(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20230511BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60W30/08
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2019196420
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2021-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤木 拓人
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175048(JP,A)
【文献】特開2006-044620(JP,A)
【文献】特開2018-161085(JP,A)
【文献】特開2014-182453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
A01B 69/00
G05D 1/02
G08G 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を装着可能な走行車体と、
第1検出領域および前記第1検出領域よりも遠い第2検出領域における障害物の有無を検出する障害物センサと、
前記走行車体における搭乗者の有無を検出する搭乗者センサと、
設定された予定走行経路において車両の自動運転を制御する制御装置と、
前記車両の前進、後進または中立を切り替える前後進レバーと、
を備え、
前記制御装置は、
前記第2検出領域に前記障害物が存在する場合において、前記搭乗者がいない場合には前記車両を停止し、前記搭乗者がいる場合には前記車両を減速
し、
前記自動運転を開始する際に、前記前後進レバーが中立、かつ、前記搭乗者がいる場合には、前記自動運転の開始を禁止すること
を特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記自動運転を開始する際に、前記搭乗者センサの検出結果に応じて、前記搭乗者がいる有人モードと、前記搭乗者がいない無人モードとのいずれかを設定し、
前記第2検出領域に前記障害物が存在する場合に、前記無人モードなら前記車両を停止し、前記有人モードなら前記車両を減速すること
を特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記自動運転を開始する際に、前記前後進レバーが前進または後進、かつ、前記搭乗者がいない場合には、前記自動運転の開始を禁止すること
を特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記搭乗者センサは、
前記車両が有する座席への着座を検出するシートセンサであり、
前記制御装置は、
前記シートセンサにより着座が検出された場合、前記搭乗者がいると判定し、着座が検出されない場合、前記搭乗者がいないと判定すること
を特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において、前方の障害物を検出する障害物センサで検出された障害物までの距離に応じて、自動運転中の作業車両の挙動を変える技術がある(例えば、特許文献1参照)。かかる技術の例として、障害物センサにおける検出領域を複数に分割し、分割した検出領域のうち、作業車両から遠い側の検出領域で障害物が検出された場合には減速し、近い側の検出領域まで近づいた場合には車両を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業車両では、搭乗者がいる状態で自動運転が行われる場合と、搭乗者がいない状態で自動運転が行われる場合とがある。例えば、搭乗者がいる場合には、搭乗者が障害物を視認して適切に回避することができるが、搭乗者がいない場合には、障害物センサの検出結果に委ねられるため、障害物を適切に回避できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、障害物を適切に回避することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、作業機(W)を装着可能な走行車体(2)と、第1検出領域(R1)および前記第1検出領域(R1)よりも遠い第2検出領域(R2)における障害物(OB)の有無を検出する障害物センサ(20)と、前記走行車体(2)における搭乗者(P)の有無を検出する搭乗者センサ(27)と、設定された予定走行経路において車両(1)の自動運転を制御する制御装置(40)と、を備え、前記制御装置(40)は、前記第2検出領域(R2)に前記障害物(OB)が存在する場合において、前記搭乗者(P)がいない場合には前記車両(1)を停止し、前記搭乗者(P)がいる場合には前記車両(1)を減速することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、障害物を適切に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係る作業車両の説明図であり、作業車両の概略左側面図である。
【
図1B】
図1Bは、トラクタの制御装置によって実行される制御方法の概要を説明する図である。
【
図1C】
図1Cは、トラクタの制御装置によって実行される制御方法の概要を説明する図である。
【
図2】
