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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】永久磁石電動機の制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/16 20160101AFI20230511BHJP
   H02P 25/024 20160101ALI20230511BHJP
   H02P 29/62 20160101ALI20230511BHJP
   H02P 21/24 20160101ALI20230511BHJP
【FI】
H02P21/16
H02P25/024
H02P29/62
H02P21/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020027606
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021132503
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 和希
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-280141(JP,A)
【文献】特開2001-268974(JP,A)
【文献】特開2009-278691(JP,A)
【文献】特開2005-218215(JP,A)
【文献】特開2007-325422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/16
H02P 25/024
H02P 29/62
H02P 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石電動機を駆動させるインバータ回路と、前記永久磁石電動機に流れる電流を取得する電流取得部と、前記永久磁石電動機の固有のパラメータとして、少なくとも巻線抵抗及びインダクタンスを用いて回転子の位置を推定する位置推定部と、前記位置推定部により推定される前記永久磁石電動機の回転子の位置を用いて求められる電流指令値と前記電流取得部により取得された電流との差に応じた電圧指令値に基づいて、前記インバータ回路の動作を制御する制御回路とを備える制御装置における、前記永久磁石電動機の制御方法であって、
前記制御回路は、
前記永久磁石電動機のモデルとしての電圧方程式を用いて推定された推定電流と前記電流取得部により取得された電流との差が小さくなるように、前記電圧方程式に用いる前記永久磁石電動機の固有のパラメータとしての誘起電圧定数、巻線抵抗、及びインダクタンスを同定し、
同定された前記固有のパラメータのうち少なくとも前記誘起電圧定数及び前記巻線抵抗に基づいて、前記永久磁石電動機の温度を推定する
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の永久磁石電動機の制御方法であって、
前記制御回路は、前記誘起電圧定数に対応する第1の温度と、前記巻線抵抗に対応する第2の温度との単純平均を、前記永久磁石電動機の温度とする
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の永久磁石電動機の制御方法であって、
前記制御回路は、前記誘起電圧定数、前記巻線抵抗、及びインダクタンスに基づいて、前記永久磁石電動機の温度を推定する
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の永久磁石電動機の制御方法であって、
前記制御回路は、
前記永久磁石電動機の温度に基づいて、前記巻線抵抗を再度推定し、
前記回転速度、前記電圧指令値、前記永久磁石電動機に流れる電流、前記推定した誘起電圧定数、前記再度推定した巻線抵抗、及び前記推定したインダクタンスを用いて、前記回転子の位置を推定する
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御方法。
【請求項5】
永久磁石電動機を駆動させるインバータ回路と、
前記永久磁石電動機に流れる電流を取得する電流取得部と、
前記永久磁石電動機の固有のパラメータとして、少なくとも巻線抵抗及びインダクタンスを用いて回転子の位置を推定する位置推定部と、
前記位置推定部により推定される前記永久磁石電動機の回転子の位置を用いて求められる電流指令値と前記電流取得部により取得された電流との差に応じた電圧指令値に基づいて、前記インバータ回路の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記永久磁石電動機のモデルとしての電圧方程式を用いて推定された推定電流と前記電流取得部により取得された電流との差が小さくなるように、前記電圧方程式に用いる前記永久磁石電動機の固有のパラメータとしての誘起電圧定数、巻線抵抗、及びインダクタンスを同定するパラメータ推定部と、
同定された前記固有のパラメータのうち少なくとも前記誘起電圧定数及び前記巻線抵抗に基づいて、前記永久磁石電動機の温度を推定する温度推定部と、
