IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱マテリアル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-めっき方法 図1
  • 特許-めっき方法 図2
  • 特許-めっき方法 図3
  • 特許-めっき方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/10 20060101AFI20230511BHJP
   C25D 3/32 20060101ALI20230511BHJP
   C25D 3/60 20060101ALI20230511BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20230511BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20230511BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D3/32
C25D3/60
C25D5/02 B
C25D21/12 A
H01L21/92 604B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019176404
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021055119
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】古山 大貴
(72)【発明者】
【氏名】井上 順太
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193916(JP,A)
【文献】特開2009-102674(JP,A)
【文献】特開2003-007762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/00
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板又はシリコンウエハ上の複数のビアのそれぞれに錫系めっき皮膜を形成するめっき方法において、
前記めっき方法に用いられるめっき液が、少なくとも、第一錫塩を含む可溶性塩(A)と、カルボニル基含有化合物(B)と、界面活性剤(C)と、不飽和カルボン酸(D)とを含み、
めっき開始時よりもめっき液の撹拌速度を低くした低撹拌めっき期と、
めっき開始時よりもめっきの電流密度を低くした低電流めっき期とを設けることを特徴とするめっき方法。
【請求項2】
前記低電流めっき期の後に、前記低電流めっき期よりもめっきの電流密度を高めた高電流めっき期を設ける請求項1記載のめっき方法。
【請求項3】
前記複数のビアがビア径の異なる複数種類のビアからなる請求項1又は2記載のめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路チップを回路基板に搭載する際に基板又はシリコンウエハ上に錫又は錫合金の突起電極となる錫系バンプ(以下、単にバンプということもある。)を形成するためのめっき方法に関する。更に詳しくは錫系バンプを形成するための錫めっき液及び錫合金めっき液(以下、錫系めっき液ということもある。)を用いたフィリングめっき方法に関する
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路チップ(以下、半導体チップという。)を搭載する回路基板では、軽薄短小に対応するため、パッケージ基板面積を、基板に搭載する半導体チップとほぼ等しい程度に小型化したCSP(Chip Size/scale Package)型の半導体装置が現在主として製造されている。この回路基板と半導体チップを接続するためには、基板側のビア胴体部であるビア開口部を錫又は錫合金で充填して突起状の金属端子の突起電極であるバンプを形成し、このバンプに半導体チップを装填している。
【0003】
従来、この錫又は錫合金材料の充填により錫系バンプを形成する方法の一つとして、錫系めっき液を用いた電気めっき法がある。この方法では、ビア(凹み)内に錫系めっき堆積層である錫系バンプとなる錫又は錫合金めっき皮膜(以下、錫系めっき皮膜ということもある。)を形成した後、熱処理によって錫系めっき皮膜を溶融させて錫系バンプを形成している。
【0004】
電気めっき法でバンプを形成する一般的な方法を図3を参照して説明する。図3(a)に示すように、配線などが施された基板又はシリコンウエハ1の表面に開口部を有するソルダーレジストパターンを形成する。次いで、ソルダーレジスト層2の表面に無電解めっきを行い、給電のための銅シード層3を形成する。次に、この銅シード層3の表面にドライフィルムレジスト層4を形成し、ソルダーレジスト層2の開口部と接続するように、開口部を有するドライフィルムレジストパターンを形成する。次に、上記銅シード層3を通じて給電することにより、ドライフィルムレジストパターンのビア6の内部に電気錫系めっきを行い、銅シード層3の上のビア6内に錫系めっき堆積層である錫系めっき皮膜7を形成する。次に、ドライフィルムレジスト層と銅シード層を順次除去した後、残った錫系めっき皮膜をリフロー処理により溶融し、図3(b)に示すように、錫系バンプ8を形成する。
【0005】