図2は、作業車両の制御系の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、自動運転モードを設定するための情報を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る自動運転モードにおけるモード切替処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る自動運転の制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、
図1Aを参照して実施形態に係る作業車両1の全体構成について説明する。
図1Aは、実施形態に係る作業車両1の説明図であり、作業車両1の概略左側面図である。なお、以下では、作業車両1としてトラクタを例に説明する。
【0011】
作業車両であるトラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクタである。また、トラクタ1は、操縦者(作業者ともいう。)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行する他、後述する制御装置40(
図2参照)を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自動走行しながら所定の作業を実行する。なお、以下では、トラクタ1に搭乗した操縦者を搭乗者と称する場合がある。
【0012】
また、以下において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクタ1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席8からステアリングホイール9に向かう方向である。
【0013】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、トラクタ1の操縦者が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0014】
上下方向とは、鉛直方向に平行する方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。なお、各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、トラクタ1を指して「機体」という場合がある。
【0015】
図1Aに示すように、トラクタ1は、走行車体2と、作業機Wとを備える。走行車体2は、車体フレーム3と、前輪4と、後輪5と、ボンネット6と、エンジンEと、操縦部7と、ミッションケース10とを備える。車体フレーム3は、走行車体2のメインフレームである。
【0016】
前輪4は、左右一対であり、主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪5は、左右一対であり、主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。トラクタ1は、後輪5が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪4および後輪5が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されてもよい。この場合、駆動輪は、前輪4および後輪5の両方である。なお、走行車体2は、車輪(前輪4および後輪5)に代えてクローラ装置を備えてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
【0017】
ボンネット6は、走行車体2の前部において開閉自在に設けられる。ボンネット6は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能である。ボンネット6は、閉じた状態で、車体フレーム3上に搭載されたエンジンEを覆う。エンジンEは、トラクタ1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
【0018】
操縦部7は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席8やステアリングホイール9などを備える。操縦部7は、走行車体2の上部に設けられたキャビン7aに覆われることで形成されてもよい。操縦席8は、操縦者の座席である。また、操縦席8には、シートセンサ27(
図2参照)が設けられ、シートセンサ27によって、操縦席8(走行車体2)における搭乗者の有無を検出する。ステアリングホイール9は、操舵輪である前輪4を操舵する場合に操縦者により操作される。なお、操縦部7は、ステアリングホイール9の前方に、各種情報を表示する表示部(メータパネル)を備える。
【0019】
また、操縦部7は、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバーなどの各種操作レバーや、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどの各種操作ペダルを備える。
【0020】
ミッションケース10は、トランスミッション(変速機構)を収容している。トランスミッションは、エンジンEから伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪である後輪5や、PTO(Power Take-off)軸へ伝達する。
