(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
G01G 19/10 20060101AFI20230511BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20230511BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01G19/10 B
E02F9/20 M
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2019180426
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】植田 登志郎
(72)【発明者】
【氏名】平山 道夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一臣
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103029(JP,A)
【文献】特開平11-230821(JP,A)
【文献】特開2002-021122(JP,A)
【文献】特開2018-154976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0264423(US,A1)
【文献】国際公開第2003/033829(WO,A1)
【文献】特開2015-227582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/10,19/14-19/16,
E02F 9/00-9/28,
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
機体と、
前記機体に対して相対的な動作を行うことが可能な複数の可動部を含み、前記複数の可動部が作業の対象物を保持可能なアタッチメントを含む作業装置と、
シリンダ本体とピストン部材とを含み、前記シリンダ本体内への作動油の供給を受けることにより前記複数の可動部のうちの一つを駆動するように前記ピストン部材が前記シリンダ本体に対してストローク方向に変位する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの圧力であるシリンダ圧を検出する圧力検出部と、
前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重を、前記シリンダ圧を用いて演算する荷重演算部と、
荷重記憶部と、
荷重情報出力部と、を備え、
前記油圧シリンダは、クッション機構を有し、前記ピストン部材が前記シリンダ本体に対して前記ストローク方向に変位可能な最大範囲であるストローク範囲は、当該ストローク範囲の一端であるストロークエンドを含む端部領域を構成するクッション領域を含み、前記クッション機構は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記クッション領域に進入するのに伴って前記シリンダ圧を上昇させるとともに前記ピストン部材の変位速度を低下させるように構成され、
前記クッション領域に対して前記ストロークエンドから遠ざかる方向に離れた位置に特定位置が予め設定され、前記特定位置と前記ストロークエンドとの間の領域が特定領域として予め設定され、
前記荷重情報出力部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定位置に至るまでは、前記荷重演算部により演算される荷重を前記対象物の荷重の情報である荷重情報として出力し、
前記荷重記憶部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定位置に到達したときに前記荷重演算部により演算される荷重を特定荷重として記憶し、
前記荷重情報出力部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入した後には、前記特定荷重を前記荷重情報として出力する、作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械であって、
前記特定領域の前記ストローク方向の長さは、前記クッション領域の前記ストローク方向の長さよりも大きく、かつ、前記ストローク範囲の全長の5%以下である、作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械であって、
前記荷重情報出力部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入したにもかかわらず、前記シリンダ圧の上昇が抑制されることを判定可能な予め設定された条件
である圧力上昇抑制条件が満たされる場合には、前記荷重演算部により演算される荷重を前記荷重情報として出力
し、
前記圧力上昇抑制条件は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記クッション領域に進入する前の前記シリンダ圧と前記ピストン部材が前記クッション領域に進入した後の前記シリンダ圧との差が予め設定された圧力閾値以下であるという条件、又は、前記ピストン部材を前記ストロークエンドに向かって変位させるための操作の操作量が予め設定された操作量閾値以下であるという条件を含む、作業機械。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の作業機械であって、
前記作業機械は、前記対象物を保持する保持作業と、保持された前記対象物を移動先の上に移動させる移動作業と、前記移動先の上で前記対象物を解放する解放作業と、を行うことができるように構成され、
前記作業機械は、前記解放作業において前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を決定する予測荷重決定部をさらに備え、
前記予測荷重決定部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定位置に至るまでに、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合、前記荷重演算部により演算された荷重に基づいて前記予測荷重を決定し、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入した後に、前記予測荷重決定条件が満たされた場合、前記特定荷重を前記予測荷重として決定する、作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械であって、
前記予測荷重決定条件は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための予め設定された減少操作が前記保持作業の後に行われるという条件が満たされることを含む、作業機械。
【請求項6】
請求項4に記載の作業機械であって、
前記複数の可動部は、前記機体に起伏可能に支持されるブームを含み、
前記予測荷重決定条件は、前記ブームが起立方向に作動するブーム上げ動作の速度が前記移動作業において減少するという条件が満たされること含む、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば油圧ショベルなどの作業機械が知られている。前記油圧ショベルは、下部走行体及び上部旋回体を含む機体と、複数の可動部(ブーム、アーム及びバケット)を含む作業装置と、前記複数の可動部を駆動するように作動する複数の油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダ)と、を備える。この油圧ショベルは、作業現場において、土砂などの作業の対象物を、例えばダンプトラックなどの移動先に積み込むための積込作業を行う。このような油圧ショベルとして、いわゆるペイロード機能を搭載するものも知られている。このペイロード機能は、前記バケットに保持される前記土砂の荷重を計測する機能である。前記土砂の荷重は、例えばブームシリンダのシリンダ圧を用いて演算される。
【0003】
前記複数の油圧シリンダのそれぞれは、シリンダ本体と、当該シリンダ本体に対して変位するピストン部材とを含み、前記ピストン部材がストロークエンドに到達するときの衝撃を緩和するためのクッション機構を有する。このクッション機構は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材がクッション領域に進入するのに伴って前記油圧シリンダのシリンダ圧を上昇させるとともに前記ピストン部材の変位速度を低下させ、これにより、前記衝撃が緩和される。従って、前記ペイロード機能による前記土砂の荷重計測は、前記ブームシリンダのピストン部材がクッション領域に進入すると、前記ブームシリンダのシリンダ圧の上昇の影響を受けるため、正確に行われない。
【0004】
上記のようなクッション領域による影響を回避するための技術として特許文献1及び特許文献2の技術が提案されている。
【0005】
特許文献1は、ブームが上昇限度に到達すると、油圧クッション領域に入ってリリーフ作動して正確な負荷圧が検出できなくなるので、ブームの下げ操作を促すメッセージが表示される技術を開示する(特許文献1の段落0042、
図11(イ))。
【0006】
特許文献2は、油圧シリンダが伸縮ストローク端に達すると、正確な圧力を検出することができないため(特許文献2の段落0040)、3通りの方法、すなわち、ブームシリンダの圧力に基づいた荷重値の演算、アームシリンダの圧力に基づいた荷重値の演算、及びバケットシリンダの圧力に基づいた荷重値の演算を行い(特許文献2の段落0026)、演算された荷重値に優先順位を付し、最適な荷重値を決定する技術を開示する。具体的に、油圧シリンダがストロークエンドに伸縮されている場合、荷重を演算するのに不適切な状態の油圧シリンダであると判定される(特許文献2の段落0019)。荷重計測に不適切な状態とされた油圧シリンダに関する荷重値は、そうでない油圧シリンダに関する荷重値より優先順位が下位とされる(特許文献2の段落0025)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-294765号公報
