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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】構造物及び構造物の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20230511BHJP
   B28B 7/00 20060101ALI20230511BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230511BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230511BHJP
【FI】
B28B1/30
B28B7/00
B33Y10/00
B33Y80/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019186698
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021062488
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】中村 允哉
(72)【発明者】
【氏名】金子 智弥
(72)【発明者】
【氏名】穴吹 拓也
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/121316(WO,A1)
【文献】特開2020-111941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B1/30
B28B7/00-7/46
E04B1/16
B29C64/00-64/40
B33Y10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1組成の第1モルタルを積層させて構成される第1枠部と、
前記第1枠部に対向して設けられた第2枠部と、
前記第1枠部と前記第2枠部とを含む枠によって囲まれる空間内に、第2組成の第2モルタルを注入させて構成される内部構造体と、
前記第1枠部の第1レイヤと、前記第2枠部の前記第1レイヤに応じた高さの第2レイヤとにそれぞれ埋設された保持部を有し、前記第1枠部及び前記第2枠部に架け渡すように前記内部構造体に埋設されるセパレータとを備えたことを特徴とする構造物。
【請求項2】
前記第2枠部は、前記第1モルタルを積層させて構成されることを特徴とする請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記保持部には、前記第1モルタルが挿通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物。
【請求項4】
前記セパレータは、可変長であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の構造物。
【請求項5】
第1組成の第1モルタルをノズルから吐出させながら前記ノズルを移動させて積層させることにより構成される第1枠部と、前記第1枠部に対向して設けた第2枠部とを含む枠によって囲まれる空間内に、前記第1組成とは異なる第2組成の第2モルタルを注入して形成される構造物の形成方法であって、
前記第1モルタルを、前記第1枠部の第1レイヤの高さまで積層し、
前記第1レイヤの上面に、前記第2枠部から延設されたセパレータの保持部を載置し、
前記保持部の上に、前記第1モルタルを積層させることにより、前記セパレータの保持部を、前記第1モルタルに埋設することを特徴とする構造物の形成方法。
【請求項6】
前記第2枠部は、前記第1モルタルを積層させて構成され、
前記第1枠部を第1レイヤの高さまで積層した際に、前記第1レイヤの高さに対応した第2レイヤまで前記第2枠部を積層し、
前記第1レイヤ及び前記第2レイヤの上面に、前記セパレータの前記保持部をそれぞれ載置し、前記保持部の上に、前記第1モルタルを積層して、前記第1枠部及び前記第2枠部を形成することを特徴とする請求項5に記載の構造物の形成方法。
【請求項7】
前記保持部には、前記第1モルタルが挿通する貫通孔が形成され、
前記保持部の上に積層された前記第1モルタルは、前記貫通孔を介して、前記保持部の下の第1モルタルと接合することを特徴とする請求項5又は6に記載の構造物の形成方法。
【請求項8】
前記セパレータは、可変長であり、
