(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
H01B1/22 A
(21)【出願番号】P 2019179168
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】田上 安宣
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-033018(JP,A)
【文献】特開2017-186605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(1)で表される化合物を0.1~
0.5質量%、
(b)炭素数が8~20の脂肪族モノカルボン酸を
1~4質量%、
(c)導電性粒子を60~94.8質量%、および
(d)バインダ樹脂を5~40質量%含有する導電性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れた配線形成材料、および基板と電子部品との接合材料として使用でき、基板に塗布してから電子部品を実装するまでの可使時間が長く、接合強度のばらつきが生じ難い導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工程短縮によるコスト削減の観点から、スクリーン印刷機などを用いた印刷法によって、複数の工程を一括で連続的に行う技術の開発が行なわれている。例えば、導電性ペーストを用いて基板上にランドパターンと配線パターンを形成する工程、未硬化のランドパターン上に電子部品を実装する工程、加熱などにより導電性ペーストを硬化することによって、基板と電子部品の接合、および電子部品に電流を供給する配線を一括で形成する工程を連続的に実施する技術の開発が盛んに行なわれている。例えば、特許文献1には基板上への電子部品の接合性に優れた導電性ペーストが開示されている。
【0003】
当該技術においては、各工程間の滞留時間が短い方が生産性の面で好ましいが、実際の工程では前述の各工程間で滞留が生じることが予測されている。例えば、特許文献1の導電性ペーストを、部品接合と配線形成を一括で実施する工程に用いた場合、導電性ペーストを用いて基板上にランドパターンと配線パターンとを形成後に、導電性ペースト表面の乾燥により粘着性が低下し、基板と電子部品の接合強度が低下するという問題点がある。
そのため、前述の導電性ペーストを用いて基板上にランドパターンおよび配線パターンを形成する工程と、未硬化のランドパターン上に電子部品を実装する工程との間で生じる滞留時間の長短によって接合強度にばらつきが生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決すべき課題は、導電性に優れた配線形成材料、および基板と電子部品との接合材料として使用でき、基板に塗布してから電子部品を実装できるまでの可使時間が長く、接合強度のばらつきが生じ難い導電性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、導電性粒子とバインダ樹脂に加えて、酸化防止能に優れた特定の成分と、組成物の粘着性を長時間維持可能な特定の成分を配合することにより、上記課題を解決できる導電性組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る導電性組成物は、
(a)下記式(1)で表される化合物を0.1~0.5質量%、
(b)炭素数が8~20の脂肪族モノカルボン酸を1~4質量%、
(c)導電性粒子を60~94.8質量%、および
(d)バインダ樹脂を5~40質量%含有する導電性組成物である。
【0008】
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性組成物によれば、導電性に優れた配線形成材料、および基板と電子部品との接合材料として使用でき、基板に塗布してから電子部品を実装できるまでの可使時間が長く、接合強度のばらつきが生じ難いという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の導電性組成物は、(a)下記式(1)で表される化合物、(b)炭素数が8~20の脂肪族モノカルボン酸、(c)導電性粒子、および(d)バインダ樹脂を含有する。以下、各成分について説明する。
【0011】
〔成分(a):式(1)で表される化合物〕
本発明で用いられる成分(a)は下記式(1)で表される化合物である。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基である。)
【0012】
式(1)中でR1が水素原子である化合物としては、例えば、2、2’-ビピリジルが挙げられる。
R1がメチル基である化合物としては、例えば、3、3’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、3、4’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、3、5’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、3、6’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、4、4’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、4、5’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、4、6’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、5、5’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、5、6’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、6、6’-ジメチル-2、2’-ビピリジルなどが挙げられる。
なお、両ヘテロ環における各R1は同一であっても、異なっていてもよい。
【0013】
成分(a)として、式(1)で表される上記化合物から選ばれる一種を単独で使用し、または二種類以上を併用することもできる。特に、2、2’-ビピリジル、4、4’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、5、5’-ジメチル-2、2’-ビピリジル、6、6’-ジメチル-2、2’-ビピリジルから一種または二種以上を選択して用いることが導電性の観点から好ましく、2、2’-ビピリジルが導電性の観点からより好ましい。
【0014】
導電性組成物の総質量を100質量%としたとき、化合物(a)の含有量は、0.1~2質量%であり、好ましくは0.2~1質量%である。(a)の含有量が少なすぎると、良好な酸化防止能が発揮され難くなり、優れた導電性を示す硬化膜が得られ難くなることがある。また(a)の含有量が多すぎると、導電性組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
