(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20230511BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60C11/03 200A
B60C11/13 C
B60C11/13 B
B60C11/03 100C
(21)【出願番号】P 2019174665
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 博憲
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-219652(JP,A)
【文献】特開2013-063701(JP,A)
【文献】特開2018-161944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグ形状を有すると共にタイヤ周方向に延在する複数の主溝と、隣り合う前記主溝に区画されて成ると共にタイヤ周方向に連続するリブ構造を有する陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記陸部が、セミクローズド構造を有する第一および第二のラグ溝を備
え、
タイヤ幅方向における前記第一ラグ溝の最大長さL21が、前記第二ラグ溝の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有
し、且つ、
前記第一および第二のラグ溝の双方が、前記陸部のタイヤ接地端側のエッジ部に開口することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第一ラグ溝の最大長さL21が、前記陸部の最大接地幅Wb2に対してL21/Wb2≦0.60の関係を有し、且つ、
前記第二ラグ溝の最大長さL22が、前記陸部の最大接地幅Wb2に対して0.20≦L22/Wb2の関係を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第一および第二のラグ溝が、前記主溝の前記ジグザグ形状のタイヤ赤道面側への最大振幅位置に開口する請求項
1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第二ラグ溝の最大溝幅W22が、前記第一ラグ溝の最大溝幅W21に対して1.05≦W22/W21≦1.50の関係を有する請求項1~
3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第一ラグ溝の最大溝幅W21が、4.0[mm]≦W21の範囲にあり、且つ、前記第二ラグ溝の最大溝幅W22が、W22≦15[mm]の範囲にある請求項
4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第二ラグ溝の最大溝深さH22が、前記第一ラグ溝の最大溝深さH21に対して1.20≦H22/H21≦1.60の関係を有する請求項1~
5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第一ラグ溝の溝深さH21が、前記主溝の最大溝深さHg1に対して0.50≦H21/Hg1の関係を有し、且つ、
前記第二ラグ溝の溝深さH22が、前記主溝の最大溝深さHg1に対してH22/Hg1≦0.95の関係を有する請求項
6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記陸部を区画する前記主溝のうちのタイヤ接地端側の主溝が、略同一長さの直線部を接続して成るジグザグ形状を有すると共に、前記直線部の周方向長さLg1が、前記ジグザグ形状の波長λ1に対して0.30≦Lg1/λ1≦0.70の関係を有し、且つ、
タイヤ赤道面側の主溝が、長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有すると共に、前記長尺部の周方向長さLg2が、前記ジグザグ形状の波長λ2に対して0.70≦Lg2/λ2≦0.90の関係を有する請求項1~
7のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記主溝の前記ジグザグ形状の波長λ1、λ2が、1.50≦λ2/λ1≦2.00の関係を有する請求項
8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第一および第二のラグ溝の双方が、前記陸部のタイヤ接地端側のエッジ部に開口し、且つ、
前記第一ラグ溝が、前記タイヤ赤道面側の前記主溝の長尺部に対向して配置される請求項
8または9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記第一および第二のラグ溝の双方が、前記陸部のタイヤ接地端側のエッジ部に開口し、且つ、
タイヤ周方向に対する前記第一ラグ溝の傾斜方向が、前記タイヤ赤道面側の前記主溝の長尺部の傾斜方向に対して同一方向である請求項
8~
10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記タイヤ接地端側の前記主溝が、タイヤ幅方向の最外側にあるショルダー主溝である請求項
8~
11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記ショルダー主溝に区画されたショルダー陸部を備え、且つ、
前記ショルダー陸部が、前記ショルダー陸部を貫通する複数のラグ溝と、前記ラグ溝に区画された複数のブロックとを備える請求項1~
12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
車両のドライブ軸に装着される重荷重用タイヤである請求項1~
13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
ジグザグ形状を有すると共にタイヤ周方向に延在する複数の主溝と、隣り合う前記主溝に区画されて成ると共にタイヤ周方向に連続するリブ構造を有する陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記陸部が、セミクローズド構造を有する第一および第二のラグ溝を備
え、
タイヤ幅方向における前記第一ラグ溝の最大長さL21が、前記第二ラグ溝の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有
し、且つ、
前記第二ラグ溝の最大溝幅W22が、前記第一ラグ溝の最大溝幅W21に対して1.05≦W22/W21≦1.50の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項16】
ジグザグ形状を有すると共にタイヤ周方向に延在する複数の主溝と、隣り合う前記主溝に区画されて成ると共にタイヤ周方向に連続するリブ構造を有する陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記陸部が、セミクローズド構造を有する第一および第二のラグ溝を備
え、
タイヤ幅方向における前記第一ラグ溝の最大長さL21が、前記第二ラグ溝の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有
し、
前記陸部を区画する前記主溝のうちのタイヤ接地端側の主溝が、略同一長さの直線部を接続して成るジグザグ形状を有すると共に、前記直線部の周方向長さLg1が、前記ジグザグ形状の波長λ1に対して0.30≦Lg1/λ1≦0.70の関係を有し、且つ、