前記第1モルタルの硬化後に、前記セパレータを短くすることを特徴とする請求項5~7の何れか1項に記載の構造物の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元プリンタを用いて形成したモルタルの枠部を備える構造物及び構造物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体の構造物を形成する場合、3次元(3D)プリンタを利用することがある。この3Dプリンタは、水平移動するノズルから材料を吐出させて各層を形成し、各層を積み重ねることにより立体形状を形成する(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。特許文献1の構造物形成システムは、ロボットアームに取り付けられたノズル、側面部材及び制御装置を備えている。そして、構造物形成システムは、ノズルの吐出口からモルタルを下方に吐出させながら、ノズルを移動させて、構造物を形成する。また、非特許文献1には、3Dプリンタで形成した枠で囲まれた領域内に、超高強度繊維補強コンクリートを注入して構成されたベンチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-69661号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】大林組、「3Dプリンター用特殊モルタルと超高強度繊維補強コンクリートとの複合構造を開発しました」、[online]、[令和1年9月10日検索]、インターネット〈URL:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20190829_1.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3Dプリンタによって第1モルタルを用いて形成した枠内に、第2モルタルを注入する場合、注入された第2モルタルによって、枠の側方から圧力(側圧)が加わる。この場合、枠の強度に対して側圧が大きいと枠が破損することがある。そこで、側圧に対抗するように、枠を太くしたり、リブの追加等によって側圧に対して有利な形状に変更したりする必要があった。しかし、枠を太くする場合には、枠材料が多くなる。更に、枠を太くしたりリブを追加したりする場合には、高強度の第2モルタルを注入する領域が制限される。この場合、構造的に不利になったり、意匠上の制約になったりする場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための構造物は、第1組成の第1モルタルを積層させて構成される第1枠部と、前記第1枠部に対向して設けられた第2枠部と、前記第1枠部と前記第2枠部とを含む枠によって囲まれる空間内に、第2組成の第2モルタルを注入させて構成される内部構造体と、前記第1枠部の第1レイヤと、前記第2枠部の前記第1レイヤに応じた高さの第2レイヤとにそれぞれ埋設された保持部を有し、前記第1枠部及び前記第2枠部に架け渡すように前記内部構造体に埋設されるセパレータとを備える。
【0007】
上記課題を解決するための構造物の形成方法は、第1組成の第1モルタルをノズルから吐出させながら前記ノズルを移動させて積層させることにより構成される第1枠部と、前記第1枠部に対向して設けた第2枠部とを含む枠によって囲まれる空間内に、前記第1組成とは異なる第2組成の第2モルタルを注入して形成される構造物の形成方法であって、前記第1モルタルを、前記第1枠部の第1レイヤの高さまで積層し、前記第1レイヤの上面に、前記第2枠部から延設されたセパレータの保持部を載置し、前記保持部の上に、前記第1モルタルを積層させることにより、前記セパレータの保持部を、前記第1モルタルに埋設する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構造で、枠内に注入した第2モルタルの側圧に対抗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における構造物の説明図であって、(a)は上面図、(b)は(a)における1b-1b線方向の断面図。
図2】実施形態におけるセパレータの説明図であって、(a)は短いセパレータ、(b)は長いセパレータ、(c)はターンバックル構造を有するセパレータ。
図3】実施形態における3次元プリンタの構成を説明する説明図。
図4】実施形態における構造物の形成方法を説明する斜視図。
図5】実施形態において枠の硬化後に短くしたセパレータの説明図。
図6】第1変更例におけるセパレータの説明図であって、(a)は正面断面図、(b)は(a)において配置されたセパレータの保持部の要部の平面図。
図7】第2変更例及び第3変更例におけるセパレータに用いるボルトの正面図であって、(a)は羽子板形状のボルト、(b)はフックボルト。