を備える永久磁石電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石電動機の制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石電動機の制御方法として、永久磁石電動機の固有のパラメータとしての誘起電圧定数に基づいて永久磁石電動機の温度を推定し、その推定した温度に基づいて永久磁石電動機の巻線抵抗を推定し、その推定した巻線抵抗を含むパラメータや電圧指令値などを永久磁石電動機のモデルとしての電圧方程式に代入して、永久磁石電動機の回転子の位置を推定するものがある。このように、回転子の位置の推定に用いられる巻線抵抗を永久磁石電動機の温度に応じて補正することができるため、回転子の位置の推定精度を上げることができ、永久磁石電動機の制御性を高めることができる。関連する技術として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-07924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面に係る目的は、回転子の位置を検出する機能を備えていない永久磁石電動機の温度を精度よく推定して、永久磁石電動機を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る一つの形態である永久磁石電動機の制御方法は、永久磁石電動機を駆動させるインバータ回路と、永久磁石電動機に流れる電流を取得する電流取得部と、永久磁石電動機の固有のパラメータとして、少なくとも巻線抵抗及びインダクタンスを用いて回転子の位置を推定する位置推定部と、位置推定部により推定される永久磁石電動機の回転子の位置を用いて求められる電流指令値と電流取得部により取得された電流との差に応じた電圧指令値に基づいて、インバータ回路の動作を制御する制御回路とを備える制御装置における、永久磁石電動機の制御方法である。
【0006】
制御回路は、永久磁石電動機のモデルとしての電圧方程式を用いて推定された推定電流と電流取得部により取得された電流との差が小さくなるように、電圧方程式に用いる永久磁石電動機の固有のパラメータとしての誘起電圧定数、巻線抵抗、及びインダクタンスを同定し、同定された固有のパラメータのうち少なくとも誘起電圧定数及び巻線抵抗に基づいて、永久磁石電動機の温度を推定する。
【0007】
このように、誘起電圧定数だけでなく巻線抵抗を用いて永久磁石電動機の温度を推定する構成であるため、誘起電圧定数のみを用いて永久磁石電動機の温度を推定する構成に比べて、永久磁石電動機の温度を精度よく推定することができる。
【0008】
また、制御回路は、誘起電圧定数に対応する第1の温度と、巻線抵抗に対応する第2の温度との単純平均を、永久磁石電動機の温度とするように構成してもよい。
【0009】
このように、誘起電圧定数に対応する第1の温度と、巻線抵抗に対応する第2の温度との単純平均を永久磁石電動機の温度とする構成であるため、第1及び第2の温度の加重平均を永久磁石電動機の温度とする構成など複雑な計算により永久磁石電動機の温度を推定する構成に比べて、制御回路の計算処理の負荷を抑えることができる。
【0010】
また、制御回路は、誘起電圧定数、巻線抵抗、及びインダクタンスに基づいて、永久磁石電動機の温度を推定するように構成してもよい。
【0011】
このように、誘起電圧定数及び巻線抵抗だけでなくインダクタンスを用いて永久磁石電動機の温度を推定する構成であるため、誘起電圧定数及び巻線抵抗のみを用いて永久磁石電動機の温度を推定する構成に比べて、永久磁石電動機の温度をさらに精度よく推定することができる。
【0012】
また、制御回路は、永久磁石電動機の温度に基づいて、巻線抵抗を再度推定し、回転速度、電圧指令値、永久磁石電動機に流れる電流、推定した誘起電圧定数、再度推定した巻線抵抗、及び推定したインダクタンスを用いて、回転子の位置を推定するように構成してもよい。
【0013】
これにより、永久磁石電動機の回転子の位置を検出する機能を備えていない永久磁石電動機の制御装置において、回転子の位置を精度よく推定して、永久磁石電動機を制御することができる。
【0014】
本発明に係る一つの形態である永久磁石電動機の制御装置における制御回路は、永久磁石電動機のモデルとしての電圧方程式を用いて推定された推定電流と電流取得部により取得された電流との差が小さくなるように、電圧方程式に用いる永久磁石電動機の固有のパラメータとしての誘起電圧定数、巻線抵抗、及びインダクタンスを同定するパラメータ推定部と、同定された固有のパラメータのうち少なくとも誘起電圧定数及び巻線抵抗に基づいて、永久磁石電動機の温度を推定する温度推定部とを備える。
【0015】
このように、誘起電圧定数だけでなく巻線抵抗を用いて永久磁石電動機の温度を推定する構成であるため、誘起電圧定数のみを用いて永久磁石電動機の温度を推定する構成に比べて、永久磁石電動機の温度を精度よく推定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転子の位置を検出する機能を備えていない永久磁石電動機の温度を精度よく推定して、永久磁石電動機を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の永久磁石電動機の制御装置の一例を示す図である。
図2】記憶部に記憶されている情報の一例を示す図である。
図3】推定部の一例を示す図である。
図4】推定部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0019】
図1は、実施形態の永久磁石電動機の制御装置の一例を示す図である。
【0020】
