(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】接合構造物及び接合構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/61 20060101AFI20230511BHJP
E04B 1/10 20060101ALI20230511BHJP
E04B 1/48 20060101ALI20230511BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20230511BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20230511BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
E04B1/61 505Z
E04B1/10 A
E04B1/48 E
E04B1/48 K
F16B11/00 A
F16B5/02 J
F16B35/04 D
(21)【出願番号】P 2019171949
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】田畑 治
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027022(JP,A)
【文献】特開2005-098036(JP,A)
【文献】特開平11-200486(JP,A)
【文献】特開昭53-061122(JP,A)
【文献】特開2004-100292(JP,A)
【文献】特開平04-062249(JP,A)
【文献】特開2004-052279(JP,A)
【文献】特開2004-052234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/10
F16B 11/00
F16B 5/02
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小口面に取付孔が形成された木製の壁パネルと、
プレートから相反する向きへそれぞれ突出する第1棒材及び第2棒材を有する接合部材と、
厚み方向に貫通する貫通孔が形成された木製の床パネルと、を備えており、
上記第1棒材が上記壁パネルの取付孔に挿入されて、上記第1棒材と上記取付孔との隙間に接着剤が充填されており、
上記床パネルの貫通孔に挿通された上記第2棒材に固定部材が嵌め合わされて、上記床パネルに上記接合部材が固定された接合構造物。
【請求項2】
2枚の上記床パネルを有しており、
上記接合部材は、少なくとも2本の上記第2棒材を有しており、
上記第2棒材が、2枚の上記床パネルの上記各貫通孔にそれぞれ挿通されている請求項1に記載の接合構造物。
【請求項3】
上記壁パネルの小口面、又は上記床パネルにおいて上記壁パネルの小口面と対向する面に、上記プレートを収容可能な凹部が形成されている請求項1または2に記載の接合構造物。
【請求項4】
木製の壁パネルの小口面に形成された取付孔に接着剤が充填され、当該取付孔に、接合部材のプレートから突出する第1棒材が挿入されて、当該プレートが上記小口面上に載置され、
上記プレートから上記第1棒材と反対向きに突出する第2棒材が、木製の床パネルの厚み方向に貫通する貫通孔に挿通され、当該床パネルが上記壁パネルの小口面に載置され、
上記第2棒材に固定部材が嵌め合わされて、上記床パネルと上記接合部材とが固定され、
上記床パネルと上記接合部材とが固定された状態で、上記接着剤が固化される接合構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネルと床パネルとを接合する接合部材が用いられた接合構造物及び当該接合構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、接合金具セットを用いた床パネルと壁パネルの接合構造を開示する。接合金具セットは、床パネルと壁パネルとの間にかけて配置される六角ボルトと、六角ボルトと組み合わせて使用され、本体の基端部から内方にかけて配設される通路管を有し、壁パネル内に配置される連結プレートと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された接合構造では、連結プレートを壁パネルに差し込むための孔や、連結プレートを壁パネルに固定するためのピン孔などを精度よく形成する必要がある。また、床パネルに六角ボルトを挿通するための孔と、連結プレートの通路管との位置合わせも精度よく行う必要がある。その結果、精度の高い加工技術が必要である。