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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】円筒研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/04 20060101AFI20230511BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20230511BHJP
   B24B 49/08 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
B24B5/04
B24B41/06 J
B24B49/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019175843
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049626
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 雄太
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-71493(JP,A)
【文献】特開昭52-41991(JP,A)
【文献】特開昭62-246403(JP,A)
【文献】特公昭46-19322(JP,B1)
【文献】特開平5-306718(JP,A)
【文献】特開2012-107744(JP,A)
【文献】特開2018-194123(JP,A)
【文献】特開2002-36104(JP,A)
【文献】特開平2-176540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/04
B24B 41/06
B24B 49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物の両端を主軸と心押軸とにより回転中心で支持すると共に回転を伝達する主軸装置と、前記工作物の外周を研削する砥石車を支持すると共に回転駆動する砥石台とを備え、前記工作物と前記砥石車とを回転させながら、前記工作物に対して前記砥石車を接近離間させることで前記工作物の外周を研削する円筒研削装置において、
前記主軸及び前記心押軸の少なくとも一方が周方向に複数の静圧ポケットを有する複数の静圧軸受によって軸線方向の複数箇所で静圧支持される円筒研削装置であって、
前記主軸又は前記心押軸を静圧支持する前記複数の静圧軸受のうち、特定の前記静圧軸受において特定の前記静圧ポケット内のポケット圧力を検出する圧力センサと、
前記特定の静圧ポケットへの流体の供給圧力を他の前記静圧ポケットへの供給圧力とは独立して可変する供給圧力可変部と、
前記主軸又は前記心押軸の前記工作物に対する支持位置への所定の荷重負荷により前記支持位置が初期位置から位置変化したときの前記特定の静圧ポケット内のポケット圧力に関する第1データと、前記所定の荷重負荷による位置変化後の前記支持位置を前記初期位置へ位置補正するために前記特定の静圧ポケットへの供給圧力を制御するための第2データとを対応付けて記憶するデータベースと、
前記工作物を前記主軸及び前記心押軸により支持したときの前記圧力センサの検出結果より前記第1データを求めると共に、前記データベースより取得した前記第1データに対応する前記第2データを用いて前記供給圧力可変部を制御することにより、前記支持位置の位置補正を行う位置補正部と、
を備える、円筒研削装置。
【請求項2】
前記データベースは、前記所定の荷重負荷前と前記所定の荷重負荷後との前記ポケット圧力の変化を示す前記第1データとしてのポケット圧力第1変化値と、前記所定の荷重負荷後において前記位置補正前と前記位置補正後との前記ポケット圧力の変化を示すポケット圧力第2変化値とを対応付けて記憶するものであり、
前記位置補正部は、前記圧力センサによる前記工作物の支持前及び支持後の圧力検出結果より前記ポケット圧力第1変化値を求め、前記データベースより前記ポケット圧力第1変化値に対応する前記ポケット圧力第2変化値を取得して、前記ポケット圧力を前記ポケット圧力第2変化値だけ変化させるように前記供給圧力可変部を制御する、請求項1に記載の円筒研削装置。
【請求項3】
前記データベースは、前記所定の荷重負荷前と前記所定の荷重負荷後との前記ポケット圧力の変化を示す前記第1データとしてのポケット圧力第1変化値と、前記位置補正後の前記ポケット圧力を示す前記第2データとしての位置補正時ポケット圧力とを対応付けて記憶するものであり、
前記位置補正部は、前記圧力センサによる前記工作物の支持前及び支持後の圧力検出結果より前記ポケット圧力第1変化値を求め、前記データベースより前記ポケット圧力第1変化値に対応する前記位置補正時ポケット圧力を取得して、前記ポケット圧力が前記位置補正時ポケット圧力と等しくなるように前記供給圧力可変部を制御する、請求項1に記載の円筒研削装置。
【請求項4】