図1に示す制御装置1は、例えば、電動フォークリフトやプラグインハイブリッド車などの車両に搭載される永久磁石電動機Mを制御するものであって、インバータ回路2と、制御回路3とを備える。なお、永久磁石電動機Mは、以下、電動機Mとする。
【0021】
インバータ回路2は、直流電源Pから供給される電力により電動機Mを駆動するものであって、コンデンサCと、スイッチング素子SW1~SW6(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))と、電流センサSe1、Se2とを備える。すなわち、コンデンサCの一方端が直流電源Pの正極端子及びスイッチング素子SW1、SW3、SW5の各コレクタ端子に接続され、コンデンサCの他方端が直流電源Pの負極端子及びスイッチング素子SW2、SW4、SW6の各エミッタ端子に接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタ端子とスイッチング素子SW2のコレクタ端子との接続点は電流センサSe1を介して電動機MのU相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタ端子とスイッチング素子SW4のコレクタ端子との接続点は電流センサSe2を介して電動機MのV相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW5のエミッタ端子とスイッチング素子SW6のコレクタ端子との接続点は電動機MのW相の入力端子に接続されている。
【0022】
コンデンサCは、直流電源Pから出力されインバータ回路2へ入力される電圧を平滑する。
【0023】
スイッチング素子SW1は、制御回路3から出力される駆動信号S1に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW2は、制御回路3から出力される駆動信号S2に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW3は、制御回路3から出力される駆動信号S3に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW4は、制御回路3から出力される駆動信号S4に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW5は、制御回路3から出力される駆動信号S5に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW6は、制御回路3から出力される駆動信号S6に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子Sw1~SW6がそれぞれオンまたはオフすることで、直流電源Pから出力される直流電圧が、互いに位相が120度ずつ異なる3つの交流電圧に変換され、それら交流電圧が電動機MのU相、V相、及びW相の入力端子に印加され電動機Mの回転子が回転する。
【0024】
電流センサSe1は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、電動機MのU相に流れるU相電流Iuを検出して制御回路3に出力する。また、電流センサSe2は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、電動機MのV相に流れるV相電流Ivを検出して制御回路3に出力する。
【0025】
制御回路3は、記憶部4と、ドライブ回路5と、演算部6とを備える。
【0026】
記憶部4は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。また、記憶部4は、後述する、電動機Mの固有のパラメータである誘起電圧定数Ψと電動機Mの温度との対応関係を示す情報D1、電動機Mの固有のパラメータである巻線抵抗Rと電動機Mの温度との対応関係を示す情報D2、電動機Mの固有のパラメータであるd軸インダクタンスLdと電動機Mの温度との対応関係を示す情報D3、及び、電動機Mの固有のパラメータであるq軸インダクタンスLqと電動機Mの温度との対応関係を示す情報D4などを記憶している。
【0027】
図2(a)は、情報D1の一例を示す図である。
【0028】
情報D1では、誘起電圧定数Ψ1と温度T11とが対応し、誘起電圧定数Ψ2と温度T12とが対応している。なお、誘起電圧定数Ψ1>有機電圧定数Ψ2、温度T11<温度T12とする。すなわち、情報D1では、誘起電圧定数Ψが小さくなるほど、その誘起電圧定数Ψに対応する温度が大きくなる。
【0029】
図2(b)は、情報D2の一例を示す図である。
【0030】
情報D2では、巻線抵抗R1と温度T21とが対応し、巻線抵抗R2と温度T22とが対応している。なお、巻線抵抗R1<巻線抵抗R2、温度T21<温度T22とする。すなわち、情報D2では、巻線抵抗Rが大きくなるほど、その巻線抵抗Rに対応する温度が大きくなる。
【0031】
図2(c)は、情報D3の一例を示す図である。
【0032】
情報D3では、d軸インダクタンスLd1と温度T31とが対応し、d軸インダクタンスLd2と温度T32とが対応している。なお、d軸インダクタンスLd1<d軸インダクタンスLd2、温度T31<温度T32とする。すなわち、情報D3では、d軸インダクタンスLdが小さくなるほど、そのd軸インダクタンスLdに対応する温度が大きくなる。
【0033】