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、壁パネルと床パネルの接合において、壁パネルや床パネルに形成する孔に高度な加工精度を必要とせず、簡易に壁パネルと床パネルとが接合可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る接合構造物は、小口面に取付孔が形成された木製の壁パネルと、プレートから相反する向きへそれぞれ突出する第1棒材及び第2棒材を有する接合部材と、厚み方向に貫通する貫通孔が形成された木製の床パネルと、を備えている。上記第1棒材が上記壁パネルの取付孔に挿入されて、上記第1棒材と上記取付孔との隙間に接着剤が充填されている。上記床パネルの貫通孔に挿通された上記第2棒材に固定部材が嵌め合わされて、上記床パネルに上記接合部材が固定されている。
【0007】
第1棒材と取付孔との隙間により壁パネルの取付孔と床パネルの貫通孔との加工誤差が吸収される。
【0008】
(2) 好ましくは、2枚の上記床パネルを有している。上記接合部材は、少なくとも2本の上記第2棒材を有している。上記第2棒材が、2枚の上記床パネルの上記各貫通孔にそれぞれ挿通されている。
【0009】
2枚の床パネルそれぞれの貫通孔と壁パネルの取付孔との加工誤差が、第1棒材と取付孔との隙間により吸収される。
【0010】
(3) 好ましくは、上記壁パネルの小口面、又は上記床パネルにおいて上記壁パネルの小口面と対向する面に、上記プレートを収容可能な凹部が形成されている。
【0011】
プレートが介在することによって、床パネルと壁パネルとの間に隙間が生じることが防止される。
【0012】
(4) 本発明に係る接合構造物の施工方法は、木製の壁パネルの小口面に形成された取付孔に接着剤が充填され、当該取付孔に、接合部材のプレートから突出する第1棒材が挿入されて、当該プレートが上記小口面上に載置される。上記プレートから上記第1棒材と反対向きに突出する第2棒材が、木製の床パネルの厚み方向に貫通する貫通孔に挿通され、当該床パネルが上記壁パネルの小口面に載置される。上記第2棒材に固定部材が嵌め合わされて、上記床パネルと上記接合部材とが固定される。上記床パネルと上記接合部材とが固定された状態で、上記接着剤が固化される。
【0013】
床パネルと接合部材とが固定された状態で、第2棒材が取付孔に対して移動可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、壁パネルと床パネルの接合において、壁パネルや床パネルに形成する孔に高度な加工精度を必要とせず、簡易に壁パネルと床パネルとが接合される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る接合構造物10の斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1におけるII-II断面図であり、
図2(B)は、取付孔22の中心から下部32Aの中心が外れていた状態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、
図1におけるII-II断面の実施形態に係る接合構造物10の分解図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る壁パネル20の斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、実施形態に係る接合部材30の斜視図であり、
図5(B)は、変形例に係る接合部材230の斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る接合部材30の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る施工方法50の説明図である。
【
図8】
図8(A)は、変形例に係る壁パネル120の斜視図であり、
図8(B)は、変形例に係る接合部材330を示す分解模式図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る接合部材130の分解斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る接合部材133が用いられた接合構造物100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、接合構造物10が施工された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、壁パネル20の小口面21の長手方向であって、上下方向7と直行する方向として長手方向11が定義され、壁パネル20の厚み方向(小口面21の短手方向)であって、上下方向7及び長手方向11のいずれとも直交する方向として幅方向12が定義される。