図8】第4変更例におけるセパレータを埋設した状態の正面断面図。
図9】第5変更例におけるセパレータの配置を説明する正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図5を用いて、構造物及び構造物の形成方法を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態では、図1に示す構造物10を形成する。図1(a)は、構造物10の上面図であり、図1(b)は、図1(a)における1b-1b線方向の断面図である。
【0011】
図1(a)に示すように、構造物10は、曲面によって構成され、複数の空洞部E1を有する。この構造物10は、外形を構成する外枠11と、空洞部E1の形状を形作る内枠12とを備える。
外枠11及び内枠12は、第1枠部及び第2枠部として機能し、第1組成の第1モルタルを積層して構築する。第1モルタルは、3次元(3D)プリンタを用いて、積層可能な硬化性を有するセメント系材料である。
【0012】
外枠11及び内枠12によって囲まれた領域には、内部構造体15が構成されている。この内部構造体15は、第1モルタルの第1組成よりも高強度の第2モルタルを、外枠11及び内枠12内に注入することにより構成される。本実施形態では、第2モルタルとして、例えば、スリムクリート(登録商標)等、繊維を混合したセメント系材料(繊維補強コンクリート材料)を用いる。
【0013】
構造物10には、ほぼ同じ高さに、複数のセパレータが埋設されている。各セパレータは、外枠11及び内枠12によって囲まれた領域に注入される第2モルタルの側圧を抑える位置に配置される。これらセパレータは、枠(11,12)において対向する部分を架け渡すように配置される。また、セパレータは、高さが約10mm程度である。
【0014】
本実施形態では、形状や長さが異なる複数種類のセパレータ21,22,23を用いる。形状の詳細は後述するが、セパレータ23は、セパレータ21,22よりも側圧が高くなる部分に配置される。例えば、セパレータ23は、外枠11及び内枠12の外側(第2モルタルが注入する側と反対側)に膨らんだ部分に配置される。セパレータ22は、セパレータ21よりも長く、枠(11,12)において架け渡す長さが長い部分に配置される。
【0015】
図1(b)は、外枠11及び内枠12に架け渡されるセパレータ21が埋設された部分の垂直断面図である。ここで、セパレータ21は、所定の高さで対向する外枠11及び内枠12の間で、水平に延在して配置されている。具体的には、セパレータ21の端部のリング部25,27が外枠11及び内枠12に埋設され、セパレータ21の中央部は、内部構造体15に埋設される。
【0016】
<セパレータ21,22,23の構成>
図2(a)に示すように、セパレータ21は、アイナット21a及びアイボルト21bを備える。アイナット21aは、貫通孔25hを有するリング部25に、軸部26が一体化されて形成される。軸部26は、約40mmの長さを有する。軸部26の中心軸上において、リング部25と反対側の端部には、めねじ(右ねじ)が形成されている。アイボルト21bは、貫通孔27hを有するリング部27に、ねじ軸28が一体化されて形成される。ねじ軸28は、約30mmであって、アイナット21aのめねじに嵌合する。そして、アイナット21aとアイボルト21bとの螺合によって、セパレータ21の長さを、例えば10mm程度、変更することができる。また、リング部25,27は、第1モルタルに埋設されて、セパレータの配置を保持する保持部として機能する。
【0017】
図2(b)に示すセパレータ22は、セパレータ21の最長長さより長く、セパレータ21とほぼ同じ構成を有し、アイナット22a及びアイボルト22bを備える。アイナット22aは、めねじ(右ねじ)が端部に形成された軸部26がリング部25に一体形成される。アイボルト22bは、リング部27にねじ軸28が一体化され、アイナット22aの軸部26のめねじとの螺合状態によって、セパレータ22の長さを、例えば20mm程度、調節することができる。
【0018】
図2(c)に示すセパレータ23は、ターンバックル機能を有するセパレータである。このセパレータ23は、2つのアイナット23a,23bとスタッドボルト23cとを備える。アイナット23aは、アイナット21aと同様に、貫通孔25hを有するリング部25に、約40mmの軸部26が一体化されて形成される。アイナット23aは、アイナット21aと異なる方向のめねじ(左ねじ)が形成されている。
【0019】