前記データベースは、前記所定の荷重負荷前と前記所定の荷重負荷後との前記ポケット圧力の変化を示す前記第1データとしてのポケット圧力第1変化値と、前記位置補正後の前記特定の静圧ポケットへの供給圧力を示す前記第2データとしての位置補正時供給圧力とを対応付けて記憶するものであり、
前記位置補正部は、前記圧力センサによる前記工作物の支持前及び支持後の圧力検出結果より前記ポケット圧力第1変化値を求め、前記データベースより前記ポケット圧力第1変化値に対応する前記位置補正時供給圧力を取得して、前記供給圧力可変部に対し前記特定の静圧ポケットへの供給圧力として前記位置補正時供給圧力を設定する、請求項1に記載の円筒研削装置。
【請求項5】
前記データベースは、前記所定の荷重負荷後における前記位置補正前の前記ポケット圧力を示す前記第1データとしての荷重負荷後ポケット圧力と、前記位置補正後の前記ポケット圧力を示す前記第2データとしての位置補正時ポケット圧力とを対応付けて記憶するものであり、
前記位置補正部は、前記圧力センサによる前記工作物の支持後の圧力検出結果を前記荷重負荷後ポケット圧力とし、前記データベースより前記荷重負荷後ポケット圧力に対応する前記位置補正時ポケット圧力を取得して、前記ポケット圧力が前記位置補正時ポケット圧力と等しくなるように前記供給圧力可変部を制御する、請求項1に記載の円筒研削装置。
【請求項6】
前記データベースは、前記所定の荷重負荷後における前記位置補正前の前記ポケット圧力を示す前記第1データとしての荷重負荷後ポケット圧力と、前記位置補正後の前記特定の静圧ポケットへの供給圧力を示す前記第2データとしての位置補正時供給圧力とを対応付けて記憶するものであり、
前記位置補正部は、前記圧力センサによる前記工作物の支持後の圧力検出結果を前記荷重負荷後ポケット圧力とし、前記データベースより前記荷重負荷後ポケット圧力に対応する前記位置補正時供給圧力を取得して、前記供給圧力可変部に対し前記特定の静圧ポケットへの供給圧力として前記位置補正時供給圧力を設定する、請求項1に記載の円筒研削装置。
【請求項7】
前記特定の静圧軸受は、前記複数の静圧軸受のうち前記工作物に対する支持位置側又は反支持位置側に配置された1以上の静圧軸受である、請求項1乃至6の何れか一項に記載の円筒研削装置。
【請求項8】
前記特定の静圧ポケットは、前記特定の静圧軸受において周方向に配置される前記複数の静圧ポケットのうち、重力方向下側又は上側に配置された1以上の静圧ポケットである、請求項1乃至7の何れか一項に記載の円筒研削装置。
【請求項9】
前記供給圧力可変部は、ポンプから供給される流体を前記特定の静圧ポケットへ導く流路上に設けられた可変バルブである、請求項1乃至8の何れか一項に記載の円筒研削装置。
【請求項10】
前記供給圧力可変部によって可変される前記供給圧力に対して、軸受特性が最適となるように前記特定の静圧ポケットへの流体の絞りを自動調整する絞り調整機構を備える、請求項1乃至9の何れか一項に記載の円筒研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作物の両端を主軸と心押軸とにより回転中心で支持すると共に回転を伝達する主軸装置を備え、主軸と心押軸とを静圧軸受で支持するように構成された円筒研削装置が広く用いられている(例えば、特許文献1等参照。)。上述した従来の円筒研削盤では、大きな平行度の誤差やテーパ研削のための荒い調整は上下のテーブルのうち上側テーブルを旋回させて行い、細かい調整は心押軸を静圧軸受で支持し、砥石切込方向の一対の対向する静圧パッドの供給圧力を制御して心押軸を砥石切込方向に移動させることにより行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-241050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、円筒研削装置において静圧軸受を用いた主軸及び心押軸で重量が大きい工作物を支持する場合、主軸及び心押軸の工作物支持位置が工作物の回転中心より重力方向に変位し、心ずれにより工作物の加工精度が悪化する恐れがある。このため、工作物を支持しない状態で主軸及び心押軸の工作物支持位置が回転中心に対して自重方向とは反対側の上方へ所定長さだけ高くなるように予め位置調整することが行われている。
【0005】
しかしながら、上述した位置調整においては、工作物支持位置の変化が工作物重量のみで決定されるため、設計上設定された工作物重量と実際に主軸装置で支持する工作物の重量とに大きな差がある場合、工作物支持位置と工作物回転中心とのずれが大きくなり、これに起因して工作物の加工精度が低下することが懸念される。
【0006】
本発明は、工作物の重量に関わらず工作物を正確に回転中心で支持して加工精度の安定性を確保することができる円筒研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る円筒研削装置は、工作物の両端を主軸と心押軸とにより回転中心で支持すると共に回転を伝達する主軸装置と、前記工作物の外周を研削する砥石車を支持すると共に回転駆動する砥石台とを備え、前記工作物と前記砥石車とを回転させながら、前記工作物に対して前記砥石車を接近離間させることで前記工作物の外周を研削する円筒研削装置において、前記主軸及び前記心押軸の少なくとも一方が周方向に複数の静圧ポケットを有する複数の静圧軸受によって軸線方向の複数箇所で静圧支持される円筒研削装置である。