図2(d)は、情報D4の一例を示す図である。
【0034】
情報D4では、q軸インダクタンスLq1と温度T41とが対応し、q軸インダクタンスLq2と温度T42とが対応している。なお、q軸インダクタンスLq1<q軸インダクタンスLq2、温度T41<温度T42とする。すなわち、情報D4では、q軸インダクタンスLdが小さくなるほど、そのq軸インダクタンスLqに対応する温度が大きくなる。
【0035】
一般に、環境温度が高くなるなどで電動機Mの温度が大きくなるほど、誘起電圧定数Ψが小さくなり、巻線抵抗Rが大きくなる。また、電動機Mに流れる電流が大きくなるほど、d軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLqが小さくなる。また、電動機Mに流れる電流が大きくなるほど、電動機M自身の発熱により電動機Mの温度が大きくなる。
【0036】
このように、誘起電圧定数Ψ、巻線抵抗R、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLqは、電動機Mの温度変化に伴って変動するパラメータであるため、温度推定に用いるパラメータの種類を増やすほど、温度の推定精度を向上させることができる。
【0037】
そこで、実施形態の制御装置1では、後述するように、誘起電圧定数Ψ^(誘起電圧定数Ψの推定値)だけでなく巻線抵抗R^(巻線抵抗Rの推定値)も用いて、電動機Mの温度を推定する。これにより、誘起電圧定数Ψ^のみを用いて、電動機Mの温度を推定する場合に比べて、温度の推定精度を向上させることができるため、その温度に基づいて推定される回転子の位置の推定精度を向上させることができる。
【0038】
または、実施形態の制御装置1では、後述するように、誘起電圧定数Ψ^及び巻線抵抗R^だけでなくd軸インダクタンスLd^(d軸インダクタンスLdの推定値)及びq軸インダクタンスLq^(q軸インダクタンスLqの推定値)も用いて、電動機Mの温度を推定する。これにより、誘起電圧定数Ψ^及び巻線抵抗R^のみを用いて、電動機Mの温度を推定する場合に比べて、温度の推定精度をさらに向上させることができるため、その温度に基づいて推定される回転子の位置の推定精度をさらに向上させることができる。
【0039】
ドライブ回路5は、IC(Integrated Circuit)などにより構成され、演算部6から出力される電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*と搬送波(三角波、ノコギリ波、または逆ノコギリ波など)とを比較し、その比較結果に応じた駆動信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。例えば、ドライブ回路5は、電圧指令値Vu*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S1を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S2を出力し、電圧指令値Vu*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S1を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S2を出力する。また、ドライブ回路5は、電圧指令値Vv*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S3を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S4を出力し、電圧指令値Vv*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S3を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S4を出力する。また、ドライブ回路5は、電圧指令値Vw*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S5を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S6を出力し、電圧指令値Vw*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S5を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S6を出力する。
【0040】
なお、ドライブ回路5は、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の振幅値が三角波の振幅値より小さい場合、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の1周期においてスイッチング素子SW1~SW6が繰り返しオン、オフする制御、すなわち、パルス幅変調制御(PWM制御)を行うものとする。
【0041】
また、ドライブ回路5は、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の振幅値が三角波の振幅値より大きい場合、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の1周期のうちの一部の期間においてスイッチング素子SW1~SW6が繰り返しオン、オフし、残りの期間においてスイッチング素子SW1~SW6が常にオンまたは常にオフする制御、すなわち、過変調制御を行うものとする。
