(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】アウターミラー用ガスケット
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B60R1/06 D
(21)【出願番号】P 2020036300
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩志
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153199(JP,A)
【文献】特開2013-112203(JP,A)
【文献】特開2004-098790(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131540(WO,A1)
【文献】特開2014-172515(JP,A)
【文献】特開2014-015129(JP,A)
【文献】特開2013-001192(JP,A)
【文献】特開2004-082952(JP,A)
【文献】実開平07-033746(JP,U)
【文献】実開平04-031045(JP,U)
【文献】米国特許第06116743(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06 - 1/078
B60J 5/00 - 5/14
H04R 1/00 - 1/08
H04R 1/12 - 1/14
H04R 1/42 - 1/46
F16D 25/00 - 39/00
F16D 48/00 - 48/12
B60K 1/00 - 6/12
B60K 7/00 - 8/00
B60K 16/00
F16F 15/00 - 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体表面に取り付けられるアウターミラーに使用されるガスケットであって、
取り付け時に前記車体表面に対向する一般面と、
前記一般面から突起し、取り付け時に前記車体表面に接触するシール部と、
前記シール部の内側の前記一般面から突起し、取り付け時に前記車体表面に接触するリブと、を備え、
前記リブの先端から前記一般面と接する基部に亘る、前記一般面に平行なリブ断面の重心を結ぶ線が、前記一般面に対して垂直であることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記リブにおいて、前記車体表面との接触予定面の面積(S
1)と前記リブにおける前記基部の断面積(S
2)の関係が、S
1≧0.5×S
2を満足する請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記リブが、前記線を軸として回転対称である請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガスケットを備えるアウターミラー。
【請求項5】
請求項4に記載のアウターミラーを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り付け面に接触する状態で配置されるガスケットに関するものであり、特に、アウターミラー用ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、一般的に、運転者が周囲の様子を確認するためのアウターミラーが車体表面に備えられている。
特許文献1に示されるように、車体表面とアウターミラーは、ボルトなどの締結部材で連結される。
【0003】
特許文献2に記載されているように、車体表面とアウターミラーとの間のクリアランスを解消して、外部からの水の侵入を防止する目的や、車体表面及びアウターミラーの接触に因る傷の発生を抑制する目的で、車体表面とアウターミラーの間に、樹脂製のガスケットを備える技術が知られている。
【0004】
特許文献3には、アウターミラー用ガスケットに関する技術が記載されており、具体的には、車体表面に対向する一般面の外周縁に沿って連続し、先端部が外周縁側の外側又は内側のいずれかに傾斜する可撓性のシールが形成されているガスケットが記載されている。同文献には、一般面の外周縁に沿って連続するシールの存在により、ガスケットの剛性が高まるため作業性が向上する旨、及び、シールの可撓性により、先端部が車体表面に弾性的に圧接できるので、ガスケットの一般面と車体表面とのクリアランスを全周に亘りシール可能である旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平4-67545号公報