【0008】
そして、円筒研削装置は、前記主軸又は前記心押軸を静圧支持する前記複数の静圧軸受のうち、特定の前記静圧軸受において特定の前記静圧ポケット内のポケット圧力を検出する圧力センサと、前記特定の静圧ポケットへの流体の供給圧力を他の前記静圧ポケットへの供給圧力とは独立して可変する供給圧力可変部と、前記主軸又は前記心押軸の前記工作物に対する支持位置への所定の荷重負荷により前記支持位置が初期位置から位置変化したときの前記特定の静圧ポケット内のポケット圧力に関する第1データと、前記所定の荷重負荷による位置変化後の前記支持位置を前記初期位置へ位置補正するために前記特定の静圧ポケットへの供給圧力を制御するための第2データとを対応付けて記憶するデータベースと、前記工作物を前記主軸及び前記心押軸により支持したときの前記圧力センサの検出結果より前記第1データを求めると共に、前記データベースより取得した前記第1データに対応する前記第2データを用いて前記供給圧力可変部を制御することにより、前記支持位置の位置補正を行う位置補正部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、工作物を主軸及び心押軸により支持させて工作物の重量によって支持位置が変化すると、圧力センサにより特定の静圧ポケット内のポケット圧力を検出し、その検出結果より第1データを求めると共に、第1データに対応する第2データをデータベースより取得し、第2データを用いて供給圧力可変部を制御して支持位置を回転中心に復帰させる位置補正を行う。よって、工作物の重量に関わらず工作物を正確に回転中心で支持して加工精度の安定性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る円筒研削装置の全体構成を示す平面図である。
図2】工作物を支持する主軸台及び心押台を示す正面図である。
図3】心押台の静圧軸受構造を示す模式図である。
図4】データベースの作成準備における測定結果を示す表である。
図5】実施形態に係るデータベースの記憶内容を示す図である。
図6】実施形態に係る位置補正処理の流れを示すフローチャートである。
図7】荷重負荷及び位置補正に伴う軸線の変化を示す模式図である。
図8】第1変形例に係るデータベースの記憶内容を示す図である。
図9】第1変形例に係る位置補正処理の流れを示すフローチャートである。
図10】第2変形例に係るデータベースの記憶内容を示す図である。
図11】第2変形例に係る位置補正処理の流れを示すフローチャートである。
図12】第3変形例に係るデータベースの記憶内容を示す図である。
図13】第3変形例に係る位置補正処理の流れを示すフローチャートである。
図14】第4変形例に係るデータベースの記憶内容を示す図である。
図15】第4変形例に係る位置補正処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の円筒研削装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
(1.円筒研削装置の全体構成)
本実施形態の円筒研削装置1は、軸状の工作物Wの研削が可能な砥石台トラバース型円筒研削盤である。円筒研削装置1は、図1に示すように、主として、ベッド10と、主軸台20と、心押台30と、砥石支持装置40と、制御装置60と、を備えて構成される。尚、図1において、Z軸方向は、トラバース方向であり、X軸方向は、トラバース方向と直角な水平方向であり、Y軸方向は、Z軸方向及びX軸方向と直角な鉛直方向である。
【0012】
ベッド10は、平面矩形状に形成されており、設置面(床)上に固定される。このベッド10の上面には、砥石支持装置40を構成する後述の砥石台トラバースベース41を摺動可能とする一対のZ軸ガイドレール11a,11bが、互いに平行にZ軸方向に沿って延設されて固定されている。一対のZ軸ガイドレール11a,11bの間には、砥石台トラバースベース41をZ軸方向に駆動するためのZ軸ボールねじ11cが配置されている。そして、ベッド10の上面には、Z軸ボールねじ11cを回転駆動するZ軸モータ11dが固定されている。
【0013】
主軸台20は、図1図2に示すように、主軸台本体21と、主軸22と、主軸モータ23とを備えている。主軸台本体21は、内部に静圧軸受としての前部軸受25及び後部軸受26が設けられ、挿通された主軸22を回転可能に静圧支持している。主軸台本体21は、主軸22の軸線方向がZ軸方向を向き、且つ、一対のZ軸ガイドレール11a,11bと平行になるように、ベッド10の上面に固定されている。
【0014】
主軸22の一端(図1において左側)には、主軸モータ23が設けられている。これにより、主軸22は、主軸モータ23によって主軸台本体21に対してZ軸周りに回転駆動される。尚、主軸モータ23には、主軸モータ23の回転角を検出するエンコーダが設けられている。又、主軸22の他端(図1において紙面右側)には、軸状の工作物Wの軸線方向の一端を支持する主軸センタ24が設けられている。
