジュール100が、入り状態(
図11参照)から抜き状態(
図15A参照)に状態遷移する際の、Cピン用欠歯歯車110の回転方向(
図14におけるR1方向)を「正方向」、抜き状態から入り状態に状態遷移する際の、Cピン用欠歯歯車110の回転方向(
図14におけるR2方向)を「逆方向」と称する。
Cピン用欠歯歯車110の歯部111を構成する凸部のうち、Cピン用欠歯歯車110の正方向端部に設けられた凸部が、位置決め歯(図示省略)である。
【0080】
Cピン用ラックバー120は、例えば、一方向に伸びる軸部材であって、Cピン用欠歯歯車110の下側(Z方向-側)に、Y方向に沿って配置される。
Cピン用ラックバー120は、Cピン用欠歯歯車110に近い側(Z方向+側)の面に入力側ラック部121を有し、Cピン用欠歯歯車110から遠い側(Z方向-側)の面に2つの出力側ラック部122、123を有する。
【0081】
入力側ラック部121は、シリンダー連結モジュール100が入り状態(
図11参照)から抜き状態(
図15A参照)に状態遷移する際にのみ、Cピン用欠歯歯車110の歯部111と噛合する。
具体的には、シリンダー連結モジュール100の入り状態において、入力側ラック部121におけるY方向+側の第1端面(図示略)は、Cピン用欠歯歯車110の歯部111における位置決め歯(図示省略)と当接、又は僅かな隙間を介してY方向に対向している。この状態において、Cピン用欠歯歯車110がR1方向に回転すると、位置決め歯が第1端面をY方向+側に押して、Cピン用ラックバー120がY方向+側に移動する。そして、位置決め歯よりも逆方向に形成された歯部111が、入力側ラック部121と順次噛合する。これにより、Cピン用ラックバー120は、Cピン用欠歯歯車110のR1方向の回転に伴い、Y方向+側に移動する。
なお、
図11に示すシリンダー連結モジュール100の入り状態から、Cピン用欠歯歯車110がR2方向に回転した場合には、入力側ラック部121は、Cピン用欠歯歯車110の歯部111と噛合しない。
【0082】
このように、Cピン用ラックバー120は、Cピン用欠歯歯車110の回転に伴い、自身の長手方向(Y方向)に移動する。Cピン用ラックバー120は、シリンダー連結モジュール100の入り状態において最もY方向-側に位置し(
図11参照)、抜き状態において最もY方向+側に位置する(
図15A参照)。
すなわち、シリンダー連結モジュール100の入り状態(中立状態)において、Cピン用欠歯歯車110がR1方向に回転すると、Cピン用ラックバー120は、Y方向+側に移動し、抜き状態に遷移する。一方、シリンダー連結モジュール100の抜き状態において、Cピン用欠歯歯車110がR2方向に回転すると、Cピン用ラックバー120は、Y方向-側に移動し、入り状態に遷移する。
【0083】
出力側ラック部122、123は、それぞれ、第1歯車群130、第2歯車群140と噛合する。
【0084】
第1歯車群130は、例えば、駆動歯車131、中間歯車132及び従動歯車133を有する。各歯車要素は、平歯車で構成される。
具体的には、駆動歯車131は、Cピン用ラックバー120の出力側ラック部122及び中間歯車132と噛合する。中間歯車132は、駆動歯車131及び従動歯車133と噛合する。従動歯車133は、中間歯車132及び一方のCピン150Aのピン側ラック部151と噛合する。
【0085】
シリンダー連結モジュール100が入り状態であるとき、駆動歯車131は、Cピン用ラックバー120の出力側ラック部122におけるY方向+側の端部又は端部寄りの部分と噛合する。また、従動歯車133は、一方のCピン150Aのピン側ラック部151におけるY方向-側の端部と噛合する。
【0086】
第2歯車群140は、例えば、駆動歯車141及び従動歯車142を有する。各歯車要素は、平歯車で構成される。
具体的には、駆動歯車141は、Cピン用ラックバー120の出力側ラック部123及び従動歯車142と噛合する。従動歯車142は、駆動歯車141及び他方のCピン150Bのピン側ラック部151と噛合する。
【0087】
シリンダー連結モジュール100が入り状態であるとき、駆動歯車141は、Cピン用ラックバー120の出力側ラック部123におけるY方向+側の端部又は端部寄りの部分と噛合する。また、従動歯車142は、他方のCピン150Bのピン側ラック部151におけるY方向+側の端部と噛合する。
【0088】
第1歯車群130では、駆動歯車131と従動歯車133が中間歯車132を介して接続されているのに対して、第2歯車群140では、駆動歯車141と従動歯車142が直接接続されている。したがって、第1歯車群130の従動歯車133の回転方向と、第2歯車群140の従動歯車142の回転方向は逆方向となる。
【0089】
一対のCピン150A、150Bは、例えば、Y方向において互いに同軸となるように配置される。Cピン150A、150Bは、伸縮用アクチュエーター40のピストンロッド部41の中心に関して対称であることが好ましい。これにより、ピストンロッド部41に曲げ応力が生じるのを防止できるとともに、高さ方向(Z方向)の寸法を小さくすることができる。
なお、Cピン150A、150Bは、伸縮方向(X方向)に関して左右対称に配置されていればよく、例えば、互いにZ方向にずれた位置に配置されてもよいし、ピストンロッド部41に対して偏心した位置(例えば、ピストンロッド部41のZ方向-側)に設けられてもよい。