アイナット23bは、貫通孔25hを有するリング部25に、約10mmの長さの軸部29が一体化されて形成される。アイナット23bの軸部29において、リング部25と反対側の端部には、めねじ(右ねじ)が形成される。スタッドボルト23cには、両側に、右ねじのおねじと左ねじのおねじがそれぞれ形成されており、アイナット23a,23bの各めねじに螺合する。そして、セパレータ23は、スタッドボルト23cを回転させて、リング部25の向きを変えずに、長さを調節することができる。
【0020】
<3Dプリンタの構成>
次に、図3を用いて外枠11及び内枠12を形成する3Dプリンタ30の構成について説明する。ここで、外枠層11a及び内枠層12aは、それぞれ3Dプリンタ30によって形成される外枠11及び内枠12の1層分の部分である。
【0021】
本実施形態の3Dプリンタ30は、吐出部としてのノズル31、ロボットアーム35及び制御装置40を備える。
ノズル31は、その先端部が縮径する。ノズル31の先端には、開口した吐出口31aが形成される。ノズル31の吐出口31aと反対側の端部には、ホース32の端部が接続されている。ホース32は、圧送ポンプ(図示せず)に接続される。この圧送ポンプの圧力により、ホース32を介してノズル31に供給された第1モルタルは、吐出口31aから下方に吐出される。
【0022】
ノズル31には、取付部34を介して、移動手段としてのロボットアーム35が取り付けられる。ノズル31は、このロボットアーム35に支持され、このロボットアーム35の動きに従って水平方向や上下方向に移動する。ロボットアーム35は、制御装置40の制御部41からの指示によって移動が制御される。本実施形態の制御部41は、移動時においてもノズル31からの第1モルタルの吐出方向が常に下方になるように、ロボットアーム35を制御する。
【0023】
制御装置40は、制御部41、入力部(図示せず)及び出力部(図示せず)を備えている。入力部は、キーボードやポインティングデバイス等を備え、形成する構造物10に関する情報を制御部41に供給する。出力部は、ディスプレイ等を備え、入力された情報や枠(11,12)を形成するためのノズル31の経路等を表示する。
【0024】
制御部41は、制御手段(CPU、RAM、ROM等)を備え、構造物形成処理を行なう。そのため、記憶部に格納された構造物形成プログラムを実行することにより、制御部41は、積層管理部411、移動制御部412及び吐出量制御部413として機能する。
【0025】
積層管理部411は、構造物を形成するために、積層させるモルタルの経路及び高さを管理する処理を実行する。積層管理部411は、層高さ、配置高さ及び構造物高さを記憶している。層高さは、ノズル31を移動させながら吐出させた第1モルタルによって形成させる場合の1つの層の高さである。配置高さは、セパレータ21,22,23を配置するときのモルタルの高さである。構造物高さは、構造物10の高さであって、構造物10を完成させるための高さである。本実施形態では、配置高さ及び構造物高さは、層数で記憶される。更に、積層管理部411は、積層した層数をカウントする。
【0026】
移動制御部412は、経路に応じてノズル31を移動させるロボットアーム35の動きを制御する処理を実行する。
吐出量制御部413は、ノズル31から吐出する第1モルタルを圧送するポンプを制御する処理を実行する。この吐出量制御部413は、第1モルタルの吐出量を調節して、離間した位置に第1モルタルを吐出させることができる。
【0027】
<構造物10の形成方法>
次に、図4及び図5を用いて、上述した構造物10の形成方法を説明する。
まず、制御装置40の制御部41は、外枠11及び内枠12の最下層(第1層)を形成する。具体的には、制御部41の移動制御部412は、ノズル31を1つの内枠12の位置に対応させて配置し、吐出口31aから第1モルタルを吐出させながら、移動制御部412が、内枠12の形状に従って、ロボットアーム35を動かして、内枠12を形成する1つの内枠層12aを形成する。第1層の内枠層12aを形成した場合、まだ第1層を形成していない他の内枠12の最下層を同様にして形成する。
【0028】
そして、内枠12の第1層を形成した場合、外枠11の第1層を、同様にして形成する。具体的には、制御部41は、ノズル31を外枠11の位置に対応させて配置した後、吐出口31aから第1モルタルを吐出させ、外枠11の形状に従って、ロボットアーム35を動かして、第1層の外枠層11aを形成する。
【0029】
そして、外枠11及び内枠12の第1層の形成を完了した場合、ノズル31の吐出口31aを一階層分上げて、第1層と同様に、外枠11及び内枠12の上層(第2層)を形成する。具体的には、第1層上に第2層(上層)を形成する。この階層形成を、所定の階層数(配置高さ)まで繰り返す。