電気めっき装置において、電流密度、めっき液の撹拌強さ、めっき液濃度等を変化させることにより、めっきの性質を変化させて、基板又はシリコンウエハ上のビア内のめっき皮膜の物性及び/又はめっき皮膜の表面形状を制御することができる。例えば、めっき皮膜の成長を抑制するレベリング剤を含むフィリングめっき液を用いて、ビアのあるパターンをめっきすることで、レベリング剤の作用によりビアの底部からの優先的な析出することが可能である。こうしたレベリング剤を含むめっき方法が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1,段落[0010])参照)。
【0006】
特許文献1のめっき方法は、表面にアスペクト比が2以上の貫通電極用凹部を有する基板とアノードとを、撹拌が弱いとめっき膜成長の抑制作用が弱くなるレベリング剤を含むめっき液中に互いに対峙させて配置し、前記基板と前記アノードとの間に電圧を印加しながら前記基板と前記アノードとの間のめっき液を撹拌して前記貫通電極用凹部内へ金属を充填し、前記貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比が小さくなるに従い、前記基板と前記アノードとの間のめっき液の撹拌条件を高速撹拌から低速撹拌に変化させ、かつ電流密度を上げる方法である。このめっき方法によれば、貫通電極用凹部の底部からのめっき膜の成長速度を遅くすることなく、貫通電極用凹部内に銅等の金属を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填することができるとされる。
【0007】
一方、別のめっき方法として、微細な溝或いは孔に対し、ボイドの発生を防ぎながら効率よく銅めっきを行い、基材上の配線溝を孔埋めするめっきが開示されている(例えば、特許文献2(段落[0010]、段落[0017])参照)。特許文献2のめっき方法では、最初のめっきは、平均陰極電流密度0.03A/dm2~0.5A/dm2程度の低電流で、10秒~10分間程度の時間行い、孔埋めの進行に伴って、その後のめっきは、金属めっき浴の一般的な条件範囲にある0.5A/dm2~10A/dm2程度の電流密度まで上昇させてめっきする方法である。このめっき方法では、後のめっきは、一定の電流条件で行うか、又は電流密度を複数段或いは連続的に上昇させて実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5749302号公報
【文献】特開2004-197228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のめっき方法は、表面にアスペクト比が2以上の貫通電極用凹部を有する基板に用いられ、貫通電極用凹部の底部からのめっき膜の成長速度を遅くすることなく、貫通電極用凹部内に銅等の金属を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填することを目的としている。この目的を達成するために、このめっき方法では、貫通電極用凹部の未充填部のアスペクト比が小さくなるに従い、撹拌条件を高速撹拌から低速撹拌に変化させることにより、めっき膜の成長を抑制するレベリング剤の効果を弱め、かつ電流密度を上げることで短時間でのめっきを実現可能にしている。
【0010】
しかしながら、特許文献1には、撹拌条件を高速撹拌から低速撹拌に変化させるときにめっきの電流密度をどの程度上げるかについて具体的な記載がない。特許文献2には、最初のめっきは、平均陰極電流密度0.03A/dm2~0.5A/dm2程度の低電流で、10秒~10分間程度の時間行い、孔埋めの進行に伴って、その後のめっきは、0.5A/dm2~10A/dm2程度の電流密度でめっきする。特許文献1のめっき方法における電流密度の上昇を特許文献2と同様に上昇した場合、この方法では、異なるビアピッチ及び/又は複数種類のビア径が混在するパターンにおいて、基板又はシリコンウエハ上の複数のビア内に形成されためっき皮膜上面のリセス(recess)の深さが大きくなり、リフロー後のバンプの高さが意図したよりも低くなる課題があった。
【0011】
具体的には、ビア径が異なる複数種類のビアが混在するパターンの場合、従来の錫又は錫合金めっき液を用いてめっきを行うと、小径若しくは大径のどちらかのビアフィリング性を良くすることは可能であるが、もう一方のビアフィリング性が低下する。即ち、小径及び大径のビアが両方存在する基板において、両方のビアに対して同時にめっきする場合、例えば、図4(a)に示すように、小径のビア6a内に上面を平らに堆積しためっき皮膜7aを形成してフィリング性良くめっきをすることができても、大径のビア6b内には上面にリセスRを生じためっき皮膜7bを形成することがあった。こうした基板1をリフローすると、図4(c)に示すように、リフロー後の小径のビア6aから作られたバンプ8aと大径のビア6bから作られたバンプ8bとではバンプ高さが相違しバンプの高さばらつきが生じる課題があった。このため、図4(b)に示すように、小径のビア6a及び大径のビア6bに対してともにビアへのビアフィリング性を良くして、上面にリセスのない平らなめっき皮膜7a、7bを形成し、図4(d)に示すように、バンプ8aとバンプ8bの双方の高さが揃って、バンプの高さ均一性を図ることが求められていた。
【0012】