【文献】実開平4-31045号公報
【文献】特開2004-98790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載された可撓性のシールに関する技術は、作業性及びシール性の点で優れた技術である。
しかしながら、アウターミラーの荷重を支え、かつ、アウターミラーの振動を抑制するには、ガスケットのシール程度の剛性では不十分である。また、締結部材で連結される車体表面とアウターミラーとの間のクリアランスには、設計と実際の製造との誤差が生じるのが常であり、かかる誤差によって生じ得る車体表面及びアウターミラーの接触を抑制するためには、ガスケットのシール程度の剛性では不十分である。
【0007】
かかる欠点を補うために、シールの内側に一般面から突起するリブを複数形成させることで、ガスケットの剛性の向上を試みた。
ここで、リブの形状は、一体成型法にて製造されるガスケットの製造上の観点から、一般面と接する基部のリブ断面を長方形とし、リブの先端側に向かって、シール側のリブ面が垂直に延び、シール反対側のリブ面が斜めに延びて、全体としてテーパー状に先細る形状とした。リブの断面形状は、概ね、直角三角形である。
【0008】
しかしながら、本発明者は、上記の形状のリブが形成されたガスケットを備える車両において、車両振動時に「ピチッ」との異音が生じることを知見した。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、ガスケットからの異音の発生を抑制し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
異音の原因が上記のリブと車体表面との摩擦にあると考え、摩擦力軽減の目的で、潤滑剤を塗布したところ、異音の発生は解消した。しかしながら、潤滑剤の塗布には、費用と手間がかかるため効率的とはいえない。
【0011】
本発明者は、上記のような対症療法的な改善策ではなく、抜本的な改善を志向した。
本発明者の鋭意検討の結果、車体表面に接しているリブの車両振動時の形状変化が異音の発生に深く関連していることを見出した。具体的には、車両振動時のリブの曲がりの程度が少ないほど、異音の発生が抑制されることを見出した。
【0012】
かかる知見により、本発明は完成された。
【0013】
本発明のガスケットは、
車両の車体表面に取り付けられるアウターミラーに使用されるガスケットであって、
取り付け時に前記車体表面に対向する一般面と、
前記一般面から突起し、取り付け時に前記車体表面に接触するシール部と、
前記シール部の内側の前記一般面から突起し、取り付け時に前記車体表面に接触するリブと、を備え、
前記リブの先端から前記一般面と接する基部に亘る、前記一般面に平行なリブ断面の重心を結ぶ線が、前記一般面に対して垂直であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガスケットを採用することで、異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】実施例1のガスケットを備えるアウターミラーである。
【
図4】ミラーベースを実施例1のガスケット側から観察した模式図である。
【
図5】アウターミラーが取り付けられるドアパネルの取り付け部分の模式図である。
【
図6】
図4における実施例1のガスケットのA-A断面図である。
【
図7】実施例2のガスケットのA-A断面図である。
【
図8】実施例3のガスケットのA-A断面図である。
【
図9】比較例1のガスケットのA-A断面図である。
【
図10】実施例1のガスケットのリブの形状変化である。
【
図11】比較例1のガスケットのリブの形状変化である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
【0017】
本発明のガスケットは、
車両の車体表面に取り付けられるアウターミラーに使用されるガスケットであって、
