(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】トルク伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16D 48/06 20060101AFI20230511BHJP
F16D 23/14 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F16D28/00 A
F16D23/14 Z
(21)【出願番号】P 2019165843
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 健彦
(72)【発明者】
【氏名】篠島 巧
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163223(JP,A)
【文献】特開2018-189228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 48/06
F16D 28/00
F16D 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク発生部と駆動部との間でトルクを伝達するトルク伝達装置であって、
入力部と出力部とを有し、かつ、前記入力部と前記出力部との間のトルク伝達率を調節可能なクラッチ装置と、
前記クラッチ装置の制御を行う制御器と、
前記入力部と、前記出力部と、前記入力部または前記出力部にトルク伝達可能に接続された接続部とのうち、いずれかを構成する回転部材により伝達されているトルクを検出可能なトルクセンサと、を備え、
前記制御器は、前記トルクセンサにより検出されたトルクが所定の条件を満たした場合に、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を低下させることによって、前記回転部材により伝達されているトルクを、ゼロでない所定の値まで低下させるように前記クラッチ装置の制御を行
い、
前記所定の条件は、前記トルクセンサにより検出されたトルクの増大率が第2の閾値を超えるという第2の条件を含む、
トルク伝達装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記トルクセンサにより検出されたトルクが第1の閾値を超えるという第1の条件を含み、
前記制御器は、前記トルクセンサにより検出されたトルクが前記第1の条件を満たした場合に、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を低下させることによって、前記回転部材により伝達されているトルクを
前記第1の閾値まで低下させるように前記クラッチ装置の制御を行う、
請求項1に記載のトルク伝達装置。
【請求項3】
前記第2の条件は、前記トルクセンサにより検出されたトルクが
前記第1の閾値よりも小さい第1の予備閾値を超えることをさらに含む、
請求項
2に記載のトルク伝達装置。
【請求項4】
前記クラッチ装置は、クラッチレリーズ装置と、ダイヤフラムばねとを備え、
前記クラッチレリーズ装置は、電動モータと、該電動モータの回転運動を並進運動に変換する変換装置と、前記出力部にトルク伝達可能に接続された回転軸の周囲に、該回転軸の軸方向に関する移動を可能に支持可能であり、前記変換装置により前記回転軸の軸方向に押圧されることで前記ダイヤフラムばねを押圧することにより、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を変化させるレリーズ軸受とを有し、
前記制御器は、前記クラッチレリーズ装置の前記レリーズ軸受による前記ダイヤフラムばねの押圧量を制御することにより、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を低下させる制御を行う、
請求項1~
3のうちのいずれかに記載のトルク伝達装置。
【請求項5】
変速機構部を有する変速機をさらに備え、
前記回転部材は、前記変速機構部よりも前記駆動部に近い部分でトルクを伝達する、
請求項1~
4のうちのいずれかに記載のトルク伝達装置。
【請求項6】
前記トルク発生部は車両の動力源であり、
前記駆動部は車両の駆動輪である、
請求項1~
5のうちのいずれかに記載のトルク伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク発生部と駆動部との間でトルクを伝達するトルク伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクを発生するトルク発生部と、トルクを受けて駆動する駆動部と、トルク発生部と駆動部との間でトルクを伝達するトルク伝達装置とを備えた各種の駆動装置には、該駆動装置を保護するために、トルク伝達装置で伝達されるトルクが過大になることを防止するための対策が求められる。
【0003】
たとえば、自動車では、トルク発生部であって動力源であるエンジンや電動モータと、駆動部である駆動輪との間で、クラッチ装置、変速機、デファレンシャル、ドライブシャフトなどを組み合わせてなるトルク伝達装置がトルクを伝達する。このような自動車がエンジンブレーキや回生ブレーキを効かせながら坂道を下る場合や、悪路走行中に駆動輪が地面から浮き上がって再び接地した場合などに、駆動輪から過大なトルクが逆入力されると、エンジンや電動モータおよびトルク伝達装置が傷んで寿命が低下する可能性がある。したがって、このような不都合を防止するための対策が求められる。