【0017】
本実施形態の接合構造物10が
図1に示される。接合構造物10は、住宅やマンションの一部として用いられる。
【0018】
接合構造物10は、壁パネル20と、接合部材30と、床パネル40と、を備える。
【0019】
[壁パネル20]
壁パネル20は、例えば、基礎や床の上に、複数枚が連続して並べられることにより住宅やマンション等の建築物の壁をなす。壁パネル20は、木製であればよく、例えば、CLTで形成される。CLTで形成されるパネルは、挽き板などの木板の繊維の方向が各層で互いに直交するように積層されて接着されてなる平板である。壁パネル20の大きさは特に限定されないが、例えば、縦の長さが3000mm、横の長さが2000mm、厚さが150mmの矩形の平板形状である。なお、建築物の壁において、壁パネル20は複数枚が使用されるが、本実施形態では、壁の一部をなす1枚の壁パネル20が例示されている。
【0020】
図4に示されるように、壁パネル20は、小口面21に取付孔22が形成されている。小口面21は、建築物の壁の一部をなす壁パネル20の上面である。小口面21は、壁が延びる方向、本実施形態では長手方向11を長手方向とする長方形をなしている。小口面21は、床パネル40を支持する。1つの小口面21に、複数枚の床パネル40の端部が載置される。取付孔22は、接合部材30を介して床パネル40を固定するために用いられる。したがって、床パネル40が載置される箇所に対応して複数の取付孔22が形成されている。取付孔22は、予め工場等で壁パネル20に形成されてもよいし、建築現場において壁パネル20に形成されてもよい。
【0021】
図2,4に示されるように、2枚の床パネル40の境界となる箇所に、4つの取付孔22が形成されている。長手方向11において異なる位置となる2つずつの取付孔22が、それぞれ1枚の床パネル40の一端部に対応する。また、1枚の床パネル40の一端部に対応する2つの取付孔22は、幅方向12に沿って異なる位置にある。例えば、2つの取付孔22が小口面21の幅方向12の中央を通って長手方向11に沿って延びる仮想線P1に対して線対称の位置にある。各取付孔22は、同じ形状の丸孔であり、直径は、接合部材30の棒材32の直径より大きく、また、上下方向7に沿った深さは棒材32の下部32Aがプレート31から突出する寸法より大きい。取付孔22の具体的な寸法は特に限定されないが、例えば直径が25mm、深さ60mmである。
【0022】
[床パネル40]
床パネル40は、壁パネル20の小口面21に複数枚が並べられて載置されることにより、住宅やマンション等の建築物の床をなす。床パネル40は、木製であればよく、例えば、壁パネル20と同様にCLTで形成される。各床パネル40の大きさは特に限定されないが、例えば、縦の長さが3000mm、横の長さが2000mm、厚さが180mmの矩形の平板形状である。なお、建築物の壁において、床パネル40は複数枚が使用されるが、本実施形態では、床の一部をなす2枚の床パネル40が例示されている。
【0023】
図2(A)に示されるように、床パネル40は、側面同士が当接するようにして隣接して並べられる。床パネル40の厚みは同一なので、壁パネル20の小口面21に載置された複数枚の床パネル40の各上面40Aは同一平面をなす。床パネル40は、下面40Bの一端部分が小口面21と当接している。
【0024】
図1から
図3に示されるように、床パネル40には、厚み方向に貫通する貫通孔41が形成されている。貫通孔41は、壁パネル20の小口面21上に位置する床パネル40の一端部分であって、長手方向11の両端部分に2つずつが形成されている。貫通孔41は、床パネル40が接合部材30と固定されるために用いられる。貫通孔41は、予め工場等で床パネル40に形成されてもよいし、建築現場において床パネル40に形成されてもよい。
【0025】
床パネル40の長手方向11の一端部分に形成されている2つの貫通孔41は、幅方向12に沿って並んでいる。2つの貫通孔41の中心の距離は、接合部材30の2本の棒材32の上部32Bの中心の距離と同じであればよく、必ずしも壁パネル20の小口面21において幅方向12に並んだ2つの取付孔22の中心の距離と同じでなくてもよいが、本実施形態では同じ距離である。
【0026】
図2(A)及び
図3に示されるように、貫通孔41は、下方に位置する第1空間41Aと、上方に位置する第2空間41Bとが連通してなる。第1空間41Aには、接合部材30の棒材32の上部32Bのみが挿通される。第2空間41Bには、上部32Bに螺合されるナット34及びワッシャ35が収容される。第1空間41Aは、直径が上部32Bより若干大きく、且つナット34及びワッシャ35の外形の最大寸法よりも小さい丸孔である。なお、第1空間41Aの形状は丸孔に限定されない。