【0021】
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業機Wが装着され、作業機Wを駆動する動力を伝達するPTO軸がミッションケース10から後方へ突出している。PTO軸は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の少なくとも後部に装着された作業機Wへ伝達する。
【0022】
また、走行車体2の後部には、作業機Wを昇降させる昇降装置12が設けられる。昇降装置12は、作業機Wを上昇させることで、作業機Wを非作業位置に移動させる。非作業位置は、例えば、走行車体2が後退する場合や、走行車体2が旋回する場合に、作業機Wを上昇させる位置である。また、昇降装置12は、作業機Wを下降させることで、作業機Wを対地作業位置に移動させる。昇降装置12は、油圧式の昇降シリンダ121と、リフトアーム122と、リフトロッド123と、ロワリンク124と、トップリンク125とを備える。
【0023】
リフトアーム122は、昇降シリンダ121に作動油が供給されると、回動支点となる軸AXまわりに作業機Wを上昇させるように回動し、昇降シリンダ121から作動油が排出されると、軸AXまわりに作業機Wを下降させるように回動する。なお、リフトアーム122の基部(軸AX付近)には、リフトアーム122の回動角度を検知するリフトアームセンサ26が設けられる。作業機Wの高さは、リフトアームセンサ26の検知結果や、作業機Wに基づいて算出される。
【0024】
また、リフトアーム122は、リフトロッド123を介してロワリンク124に連結される。このように、昇降装置12は、ロワリンク124とトップリンク125とで、走行車体2に対して作業機Wを昇降可能に連結する。
【0025】
作業機Wは、圃場内で作業を行う機械である。
図1Aに示す例では、作業機Wは、圃場において耕耘作業を行うロータリ耕耘機である。ロータリ耕耘機は、PTO軸から伝達された動力によって耕耘爪61が回転することで、圃場面(土壌)を耕耘する。
【0026】
また、トラクタ1は、制御装置40(
図3参照)を備える。制御装置40は、エンジンEを制御するとともに、走行車体2の走行速度を制御する。また、制御装置40は、作業機Wを制御する。
【0027】
また、トラクタ1は、測位装置30を備える。測位装置30は、走行車体2の上部に設けられ、走行車体2の位置を測定する。測位装置30は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時を行うことができる。
【0028】
また、トラクタ1は、作業者による情報処理端末(タブレット端末などの携帯端末)100の操作によって、特定の圃場における各種作業の設定などを行うことができる。情報処理端末100は、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部と、タッチパネルにより構成される表示部および操作部とを備える。なお、操作部として、各種キーやボタンなどが別に設けられてもよい。
【0029】
また、トラクタ1は、障害物センサ20を備える。障害物センサ20は、前方センサ21と、後方センサ22とを備える。前方センサ21は、たとえば、ボンネット6の前方に設けられたセンサ取付ステー13に取り付けられるなど、走行車体2の前部に配置され、走行車体2の前方に存在する障害物(人や、物体)を検知する。
【0030】
後方センサ22は、たとえば、キャビン7aの上部に取り付けられるなど、走行車体2の後部上側に配置され、走行車体2の後方に存在する障害物を検知する。
【0031】
また、前方センサ21および後方センサ22は共に、中距離センサであり、好ましくは赤外線センサである。前方センサ21および後方センサ22は、赤外線ビームを放射し、障害物からの反射光を検知する。前方センサ21は、前方に延びる検出領域を有する。また、後方センサ22は、後方へ延びる検知領域を有する。
【0032】
前方センサ21および後方センサ22は、たとえば、赤外線ビームを放射した後、障害物からの反射光を検知するまでの時間を測定することで、障害物までの距離を検知することができる。赤外線センサである前方センサ21および後方センサ22は、障害物を2次元的に検知し、たとえば、数メートルから数10メートル程度の検出領域である。なお、障害物センサ20として、赤外線センサ以外の他の中距離センサを用いることも可能である。
【0033】
ここで、本実施形態では、障害物センサ20は、検出領域が距離に応じて複数の検出領域に分割され、かかる複数の検出領域のうち、障害物が検出された検出領域の位置に応じた自動運転の制御を行う。また、複数の検出領域のうち、トラクタ1から遠い側の検出領域で障害物が検出された場合、搭乗者の有無に応じた自動運転の制御を行う。かかる点について、
図1Bおよび
図1Cを用いて説明する。
【0034】
図1Bおよび
図1Cは、トラクタ1の制御装置40によって実行される制御方法の概要を説明する図である。
図1Bでは、トラクタ1に搭乗者Pがいる場合の制御方法を示し、
図1Cでは、トラクタ1に搭乗者Pがいない場合の制御方法を示す。また、
図1Bおよび
図1Cでは、前方センサ21である障害物センサ20の検出領域を示しており、トラクタ1に近い側の第1検出領域R1と、第1検出領域R1よりもトラクタ1から遠い側の第2検出領域R2とを示しており、第2検出領域R2に障害物OBが存在することとする。
【0035】