【0004】
このような対策として、たとえば、トルク伝達装置に機械式のトルクリミッタ(たとえば、特開2006-283941号公報(特許文献1)、特開2013-50118号公報(特許文献2)参照)を組み込むことが考えられる。
【0005】
機械式のトルクリミッタは、第1摩擦部材と、第2摩擦部材と、第1摩擦部材に対して第2摩擦部材を押し付ける付勢部材とを備える。また、機械式のトルクリミッタでは、第1摩擦部材と第2摩擦部材との間の摩擦係数や付勢部材の付勢荷重などを調整することによって、伝達可能なトルクの上限値であるリミットトルクが設定される。このような機械式のトルクリミッタでは、伝達しているトルクがリミットトルクに達すると、第1摩擦部材と第2摩擦部材との間で滑りが生じることにより、リミットトルクを超えるトルクの伝達が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-283941号公報
【文献】特開2013-50118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
機械式のトルクリミッタでは、その使用に伴い、リミットトルクが経時的に低下した後、一定の値に落ち着く。この理由は、第1摩擦部材と第2摩擦部材との間で滑りが繰り返されることによって、第1摩擦部材と第2摩擦部材との間になじみが生じ、第1摩擦部材と第2摩擦部材との間の摩擦係数が徐々に低下して最終的に一定の値に落ち着くためである。
【0008】
このような機械式のトルクリミッタでは、トルク伝達装置においてトルク発生部の最大出力時のトルクを伝達できるようにするために、経時的に低下したリミットトルクが、トルク発生部の最大出力時のトルクを下回らないようにする必要がある。したがって、初期のリミットトルクは、継時的な低下を考慮して、ある程度大きく設定しておく必要がある。そして、トルク発生部およびトルク伝達装置に関しては、このような初期のリミットトルクを基準とする安全率を設定して強度設計を行う必要があるため、重量が大きくなりやすいという問題がある。
【0009】
本発明は、上述のような事情に鑑み、過大なトルクが伝達されることを防止でき、しかも必要とされる強度を抑えることが可能なトルク伝達装置の構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のトルク伝達装置は、トルク発生部と駆動部との間でトルクを伝達する装置であり、クラッチ装置と、制御器と、トルクセンサとを備える。
前記クラッチ装置は、入力部と出力部とを有し、かつ、前記入力部と前記出力部との間のトルク伝達率を調節可能である。
前記制御器は、前記クラッチ装置の制御を行う。
前記トルクセンサは、前記入力部と、前記出力部と、前記入力部または前記出力部にトルク伝達可能に接続された接続部とのうち、いずれかを構成する回転部材により伝達されているトルクを検出可能である。
前記制御器は、前記トルクセンサにより検出されたトルクが所定の条件を満たした場合に、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を低下させることによって、前記回転部材により伝達されているトルクを、ゼロでない所定の値まで低下させるように前記クラッチ装置の制御を行う。
【0011】
前記所定の条件を、前記トルクセンサにより検出されたトルクが第1の閾値を超えるという第1の条件を含む条件とすることができる。
この場合には、前記制御器により、前記トルクセンサにより検出されたトルクが前記第1の条件を満たした場合に、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を低下させることによって、前記回転部材により伝達されているトルクを第1の閾値まで低下させるように前記クラッチ装置の制御を行うことができる。
【0012】
前記所定の条件を、前記トルクセンサにより検出されたトルクの増大率が第2の閾値を超えるという第2の条件を含む条件とすることができる。
前記第2の条件を、前記トルクセンサにより検出されたトルクが第1の閾値よりも小さい第1の予備閾値を超えることをさらに含む条件とすることができる。
【0013】
前記クラッチ装置を、クラッチレリーズ装置と、ダイヤフラムばねとを備えた装置とすることができる。
前記クラッチレリーズ装置を、電動モータと、該電動モータの回転運動を並進運動に変換する変換装置と、前記出力部にトルク伝達可能に接続された回転軸の周囲に、該回転軸の軸方向に関する移動を可能に支持可能であり、前記変換装置により前記回転軸の軸方向に押圧されることで前記ダイヤフラムばねを押圧することにより、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を変化させるレリーズ軸受とを有する装置とすることができる。
前記制御器によって、前記クラッチレリーズ装置の前記レリーズ軸受による前記ダイヤフラムばねの押圧量を制御することにより、前記クラッチ装置による前記トルク伝達率を低下させる制御を行うことができる。