本発明の目的は、基板又はシリコンウエハ上の複数のビア内に形成されためっき皮膜上面のリセスの深さを減少するとともに、リフロー後の錫系バンプの高さを均一にするめっき方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、めっきのビアへのフィリングの進行に伴い、めっき液を強撹拌から弱撹拌にすると、フィリングめっき液に含まれる抑制剤(カルボニル基含有化合物)の作用が抑えられてめっき皮膜の中心部に錫が析出し易くなり、めっき皮膜上面のリセスの深さが減少すること、及び電流密度をめっき初期において高くし、めっき後期においてはめっき初期よりも低くすると、抑制剤がより効果的に作用してビアへのフィリング性が向上することに着目し、本発明に到達した。
【0014】
本発明の第1の観点は、基板又はシリコンウエハ上の複数のビアのそれぞれに錫系バンプを形成するめっき方法において、前記めっき方法に用いられるめっき液が、少なくとも、第一錫塩を含む可溶性塩(A)と、カルボニル基含有化合物(B)と、界面活性剤(C)と、不飽和カルボン酸(D)とを含み、めっき開始時よりもめっき液の撹拌速度を低くした低撹拌めっき期と、めっき開始時よりもめっきの電流密度を低くした低電流めっき期とを設けることを特徴とするめっき方法である。
【0015】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記低電流めっき期の後に、前記低電流めっき期よりもめっきの電流密度を高めた高電流めっき期を設けるめっき方法である。
【0016】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記複数のビアがビア径の異なる複数種類のビアからなるめっき方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の観点のめっき方法では、錫系めっき液の撹拌速度をめっき初期では高くすることにより、基板又はシリコンウエハ上のビア底部までめっき液が十分に行き渡り、ビア内にめっき皮膜が緻密に形成される。また低撹拌めっき期において、撹拌速度をめっき初期よりも低くすることにより、錫系めっき液に含まれる抑制剤(カルボニル基含有化合物)の作用が抑えられてめっき皮膜の中心部に錫が析出し易くなり、めっき皮膜上面のリセスの深さが減少する。まためっきの電流密度をめっき初期において、高めることにより、抑制剤がより効果的に作用してビアへのフィリング性が向上する。これらの結果として、ビア内に形成されためっき皮膜上面のリセスの深さを小さくすることができ、リフロー後の錫系バンプの高さを均一にすることができる。また低電流めっき期において、めっきの電流密度をめっきの初期より低くすることにより、ビア内で成長してきためっき皮膜の上面にリセスがより形成されにくくなる。
【0020】
また、本発明の第2の観点のめっき方法では、低電流めっき期の後に、低電流めっき期よりも電流密度を高めた高電流めっき期を設けることにより、より一層、リセスの発生が抑えられるとともに、リフロー後の錫系バンプの高さばらつきを低減できる。
【0021】
また、本発明の第3の観点のめっき方法では、ビア径の異なる複数種類のビア内にめっき皮膜を形成する場合、めっきをしている間、めっき液の撹拌速度やめっきの電流密度を変更しない通常のめっき条件では、小径のビアに比べて大径のビアでは、ビア内にめっき皮膜上面に深いリセスが形成され易かったものが、第1又は第2の観点に記載されためっき条件にすることにより、大径のビア内に形成されるめっき皮膜上面にリセスが形成されにくくなり、リフロー後の錫系バンプの高さを均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態のめっき法を工程順に示すビア付き基板の断面構成図である。図1(a)はめっき前のビア付き基板の断面構成図であり、図1(b)は撹拌速度をめっき初期において高くしたビア付き基板の断面構成図であり、図1(c)は撹拌速度をめっき後期に低くしたビア付き基板の断面構成図である。
図2図2(a)は実施例1のめっき前のビア付きシリコンウエハの断面構成図であり、図2(b)は実施例1のめっき後のビア付きシリコンウエハの断面構成図である。
図3】一般的なビア内にめっき皮膜を形成した後、錫系バンプを形成する断面構成図である。図3(a)はビア内にめっき皮膜が形成された断面構成図であり、図3(b)はドライフィルム及び銅シード層を剥離し、めっき皮膜を加熱した後の断面構成図である。
図4図4(a)はビア径が異なるパターンでめっき皮膜が不均一に形成された例を示す断面構成図であり、図4(b)はビア径が異なるパターンでめっき皮膜が均一に形成された例を示す断面構成図であり、図4(c)は図4(a)においてドライフィルム及び銅シード層を剥離し、めっき皮膜をリフローした後、形成されたバンプの高さがばらついた例を示す断面構成図であり、図4(d)は図4(b)においてドライフィルム及び銅シード層を剥離し、めっき皮膜をリフローした後、形成されたバンプの高さが均一になった例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0025】
〔本実施形態のめっき方法に用いられるめっき液〕
本実施形態のめっき方法に用いられるめっき液は、錫又は錫合金のめっき液であって、少なくとも、第一錫塩を含む可溶性塩(A)と、カルボニル基含有化合物(B)と、界面活性剤(C)と、不飽和カルボン酸(D)を含む。
【0026】
本実施形態の錫合金は、錫と、銀、銅、ビスマス、ニッケル、アンチモン、インジウム、亜鉛より選ばれた所定金属との合金であり、例えば、錫-銀合金、錫-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-ニッケル合金、錫-アンチモン合金、錫-インジウム合金、錫-亜鉛合金の2元合金、錫-銅-ビスマス、錫-銅-銀合金などの3元合金が挙げられる。