前記陸部を区画する前記主溝のうちのタイヤ赤道面側の主溝が、長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有すると共に、前記長尺部の周方向長さLg2が、前記ジグザグ形状の波長λ2に対して0.70≦Lg2/λ2≦0.90の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤのスノートラクション性能および耐偏摩耗性能を両立できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
主として車両のドライブ軸に装着される重荷重用タイヤでは、リブパターンを基調としてタイヤの耐偏摩耗性能を確保しつつ、リブにセミクローズドラグ溝を配置してタイヤのスノートラクション性能を高めている。
【0003】
かかる構造を採用する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、タイヤのスノートラクション性能および耐偏摩耗性能を両立できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、ジグザグ形状を有すると共にタイヤ周方向に延在する複数の主溝と、隣り合う前記主溝に区画されて成ると共にタイヤ周方向に連続するリブ構造を有する陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記陸部が、セミクローズド構造を有する第一および第二のラグ溝を備え、タイヤ幅方向における前記第一ラグ溝の最大長さL21が、前記第二ラグ溝の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有し、且つ、前記第一および第二のラグ溝の双方が、前記陸部のタイヤ接地端側のエッジ部に開口することを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、ジグザグ形状を有すると共にタイヤ周方向に延在する複数の主溝と、隣り合う前記主溝に区画されて成ると共にタイヤ周方向に連続するリブ構造を有する陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記陸部が、セミクローズド構造を有する第一および第二のラグ溝を備え、タイヤ幅方向における前記第一ラグ溝の最大長さL21が、前記第二ラグ溝の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有し、且つ、前記第二ラグ溝の最大溝幅W22が、前記第一ラグ溝の最大溝幅W21に対して1.05≦W22/W21≦1.50の関係を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、ジグザグ形状を有すると共にタイヤ周方向に延在する複数の主溝と、隣り合う前記主溝に区画されて成ると共にタイヤ周方向に連続するリブ構造を有する陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記陸部が、セミクローズド構造を有する第一および第二のラグ溝を備え、タイヤ幅方向における前記第一ラグ溝の最大長さL21が、前記第二ラグ溝の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有し、前記陸部を区画する前記主溝のうちのタイヤ接地端側の主溝が、略同一長さの直線部を接続して成るジグザグ形状を有すると共に、前記直線部の周方向長さLg1が、前記ジグザグ形状の波長λ1に対して0.30≦Lg1/λ1≦0.70の関係を有し、且つ、前記陸部を区画する前記主溝のうちのタイヤ赤道面側の主溝が、長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有すると共に、前記長尺部の周方向長さLg2が、前記ジグザグ形状の波長λ2に対して0.70≦Lg2/λ2≦0.90の関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、第一および第二のラグ溝が相互に異なる最大溝長さL21、L22を有するので、ラグ溝の最大溝長さが均一に設定された構成と比較して、タイヤの耐偏摩耗性能とスノートラクション性能とを効率的に両立できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に記載した空気入りタイヤのショルダー陸部およびミドル陸部を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図2に記載した空気入りタイヤのミドル陸部およびセンター陸部を示す拡大図である。
【
図5】
図5は、
図3に記載したショルダー陸部を示す拡大図である。
【
図6】
図6は、
図3に記載したミドル陸部を示す拡大図である。
【
図8】
図8は、
図4に記載したセンター陸部を示す拡大図である。
【
図10】
図10は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図11】
図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、トラック、バスなどの長距離輸送用の車両のドライブ軸に装着される重荷重用ラジアルタイヤを示している。
【0011】
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の測定点の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
【0012】
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(
図1参照)。
【0013】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、ローアーフィラー121およびアッパーフィラー122から成り、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0014】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールから成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上90[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0015】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~144を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。これらのベルトプライ141~144は、高角度ベルト141と、一対の交差ベルト142、143と、ベルトカバー144と含む。高角度ベルト141は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で45[deg]以上70[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。一対の交差ベルト142、143は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト142、143は、相互に異符号のコード角度を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造を有する)。ベルトカバー144は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。