【文献】特開2012-103029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、オペレータは正確な負荷圧を検出するためにブームの下げ操作を行う必要があるため、積込作業の作業効率が低下するという問題がある。特許文献2の技術では、複数の方法による複数の荷重値の演算が必要であり、このため、複数の油圧シリンダの圧力をそれぞれ検出する複数の圧力センサが必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、作業効率の低下を抑制するとともに、複数の油圧シリンダの圧力に基づいた複数の荷重値の演算を行わなくても前記クッション領域による影響を回避してアタッチメントにより保持される作業の対象物の荷重を取得することができる作業機械を提供することを目的とする。
【0010】
提供される作業機械は、機体と、前記機体に対して相対的な動作を行うことが可能な複数の可動部を含み、前記複数の可動部が作業の対象物を保持可能なアタッチメントを含む作業装置と、シリンダ本体とピストン部材とを含み、前記シリンダ本体内への作動油の供給を受けることにより前記複数の可動部のうちの一つを駆動するように前記ピストン部材が前記シリンダ本体に対してストローク方向に変位する油圧シリンダと、前記油圧シリンダの圧力であるシリンダ圧を検出する圧力検出部と、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重を、前記シリンダ圧を用いて演算する荷重演算部と、荷重記憶部と、荷重情報出力部と、を備える。前記油圧シリンダは、クッション機構を有する。前記ピストン部材が前記シリンダ本体に対して前記ストローク方向に変位可能な最大範囲であるストローク範囲は、当該ストローク範囲の一端であるストロークエンドを含む端部領域を構成するクッション領域を含む。前記クッション機構は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記クッション領域に進入するのに伴って前記シリンダ圧を上昇させるとともに前記ピストン部材の変位速度を低下させるように構成される。この作業機械では、前記クッション領域に対して前記ストロークエンドから遠ざかる方向に離れた位置に特定位置が予め設定され、前記特定位置と前記ストロークエンドとの間の領域が特定領域として予め設定され、前記荷重情報出力部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定位置に至るまでは、前記荷重演算部により演算される荷重を前記対象物の荷重の情報である荷重情報として出力し、前記荷重記憶部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定位置に到達したときに前記荷重演算部により演算される荷重を特定荷重として記憶し、前記荷重情報出力部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入した後には、前記特定荷重を前記荷重情報として出力する。
【0011】
この作業機械では、前記クッション領域に対して前記ストロークエンドから遠ざかる方向に離れた位置に前記特定位置が設定されている。そして、前記作業機械は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入した後には、前記ピストン部材が前記特定位置に到達した時点で記憶された前記特定荷重を前記荷重情報として採用する。このため、前記ピストン部材がクッション領域に進入して前記シリンダ圧が上昇したときに前記荷重演算部により演算される荷重が前記荷重情報として採用されない。従って、この作業機械では、オペレータが特許文献1のようにブームの下げ操作を行う必要がないので作業効率の低下を抑制することができるとともに、複数の油圧シリンダの圧力に基づいた複数の荷重値の演算を行わなくても前記クッション領域による影響を回避してアタッチメントにより保持される作業の対象物の荷重を取得することができる。
【0012】
前記作業機械において、前記特定領域の前記ストローク方向の長さは、前記クッション領域の前記ストローク方向の長さよりも大きく、かつ、前記ストローク範囲の全長の5%以下であることが好ましい。
【0013】
この態様では、前記ピストン部材が前記ストロークエンドに極力近い位置に配置されているときに前記荷重演算部により演算される荷重を、前記特定荷重として採用することができる。
【0014】
前記作業機械では、前記荷重情報出力部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入したにもかかわらず、前記シリンダ圧の上昇が抑制されることを判定可能な予め設定された条件が満たされる場合には、前記荷重演算部により演算される荷重を前記荷重情報として出力してもよい。
【0015】
この態様では、前記ピストン部材が前記特定領域に進入したにもかかわらず、前記条件が満たされる場合には、前記シリンダ圧が大きく上昇しないため、前記荷重演算部により演算される荷重は、実際に前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重と大差ない。このため、上記の場合、前記荷重演算部により演算される荷重が前記荷重情報として出力されてもよい。
【0016】
前記作業機械は、前記対象物を保持する保持作業と、保持された前記対象物を移動先の上に移動させる移動作業と、前記移動先の上で前記対象物を解放する解放作業と、を行うことができるように構成され、前記作業機械は、前記解放作業において前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を決定する予測荷重決定部をさらに備え、前記予測荷重決定部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定位置に至るまでに、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合、前記荷重演算部により演算された荷重に基づいて前記予測荷重を決定し、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入した後に、前記予測荷重決定条件が満たされた場合、前記特定荷重を前記予測荷重として決定することが好ましい。
【0017】
この態様では、前記予測荷重決定条件が満たされるときの前記ピストン部材の位置に応じて前記予測荷重を決定する方法が選択される。前記予測荷重決定条件が満たされるときの前記ピストン部材の位置が前記特定領域に含まれる場合、すなわち、前記ピストン部材が前記クッション領域に進入するのに伴って前記シリンダ圧が上昇した状態で前記予測荷重決定条件が満たされた場合であっても、前記予測荷重として決定される前記特定荷重は、前記シリンダ圧の上昇の影響を受けない。従って、この態様では、前記予測荷重が前記解放作業において前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重とかけ離れたものとなることが回避される。決定された前記予測荷重は、例えば、ダンプトラックなどの前記移動先に積み込まれる土砂などの前記対象物の積み込み量の算出に用いられる。
【0018】
前記作業機械において、前記予測荷重決定条件は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための予め設定された減少操作が前記保持作業の後に行われるという条件が満たされることを含んでいてもよい。
【0019】
この態様は、前記予測荷重と、前記解放作業において前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重との差を小さくすることを可能にする。具体的に、前記予測荷重決定条件を構成する前記減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための操作である。このような減少操作が行われる時期のうち主要なものの一例は、前記アタッチメントに保持された対象物が前記解放作業において前記移動先の上で解放されるときである。すなわち、この作業機械では、前記予測荷重の決定のタイミングを前記減少操作に関連付けることにより、前記予測荷重の決定のタイミングを前記解放作業が開始されるタイミングに近づけることが可能になる。前記解放作業の前に行われる前記移動作業では、当該移動作業中に例えば前記アタッチメントに生じる振動によって前記アタッチメントに保持される土砂などの前記対象物の一部が前記アタッチメントから落下することがある。従って、前記予測荷重の決定のタイミングを前記解放作業が開始されるタイミングに近づけることにより、前記予測荷重と前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重との間に生じるずれを小さくすることが可能になる。
【0020】
前記作業機械において、前記複数の可動部は、前記機体に起伏可能に支持されるブームを含み、前記予測荷重決定条件は、前記ブームが起立方向に作動するブーム上げ動作の速度が前記移動作業において減少するという条件が満たされること含んでいてもよい。
【0021】
この態様は、上記と同様の理由から、前記予測荷重と、前記解放作業において前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重との差を小さくすることを可能にする。具体的に、前記ブーム上げ動作の速度が前記移動作業において減少するタイミングは、前記移動作業の後半であることが多い。前記予測荷重の決定のタイミングを前記ブーム上げ動作の速度が減少するタイミングに関連付けることにより、前記予測荷重の決定のタイミングを前記解放作業が開始されるタイミングに近づけることが可能になる。このことは、前記予測荷重と前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重との間に生じるずれを小さくすることを可能にする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、作業効率の低下を抑制するとともに、複数の油圧シリンダの圧力に基づいた複数の荷重値の演算を行わなくても前記クッション領域による影響を回避してアタッチメントにより保持される作業の対象物の荷重を取得することができる作業機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】前記油圧ショベルに搭載されるコントローラ及びこれにより制御される回路の構成を示す図である。