【0042】
また、ドライブ回路5は、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の振幅値が三角波の振幅値よりさらに大きい場合、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の半周期においてスイッチング素子SW1~SW6が常にオンまたは常にオフし、残りの半周期においてスイッチング素子SW1~SW6が常にオンまたは常にオフする制御、すなわち、矩形波制御を行うものとする。
【0043】
演算部6は、マイクロコンピュータなどにより構成され、速度演算部7と、減算部8と、トルク制御部9と、トルク/電流指令値変換部10と、減算部11、12と、電流制御部13と、座標変換部14と、座標変換部15と、推定部16とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部4に記憶されているプログラムを実行することにより、速度演算部7、減算部8、トルク制御部9、トルク/電流指令値変換部10、減算部11、12、電流制御部13、座標変換部14、座標変換部15、及び推定部16が実現される。
【0044】
速度演算部7は、推定部16により推定される電動機Mの回転子の推定位置θ^により回転速度ωを演算する。例えば、速度演算部7は、推定位置θ^を演算部6の制御周期で除算することにより回転速度ωを求める。
【0045】
減算部8は、外部から入力される回転速度指令値ω*と速度演算部7から出力される回転速度ωとの差Δωを算出する。
【0046】
トルク制御部9は、減算部8から出力される差Δωを用いて、トルク指令値T*を求める。例えば、トルク制御部9は、記憶部4に記憶されている、電動機Mの回転子の回転速度と電動機Mのトルクとが互いに対応付けられている情報(不図示)を参照して、差Δωに相当する回転速度に対応するトルクを、トルク指令値T*として求める。
【0047】
トルク/電流指令値変換部10は、トルク制御部9から出力されるトルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に変換する。例えば、トルク/電流指令値変換部10は、記憶部4に記憶されている、電動機Mのトルクとd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とが互いに対応付けられている情報(不図示)を参照して、トルク指令値T*に相当するトルクに対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を求める。
【0048】
減算部11は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるd軸電流指令値Id*と推定部16から出力される推定d軸電流Id^との差ΔIdを算出する。
【0049】
減算部12は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるq軸電流指令値Iq*と推定部16から出力される推定q軸電流Iq^との差ΔIqを算出する。
【0050】
電流制御部13は、減算部11から出力される差ΔId及び減算部12から出力される差ΔIqを用いたPI(Proportional Integral)制御により、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。例えば、電流制御部13は、下記式1を用いてd軸電圧指令値Vd*を算出するとともに、下記式2を用いてq軸電圧指令値Vq*を算出する。なお、KpはPI制御の比例項の定数とし、KiはPI制御の積分項の定数とし、Lqは電動機Mを構成するコイルのq軸インダクタンスとし、Ldは電動機Mを構成するコイルのd軸インダクタンスとし、ωは回転速度とし、Ψは誘起電圧定数とする。
【0051】
d軸電圧指令値Vd*=Kp×差ΔId+∫(Ki×差ΔId)-ωLqIq・・・式1
q軸電圧指令値Vq*=Kp×差ΔIq+∫(Ki×差ΔIq)+ωLdId+ωΨ・・・式2
【0052】
座標変換部14は、推定部16から出力される推定位置θ^を用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vu*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。
【0053】
例えば、座標変換部14は、下記式3に示す変換行列C1を用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*に変換する。
【0054】
【数1】
【0055】
座標変換部15は、電流センサSe1により検出されるU相電流Iu及び電流センサSe2により検出されるV相電流Ivを用いて、電動機MのW相に流れるW相電流Iwを求める。なお、座標変換部15及び電流センサSe1、Se2により、電流取得部が構成されるものとする。
【0056】
また、座標変換部15は、推定部16から出力される推定位置θ^を用いて、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをd軸電流Id(弱め界磁を発生させるための電流成分)及びq軸電流Iq(トルクを発生させるための電流成分)に変換する。
【0057】