【0015】
〔成分(b):炭素数が8~20の脂肪族モノカルボン酸〕
本発明で用いられる成分(b)は炭素数が8~20、好ましくは10~18の脂肪族モノカルボン酸である。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸、直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐不飽和脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
炭素数8~20の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸が挙げられる。炭素数8~20の直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸等が挙げられる。炭素数8~20の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸などが挙げられる。
【0016】
成分(b)として、上記化合物から選ばれる一種を単独で使用し、または二種類以上を併用することもできる。特に、炭素数8~20の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましく、更にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれる一種または二種以上を用いることが導電性の観点から好ましく、ラウリン酸が導電性の観点からより好ましい。
【0017】
導電性組成物の総質量を100質量%としたとき、化合物(b)の含有量は、0.1~4質量%であり、好ましくは0.2~2質量%である。(b)の含有量が少なすぎると、良好な粘着維持性が発揮され難くなり、長時間粘着性を維持し難くなることがある。また(b)の含有量が多すぎると、導電性組成物の導電性が低下することがある。
【0018】
〔成分(c):導電性粒子〕
本発明で用いられる成分(c)は導電性粒子であり、例えば銅粒子などの無機導電性粒子を用いることができる。銅粒子は、銅のみからなっていてよいが、銀や白金などの銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有していてもよく、表面層や突起物を形成するなどどのような形状であってもよい。銅粒子が銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有する場合、銅粒子中の銅の質量比率は50質量%以上とすることが好ましい。
【0019】
また、導電性粒子は市販のものをそのまま用いても良いが、耐酸化性を向上させるなどを目的に表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましい。中でも、アミン化合物により表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましく、下記式(2)で表されるアミン化合物により表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることがより好ましい。
【0020】
【0021】
(式(2)中、
mは0~3の整数、
nは0~2の整数であり、
n=0のとき、mは0~3のいずれかであり、
n=1またはn=2のとき、mは1~3のいずれかである。)
【0022】
アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子は、より良好な耐酸化性を得る観点から、さらに脂肪族モノカルボン酸で被覆された表面被覆導電性粒子とすることが好ましい。
これにより導電性粒子表面は、アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆される。好ましくは、第1被覆層は導電性粒子表面に形成され、第2被覆層は第1被覆層上に形成される。
【0023】
第2被覆層を形成する脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数8~20の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。該脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸、直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐不飽和脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。炭素数8~20の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸が挙げられる。炭素数8~20の直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸等が挙げられる。炭素数8~20の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸などが挙げられる。上記脂肪族モノカルボン酸として、上記化合物から選ばれる一種を単独で使用し、または二種類以上を併用することもできる。
【0024】
表面被覆導電性粒子を製造する方法は特に限定されない。アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を得る方法としては、例えば、導電性粒子を塩化アンモニウム水溶液などにより洗浄した後、該洗浄後の導電性粒子をアミン化合物の溶液に添加し、必要に応じて加熱する方法が挙げられる。
アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆された表面被覆導電性粒子の製造方法としては、例えば、アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加する方法が挙げられる。なお、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加した後に、必要に応じて、加熱することができる。
【0025】
導電性粒子の平均粒径(D50)については、特に限定されないが、成分(c)としての導電性粒子を含有する導電性組成物がインクジェット印刷やスクリーン印刷などの各種印刷方法において良好に印刷可能とするためには、導電性粒子の平均粒径(D50)を制御することが好ましい。具体的には、導電性粒子の平均粒径(D50)は、5nm~20μmであることが好ましく、10nm~10μmであることがより好ましい。
なお、導電性粒子の平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3000II)により測定することができる。
【0026】
また、導電性粒子のBET比表面積は0.05~400m2/gであることが好ましく、0.1~200m2/gであることがより好ましい。