所定の階層まで積層した場合、制御部41の吐出量制御部413は、ノズル31から第1モルタルの吐出を停止する。
【0030】
次に、セパレータ21,22,23を、予め定められた位置で、対向する枠(11,12)の上に架け渡すように配置する。この場合、セパレータ21,22,23のリング部25,27を、配置高さまで積層した最上部の外枠層11a及び内枠層12aの上面に載置する。ここで、リング部25,27の端部が、外枠層11a及び内枠層12aからはみ出ないように配置する。更に、この場合、リング部25,27を外枠層11a及び内枠層12aに押し付け、貫通孔25h,27hに下のモルタルの一部を挿入させてもよい。
【0031】
図4は、セパレータ23を配置した箇所を示している。この場合、セパレータ23のリング部25が、配置高さにある第1レイヤの外枠層11aと、配置高さにある第2レイヤの内枠層12aの上面に配置される。そして、セパレータ23の外枠11及び内枠12を連結するように架け渡される。
【0032】
セパレータの配置後、セパレータ21,22,23のリング部25,27が配置された内枠層12a及び外枠層11aの上に、第1モルタルを、再度、積層させる。この場合、セパレータ21,22,23は一階層より低いため、新たに積層された第1モルタルには、段差が生じ難い。そして、制御部41は、第1モルタルの積層を繰り返すことにより、構造物高さまで内枠層12a及び外枠層11aを積み上げて、外枠11及び内枠12を形成する。
【0033】
次に、外枠11及び内枠12を構成するモルタルを硬化させる。
そして、外枠11及び内枠12がほぼ硬化した場合、セパレータ23の長さを、数ミリ縮める。具体的には、図5に示すように、外枠11及び内枠12に埋設されたセパレータ23のスタッドボルト23cを締める方向R1に回転させる。これにより、リング部25が外枠11及び内枠12に埋設された状態で、セパレータ23の長さを短くすることができる。従って、セパレータ23のリング部25同士が近接し、これらリング部25に埋設された外枠11及び内枠12が、セパレータ23の中心側に引っ張られる。
【0034】
その後、外枠11及び内枠12で囲まれた領域に、第2モルタルを注入する。この場合、注入された第2モルタルは、外枠11及び内枠12の側面を押圧するが、埋設したセパレータ21,22,23が、この側面への押圧(側圧)に抵抗する。
その後、第2モルタルを乾燥させて、構造物10を完成させる。
【0035】
(作用)
本実施形態によれば、セパレータ21,22,23によって、対向する枠(11,12)間を架け渡す。これにより、第2モルタルの注入時にも、構造物10に含まれ構造物10の外形を形成する枠(11,12)の間隔を維持することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、外枠11及び内枠12の形成途中で、セパレータ21,22,23を配置し、第1モルタルを積層する。これにより、第1モルタルの積層時に、セパレータ21,22,23を設けることができる。
【0037】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、セパレータ21,22,23によって、枠(11,12)を強固に連結できるので、内部構造体15を構成する第2モルタルの側圧に対抗できる。このため、枠(11,12)を厚くする等、側圧に対抗するための形状変更を行なう必要がない。
【0038】
(2)本実施形態では、配置高さまで積層した外枠層11a及び内枠層12aの上に、セパレータ21,22,23のリング部25,27を載置し、これらリング部25,27の上に、第1モルタルを積層する。これにより、積層途中でセパレータ21,22,23を配置するだけで、リング部25,27を外枠11及び内枠12に埋設することができるので、効率的にセパレータ21,22,23を埋設することができる。
【0039】
(3)本実施形態では、セパレータ21,22,23は、長さを変更できる。これにより、架け渡す枠(11,12)間の距離に応じて、セパレータ21,22,23を調節できる。
【0040】
(4)本実施形態のセパレータ21,22,23の両端部には、貫通孔25h,27hを有するリング部25,27が形成される。これにより、外枠層11a及び内枠層12aの上に配置したセパレータ21,22,23の上に、第1モルタルを積層させる際には、貫通孔25h,27hに第1モルタルが入り込むので、セパレータ21,22,23の端部を、枠(11,12)に強固に埋設することができる。
【0041】