例えば、座標変換部15は、下記式4に示す変換行列C2を用いて、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwを、d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。
【0058】
【数2】
【0059】
なお、電流センサSe1、Se2により検出される電流は、U相電流Iu及びV相電流Ivの組み合わせに限定されず、V相電流Iv及びW相電流Iwの組み合わせ、または、U相電流Iu及びW相電流Iwの組み合わせでもよい。電流センサSe1、Se2によりV相電流Iv及びW相電流Iwが検出される場合、座標変換部15は、V相電流Iv及びW相電流Iwを用いて、U相電流Iuを求める。また、電流センサSe1、Se2によりU相電流Iu及びW相電流Iwが検出される場合、座標変換部15は、U相電流Iu及びW相電流Iwを用いて、V相電流Ivを求める。
【0060】
また、インバータ回路2において、電流センサSe1、Se2の他に、電動機MのW相に流れる電流を検出する電流センサSe3をさらに備える場合、座標変換部15は、推定部16から出力される推定位置θ^を用いて、電流センサSe1~Se3により検出されるU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換するように構成してもよい。この場合、座標変換部15及び電流センサSe1~Se3により、電流取得部が構成されるものとする。
【0061】
また、座標変換部15は、ドライブ回路5がパルス幅変調制御を行っているとき、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の1周期において、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをすべて求めることができ、d軸電流Id及びq軸電流Iqを出力することができるものとする。
【0062】
また、座標変換部15は、ドライブ回路5が過変調制御を行っているとき、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の1周期の一部の期間において、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwを求めることができず、d軸電流Id及びq軸電流Iqを出力することができないものとする。
【0063】
また、座標変換部15は、ドライブ回路5が矩形波制御を行っているとき、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の1周期において、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをすべて求めることができず、d軸電流Id及びq軸電流Iqを出力することができないものとする。
【0064】
推定部16は、速度演算部7から出力される回転速度ωと、電流制御部13から出力されるd軸電圧指令値Vd*及q軸電圧指令値Vq*と、座標変換部15から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iqとを用いて、推定d軸電流Id^、推定q軸電流Iq^、及び推定位置θ^を出力する。
【0065】
図3は、推定部16の一例を示す図である。
【0066】
図3に示す推定部16は、電流推定部161と、減算部162と、パラメータ推定部163と、温度推定部164と、抵抗推定部165と、位置推定部166とを備える。
【0067】
電流推定部161は、電動機Mに流れる電流を推定する。
【0068】
すなわち、電流推定部161は、座標変換部14からd軸電流Id及びq軸電流Iqが出力される場合(電流取得部により電動機Mに流れる電流が取得される場合)、d軸電流Idを推定d軸電流Id^として減算部11に出力するとともに、q軸電流Iqを推定q軸電流Iq^として減算部12に出力する。
【0069】
また、電流推定部161は、座標変換部15からd軸電流Id及びq軸電流Iqが出力されない場合(電流取得部により電動機Mに流れる電流が取得されない場合)、速度演算部7から出力される回転速度ωと、電流制御部13から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*と、パラメータ推定部163により推定される電動機Mの固有のパラメータ(誘起電圧定数Ψ^、巻線抵抗R^、d軸インダクタンスLd^、及びq軸インダクタンスLq^)と下記式5に代入して、推定d軸電流Id^及び推定q軸電流Iq^を算出し、その算出した推定d軸電流Id^及び推定q軸電流Iq^を減算部11、12に出力する。なお、下記式5は電動機Mのモデルとしての電圧方程式であり、Pは微分演算子とする。
【0070】
【数3】
【0071】
減算部162は、座標変換部15から出力されるd軸電流Idと電流推定部161から出力される推定d軸電流Id^との差ΔId^を算出するとともに、座標変換部15から出力されるq軸電流Iqと電流推定部161から出力される推定q軸電流Iq^との差ΔIq^を算出する。
【0072】