【0015】
心押台30は、心押台本体31と、心押軸32とを備えている。心押台本体31は、内部に静圧軸受としての前部軸受35及び後部軸受36が設けられ、心押センタ34が挿通された心押軸32を回転可能に静圧支持している。心押台本体31は、心押軸32の軸線方向がZ軸方向を向くように、且つ、心押軸32の回転軸が主軸22の回転軸と同軸となるようにベッド10の上面に固定されている。即ち、心押センタ34は、主軸センタ24とともに工作物Wの軸線方向の両端を支持し、工作物WがZ軸周りに回転可能となるように配置される。心押センタ34は、工作物Wの長さに応じて、心押台本体31の端面からの突出量の変更が可能となるように構成されている。尚、主軸台20と心押台30とで主軸装置Mが構成される。
【0016】
砥石支持装置40は、砥石台トラバースベース41と、砥石台42と、円盤状の砥石車43と、を備えている。砥石台トラバースベース41は、矩形の平板状に形成されており、ベッド10の上面に設けられた一対のZ軸ガイドレール11a,11b上を摺動可能に設けられている。
【0017】
砥石台トラバースベース41は、Z軸ボールねじ11cのナット部材(図示省略)に連結されており、Z軸モータ11dの駆動により一対のZ軸ガイドレール11a,11bに沿って移動する。尚、Z軸モータ11dには、Z軸モータ11dの回転角を検出するエンコーダが設けられている。
【0018】
砥石台トラバースベース41の上面には、砥石台42を摺動可能とする一対のX軸ガイドレール41a,41bが、互いに平行に、且つ、X軸方向に沿って固定されて延設されている。砥石台トラバースベース41の上面に固定された一対のX軸ガイドレール41a,41bの間には、砥石台42をX軸方向に駆動するためのX軸ボールねじ41cが配置されており、X軸ボールねじ41cを回転駆動するX軸モータ41dが配置されている。尚、X軸モータ41dには、X軸モータ41dの回転角を検出するエンコーダが設けられている。
【0019】
砥石台42は、砥石台トラバースベース41の上面に設けられた一対のX軸ガイドレール41a,41b上を摺動可能となるように設けられている。砥石台42は、X軸ボールねじ41cのナット部材(図示省略)に連結されており、X軸モータ41dの駆動により一対のX軸ガイドレール41a,41bに沿って移動可能とされている。これにより、砥石台42は、ベッド10、主軸台20及び心押台30に対して、X軸方向及びZ軸方向(トラバース送り方向)に相対移動可能に構成されている。
【0020】
制御装置60は、Z軸モータ11d及びX軸モータ41dを含む各モータの駆動を制御する装置である。制御装置60は、各モータを駆動させることにより、工作物W及び砥石車43をZ軸周りに回転させるとともに工作物Wに対する砥石車43のZ軸方向及びX軸方向への相対位置を変更して工作物Wの外周面の研削を行う。
【0021】
(2.主軸装置Mの静圧軸受機構)
次に、主軸装置Mに設けられる静圧軸受機構について説明する。尚、主軸台20と心押台30とは、前後方向における各部の配置が逆になる点を除いて同一構造の静圧軸受機構が設けられているので、以下、心押台30の静圧軸受構造についてのみ説明し、主軸台20の静圧軸受構造についての説明を省略する。心押台30の静圧軸受機構は、図3に示すように、ポンプPと、前部軸受35と、後部軸受36と、圧力センサ37と、可変バルブ38と、コントローラ39とを備えて構成される。
【0022】
心押台30の静圧軸受機構は、心押台本体31内部で工作物Wに対する支持位置側(心押センタ34先端に近い側)に設けられる前部軸受35と、反支持位置側(心押センタ34先端から遠い側)に設けられた後部軸受36とを介して、ポンプPから供給される流体によって心押軸32を静圧支持する機構である。前部軸受35の内周には、4個の静圧ポケットが周方向に同一間隔で配置されて工作物Wの外周面に対向している。具体的には、心押軸32をY軸方向に挟んで対向する両側(すなわち、上下)に上側静圧ポケット351及び下側静圧ポケット352が設けられ、心押軸32をX軸方向に挟んで対向する両側に図示しない2つの静圧ポケットが設けられている。
【0023】
上側静圧ポケット351には、ポンプPから供給される一定流量の流体が固定絞り353を介して供給される。心押軸32をX軸方向に挟む両側の2つの静圧ポケットにも、上側静圧ポケット351と同様に固定絞りが接続されている。一方、下側静圧ポケット352には、ポンプPから可変バルブ38を経て供給される流体が絞り調整機構354を介して供給される。絞り調整機構354は、可変バルブ38によって可変される供給圧力に対して、軸受特性が最適となるように下側静圧ポケット352への流体の絞りを自動調整する機能を有する。絞り調整機構354は、並列に配置された流量の異なる複数の固定絞り3541と、複数の固定絞り3541に対して上流側に設けられて複数の固定絞り3541の何れかに流路を切り換える切換え弁3542とを備えて構成される。