【0016】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0017】
[トレッド面]
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、オールシーズン用タイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。
【0018】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の主溝21、22と、これらの主溝21、22に区画された複数の陸部31~33とをトレッド面に備える。
【0019】
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、6.0[mm]以上の溝幅および10[mm]以上の溝深さを有する。また、
図2の構成では、主溝21、22の溝幅Wg1、Wg2(
図2参照)が、タイヤ接地幅TWに対して3[%]以上4[%]以下の範囲にある。
【0020】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。切欠部あるいは面取部を溝開口部に有する構成では、溝幅方向かつ溝深さ方向に平行な断面視におけるトレッド踏面の延長線と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
【0021】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離として測定される。また、部分的な底上部、サイプあるいは凹凸部を溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0022】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0023】
例えば、
図2の構成では、4本の主溝21、22がタイヤ赤道面CLを境界として左右対称に配置されている。また、5列の陸部が、これらの主溝21、22により区画されている。また、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
【0024】
しかし、これに限らず、3本あるいは5本の主溝が配置されても良い(図示省略)。また、陸部がタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0025】
ここで、タイヤ赤道面CLを境界とする1つの領域に配置された主溝21、22;21、22のうち、タイヤ幅方向の最も外側にある主溝21、21をショルダー主溝として定義し、他の主溝22をセンター主溝として定義する。
【0026】
図2の構成では、タイヤ赤道面CLから左右のショルダー主溝21、21の溝中心線までの距離(図中の寸法記号省略)が、タイヤ接地幅TWの26[%]以上32[%]以下の範囲にある。また、タイヤ赤道面CLから左右のセンター主溝22、22の溝中心線までの距離が、タイヤ接地幅TWの8[%]以上12[%]以下の範囲にある。
【0027】
溝中心線は、対向する溝壁間の距離の測定点の中点を接続した仮想線として定義される。
【0028】
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0029】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0030】
また、ショルダー主溝21、21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31、31をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部31、31は、タイヤ幅方向の最も外側の陸部であり、タイヤ接地端T上に位置する。また、ショルダー主溝21、21に区画されたタイヤ幅方向内側の陸部32、32をミドル陸部として定義する。ミドル陸部32、32は、ショルダー主溝21を挟んでショルダー陸部31に隣り合う。また、ミドル陸部32、32よりもタイヤ赤道面CL側にある陸部33をセンター陸部として定義する。センター陸部33は、タイヤ赤道面CL上に配置されても良いし(
図2参照)、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0031】
図2のような4本の主溝21、22を備える構成では、一対のショルダー陸部31、31と、一対のミドル陸部32、32と、単一のセンター陸部33とが定義される。また、例えば、5本以上の主溝を備える構成では、2列以上のセンター陸部が定義され(図示省略)、3本の主溝を備える構成では、ミドル陸部がセンター陸部を兼ねる(図示省略)。
【0032】
図2の構成では、ショルダー陸部31が後述するラグ溝311に区画されたブロック列であり、ミドル陸部32およびセンター陸部33がタイヤ周方向に連続するリブである。
【0033】
上記の構成では、トレッド部センター領域の陸部32、33がタイヤ周方向に連続するリブであることにより、陸部32、33の剛性が確保されて、タイヤの耐摩耗性能および耐偏摩耗性能が確保される。また、トレッド部センター領域の陸部32;33が後述するセミクローズド構造のラグ溝321、322;331、332を備えることにより、タイヤのスノートラクション性能が確保される。
【0034】
また、
図2において、陸部31、32、33の最大接地幅Wb1、Wb2、Wb3が、タイヤ接地幅TWに対して15[%]以上25[%]以下の範囲にある。また、
図2の構成では、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が最も狭い。また、センター陸部33の最大接地幅Wb3が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して1.00≦Wb3/Wb2≦1.20の関係を有することが好ましく、1.05≦Wb3/Wb2≦1.10の関係を有することがより好ましい。
【0035】
陸部の接地幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときの陸部と平板との接触面におけるタイヤ軸方向の直線距離として測定される。
【0036】
[主溝のジグザグ形状]
図3は、
図2に記載した空気入りタイヤのショルダー陸部31およびミドル陸部32を示す拡大図である。
図4は、
図2に記載した空気入りタイヤのミドル陸部32およびセンター陸部33を示す拡大図である。これらの図では、ジグザグ形状の一点鎖線が主溝21、22の溝中心線を示している。
【0037】
図2に示すように、ショルダー主溝21およびセンター主溝22は、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状を有する。
【0038】
また、ショルダー主溝21が、タイヤ周方向に対して相互に異なる方向に傾斜する直線部を交互に接続して成るジグザグ形状を有する。また、
図3において、これらの直線部の周方向長さLg1が、ジグザグ形状の波長λ1に対して0.30≦Lg1/λ1≦0.70の関係を有することが好ましく、0.35≦Lg1/λ1≦0.65の関係を有することがより好ましい。したがって、ショルダー主溝21が略同一長さの直線部を接続して成るジグザグ形状を有することが好ましい。また、ショルダー主溝21のジグザグ形状の振幅A1が、タイヤ接地幅TWに対して0.03≦A1/TW≦0.05の関係を有する。
【0039】