以下において、Cピン150A、150Bの先端部とは、互いに遠い側の端部であり、基端部とは互いに近い側の端部である。
【0090】
Cピン150A、150Bは、外周面にピン側ラック部151を有する。一方のCピン150Aのピン側ラック部151は、第1歯車群130の従動歯車133と噛合する。他方のCピン150Bのピン側ラック部151は、第2歯車群140の従動歯車142と噛合する。
【0091】
Cピン150A、150Bは、それぞれ、従動歯車133、142の回転に伴い、自身の軸方向(Y方向)に移動する。具体的には、一方のCピン150Aは、シリンダー連結モジュール100が入り状態から抜き状態に状態遷移する際に、Y方向-側に移動し、抜き状態から入り状態に状態遷移する際に、Y方向+側に移動する。他方のCピン150Bは、シリンダー連結モジュール100が入り状態から抜き状態に状態遷移する際に、Y方向+側に移動し、抜き状態から入り状態に状態遷移する際に、Y方向-側に移動する。つまり、上述の状態遷移において、Cピン150A、150Bは、Y方向において互いに反対方向に移動する。
【0092】
Cピン用付勢機構160は、Cピン150A、150Bを、互いに離れる方向に付勢する。Cピン用付勢機構160は、例えば、一対の圧縮コイルばねで構成される。本実施の形態では、Cピン用付勢機構160は、Cピン150A、150Bの基端側に配置され、Cピン150A、150Bを、先端側に向けて付勢する。
電動モーター51がR1方向に回転してシリンダー連結モジュール100が抜き状態(
図15A参照)となった後、電動モーター51の動作が停止すると、シリンダー連結モジュール100は、Cピン用付勢機構160の付勢力によって入り状態に自動復帰する。ただし、ブレーキ52が動作している場合には、シリンダー連結モジュール100は入り状態に自動復帰せず、抜き状態が保持される。
【0093】
なお、Cピン用付勢機構160は、Cピン150A、150Bに直接的に付勢力を作用させてもよいし、他の部材を介して付勢力を作用させてもよい。また、Cピン用付勢機構160を省略し、電動モーター51の動力に基づいて、シリンダー連結モジュール100が抜き状態から入り状態へと状態遷移するようにしてもよい。この場合でも、フェイルセーフの観点から、Cピン用付勢機構160を設けて、モーター故障時に安全側である入り状態に復帰するように構成することが好ましい。
【0094】
ブーム連結モジュール200は、
図11~
図13に示すように、Bピン用欠歯歯車210、一対のBピン用ラックバー220A、220B、同期歯車230(
図14参照)、及び、Bピン用付勢機構240を有する。各機械要素210~240は、第2連結機構の構成部材の一例である。以下の説明では、Bピン315を、「Bピン315A、315B」として区別して示す。また、ブーム連結モジュール200がBピン315に作用する場合について説明するが、Bピン325に作用する場合も同様である。
【0095】
Bピン用欠歯歯車210は、略円輪板状の歯車であり、外周面の一部に歯部211を有する。Bピン用欠歯歯車210は、伝達軸56において、Cピン用欠歯歯車110よりもX方向+側に外嵌固定され、伝達軸56とともに回転する。前述の通り、Bピン用欠歯歯車210は、シリンダー連結モジュール100のCピン用欠歯歯車110とともにスイッチギヤG(
図14参照)を構成する。
【0096】
以下の説明において、ブーム連結モジュール200が、入り状態(
図11参照)から抜き状態(
図15B参照)に状態遷移する際の、Bピン用欠歯歯車210の回転方向(
図14におけるR2方向)を「正方向」、抜き状態から入り状態に状態遷移する際の、Bピン用欠歯歯車210の回転方向(
図14におけるR1方向)を「逆方向」と称する。
Bピン用欠歯歯車210の歯部211を構成する凸部のうち、Bピン用欠歯歯車210の正方向端部に設けられた凸部が、位置決め歯(符号略)である。
【0097】
つまり、ブーム連結モジュール200が入り状態から抜き状態に状態遷移する際のBピン用欠歯歯車210の回転方向R2は、シリンダー連結モジュール100が入り状態から抜き状態に状態遷移する際のCピン用欠歯歯車110の回転方向R1と逆である。
【0098】
一対のBピン用ラックバー220A、220Bは、例えば、一方向に伸びる軸部材であって、Bピン用欠歯歯車110の上側(Z方向+側)に、Y方向に沿って互いに平行に配置される。また、Bピン用ラックバー220A、220Bは、X方向において、同期歯車230(
図14参照)を中心に配置される。
【0099】
Bピン用ラックバー220A、220Bは、それぞれ、Bピン保持部314の係止片314aと係合する係合部221を有する。係止片314aは、Bピン保持部314において、例えば、Y方向両端部(Bピン315A、315Bの近傍)に設けられる。
【0100】
一方のBピン用ラックバー220Bは、Bピン用欠歯歯車210に近い側の面に、駆動側ラック部222を有する。また、Bピン用ラックバー220A、220Bは、X方向に対向する面に同期側ラック部223(
図14参照)を有する。同期側ラック部223は、それぞれ、同期歯車230に噛合する。
【0101】
駆動側ラック部222は、ブーム連結モジュール200が入り状態(
図11参照)から抜き状態(
図15B参照)に状態遷移する際にのみ、Bピン用欠歯歯車210の歯部211と噛合する。