【0027】
従って、本実施形態の可溶性塩(A)はめっき液中でSn2+、Ag+、Cu+、Cu2+、Bi3+、Ni2+、Sb3+、In3+、Zn2+などの各種金属イオンを生成する任意の可溶性塩を意味し、例えば、当該金属の酸化物、ハロゲン化物、無機酸又は有機酸の当該金属塩などが挙げられる。
【0028】
金属酸化物としては、酸化第一錫、酸化銅、酸化ニッケル、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化亜鉛などが挙げられ、金属のハロゲン化物としては、塩化第一錫、塩化ビスマス、臭化ビスマス、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化ニッケル、塩化アンチモン、塩化インジウム、塩化亜鉛などが挙げられる。
【0029】
無機酸又は有機酸の金属塩としては、硫酸銅、硫酸第一錫、硫酸ビスマス、硫酸ニッケル、硫酸アンチモン、硝酸ビスマス、硝酸銀、硝酸銅、硝酸アンチモン、硝酸インジウム、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛、酢酸銅、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、錫酸ナトリウム、ホウフッ化第一錫、メタンスルホン酸第一錫、メタンスルホン酸銀、メタンスルホン酸銅、メタンスルホン酸ビスマス、メタンスルホン酸ニッケル、メタスルホン酸インジウム、ビスメタンスルホン酸亜鉛、エタンスルホン酸第一錫、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマスなどが挙げられる。
【0030】
本実施形態のカルボニル基含有化合物(B)は抑制剤として働き、具体的には、例えば、1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、ベンズアルデヒド、ベンザルアセトン、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、2-メトキシ-1-ナフトアルデヒド、2-エトキシ-1-ナフトアルデヒド、4-メトキシ-1-ナフトアルデヒド、1-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド、6-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド、6-メトキシ-2-ナフトアルデヒドなどを用いることができる。
【0031】
本実施形態の界面活性剤(C)としては、通常のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド:12モル含有)ノニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド:12モル含有)ドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸ジナトリウム等のナフトールスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等の(ポリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等が挙げられる。
【0033】
カチオン系界面活性剤としては、モノ-トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアンモニウム塩、オクタデセニルジメチルエチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ドデシルピコリニウム塩、ドデシルイミダゾリニウム塩、オレイルイミダゾリニウム塩、オクタデシルアミンアセテート、ドデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0034】
ノニオン系界面活性剤としては、糖エステル、脂肪酸エステル、C1~C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、C1~C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2モル~300モル付加縮合させたもの、シリコン系ポリオキシエチレンエーテル、シリコン系ポリオキシエチレンエステル、フッ素系ポリオキシエチレンエーテル、フッ素系ポリオキシエチレンエステル、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化あるいはスルホン化付加物などが挙げられる。
【0035】
両性界面活性剤としては、ベタイン、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0036】
本実施形態の不飽和カルボン酸(D)は、カルボニル基含有化合物(B)とともに用いることにより、ビアに形成されるめっき皮膜の成長を抑制し、めっき皮膜を均一かつ緻密に形成するとともにめっき皮膜上面を平らにする機能を有する。この不飽和カルボン酸としては、例えば、メタクリル酸、クロトン酸、アクリル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0037】