図1Bに示すように、制御装置40は、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合において、搭乗者Pがいる場合には、トラクタ1(車両の一例)を減速する。一方、
図1Cに示すように、制御装置40は、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合において、搭乗者Pがいない場合には、トラクタ1(車両の一例)を停止する。
【0036】
つまり、制御装置40は、搭乗者Pがいる場合には、搭乗者Pが障害物OBを視認して、障害物OBを早急に回避する等の適切な判断をとることができるため、トラクタ1を停止させずに減速する。一方、制御装置40は、搭乗者Pがいない場合には、操縦者は判断を障害物センサ20の検出結果に委ねることになるため、早急に回避する等の対応が遅れるおそれがあるため、トラクタ1を停止する。
【0037】
このように、第2検出領域R2において障害物OBを検出した場合、搭乗者Pの有無に応じてトラクタ1の自動運転の制御を変えることで、搭乗者Pや操縦者が障害物OBを適切に回避することができる。
【0038】
次に、
図2を参照して制御装置40を中心とする作業車両(トラクタ)1の制御系について説明する。
図2は、作業車両1の制御系の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置40は、エンジンECU(Electronic Control Unit)41と、走行系ECU42と、作業機昇降系ECU43とを備える。エンジンECU41は、エンジンEの回転数を制御する。走行系ECU42は、駆動輪の回転を制御することで、走行車体2(
図1参照)の走行速度を制御する。作業機昇降系ECU43は、昇降装置12を制御して作業機Wを昇降制御する。
【0039】
制御装置40は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部をはじめ、各種プログラムや圃場ごとに予め設定された走行車体2の予定走行経路などの必要なデータ類が記憶される記憶部などを備える。
【0040】
図2に示すように、制御装置40には、測位装置(GNSS)30、エンジン回転センサ23、車速センサ24、切れ角センサ25、障害物センサ20(前方センサ21および後方センサ22)、リフトアームセンサ26、シートセンサ27、前後進レバー位置センサ28などの各種センサ類が接続される。なお、エンジン回転センサ23は、エンジンEの回転数を検知する。車速センサ24は、走行車体2(
図1参照)の走行速度(車速)を検知する。切れ角センサ25は、操舵輪である前輪4(
図1参照)の切れ角を検知する。切れ角センサ25は、機体の旋回を検知する。
【0041】
シートセンサ27は、搭乗者センサの一例であり、操縦席8に設けられ、操縦席8における人の着座の有無を検出する。なお、搭乗者センサは、シートセンサ27に限定されず、操縦席8付近を撮像するカメラであってもよい。前後進レバー位置センサ28は、操縦部7が備える前後進レバーの位置を検出する。具体的には、前後進レバー位置センサ28は、前後進レバーが前進、後進または中立のいずれの位置にあるかを検出する。
【0042】
制御装置40には、測位装置30から圃場などにおける走行車体2の位置情報、エンジン回転センサ23からエンジンEの回転数、車速センサ24から走行車体2の走行速度、切れ角センサ25から前輪4の切れ角、障害物センサ20から障害物の検知結果、リフトアームセンサ26から作業機Wの高さ、位置検知センサ70から作業機Wの検知の有無がそれぞれ入力される。制御装置40は、トラクタ1を自律走行させる場合、切れ角センサ25の検知結果を用いて、前輪4の切れ角をフィードバックしながらステアリングホイール9に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングホイール9を自動操舵する。
【0043】
また、制御装置40には、エンジンECU41がエンジンEに接続され、走行系ECU42が、操舵装置51、変速装置52および制動装置53などに接続され、作業機昇降系ECU43が昇降装置12に接続される。
【0044】
このうち、作業機昇降系ECU43は、昇降装置12に向けて作業機昇降信号を出力する。昇降装置12は、作業機昇降系ECU43から出力された作業機昇降信号に基づいて作業機Wを昇降駆動する。
【0045】
また、制御装置40は、たとえば、作業者が携行可能な情報処理端末100と無線接続される。制御装置40は、作業者の操作による情報処理端末100からの指示信号に基づいてトラクタ1の各部を制御する。また、制御装置40は、トラクタ1の機体情報データベースを保持し、型式などの情報の受け渡しを情報処理端末100などからも行うことができるように構成してもよい。
【0046】
また、制御装置40は、トラクタ1が自律走行しつつ作業を行うモードである「自動運転モード」を有する。制御装置40は、自動運転モードにおいては、作業機Wによる作業内容に応じた予定走行経路が予め圃場ごとに定められ、データ化されて記憶部に記憶され、測位装置30の測定結果に基づいて、記憶された予定走行経路に沿って走行するように、エンジンE、操舵装置51、変速装置52、制動装置53および昇降装置12などの各部を制御する。なお、予定走行経路は、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、さらには作物の種類などに応じて設定される。つまり、制御装置40は、「自動運転モード」である場合には、トラクタ1の自動運転を制御する。