具体的には、ブーム連結モジュール200の入り状態において、駆動側ラック部222におけるY方向+側の第1端面(図示略)は、Bピン用欠歯歯車210の歯部211における位置決め歯(図示略)と当接、又は僅かな隙間を介してY方向に対向している。この状態において、Bピン用欠歯歯車210がR2方向に回転すると、位置決め歯が第1端面をY方向+側に押して、一方のBピン用ラックバー220BがY方向+側に移動する。
また、一方のBピン用ラックバー220BがY方向+側に移動すると、同期歯車230が回転して、他方のBピン用ラックバー220AがY方向-側(つまり、Bピン用ラックバー220Bと反対側)に移動する。
なお、
図11に示すブーム連結モジュール200の入り状態から、Bピン用欠歯歯車210がR1方向に回転した場合には、駆動側ラック部222は、Bピン用欠歯歯車210の歯部211と噛合しない。
【0102】
このように、Bピン用ラックバー220A、220Bは、それぞれ、Bピン用欠歯歯車210の回転に伴い、自身の長手方向(Y方向)に移動する。一方のBピン用ラックバー220Bは、ブーム連結モジュール200の入り状態において、最もY方向-側に位置し(
図11参照)、抜き状態において、最もY方向+側に位置する(
図15B参照)。また、他方のBピン用ラックバー220Aは、ブーム連結モジュール200の入り状態において、最もY方向+側に位置し(
図11参照)、抜き状態において、最もY方向-側に位置する(
図15B参照)。
【0103】
一方のBピン用ラックバー220BがY方向に移動することに伴い、Bピン保持部314の一方の係止片314aとBピン用ラックバー220Bの係合部221が当接する。そして、Bピン保持部314のBピン315Bを支持する部材がY方向に移動することにより、Bピン315Bが入り状態又は抜き状態に遷移する。
同様に、他方のBピン用ラックバー220AがY方向に移動することに伴い、Bピン保持部314の他方の係止片314aとBピン用ラックバー220Aの係合部221が当接する。そして、Bピン保持部314のBピン315Aを支持する部材がY方向に移動することにより、Bピン315Aが入り状態又は抜き状態に遷移する。
上述の状態遷移において、Bピン315A、315Bは、Y方向において互いに反対方向に移動する。
【0104】
なお、一方のBピン用ラックバー220BのY方向+側への移動、及び、他方のBピン用ラックバー220AのY方向-側への移動は、例えば、ハウジング58に設けられたストッパー(図示略)との当接により規制される。
【0105】
Bピン用付勢機構240は、Bピン用ラックバー220A、220Bを、互いに離れる方向に付勢する。Bピン用付勢機構240は、例えば、一対の圧縮コイルばねで構成される。本実施の形態では、Bピン用付勢機構240は、Bピン用ラックバー220A、220Bに内蔵され、Bピン用ラックバー220A、220Bを、先端側に向けて付勢する。
電動モーター51がR2方向に回転してブーム連結モジュール200が抜き状態(
図15B参照)となった後、電動モーター51の動作が停止すると、ブーム連結モジュール200は、Bピン用付勢機構240の付勢力によって入り状態(
図11参照)に自動復帰する。ただし、ブレーキ52が動作している場合には、ブーム連結モジュール200は入り状態荷自動復帰せず、抜き状態が保持される。
【0106】
なお、Bピン用付勢機構240は、Bピン用ラックバー220A、220Bに直接的に付勢力を作用させてもよいし、他の部材を介して付勢力を作用させてもよい。また、Bピン用付勢機構240を省略し、電動モーター51の動力に基づいて、ブーム連結モジュール200が抜き状態から入り状態へと状態遷移するようにしてもよい。この場合でも、フェイルセーフの観点から、Bピン用付勢機構240を設けて、モーター故障時に安全側である入り状態に復帰するように構成することが好ましい。
【0107】
ロック機構55は、シリンダー連結モジュール100(例えば、Cピン用ラックバー120)又はブーム連結モジュール200(例えば、Bピン用ラックバー220A、220B)に、電動モーター51からの動力以外の外力が作用して、シリンダー連結モジュール100とブーム連結モジュール200が同時に抜き状態に状態遷移することを防止する。すなわち、ロック機構55は、ブーム連結モジュール200とシリンダー連結モジュール100のうちの一方の連結機構が動作している状態において、他方の連結機構の動作を阻止する。
【0108】
図16A~
図16Cを参照して、ロック機構55について説明する。
図16Aは、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200が入り状態(中立位置)にあるときの様子を示し、
図16B、
図16Cは、それぞれ、ブーム連結モジュール200が入り状態から抜き状態に遷移するときの様子を示す。なお、
図16A~
図16Cでは、シリンダー連結モジュール100のCピン用欠歯歯車110、及び、ブーム連結モジュール200のBピン用欠歯歯車210を、一体に形成したスイッチギヤGとして示している。
【0109】
図16A等に示すように、ロック機構55は、第1凸部551、第2凸部552、及び、カム部材553(ロック側回転部材)を有する。
第1凸部551は、シリンダー連結モジュール100のCピン用ラックバー120に一体に設けられている。具体的には、第1凸部551は、Cピン用ラックバー120の入力側ラック部121に隣接する位置に設けられている。