本実施形態のめっき液は、上記(A)~(D)の成分以外に錯体化剤、酸化防止剤等を含有してもよい。錯体化剤は、めっき液が銀などの貴金属を含むめっき液である場合、このめっき液で貴金属イオンなどを浴中で安定化させるとともに析出した合金の組成を均一化する。また酸化防止剤は、可溶性第一錫塩の第二錫塩への酸化を防止するために用いられる。
【0038】
また、本実施形態において、不飽和カルボン酸(D)以外の、有機酸及び無機酸、或いはその塩が含まれていてもよい。上記有機酸には、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或いは脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸には、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などが挙げられる。その塩は、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、アミン塩、スルホン酸塩などである。当該成分は、金属塩の溶解性や排水処理の容易性の観点から有機スルホン酸が好ましい。
【0039】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1~5、好ましくは1~3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの他、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0040】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式Cp2P+1-CH(OH)-Cq2q-SO3H(例えば、p=0~6、q=1~5)で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0041】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1-ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0042】
上記脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0043】
また、上記所定の可溶性金属塩(A)は単用又は併用でき、めっき液中での含有量は30g/L~100g/Lであることが好ましく、40g/L~60g/Lであることが更に好ましい。含有量が下限値より少な過ぎると生産性が落ち易く、含有量が上限値を超えるとめっき液のコストが上昇し易くなる。
【0044】
上記カルボニル基含有化合物(B)は単用又は併用でき、めっき液中での含有量は0.005g/L~50g/Lであることが好ましく、0.01g/L~10g/Lであることが更に好ましい。含有量が下限値より少な過ぎると導電率が低く電圧が上昇し易くなり、含有量が上限値を超えるとめっき液の粘度が上昇し易くめっき液の撹拌速度が低下し易い。
【0045】
上記界面活性剤(C)は単用又は併用でき、めっき液中での含有量は0.1g/L~50g/Lであることが好ましく、5g/L~20g/Lであることが更に好ましい。含有量が下限値より少な過ぎるか、又は含有量が上限値を超えると均一なめっき皮膜が形成されないおそれがある。
【0046】
上記不飽和カルボン酸(D)は単用又は併用でき、めっき液中での含有量は0.05g/L~50g/Lであることが好ましく、0.5g/L~20g/Lであることが更に好ましい。含有量が下限値より少な過ぎると、リフロー後の錫系バンプの高さばらつきを小さくすることができない場合があり、含有量が上限値を超えると、めっき皮膜の外観不良を生じる場合がある。
【0047】
なお、上記(A)~(D)の各成分の添加濃度はバレルめっき、ラックめっき、高速連続めっき、ラックレスめっき、バンプめっきなどのめっき方式に応じて任意に調整・選択することになる。
【0048】
〔本実施形態のめっき方法〕
次に本実施形態のめっき方法を説明する。本実施形態のめっき方法の特徴ある構成は、めっきをしている間、めっき液の撹拌速度及びめっきの電流密度を変化させることにある。本実施形態の電気めっき液の液温は70℃以下が好ましく、10℃~40℃であることが更に好ましい。本実施形態の電気めっき装置は、めっき皮膜形成時の電流密度を0.1A/dm2~100A/dm2の範囲に調整可能である。以下、電流密度の単位A/dm2を「ASD」と称することもある。また電気めっき装置中のめっき液の撹拌装置は、鉛直方向に延びる複数の攪拌棒を備えたパドルを基板又はシリコンウエハの表面と平行に水平方向に往復運動してめっき液を攪拌するパドル撹拌装置である。この撹拌装置は、撹拌速度を0.1cm/秒~30cm/秒の範囲で調整可能である。
【0049】
本実施形態で、「めっき初期」とは、めっき開始からめっき所要時間の25%~85%が経過するまでをいう。めっき所要時間はめっき皮膜の目標とする膜厚に応じて決められる。
低撹拌めっき期は、めっき初期より後に設けられ、めっき開始時(めっき初期)よりも撹拌速度を低くしためっき期間であり、めっき所要時間の15%~75%を占める。
低電流めっき期は、めっき初期より後に設けられ、めっき開始時(めっき初期)よりも電流密度を低くしためっき期間であり、めっき所要時間の15%~75%を占める。
高電流めっき期は、低電流めっき期の後に設けられ、低電流めっき期よりも電流密度を高くしためっき期間であり、めっき所要時間の15%以下である。
なお、低撹拌めっき期と、低電流めっき期又は高電流めっき期とは、重複している場合がある。
【0050】