また、センター主溝22が、タイヤ周方向に対して相互に異なる方向に傾斜する長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有する。また、
図4において、ジグザグ形状の長尺部の周方向長さLg2が、ジグザグ形状の波長λ2に対して0.70≦Lg2/λ2≦0.90の関係を有することが好ましく、0.75≦Lg2/λ2≦0.85の関係を有することがより好ましい。また、ジグザグ形状の振幅A2が、タイヤ接地幅TWに対して0.03≦A2/TW≦0.05の関係を有する。
【0040】
上記の構成では、陸部32、33を区画する少なくとも一方の主溝22が長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有するので、双方の主溝がストレート形状を有する構成と比較して、陸部32;33の剛性を維持しつつタイヤのスノートラクション性能を向上でき、また、双方の主溝が略同一長さの直線部を接続して成るジグザグ形状を有する構成と比較して、陸部32;33の剛性が確保されてタイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0041】
また、
図3において、ショルダー主溝21およびセンター主溝22のジグザグ形状の波長λ1、λ2が、1.50≦λ2/λ1≦2.00の関係を有する。また、同一ピッチ内におけるセンター主溝22の波長λ2が、ショルダー主溝21の波長λ1の整数倍であることが好ましい。例えば、
図3の構成では、同一ピッチ内における波長λ1、λ2の比λ2/λ1が2倍に設定されている。
【0042】
また、
図4において、隣り合うセンター主溝22、22が、同一の波長λ2および振幅A2を有する。ただし、両者の波長λ2の比および振幅A2の比が±5[%]の範囲内にあれば、両者は同一であるといえる。また、隣り合うセンター主溝22、22のジグザグ形状の位相差φ2が、ジグザグ形状の波長λ2に対して0≦φ2/λ2≦0.10の関係を有する。したがって、隣り合うセンター主溝22、22が、ジグザグ形状の位相を揃えて配置される。
【0043】
また、
図2の構成では、上記のように、ショルダー主溝21が略同一長さの直線部を接続して成るジグザグ形状を有し、センター主溝22が長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有している。かかる構成では、トレッド部ショルダー領域のトラクション性が向上して、タイヤのスノー性能が効果的に高まる。一方で、陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部の剛性が確保されて、陸部32のセンター摩耗が抑制される。これにより、タイヤのスノー性能と耐偏摩耗性能とが両立する。
【0044】
しかし、これに限らず、ショルダー主溝21およびセンター主溝22の双方が、長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有しても良い(図示省略)。具体的には、
図2におけるショルダー主溝21がセンター主溝22と同一構造を有することにより、ミドル陸部32の左右のエッジ部がセンター陸部33と同一構造を有し得る。
【0045】
また、
図2の構成では、上記のように、短い波長λ1(<λ2)をもつショルダー主溝21が、長い波長λ2をもつセンター主溝22よりもタイヤ接地端T側に配置される。かかる構成では、トレッド部ショルダー領域のトラクション性が向上して、タイヤのスノー性能が効果的に高まる。一方で、タイヤ赤道面CL側にあるセンター主溝22が長い波長λ2をもつジグザグ形状を有するので、トレッド部センター領域の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が確保される。したがって、タイヤのスノー性能と耐偏摩耗性能が両立する点で好ましい。
【0046】
しかし、これに限らず、ショルダー主溝21がセンター主溝22よりも長い波長をもつジグザグ形状を有しても良いし(図示省略)、ショルダー主溝21およびセンター主溝22が、同一の波長および振幅を有しても良い(図示省略)。
【0047】
また、
図2の構成では、
図3に示すように、ショルダー主溝21のジグザグ形状が、タイヤ周方向視にてシースルー構造を有する。したがって、ショルダー陸部31のエッジ部とミドル陸部32のエッジ部とが、タイヤ周方向視にて相互にオーバーラップしない。これにより、ショルダー主溝21の溝容積が確保されて、タイヤの排水性が高められている。
【0048】
一方で、
図4に示すように、センター主溝22のジグザグ形状が、タイヤ周方向視にてシースルーレス構造を有する。したがって、ミドル陸部32のエッジ部とセンター陸部33のエッジ部とが、タイヤ周方向視にて相互にオーバーラップする。これにより、タイヤのトラクション性が向上する。
【0049】
[ショルダー陸部]
図5は、
図3に記載したショルダー陸部31を示す拡大図である。同図は、単体のショルダーブロック312を示している。
【0050】
図2および
図3に示すように、ショルダー陸部31は、ショルダーラグ溝311と、ショルダーブロック312と、周方向細溝313と、切欠部314とを備える。
【0051】
ショルダーラグ溝311は、いわゆるオープン構造を有し、ショルダー陸部31をタイヤ幅方向に貫通して、ショルダー主溝21およびタイヤ接地端Tに開口する。また、
図5に示すように、ショルダーラグ溝311が、ショルダー主溝21のジグザグ形状のタイヤ接地端T側への最大振幅位置に開口する。また、複数のショルダーラグ溝311が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、ショルダーラグ溝311の最大溝幅(図中の寸法記号省略)が、10[mm]以上25[mm]以下の範囲にある。また、ショルダーラグ溝311の最大溝深さ(図示省略)が、ショルダー主溝21の最大溝深さに対して30[%]以上80[%]以下の範囲にある。なお、
図5の構成では、ショルダーラグ溝311がショルダー主溝21よりも浅いので、トレッド平面視にてショルダーラグ溝311とショルダー主溝21との境界部が稜線として現れている。
【0052】
ショルダーブロック312は、ショルダー陸部31がショルダーラグ溝311によりタイヤ周方向に区画されて成る。また、単一のブロック列が形成される。また、
図5に示すように、ショルダーブロック312のショルダー主溝21側のエッジ部が、ショルダー主溝21に沿ったジグザグ形状を有する。また、1つのショルダーブロック312のエッジ部が、ショルダー主溝21に対して凸となる2つの凸部と、ショルダー主溝21に対して凹となる1つの凹部とを有する。また、ショルダーブロック312の最大周方向長さL12が、ショルダー主溝21のジグザグ形状の波長λ1に対して0.40≦λ1/L12≦0.70の関係を有する。また、ショルダーブロック312の最大周方向長さL12が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して1.10≦L12/Wb1≦1.40の関係を有する。
【0053】
周方向細溝313は、ショルダーブロック312をタイヤ周方向に貫通して、ショルダーラグ溝311に開口する。また、
図5に示すように、周方向細溝313がジグザグ形状を有し、また、周方向細溝313の振幅(図中の寸法記号省略)がショルダー主溝21の振幅A1(