パラメータ推定部163は、減算部162から出力される差ΔId^、ΔIq^がゼロになるように、電動機Mの固有のパラメータを制御タイミング毎に繰り返し推定する。これにより、パラメータ推定部163によりパラメータが繰り返し推定されているとき、差ΔId^、ΔIq^が徐々にゼロに近づいていき、パラメータが推定され始めてから所定時間以上が経過すると、差ΔId^、ΔIq^がゼロになり、パラメータ推定部163により推定されるパラメータが同定する。すなわち、パラメータ推定部163は、電動機Mのモデルとしての電圧方程式を用いて推定された推定電流と電流取得部により取得された電流との差が小さくなるように、電圧方程式に用いる電動機Mの固有のパラメータとしての誘起電圧定数、巻線抵抗、及びインダクタンスを同定する。
【0073】
例えば、パラメータ推定部163は、下記式6~式9を用いて、逐次最小二乗法により、誘起電圧定数Ψ^、巻線抵抗R^、d軸インダクタンスLd^、及びq軸インダクタンスLq^を推定するように構成してもよい。なお、yは下記式10とする。また、θ及びZ を下記式11及び式12に示すように定義する場合、下記式10を下記式13に示すように表されるものとする。rは減算部152の出力値(差ΔId^、ΔIq^)とし、a及びbは電動機Mの固有のパラメータ(誘起電圧定数Ψ^、巻線抵抗R^、d軸インダクタンスLd^、及びq軸インダクタンスLq^)とし、yN-iは座標変換部15の出力値(d軸電流Id及びq軸電流Iq)とし、uN-1は電流制御部13の出力値(d軸電圧指令値Vd*及q軸電圧指令値Vq*)とする。また、φ及びψはzとし、ρは忘却係数とする。
【0074】
【数4】
【0075】
【数5】
【0076】
【数6】
【0077】
【数7】
【0078】
【数8】
【0079】
【数9】
【0080】
【数10】
【0081】
【数11】
【0082】
温度推定部164は、パラメータ推定部163から出力されるパラメータのうちの誘起電圧定数Ψ^及び巻線抵抗R^に基づいて、電動機Mの温度T^を推定する。
【0083】
例えば、温度推定部164は、記憶部4に記憶されている情報D1を参照して、パラメータ推定部163から出力される誘起電圧定数Ψ^に対応する温度を、温度T1とし、記憶部4に記憶されている情報D2を参照して、パラメータ推定部163から出力される巻線抵抗R^に対応する温度を、温度T2とする。そして、温度推定部164は、誘起電圧定数Ψ^、及び巻線抵抗R^に基づいて、または、誘起電圧定数Ψ^、巻線抵抗R^及び回転速度ωに基づいて、重みW1及び重みW2を求め、温度T^=(温度T1×重みW1+温度T2×重みW2)/(重みW1+重みW2)を計算することにより、温度T^を推定する。すなわち、温度推定部164は、誘起電圧定数Ψに対応する温度T1と巻線抵抗R^に対応する温度T2との加重平均を、電動機Mの温度T^として推定する。
【0084】
または、温度推定部164は、記憶部4に記憶されている情報D1を参照して、パラメータ推定部163から出力される誘起電圧定数Ψ^に対応する温度を、温度T1とし、記憶部4に記憶されている情報D2を参照して、パラメータ推定部163から出力される巻線抵抗R^に対応する温度を、温度T2とし、温度T^=(温度T1+温度T2)/2を計算することにより、温度T^を推定する。すなわち、温度推定部164は、誘起電圧定数Ψ^に対応する温度T1と巻線抵抗R^に対応する温度T2との単純平均を、電動機Mの温度T^として推定する。このように、温度T1、T2の単純平均を温度T^として推定する場合は、温度T1、T2の加重平均を温度T^として推定する場合に比べて、制御回路3の計算処理の負荷を抑えることができる。
【0085】
巻線抵抗推定部165は、温度推定部164から出力される温度T^を用いて、電動機Mの巻線抵抗R^を再度推定し、その再度推定した巻線抵抗R^を、巻線抵抗R^´とする。
【0086】
例えば、巻線抵抗推定部165は、記憶部4に記憶されている情報D2を参照して、温度推定部164から出力される温度T^に相当する温度に対応する巻線抵抗Rを、巻線抵抗R^´とする。
【0087】
位置推定部166は、速度演算部7から出力される回転速度ωと、電流制御部13から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*と、座標変換部15から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iqまたは電流推定部161から出力される推定d軸電流Id^及び推定q軸電流Iq^と、パラメータ推定部163から出力されるパラメータのうちの誘起電圧定数Ψ^、d軸インダクタンスLd^、及びq軸インダクタンスLq^と、巻線抵抗推定部165から出力される巻線抵抗R^´とを用いて、電動機Mの回転子の推定位置θ^を推定する。
【0088】
例えば、位置推定部166は、電流制御部13から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*をγ軸電圧Vγ及びδ軸電圧Vδに変換するとともに、座標変換部15から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iqまたは電流推定部161から出力される推定d軸電流Id^及び推定q軸電流Iq^をγ軸電流Iγ及びδ軸電流Iδに変換する。次に、位置推定部166は、下記式14に、回転速度ω、γ軸電圧Vγ、δ軸電圧Vδ、γ軸電流Iγ、δ軸電流Iδ、誘起電圧定数Ψ^、巻線抵抗R^´、d軸インダクタンスLd^、q軸インダクタンスLq^を代入することにより求められるΔθを、推定位置θ^とする。なお、下記式14は電動機Mのモデルとしての電圧方程式であり、Pは微分演算子とする。
【0089】
【数12】
【0090】