(第1のめっき方法)
第1のめっき方法では、めっき液の撹拌速度を、めっき初期から中期にかけて高くし、めっき後期において低くし、かつめっきの電流密度を、めっき初期において高くし、めっき中期から後期にかけて低くする。具体的には、めっき初期から中期にかけて、めっき液の撹拌速度を強撹拌の10cm/秒~25cm/秒の範囲にすることが好ましい。まためっき初期において、めっきの電流密度を2A/dm2~6A/dm2の範囲に調整することが好ましい。まためっき後期において、めっき液の撹拌速度を弱撹拌の2cm/秒~15cm/秒の範囲にすることが好ましく、めっき中期からめっき後期にかけて、めっきの電流密度をめっき初期の電流密度よりも低い、1A/dm2~3A/dm2の範囲に調整することが好ましい。弱撹拌の撹拌速度は、強撹拌の撹拌速度の10%~50%にすることが好ましい。この第1のめっき方法においては、めっき後期が低撹拌めっき期に当たり、めっき中期からめっき後期が低電流めっき期に当たる。
【0051】
(第2のめっき方法)
第2のめっき方法では、めっき液の撹拌速度を、めっき初期から中期にかけて高くし、めっき後期において低くし、かつめっきの電流密度を、めっき初期において高くし、めっき中期において低くし、めっき後期においてめっき初期より低くめっき中期より高くする。具体的には、めっき初期から中期にかけて、めっき液の撹拌速度を強撹拌の10cm/秒~15cm/秒の範囲にすることが好ましい。めっき初期において、めっきの電流密度を2A/dm2~6A/dm2の範囲に調整することが好ましい。まためっき中期において、めっきの電流密度をめっき初期の電流密度よりも低い、1A/dm2~3A/dm2の範囲に調整することが好ましい。更にめっき後期において、めっき液の撹拌速度を弱撹拌の2cm/秒~15cm/秒の範囲にすることが好ましく、めっきの電流密度をめっき初期より低くめっき中期より高い、2A/dm2~6A/dm2の範囲に調整することが好ましい。この第2のめっき方法においては、めっき後期が低撹拌めっき期に当たり、めっき中期が低電流めっき期に当たり、めっき後期が高電流めっき期に当たる。
【0052】
この第1のめっき方法の一例を図面に基づいて説明する。図1(a)に示すように、基板11上にソルダーレジスト層12及びドライフィルムレジスト層14が形成されたビア付き基板10を用意する。図3に示した銅シード層は省略し図示していない。このビア付き基板10は小径の第1のビア16aと大径の第2のビア16bを有する。ビア径は特に限定されるものではない。
【0053】
図1(b)に示すように、めっき初期からめっき中期にかけて、上記めっき条件により、小径の第1のビア16aではめっき皮膜17aは均一に成長し、めっき皮膜17a上面は平らになる。その一方、大径の第2のビア16bではめっき皮膜17b上面にリセスRが形成される。図1(c)に示すように、続くめっき後期において、上記めっき条件により、小径の第1のビア16aではめっき皮膜17aは順調に成長し、めっき皮膜17a上面は凸状になる。その一方、大径の第2のビア16bではめっき皮膜17b上面に形成していたリセスRはその深さが減少する。
なお、ここでは、小径の第1のビア16aと大径の第2のビア16bの2種類のビア径の異なるビアが形成されている場合を示したが、3種類や4種類のビア径の異なるビアが基板又はシリコンウエハ上に形成されていてもよい。
【0054】
〔本実施形態のビア付き基板及びビア付きシリコンウエハ〕
本実施形態のビア付き基板は、基板上に複数のビア内に形成された錫系めっき皮膜上面のリセス深さが4.0μm以下であり、錫系めっき皮膜をリフローして形成される錫系バンプの高さばらつきが9.5%以下である。
本実施形態のビア付きシリコンウエハは、シリコンウエハ上の複数のビア内に形成された錫系めっき皮膜上面のリセス深さが4.0μm以下であり、錫系めっき皮膜をリフローして形成される錫系バンプの高さばらつきが9.5%以下である。
本実施形態のビア付き基板又はビア付きシリコンウエハによれば、基板又はシリコンの複数のビア内に形成された錫系めっき皮膜上面のリセス深さが小さいとともに、リフロー後の錫系バンプの高さを均一にすることができる。
なお、リセス深さは、2.5μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることが更に好ましい。錫系バンプの高さばらつきは、9.0%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることが更に好ましい。
【実施例
【0055】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0056】
<めっき液の建浴と組成>
実施例及び比較例に使用するSnめっき液、SnAgめっき液及びSnCuめっき液の3種類のめっき液を次に述べるように建浴した。
【0057】
(Snめっき液の建浴)
メタンスルホン酸Sn水溶液に、遊離酸としてのメタンスルホン酸と、酸化防止剤としてカテコールとを混合して、均一な溶液となった後、更に界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミンとカルボニル基含有化合物として1-ナフトアルデヒドと溶剤としてイソプロパノールを加えた。そして最後にイオン交換水を加えて、下記組成のSnめっき液を建浴した。なお、メタンスルホン酸Sn水溶液は、金属Sn板をメタンスルホン酸水溶液中で電解させることにより調製した。
【0058】
(Snめっき液の組成)