【
図3】前記油圧ショベルのブームシリンダを示す断面図である。
【
図7】前記ブームシリンダのシリンダ圧の変化を示すグラフである。
【
図8】前記コントローラにより実行される制御動作を示すフローチャートである。
【
図9】前記制御動作において、ブームシリンダのピストン部材の位置(又はブーム角度)、バケット操作の操作量(操作信号)、及び前記バケットに保持される土砂の荷重のそれぞれの経時変化の一例を示すグラフである。
【
図10】前記コントローラにより実行される制御動作を示すフローチャートである。
【
図11】前記油圧ショベルによる土砂の積込作業、及び前記制御動作により表示装置に表示される内容の一例を示す図である。
【
図12】前記油圧ショベルによる土砂の積込作業、及び前記制御動作により表示装置に表示される内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルを示す。
図2は、前記油圧ショベルに搭載されるコントローラ及びこれにより制御される回路の構成を示す図である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、油圧ショベル10は、下部走行体11と、前記下部走行体11に旋回可能に搭載される上部旋回体12と、前記上部旋回体12に搭載される作業装置13と、複数の油圧アクチュエータと、少なくとも一つの油圧ポンプ21と、パイロットポンプ22と、複数の操作装置と、複数の制御弁と、複数の圧力センサと、姿勢検出部と、コントローラ50と、を備える。
【0027】
前記下部走行体11及び前記上部旋回体12は、前記作業装置13を支持する機体を構成する。前記下部走行体11は、前記油圧ショベル10を走行させるための図略の走行装置を有し、地面Gの上を走行することができる。前記上部旋回体12は、旋回フレーム12Aと、その上に搭載されるエンジンルーム12B及びキャブ12Cとを含む。前記エンジンルーム12Bはエンジンを収容し、前記キャブ12Cには、オペレータが着座する座席、種々の操作レバー、操作ペダルなどが配置されている。
【0028】
前記作業装置13は、前記機体に対して相対的な動作を行うことが可能な複数の可動部を含む。前記複数の可動部は、土砂をダンプトラックに積み込むための積込作業を行うことが可能である。前記複数の可動部は、ブーム14、アーム15及びバケット16を含む。前記土砂は、作業の対象物の一例であり、前記ダンプトラックは、移動先の一例であり、前記バケット16は、アタッチメントの一例である。
【0029】
前記積込作業は、前記土砂を掘削して前記バケット16に保持する保持作業(掘削作業)と、保持された前記土砂を前記ダンプトラックの真上に移動する移動作業と、前記ダンプトラックの上で前記土砂を解放する解放作業(排土作業)と、を含む。前記解放作業において解放された前記土砂は、前記バケット16から落下して前記ダンプトラックに積み込まれる。
【0030】
前記ブーム14は、
図1の矢印A1に示されるように起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能となるように前記旋回フレーム12Aの前部に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム15は、
図1の矢印A2に示されるように水平軸回りに回動可能となるように前記ブーム14の先端部に取り付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記バケット16は、
図1の矢印A3に示されるように水平軸周りに回動可能となるように前記アーム15の先端部に取り付けられる基端部を有する。
【0031】
前記複数の油圧アクチュエータは、複数の油圧シリンダと、旋回モータ20と、を含む。前記複数の油圧シリンダは、前記ブーム14を動かすための少なくとも一つのブームシリンダ17と、前記アーム15を動かすためのアームシリンダ18と、前記バケット16を動かすためのバケットシリンダ19と、を含む。
図2では、1つの油圧ポンプ21のみが図示されているが、前記油圧ショベル10は、複数の油圧ポンプを備えていてもよい。
【0032】
前記少なくとも一つのブームシリンダ17は、前記上部旋回体12と前記ブーム14との間に介在し、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記ブーム14を前記矢印A1で示す起立方向又は倒伏方向に回動させる。
【0033】
前記アームシリンダ18は、前記ブーム14と前記アーム15との間に介在し、前記作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記アーム15を前記矢印A2で示すアーム引き方向又はアーム押し方向に回動させる。前記アーム引き方向は、前記アーム15の先端が前記ブーム14に近づく方向であり、前記アーム押し方向は、前記アーム15の先端が前記ブーム14から離れる方向である。
【0034】
前記バケットシリンダ19は、前記アーム15と前記バケット16との間に介在し、前記作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記バケット16を前記矢印A3で示すバケット引き方向又はバケット押し方向に回動させる。前記バケット引き方向は、
図1に示す前記アーム15の長手方向を示す直線15aと、前記バケット16の方向を示す直線16aとのなす角度θ3が小さくなる方向であり、前記バケット押し方向は、前記角度θ3が大きくなる方向である。
【0035】
前記旋回モータ20は、前記作動油の供給を受けることにより前記上部旋回体12を旋回させるように作動する油圧モータである。当該旋回モータ20は、前記作動油の供給を受けて回転する図略の出力軸を有し、当該出力軸は上部旋回体12を左右双方向に旋回させるように上部旋回体12に連結されている。具体的に、前記旋回モータ20は、一対のポートを有し、これらのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に前記出力軸が回転するとともに他方のポートから作動油を排出する。
【0036】
前記ブームシリンダ17は、クッション機構を有する。本実施形態では、このクッション機構の一例として
図3に示す態様を挙げているが、前記クッション機構は、
図3に示す態様に限られず、種々の態様を採用可能である。以下、
図3を参照して、前記ブームシリンダ17のクッション機構などの構造について説明する。
【0037】
図3~
図6は、ブームシリンダ17を示す断面図である。
図3に示すように、前記ブームシリンダ17は、シリンダ本体171と、ピストン部材172と、を含む。前記ブームシリンダ17は、前記シリンダ本体171内への前記作動油の供給を受けることにより前記ブーム14を駆動するように当該ピストン部材172が前記シリンダ本体171に対してストローク方向、すなわち、前記ブームシリンダ17の長手方向に変位する。
【0038】
前記シリンダ本体171は、筒状部171Aと、第1の蓋部171Bと、第2の蓋部171Cと、を含む。前記ピストン部材172は、ピストン172Aと、ピストンロッド172Bと、第1のクッションリング172Cと、第2のクッションリング172Dと、を含む。
【0039】
前記シリンダ本体171の前記第1の蓋部171B及び前記第2の蓋部171Cは、前記筒状部171Aの両端部の開口をそれぞれ塞ぐように前記筒状部171Aにそれぞれ取り付けられている。
【0040】
前記第1の蓋部171Bは、底部173と、底部173から前記筒状部171Aに向かって延びる筒状の胴部174と、を含む。この胴部174の先端部は、前記筒状部171Aの一方の端部の開口に結合されている。
【0041】
前記第1の蓋部171Bは、凹部175と、供給路176と、バイパス経路177と、貫通孔178と、を有する。前記凹部175は、前記胴部174の内周面と前記底部173の底面とにより画定される空間であり、前記筒状部171Aの内周面により画定される空間(収容空間)と連通している。前記供給路176は、前記油圧ポンプ21から吐出される前記作動油の入口又は出口である。前記バイパス経路177は、その一方の開口が前記胴部174の先端面に設けられ、他方の開口が前記胴部174の内周面に設けられ、これらの開口の間をつなぐ油路である。前記バイパス経路177の中間部には例えば絞り弁などの絞り機構179が設けられている。この絞り機構179は、前記バイパス経路177の流路断面積を調節することができる。前記貫通孔178は、前記底部173を前記ストローク方向に貫通しており、前記ピストンロッド172Bが挿通されている。
【0042】
前記第2の蓋部171Cは、前記貫通孔178を有していないこと以外は、前記第1の蓋部171Bと同様の構造を有するので、前記第1の蓋部171Bと同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0043】
前記ピストンロッド172Bは、その基端部を構成するロッド基端部180と、その先端部を構成する図略のロッド先端部と、を有する。前記ロッド基端部180は、前記シリンダ本体171の内部(前記収容空間)に収容されている。前記ピストン172Aは、前記ピストンロッド172Bの前記基端部180に装着され、前記シリンダ本体171の前記筒状部171Aの内周面に沿って摺動可能に構成されている。これにより、前記シリンダ本体171の内部は、ロッド側室17Rと、ヘッド側室17Hとに区画されている。前記第1のクッションリング172Cは、前記ロッド側室17Rにおいて前記ピストン172Aに隣接する位置に前記ピストンロッド172Bの前記基端部180に装着されている。前記第2のクッションリング172Dは、前記ヘッド側室17Hにおいて前記ピストン172Aに隣接する位置に前記ピストンロッド172Bの前記基端部180に装着されている。
【0044】