【0027】
第2空間41Bは、大きさや形状は特に特定されないが、直径が第1空間41Aより大きく、ナット34及びワッシャ35を収容可能な程度であればよい。上部32Bにワッシャ35が挿通され、ナット34が螺合されると、ワッシャ35は、第1空間41Aと第2空間41Bとの境界において上方を向く段差面に当接する。これにより、接合部材30に床パネル40が固定される。なお、ナット34は、固定部材の一例である。
【0028】
図1から
図3に示されるように、床パネル40の下面40Bには、貫通孔41が位置する幅方向12の両端部分に凹部42がそれぞれ形成されている。凹部42は、接合部材30のプレート31が収容される空間である。凹部42は、隣接する床パネル40において連続して1つの空間をなす。この1つの空間にプレート31が収容される。凹部42の大きさは特に限定されないが、2つの凹部42が連続して1つの空間をなしたときの外形が、プレート31の外形より大きければよい。本実施形態では、プレート31は矩形の平板形状であるので、凹部42も上下方向7から視た形状が矩形である。凹部42は、予め工場等で床パネル40に形成されてもよいし、建築現場において床パネル40に形成されてもよい。
【0029】
[接合部材30]
図1及び
図2(A)に示されるように、接合部材30は、壁パネル20と床パネル40とを接合する。
図1及び
図5(A)に示されるように、接合部材30は、プレート31と、4本の棒材32と、を有する。接合部材30は、木製や樹脂製であってもよいが、例えば、金属製である。
【0030】
プレート31は、長手方向11及び幅方向12に沿って拡がる長方形の平板である。プレート31の大きさは特に限定されないが、例えば、長手方向11に沿った長さが140mm、幅方向12に沿った長さが125mm、厚さが10mmである。
【0031】
プレート31は、
図6に示されるように、厚み方向に貫通する4つの挿通孔31Aを有する。各挿通孔31Aは、隣り合う取付孔22のピッチ、及び隣り合う貫通孔41のピッチに合致するよう配置されている。
【0032】
図2(A)に示されるように、プレート31の下面31Bは、取付孔22の周りの小口面21と当接して、小口面21に支持される。プレート31の上面31Cは、床パネル40の凹部42を区画する面と対向する。
【0033】
プレート31の各挿通孔31A(
図6参照)には、棒材32がそれぞれ挿通されている。棒材32は、壁パネル20の取付孔22及び床パネル40の貫通孔41にそれぞれ挿通される。棒材32の大きさは、取付孔22及び貫通孔41に挿通可能であって、取付孔22との間に接着剤33が充填可能な隙間を有する程度に設定され、例えば、直径が17mm程度、長さが350mmの円柱体である。
【0034】
図5(A)及び
図6に示されるように、プレート31と棒材32とは、挿通孔31Aに棒材32が上下方向7の中心辺りまで挿通された状態において溶接により連結されている。これにより、棒材32は、プレート31から相反する向きへそれぞれ突出する。棒材32において、プレート31から下方へ突出する部分が下部32Aと称され、上方へ突出する部分が上部32Bと称される。なお、下部32Aは、第1棒材の一例であり、上部32Bは、第2棒材の一例である。
【0035】
下部32Aは、外周面に突条32Cを有する。突条32Cは、上下方向7及び上下方向7と交差する方向に沿って格子状に延びている。上部32Bの先端部には雄ネジが形成されている。
【0036】
[施工方法50]
以下、
図7が参照されつつ、
図1に示される接合構造物10の施工方法50が説明される。施工方法50は、第1工程51、第2工程52、第3工程53、及び第4工程54を含む。
【0037】
第1工程51は、接合部材30のプレート31を小口面21に載置する工程である。作業者は、基礎や床に立てられた壁パネル20の小口面21において、取付孔22に接着剤33を充填する。接着剤33は、固化することによって、取付孔22と下部32Aとを接合する。接着剤33は、公知のものであればよいが、接着の強度及び耐久性が一定以上のものが望ましく、例えば、エポキシ樹脂系接着剤が用いられる。接着剤33が充填された取付孔22には、後述されるように下部32Aが挿入されるので、接着剤33は、取付孔22の全容積に相当する量が充填される必要は無く、取付孔22の全容積から下部32Aの体積分を除した量だけ充填される。
【0038】
接合部材30の下部32Aが挿入される4つの取付孔22に接着剤33が充填された後、各取付孔22に下部32Aがそれぞれ挿入される。