【0024】
後部軸受36の内周には、前部軸受35と同様に、4個の静圧ポケットが周方向に同一間隔で配置されて工作物Wの外周面に対向している。具体的には、心押軸32をY軸方向に挟む両側(すなわち、上下)に上側静圧ポケット361及び下側静圧ポケット362が設けられ、心押軸32をX軸方向に挟む両側に図示しない2つの静圧ポケットが設けられている。上側静圧ポケット361、下側静圧ポケット362、及び心押軸32をX軸方向に挟む両側の2つの静圧ポケットには、ポンプPから供給される一定流量の流体が固定絞り353を介して供給される。つまり、前部軸受35及び後部軸受36に設けられる15個の静圧ポケットのうち、前部軸受35の下側静圧ポケット352のみポンプPからの供給圧力が可変であり、それ以外の静圧ポケットへのポンプPからの供給圧力は一定である。
【0025】
圧力センサ37は、公知の圧力センサによって構成され、前部軸受35の下側静圧ポケット352内の圧力を検出し、検出結果をコントローラ39へ出力する。可変バルブ38は、公知の可変絞り弁によって構成され、ポンプPから前部軸受35の下側静圧ポケット352に接続される絞り調整機構354へ流体を導く流路上に設けられる。可変バルブ38は、コントローラ39によって可変駆動される。
【0026】
コントローラ39は、電子制御回路であって、圧力センサ37から圧力検出信号が入力されると共に、可変バルブ38を制御して下側静圧ポケット352への流体の供給圧力PS'を可変する。また、コントローラ39は、心押軸32の位置補正制御に用いるデータベース391を内蔵している。
【0027】
(3.データベース391の作成準備及び記憶内容)
次に、データベース391の作成準備として実施する測定の内容と、データベース391に記憶される内容について説明する。データベース391の作成準備として、工作物W支持位置(主軸センタ24及び心押センタ34先端)への荷重負荷を様々な負荷重量で実施し、特定の静圧ポケット(心押台30では静圧ポケット352)内のポケット圧力測定、支持位置の位置変化の測定、支持位置の位置補正(回転中心位置に一致させる補正)時の特定の静圧ポケット(心押台30では静圧ポケット352)への供給圧力及びポケット圧力の測定を行う。
【0028】
図4の表は、様々な負荷重量(0及びWn)での測定パターンを示している(nは1~xの整数)。この表において、特定の静圧ポケット(心押台30では静圧ポケット352)への供給圧力を全パターンで一定のPS0、パターンnの負荷重量をWn、荷重負荷前ポケット圧力をPp000、荷重負荷後ポケット圧力をPp0n、ポケット圧力第1変化値をΔPp0n、位置変化(=位置補正量)をxn、位置補正時供給圧力をPsn、位置補正時ポケット圧力をPp1n、ポケット圧力第2変化値をΔPp1nでそれぞれ表している。尚、ポケット圧力第1変化値が本発明の第1データに、ポケット圧力第2変化値が第2データにそれぞれ相当するものである。
【0029】
具体的には、荷重負荷前ポケット圧力Pp000は、工作物W支持位置(心押センタ34先端)へ荷重負荷を行わない時のポケット圧力(静圧ポケット352内の圧力)の測定値である。荷重負荷後ポケット圧力Pp0nは、工作物W支持位置へ負荷重量Wnの荷重負荷を行った時のポケット圧力の測定値である。ポケット圧力第1変化値ΔPp0nは、荷重負荷前のポケット圧力と荷重負荷後のポケット圧力との変化を表し、ΔPp0n=Pp0n-Pp000で算出される。位置補正時ポケット圧力Pp1nは、工作物W支持位置(高さ)をxn位置補正した時のポケット圧力の測定値である。ポケット圧力第2変化値ΔPp1nは、荷重負荷の状態で位置補正するために必要なポケット圧力の変化を表し、ΔPp1n=Pp1n-Pp0nで算出される。
【0030】
例えば、負荷重量を0としたとき、荷重負荷前ポケット圧力の測定値Pp000、荷重負荷後ポケット圧力の測定値はPp000、ポケット圧力第1変化値は0、位置変化の測定値(=位置補正量)は0、位置補正時供給圧力の測定値はPs0、位置補正時ポケット圧力の測定値はPp100(=Pp000)、ポケット圧力第2変化値は0である。
【0031】
また、負荷重量W1としたとき、荷重負荷前ポケット圧力の測定値Pp000、荷重負荷後ポケット圧力の測定値はPp001、ポケット圧力第1変化値はΔPp001(=Pp001-Pp000)、位置変化の測定値(=位置補正量)はx1、位置補正時供給圧力の測定値はPs1、位置補正時ポケット圧力の測定値はPp101、ポケット圧力第2変化値はΔPp101(=Pp101-Pp001)である。以下、負荷重量W2~Wxも同様である。
【0032】
以上の測定結果に基づいて、データベース391を作成する。本実施形態では、データベース391として、様々な負荷重量Wnにおけるポケット圧力第1変化値ΔPp0nとポケット圧力第2変化値ΔPp1nとを対応付けて記憶する。図5に本実施形態におけるデータベース391の記憶内容の例を示す。本実施形態のデータベース391では、ポケット圧力第1変化値0~ΔPp0x(xは1以上の整数)と、ポケット圧力第2変化値0~ΔPp1xとが対応付けて記憶されている。