なお、導電性粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製「モノソーブ」を用いてBET1点法により測定することができる。
【0027】
導電性粒子の形状やアスペクト比(粒子の長径と短径との比)に特に制限はなく、球状、多面体状、扁平状、板状、フレーク状、薄片状、棒状、樹枝状、ファイバー状等を用いることができる。導電性粒子は、構成成分、平均粒径、形状、アスペクト比等の異なるもの中から選ばれる一種を単独で使用し、または二種類以上を併用することもできる。
【0028】
導電性組成物の総質量を100質量%としたとき、成分(c)の含有量は、60~94.7質量%である。成分(c)の含有量の下限は、好ましくは65質量%であり、より好ましくは85質量%である。
【0029】
〔成分(d):バインダ樹脂〕
本発明で用いられる成分(d)はバインダ樹脂であり、本発明の導電性組成物においてバインダとして作用する成分である。
成分(d)としては、導電性ペースト等に用いられる公知のバインダ樹脂を用いることができ、熱や光を加えることにより硬化する熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂、および熱可塑性樹脂などを例示することができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、キシレン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂などが挙げられる。
なお、成分(d)のバインダ樹脂として、これらの樹脂から選ばれる一種を単独で使用し、または二種類以上を併用することもできる。
【0030】
また、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂から選ばれる一種または二種以上を用いることが硬化性の観点から好ましく、レゾール型フェノール樹脂がより好ましい。
【0031】
導電性組成物の総質量を100質量%としたとき、成分(d)の含有量は、5~40質量%であり、好ましくは10~30質量%である。成分(d)の含有量が少なすぎると、導電性組成物を用いて印刷するときに十分な流動性を持たせることが難しくなることがある。成分(d)の含有量が多すぎると、導電性組成物中における成分(c)の導電性粒子同士が接触し難くなり、優れた導電性を示す硬化膜が得られ難くなることがある。
【0032】
〔その他成分〕
本発明の導電性組成物は、上記の成分(a)~(d)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、溶剤、硬化促進剤、可塑剤、滑剤、硬化剤、レベリング剤、粘度調整剤、分散剤、発泡剤等の各種添加剤を含有していてもよい。また、本発明の導電性組成物は、原料成分および製造過程の装置等から不可避的に混入し得る不純物を含んでいてもよい。
【0033】
(溶剤)
本発明の導電性組成物は、塗工性の改善や粘度の調節を目的に、溶剤を含有していてもよい。
溶剤の種類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエーテル系アルコール類;プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの非エーテル系アルコール類;シクロヘキサノールアセテート、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、1,6-ヘキサンジオールアセテートなどのエステル類;イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;α-ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートなどのテルペン類;オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、炭酸プロピレンなどのその他炭化水素類等が挙げられる。
【0034】
これらの溶剤の中で、上記エーテル系アルコール類および上記エステル類から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、更にジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートがより好ましい。
溶剤の種類は上記に制限されず、用途に応じて、様々な溶剤から選ばれる一種を単独で使用し、または二種類以上を混合して使用することもできる。二種類以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0035】
(硬化促進剤)
本発明の導電性組成物は、組成物に含まれるバインダ樹脂の硬化度を調整することを目的に、硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤を含有することで、加熱硬化により製造した導電性組成物の硬化膜の耐熱性および耐湿性が向上し、耐高温高湿環境性に優れた硬化膜を得ることができる。
硬化促進剤の種類としては、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類;2-エチルヘキシルアミン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどの脂肪族アミン類およびその誘導体;ポリオキシアルキレンアミン、ポリエーテルアミンなどのポリアミン類などが挙げられる。
【0036】
これらの硬化促進剤の中で、上記脂肪族アミン類およびその誘導体から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
硬化促進剤の種類は上記に制限されず、用途に応じて、様々な硬化促進剤から選ばれる一種を単独で使用し、または二種類以上を混合して使用することもできる。二種類以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0037】
導電性組成物が上記の各種添加剤をその他成分として含有する場合、導電性組成物の総質量を100質量%としたとき、成分(a)~(d)以外のその他成分の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。なお、本発明の導電性組成物は、上記の成分(a)~(d)のみからなり、その他成分を全く含有していなくてもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の導電性組成物をさらに具体的に説明するが、本発明の導電性組成物は、以下に示す導電性組成物の製造例や評価方法によって限定されない。
【0039】
〔成分(a)〕
成分(a)として以下4種類の化合物を使用した。
2,2’-ビピリジル
4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル
5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジル
6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジル
【0040】
〔成分(b)〕
成分(b)として以下3種類の化合物を使用した。
ラウリン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
【0041】
〔成分(c)〕
成分(c)として以下2種類の銅粒子を使用した。
銅粒子(1):フレーク状表面被覆銅粒子[実施例1に記載の方法により製造した。]
銅粒子(2):樹枝状銅粒子[FCC-TB、福田金属箔粉工業(株)製]
【0042】
〔成分(d)〕
成分(d)として以下の材料をバインダ樹脂に用いた。
レゾール型フェノール樹脂[レヂトップPL-5208、群栄化学工業(株)製、固形分60.0質量%、溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテル]
【0043】
〔その他成分〕
その他の成分として以下の材料を使用した。
(硬化促進剤)
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン
(溶剤)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
〔表1ではエチルカルビトールアセテート(ECA)と表記する。〕
【0044】
〔実施例1〕
(表面被覆銅粒子(銅粒子(1)の製造)
水100gに対し塩化アンモニウム5gを溶解した塩化アンモニウム水溶液を調製した。銅粒子[三井金属鉱業株式会社製「1400YP」;粒径(D50)6.9μm、比表面積0.26m2/g、形状:フレーク状]50gを、該塩化アンモニウム水溶液に添加し、窒素バブリング下、30℃で60分間攪拌した。撹拌は、メカニカルスターラーを使用し、回転数150rpmで実施した。以下、撹拌は同様の撹拌装置を使用して同じ回転数で行った。攪拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別し、続いて、桐山ロート上で150gの水により2回、銅粒子の洗浄を行った。
洗浄した銅粒子を、40質量%のジエチレントリアミン水溶液250gに添加し、窒素バブリンクをしながら60℃下で1時間加熱攪拌を行った。
【0045】
撹拌を止めて5分間静置した後、約200gの上澄み液を抜き取って除去した。続いて、沈殿物に洗浄用溶剤としてイソプロパノール200gを添加し、30℃で3分間攪拌を行った。撹拌を止めて5分間静置した後、約200gの上澄み液を抜き取って除去した。その後、2質量%のラウリン酸イソプロパノール溶液250gを添加し、30℃で30分間攪拌した。攪拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別した。得られた銅粒子を25℃で3時間減圧乾燥することにより表面被覆銅粒子(銅粒子(1))を得た。
【0046】
(導電性組成物の製造)
成分(a)として2,2-ビピリジル 0.5g、成分(b)としてラウリン酸0.1g、成分(c)として表面被覆銅粒子(銅粒子(1))を70.0g、成分(d)としてレゾール型フェノール樹脂[PL-5208、群栄化学工業(株)製、固形分60.0質量%、溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテル]を25.0g混合した。
次に、プラネタリーミキサー[ARV-310、(株)シンキー製]を用いて、室温下、回転数1500rpmで60秒間撹拌し、一次混練を行った。更に、3本ロールミル[EXAKT-M80S、(株)永瀬スクリーン印刷研究所製]を用いて、室温、ロール間距離5μmの条件下で5回通すことで、二次混練を行った。二次混練で得られた混練物に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 3.5gを加え、プラネタリーミキサーを用いて、室温、真空条件下、回転数1000rpmで90秒間撹拌し脱泡混練することにより、導電性組成物を製造した。
導電性組成物中の各成分の配合割合を表1に示す。
【0047】
(導電性の評価方法)
得られた導電性組成物を用いて、ガラス基板上に幅×長さ×厚み=10mm×30mm×50μmのパターンを塗布した。続いて、対流オーブンにて150℃で30分間加熱することにより抵抗値測定用の硬化膜を作製した。得られた硬化膜の導電性を抵抗値測定により評価した。形成したパターンの両端に測定プローブを押し当て、デジタルマルチメータ[PC7000、三和電気計器(株)製]を用いて硬化膜の抵抗値を測定し、下記の評価基準により判定した。
硬化膜の抵抗値が低いほど電流が流れやすく、導電性が優れていることを示す。
◎ :抵抗値が1.0Ω未満である。
○ :抵抗値が1.0Ω以上、10.0Ω未満である。
× :抵抗値が10.0Ω以上、100.0Ω未満である
【0048】
(接合強度測定用サンプルの作製方法/初期)
得られた導電性組成物を用いて、ガラスエポキシ基板上に幅×長さ×厚み=10mm×30mm×50μmのパターンを塗布した。塗布後60秒以内に、塗布した銅ペースト上にLEDチップ[GM5BC01250AC、シャープ(株)製)]を乗せ、対流オーブンにて150℃で30分間加熱することにより接合強度測定用のサンプルを作製した。
【0049】
(接合強度測定用サンプルの作製方法/塗布後60分間静置)
得られた導電性組成物を用いて、ガラスエポキシ基板上に幅×長さ×厚み=10mm×30mm×50μmのパターンを塗布した。導電性組成物を塗布したガラスエポキシ基板を60分間静置した後に、塗布した銅ペースト上にLEDチップ[GM5BC01250AC、シャープ(株)製)]を乗せ、対流オーブンにて150℃で30分間加熱することにより接合強度測定用のサンプルを作製した。
【0050】
(接合強度の評価方法)
得られた接合強度測定用サンプルを万能型ボンドテスター(シリーズ4000、デイジー社製)に固定した後に、以下の条件でシェア強度を測定し、下記の評価基準により判定した。
【0051】
使用ロードセル:DS100kg
レンジ:100N
シェア速度:50.0μm/sec
シェア高さ:20.0μm
ツール先端幅:11mm
試験室温度:25℃
【0052】
◎ :シェア強度が20N以上である。
○ :シェア強度が10N以上、20N未満である。
× :シェア強度が10N未満である。
【0053】
〔実施例2~8:比較例1~2〕
各成分の配合割合を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の製造、および硬化膜の作製を行った。
更に、各硬化膜について、実施例1と同様にして導電性および接合強度を評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0054】
【0055】
実施例1~8と比較例1~2との対比から、本発明における成分(a)または成分(b)を含まない導電性組成物では、導電性が低かったり、基板に塗布してから電子部品を実装するまでの可使時間が短くなることが分かる。