取り付け時に前記車体表面に対向する一般面と、
前記一般面から突起し、取り付け時に前記車体表面に接触するシール部と、
前記シール部の内側の前記一般面から突起し、取り付け時に前記車体表面に接触するリブ(以下、本発明のリブということがある。)と、を備え、
前記リブの先端から前記一般面と接する基部に亘る、前記一般面に平行なリブ断面の重心を結ぶ線(以下、重心線ということがある。)が、前記一般面に対して垂直であることを特徴とする。
【0018】
車両としては、電車などの鉄道車両、一般的な道路を通行する自動車、ブルドーザーやショベルカーなどの建設車両、フォークリフト、高所作業車、トーイングトラクターなどの産業車両、トラクターや耕運機などの農業用車両を例示できる。
車両としては、ガソリンや軽油などの有機燃料をエネルギー源とし内燃機関を備える車両でもよく、EVやFCVなどの電気をエネルギー源とし電動機を備える車両でもよく、HV、PHVなどの内燃機関及び電動機の両者を備える車両でもよい。本発明のガスケットは異音の発生を抑制することから、音が静かな電動機を備える車両に対して適用するのが好ましい。
【0019】
車体表面の材質としては、金属や硬質の樹脂を例示できる。強度や耐候性の点から、車体表面の材質としては、金属が好ましい。
【0020】
アウターミラーとしては、フロントドア、バックドアなどのドアに装着されるドアミラーでもよいし、フロントフェンダーの上部に装着されるフェンダーミラーでもよく、比較的大型の車両に装着されるサイドアンダーミラー、サイドミラー、アンダーミラーでもよい。
アウターミラーの重量と本発明のリブに負荷される荷重との関係及び異音の抑制との観点からみて、フロントドアに装着される比較的重いドアミラーに対して本発明のガスケットを適用するのが好ましいといえる。
また、アウターミラーとしては、鏡を備えるものでもよいし、カメラを備えるデジタルミラーでもよい。
【0021】
アウターミラーの一態様を
図1及び
図2に示す。
図1に示すとおり、車体のフロントドアにおける金属製のドアパネル10の表面に、アウターミラー1が連結されている。
図2は
図1のアウターミラー1近傍の拡大図であり、アウターミラー1は、鏡を備えるミラー本体2と、ミラー本体2と連結するミラーベース3を備える。アウターミラー1は電動格納式であり、ミラー本体2がミラーベース3との連結軸を中心として回動することで開閉される。
ミラーベース3のドアパネル10側には、本発明のガスケットが配置されており、本発明のガスケットはシール部及びリブにてドアパネル10と接触している。
【0022】
ガスケットの材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、ふっ素ゴムなどの可撓性に優れたエラストマーであるのが好ましい。耐候性や剛性の点から、ポリ塩化ビニル製のガスケットが好ましい。
ガスケットは、一般面、シール部及びリブを備えるが、これらは一体成型法にて製造されるのが合理的である。
【0023】
一般面には、締結部材を貫通させる貫通孔や、電気コードを通すための貫通孔が設けられているものが好ましい。その他、位置合わせ部材を貫通させる貫通孔や、仮保持部材を貫通させる貫通孔が設けられていてもよい。
【0024】
一般面の大きさは、ミラーベースの大きさに従い、適宜、決定すればよい。一般面の大きさは、ミラーベースの車体表面側の面を覆う程度の大きさが好ましい。一般面の厚みとしては、1~7mm、1.5~6mm、2~5mmを例示できる。
【0025】
シール部は一般面から連続的に突起する。シール部は可撓性に優れるのが好ましい。シール部はアウターミラー取り付け時に車体表面に接触する状態となる。かかる接触状態を維持することで、シール部は外部からの水の侵入を防止する役割や、車体表面及びミラーベースの直接接触に因る傷の発生を抑制する役割を果たす。
【0026】
上記の役割からみて、シール部は、一般面の最外周縁又はその近傍に沿って連続して形成されているのが好ましい。シール部は、一般面の全周に形成されているのが好ましいが、上述の役割を果たすことを前提として、下部方向などに切れ目があってもよい。シール部の数としては1又は2を例示できる。
【0027】