メタンスルホン酸Sn(Sn2+として):60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):120g/L
カテコール:0.9g/L
ポリオキシエチレンラウリルアミン:15g/L
1-ナフトアルデヒド:0.05g/L
クロトン酸:1.8g/L
イソプロパノール:5g/L
イオン交換水:残部
【0059】
(SnAgめっき液の建浴)
メタンスルホン酸Sn水溶液に、遊離酸としてのメタンスルホン酸と、酸化防止剤としてカテコールと、錯化剤としてチオ尿素とを混合して溶解させた後、更にメタンスルホン酸Ag水溶液を加えて混合した。混合によって均一な溶液となった後、更に界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミンとカルボニル基含有化合物としてベンズアルデヒドと溶剤としてイソプロパノールを加えた。そして最後にイオン交換水を加えて、下記組成のSnAgめっき液を建浴した。なお、メタンスルホン酸Sn水溶液は、金属Sn板を、メタンスルホン酸Ag水溶液は、金属Ag板を、それぞれメタンスルホン酸水溶液中で電解させることにより調製した。
【0060】
(SnAgめっき液の組成)
メタンスルホン酸Sn(Sn2+として):80g/L
メタンスルホン酸Ag(Ag+として):1.0g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):150g/L
カテコール:1g/L
チオ尿素:2g/L
ポリオキシエチレンラウリルアミン:15g/L
ベンズアルデヒド:0.01g/L
メタクリル酸:3.5g/L
イソプロパノール:5g/L
イオン交換水:残部
【0061】
(SnCuめっき液の建浴)
メタンスルホン酸Sn水溶液に、遊離酸としてのメタンスルホン酸と、酸化防止剤としてカテコールと、錯化剤としてチオ尿素とを混合して溶解させた後、更にメタンスルホン酸Cu水溶液を加えて混合した。混合によって均一な溶液となった後、更に界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミンとカルボニル基含有化合物として2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドと溶剤としてイソプロパノールを加えた。そして最後にイオン交換水を加えて、下記組成のSnCuめっき液を建浴した。なお、メタンスルホン酸Sn水溶液は、金属Sn板を、メタンスルホン酸Cu水溶液は、金属Cu板を、それぞれメタンスルホン酸水溶液中で電解させることにより調製した。
【0062】
(SnCuめっき液の組成)
メタンスルホン酸Sn(Sn2+として):80g/L
メタンスルホン酸Cu(Cu2+として):1.5g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):150g/L
カテコール:1g/L
チオ尿素:4g/L
ポリオキシエチレンラウリルアミン:15g/L
2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド:0.01g/L
メタクリル酸:1.8g/L
イソプロパノール:5g/L
イオン交換水:残部
【0063】
<実施例1>
図2(a)に示すように、シリコンウエハ(8インチ)21の表面に、スパッタリング法により100nm厚のチタン層と500nm厚の銅層からなる下地層21aを形成した。次いで、ソルダーレジストを塗布して5μm厚のソルダーレジスト層22を形成した後、このレジスト層を露光機にて開口させソルダーレジストパターンを形成した。15μmの開口径を有するソルダーレジスト層22に無電解銅めっきを行って銅シード層23を形成して、下地層21aと導通させた。次に、銅シード層23の表面にドライフィルムレジストを塗布して56μm厚のドライフィルムレジスト層24を形成した。更に、露光用マスクを介して、ドライフィルムレジスト層24を部分的に露光し、その後、現像処理して、第1のビア26aのビア径が35μmであり、第2のビア26bのビア径が75μmであるビア付きシリコンウエハ20を得た。図2(a)では、第1のビア26a及び第2のビア26bをそれぞれ1個示しているが、このシリコンウエハ上には第1のビア26a及び第2のビア26bはそれぞれ1000個、即ち総数で2000個形成された。
【0064】
上述したSnめっき液を用いて「第1のめっき方法」により、ビア付きシリコンウエハ20をめっき装置(ディップ式パドル撹拌装置)に浸漬し、めっき液の液温:25℃で、次の条件で、電気錫めっきを行い、図2(b)に示すように、このビア付きシリコンウエハの第1のビア26a及び第2のビア26bのそれぞれ内部に目標厚さ35μmのめっき皮膜27a及び27bを形成した。
【0065】
(1)めっき初期の6.5分間
電流密度:3ASD
めっき液の撹拌速度(パドルの往復移動速度):強撹拌の11cm/秒
(2)めっき後期の10分間
電流密度:1ASD
めっき液の撹拌速度(パドルの往復移動速度):弱撹拌の5cm/秒
実施例1のめっき条件を、次に述べる実施例2~6及び比較例1~5のめっき条件とともに、以下の表1に示す。なお、表1において、めっき中期に「-」と記載されている条件においては、めっき中期の時間は存在せず、めっき処理は初期の条件での処理が終わった後に、連続して後期の条件で処理を行い、完了とした。
【0066】
【表1】
【0067】
<実施例2~6、比較例1~5>