前記第1のクッションリング172Cは、前記第1の蓋部171Bの前記凹部175に嵌合することが可能な大きさを有する。前記第2のクッションリング172Dは、前記第2の蓋部171Cの前記凹部175に嵌合することが可能な大きさを有する。
【0045】
前記ブームシリンダ17は、当該ブームシリンダ17が伸長して前記ピストン部材172が第1のストロークエンドE1(伸長時のストロークエンド)に近づいたときに衝撃を緩和するように機能する第1のクッション機構C1と、前記ブームシリンダ17が収縮して前記ピストン部材172が第2のストロークエンドE2(収縮時のストロークエンド)に近づいたときに衝撃を緩和するように機能する第2のクッション機構C2と、を有する。
【0046】
前記第1のクッション機構C1は、主として、前記第1のクッションリング172Cと、前記第1の蓋部171Bと、前記ピストン172Aの第1の端面S1と、により構成される。前記第2のクッション機構C2は、主として、前記第2のクッションリング172Dと、前記第2の蓋部171Cと、前記ピストン172Aの第2の端面S2と、により構成される。前記第1のクッション機構C1と前記第2のクッション機構C2は、同様の構造を備えるので、以下では、前記第1のクッション機構C1についてのみ説明する。
【0047】
図6に示すように、前記ピストン部材172が前記シリンダ本体171に対して前記ストローク方向に変位可能な最大範囲であるストローク範囲は、前記第1のストロークエンドE1から前記第2のストロークエンドE2までの領域である。前記ストローク範囲の全長L1は、
図6において矢印で示される長さである。なお、
図6では、前記第1のストロークエンドE1に配置された前記ピストン部材172が実線で図示され、前記第2のストロークエンドE2に配置された前記ピストン部材172が二点鎖線で図示されている。
【0048】
前記ストローク範囲は、当該ストローク範囲の一端である前記第1のストロークエンドE1を含む端部領域を構成するクッション領域を含む。前記第1のクッション機構C1は、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記クッション領域に進入するのに伴って前記シリンダ圧を上昇させるとともに前記ピストン部材172の変位速度を低下させるように構成される。
【0049】
具体的に、前記第1のストロークエンドE1に向かう前記ピストン部材172は、
図3に示す位置から、
図4に示す位置、
図5に示す位置、及び
図6に示す位置の順に変位する。
図5に示すように、ピストン部材172のピストン172A及び前記第1のクッションリング172Cが前記第1のストロークエンドE1に近づくと、前記第1のクッションリング172Cが前記第1の蓋部171Bの前記凹部175に進入する。その結果、前記第1のクッションリング172Cと、筒状部171Aの内周面のうち前記第1のクッションリング172Cの周りを囲む部分と、前記ピストン172Aの第1の端面S1と、により囲まれるクッション空間CSが形成される(
図5参照)。このクッション空間CSに収容されている作動油は、当該クッション空間CSに連通する前記バイパス経路177を通って前記凹部175に移動する。このとき、前記バイパス経路177の流量は前記絞り機構179により制限されているため、前記クッション空間CSの圧力が上昇し、前記ピストン部材172に対するブレーキ作用が生じる。これにより、前記ピストン部材172の変位速度が低下し、衝撃が緩和される。
【0050】
図7は、前記ブームシリンダ17のシリンダ圧の時間的変化を示すグラフである。具体的に、
図7は、後述するブーム上げ操作が行われることにより、前記ピストン部材172が、前記クッション領域よりも手前側の領域(後述する手前側領域R1)から前記第1のストロークエンドE1に向かって変位し、前記クッション領域に進入するまでの前記シリンダ圧の時間的変化の一例を示している。
図7に示すように、前記ピストン部材172の前記第1のクッションリング172Cが、前記シリンダ本体171における前記第1の蓋部171Bの前記凹部175に進入すると、前記ブームシリンダ17のロッド側室17Rの圧力(保持圧)は急激に上昇する(
図7のクッション領域)。
【0051】
再び
図2を参照し、前記複数の操作装置は、ブーム操作装置61と、アーム操作装置62と、バケット操作装置63と、旋回操作装置64と、を含む。これらの操作装置61~64は、オペレータの操作を受ける操作レバー61A~64Aをそれぞれ有する。各操作装置は、油圧式の操作装置により構成されていてもよく、電気式の操作装置により構成されていてもよい。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、オペレータが着座する座席の前方右側に右側操作レバーを設け、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。同様に、前記座席の前方左側に左側操作レバーを設け、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
図2は、前記操作装置61~64が電気式の操作装置により構成される場合の回路構成を示している。
【0052】
前記複数の制御弁は、ブーム制御弁41と、アーム制御弁42と、バケット制御弁43と、旋回制御弁44と、一対のブーム電磁比例弁45と、一対のアーム電磁比例弁46と、一対のバケット電磁比例弁47と、一対の旋回電磁比例弁48と、を含む。
【0053】
例えば、前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aが操作されると、前記操作レバー63Aの操作量及び操作方向に関する情報は電気信号(操作信号)に変換されてコントローラ50に入力される。コントローラ50は、前記操作信号に対応した指令信号(指令電流)を、前記一対のバケット電磁比例弁47のうちの前記操作レバー63Aの操作方向に対応するバケット電磁比例弁47に入力する。当該バケット電磁比例弁47は、前記パイロットポンプ22が吐出するパイロット油の圧力を前記指令信号に応じて減圧し、減圧されたパイロット圧を、前記バケット制御弁43における一対のパイロットポートの一方に導く。これにより、前記バケット制御弁43は、前記パイロット圧が入力される前記パイロットポートに対応する方向に、前記パイロット圧の大きさに対応するストロークで開弁する。その結果、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油が、前記ストロークに対応する流量で前記バケットシリンダ19のヘッド側室又はロッド側室に供給されることが許容される。なお、他の操作装置61,62,64の操作レバーが操作された場合の動作は、上記と同様であるので説明を省略する。
【0054】
なお、各操作装置が油圧式である場合の油圧回路図は省略するが、その場合、前記油圧ショベル10の油圧回路は次のように動作する。例えば前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aが操作されると、前記パイロットポンプ22からのパイロット一次圧が前記バケット操作装置63のリモコン弁において前記操作レバー63Aの操作量に応じて減圧され、減圧されたパイロット圧が前記リモコン弁から出力される。出力されたパイロット圧は、前記バケット制御弁43における一対のパイロットポートの一方に入力される。これにより、前記バケット制御弁43は、前記パイロット圧が入力される前記パイロットポートに対応する方向に、前記パイロット圧の大きさに対応するストロークで開弁する。その結果、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油が、前記ストロークに対応する流量で前記バケットシリンダ19のヘッド側室又はロッド側室に供給されることが許容される。
【0055】
前記複数の圧力センサは、
図2に示すように、前記ブームシリンダ17のヘッド圧(シリンダ圧の一例)を検出するための圧力センサ35と、前記ブームシリンダ17のロッド圧(シリンダ圧の一例)を検出するための圧力センサ36と、を含む。前記圧力センサ35及び前記圧力センサ36は、圧力検出部を構成する。
【0056】
前記姿勢検出部は、前記ブーム14の姿勢情報を検出可能なブーム姿勢検出装置31と、前記アーム15の姿勢情報を検出可能なアーム姿勢検出装置32と、前記バケット16の姿勢情報を検出可能なバケット姿勢検出装置33と、を含む。本実施形態では、これらの姿勢検出装置31,32,33のそれぞれは、例えば、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)により構成される。
【0057】
なお、前記姿勢検出部は、ストロークセンサにより構成されていてもよく、角度センサにより構成されていてもよく、衛星測位システムを利用した位置検出装置により構成されていてもよい。すなわち、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、前記ブームシリンダ17、前記アームシリンダ18、及び前記バケットシリンダ19のストロークを検出する前記ストロークセンサにより得られるストローク値に基づいて演算されてもよい。また、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、前記ブーム14の前記基端部の回動軸、前記アーム15の前記基端部の回動軸、及び前記バケット16の前記基端部の回動軸にそれぞれ設けられた前記角度センサにより得られる角度値に基づいて演算されてもよい。また、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、GNSSセンサのような衛星測位システムを利用した前記位置検出装置により得られる検出値に基づいて演算されてもよい。
【0058】
上記のような姿勢検出部により検出された前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢に関する姿勢情報(姿勢信号)は、コントローラ50に入力される。
【0059】
前記コントローラ50(メカトロコントローラ)は、例えばCPU、メモリなどを備えるコンピュータにより構成され、操作判定部51と、姿勢演算部52と、速度演算部53と、荷重演算部54と、荷重記憶部55と、予測荷重決定部56と、荷重情報出力部57と、を機能として有する。