【0047】
また、制御装置40は、「自動運転モード」において、「有人モード」または「無人モード」のいずれかを設定する。「有人モード」とは、トラクタ1に搭乗者Pがいる場合の「自動運転モード」である。「無人モード」とは、トラクタ1に搭乗者Pがいない場合の「自動運転モード」である。なお、「有人モード」および「無人モード」では、障害物OBが検出された際のトラクタ1の制御が異なるがかかる点の詳細については後述する。
【0048】
なお、制御装置40は、前後進レバー位置センサ28およびシートセンサ27の検出結果に基づいて、「有人モード」および「無人モード」のいずれかを設定する。かかる点について、
図3を用いて説明する。
【0049】
図3は、自動運転モードを設定するための情報を示す図である。かかる情報は、例えば、制御装置40の図示しない記憶部に記憶され、自動運転を開始する際に読み出される。
【0050】
図3に示すように、制御装置40は、自動運転を開始する際に、シートセンサ27の検出結果に応じて、有人モードと無人モードとのいずれかを設定する。具体的には、制御装置40は、シートセンサ27がON、すなわち、搭乗者Pがいる場合、有人モードを設定し、シートセンサ27がOFF、すなわち、搭乗者Pがいない場合、無人モードを設定する。換言すれば、制御装置40は、シートセンサ27により着座が検出された場合(ON)、搭乗者Pがいると判定し、着座が検出されない場合(OFF)、搭乗者Pがいないと判定する。
【0051】
また、制御装置40は、自動運転を開始する際に、前後進レバーの位置に応じて、有人モードと無人モードとのいずれかを設定する。具体的には、制御装置40は、前後進レバーの位置が前進または後進の場合、有人モードを設定し、前後進レバーが中立の場合、無人モードを設定する。
【0052】
さらに、制御装置40は、シートセンサ27の検出結果および前後進レバーの位置の組合せが特定の組合せである場合には、自動運転の開始を禁止する。具体的には、制御装置40は、自動運転を開始する際に、前後進レバーの位置が前進または後進、かつ、シートセンサ27がOFF、すなわち、搭乗者Pがいない場合、自動運転の開始を禁止する。すなわち、「自動運転モード」への切り替えを禁止する。
【0053】
また、制御装置40は、前後進レバーの位置が中立、かつ、シートセンサ27がON、すなわち、搭乗者Pがいる場合、自動運転の開始を禁止する。なお、制御装置40は、有人モードもしくは無人モードで自動運転中に、シートセンサ27の検出結果および前後進レバーの位置の組合せが特定の組合せに変更された場合には、自動運転を中止してトラクタ1を停止する。
【0054】
また、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物OBが検知された場合、「自動運転モード」におけるモード(有人モードまたは無人モード)に応じてトラクタ1を停止または減速する。
【0055】
具体的には、制御装置40は、第2検出領域R2に障害物OBの存在が検出された場合に、無人モードならトラクタ1を停止する。つまり、制御装置40は、前後進レバーの位置が中立、かつ、シートセンサ27がOFFの状態で、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合、トラクタ1を停止する。
【0056】
一方、制御装置40は、第2検出領域R2に障害物OBの存在が検出された場合に、有人モードならトラクタ1を減速する。つまり、制御装置40は、前後進レバーの位置が前進または後進、かつ、シートセンサ27がONの状態で、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合、トラクタ1を減速する。
【0057】
なお、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物OBが検知された場合には、エンジンEを停止させたり、PTO軸への回転動力の伝達を中止させたりする。また、制御装置40は、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、警報器(不図示)を作動させて、障害物が検知されたことを報知してもよい。
【0058】
また、制御装置40は、有人モードで自動運転中、作業機Wの高さ等の昇降制御、旋回制御、主変速位置の増速/減速制御、直進中のエンジン回転数等はトラクタ1の設定を優先する。これにより、有人走行時はトラクタ1で各種制御を調整することでより細かな設定が可能となる。
【0059】
また、制御装置40は、無人モードで自動運転中、作業機Wの高さ等の昇降制御、旋回制御、主変速位置の増速/減速制御、直進中のエンジン回転数等は情報処理端末100の設定を優先する。これにより、無人走行時は意図せぬ制御変更が行われることを回避できる。
【0060】
また、制御装置40は、自動運転中、旋回開始から旋回完了までの間のエンジン回転数は有人モードおよび無人モードに関わらず一定となるように制御する。
【0061】
また、制御装置40は、有人モードで、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合において、トラクタ1の減速中はエンジン回転数や主変速の切り替えを禁止する。これにより、減速時の誤操作が挙動に反映されないようにできる。
【0062】