第2凸部552は、ブーム連結モジュール200の一方のBピン用ラックバー220Bに一体に設けられている。具体的には、第2凸部552は、一方のBピン用ラックバー220Bの駆動側ラック部222に隣接する位置に設けられている。
【0110】
カム部材553は、略三日月形状の板状部材である。カム部材553は、周方向における一端に第1カム受部553aを有し、他端に第2カム受部553bを有する。
【0111】
カム部材553は、例えば、伝達軸56において、スイッチギヤGが外嵌固定されている位置からX方向にずれた位置に外嵌固定される。なお、本実施形態の場合、カム部材553は、Cピン用欠歯歯車110とBピン用欠歯歯車210との間に外嵌固定されている。つまり、カム部材553は、スイッチギヤGと同軸上に設けられており、伝達軸56の回転に伴い、スイッチギヤGとともに、伝達軸56を中心軸として回転する。
【0112】
なお、カム部材553は、スイッチギヤGに一体的に設けられてもよい。また、カム部材553は、Cピン用欠歯歯車110及びBピン用欠歯歯車210の少なくとも一方の欠歯歯車に一体的に設けられてもよい。
【0113】
図16Bに示すように、スイッチギヤGの歯部G1がBピン用ラックバー220Bの駆動側ラック部222と噛合する状態において、カム部材553の第1カム受部553aは、第1凸部551よりもY方向+側に位置する。すなわち、第1カム受部553aと第1凸部551とは、Y方向のわずかな隙間を介して対向する。この状態では、Cピン用ラックバー120に対してY方向+側に向けて外力(
図16Bにおける外力Fa)が作用しても、隙間によって吸収される。
Cピン用ラックバー120に対して、Y方向+側に向けてさらに大きな外力Faが加わると、Cピン用ラックバー120は、
図16Bに二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで移動する。この状態において、第1凸部551が、第1カム受部553aに当接して、Cピン用ラックバー120のY方向+側への移動が防止される。
【0114】
また、
図16Cに示すように、スイッチギヤGの歯部G1がCピン用ラックバー120の入力側ラック部121と噛合する状態において、カム部材553の第2カム受部553bは、第2凸部552よりもY方向+側に位置する。すなわち、第2カム受部553bと第2凸部552とは、Y方向のわずかな隙間を介して対向する。この状態では、Bピン用ラックバー220BにY方向+側の外力(
図16Cにおける外力Fb)が加わっても、隙間によって吸収される。
Bピン用ラックバー220Bに対して、Y方向+側に向けてさらに大きな外力Fbが加わると、Bピン用ラックバー220Bは、
図16Cに二点鎖線で示す位置から実線で示す位置までY方向+側に移動する。この状態において、第2凸部552が、第2カム受部553bに当接して、Bピン用ラックバー220BのY方向+側への移動が防止される。
【0115】
<シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200の動作>
図17A~
図17C、
図18A~
図18Cを参照して、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200の動作の一例について説明する。
図17A~
図17C、
図18A~
図18Cに示す動作は、例えば、先端ブーム31を伸長する場合のシリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200の抜き動作である。
以下において、ブーム連結モジュール200を入り状態から抜き状態に遷移させるときの電動モーター51の回転を「正転」、シリンダー連結モジュール100を入り状態から抜き状態に遷移させるときの電動モーター51の回転を「逆転」と称する。
【0116】
図17A~
図17Cは、シリンダー連結モジュール100の動作を説明するための模式図である。
図17A~
図17Cは、シリンダー連結モジュール100が入り状態から抜き状態に遷移する場合の動作を示す。
図17A~
図17Cでは、Cピン用欠歯歯車110及びBピン用欠歯歯車210を、一体に形成したスイッチギヤGとして示している。また、
図17A~
図17Cにおいては、ロック機構55は省略している。
【0117】
図17Aに示すように、先端ブーム31の伸長前の収縮状態において、シリンダー連結モジュール100は、中立状態になっている。すなわち、Cピン150は、先端ブーム31のCピン受部311に係合しており、先端ブーム31とシリンダー連結モジュール100は連結状態となっている。
【0118】
シリンダー連結モジュール100が入り状態から抜き状態へと状態遷移する場合、電動モーター51の動力は、以下の第1経路及び第2経路でCピン150A、150Bに伝達される。
第1経路は、Cピン用欠歯歯車110→Cピン用ラックバー120→第1歯車群130→一方のCピン150Aである。第2経路は、Cピン用欠歯歯車110→Cピン用ラックバー120→第2歯車群140→他方のCピン150Bである。
【0119】
図17Bに示すように、電動モーター51が逆転すると、Cピン用欠歯歯車110がR1方向に回転する。Cピン用欠歯歯車110の回転に伴い、Cピン用ラックバー120がY方向+側(