【0033】
(4.位置補正処理の流れ)
次に、主軸センタ24及び心押センタ34における工作物Wの支持位置を補正する処理の流れについて図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は本実施形態に係る支持位置補正処理の流れを示すフローチャートである。図7は、荷重負荷及び位置補正に伴う心押軸32又は主軸22の軸線の変化を示す模式図である。尚、主軸22では、括弧書きにて示すように前後方向が心押軸32とは逆になる。まず、ステップ1(以下、S1と略記する。他のステップも同様)で、荷重負荷前の静圧ポケット352内の圧力(荷重負荷前ポケット圧力)を圧力センサ37により検出する。この状態で、図7上図に示すように、心押軸32又は主軸22の軸線は回転中心Cと一致し、工作物支持位置Q(心押センタ34又は主軸センタ24の先端)は回転中心と同じ高さに位置している。
【0034】
次に、S2で、主軸センタ24先端と心押センタ34先端とで工作物Wを挟んで支持する。これにより、支持位置Q(心押センタ34又は主軸センタ24先端)に工作物Wの重量によって荷重負荷され、図7中図に示すように、心押軸32又は主軸22の軸線は一点鎖線C1に示すように下向きに傾斜すると共に緩やかに曲がりが生じ、支持位置Qは回転中心Cよりも下方へh分移動する。尚、hは、高さ方向の長さであって、例えば、数μm~数十μmである。
【0035】
次に、S3で、荷重負荷後の静圧ポケット352内の圧力(荷重負荷後ポケット圧力)を圧力センサ37により検出する。続いて、S4で、荷重負荷後ポケット圧力から荷重負荷前ポケット圧力を減算することにより、ポケット圧力第1変化値を算出する。
【0036】
次に、S5で、ポケット圧力第1変化値に基づいて、データベース391を参照してポケット圧力第1変化値に対応するポケット圧力第2変化値を取得する。例えば、ポケット圧力第1変化値がΔPp005の場合、図5に示すデータベース391を参照して、ポケット圧力第2変化値としてΔPp105を取得する。
【0037】
次に、S6で、可変バルブ38を作動させて、静圧ポケット352への供給圧力を徐々に増加させる。続いて、S7で、静圧ポケット352内のポケット圧力を圧力センサ37により検出する。そして、S8で、荷重負荷後ポケット圧力を基準とする圧力変化がポケット圧力第2変化値よりも小さい場合(S8:No)、S6へ戻り、S7~S8を繰り返して供給圧力を徐々に増加させていく。S8で、圧力変化がポケット圧力第2変化値に達した場合(S8:Yes)、S9で、可変バルブ38の作動を停止して供給圧力Ps’を固定し、位置補正処理を終了する。これにより、図7下図に示すように、心押軸32又は主軸22の軸線が一点鎖線C2で表す位置まで上昇し、支持位置Qが回転中心Cと同じ高さに補正される。
【0038】
また、静圧ポケット352に供給圧力Ps’が設定されると、絞り調整機構354では、供給圧力Ps’に応じて切換え弁3542により自動的に流路が切換えられて、軸受として最適な絞りが複数の固定絞り3541の中から選択される。
【0039】
(5.まとめ)
上述したように、本実施形態によれば、コントローラ39は、圧力センサ37による工作物Wの支持前及び支持後の圧力検出結果よりポケット圧力第1変化値を求め、データベース391よりポケット圧力第1変化値に対応するポケット圧力第2変化値を取得して、下側静圧ポケット352内のポケット圧力をポケット圧力第2変化値だけ変化させるように可変バルブ38を制御し、工作物Wの重量により変位した支持位置を回転中心へ復帰させる位置補正を行う。よって、工作物Wの重量に関わらず工作物Wを正確に回転中心で支持して加工精度の安定性を確保することができるという効果を奏する。
【0040】
特に、データベース391は、所定の荷重負荷前と所定の荷重負荷後とのポケット圧力の変化を示すポケット圧力第1変化値と、所定の荷重負荷後において位置補正前と位置補正後とのポケット圧力の変化を示すポケット圧力第2変化値とを対応付けて記憶するものである。そして、位置補正部としてのコントローラ39は、圧力センサ37による工作物Wの支持前及び支持後の圧力検出結果よりポケット圧力第1変化値を求め、データベース391よりポケット圧力第1変化値に対応するポケット圧力第2変化値を取得して、下側静圧ポケット352内のポケット圧力をポケット圧力第2変化値だけ変化させるように供給圧力可変部としての可変バルブ38を制御する。
【0041】
この構成によれば、工作物Wに対する支持位置への所定の荷重負荷により支持位置が初期位置から位置変化したときの特定の静圧ポケット(下側静圧ポケット352)内のポケット圧力に関する第1データとして、荷重負荷前後のポケット圧力の差分であるポケット圧力第1変化値を用いるので、機械ばらつきの影響なく荷重負荷に伴う位置変化を正確に反映させることができる。また、所定の荷重負荷による位置変化後の支持位置を初期位置へ位置補正するために特定の静圧ポケット(下側静圧ポケット352)への供給圧力を制御するための第2データとして、位置補正前後のポケット圧力の差分であるポケット圧力第2変化値を用いるので、機械ばらつきの影響なく正確に位置補正することができる。