シール部の形状は、先端部が外側又は内側のいずれかに予め傾斜している状態が好ましい。一般面を基準としたシール部の高さは、リブと同程度か、リブよりもやや高いのが好ましい。シール部の厚みとしては、0.1~2mm、0.3~1.5mm、0.5~1mmを例示できる。
【0028】
リブは、アウターミラーの荷重を支える支柱の役割を果たす。リブは車両の車体表面に取り付けられる時に車体表面に接触するが、取り付け前のリブの形状をそのまま維持した状態で取り付けられるのではなく、取り付け時の加圧に因り、リブの高さ方向に圧縮される。
本発明のリブは、重心線が車体表面とガスケットの一般面に対して垂直である。そのため、車両振動時に車体表面からの圧力変動が生じた場合でも、リブに対する荷重方向のズレが生じ難いため、リブの曲がりが生じ難い。したがって、車体表面とリブ先端との位置ズレが生じ難いので、リブと車体表面との摩擦振動が抑制される結果、異音の発生が抑制される。
【0029】
本発明のリブは重心線を軸として回転対称であるのが好ましい。リブの先端の形状は平面であるのが好ましいが、曲面であってもよい。リブの具体的な形状として、円錐台、四角錐台などの錐台や直方体を例示できる。
【0030】
一般面を基準としたリブの高さとしては、1~7mm、1.5~6mm、2~5mmを例示できる。また、一般面と接するリブの基部におけるリブ断面において、長軸又は長辺の長さとして3~20mm、4~15mm、5~12mm、6~10mmを例示でき、短軸又は短辺の長さとして1~7mm、2~6mm、3~5mmを例示できる。
(短軸又は短辺の長さ)に対する(リブの高さ)の比としては、0.3~3、0.4~2、0.5~1.5、0.6~1、0.7~0.9を例示できる。
【0031】
また、本発明のリブにおいて、車体表面との接触予定面の面積(S1)とリブにおける基部の断面積(S2)の関係が、S1≧0.5×S2を満足するのが好ましい。接触予定面が一定程度の面積を占めることで、車両振動時に車体表面からの圧力変動が生じた場合でも、接触面の面積変動が小さいといえる。
【0032】
接触予定面とは、車両の車体表面に取り付けられた際に、車体表面と接触するリブの面積を意味する。接触予定面の面積は、車体表面とアウターミラーとの連結の強さに因り、若干左右される。そのため、接触予定面を、例えば、リブの先端から一般面側0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm又は0.5mmの位置のリブ断面の面積と定義してもよく、また、リブの先端の面積の1.1倍の面積を接触予定面の面積としてもよい。
【0033】
S1とS2の関係としては、0.6×S2≦S1≦2×S2、0.7×S2≦S1≦1.5×S2、0.8×S2≦S1≦1.4×S2、0.9×S2≦S1≦1.3×S2、S2≦S1≦1.2×S2、1.1×S2≦S1≦1.2×S2を例示できる。
【0034】
また、本発明のリブの先端が平面形状の場合、先端の平面の面積(S3)とリブにおける基部の断面積(S2)の関係が、S3≧0.5×S2を満足するのが好ましい。
S3とS2の関係としては、0.6×S2≦S3≦2×S2、0.7×S2≦S3≦1.5×S2、0.8×S2≦S3≦1.4×S2、0.9×S2≦S3≦1.3×S2、S2≦S3≦1.2×S2、1.1×S2≦S3≦1.2×S2を例示できる。
【0035】
本発明のリブの先端が平面形状の場合、先端の平面の面積(S3)と接触予定面の面積(S1)の関係として、S3≦S1≦1.30×S3、S3≦S1≦1.20×S3、1.05×S3≦S1≦1.15×S3、1.08×S3≦S1≦1.12×S3、1.1×S3=S1を例示できる。
【0036】
リブの数には制限が無いが、車体表面との合致性の点から、複数が好ましい。リブの数としては、2~10、3~9、4~8、5~7を例示できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0038】
なお、本発明のリブの形状を、アウターミラー以外のウェザストリップの形状に応用してもよい。さらに、本発明のリブの形状を、車両の外部や車両の内部に取り付けられるエラストマー製の部材の形状に応用してもよいし、車両以外の何らかの部材の表面に接触して取り付けられるエラストマー製の部材の形状に応用してもよい。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例および比較例等を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