図3に示されるように、下部32Aが取付孔22に完全に挿入されると、プレート31の下面31Bが壁パネル20の小口面21に当接する。これにより、プレート31が小口面21に載置される。取付孔22の直径は、下部32Aの直径より十分に大きいので、下部32Aの外周面と取付孔22の内周面との間には隙間があり、この隙間に接着剤33が充填された状態となる。このとき、接着剤33は固化していないので、下部32Aは、取付孔22内において長手方向11及び幅方向12に移動可能である。
【0039】
第2工程52は、床パネル40を壁パネル20の小口面21に載置する工程である。作業者は、壁パネル20の小口面21に接合部材30が載置されている状態において、接合部材30の上部32Bが、床パネル40の貫通孔41に挿通するようにして、床パネル40を壁パネル20の小口面21に載置する。
図3に示されるように、接合部材30の4本の上部32Bのうち、長手方向11の一方(例えば
図3における右方)にある2本の上部32Bが、1枚の床パネル40の端部に形成された2つの貫通孔41に挿通され、長手方向11の他方(例えば
図3における左方)にある2本の上部32Bが、別の1枚の床パネル40の端部に形成された貫通孔41に挿通される。これにより、2枚の床パネル40が壁パネル20の小口面21に載置された状態で、互いの側面を当接して隣り合う。
【0040】
各図には示されていないが、壁パネル20の小口面21には複数枚の床パネル40が隣接して載置される。したがって、小口面21には4つの取付孔22が1組として、床パネル40の幅方向12の寸法と同じ間隔で、複数組の取付孔22が形成されている。しかしながら、小口面21に形成された取付孔22の組の長手方向11のピッチに加工誤差が生じたり、床パネル40の幅方向12の寸法に加工誤差が生じたりすることがある。そうすると、取付孔22に下部32Aが挿通された接合部材30の上部32Bの長手方向11の位置と、床パネル40の貫通孔41の長手方向11の位置とが合致しないことがあり得る。このような加工誤差による長手方向11の位置ズレに対して、接合部材30の下部32Aが、取付孔22内において長手方向11に移動することによって、位置ズレに応じた位置へ接合部材30が長手方向11に移動する。
【0041】
第3工程53は、床パネル40と接合部材30とを固定する工程である。作業者は、
図3に示されるように、第2空間41Bにおいて、上部32Bの先端部にワッシャ35を通し、ナット34を螺合する。これにより、
図1に示されるように、床パネル40と接合部材30とが緊結される。
【0042】
第4工程54は、床パネル40と接合部材30とが固定された状態で、接着剤33を固化させる工程である。所定時間が経過し接着剤33が固化することによって、下部32Aが取付孔22に固定され、壁パネル20と床パネル40とが接合される。前述した加工誤差による長手方向11の位置ズレに対して、接合部材30の下部32Aが、取付孔22内において長手方向11に移動していれば、位置ズレに応じた位置へ接合部材30が長手方向11に移動した状態で、接合部材30の下部32Aが取付孔22に固定される。
【0043】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、下部32Aと取付孔22とは隙間を有し、隙間には接着剤33が充填される。これにより、下部32Aは、
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、径の中心が取付孔22の中心線P2から外れていても取付孔22に挿入及び固定されることが可能であるから、この接合構造によって、壁パネル20の取付孔22と床パネル40の貫通孔41との位置ズレに応じて位置に接合部材30が移動可能である。
【0044】
また、各床パネル40における各貫通孔41の位置及び貫通孔41に挿通される下部32A同士の距離により、床パネル40同士の距離が決められる。
【0045】
また、床パネル40に凹部42が形成されているので、壁パネル20と床パネル40との間にプレート31が介在することによって、壁パネル20と床パネル40との間に隙間が生じない。
【0046】
また、床パネル40と接合部材30とが固定された状態で、接着剤33が固化されることで、取付孔22内において位置ズレに応じた位置へ移動した状態で下部32Aが取付孔22に固定される。
【0047】
また、プレート31の下面31Bが壁パネル20の小口面21と合わさることで、棒材32の姿勢が維持される。本実施形態では、棒材32の上部32Bが上下方向7に沿って延びるので、貫通孔41に上部32Bを挿通させることが容易である。
【0048】