【0014】
前記トルク伝達装置を、変速機構部を有する変速機をさらに備えた装置とすることができる。
前記回転部材を、前記変速機構部よりも前記駆動部に近い部分でトルクを伝達する部材とすることができる。
【0015】
前記トルク発生部を車両の動力源とし、前記駆動部を車両の駆動輪とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のトルク伝達装置によれば、過大なトルクが伝達されることを防止でき、しかも必要とされる強度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明が適用される駆動装置の概念図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態の第1例に関する車両の一部を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態の第1例のクラッチ装置の断面図である。
【
図5】
図5(A)および
図5(B)は、本発明の実施の形態の第1例のクラッチ装置を構成するカム装置の動作を説明するために、該カム装置の周方向に関する一部を径方向外側から見た模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の第1例に関する制御フローを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態の第2例のクラッチ制御装置による制御を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態の第3例のクラッチ制御装置による制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態の第1例]
図1は、本発明が適用される駆動装置の概念図を示している。
【0019】
図1に示した駆動装置は、たとえば、自動車などの車両、工作機械などの産業機械、風力や水力などを利用した発電機などの、各種の分野で用いられる駆動装置であり、トルクを発生するトルク発生部と、トルクを受けて駆動する駆動部と、トルク発生部と駆動部との間でトルクを伝達するトルク伝達装置とを備える。
【0020】
トルク発生部は、たとえば、車両や産業機械では動力源であるエンジンや電動モータなどであり、発電機では風車、水車などのタービンなどである。
【0021】
駆動部は、たとえば、車両では駆動輪であり、工作機械ではワークや工具と一体になって回転する回転軸などであり、発電機では発電用ロータなどである。
【0022】
トルク伝達装置は、図示の例では、クラッチ制御装置と、変速機とを含んで構成される。ただし、トルク伝達装置は、変速機を含んでいることが必須ではない。クラッチ制御装置は、クラッチ装置と、トルクセンサと、制御器とを備える。このようなトルク伝達装置は、その構成要素のうち、回転軸、歯車、ローラ、ディスク、ドラム、プーリ、ベルト、羽根車、流体などのトルク伝達要素を組み合わせてなるトルク伝達機構により、トルク発生部と駆動部との間でトルクを伝達する。
【0023】
クラッチ装置は、入力部と出力部とを有し、かつ、入力部と出力部との間のトルク伝達率を、たとえば0%~100%の範囲などの所定の範囲で調節可能である。クラッチ装置は、トルク伝達率を所定の範囲で調節可能であれば、その方式は限定されず、たとえば、摩擦式や流体式などを採用することができる。また、クラッチ装置は、制御器からの指令信号に基づいてトルク伝達率を変化させるように作動することが可能である。
【0024】
変速機は、伝達するトルクを増大または減少させることが可能である。変速機の種類は、特に限定されず、たとえば、自動車などの車両では、変速機は、マニュアルトランスミッションであってもよいし、オートマチックトランスミッションであってもよい。
【0025】
トルクセンサは、回転部材により伝達されているトルクを検出可能に構成されている。該回転部材は、クラッチ装置の入力部と、クラッチ装置の出力部と、これらの入力部または出力部にトルク伝達可能に接続された接続部とのうち、いずれかを構成するトルク伝達要素である。図示の例では、トルクセンサは、クラッチ装置と変速機との間に位置する、クラッチ装置の出力部や、変速機の入力部や、これらの入力部と出力部との接続部などを構成する回転部材により伝達されているトルクを検出可能に構成されている。トルクセンサによるトルクの検出位置は、図示の例には限定されない。たとえば、トルクセンサは、図示の例において、トルク発生部とクラッチ装置との間に位置する、トルク発生部の出力部や、クラッチ装置の入力部や、これらの入力部と出力部との接続部などを構成する回転部材、あるいは、変速機と駆動部との間に位置する、変速機の出力部や、駆動部の入力部や、これらの入力部と出力部との接続部などを構成する回転部材により伝達されているトルクを検出可能に構成されていてもよい。また、トルクセンサによるトルクの検出方式は、特に限定されず、たとえば、磁歪式、位相差式、圧電式、光学式、静電容量式などの各種の検出方式を採用することができる。
【0026】