図3参照)よりも小さい。また、周方向細溝313の最大溝幅(図中の寸法記号省略)が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して2[%]以上10[%]以下の範囲にある。また、周方向細溝313の最大溝深さ(図示省略)が、ショルダー主溝21の最大溝深さに対して30[%]以上80[%]以下の範囲にある。また、タイヤ接地端Tから周方向細溝313までの距離D13が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.30≦D13/Wb1≦0.70の範囲にある。
【0054】
切欠部314は、ショルダーブロック312のショルダー主溝21側のエッジ部に形成される。また、切欠部314が、周方向細溝313に対して離間して配置される。また、切欠部314が、ショルダー主溝21のジグザグ形状のタイヤ接地端T側への最大振幅位置に形成される。また、単一の切欠部314が、ショルダーブロック312に形成される。また、ショルダー主溝21に対する切欠部314の開口幅(図中の寸法記号省略)が、5.0[mm]以上15[mm]以下の範囲にある。また、切欠部314の最大深さ(図示省略)が、ショルダー主溝21の最大溝深さに対して30[%]以上80[%]以下の範囲にある。
【0055】
また、
図5に示すように、ショルダーブロック312が、複数のサイプ(図中の符号省略)を有する。具体的に、単一の周方向サイプが、周方向細溝313に区画されたタイヤ接地端T側の領域に配置されてタイヤ周方向に延在し、また、その両端部がショルダーブロック312内で終端する。また、複数の幅方向サイプが、周方向細溝313に区画されたショルダー主溝21側の領域に配置されてタイヤ幅方向に延在し、周方向細溝313とショルダー主溝21あるいは切欠部314とを接続する。
【0056】
サイプは、トレッド踏面に形成された切り込みであり、1.5[mm]未満のサイプ幅および2.0[mm]以上のサイプ深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。
【0057】
サイプ幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面におけるサイプの最大開口幅として測定される。
【0058】
サイプ深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面からサイプ底までの距離として測定される。また、サイプが部分的な底上部あるいは凹凸部をサイプ底に有する構成では、これらを除外してサイプ深さが測定される。
【0059】
[ミドル陸部]
図6は、
図3に記載したミドル陸部32を示す拡大図である。同図は、単体のミドル陸部32を抽出して示している。
図7は、
図6に記載したミドル陸部32の断面図である。同図は、第一ミドルラグ溝321に沿った断面図を示している。
【0060】
図2および
図3に示すように、ミドル陸部32は、長尺な第一ミドルラグ溝321と、短尺な第二ミドルラグ溝322とを備える。
【0061】
第一および第二のミドルラグ溝321、322は、いわゆるセミクローズド構造を有し、一方の端部にてショルダー主溝21に開口し、他方の端部にてミドル陸部32内で終端する。また、すべてのミドルラグ溝321、322が、ミドル陸部32のタイヤ接地端T側のエッジ部に開口し、タイヤ赤道面CL側のエッジ部には開口していない。このため、ミドル陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部が、ラグ溝に分断されていないプレーン構造を有する。また、第一および第二のミドルラグ溝321、322の双方が、ショルダー主溝21のジグザグ形状のタイヤ赤道面CL側への最大振幅位置に開口する。言い換えると、第一および第二のミドルラグ溝321、322の双方が、ミドル陸部32のエッジ部においてショルダー主溝21に対して凹となる位置に開口する。また、第一ミドルラグ溝321および第二ミドルラグ溝322が、タイヤ周方向に交互かつ所定間隔で配列される。
【0062】
また、
図6において、タイヤ幅方向における第一ミドルラグ溝321の最大長さL21が、第二ミドルラグ溝322の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有し、また、1.40≦L21/L22≦2.00の関係を有することが好ましい。これにより、第一および第二のミドルラグ溝321、322の開口面積が均一化される。また、第一ミドルラグ溝321の最大長さL21が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対してL21/Wb2≦0.60の関係を有する。また、第二ミドルラグ溝322の最大長さL22が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して0.20≦L22/Wb2の関係を有する。比L21/Wb2の下限および比L22/Wb2の上限は、特に限定がないが、比L21/L22の上記数値範囲により制約を受ける。
【0063】
ラグ溝の最大長さは、ラグ溝本体の延在長さであり、ラグ溝に形成された面取部や切欠部を除外して測定される。
【0064】
上記の構成では、第一および第二のラグ溝321、322が相互に異なる最大溝長さL21、L22を有するので、ラグ溝の最大溝長さが均一に設定された構成と比較して、タイヤの耐偏摩耗性能とスノートラクション性能とを効率的に両立できる。
【0065】
また、
図6の構成では、長尺(L21>L22)な第一ラグ溝321が、センター主溝22のジグザグ形状の長尺部に対向し、短尺な第二ラグ溝322が、センター主溝22のジグザグ形状の短尺部に対向する。具体的には、第一ラグ溝321の溝中心線(図示省略)の延長線がセンター主溝22のジグザグ形状の長尺部に交差し、第二ラグ溝322の溝中心線の延長線がセンター主溝22のジグザグ形状の短尺部に交差する。
【0066】
また、
図6の構成では、第一および第二のミドルラグ溝321、322の溝幅が、ショルダー主溝21に対する開口部からミドル陸部32内の終端部に向かって単調減少する。また、第一および第二のミドルラグ溝321、322の終端部が、直線形状あるいは円弧形状を有する第一および第二のエッジ部を接続して成るV字形状を有する。また、第一および第二のミドルラグ溝321、322が、タイヤ周方向の同一方向(
図6では、図面上方)に向かって溝幅を狭めた形状を有する。
【0067】
また、第一および第二のミドルラグ溝321、322が、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する。また、第一および第二のミドルラグ溝321、322とセンター主溝22のジグザグ形状の長尺部とが、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する。また、タイヤ周方向に対する第一および第二のミドルラグ溝321、322の溝中心線の傾斜角(図示省略)が、45[deg]以上90[deg]以下の範囲にある。
【0068】
また、
図6において、短尺な第二ミドルラグ溝322の最大溝幅W22が、第一ミドルラグ溝321の最大溝幅W21に対して1.00≦W22/W21≦1.50の関係を有し、また、1.05≦W22/W21≦1.35の関係を有することが好ましい。したがって、短尺な第二ミドルラグ溝322が長尺な第一ミドルラグ溝321よりも幅広な構造を有することが好ましい。かかる構成では、第一および第二のミドルラグ溝321、322の溝容積が均一化される。これにより、タイヤ周方向におけるミドル陸部32の剛性が均一化されて、ミドル陸部32の偏摩耗が抑制される。
【0069】