【0060】
前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64のそれぞれの操作レバーに操作が与えられたか否かを判定する。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが
図2に示すような前記電気式の操作装置である場合、前記操作装置61~64のそれぞれは、対応する操作レバーに与えられる操作量及び操作方向に応じた前記操作信号を前記コントローラ50に入力する。前記操作判定部51は、入力された前記操作信号に基づいて、対応する操作装置の操作レバーに操作が与えられたこと、具体的には、前記操作レバーに与えられた前記操作量及び前記操作方向を判定することができる。
【0061】
具体的に、本実施形態では、前記操作判定部51は、前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aに前記ブームシリンダ17を伸長させるブーム上げ操作又は前記ブームシリンダ17を収縮させるブーム下げ操作が与えられたこと、前記アーム操作装置62の前記操作レバー62Aに前記アームシリンダ18を伸長させるアーム引き操作又は前記アームシリンダ18を収縮させるアーム押し操作が与えられたこと、前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aに前記バケットシリンダ19を伸長させるバケット引き操作及び前記バケットシリンダ19を収縮させるバケット押し操作が与えられたこと、前記旋回操作装置64の前記操作レバー64Aに前記上部旋回体12を旋回させる右旋回操作又は左旋回操作が与えられたこと、をそれぞれ判定することができる。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが前記電気式の操作装置である場合、前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aに与えられる操作を検出可能な操作検出部を構成する。
【0062】
前記操作装置61~64のそれぞれが前記油圧式の操作装置である場合、前記油圧ショベル10は、前記複数の操作装置61~64のそれぞれの前記操作レバーに与えられる操作量に応じて前記リモコン弁から出力されるパイロット圧を検出する図略の複数のパイロット圧センサを備える。複数のパイロット圧センサのそれぞれは、検出したパイロット圧に対応する信号である操作信号を前記コントローラ50に入力する。前記操作判定部51は、入力された前記操作信号に基づいて、対応する操作装置の操作レバーに操作が与えられたこと、具体的には、前記操作レバーに与えられた前記操作量及び前記操作方向を判定することができる。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが前記油圧式の操作装置である場合、前記複数のパイロット圧センサと前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aに与えられる操作を検出可能な操作検出部を構成する。
【0063】
前記姿勢演算部52は、前記姿勢検出部から入力される前記姿勢信号に基づいて、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢のそれぞれを演算する。前記姿勢演算部52は、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢として、例えば
図1に示すブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3を、前記姿勢信号に基づいてそれぞれ演算してもよい。
【0064】
前記ブーム角度θ1は、例えば、前記ブーム14の方向を示す直線14aと、前記上部旋回体12の旋回中心軸Cに直交する平面Pとのなす角度であってもよい。前記アーム角度θ2は、前記アーム15の方向を示す前記直線15aと、前記直線14aとのなす角度であってもよい。前記バケット角度θ3は、前記バケット16の方向を示す前記直線16aと、前記直線15aとのなす角度であってもよい。前記直線14aは、前記ブーム14の前記基端部の回動軸と、前記ブーム14の前記先端部の回動軸(前記アーム15の前記基端部の回動軸)とを結ぶ直線であってもよい。前記直線15aは、前記アーム15の前記基端部の回動軸と前記アーム15の前記先端部の回動軸(前記バケット16の前記基端部の回動軸)とを結ぶ直線であってもよい。前記直線16aは、前記バケット16の前記基端部の回動軸と前記バケット16の先端部16Eとを結ぶ直線であってもよい。
【0065】
前記速度演算部53は、前記ブーム14が前記起立方向に作動するブーム上げ動作の速度を演算する。前記速度演算部53は、周期的に取得される複数の前記ブーム角度θ1に基づいて、前記ブーム角度θ1の変化量を、その変化した時間で割り算することにより前記ブーム上げ動作の速度(角速度)を演算してもよい。また、前記ブーム姿勢検出装置31が前記ストロークセンサにより構成される場合、前記速度演算部53は、周期的に取得される前記ブームシリンダ17の複数のストローク値に基づいて、ストローク値の変化量を、その変化した時間で割り算することにより前記ブームシリンダ17の伸長速度を演算し、演算された前記伸長速度に基づいて前記ブーム上げ動作の速度を演算してもよい。
【0066】
前記荷重演算部54は、前記バケット16により保持される前記対象物の荷重を、前記シリンダ圧を用いて演算する。前記荷重演算部54は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を例えば以下のようにして算出する。なお、前記対象物の荷重は、以下の演算方法に限られず、他の公知の手段を用いて演算することが可能である。
【0067】
本実施形態では、前記荷重演算部54は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を次の式(1)に基づいて算出する。
【0068】
M=M1+M2+M3+W×L ・・・(1)
式(1)において、Mは、前記ブームシリンダ17のブームフートピン回りのモーメントである。M1は、前記ブーム14の前記ブームフートピン回りのモーメントである。M2は、前記アーム15の前記ブームフートピン回りのモーメントである。M3は、前記バケット16の前記ブームフートピン回りのモーメントである。Wは、前記バケット16に保持される土砂等の対象物の荷重である。Lは、前記ブームフートピンから前記バケット16の基端部までの水平方向の距離である。
【0069】
前記モーメントMは、ブームシリンダ17のヘッド圧とロッド圧とから算出される。前記モーメントM1は、前記ブーム14の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記ブーム14の重量との積により算出される。前記モーメントM2は、前記アーム15の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記アーム15の重量との積により算出される。前記モーメントM3は、前記バケット16の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記バケットの重量との積により算出される。
【0070】
前記ブーム14の重心の位置、前記アーム15の重心の位置、及び前記バケット16の重心の位置のそれぞれは、前記姿勢検出部により検出される前記作業装置13の姿勢に関する情報に基づいて算出される。前記ブームシリンダ17の前記ヘッド圧は、圧力センサ35により検出され、前記ブームシリンダ17の前記ロッド圧は、圧力センサ36により検出される。前記水平方向の距離Lは、前記姿勢検出部により検出される前記作業装置13の姿勢に関する情報に基づいて算出される。
【0071】
なお、本実施形態では、前記姿勢検出部、前記圧力センサ35,36、前記姿勢演算部52及び前記荷重演算部54は、前記バケット16により保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部を構成する。
【0072】
前記荷重記憶部55は、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が予め設定された特定位置SPに到達したときに(
図4参照)前記荷重演算部54により演算される荷重を特定荷重として記憶する。
【0073】
前記特定位置SPは、
図3に示すように、前記クッション領域に対して前記第1のストロークエンドE1から遠ざかる方向に離れた位置に設定される。
【0074】
前記ストローク範囲は、手前側領域R1と、特定領域R2と、を含む。前記特定領域R2は、前記特定位置SPと前記第1のストロークエンドE1との間の領域である。前記手前側領域R1は、前記特定位置SPよりも前記第2のストロークエンドE2側の領域である。具体的に、前記手前側領域R1は、前記特定位置SPと前記第2のストロークエンドE2との間の領域であってもよい。また、前記第2のストロークエンドE2側にもクッション領域(第2のクッション領域)が設けられている場合には、前記手前側領域R1は、前記特定位置SPと前記第2のクッション領域との間の領域であってもよい。さらに、前記第2のストロークエンドE2側にも特定位置(第2の特定位置)が設けられている場合には、前記手前側領域R1は、前記特定位置SPと前記第2の特定位置との間の領域であってもよい。前記手前側領域は、
図7に示す安定域のように、前記クッション領域に比べて圧力変動の少ない領域である。なお、ブームシリンダ17が動き始めるとき(起動時)には、
図7に示すように一時的に圧力変動が生じる。
【0075】
本実施形態では、前記特定領域R2の前記ストローク方向の長さは、前記ストローク範囲の全長の5%以下である。これにより、前記特定位置SPは、前記ストローク範囲において、前記第1のストロークエンドE1の近傍に設定されている。その結果、前記特定位置SPは、必然的に、前記クッション領域の近くに設定される。従って、前記特定位置SPは、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記クッション領域に近づいたことと関連付けることが可能な位置となる。