制御器は、少なくとも、トルクセンサにより検出されたトルクが所定の条件を満たした場合に、クラッチ装置によるトルク伝達率を低下させることによって、前記回転部材により伝達されているトルクを、ゼロでない所定の値まで低下させるようにクラッチ装置の制御を行う機能を有する。制御器の具体的構成は、特に限定されない。
【0027】
以下、実施の形態の第1例における、
図1に示すような駆動装置のより具体的な構成について、
図2~
図6を用いて説明する。
【0028】
本例の駆動装置は、
図2に示すような、車両1の駆動装置52である。駆動装置52では、トルク発生部は、動力源であるエンジン2であり、駆動部は、1対の駆動輪7である。また、トルク伝達装置10は、クラッチ装置3、変速機であるマニュアルトランスミッション4、デファレンシャル5、および1対のドライブシャフト6などを組み合わせることにより構成される。また、トルクセンサは、磁歪式のトルクセンサ8であり、制御器は、ECU(Electronic Control Unit)9が備えるクラッチ制御部である。
【0029】
トルク伝達装置10において、エンジン2は、トルクを出力するクランクシャフト11を備える。マニュアルトランスミッション4は、トルクが入力される回転軸である入力軸12と、トルクを出力する出力軸13と、入力軸12と出力軸13との間に存在する図示しない変速機構部とを備える。エンジン2のクランクシャフト11から出力されるトルクは、クラッチ装置3を介してマニュアルトランスミッション4の入力軸12に伝達された後、マニュアルトランスミッション4の変速機構部、マニュアルトランスミッション4の出力軸13、デファレンシャル5、および1対のドライブシャフト6などを介して、1対の駆動輪7に伝達される。
【0030】
また、車両1の駆動装置52が備えるクラッチ制御装置53は、クラッチ装置3と、トルクセンサ8と、ECU9のクラッチ制御部とを含んで構成される。
【0031】
クラッチ装置3は、電動式であり、クランクシャフト11と入力軸12との間でのトルクの伝達状態である断接状態を切り換え可能である。クラッチ装置3は、摩擦クラッチであり、具体的には、
図3~
図5に示すような構造を有する。
【0032】
クラッチ装置3は、入力部であるフライホイール14と、出力部であるクラッチディスク15と、プレッシャプレート16と、ダイヤフラムばね17と、クラッチレリーズ装置18とを備える。
【0033】
フライホイール14は、円盤状に構成され、クランクシャフト11(
図2参照)の先端部に対し、同軸に結合固定されている。
【0034】
クラッチディスク15は、円盤状に構成され、入力軸12の先端部に対し、相対回転不能に、かつ、軸方向に関する移動を可能に支持されている。このために、クラッチディスク15の径方向内側部を、入力軸12の先端部外周面に対してスプライン係合させている。また、この状態で、フライホイール14の径方向外側部である摩擦部を、フライホイール14に対して、軸方向に対向させている。クラッチディスク15は、径方向中間部に、図示を省略したダンパ部を有する。
【0035】
なお、クラッチ装置3に関して、軸方向とは、特に断わらない限り、入力軸12の軸方向をいう。また、軸方向一方側は、エンジン2(
図2参照)が位置する
図3~
図5の左側であり、軸方向他方側は、マニュアルトランスミッション4(
図2参照)が位置する
図3~
図5の右側である。
【0036】
フライホイール14は、
図3に示すように、径方向外側部にクラッチカバー19を支持固定している。クラッチカバー19の内側には、クラッチディスク15をフライホイール14に向けて押圧するためのプレッシャプレート16、および、プレッシャプレート16をクラッチディスク15に向けて押圧するためのダイヤフラムばね17が配置されている。
【0037】
ダイヤフラムばね17は、クラッチカバー19に支持されている。図示のクラッチ装置3は、プッシュ式であるため、ダイヤフラムばね17の中央部が軸方向一方側に向けて押圧されると、プレッシャプレート16がクラッチディスク15から退避する側である軸方向他方側に移動し、フライホイール14とクラッチディスク15との接続が断たれる構造を有する。ただし、本発明は、プッシュ式のクラッチ装置に限らず、レリーズ軸受が、ダイヤフラムばねを押圧する力が大きくなる方向に移動することで、クラッチが接続し、レリーズ軸受が、ダイヤフラムばねを押圧する力が小さくなる方向に移動することで、クラッチの接続が断たれる、プル式のクラッチ装置を採用してもよい。
【0038】
クラッチレリーズ装置18は、ECU9からの指令信号に基づいて作動し、ダイヤフラムばね17に所定の押圧力を付与する装置である。クラッチレリーズ装置18は、ハウジング20と、電動モータ21と、ウォーム減速機22と、変換装置であるカム装置23と、カムガイド24と、軸受ガイド25と、レリーズ軸受26と、押圧板27と、付勢ばね28とを備える。
【0039】
ハウジング20は、マニュアルトランスミッション4(
図2参照)に備えられたフロントケース29の内側で、フロントケース29に支持固定され、かつ、入力軸12の軸方向中間部の周囲を取り囲んでいる。ハウジング20は、複数の部品を組み合わせることにより構成されており、円筒状の内側案内筒部30と、内側案内筒部30の径方向外側に配置された円筒状の外側案内筒部31と、内側案内筒部30の軸方向他方側端部と外側案内筒部31の軸方向他方側端部とを連結する円環状の連結部32を有する。ハウジング20は、内側案内筒部30と外側案内筒部31と連結部32とにより周囲を囲まれた空間である、収容部33を有する。