また、下部32Aに突条32Cが設けられるているので、棒材32の接着剤33に対する引き抜き抵抗力が増す。
【0049】
[変形例]
上記実施形態では、取付孔22が下部32Aの本数に応じて設けられたが、
図8(A)に示されるように、下部32Aの本数と関係なく、全ての下部32Aが同時に挿入されることができる1つの取付孔122が壁パネル120に設けられてもよい。すなわち、取付孔122の直径は、4本の下部32Aのいずれのピッチよりも十分に大きい。取付孔122に挿入された4本の下部32Aは、取付孔122の周方向へ移動することができるので、取付孔122の周方向に沿った位置ズレに対応した位置において、下部32Aが取付孔122において固定可能となる。
【0050】
また、上記実施形態では、挿通孔31Aに棒材32が挿通されて、プレート31と棒材32が溶接されているが、下部32Aと上部32Bとは、必ずしも1本の棒材32により構成されなくてもよい。例えば、
図9に示されるように、挿通孔31Aを有さないプレート131に下部32Aに相当する棒材132Aと、上部32Bに相当する別の棒材132Bとがそれぞれ溶接されてもよい。この実施態様では、下部32Aと上部32Bのプレート31における長手方向11及び幅方向12の位置は、必ずしも合致していなくてもよい。また、下部32Aの本数と上部32Bの本数も一致しなくともよい。例えば、
図10に示されるように、下部32Aに相当する棒材132Aが1本のみ用いられており、上部32Bに相当する棒材132Bが2本であるとき、棒材132Bが、棒材132Aの周方向へ移動するように接合部材133の移動可能となる。
【0051】
また、上記実施形態では、接合部材30が4本の棒材32を有するが、
図5(B)に示されるように、棒材32は、2本であってもよく、また、3本又は5本以上であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、隣接する2枚の床パネル40の各貫通孔41に1個の接合部材30の上部32Bがそれぞれ挿通されたが、1枚の床パネル40の貫通孔41にのみ挿通される接合部材230が用いられてもよい。例えば、
図5(B)に示されるように、接合部材230は、長手方向11に離れて位置する2本の棒材32を有しており、例えば長手方向11において隅に配置されており、隣接する床パネルがない側の床パネル40の端部において用いられる。
【0053】
また、上記実施形態では、床パネル40に接合部材30が固定されるためにナット34が用いられたが、ナット34に代えて、第1空間41Aと第2空間41Bとの段差面に当接する頭部を有するボルト36が用いられてもよい。ボルト36は、
図8(B)に示されるように、上端の内径に雌ネジを有する接合部材330の上部332Aと螺合する。
【0054】
また、上記実施形態では、床パネル40に凹部42が形成されているが、凹部42は、壁パネル20の小口面21に形成されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、貫通孔41の第2空間41Bがナット34が収容されるが、第2空間41Bを有しておらず第1空間41Aのみの貫通孔41であってもよい。この場合、貫通孔41に挿通された上部32Bが床パネル40の上面40Aから突出して、上面40A上においてナット34が上部32Bに螺合される。
【0056】
また、壁パネル20及び床パネル40は、CLTで形成されたが、LVL又は無垢材で形成されてもよい。LVLパネルは、単板の繊維方向を揃えて積層し接着してなる平板である。
【0057】
また、床パネル40は、相互に隣接して並べられる2枚に隙間が形成されてもよい。この隙間には、防音材等の所定の部材が挿入されて隙間が埋められてもよい。
【0058】
また、床パネル40は、壁パネル20に支持されていればよく、下面40Bが小口面21と当接しなくともよい。また、各上面40Aは、側面20Aと同一平面上に揃えられなくともよい。
【符号の説明】
【0059】
10・・・接合構造物
20・・・壁パネル
21・・・小口面
22・・・取付孔
30・・・接合部材
31・・・プレート
32・・・棒材
32A・・・下部(第1棒材の一例)
32B・・・上部(第2棒材の一例)
33・・・接着剤
34・・・ナット(固定部材の一例)
36・・・ボルト(固定部材の一例)
40・・・床パネル
41・・・貫通孔
42・・・凹部
50・・・施工方法
100・・・接合構造物
120・・・壁パネル
122・・・取付孔
130・・・接合部材
131・・・プレート
132A・・・棒材(第1棒材の一例)
132B・・・棒材(第2棒材の一例)
133・・・接合部材
230・・・接合部材
330・・・接合部材
332A・・・上部