図17A~
図17Cの右側)に変位する。これに伴い、第1経路では、第1歯車群130を介して、一方のCピン150AがY方向-側(
図17A~
図17Cの左側)に変位する。第2経路では、第2歯車群140を介して、他方のCピン150BがY方向+側(
図17A~
図17Cの右側)に変位する。つまり、シリンダー連結モジュール100が入り状態から抜き状態へ状態遷移する際、一方のCピン150Aと他方のCピン150Bは、互いに近づく方向に変位する。
【0120】
最終的に、
図17Cに示すように、Cピン150A、150BがCピン受部311から完全に脱離し、シリンダー連結モジュール100と先端ブーム31は、非連結状態となる。なお、シリンダー連結モジュール100の抜き状態から入り状態への状態遷移は、Cピン用付勢機構160の付勢力に基づいて自動的に行われる。
【0121】
図18A~
図18Cは、ブーム連結モジュール200の動作を説明するための模式図である。
図18A~
図18Cは、ブーム連結モジュール200が入り状態から抜き状態に遷移する場合の動作を示す。
図18A~
図18Cでは、Cピン用欠歯歯車110及びBピン用欠歯歯車210を、一体に形成したスイッチギヤGとして示している。また、
図18A~
図18Cにおいては、ロック機構55は省略している。
【0122】
図18Aに示すように、先端ブーム31の伸長前の収縮状態において、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200は、中立状態になっている。すなわち、先端ブーム31は、中間ブーム32に対してBピン315を介して連結されており、中間ブーム32に対して伸縮方向に移動不能である。
【0123】
ブーム連結モジュール200が入り状態から抜き状態へと状態遷移する場合、電動モーター51の動力は、Bピン用欠歯歯車210→一方のBピン用ラックバー220B→同期歯車230→他方のBピン用ラックバー220Aという経路で伝達される。
【0124】
図18Bに示すように、電動モーター51が正転すると、Bピン用欠歯歯車210がR2方向に回転する。Bピン用欠歯歯車210の回転に伴い、一方のBピン用ラックバー220BがY方向+側(
図18A~
図18Cの右側)に変位する。また、同期歯車230が回転し、同期歯車230の回転を受けて他方のBピン用ラックバー220AがY方向-側(
図18A~
図18Cの左側)に変位する。つまり、ブーム連結モジュール200が入り状態から抜き状態へ状態遷移する際、一方のBピン用ラックバー220Bと他方のBピン用ラックバー220Aは、互いに近づく方向に変位する。これにより、Bピン用ラックバー220A、220Bに接続されたBピン保持部314も収縮し、Bピン保持部314に保持されているBピン315が、Bピン受部322から徐々に抜脱される。
【0125】
最終的に、
図18Cに示すように、Bピン315A、315BがBピン受部322から完全に脱離し、先端ブーム31と中間ブーム32は、非連結状態となる。なお、ブーム連結モジュール200の抜き状態から入り状態への状態遷移は、Bピン用付勢機構240の付勢力に基づいて自動的に行われる。
【0126】
<伸縮動作時の制御>
図19は、伸縮ブーム30の伸長動作時の制御の一例を示すタイミングチャートである。簡便のため、全縮状態から先端ブーム31を伸長する場合について説明する。なお、Bピン315の入り状態、抜き状態は、ブーム連結モジュール200の入り状態、抜き状態に対応し、Cピン150の入り状態、抜き状態は、シリンダー連結モジュール100の入り状態、抜き状態に対応する。電動モーター51、ブレーキ52、及びクラッチ61のON/OFFの切り換えは、制御装置70によって制御される。
【0127】
図19の区間T0~T1は、伸長動作の初期の収縮状態であり、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200は、中立状態になっている(
図17A、
図18A参照)。すなわち、先端ブーム31は、中間ブーム32に対してBピン315を介して連結されており、中間ブーム32に対して伸縮方向に移動不能である。また、Cピン150は、先端ブーム31のCピン受部311に係合しており、先端ブーム31とシリンダー部42は連結状態となっている。
区間T0~T1における各機械要素の状態は以下の通りである。
電動モーター51:OFF
クラッチ61:OFF
ブレーキ52:OFF
Cピン150(シリンダー連結モジュール100):入り状態
Bピン315(ブーム連結モジュール200):入り状態
【0128】
制御装置70は、オペレーターによる伸縮ブーム30の伸長操作を受け付けると(タイミングT1)、クラッチ61をオン状態(接続状態)に制御するとともに、電動モーター51を正転させる。Bピン315は、徐々に入り状態から抜き状態に遷移する。
区間T1~T2における各機械要素の状態は以下の通りである。
電動モーター51:ON
クラッチ61:ON
ブレーキ52:OFF
Cピン150(シリンダー連結モジュール100):入り状態
Bピン315(ブーム連結モジュール200):入り状態→抜き状態(抜き動作)
【0129】
このとき、Bピン315が中間ブーム32の基端側Bピン受部322に引っ掛かるなどして抜けにくくなっていると、電動モーター51からブーム連結モジュール200への動力伝達経路における回転要素がスムーズに回転できずに過負荷が生じる。そして、電動モーター51に大電流が流れ、発熱したり焼損したりする虞がある。