めっき液、第1及び第2のビア径、撹拌速度、電流密度、めっき時間を、表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてめっき皮膜を形成した。なお、比較例1~3では、めっき初期、中期及び後期を区別することなく、単一の条件でめっき皮膜を形成した。
【0068】
<比較試験及び評価>
実施例1~6及び比較例1~5の11種類のビア付きシリコンウエハにおける(i)めっき皮膜上面のリセス深さと、(ii)ビア付きシリコンウエハをリフローした後のバンプ高さのばらつきを以下の方法で測定した。これらの結果を以下の表2に示す。
【0069】
(i)めっき皮膜上面のリセス深さ
リフローする前のビア付きシリコンウエハ上の第1のビア及び第2のビアからそれぞれ15個のビアを無作為に選択し、これらのリセス深さを測定した。これらのビアに形成されためっき皮膜上面のリセス深さをレーザー顕微鏡で測定し、その平均値を算出した。具体的には、めっき皮膜の表面中央部の高さと、めっき皮膜の端部における高さとの差をリセス深さとした。この平均値が4.0μm以下のときを「良好」と判定し、4.0μmを超えるときを「不良」と判定した。
【0070】
(ii)リフロー後のバンプ高さのばらつき
ビア付きシリコンウエハをリフローして、めっき皮膜から形成された錫系バンプの高さを、レーザー顕微鏡で測定した。第1のビアと第2のビアの2種類の径に対して、それぞれ1000点を測定し、以下の式により、錫系バンプ高さのばらつきを算出した。また第1のビアと第2のビアを合計したビア全体についても、同様にして錫系バンプ高さのばらつきを算出した。錫系バンプの高さは、下地層からバンプ頂点(最も高い箇所)までの距離とした。以下の式において、錫系バンプ高さの最大値を「最大高さ」とし、錫系バンプ高さの最小値を「最小高さ」とし、錫系バンプ高さの平均値を「平均高さ」とした。このばらつきが9.5%以下のときを「良好」と判定し、9.5%を超えるときを「不良」と判定した。
バンプ高さのばらつき(%)=(最大高さ―最小高さ)/(2×平均高さ)×100
【0071】
【表2】
【0072】
表2から明らかなように、第1のビアのビア径及び第2のビアのビア径がともに75μmと同一である比較例1では、めっきをしている間、強撹拌を続けたため、第1のビア及び第2のビアから形成された錫系バンプの高さばらつきは、8.9%及び8.7%と小さく、良好であったが、両ビアの各内部に形成されためっき皮膜上面のリセス深さの平均値は、4.1μm及び4.4μmと深く、不良であった。
【0073】
第1のビアのビア径が50μmであって、第2のビアのビア径が75μmである比較例2では、めっきをしている間、弱撹拌を続けたため、第1のビア及び第2のビアの各内部に形成されためっき皮膜上面のリセス深さの平均値は、0.7μm及び1.2μmと浅く、良好であったが、両ビアの各内部から形成された錫系バンプの高さばらつきは、16.2%及び12.2%と大きく、不良であった。
【0074】
第1のビアのビア径が35μmであって、第2のビアのビア径が75μmである比較例3では、めっきをしている間、強撹拌を続けたため、第1のビア及び第2のビアから形成された錫系バンプの高さばらつきは、9.4%及び8.3%と小さく、良好であり、小径の第1のビアの内部に形成されためっき皮膜上面のリセス深さの平均値は1.7μmと浅く良好であったが、大径の第2の両ビアの内部に形成されためっき皮膜上面のリセス深さの平均値は、5.8μmと深く、不良であった。
【0075】
第1のビアのビア径及び第2のビアのビア径がともに75μmと同一である比較例4では、めっきをしている間、電流密度を一定としたため、第1のビア及び第2のビアの各内部に形成されためっき皮膜上面のリセス深さの平均値は1.8μm及び1.6μmと浅く良好であったが、両ビアの各内部に形成された錫系バンプの高さばらつきは、9.6%及び9.8%と大きく、不良であった。
【0076】
第1のビアのビア径及び第2のビアのビア径がともに75μmと同一である比較例5では、めっきをしている間、電流密度を一定としたため、第1のビア及び第2のビアの各内部に形成されためっき皮膜上面のリセス深さの平均値は2.1μm及び2.4μmと浅く良好であったが、両ビアの各内部に形成された錫系バンプの高さばらつきは、9.9%及び10.3%と大きく、不良であった。
【0077】
これに対して、実施例1~6では、本発明の第1の観点のめっき液を用いて、第1の観点のめっき条件を満たしているため、第1のビアのビア径及び第2のビアのビア径が同一又は異なっていても、第1のビア及び第2のビアの各内部に形成されためっき皮膜上面のリセス深さの平均値は、0.7μm~2.2μmの範囲にあって、浅く、良好であった。また両ビアの各内部から形成されたバンプの高さばらつきも、6.1%~8.8%の範囲にあって、小さく、良好であった。ビア全体においても、バンプの高さばらつきは6.9%~9.2%の範囲にあって、小さく、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のめっき方法は、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路等の基板上にバンプを形成するのに、またシリコンウエハ上にバンプを形成するのにそれぞれ利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 ビア付き基板
11 基板
12 ソルダーレジスト層
14 ドライフィルムレジスト層
16a、16b ビア
17a、17b めっき皮膜
図1
図2
図3
図4