【0040】
電動モータ21は、ハウジング20の軸方向他方側部に支持されている。電動モータ21の出力軸は、入力軸12に対してねじれの位置に配置されている。
【0041】
ウォーム減速機22は、
図4に示すように、互いに噛合したウォーム34とウォームホイール35とを備える。ウォーム34は、電動モータ21の出力軸に対してトルク伝達可能に直列に接続され、かつ、収容部33内に回転可能に支持されている。ウォームホイール35は、収容部33内に、入力軸12と同軸に配置されている。
【0042】
カム装置23は、収容部33内に配置され、駆動側カム36と、被駆動側カム37と、複数のローラ38と、保持器39とを備える。
【0043】
駆動側カム36は、円環状に構成され、ウォームホイール35に対し、同軸に結合固定されている。駆動側カム36およびウォームホイール35は、収容部33内に、回転可能に、かつ、軸方向他方側への移動を阻止された状態で配置されている。駆動側カム36は、径方向外側部の軸方向一方側の側面の円周方向等間隔となる複数箇所(ローラ38と同数の箇所)に、駆動側カム面40を有する。駆動側カム面40は、
図5(A)および
図5(B)に示すように、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、円周方向中央部から円周方向両端部に向かうに従って漸次浅くなる形状を有する。
【0044】
被駆動側カム37は、円環状に構成され、駆動側カム面40に対向する軸方向他方側の側面の円周方向等間隔となる複数箇所(ローラ38と同数の箇所)に、被駆動側カム面41を有する。被駆動側カム面41は、
図5(A)および
図5(B)に示すように、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、円周方向中央部から円周方向両端部に向かうに従って漸次浅くなる形状を有する。被駆動側カム37は、カム装置23の径方向内側に配置されたカムガイド24に外嵌固定されている。カムガイド24は、円筒部42と、円筒部42の軸方向他方側端部から径方向内側に延びる円輪部43とを有する。被駆動側カム37は、円筒部42の軸方向一方側端部に外嵌固定されている。被駆動側カム37およびカムガイド24は、ハウジング20に対し、回転不能に、かつ、軸方向移動を可能に支持されている。このために、カムガイド24の円輪部43の径方向内側部と、ハウジング20の内側案内筒部30の外周面とが、スプライン係合している。
【0045】
ローラ38のそれぞれは、円柱状に構成されており、駆動側カム面40と被駆動側カム面41との間に、中心軸を放射方向に向けた状態で挟持され、かつ、保持器39により保持されている。
【0046】
軸受ガイド25は、段付円筒状に構成されており、大径筒部44と、小径筒部45と、大径筒部44の軸方向一方側端部と小径筒部45の軸方向他方側端部とを連結する円輪部46とを有する。大径筒部44は、カム装置23とハウジング20の外側案内筒部31との間に配置されている。大径筒部44は、外周面に円環状のシール部47を係止し、かつ、シール部47を外側案内筒部31の内周面に全周にわたり弾性的に接触させている。小径筒部45は、ハウジングの内側案内筒部30に外嵌されている。小径筒部45は、内周面に円環状のシール部48を係止し、かつ、シール部48を内側案内筒部30の外周面に全周にわたり弾性的に接触させている。これらのシール部47、48により、カム装置23が配置された空間にグリースを保持している。円輪部46は、軸方向他方側の側面を、被駆動側カム37の軸方向一方側の側面に接触させている。
【0047】
レリーズ軸受26は、外周面に内輪軌道を有する内輪49と、内周面に外輪軌道を有する外輪50と、外輪軌道と内輪軌道との間に配置された複数個の玉51とを備えた、玉軸受である。レリーズ軸受26は、内輪軌道を深溝型とし、外輪軌道をアンギュラ型とすることで、ラジアル荷重に加えて、外輪50に加わる軸方向他方側へのスラスト荷重を支承可能である。内輪49は、軸受ガイド25の小径筒部45に外嵌固定されている。このため、内輪49(レリーズ軸受26全体)は、ハウジング20の内側案内筒部30に対し、相対回転不能に、かつ、軸方向に関する移動を可能に支持されている。外輪50は、円輪状の押圧板27を介して、ダイヤフラムばね17の中央部に弾性的に接触している。このため、外輪50は、ダイヤフラムばね17と一体的に回転する。
【0048】
付勢ばね28は、コイルばねであり、軸受ガイド25の円輪部46と、カムガイド24の円輪部43との間に、軸方向に関して弾性的に圧縮された状態で挟持されている。そして、付勢ばね28の弾性復元力に基づいて、カムガイド24および被駆動側カム37を軸方向他方側に向け付勢することにより、駆動側カム面40と被駆動側カム面41との間でローラ38ががたつくことを防止している。また、付勢ばね28の弾性復元力に基づいて、軸受ガイド25、レリーズ軸受26、および押圧板27を軸方向一方側に付勢することにより、押圧板27とダイヤフラムばね17の中央部との弾性的な接触状態が常に維持されるようにしている。なお、付勢ばね28の付勢力の大きさは、好ましくは、ダイヤフラムばね17を変形または移動させない程度とする。