本実施の形態では、動力伝達経路にトルクリミッター63が配置されており、動力伝達経路における機械要素にかかる負荷は所定値以下に保持される。したがって、Bピン315の抜き動作時に、Bピン315が脱抜困難となっていることに起因して機械要素が損傷するのを防止することができる。
【0130】
制御装置70は、位置検出装置54の検出結果等に基づいてBピン315の状態を判断し、Bピン315が抜き状態に遷移すると(タイミングT2)、クラッチ61をON状態に維持したまま、電動モーター51を停止させる。また、ブレーキ52をON状態にして、Bピン315の抜き状態を保持する。
なお、電動モーター51をOFFにするタイミングと、ブレーキ52をONにするタイミングは、制御装置70により適宜制御される。例えば、ブレーキ52をONにした後、電動モーター51をOFFにすることで、Bピン315の抜き状態を確実に保持することができる。
【0131】
タイミングT2において、Bピン315は、基端側Bピン受部322から完全に脱離し、先端ブーム31と中間ブーム32は、非連結状態となる。図示を省略するが、区間T2~T3では、制御装置70は、伸縮用アクチュエーター40を制御して、シリンダー部42を伸長方向へと移動させる。これに伴い、シリンダー連結モジュール100を介してシリンダー部42に接続されている先端ブーム31が伸長方向へと移動する。
区間T2~T3における各機械要素の状態は以下の通りである。
電動モーター51:OFF
クラッチ61:ON
ブレーキ52:ON
Cピン150(シリンダー連結モジュール100):入り状態
Bピン315(ブーム連結モジュール200):抜き状態
【0132】
制御装置70は、先端ブーム31が所定の位置まで移動して伸長状態になると(タイミングT3)、クラッチ61及びブレーキ52をオフ状態に制御する。Bピン用付勢機構240の付勢力によって、ブーム連結モジュール200は中立状態に復帰する。これに伴い、Bピン315は、抜き状態から入り状態へと遷移し、先端側Bピン受部323に挿通される。
区間T3~T4における各機械要素の状態は以下の通りである。
電動モーター51:OFF
クラッチ61:OFF
ブレーキ52:OFF
Cピン150(シリンダー連結モジュール100):入り状態
Bピン315(ブーム連結モジュール200):抜き状態→入り状態(入り動作)
【0133】
このように、Bピン315の入り動作においては、Bピン用付勢機構240を利用して中立状態に復帰する。この場合、電動モーター51からブーム連結モジュール200への動力伝達経路が接続されていると、Bピン315の入り動作に伴い、電動モーター51が抜き動作時の回転方向とは反対方向に回転する。そして、電動モーター51を含む回転要素が、慣性力により中立位置で停止せず、オーバーランによりCピン150を脱抜する方向にスイッチギヤGを回転させる推力が生じる虞がある。
これに対して、本実施の形態では、動力伝達経路にクラッチ61が配置されており、Bピン用付勢機構240を利用して中立状態に復帰する際、ブーム連結モジュール200から電動モーター51への動力の伝達は遮断される。したがって、Bピン315の入り動作時に、一時的にCピン150が抜き状態に遷移して動作が不安定になるのを防止することができる。
【0134】
制御装置70は、Bピン315が先端側Bピン受部323に完全に係合すると(タイミングT4)、伸縮用アクチュエーター40を収縮状態に戻すべく、Cピン150を抜き状態に遷移させる。すなわち、制御装置70は、タイミングT5において、クラッチ61をオン状態(接続状態)に制御するとともに、電動モーター51を逆転させる。Cピン150は、徐々に入り状態から抜き状態に遷移する。
区間T5~T6における各機械要素の状態は以下の通りである。
電動モーター51:ON
クラッチ61:ON
ブレーキ52:OFF
Cピン150(シリンダー連結モジュール100):入り状態→抜き状態(抜き動作)
Bピン315(ブーム連結モジュール200):入り状態
【0135】
このとき、Cピン150が先端ブーム31のCピン受部311に引っ掛かるなどして抜けにくくなっていると、電動モーター51からシリンダー連結モジュール100への動力伝達経路における回転要素がスムーズに回転できずに過負荷が生じる。そして、電動モーター51に大電流が流れ、発熱したり焼損したりする虞がある。
本実施の形態では、動力伝達経路にトルクリミッター63が配置されており、動力伝達経路における機械要素にかかる負荷は所定値以下に保持される。したがって、Cピン150の抜き動作時に、Cピン150が脱抜困難となっていることに起因して機械要素が損傷するを防止することができる。
【0136】
制御装置70は、位置検出装置54の検出結果等に基づいてCピン150の状態を判断し、Cピン150が抜き状態に遷移すると(タイミングT6)、クラッチ61をオン状態に維持したまま、電動モーター51を停止させる。また、ブレーキ52をオン状態にして、Cピン150の抜き状態を保持する。
【0137】
タイミングT6において、Cピン150は、先端ブーム31のCピン受部311から完全に脱離し、シリンダー連結モジュール100と先端ブーム31は、非連結状態となる。図示を省略するが、区間T6~T7では、制御装置70は、伸縮用アクチュエーター40を制御して、シリンダー部42を収縮方向へと移動させる。このとき、シリンダー部42は、先端ブーム31、中間ブーム32及び基端ブーム33と非連結状態であるため、シリンダー部42は単独で収縮方向に移動する。