また、長尺な第一ミドルラグ溝321の最大溝幅W21が、5.0[mm]≦W21の範囲にあり、且つ、短尺な第二ミドルラグ溝322の最大溝幅W22が、W22≦15[mm]の範囲にある。最大溝幅W21の上限および最大溝幅W22の下限は、特に限定がないが、比W22/W21の上記数値範囲により制約を受ける。
【0070】
また、
図7において、短尺な第二ミドルラグ溝322の最大溝深さH22が、長尺な第一ミドルラグ溝321の最大溝深さH21に対して1.20≦H22/H21≦1.60の関係を有し、また、1.30≦H22/H21≦1.50の関係を有することが好ましい。かかる構成では、短尺な第二ミドルラグ溝322が長尺な第一ミドルラグ溝321よりも深いので、第一および第二のミドルラグ溝321、322の溝容積が均一化される。これにより、タイヤ周方向におけるミドル陸部32の剛性が均一化されて、ミドル陸部32の偏摩耗が抑制される。
【0071】
また、
図7において、長尺な第一ミドルラグ溝321の最大溝深さH21が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg1に対して0.50≦H21/Hg1の関係を有し、且つ、短尺な第二ミドルラグ溝322の最大溝深さH22が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg1に対してH22/Hg1≦0.95の関係を有する。比H21/Hg1の上限および比H22/Hg1の下限は、特に限定がないが、比H22/H21の上記数値範囲により制約を受ける。なお、
図6では、ミドルラグ溝321、322がショルダー主溝21よりも浅いので、トレッド平面視にてミドルラグ溝321、322とショルダー主溝21との境界部に、稜線が現れている。
【0072】
また、
図6に示すように、ミドル陸部32が、複数のサイプ323、324を有する。具体的に、第一サイプ323が、一方の端部にてミドルラグ溝321;322に開口してミドルラグ溝321;322を延長し、他方の端部にてセンター主溝22に開口する。また、第一サイプ323が、ストレート形状を有し、第一および第二のミドルラグ溝321、322に対して同一方向に傾斜する。また、第二サイプ324が、隣り合う第一および第二のミドルラグ溝321、322の間に配置され、ミドル陸部32をタイヤ幅方向に貫通して左右の主溝21、22に接続する。また、第二サイプ324が、第一および第二のミドルラグ溝321、322に対して同一方向に傾斜する。また、第二サイプ324が、ジグザグ形状を有し、第一および第二のミドルラグ溝321、322に対して同一方向に傾斜する。また、
図7に示すように、第一および第二のミドルラグ溝321、322に接続する第一サイプ323の最大深さH23が、第一および第二のミドルラグ溝321、322の最大溝深さH21、H22よりも浅い。
【0073】
また、
図3に示すように、ミドル陸部32のエッジ部が、ショルダー主溝21およびセンター主溝22の溝中心線に対して平行なジグザグ形状を有する。また、ミドル陸部32が、タイヤ周方向に連続するリブであり、ミドル陸部32をタイヤ幅方向に分断する貫通ラグ溝を備えていない。この点は、ブロック列であるショルダー陸部31との相異点である。なお、サイプ323、324は、タイヤ接地時に閉塞するため、陸部のリブとしての機能を阻害しない。
【0074】
[センター陸部]
図8は、
図4に記載したセンター陸部33を示す拡大図である。同図は、単体のセンター陸部33を抽出して示している。
図9は、
図8に記載したセンター陸部33の断面図である。同図は、センターラグ溝331(332)に沿った断面図を示している。
【0075】
図2および
図4に示すように、センター陸部33は、第一および第二のセンターラグ溝331、332を備える。
【0076】
第一および第二のセンターラグ溝331、332は、いわゆるセミクローズド構造を有し、一方の端部にてセンター主溝22に開口し、他方の端部にてセンター陸部33内で終端する。また、第一センターラグ溝331が、センター陸部33の一方のエッジ部に形成され、第二センターラグ溝332が、センター陸部33の他方のエッジ部に形成される。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332の双方が、センター主溝22のジグザグ形状のタイヤ赤道面CL側への最大振幅位置に開口する。言い換えると、第一および第二のセンターラグ溝331、332の双方が、センター陸部33のエッジ部において対応するセンター主溝22、22に対して凹となる位置に開口する。このとき、
図8に示すように、第一および第二のセンターラグ溝331、332の開口位置が、センター主溝22、22のジグザグ形状の長尺部側に偏在することが好ましい。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332が、タイヤ周方向に交互かつ千鳥状に配置される。
【0077】
また、
図8において、第一および第二のセンターラグ溝331、332の最大溝幅W31、W32が、5.0[mm]以上10[mm]以下の範囲にある。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332の最大溝幅W31、W32が、0.90≦W32/W31≦1.10の関係を有し、また、0.95≦W32/W31≦1.05の関係を有することが好ましい。したがって、第一および第二のセンターラグ溝331、332が、略同一の最大溝幅を有する。
【0078】
また、
図8において、タイヤ幅方向における第一および第二のセンターラグ溝331、332の最大長さL31、L32が、センター陸部33の最大接地幅Wb3に対して0.20≦L31/Wb3≦0.60および0.20≦L32/Wb3≦0.60の関係を有し、また、0.35≦L31/Wb3≦0.45および0.35≦L32/Wb3≦0.45の関係を有することが好ましい。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332の最大長さL31、L32が、0.90≦L32/L31≦1.10の関係を有することが好ましく、0.95≦L32/L31≦1.05の関係を有することがより好ましい。したがって、第一および第二のセンターラグ溝331、332が、略同一の最大溝長さを有する。
【0079】
また、
図8において、タイヤ周方向視における隣り合うセンターラグ溝331、332のオーバーラップ量Wrが、センター陸部33の最大接地幅Wb3に対して0≦Wr/Wb3≦0.30の関係を有し、0.10≦Wr/Wb3≦0.25の関係を有することが好ましい。
【0080】
また、
図8において、第一および第二のセンターラグ溝331、332のピッチ数が、センター主溝22のジグザグ形状のピッチ数に対して等しい。このため、一組のセンターラグ溝331、332が、センター主溝22の1つのピッチ内に配置される。また、隣り合うセンターラグ溝331、332のタイヤ周方向の距離D3が、センター主溝22のジグザグ形状の波長λ2に対して0.20≦D3/λ2≦0.50の関係を有する。
【0081】
また、
図8の構成では、第一および第二のセンターラグ溝331、332のそれぞれが、センター主溝22のジグザグ形状の長尺部に対向する。具体的には、第一および第二のセンターラグ溝331、332の溝中心線(図示省略)の延長線が、センター主溝22のジグザグ形状の長尺部に交差する。
【0082】
また、