なお、位置推定部166は、電動機Mの固有のパラメータ(誘起電圧定数Ψ^、巻線抵抗R^´、d軸インダクタンスLd^、及びq軸インダクタンスLq^)のうち、巻線抵抗R^´、d軸インダクタンスLd^、及びq軸インダクタンスLq^を用いて回転子の位置を推定するように構成してもよい。
【0091】
このように、実施形態の電動機Mの制御装置1によれば、誘起電圧定数Ψ^だけでなく巻線抵抗R^´を用いて電動機Mの温度T^を推定する構成であるため、誘起電圧定数Ψ^のみを用いて電動機Mの温度T^を推定する構成に比べて、温度T^の推定精度を向上させることができる。これにより、電動機Mの回転子の位置を検出する機能を備えていない電動機Mの制御装置1において、回転子の位置を精度よく推定して、電動機Mを制御することができる。
【0092】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0093】
<変形例1>
温度推定部164は、パラメータ推定部163から出力される誘起電圧定数Ψ^、巻線抵抗R^、d軸インダクタンスLd^、及びq軸インダクタンスLq^に基づいて、電動機Mの温度T^を推定するように構成してもよい。
【0094】
例えば、温度推定部164は、記憶部4に記憶されている情報D1を参照して、パラメータ推定部163から出力される誘起電圧定数Ψ^に対応する温度を、温度T1とし、記憶部4に記憶されている情報D2を参照して、パラメータ推定部163から出力される巻線抵抗R^に対応する温度を、温度T2とし、記憶部4に記憶されている情報D3を参照して、パラメータ推定部163から出力されるd軸インダクタンスLd^に対応する温度を、温度T3とし、パラメータ推定部163から出力されるq軸インダクタンスLq^に対応する温度を、温度T4とする。そして、温度推定部164は、パラメータ推定部163から出力されるパラメータに基づいて、または、パラメータ推定部163から出力されるパラメータ及び回転速度ωに基づいて、重みW1~W4を求め、温度T^=(温度T1×重みW1+温度T2×重みW2+温度T3×重みW3+温度T4×重みW4)/(重みW1+重みW2+重みW3+重みW4)を計算することにより、温度T^を推定する。言い換えると、温度推定部164は、誘起電圧定数Ψに対応する温度T1と巻線抵抗R^に対応する温度T2とd軸インダクタンスLd^に対応する温度T3とq軸インダクタンスLq^に対応する温度T4との加重平均を、電動機Mの温度T^として推定する。
【0095】
または、温度推定部164は、記憶部4に記憶されている情報D1を参照して、パラメータ推定部163から出力される誘起電圧定数Ψ^に対応する温度を、温度T1とし、記憶部4に記憶されている情報D2を参照して、パラメータ推定部163から出力される巻線抵抗R^に対応する温度を、温度T2とし、記憶部4に記憶されている情報D3を参照して、パラメータ推定部163から出力されるd軸インダクタンスLd^に対応する温度を、温度T3とし、パラメータ推定部163から出力されるq軸インダクタンスLq^に対応する温度を、温度T4とする。そして、温度推定部164は、温度T^=(温度T1+温度T2+温度T3+温度T4)/4を計算することにより、温度T^を推定する。言い換えると、温度推定部164は、誘起電圧定数Ψ^に対応する温度T1と巻線抵抗R^に対応する温度T2とd軸インダクタンスLd^に対応する温度T3とq軸インダクタンスLq^に対応する温度T4との単純平均を、電動機Mの温度T^として推定する。
【0096】
このように、温度T1~T4の単純平均を温度T^として推定する場合は、温度T1~T4の加重平均を温度T^として推定する場合に比べて、制御回路3の計算処理の負荷を抑えることができる。
【0097】
また、変形例1における制御装置1によれば、誘起電圧定数Ψ^及び巻線抵抗R^だけでなくd軸インダクタンスLd^及びq軸インダクタンスLq^を用いて電動機Mの温度T^を推定する構成であるため、誘起電圧定数Ψ^及び巻線抵抗R^のみを用いて電動機Mの温度T^を推定する構成に比べて、温度T^の推定精度をさらに向上させることができる。
【0098】
<変形例2>
図4に示すように、推定部16は、さらに、異常停止判断部167を備えるように構成してもよい。
【0099】
異常停止判断部167は、温度推定部164から出力される温度T^が閾値Tth以上である場合、電動機Mに異常が発生していると判断して電動機Mの動作を停止させる旨の停止指示をドライブ回路5に出力し、温度T^が閾値Tthより小さい場合、電動機Mに異常が発生していないと判断する。ドライブ回路5は、停止指示を受け取ると、駆動信号S1~S6のそれぞれのデューティ比をゼロにして、電動機Mの駆動を停止する。
【0100】
このように、推定部16に異常停止判定部167を備えることにより、電動機Mが過温度状態のまま電動機Mが駆動し続けることを防止することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 制御装置
2 インバータ回路
3 制御回路
4 記憶部
5 ドライブ回路
6 演算部
7 速度演算部
8 減算部
9 トルク制御部
10 トルク/電流指令値変換部
11 減算部
12 減算部
13 電流制御部
14 座標変換部
15 座標変換部
16 推定部
161 電流推定部
162 減算部
163 パラメータ推定部
164 温度推定部
165 抵抗推定部
166 位置推定部
図1
図2
図3
図4