【0076】
前記特定領域R2の前記ストローク方向の長さの下限値は、例えば、前記油圧シリンダを構成する前記シリンダ本体及び前記ピストン部材の寸法の公差と、前記シリンダ本体に対する前記ピストン部材のストローク位置又はこれに対応する値を検出可能なセンサの検出精度と、を考慮して決めることができる。当該センサとしては、例えば、前記ストロークセンサ、前記角度センサなどを挙げることができる。前記下限値は、例えば、前記クッション領域の前記ストローク方向の長さと、前記シリンダ本体及び前記ピストン部材の寸法の最大公差と、前記センサの分解能と、を足し算した値に設定されてもよい。
【0077】
前記予測荷重決定部56は、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記解放作業において前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を、前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて決定する。
【0078】
前記予測荷重決定条件は、前記ブーム上げ動作の速度が前記移動作業において減少するという条件(ブーム上げ速度減少条件)により構成される。前記予測荷重決定部56は、前記ブーム上げ速度減少条件が満たされたか否かを、例えば次のように判定することができる。
【0079】
前記移動作業において前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aに戻し操作が与えられたことを示す戻し操作信号が前記コントローラ50に入力されると、前記操作判定部51は、前記戻し操作が行われたと判定し、前記予測荷重決定部56は、前記操作判定部51の上記判定に基づいて、前記予測荷重決定条件を構成する前記ブーム上げ速度減少条件が満たされたと判定する。具体的には次の通りである。
【0080】
前記保持作業の完了後に行われる前記移動作業において、オペレータは、前記ブーム上げ動作が行われるように前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aを中立位置から所定の方向に傾斜させるブーム上げ操作を前記操作レバー61Aに与え、当該操作レバー61Aが傾斜した状態で当該操作レバー61Aを一定位置(例えばフルレバーの位置)に保持する。そして、オペレータは、前記バケット16が前記ダンプトラック(移動先)の上の目標位置に近づいたことを認識すると、前記操作レバー61Aを前記一定位置から前記中立位置側に戻す前記戻し操作を行う。これにより、前記ブーム上げ動作の速度が減少し始める。前記戻し操作信号は、前記移動作業において前記ブーム上げ動作の速度の減少を判別可能な速度減少判別信号の一例である。
【0081】
前記ブーム操作装置61が前記電気式の操作装置である場合、前記戻し操作信号は、前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aに前記戻し操作が与えられたときに前記ブーム操作装置61から前記コントローラ50に入力される前記操作信号である。また、前記ブーム操作装置61が前記油圧式の操作装置である場合、前記戻し操作信号は、前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aに前記戻し操作が与えられたときに前記パイロット圧センサから前記コントローラ50に入力される前記操作信号(前記パイロット圧センサにより検出されるパイロット圧に対応する前記操作信号)である。
【0082】
また、前記予測荷重決定部56は、前記移動作業において前記ブーム上げ動作の速度が減少し始めたと判定した場合に、前記ブーム上げ速度減少条件が満たされたと判定することもできる。具体的に、前記予測荷重決定部56は、前記速度演算部53により周期的に演算される前記ブーム上げ動作の速度(速度信号)に基づいて前記ブーム上げ動作の速度が減少し始めたこと、すなわち、前記ブーム上げ動作の加速度がマイナスに変化したことを判定することができる。前記速度信号は、前記移動作業において前記ブーム上げ動作の速度の減少を判別可能な速度減少判別信号の一例である。
【0083】
前記予測荷重の決定は、前記予測荷重決定部56により前記ブーム上げ速度減少条件が満たされたと判定されたことをトリガーとして行われる。
【0084】
具体的に、前記予測荷重決定部56は、例えば、前記予測荷重決定条件が満たされたと判定した場合、その判定をトリガーとして前記荷重取得部が取得する前記対象物の荷重(前記バケット16が保持する前記対象物の荷重)を、前記予測荷重として決定してもよい。また、前記予測荷重決定部56は、例えば、前記予測荷重決定条件が満たされたと判定した場合、前記保持作業の完了後に取得されて記憶された荷重を、前記予測荷重として決定してもよい。前記保持作業の完了後に取得されて記憶された荷重が複数存在する場合、例えば当該複数の荷重の平均値を、前記予測荷重として決定してもよい。
【0085】
また、前記予測荷重決定条件は、前記バケット16により保持される前記対象物の量を減少させるための減少操作が前記保持作業の後に検出されるという条件を含んでいてもよい。
【0086】
前記減少操作は、前記バケット押し操作と前記アーム押し操作とを含む。前記バケット押し操作はアタッチメント解放操作の一例である。前記バケット押し操作及び前記アーム押し操作のそれぞれは、前記解放作業を行うための操作に該当し得る操作である。
【0087】
前記予測荷重決定部56は、前記バケット押し操作が前記操作レバー63Aに与えられたこと及び前記アーム押し操作が前記操作レバー62Aに与えられたことの少なくとも一方が前記操作判定部51によって判定されると、前記予測荷重を決定してもよい。
【0088】
前記予測荷重の決定は、前記減少操作の検出時及び前記減少操作の検出前の少なくとも一方において前記荷重取得部により取得された前記荷重に基づいて行われる。
【0089】
具体的に、前記予測荷重決定部56は、例えば、前記バケット押し操作に対応する操作信号及び前記アーム押し操作に対応する操作信号の少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された場合、その時点で前記荷重取得部が取得する前記対象物の荷重(前記バケット16が保持する前記対象物の荷重)を、前記予測荷重として決定してもよい。また、前記予測荷重決定部56は、例えば、前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された場合、前記保持作業の完了後から前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された時点までに取得された荷重を、前記予測荷重として決定してもよい。前記保持作業の完了後から前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された時点までに取得された荷重が複数存在する場合、例えば当該複数の荷重の平均値を、前記予測荷重として決定してもよい。
【0090】
前記荷重情報出力部57は、前記ストローク範囲において前記特定位置SPに対して前記手前側領域R1に前記ピストン部材172が位置するときには、前記荷重演算部54により演算される荷重を前記対象物の荷重の情報である荷重情報として出力し、前記特定領域R2に前記ピストン部材172が位置するときには前記特定荷重を前記荷重情報として出力する。前記荷重情報出力部57は、前記保持作業、前記移動作業、及び前記解放作業の少なくとも一つの作業において、前記バケット16が保持する土砂(対象物)の荷重をリアルタイムで出力してもよい。
【0091】
また、前記荷重情報出力部57は、決定された前記予測荷重に関する情報を前記荷重情報として表示装置70に出力してもよい。また、前記荷重情報出力部57は、前記積込作業において、前記ダンプトラックに排土された土砂の荷重の累積値、前記ダンプトラックに排土する土砂の目標積み込み量、前記ダンプトラックに排土した回数などを出力してもよい。
【0092】
前記表示装置70は、前記油圧ショベル10のキャブ12Cにおいてオペレータが視認可能な位置に配置されていてもよい。前記表示装置70が上記のような各種情報を表示することにより、オペレータは、前記ダンプトラックへの目標積み込み量(積込み目標)に対するその時点での差分(解放可能な対象物の残量)と、その時点でバケット16が保持している土砂(対象物)の荷重と、をリアルタイムで把握することができる。そして、前記排土可能な残量よりも前記バケット16が保持している土砂(対象物)の荷重の方が大きい場合には、オペレータは、解放量調節動作が行われるように前記操作装置の操作レバーを操作し、前記バケット16から前記対象物の一部をこぼして調節する。その後、オペレータは、前記解放作業を行うことにより、前記ダンプトラックに前記目標積み込み量に近い土砂(対象物)を積み込むことができる。前記解放量調節動作は、前記保持作業を行った後に、前記バケット16に保持された土砂(対象物)の一部を当該バケット16から解放することにより前記バケット16に保持された前記土砂の量を減少させ、前記ダンプトラックの上で解放する前記対象物の量(解放量)を調節するための動作である。
【0093】
なお、前記表示装置70は、前記油圧ショベル10とは別の場所にあるパーソナルコンピュータやモバイル情報端末などの表示装置を構成するものであってもよい。
【0094】
図8は、前記コントローラ50により実行される制御動作を示すフローチャートである。
図8は、前記荷重情報出力部57が前記積込作業において、前記バケット16が保持する土砂(対象物)の荷重をリアルタイムで出力するための制御動作を示している。
【0095】
前記油圧ショベル10は、例えばキャブ12Cに設置された図略の荷重計測スイッチを備える。前記積込作業において、オペレータが前記荷重計測スイッチをオンにすると、例えば
図8に示すような制御動作が開始される。
【0096】
前記コントローラ50の前記荷重演算部54は、例えば上述した方法により前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を演算する(ステップS1)。