【0049】
以上のような構成を有するクラッチ装置3は、その断接状態を、完全接続状態と、半クラッチ状態と、切断状態との間で、相互に切り換え可能である。ここで、完全接続状態は、フライホイール14とクラッチディスク15とが摩擦係合し、かつ、摩擦係合部に回転方向の滑りが生じない状態である。半クラッチ状態は、フライホイール14とクラッチディスク15とが摩擦係合し、かつ、摩擦係合部に回転方向の滑りが生じる状態である。切断状態は、フライホイール14とクラッチディスク15とが軸方向に離隔して摩擦係合しない状態である。
【0050】
クラッチ装置3を、完全接続状態から切断状態に切り換える際には、ECU9からの指令信号に基づいて、電動モータ21の出力軸が回転駆動することにより、ウォーム減速機22のウォーム34を介して、ウォームホイール35が所定方向に回転する。これにより、
図5(A)→
図5(B)に示すように、カム装置23の駆動側カム36が、被駆動側カム37に対して所定方向(
図5(A)および
図5(B)の下方向)に相対回転し、ローラ38が、駆動側カム面40および被駆動側カム面41のうちで、軸方向に関する深さの浅い側に向けて転動することに伴い、被駆動側カム37が、軸方向に関して駆動側カム36から離れる方向である軸方向一方側に向けて並進移動する。このようにして、被駆動側カム37が軸方向一方側に向けて並進移動することで、軸受ガイド25およびレリーズ軸受26を介して、押圧板27により、ダイヤフラムばね17の中央部が軸方向一方側に向けて押圧される。この結果、プレッシャプレート16がクラッチディスク15から退避する方向に移動することに伴い、クラッチ装置3が、完全接続状態から半クラッチ状態を経て切断状態に切り換えられる。
【0051】
これに対し、クラッチ装置3を、切断状態から完全接続状態に切り換える際には、ECU9からの指令信号に基づいて、電動モータ21の出力軸が、クラッチ装置3を切断状態に切り換える際とは逆方向に回転駆動することにより、ウォームホイール35が所定方向とは逆方向に回転する。これにより、
図5(B)→
図5(A)に示すように、駆動側カム36が、被駆動側カム37に対して所定方向と逆方向(
図5(A)および
図5(B)の上方向)に相対回転し、ローラ38が、駆動側カム面40および被駆動側カム面41のうちで、軸方向に関する深さの深い側に向けて転動することに伴い、被駆動側カム37が、軸方向に関して駆動側カム36に近づく方向である軸方向他方側に並進移動する。このようにして、被駆動側カム37が軸方向他方側に向けて並進移動することで、押圧板27により、ダイヤフラムばね17の中央部を軸方向一方側に向けて押圧する押圧量が減少する。この結果、プレッシャプレート16がクラッチディスク15に対して接近する方向に移動した後に押し付けられることに伴い、クラッチ装置3が、切断状態から半クラッチ状態を経て完全接続状態に切り換えられる。
【0052】
ここで、クラッチ装置3によるトルク伝達率、すなわち、クランクシャフト11と入力軸12との間でのトルク伝達率は、完全接続状態では100%であり、半クラッチ状態では100%未満(0%を除く)であり、切断状態では0%である。また、半クラッチ状態でのトルク伝達率は、電動モータ21を駆動することに基づいて、レリーズ軸受26の軸方向位置(ストローク)を変えること、すなわち、ダイヤフラムばね17の中央部の軸方向に関する押圧量を変えることにより、適宜の大きさに調節することができる。
【0053】
トルクセンサ8(
図2参照)は、円環状に構成され、回転部材であって回転軸である入力軸12の周囲に配置されている。トルクセンサ8は、ハウジング20の軸方向他方側の端部に内嵌固定されており、その検出部を、入力軸12の被検出部である外周面に近接対向させている。トルクセンサ8は、ブリッジ回路を構成する複数のコイル層を備えた磁歪式のトルクセンサであり、入力軸12で伝達されているトルクである実トルクの大きさおよび方向を、入力軸12に生じる逆磁歪効果を利用して検出する。このため、入力軸12は、被検出部を含む一部または全部が、磁歪特性を有する材料により造られている。
【0054】
ECU9は、車両全体の制御を行う装置であり、クラッチ制御部、エンジン制御部、トランスミッション制御部などの複数の制御部を備える。本例の車両1は、クラッチ制御を自動で行う自動クラッチ車両である。このため、ECU9は、運転者がシフトレバーを操作することによってマニュアルトランスミッション4の変速機構部のギヤ段を変更する際に、自動でクラッチ装置3の断接状態を切り換える制御を行う。これにより、車両1のイージードライブ化を実現する。
【0055】
さらに、ECU9のクラッチ制御部は、トルクセンサ8により検出された実トルクが所定の条件を満たした場合に、クラッチ装置3によるトルク伝達率を低下させることによって、入力軸12により伝達されているトルクを、ゼロでない所定の値まで低下させるようにクラッチ装置3の制御を行う。特に、本例では、前記所定の条件は、トルクセンサ8により検出された実トルクが第1の閾値R1を超えるという第1の条件を含む。
【0056】