【0042】
また、本発明の特定の静圧軸受としての静圧軸受35は、複数の静圧軸受35、36のうち工作物Wに対する支持位置側に配置されている。よって、工作物Wの重量により支持位置が下がる主軸22又は心押軸32の支持位置側で、支持位置の変化を正確に検知し、支持位置を初期位置の回転中心へ位置補正することができる。
【0043】
また、特定の静圧ポケットとしての下側静圧ポケット352は、静圧軸受35において周方向に配置される複数の静圧ポケットのうち、重力方向下側に配置された静圧ポケットである。よって、工作物Wの重量による主軸22又は心押軸32の上下方向の位置変化を、圧力センサ37により確実に検出することができると共に、下側静圧ポケット352への供給圧力を制御することにより主軸22又は心押軸32を上下方向に位置補正することができる。
【0044】
また、ポンプPから供給される流体を下側静圧ポケット352へ導く流路上に設けられた可変バルブ38を、本発明の供給圧力可変部として用いたので、簡単な構成で確実に下側静圧ポケット352への供給圧力を可変することができる。
【0045】
また、供給圧力可変部としての可変バルブ38によって可変される供給圧力に対して下側静圧ポケット352への流体の絞りを自動調整する絞り調整機構を備えるので、静圧軸受35における軸受特性を最適とすることができる。
【0046】
(6.第1変形例)
上記実施形態のデータベース391では、本発明の第1データとしてのポケット圧力第1変化値と、第2データとしてのポケット圧力第2変化値とを対応付けて記憶するようにしたが、本変形例では、ポケット圧力第1変化値と位置補正時ポケット圧力とを対応付けて記憶する。すなわち、本変形例のデータベース392では、図8に示すように、ポケット圧力第1変化値として0、ΔPp001~ΔPp0x(xは1以上の整数)と、位置補正時ポケット圧力Pp000、Pp101~Pp1xとが対応付けて記憶されている。
【0047】
次に、本変形例における位置補正処理の流れについて、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、S11~S14の各ステップは、上記実施形態のS1~S4と同一であるので、説明を省略する。S11~S14の後、S15でデータベース392より、ポケット圧力第1変化値に対応する位置補正時ポケット圧力を取得する。
【0048】
次に、S16で、可変バルブ38を作動させて、静圧ポケット352への供給圧力を徐々に増加させる。続いて、S17で、静圧ポケット352内のポケット圧力を圧力センサ37により検出する。そして、S18で、ポケット圧力が位置補正時ポケット圧力よりも小さい場合(S18:No)、S16へ戻り、S17~S18を繰り返して供給圧力を徐々に増加させていく。S18で、ポケット圧力が位置補正時ポケット圧力に達した場合(S18:Yes)、S19で、可変バルブ38の作動を停止して供給圧力Ps’を固定し、位置補正処理を終了する。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
(7.第2変形例)
本変形例では、本発明の第1データとしてのポケット圧力第1変化値と第2データとしての位置補正時供給圧力とを対応付けて記憶する。すなわち、本変形例のデータベース393では、図10に示すように、ポケット圧力第1変化値として0、ΔPp001~ΔPp0x(xは1以上の整数)と、位置補正時供給圧力Ps0、Ps1~Psxとを対応付けて記憶している。
【0050】
次に、本変形例における位置補正処理の流れについて、図11のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、S21~S24の各ステップは、上記実施形態のS1~S4と同一であるので、説明を省略する。S21~S24の後、S25でデータベース393より、ポケット圧力第1変化値に対応する位置補正時供給圧力を取得する。
【0051】
次に、S26で、可変バルブ38を作動させて静圧ポケット352への供給圧力Ps’を位置補正時供給圧力に設定し、位置補正処理を終了する。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果に加えて、可変バルブ38の供給圧力Ps’を直接、位置補正時供給圧力に設定するので制御が簡単で迅速に位置補正が完了するという効果を奏する。
【0052】
(8.第3変形例)
本変形例では、本発明の第1データとしての荷重負荷後ポケット圧力と第2データとしての位置補正時ポケット圧力とを対応付けて記憶する。すなわち、本変形例のデータベース394では、図12に示すように、荷重負荷後ポケット圧力としてPp000、Pp001~Pp0x(xは1以上の整数)と、位置補正時ポケット圧力Pp000、Pp101~Pp1xとを対応付けて記憶している。
【0053】