【0097】
次に、前記荷重情報出力部57は、前記荷重演算部54により演算された前記荷重を前記荷重情報として出力する(ステップS2)。前記荷重情報出力部57から出力された前記荷重情報は、前記キャブ12Cに配置された前記表示装置70に入力され、当該表示装置70は、当該荷重情報を表示する。これにより、オペレータは、前記積込作業を行いながら、前記バケット16に保持される土砂などの前記対象物の荷重をリアルタイムで把握することができる。
【0098】
次に、コントローラ50は、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達したか否かを判定する(ステップS3)。このステップS3の判定は、例えば次のように行われる。
【0099】
前記ピストン部材172が前記第1のストロークエンドE1に向かって変位しているか否かについては、例えば前記操作判定部51が前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aに与えられる前記ブーム上げ操作に対応する操作信号に基づいて判定することができる。また、コントローラ50は、前記速度演算部53により演算される前記ブーム上げ動作の速度に基づいて前記ピストン部材172が前記第1のストロークエンドE1に向かって変位しているか否かを判定してもよい。
【0100】
前記コントローラ50は、前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達したか否かを、前記姿勢検出部により検出される前記ブーム14の姿勢に基づいて前記姿勢演算部52が演算する前記ブーム角度θ1に基づいて判定してもよい。このブーム角度θ1は、前記シリンダ本体171に対する前記ピストン部材172の相対位置に対応している。また、前記コントローラ50は、前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達したか否かを、前記ストロークセンサにより検出される前記ブームシリンダ17のストローク値に基づいて判定してもよい。前記ストローク値は、前記シリンダ本体171に対する前記ピストン部材172の相対位置に対応している。
【0101】
前記コントローラ50は、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達していないと判定すると(ステップS3においてNO)、前記ステップS1,S2の処理が行われる。
【0102】
一方、前記コントローラ50は、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達したと判定すると(ステップS3においてYES)、前記荷重演算部54は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を演算し(ステップS4)、前記荷重記憶部55は、前記荷重演算部54により演算された荷重を特定荷重として記憶する(ステップS5)。
【0103】
前記コントローラ50は、前記ピストン部材172が前記特定領域に位置しているか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6の判定は、例えば次のように行われる。
【0104】
前記コントローラ50は、前記ピストン部材172が前記特定領域に位置しているか否かを、前記姿勢検出部により検出される前記ブーム14の姿勢に基づいて前記姿勢演算部52が演算する前記ブーム角度θ1に基づいて判定してもよい。また、前記コントローラ50は、前記ピストン部材172が前記特定領域に位置しているか否かを、前記ストロークセンサにより検出される前記ブームシリンダ17のストローク値に基づいて判定してもよい。
【0105】
前記コントローラ50は、前記ピストン部材172が前記特定領域に位置していないと判定すると(ステップS6においてNO)、前記ステップS1~S5の処理が行われる。すなわち、前記コントローラ50は、前記ピストン部材172が前記特定領域ではなく前記手前側領域に位置していると判定すると(ステップS6においてNO)、前記ステップS1~S5の処理が行われる。
【0106】
一方、前記コントローラ50が、前記ピストン部材172が前記特定領域に位置していないと判定すると(ステップS6においてYES)、前記荷重情報出力部57は、前記特定荷重を前記荷重情報として出力する(ステップS7)。
【0107】
図9は、前記制御動作において、前記ブームシリンダ17のピストン部材172の位置(又はブーム角度)、前記バケット操作の操作量(操作信号)、及び前記バケット16に保持される土砂の荷重のそれぞれの経時変化の一例を示すグラフである。
【0108】
図9に示すように、前記保持作業(前記掘削作業)では、例えば、前記バケット引き操作、前記アーム引き操作、前記ブーム上げ操作などが行われる。前記移動作業では、例えば、前記ブーム上げ操作、前記旋回操作などが行われる。前記解放作業(前記排土作業)では、例えば、前記バケット押し操作、前記アーム押し操作などが行われる。なお、
図9では、前記アーム引き操作、前記アーム押し操作、及び前記旋回操作の図示は省略されている。
【0109】
図9の最上段のグラフ、2段目のグラフ、及び3段目のグラフは、前記積込作業における前記ブームシリンダ17の動作の具体例である第1のパターン、第2のパターン、及び第3のパターンを示している。前記第1のパターンでは、前記積込作業の開始から終了まで、前記ブームシリンダ17の前記ピストン部材172は、前記特定位置SPに到達しない。前記第2のパターンでは、前記積込作業の前記移動作業(
図9の点Aの時点)において、前記ブームシリンダ17の前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達する。前記第3のパターンでは、前記積込作業の前記保持作業(
図9の点Bの時点)において、前記ブームシリンダ17の前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達する。
【0110】
前記第1のパターンでは、前記積込作業の開始から終了の間、前記荷重情報出力部57は、前記荷重演算部54により演算された前記荷重を前記荷重情報として出力する。前記第2のパターンでは、前記保持作業の開始から前記移動作業における前記点Aの時点までの間、前記荷重情報出力部57は、前記荷重演算部54により演算された前記荷重を前記荷重情報として出力し、前記移動作業における前記点Aの時点の後、前記荷重情報出力部57は、前記特定荷重を前記荷重情報として出力する。前記第3のパターンでは、前記保持作業の開始から当該保持作業における点Bの時点までの間、前記荷重情報出力部57は、前記荷重演算部54により演算された前記荷重を前記荷重情報として出力し、前記保持作業における前記点Bの時点の後、前記荷重情報出力部57は、前記特定荷重を前記荷重情報として出力する。
【0111】
図10は、前記コントローラ50により実行される制御動作を示すフローチャートである。前記油圧ショベル10は、例えばキャブ12Cに設置された図略の予測荷重決定制御スイッチを備える。前記積込作業において、オペレータが前記予測荷重決定制御スイッチをオンにすると、例えば
図10に示すような制御動作が開始される。
【0112】
図10に示す制御動作では、前記予測荷重決定部56は、例えば
図9に示す点Cの時点でバケット押し操作が行われることによって前記予測荷重決定条件が満たされ(ステップS11においてYES)、かつ、そのときの前記ピストン部材172の位置が前記手前側領域R1に含まれる場合(ステップS12においてNO)、そのときに前記荷重演算部54により演算された荷重に基づいて前記予測荷重を決定する(ステップS14,S15)。このケースは、
図9の前記第1のパターンに該当する。
【0113】
一方、前記予測荷重決定部56は、例えば
図9に示す点Cの時点でバケット押し操作が行われることによって前記予測荷重決定条件が満たされ(ステップS11においてYES)、かつ、そのときの前記ピストン部材172の位置が前記特定領域R2に含まれる場合(ステップS12においてYES)、前記特定荷重を前記予測荷重として決定する(ステップS13)。このケースは、
図9の前記第2のパターン及び前記第3のパターンに該当する。
【0114】
図11及び
図12は、前記油圧ショベル10による土砂の積込作業、及び前記制御動作により表示装置に表示される内容の一例を示す図である。
【0115】
通常の現場作業では、前記積込作業が複数回繰り返されることによって前記ダンプトラックの上で解放される対象物(排土される土砂)の荷重の合計値が、前記ダンプトラックへの目標積み込み量に到達する。
図11及び
図12は、前記油圧ショベル10による土砂の積込作業、及び前記制御動作により表示装置70に表示される内容の一例をそれぞれ示す図である。
図11及び
図12では、これまでに7回の積込作業が行われており、これから8回目の積込作業をする場合における解放作業(排土作業)が行われることにより、前記対象物の荷重の合計値(
図11では、「積込み荷重」)が、前記目標積み込み量(
図11では、「積込み目標」)の2.0tに到達する場合を例示している。
【0116】
図11及び
図12に示される表示装置70の具体的な表示内容は次のとおりである。「バケット荷重」は荷重演算部54により演算される前記バケット16が保持する荷重である。「積込み荷重」は前記ダンプトラック等の移動先に積み込んだ前記対象物の荷重の合計値を示す。
図11ではこれまでの解放作業(排土作業)により1.94t積み込まれたことを示す。「積込み目標」は前記ダンプトラック等の移動先に積み込まれるべき目標量である。「積込回数」は前記ダンプトラック等の移動先で解放作業(排土作業)をした回数をカウントし示す。
図11右図では、「バケット荷重」を強調表示しているが、これは積込荷重1.94tに対してバケット16が保持する荷重0.15tを前記ダンプトラック等の移動先で積み込んでしまうと積込み目標を超過してしまうことを示す。前記解放量調節動作を行い、超過状態が解消されると、上記の強調表示は解除される。また、