具体的には、ECU9のクラッチ制御部は、トルクセンサ8により検出された実トルクが第1の閾値R1を超えた場合に、該実トルクが第1の閾値R1まで下がるように、レリーズ軸受26の軸方向位置を調節することで、クラッチ装置3によるトルク伝達率を制御する。なお、第1の閾値R1は、エンジン2の最大出力時のトルクを上回り、かつ、エンジン2やトルク伝達装置10にとって過大とならない、任意の値に設定することができ、たとえば、エンジン2の許容トルクの値に設定することができる。
【0057】
次に、上述のようなECU9によるクラッチ装置3の制御の手順について、
図6を参照しつつ具体的に説明する。
【0058】
最初のステップS1では、ECU9が、トルクセンサ8により検出された実トルクの情報を読み込む。そして、ステップS2に進む。
【0059】
ステップS2では、ECU9が、ステップS1で読み込んだ実トルクが第1の閾値R1を超えているか否かを判定する。そして、ステップS2の判定がNOであるとき、すなわち、ステップS1で読み込んだ実トルクが第1の閾値R1を超えていないときは、ステップS1に戻る。一方、ステップS2の判定がYESであるとき、すなわち、ステップS1で読み込んだ実トルクが第1の閾値R1を超えているときは、ステップS3に進む。
【0060】
ステップS3では、ECU9が、ステップS1で読み込んだ実トルクの情報を利用して、トルクセンサ8により検出される実トルクが第1の閾値R1まで下がるような、クラッチ装置3によるトルク伝達率を計算により求め、さらに該トルク伝達率をレリーズ軸受26の軸方向位置に変換する計算を行うことで、該軸方向位置を求める。そして、ステップS4に進む。
【0061】
ステップS4では、ECU9が、クラッチレリーズ装置18に対して、電動モータ21を駆動することにより、レリーズ軸受26の軸方向位置を、ステップS3で求めた軸方向位置に移動させるよう指令する。すなわち、ECU9が、クラッチレリーズ装置18のストローク制御を行う。そして、ステップS1に戻る。
【0062】
以上のような構成を有する本例の車両1の駆動装置52によれば、トルク伝達装置10が伝達している実トルクを、マニュアルトランスミッション4の入力軸12において、トルクセンサ8によりリアルタイムで検出することができる。また、該実トルクが第1の閾値R1を僅かでも超えた場合には、ECU9が、クラッチ装置3によるトルク伝達率を低下させることによって、前記実トルクを第1の閾値R1まで低下させるようにクラッチ装置3の制御を行う。したがって、駆動輪7から逆入力された過大なトルクが、エンジン2やトルク伝達装置10にそのまま伝達されることを防止できる。
【0063】
また、第1の閾値R1は、ECU9において設定された値であり、機械式のトルクリミッタのリミットトルクのように経時的に低下することはなく、具体的には、エンジン2やトルク伝達装置10を構成する部材の経時変化に伴って低下することはない。要するに、エンジン2やトルク伝達装置10の強度設計において、駆動輪7側から加わるトルクの最大値の経時変化を考慮する必要はなく、第1の閾値R1を基準に設計を行うことができる。このため、エンジン2やトルク伝達装置10に関して、強度を過剰に大きくする必要がない。この結果、たとえば、エンジン2やトルク伝達装置10の重量を小さくすることができる。さらに、トルク伝達装置10の重量を小さくすることによって、トルク伝達効率を向上させることができる。
【0064】
また、本例では、トルクセンサ8により検出した実トルクが第1の閾値R1を超えた場合には、ECU9によるクラッチ装置3の制御によって、該トルクを第1の閾値R1までしか下げない。このため、たとえば、車両1がエンジンブレーキを効かせながら坂道を下る場合に、エンジンブレーキの効きが過度に弱まることを防止して、車両1の安全走行を確保することができる。
【0065】
なお、本発明を実施する場合、トルク伝達装置10において、トルクセンサにより実トルクを検出する位置は、特に限定されない。トルクセンサにより実トルクを検出する位置は、たとえば
図2において、マニュアルトランスミッション4の変速機構部よりも駆動輪7に近い部分(たとえば、α部やβ部)としてもよい。このようにすれば、駆動輪7から逆入力された過大なトルクが、エンジン2やトルク伝達装置10にそのまま伝達されることを防止するための制御を、より迅速に行える。
【0066】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図7を用いて説明する。
駆動装置を保護するためには、トルク伝達装置10に衝撃的なトルクが加わることを防止することも有効な対策となる。なお、該衝撃的なトルクは、たとえば、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を急激に増大した場合に、エンジン2からトルク伝達装置10に入力されたり、あるいは、悪路走行中に駆動輪7(
図2参照)が地面から浮き上がって再び接地した場合などに、駆動輪7からトルク伝達装置10に逆入力されたりすることが考えられる。
【0067】
そこで、本例では、ECU9(
図2参照)は、トルクセンサ8(
図2~
図4参照)が検出した実トルクが、所定の条件に含まれる第2の条件を満たした場合に、クラッチ装置3(
図2参照)によるトルク伝達率を低下させることによって、前記実トルクが減少するように、クラッチ装置3の制御を行う。ここで、第2の条件は、トルクセンサ8が検出した実トルクの増大率(=実トルクの増大量dT/経過時間dt)が、予め設定された第2の閾値R