区間T6~T7における各機械要素の状態は以下の通りである。
電動モーター51:OFF
クラッチ61:ON
ブレーキ52:ON
Cピン150(シリンダー連結モジュール100):抜き状態
Bピン315(ブーム連結モジュール200):入り状態
【0138】
制御装置70は、伸縮用アクチュエーター40が収縮状態になると(タイミングT7)、クラッチ61及びブレーキ52をオフ状態に制御する。Cピン用付勢機構160の付勢力によって、シリンダー連結モジュール100は中立状態に復帰する。これに伴い、Cピン150は、抜き状態から入り状態へと遷移し、中間ブーム32のCピン受部321と係合する。また、Bピン用ラックバー220A、220Bには、中間ブーム32のBピン保持部324が係合される。
区間T7~T8における各機械要素の状態は以下の通りである。
電動モーター51:OFF
クラッチ61:OFF
ブレーキ52:OFF
Cピン150(シリンダー連結モジュール100):抜き状態→入り状態(入り動作)
Bピン315(ブーム連結モジュール200):入り状態
【0139】
このように、Cピン150の入り動作においては、Cピン用付勢機構160を利用して中立状態に復帰する。この場合、電動モーター51からシリンダー連結モジュール100への動力伝達経路が接続されていると、Cピン150の入り動作に伴い、電動モーター51が抜き動作時の回転方向とは反対方向に回転する。そして、電動モーター51を含む回転要素が、慣性力により中立位置で停止せず、オーバーランによりBピン325を脱抜する方向にスイッチギヤGを回転させる推力が生じる虞がある。
これに対して、本実施の形態では、動力伝達経路にクラッチ61が配置されており、Cピン用付勢機構160を利用して中立状態に復帰する際、シリンダー連結モジュール100から電動モーター51への動力の伝達は遮断される。したがって、Cピン150の入り動作時に、一時的にBピン325が抜き状態に遷移して動作が不安定になるのを防止することができる。
【0140】
Cピン150が中間ブーム32のCピン受部321と完全に係合すると(タイミングT8)、中立状態が保持される。なお、中間ブーム32を伸長する場合には、上記と同様の動作が行われる。また、先端ブーム31又は中間ブーム32を収縮する場合には、上記と逆方向の動作が行われる。
【0141】
ここで、ピン挿抜用アクチュエーター50を構成する機械要素には、Bピン315及びCピン150の抜き動作及び入り動作がスムーズに行われるように、一般には潤滑油が塗布される。この場合、周囲の環境温度や経年劣化により、潤滑油の粘度が高くなっていると、Bピン315及びCピン150の挿抜動作に支障をきたす虞がある。特に、Bピン315及びCピン150の入り動作は、付勢力を利用して行われるため、高粘度の潤滑油が抵抗となり、動作時間が不安定となる虞がある。
【0142】
そこで、本実施の形態では、制御装置70は、Cピン150がCピン用付勢機構160の付勢力により入り状態に復帰する際、及び、Bピン315がBピン用付勢機構240の付勢力により復帰する際に、電動モーター51を動作させるモーターアシスト処理を実行する。
【0143】
図20は、モーターアシスト処理を適用した伸縮ブーム30の伸長動作を説明するためのタイミングチャートである。
図20に示すように、区間T3~T4においてBピン315の入り動作が行われる場合に、制御装置70は、短時間(例えば、0.01~0.5sec)だけ電動モーター51を逆転させる。また、区間T7~T8においてCピン150の入り動作が行われる場合に、制御装置70は、電動モーター51を正転させる。これにより、潤滑油の粘度によってCピン150又はBピン315が移動しにくくなっている状態を電動モーター51の動力により解除し、その後のCピン用付勢機構160又はBピン用付勢機構240の付勢力による中立状態への復帰をスムーズに行うことができる。
【0144】
このモーターアシスト処理は、Bピン315及びCピン150の入り動作時に常に行うようにしてもよいし、所定条件が成立した場合にだけ行われるようにしてもよい。所定条件は、周囲の環境温度(例えば、-10℃以下)、使用時間等を含む。また、作業者が手動で、モーターアシスト処理を行うか否かを設定してもよい。また、Bピン315及びCピン150に対して、選択的にモーターアシスト処理を行うようにしてもよい。
【0145】
さらに、制御装置70は、環境温度に応じて、モーターアシスト処理における電動モーター51の駆動開始タイミングや駆動時間を決定してもよい。これにより、適正なモーターアシスト処理が行われるので、オーバーランによりCピン150又はBピン315、325を脱抜する方向に推力が生じるのを防止することができる。
【0146】