図3に、実施例1のガスケット4を備えるアウターミラー1を示す。
アウターミラー1は、鏡を備えるミラー本体2と、ミラー本体2と連結するミラーベース3と、実施例1のガスケット4で構成される。アウターミラー1は電動格納式であり、ミラー本体2がミラーベース3との連結軸を中心として回動することで開閉される。
ミラーベース3には、3つの締結部材5、2つの位置合わせ部6、仮保持部7及びコード8が、それぞれ実施例1のガスケット4の一般面を貫通する状態で存在する。
アウターミラー1は、車体のドアにおける金属製のドアパネルの表面に、実施例1のガスケット4を接触させた状態で連結される。
【0041】
図4に、ミラーベース3を、実施例1のガスケット4側から観察した図を示す。
実施例1のガスケット4はポリ塩化ビニル製である。実施例1のガスケット4は、ミラーベース3の車体表面側に接着されており、ミラーベース3の外周よりもやや小さい。
実施例1のガスケット4は一体成型法で製造されており、一般面40と、一般面40の外周縁から連続的に突起するシール部41と、シール部41の内側の一般面40から突起する7つのリブ42を備える。一般面40は概ね厚み2.5mmであり、取り付け時に車体表面に平行に対向する。7つのリブ42の形状は、短辺3.5mm、長辺6~12mm、高さ2.5mmの直方体である。リブ42の長辺は、一般面40の外周縁に沿って延びている。
また、実施例1のガスケット4には、3つの締結部材5、2つの位置合わせ部6、仮保持部7及びコード8を貫通させるための貫通孔が設けられている。
【0042】
アウターミラー1が取り付けられるドアパネル10の取り付け部分の模式図を拡大して
図5に示す。
図5は、車体の外部側から観察した図である。
ドアパネル10は金属製であり、2つの位置合わせ部6がそれぞれ貫通する2つの貫通孔11を有し、かつ、中央孔12を有する。中央孔12の奥には、補強部材のリインフォース20が存在する。リインフォース20には、3つの締結部材5がそれぞれ貫通する3つの貫通孔21、仮保持部7が貫通する貫通孔22、及び、コード8が貫通する貫通孔23が存在する。リインフォース20に、3つの締結部材5が直接に締結されることで、アウターミラー1はドアパネル10の表面に固定される。
【0043】
実施例1のガスケット4におけるシール部41及びリブ42は、リインフォース20ではなく、ドアパネル10の表面に接触する。そして、3つの締結部材5の締結時には、実施例1のガスケット4のシール部41とリブ42が高さ方向に変形する程度の締結力で、アウターミラー1はドアパネル10に圧着される。
【0044】
図6に、
図4における実施例1のガスケット4のA-A断面図を示す。
シール部41は一般面40の最外周に沿って形成されている。シール部41の形状は、一般面40から外周側上方に突起し、途中で折れ曲がり、先端部が内側に傾斜している。一般面40を基準としたシール部41の高さは3mm程度であり、厚みは0.5~0.9mm程度である。
【0045】
一般面40から突起するリブ42の断面形状は、上側の角がやや丸みを帯びた長方形であり、リブ42の形状は直方体である。リブ42の先端の先端面43は平面であり長方形である。リブ42の先端の先端面43から一般面40と接する基部の基部断面44に亘る、一般面40に平行なリブ断面の重心を結ぶ線45は、一般面40に対して垂直である。なお、
図6中の〇印が先端面43及び基部断面44の重心である。
リブ断面の重心を結ぶ線45が一般面40に対して垂直なので、先端面43に対する圧力が上下方向に変動する場合でも、圧力の荷重方向は変化しないため、リブ42の曲がりは生じ難い。
また、
図6において、リブ42の高さは2.5mmであり、先端面43の短辺の長さは3.3mmであり、基部断面44の短辺の長さは3.5mmである。先端面43の面積(S
3)と基部断面積(S
2)の関係は、S
3=0.94×S
2であり、接触予定面の面積(S
1)と基部断面積(S
2)の関係は概ねS
1=S
2である。
【0046】
ポリ塩化ビニル製の実施例1のガスケットを備える実施例1のアウターミラーを実際に製造した。実施例1のアウターミラーをフロントドアに締結部材で連結させて、実施例1のドアを複数製造した。さらに、複数の実施例1のドアを用いて実施例1の自動車を複数試作した。