図8の構成では、第一および第二のセンターラグ溝331、332の溝幅が、センター主溝22に対する開口部からセンター陸部33内の終端部に向かって単調減少する。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332の開口部が、部分的な面取部あるいは切欠部(図中の符号省略)を片側に有することにより、拡幅されている。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332の終端部が、直線形状あるいは円弧形状を有する第一および第二のエッジ部を接続して成るV字形状を有する。また、一組の第一および第二のセンターラグ溝331、332がセンター主溝22のジグザグ形状の1つの長尺部に配置され、これらのセンターラグ溝331、332が相互に対向する方向に湾曲した形状を有する。
【0083】
また、第一および第二のセンターラグ溝331、332が、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332とセンター主溝22のジグザグ形状の長尺部とが、タイヤ周方向に対して相互に逆方向に傾斜する。また、タイヤ周方向に対する第一および第二のセンターラグ溝331、332の溝中心線の傾斜角(図示省略)が、45[deg]以上90[deg]以下の範囲にある。
【0084】
また、
図9において、第一および第二のセンターラグ溝331、332の最大溝深さH31、H32が、センター主溝22の最大溝深さHg2に対して0.70≦H31/Hg2≦1.00および0.70≦H32/Hg2≦1.00の関係を有する。また、第一および第二のセンターラグ溝331、332の最大溝深さH31、H32が、0.90≦H32/H31≦1.10の関係を有することが好ましい。したがって、第一および第二のセンターラグ溝331、332が、略同一の最大溝深さを有する。なお、
図8の構成では、センターラグ溝331、332がセンター主溝22よりも浅いので、トレッド平面視にてセンターラグ溝331、332とセンター主溝22との境界部に、稜線が現れている。
【0085】
また、
図8に示すように、センター陸部33が、複数のサイプ333、334を有する。具体的に、第一サイプ333が、一方の端部にてセンターラグ溝331;332に開口してセンターラグ溝331;332を延長し、他方の端部にてセンター主溝22に開口する。また、第一サイプ333が、ストレート形状を有し、センターラグ溝331、332に対して同一方向に傾斜する。また、第二サイプ334が、隣り合う第一および第二のセンターラグ溝331、332の間に配置され、センター陸部33をタイヤ幅方向に貫通して左右のセンター主溝22、22に接続する。また、第二サイプ334が、センターラグ溝331、332に対して同一方向に傾斜する。また、第二サイプ334が、ジグザグ形状を有し、センターラグ溝331、332に対して同一方向に傾斜する。また、
図9に示すように、センターラグ溝331、332に接続する第一サイプ333の最大深さH33が、センターラグ溝331、332の最大溝深さH31、H32よりも浅い。
【0086】
また、
図4に示すように、センター陸部33のエッジ部が、左右のセンター主溝22の溝中心線に対して平行なジグザグ形状を有する。また、センター陸部33が、タイヤ周方向に連続するリブであり、センター陸部33をタイヤ幅方向に分断する貫通ラグ溝を備えていない。この点は、ブロック列であるショルダー陸部31との相異点である。なお、サイプは、タイヤ接地時に閉塞するため、陸部のリブとしての機能を阻害しない。
【0087】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、ジグザグ形状を有すると共にタイヤ周方向に延在する複数の主溝21、22と、隣り合う主溝21、22に区画されて成ると共にタイヤ周方向に連続するリブ構造を有する陸部32とを備える(
図2参照)。また、陸部32が、セミクローズド構造を有する第一および第二のラグ溝321、322を備える(
図3参照)。また、タイヤ幅方向における第一ラグ溝321の最大長さL21が、第二ラグ溝322の最大長さL22に対して1.30≦L21/L22≦2.30の関係を有する(
図6参照)。
【0088】
かかる構成では、(1)陸部32がタイヤ周方向に連続するリブであることにより、陸部32の剛性が確保されて、タイヤの耐摩耗性能および耐偏摩耗性能が確保される利点がある。また、(2)陸部32がセミクローズド構造を有するラグ溝321、322を備えることにより、タイヤのスノートラクション性能が確保される利点がある。また、(3)第一および第二のラグ溝321、322が相互に異なる最大溝長さL21、L22を有するので、ラグ溝の最大溝長さが均一に設定された構成と比較して、タイヤの耐偏摩耗性能とスノートラクション性能とを効率的に両立できる利点がある。
【0089】
また、この空気入りタイヤ1では、第一ラグ溝321の最大長さL21が、陸部32の最大接地幅Wb2に対してL21/Wb2≦0.60の関係を有する。また、第二ラグ溝322の最大長さL22が、陸部33の最大接地幅Wb2に対して0.20≦L22/Wb2の関係を有する。これにより、第一および第二のラグ溝321、322の最大長さL21、L22が適正化される利点がある。
【0090】
また、この空気入りタイヤ1では、第一および第二のラグ溝321、322の双方が、陸部32のタイヤ接地端T側のエッジ部に開口する(
図2参照)。これにより陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が確保される利点がある。
【0091】
また、この空気入りタイヤ1では、第一および第二のラグ溝321、322が、主溝21のジグザグ形状のタイヤ赤道面CL側への最大振幅位置に開口する(
図3参照)。かかる構成では、ラグ溝が主溝のジグザグ形状のタイヤ接地端側への最大振幅位置に開口する構成と比較して、陸部32の最大接地幅Wb2が増加して陸部32の偏摩耗が効果的に抑制される利点がある。
【0092】
また、この空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝322の最大溝幅W22が、第一ラグ溝321の最大溝幅W21に対して1.05≦W22/W21≦1.50の関係を有する(
図6参照)。かかる構成では、短尺な第二ラグ溝322の最大溝幅W22が長尺な第一ラグ溝321の最大溝幅W21よりも広いので、第一および第二のラグ溝321、322の溝容積が均一化される。これにより、タイヤ周方向における陸部32の剛性が均一化されて、陸部32の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0093】
また、この空気入りタイヤ1では、第一ラグ溝321の最大溝幅W21が、4.0[mm]≦W21の範囲にあり、且つ、第二ラグ溝322の最大溝幅W22が、W22≦15[mm]の範囲にある(
図6参照)。これにより、第一および第二のラグ溝321、322の最大溝幅W21、W22が適正化される利点がある。
【0094】
また、この空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝322の最大溝深さH22が、第一ラグ溝321の最大溝深さH21に対して1.20≦H22/H21≦1.60の関係を有する。かかる構成では、短尺な第二ラグ溝322の最大溝さH22が長尺な第一ラグ溝321の最大溝さH21よりも深いので、第一および第二のラグ溝321、322の溝容積が均一化される。これにより、タイヤ周方向における陸部32の剛性が均一化されて、陸部32の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0095】