また、制御装置40は、有人モードで、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合において、搭乗者Pのステアリング操作を優先する。これにより、搭乗者Pの手動操作により障害物OBを適切に回避することができる。
【0063】
次に、
図4および
図5を用いて、実施形態に係る制御装置40が実行する制御処理の処理手順について説明する。
図4は、実施形態に係る自動運転モードにおけるモード切替処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5は、実施形態に係る自動運転の制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0064】
図4に示すように、まず、制御装置40は、例えば、情報処理端末100から自動運転開始の指示を受け付けたか否かを判定し(ステップS101)、指示を受け付けていない場合(ステップS101:No)、ステップS101を繰り返し実行する。
【0065】
制御装置40は、自動運転開始の指示を受け付けた場合(ステップS101:Yes)、搭乗者Pの有無を判定する(ステップS102)。
【0066】
制御装置40は、搭乗者Pがいる場合(ステップS102:Yes)、前後進レバーの位置が前進または後進である否かを判定する(ステップS103)。
【0067】
制御装置40は、前後進レバーが前進または後進である場合(ステップS103:Yes)、自動運転モードにおける有人モードを設定し(ステップS104)、処理を終了する。
【0068】
一方、制御装置40は、前後進レバーが中立である場合(ステップS103:No)、自動運転の開始を禁止し(ステップS105)、処理を終了する。
【0069】
また、制御装置40は、搭乗者Pがいない場合(ステップS102:No)、前後進レバーの位置が前進または後進である否かを判定する(ステップS106)。
【0070】
制御装置40は、前後進レバーが前進または後進である場合(ステップS106:Yes)、自動運転を禁止し(ステップS105)、処理を終了する。
【0071】
一方、制御装置40は、前後進レバーが中立である場合(ステップS106:No)、自動運転モードにおける無人モードを設定し(ステップS107)、処理を終了する。
【0072】
次に、
図5に示すように、制御装置40は、障害物センサ20の第2検出領域R2で障害物OBを検出したか否かを判定する(ステップS201)し、障害物OBを検出していない場合(ステップS201:No)、ステップS201を繰り返し実行する。
【0073】
制御装置40は、第2検出領域R2で障害物OBを検出した場合(ステップS201:Yes)、有人モードであるか否かを判定する(ステップS202)。
【0074】
制御装置40は、有人モードである場合(ステップS202:Yes)、トラクタ1を減速し(ステップS203)、処理を終了する。
【0075】
一方、制御装置40は、無人モードである場合(ステップS202:No)、トラクタ1を停止し(ステップS204)、処理を終了する。
【0076】
上述したように、実施形態に係るトラクタ1は、トラクタ1は、作業機Wを装着可能な走行車体2と、第1検出領域R1および第1検出領域R1よりも遠い第2検出領域R2における障害物OBの有無を検出する障害物センサ20と、走行車体2における搭乗者Pの有無を検出するシートセンサ27と、設定された予定走行経路においてトラクタ1の自動運転を制御する制御装置40と、を備え、制御装置40は、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合において、搭乗者Pがいない場合にはトラクタ1を停止し、搭乗者Pがいる場合にはトラクタ1を減速する。これにより、障害物OBを適切に回避することができる。
【0077】
また、制御装置40は、自動運転を開始する際に、シートセンサ27の検出結果に応じて、搭乗者Pがいる有人モードと、搭乗者Pがいない無人モードとのいずれかを設定する。また、制御装置40は、第2検出領域R2に障害物OBが存在する場合に、無人モードならトラクタ1を停止し、有人モードならトラクタ1を減速する。これにより、自動運転開始時に、搭乗者Pの有無を自動で判定し、障害物OBを適切に回避するための自動運転制御を行うことができる。
【0078】
また、トラクタ1は、トラクタ1の前進、後進または中立を切り替える前後進レバーをさらに備える。制御装置40は、自動運転を開始する際に、前後進レバーが前進または後進、かつ、搭乗者Pがいない場合には、自動運転の開始を禁止する。これにより、搭乗者Pがいない状態で有人モードによる自動運転を開始することを回避することができる。
【0079】
また、制御装置40は、自動運転を開始する際に、前後進レバーが中立、かつ、搭乗者Pがいる場合には、自動運転の開始を禁止する。これにより、搭乗者Pがいる状態で無人モードによる自動運転を開始することを回避することができる。
【0080】
また、搭乗者センサは、トラクタ1が有する操縦席8への着座を検出するシートセンサ27である。制御装置40は、シートセンサ27により着座が検出された場合、搭乗者Pがいると判定し、着座が検出されない場合、搭乗者Pがいないと判定する。これにより、搭乗者Pの有無を自動で判定することができる。
【0081】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 トラクタ(作業車両)
2 走行車体
20 障害物センサ
27 シートセンサ
40 制御装置
P 搭乗者
R1 第1検出領域
R2 第2検出領域
W 作業機