(5)本実施形態のセパレータ23を、枠(11,12)が硬化した後に短くする。これにより、第2モルタルの側圧が更に高くなる部分において、第2モルタルを注入する前に、予め、枠(11,12)間の引っ張り強度を高めておくことができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態のセパレータ21,22,23は、アイナット21a,22a,23a,23b、アイボルト21b,22b及びスタッドボルト23cを用いて構成した。セパレータの構成は、これに限られない。
【0043】
例えば、図6(a)に示すように、T字形状の金属板51を両端に備えるセパレータ50でもよい。このセパレータ50は、2つの保持部としての金属板51と、これらを接合する接合用平板52とを、ボルト53及びナット54で固定して構成される。更に、図6(b)に示すように、金属板51には、複数の貫通孔51a,51b,51c,51dが形成される。そして、枠(11,12)を構成する第1モルタルの積層時に、対向する枠(11,12)に金属板51を埋設させる。このセパレータ50は、ボルト53及びナット54を緩めて接合用平板52をスライドさせて、長さを調節することができる。また、第1モルタルに埋設される部分が薄いため、セパレータ50を配置した後に積層する第1モルタルに段差を生じ難くすることができる。
【0044】
更に、上記実施形態のアイボルト21b,22bの端部を、貫通孔27hを有するリング部27以外の形状に変更してもよい。
例えば、図7(a)に示すように、複数の貫通孔55hを有する羽子板55を備えたボルトB1としてもよい。更に、図7(b)に示すように、貫通孔27hを有するリング形状のアイボルト21b,22bの代わりに、一部に切り欠き57aを有するC形状部材57を備えたフックボルトB2としてもよい。
【0045】
また、図8に示すように、下方に折り曲げた保持部としての係合部材71を両端に設け、これら係合部材71を、連結部材72を介して一体に構成したセパレータ70としてもよい。このセパレータ70を、配置高さまで形成した外枠層11a及び内枠層12aの上面に配置する場合には、係合部材71の先端を、外枠層11a及び内枠層12aに突き刺す。これにより、セパレータ70を強固に配置することができる。
【0046】
・上記実施形態では、外枠11及び内枠12によって囲まれた領域に、セパレータ21,22,23の中央部を配置し、第2モルタルを注入して構造物10を構成した。螺旋形状を用いた枠や一筆書きで形成される枠のように、1つの部材で形成された枠の部分同士をセパレータで架け渡し、これら枠によって囲まれた領域に、第2モルタルを注入してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、すべての枠を3Dプリンタで形成したが、3Dプリンタで形成する枠は一部でもよい。例えば、図9に示すように、壁81に対して、3Dプリンタで形成した壁枠82を設ける。具体的には、セパレータ21のアイナット21aを壁81に取り付けた後、3Dプリンタで壁枠82を構成する第1モルタルを配置高さまで積層して形成する。その後、セパレータ21のアイボルト21bをアイナット21aに螺合させて、セパレータ21のリング部27を壁枠82の上に載置する。そして、リング部27の上に、第1モルタルを積層して、壁枠82を形成する。更に、壁81と壁枠82との間に、第2モルタルを注入する。
【0048】
・上記実施形態では、すべてのセパレータ21,22,23を配置高さに配置した。複数のセパレータを配置する高さは、同じ高さに限定されず、外枠11及び内枠12に加わる側圧、構造物10の形状やセパレータの配置に応じて、配置する高さを変更してもよい。
【符号の説明】
【0049】
B1…ボルト、B2…フックボルト、E1…空洞部、L1,L2…長さ、R1…締める方向、10…構造物、11…外枠、11a…外枠層、12…内枠、12a…内枠層、15…内部構造体、21,22,23,50,70…セパレータ、21a,22a,23a,23b…アイナット、21b,22b…アイボルト、23c…スタッドボルト、25,27…リング部、25h,27h,51a,51b,51c,51d,55h…貫通孔、26,29…軸部、28…ねじ軸、30…3Dプリンタ、31…ノズル、31a…吐出口、32…ホース、34…取付部、35…ロボットアーム、40…制御装置、41…制御部、51…金属板、52…接合用平板、53…ボルト、54…ナット、55…羽子板、57…C形状部材、57a…切り欠き、61…軸、63…平板、71…係合部材、72…連結部材、81…壁、82…壁枠、411…積層管理部、412…移動制御部、413…吐出量制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9