また、この空気入りタイヤ1では、第一ラグ溝321の溝深さH21が、主溝21の最大溝深さHg1に対して0.50≦H21/Hg1の関係を有し、且つ、第二ラグ溝322の溝深さH22が、主溝22の最大溝深さHg1に対してH22/Hg1≦0.95の関係を有する。これにより、第一および第二のラグ溝321、322の最大溝深さH21、W22が適正化される利点がある。
【0096】
また、この空気入りタイヤ1では、陸部32を区画する主溝21、22のうちのタイヤ接地端T側の主溝21が、略同一長さの直線部を接続して成るジグザグ形状を有すると共に、直線部の周方向長さLg1が、ジグザグ形状の波長λ1に対して0.30≦Lg1/λ1≦0.70の関係を有する(
図3参照)。また、タイヤ赤道面CL側の主溝22が、長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有すると共に、長尺部の周方向長さLg2が、ジグザグ形状の波長λ2に対して0.70≦Lg2/λ2≦0.90の関係を有する。かかる構成では、トレッド部ショルダー領域のトラクション性が向上して、タイヤのスノー性能が効果的に高まる利点がある。一方で、陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部の剛性が確保されて、陸部32のセンター摩耗が抑制される。これにより、タイヤのスノー性能と耐偏摩耗性能とが両立する利点がある。
【0097】
また、この空気入りタイヤ1では、主溝21、22のジグザグ形状の波長λ1、λ2が、1.50≦λ2/λ1≦2.00の関係を有する(
図3参照)。上記下限により、長い波長λ2による陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部の剛性の補強作用が確保される利点がある。上記上限により、陸部32の左右のエッジ部の剛性差が緩和される利点がある。
【0098】
また、この空気入りタイヤ1では、第一および第二のラグ溝321、322の双方が、陸部32のタイヤ接地端T側のエッジ部に開口し、且つ、第一ラグ溝321が、タイヤ赤道面CL側の主溝22の長尺部に対向して配置される(
図3参照)。かかる構成では、長尺な第一ラグ溝321がタイヤ赤道面CL側の主溝22の短尺部に対向して配置される構成と比較して、陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部の剛性が高まる。これにより、陸部32のセンター摩耗が抑制される利点がある。
【0099】
また、この空気入りタイヤ1では、第一および第二のラグ溝321、322の双方が、陸部32のタイヤ接地端T側のエッジ部に開口し、且つ、タイヤ周方向に対する第一ラグ溝321の傾斜方向が、タイヤ赤道面CL側の主溝22の長尺部の傾斜方向に対して同一方向である(
図3参照)。かかる構成では、長尺な第一ラグ溝321の傾斜方向がタイヤ赤道面CL側の主溝22の長尺部の傾斜方向に対して逆方向である構成と比較して、陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部の剛性が高まる。これにより、陸部32のセンター摩耗が抑制される利点がある。
【0100】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ接地端T側の主溝21が、タイヤ幅方向の最外側にあるショルダー主溝である(
図2参照)。これにより、陸部21を区画する左右の主溝21、22の上記作用が効果的に発揮される利点がある。
【0101】
また、この空気入りタイヤ1は、ショルダー主溝21に区画されたショルダー陸部31を備える(
図2参照)。また、ショルダー陸部21が、ショルダー陸部31を貫通する複数のラグ溝311と、ラグ溝311に区画された複数のブロック312とを備える。これにより、トレッド部ショルダー領域のスノートラクション性が高まる利点がある。
【0102】
また、この空気入りタイヤ1は、車両のドライブ軸に装着される重荷重用タイヤである。かかる重荷重用タイヤを適用対象とすることにより、タイヤのスノートラクション性能および耐偏摩耗性能の向上効果を顕著に得られる利点がある。
【実施例】
【0103】
図10および
図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0104】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)スノートラクション性能および(2)耐偏摩耗性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ11R22.5の試験タイヤがJATMAの規定リムに組み付けられ、この試験タイヤにJATMAの規定内圧および規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である2-D(駆動二輪)のトラクターヘッドのドライブ軸に装着される。
【0105】
(1)スノートラクション性能に関する評価は、試験車両が雪路試験場のスノー路面を走行し、走行速度が5[km/h]から20[km/h]に至るまでの加速タイムが測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0106】
(2)耐偏摩耗性能に関する評価は、試験車両が所定の舗装路を3万[km]走行した後に、ヒール・アンド・トゥ摩耗量が測定されて指数評価が行われる。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0107】
実施例の試験タイヤは、
図1および
図2の構成を備え、ジグザグ形状を有する4本の主溝21、22と、これらの主溝21、22に区画された5列の陸部31~33とを備える。また、主溝21、22の最大溝幅Wg1、Wg2が9.0[mm]であり、主溝21、22の最大溝深さHg1、Hg2が21[mm]である。また、ショルダー主溝21のジグザグ形状の波長λ1が40[mm]であり、長尺側の直線部の長さLg1が25[mm]である。また、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2およびセンター陸部33の最大接地幅Wb3とタイヤ接地幅TWとの比が20[%]である。また、タイヤ接地幅TWが240[mm]である。
【0108】
従来例の試験タイヤは、
図1および
図2の構成において、主溝21、22がストレート形状を有する。
【0109】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤのスノートラクション性能および耐偏摩耗性能が両立することが分かる。
【符号の説明】
【0110】
1 空気入りタイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;121 ローアーフィラー;122 アッパーフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141 高角度ベルト;142、143 交差ベルト;144 ベルトカバー;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;21 ショルダー主溝;22 センター主溝;31 ショルダー陸部;311 ショルダーラグ溝;312 ショルダーブロック;313 周方向細溝;314 切欠部;32 ミドル陸部;321 第一ミドルラグ溝;322 第二ミドルラグ溝;323 第一サイプ;324 第二サイプ;33 センター陸部;331 第一センターラグ溝;332 第二センターラグ溝;333 第一サイプ;334 第二サイプ