このように、本実施の形態に係る移動式クレーン1(作業機)は、伸縮可能に重なる第1ブーム(例えば、先端ブーム31)及び第2ブーム(例えば、中間ブーム32)を有する伸縮ブーム30と、第1ブームを第2ブームに対して伸縮方向に移動させる伸縮用アクチュエーター40と、伸縮用アクチュエーター40のシリンダー部42(可動部)に設けられた電動モーター51(電気的駆動源)と、伸縮用アクチュエーター40と第1ブームとを連結するCピン150(第1固定ピン)と、Cピン150を付勢して伸縮用アクチュエーター40と第1ブームとの連結状態を維持するCピン用付勢機構160(第1付勢機構)と、電動モーター51の動力に基づいて動作し、Cピン150を挿抜することにより、伸縮用アクチュエーター40と第1ブームとの連結状態と非連結状態とを切り換えるシリンダー連結機構100(第1連結機構)と、第1ブームと第2ブームとを連結するBピン315、325(第2固定ピン)と、第2固定ピン315、325を付勢して第1ブームと第2ブームとの連結状態を維持するBピン用付勢機構240(第2付勢機構)と、電動モーター51の動力に基づいて動作し、Bピン315、325を挿抜することにより、第1ブームと第2ブームとの連結状態と非連結状態とを切り換えるブーム連結モジュール200(第2連結機構)と、電動モーター51からシリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200への動力伝達経路に配置され、電動モーター51の動力を任意に断続してシリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200に伝達するクラッチ61を備える。
具体的には、クラッチ61は、少なくとも、Cピン150(第1固定ピン)がCピン用付勢機構160(第1付勢機構)の付勢力により復帰する際、及び/又は、Bピン315、325(第2固定ピン)がBピン用付勢機構240(第2付勢機構)の付勢力により復帰する際に、電動モーター51(電気的駆動源)の動力を遮断する。
【0147】
移動式クレーン1によれば、シリンダー連結モジュール100及びブーム連結モジュール200が電動式であるため、伸縮ブーム30の内部空間に従来構造のような油圧回路を設ける必要がない。したがって、油圧回路が使用していたスペースを有効活用して、伸縮ブーム30の内部空間における設計の自由度を向上できる。
また、動力伝達経路にクラッチ61が配置されており、Cピン用付勢機構160又はBピン用付勢機構240を利用して中立状態に復帰する際、シリンダー連結モジュール100又はブーム連結モジュール200から電動モーター51への動力の伝達は遮断されるので、Cピン150又はBピン315、325の入り動作時に、一時的にBピン315、325又はCピン150が抜き状態に遷移して動作が不安定になるのを防止することができる。
したがって、移動式クレーン1によれば、伸縮ブーム30の周辺における設計の自由度及びブーム伸縮時の信頼性の向上を図ることができる。
【0148】
また、移動式クレーン1は、電動モーター51(電気的駆動源)の駆動速度を減速して出力する減速機62を備え、クラッチ61は、電動モーター51と減速機62の間に配置される。これにより、クラッチ61の伝達トルク容量を小さくすることができ、クラッチ61の小型化を図ることができる。
【0149】
また、移動式クレーン1において、クラッチ61は、電磁クラッチ、機械式クラッチ、又はトルクダイオードで構成される。これにより、汎用のクラッチの中から必要に応じて適宜選択して、容易に電動モーター51からの動力の伝達/遮断を切り替えることができる。
【0150】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0151】
例えば、電動モーター51として、内側に配置される中空の固定子と外側に配置される回転子とを有する中空モーターを適用し、ピストンロッド部41の外周に配置し、回転子に設けられたギヤに、伝達機構53の伝達ギヤ(図示略)が噛合するようにしてもよい。
また、実施の形態で示した電動モーター51の配置は一例であり、出力軸(図示略)がY方向又はZ方向に延在するように電動モーター51を配置してもよい。
また、電動モーター51は、回転式モーターに限定されず、直線運動を出力するリニアモーター(直動型アクチュエーター)を用いることもできる。
【0152】
また、本発明に係る作業機は、移動式クレーンに限定されず、伸縮ブームを備えるその他の作業機(例えば、高所作業車)にも適用できる。
【0153】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0154】
1 移動式クレーン(作業機)
30 伸縮ブーム
31 先端ブーム
311 Cピン受部
314 Bピン保持部
315、315A、315B Bピン
32 中間ブーム
321 Cピン受部
322 基端側Bピン受部
323 先端側Bピン受部
324 Bピン保持部
325 Bピン
33 基端ブーム
A 伸縮装置
40 伸縮用アクチュエーター
41 ピストンロッド部
42 シリンダー部(可動部)
50 ピン挿抜用アクチュエーター
51 電動モータ(電気的駆動源)
52 ブレーキ
53 伝達機構
54 位置検出装置
55 ロック機構
56 伝達軸
61 クラッチ
62 減速機
63 トルクリミッター
100 シリンダー連結モジュール(第1連結機構)
110 Cピン用欠歯歯車
120 Cピン用ラックバー
130 第1歯車群
140 第2歯車群
150、150A、150B Cピン
160 Cピン用付勢機構(第1付勢機構)
200 ブーム連結モジュール(第2連結機構)
210 Bピン用欠歯歯車
220A、220B Bピン用ラックバー
230 同期歯車
240 Bピン用付勢機構(第2付勢機構)