次に、本変形例における位置補正処理の流れについて、図13のフローチャートを参照しつつ説明する。S32で、主軸センタ24先端と心押センタ34先端とで工作物Wを挟んで支持する。次に、S33で、荷重負荷後の静圧ポケット352内の圧力(荷重負荷後ポケット圧力)を圧力センサ37により検出する。次に、S35で、データベース391より荷重負荷後ポケット圧力に対応する位置補正時ポケット圧力を取得する。
【0054】
以下、S36~S39の各ステップは、図9のフローチャートに示す第1変形例におけるS16~S19と同様であるので、説明を省略する。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
(9.第4変形例)
本変形例では、本発明の第1データとしての荷重負荷後ポケット圧力と第2データとしての位置補正時供給圧力とを対応付けて記憶する。すなわち、本変形例のデータベース395では、図14に示すように、荷重負荷後ポケット圧力としてPp000、Pp001~Pp0x(xは1以上の整数)と、位置補正時供給圧力Ps0、Ps1~Psxとを対応付けて記憶している。
【0056】
次に、本変形例における位置補正処理の流れについて、図15のフローチャートを参照しつつ説明する。S42~S43の各ステップは、図13のフローチャートに示す第3変形例におけるS32~S33と同様であるので、説明を省略する。S42~S43の後、S45で、データベース391より荷重負荷後ポケット圧力に対応する位置補正時供給圧力を取得する。
【0057】
次に、S46で、可変バルブ38を作動させて静圧ポケット352への供給圧力Ps’を位置補正時供給圧力に設定し、位置補正処理を終了する。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を奏すると共に、可変バルブ38の供給圧力Ps’を直接、位置補正時供給圧力に設定するので制御が簡単で迅速に位置補正が完了するという効果を奏する。
【0058】
(10.その他の変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。上記実施形態では、前部軸受35及び後部軸受36の複数の静圧軸受のうち工作物Wに対する支持位置側に配置される前部軸受35を、本発明の特定の静圧軸受とする例を示したが、これには限られず、工作物Wに対する反支持位置側に配置される後部軸受36を特定の静圧軸受としてもよい。すなわち、工作物Wの重量により支持位置が下がるのに伴って主軸22又は心押軸32の反支持位置側が上昇するので、後部軸受36で支持位置の変化を正確に検知し、支持位置を初期位置の回転中心へ位置補正する構成とすることも可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、前部軸受35において周方向に設けられる複数の静圧ポケットのうち重力方向下側に配置された1つの下側静圧ポケット352を、圧力センサ37が配置され且つ供給圧力が可変される特定の静圧ポケットとした例を示したが、重力方向下側に2以上の静圧ポケットが設けられる構成ではこれらを特定の静圧ポケットとしてもよい。また、重力方向下側の下側静圧ポケット352に代えて、重力方向上側に配置された1以上の上側静圧ポケット351を特定の静圧ポケットとしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明の供給圧力可変部として流量制御弁である可変バルブ38を用いた例を示したが、これには限られない。例えば、供給圧力可変部として、減圧弁、リリーフ弁、シーケンス弁等の圧力制御弁を用いる構成としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、主軸22及び心押軸32の両方を静圧軸受によって静圧支持する例を示したが、これには限られず、主軸22及び心押軸32の少なくとも一方を静圧軸受によって静圧支持する構成としてもよい。例えば、主軸22を転がり軸受により支持し、心押軸32のみを静圧軸受によって支持する構成に対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
W…工作物、M…主軸装置、P…ポンプ、1…円筒研削装置、22…主軸、25…前部軸受(複数の静圧軸受)、26…後部軸受(複数の静圧軸受、特定の静圧軸受)、32…心押軸、35…前部軸受(複数の静圧軸受、特定の静圧軸受)、351…上側静圧ポケット(複数の静圧ポケット)、352…下側静圧ポケット(複数の静圧ポケット、特定の静圧ポケット)、354…絞り調整機構、36…後部軸受(複数の静圧軸受)、361…上側静圧ポケット(複数の静圧ポケット)、362…下側静圧ポケット(複数の静圧ポケット)、37…圧力センサ、38…可変バルブ(供給圧力可変部)、39…コントローラ(位置補正部)、391、392、393、394、395…データベース、42…砥石台、43…砥石車。
図1
図2
図3
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図5
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図10
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