図12上図のように「積込み荷重」が「積込み目標」を超過する場合に「積込み荷重」を強調表示してもよい。強調表示は、項目を点滅させたり赤などの強調色による表示に切り替えるなどをしてもよい。また、警報音を同時に鳴らしたり荷重超過があることを音声によるガイダンスで報知するようにしてもよい。
【0117】
従って、1回目から7回目までの積込作業では、オペレータは、前記表示装置70に表示される情報(前記強調表示がない情報)に基づいて、前記解放作業において前記バケット16に保持される土砂の量(解放量)を調節するための動作である解放量調節動作を行う必要がないと判断し、前記バケット16に保持された土砂を前記解放作業においてそのまま前記ダンプトラックの上で解放する動作が行われるような操作を行う。
【0118】
次に、8回目の積込作業では、オペレータは、前記表示装置70に表示される情報(前記強調表示がある情報)に基づいて、前記解放量調節動作を行う必要があると判断し、8回目の解放作業を行う前に、前記操作レバー63Aに前記バケット押し操作(減少操作)が与えられる。これにより、前記解放量調節動作が行われ、前記バケット16に保持される前記土砂の一部が前記バケット16から落下し、前記バケット16に保持される前記土砂の量が減少する。その結果、
図12の右下の図に示されるように、前記積込荷重にバケット荷重を積算しても積込目標を超えない状態となり、前記強調表示が消える。オペレータは、上記のような表示装置70の画面を見ながら、安心して8回目の解放作業を行うことができる。
【0119】
以上説明したように、前記実施形態に係る前記作業機械10では、前記ピストン部材172が前記手前側領域R1に位置するときには、前記荷重演算部54により演算される荷重が前記荷重情報として出力される。従って、オペレータなどの作業関係者は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を、出力される前記荷重情報に基づいて正確に把握することができる。一方、前記ピストン部材172が前記特定領域R2に位置するときには、前記荷重記憶部55に記憶される前記特定荷重が前記荷重情報として出力される。すなわち、前記ピストン部材172が前記特定領域R2に位置するときには、前記ピストン部材172が前記特定位置SPに到達したときに前記荷重演算部54により演算される前記特定荷重が前記対象物の荷重とみなされる。前記特定位置SPは、前記クッション領域に対して前記ストロークエンドから遠ざかる方向に離れた位置であるため、前記ピストン部材172が前記クッション領域に進入するのに伴って前記シリンダ圧が上昇したとしても、出力される前記荷重情報は、前記シリンダ圧の上昇の影響を受けない。これにより、当該荷重情報が前記バケット16に実際に保持される前記対象物の荷重とかけ離れたものとなることを回避することができる。従って、この作業機械10では、前記ピストン部材172が前記クッション領域に進入した場合であっても、特許文献1の技術のようにブームの下げ操作を行う必要がないので、作業効率の低下が抑制される。また、この作業機械10では、前記ピストン部材172が前記手前側領域R1に位置する場合に前記荷重情報として出力される荷重、及び前記ピストン部材172が前記特定領域R2に位置する場合に前記荷重情報として出力される前記特定荷重は、何れも、前記複数の油圧シリンダのうちの何れか一つ(前記実施形態では、ブームシリンダ17)のシリンダ圧を用いて演算することが可能である。よって、この作業機械10は、複数の油圧シリンダの圧力に基づいた複数の荷重値の演算を行わなくても、当該複数の油圧シリンダのうちの一つのシリンダ圧を検出し、当該シリンダ圧を用いることにより、前記バケット16により保持される作業の対象物の荷重を取得することができる。
【0120】
前記実施形態に係る前記作業機械10では、前記特定領域R2の前記ストローク方向の長さは、前記クッション領域の前記ストローク方向の長さよりも大きく、かつ、前記ストローク範囲の全長の5%以下である。この作業機械10では、前記特定位置SPは、前記ストローク範囲において、前記第1のストロークエンドE1の近傍に設定される。その結果、前記特定位置SPは、必然的に、前記ストローク範囲の端部領域を構成する前記クッション領域の近くに設定される。従って、前記特定位置SPは、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記クッション領域に近づいたことと関連付けることが可能な位置となる。前記クッション領域を含む前記特定領域R2に前記ピストン部材172が位置するときに前記対象物の荷重としてみなされる前記特定荷重は、前記特定位置SP、すなわち、前記クッション領域の近傍の位置に前記ピストン部材172が到達したときに前記荷重演算部54により演算される荷重となる。このことは、前記特定荷重と、前記特定領域R2に前記ピストン部材172が位置しているときに前記バケット16により保持されている前記対象物の実際の荷重との間に生じるずれを小さくすることを可能にする。しかも、前記特定位置SPが前記第1のストロークエンドE1の近傍に設定されることにより、前記ストローク範囲の大半が前記手前側領域R1によって占められる。これにより、前記ストローク範囲の大半において、前記特定荷重ではなく、前記荷重演算部54により演算される荷重が前記荷重情報として出力されるので、前記作業関係者は、前記ストローク範囲の大半において正確な荷重情報を把握することが可能になる。
【0121】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0122】
(A)作業機械について
前記実施形態では、前記作業機械は、油圧ショベル10であるが、これに限られず、例えばホイールローダーなどの他の作業機械であってもよい。
【0123】
(B)予測荷重決定条件について
前記実施形態では、前記予測荷重決定条件は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための予め設定された減少操作が前記保持作業の後に検出されるという条件、又は前記ブーム上げ動作の速度が前記移動作業において減少するという条件であるが、これ以外の条件をさらに含んでいてもよい。
【0124】
(C)アタッチメントについて
前記実施形態では、前記アタッチメントが前記バケット16であるが、これに限られない。前記アタッチメントは、例えば、フォーク、グラップルなどの他のアタッチメントであってもよい。前記フォーク及び前記グラップルのそれぞれは、作業の対象物を保持することが可能なアタッチメントである。前記フォーク及び前記グラップルのそれぞれは、運搬物、廃材などの作業の対象物を把持するための開閉可能な複数のアームを備える。
【0125】
(D)荷重情報出力部について
前記荷重情報出力部は、前記ストロークエンドに向かって変位する前記ピストン部材が前記特定領域に進入したにもかかわらず、前記シリンダ圧の上昇が抑制されることを判定可能な予め設定された条件(圧力上昇抑制条件)が満たされる場合には、前記荷重演算部により演算される荷重を前記荷重情報として出力してもよい。具体例を挙げると次の通りである。
【0126】
前記圧力上昇抑制条件は、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記クッション領域に進入する前の前記シリンダ圧と当該ピストン部材172が前記クッション領域に進入した後の前記シリンダ圧との差が予め設定された圧力閾値以下であるという条件が満たされることを含んでいてもよい。
【0127】
また、前記圧力上昇抑制条件は、前記ピストン部材172を前記第1のストロークエンドE1に向かって変位させるための前記操作レバー61Aの操作量が予め設定された操作量閾値以下であるという条件が満たされることを含んでいてもよい。すなわち、いわゆる微操作が行われる場合には、前記シリンダ本体171に対する前記ピストン部材172の変位速度が小さくなるため、前記ピストン部材172が前記クッション領域に進入しても、前記シリンダ圧はあまり上昇しないと考えられる。
【0128】
また、前記圧力上昇抑制条件は、前記ピストン部材172が前記特定領域R2に位置するときに前記ブームシリンダ17の動作が停止しているという条件が満たされることを含んでいてもよい。
【0129】
この変形例では、前記荷重情報出力部57は、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記特定領域R2に進入したにもかかわらず、前記圧力上昇抑制条件が満たされる場合には、前記荷重演算部54により演算される荷重を前記荷重情報として出力する。
【0130】
(E)ストロークエンドについて
前記実施形態では、前記ブームシリンダ17の前記ピストン部材172が前記第1のストロークエンドE1(伸長時のストロークエンド)に向かって変位する場合について説明したが、これに限られない。本発明は、前記ブームシリンダ17の前記ピストン部材172が前記第2のストロークエンドE2(収縮時のストロークエンド)に向かって変位する場合にも適用可能である。この場合、前記第2の蓋部171C側の前記第2のクッション機構C2におけるクッション領域に対して、前記第2のストロークエンドE2から遠ざかる方向に離れた位置に特定位置SPが予め設定され、この特定位置SPと前記第2のストロークエンドE2との間の領域が特定領域として予め設定され、上記実施形態と同様の制御が行われる。
【0131】
(F)その他
前記作業機械10では、前記第1のストロークエンドE1に向かって変位する前記ピストン部材172が前記特定領域R2に進入した後に、再び、前記手前側領域R1に戻った場合、前記荷重情報出力部57は、前記荷重演算部54により演算される荷重を前記荷重情報として出力してもよい。
【符号の説明】
【0132】
10 油圧ショベル(作業機械の一例)
11 下部走行体(機体の一例)
12 上部旋回体(機体の一例)
13 作業装置
14 ブーム
15 アーム
16 バケット(アタッチメントの一例)
17 ブームシリンダ(油圧シリンダの一例)
171 シリンダ本体
172 ピストン部材
17H ヘッド側室
17R ロッド側室
35,36 圧力センサ(圧力検出部の一例)
50 コントローラ
54 荷重演算部
55 荷重記憶部
56 予測荷重決定部
57 荷重情報出力部
70 表示装置