2を超えるという条件である。なお、第2の閾値R
2は、たとえば、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を急激に増大した場合や、悪路走行中に駆動輪7が地面から浮き上がって再び接地した場合などに生じると想定される前記実トルクの増大率の最大値よりも少しだけ小さい値に設定するなど、適宜の大きさに設定することができる。
【0068】
本例では、ECU9は、たとえば
図7に矢印Xで示すように、トルクセンサ8が検出した実トルクが第1の閾値R
1を超えるという第1の条件が満たされていない場合でも、該実トルクの増大率が第2の閾値R
2を超えるという第2の条件が満たされた場合、換言すれば、該実トルクが衝撃的なトルクとなる傾向が表れた場合に、クラッチ装置3によるトルク伝達率を低下させることによって、前記実トルクが減少するように、クラッチ装置3の制御を行う。本例では、第2の条件が満たされた場合には、クラッチ装置3によるトルク伝達率を50%以下に低下させる。ただし、本発明を実施する場合に、第2の条件が満たされた場合のクラッチ装置3によるトルク伝達率の低下のさせ方は、適宜決定することができる。
【0069】
以上のような本例の構造によれば、車両状況(停車中又は走行中、低速走行中又は高速巡航中、平坦路走行中又は坂道走行中など)に応じたクラッチ装置3のトルク伝達率の調節をより適切に行うことができ、車両の駆動装置の保護や、車両の安定走行を充実させることができる。たとえば、マニュアルトランスミッションを搭載した車両の発進や変速の際にクラッチ装置3を急接する場合において、車両振動やエンストが起こらないように、クラッチ装置3のトルク伝達率を妥当な値に下げた後、実トルクが安定してからクラッチ装置3のトルク伝達率を上げて滑らかに発進や変速することができる。また、アクセルペダルの踏み込み量を急激に増大させる場合において、運転者が要求する車両加速度と比べて妥当であれば問題ないが、明らかに過大の場合はクラッチ装置3のトルク伝達率を下げて妥当な車両加速度になるよう調節することができる。また、悪路走行中の逆入力トルクが過大とならないようにクラッチ装置3のトルク伝達率を下げることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0070】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、
図8を用いて説明する。
本例では、ECU9(
図2参照)が行うクラッチ装置3(
図2参照)の制御に関する第2の条件は、トルクセンサ8(
図2~
図4参照)より検出された実トルクが、第1の閾値R
1よりも小さい第1の予備閾値R
1′を超えることをさらに含む。すなわち、本例では、第2の条件は、トルクセンサ8より検出された実トルクが第1の予備閾値R
1′を超え、かつ、該実トルクの増大率が第2の閾値R
2を超えるという条件である。なお、第1の予備閾値R
1′は、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を急激に増大した場合や、悪路走行中に駆動輪7が地面から浮き上がって再び接地した場合などに生じると想定される前記実トルクの衝撃的な増大量の最大値Rの分だけ、第1の閾値R
1よりも小さい値(R
1′=R
1-R)に設定するなど、適宜の大きさに設定することができる。
【0071】
本例では、ECU9は、たとえば
図8に矢印Yで示すように、トルクセンサ8が検出した実トルクが第1の予備閾値R
1′を超え、かつ、該実トルクの増大率が第2の閾値R
2を超えるという第2の条件を満たした場合に、クラッチ装置3によるトルク伝達率を低下させることによって、前記実トルクが減少するように、クラッチ装置3の制御を行う構成を採用している。これにより、ECU9による制御の負担を減らしつつ、前記実トルクが第1の閾値R
1を超えることを予防することができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例および第2例と同様である。
【符号の説明】
【0072】
1 車両
2 エンジン
3 クラッチ装置
4 マニュアルトランスミッション
5 デファレンシャル
6 ドライブシャフト
7 駆動輪
8 トルクセンサ
9 ECU
10 トルク伝達装置
11 クランクシャフト
12 入力軸
13 出力軸
14 フライホイール
15 クラッチディスク
16 プレッシャプレート
17 ダイヤフラムばね
18 クラッチレリーズ装置
19 クラッチカバー
20 ハウジング
21 電動モータ
22 ウォーム減速機
23 カム装置
24 カムガイド
25 軸受ガイド
26 レリーズ軸受
27 押圧板
28 付勢ばね
29 フロントケース
30 内側案内筒部
31 外側案内筒部
32 連結部
33 収容部
34 ウォーム
35 ウォームホイール
36 駆動側カム
37 被駆動側カム
38 ローラ
39 保持器
40 駆動側カム面
41 被駆動側カム面
42 円筒部
43 円輪部
44 大径筒部
45 小径筒部
46 円輪部
47 シール部
48 シール部
49 内輪
50 外輪
51 玉
52 駆動装置
53 クラッチ制御装置