【0047】
(実施例2)
リブ42の形状が異なる実施例2のガスケットについて説明する。実施例2のガスケット4について、
図7に、
図4及び
図6の実施例1と同様のA-A断面図を示す。
一般面40から突起するリブ42のA-A断面における断面形状は上底が下底よりも短い台形である。上底の長さは2.0mmであり、下底の長さは3.5mmであり、高さは2.5mmである。
実施例2のガスケット4においても、リブ42の先端の先端面43から一般面40と接する基部の基部断面44に亘る、一般面40に平行なリブ断面の重心を結ぶ線45は、一般面40に対して垂直である。
先端面43の面積(S
3)と基部断面積(S
2)の関係は、S
3=0.57×S
2であり、接触予定面の面積(S
1)と基部断面積(S
2)の関係は概ねS
1=0.63×S
2である。
【0048】
(実施例3)
リブ42の形状が異なる実施例3のガスケットについて説明する。実施例3のガスケット4について、
図8に、
図4及び
図6の実施例1と同様のA-A断面図を示す。
一般面40から突起するリブ42のA-A断面における断面形状は上底が下底よりも長い台形である。上底の長さは4.0mmであり、下底の長さは3.5mmであり、高さは2.5mmである。
実施例3のガスケット4においても、リブ42の先端の先端面43から一般面40と接する基部の基部断面44に亘る、一般面40に平行なリブ断面の重心を結ぶ線45は、一般面40に対して垂直である。
先端面43の面積(S
3)と基部断面積(S
2)の関係は、S
3=1.1×S
2であり、接触予定面の面積(S
1)と基部断面積(S
2)の関係は概ねS
1=1.1×S
2である。
【0049】
(比較例1)
リブ42の形状が異なる比較例1のガスケットについて説明する。比較例1のガスケット4について、
図9に、
図4及び
図6の実施例1と同様のA-A断面図を示す。
一般面40から突起するリブ42のA-A断面における断面形状は、やや丸みを帯びたリブ先端を頂点とし、基部断面44の短辺を底辺とする直角三角形である。他の2辺は、頂点からリブ42の高さと等しい長さで垂直に底辺と交わる1辺と、頂点から斜めに底辺と交わる斜辺である。
リブの先端から一般面40と接する基部の基部断面44に亘る、一般面40に平行なリブ断面の重心を結ぶ線45は、一般面40に対して、シール部41側に傾いており、垂直ではない。
接触予定面の面積(S
1)と基部断面積(S
2)の関係は概ねS
1=0.3×S
2である。
【0050】
ポリ塩化ビニル製の比較例1のガスケットを備える比較例1のアウターミラーを実際に製造した。比較例1のアウターミラーをフロントドアに締結部材で連結させて、比較例1のドアを複数製造した。さらに、複数の比較例1のドアを用いて比較例1の自動車を複数試作した。
【0051】
(評価例1)
実施例1のガスケットのリブの形状と、比較例1のガスケットのリブの形状を、CATIA-CAEにて評価した。具体的には、取り付け時のリブへの荷重を346Nとし、圧力変動時のリブへの荷重を52.6Nとした場合の各リブの形状変化をシミュレーションした。
リブの基部断面の短辺方向から観察したリブの圧力変動時における形状変化について、実施例1のガスケットのリブの形状変化を
図10に示し、比較例1のガスケットのリブの形状変化を
図11に示す。
【0052】
図10と
図11の比較から、車体表面に対するリブの接触面の面積変化が、実施例1のガスケットのリブにおいては、著しく低減されていることがわかる。
【0053】
また、荷重346N時のリブの各点を基準とし、荷重52.6N時の各点の横方向(W方向)への変位を算出したところ、実施例1のガスケットのリブにおける最大変位は0.57mmであり、比較例1のガスケットのリブにおける最大変位は2.26mmであった。
実施例1のガスケットのリブにおいては、圧力変動時の横方向への変位(曲げモーメント)が著しく低減されていることがわかる。
【0054】
実施例1のガスケットのリブは、リブの先端から一般面と接する基部に亘る、一般面に平行なリブ断面の重心を結ぶ線が、一般面に対して垂直である。当該線の方向と、車体表面からの荷重の負荷の方向が同一なので、リブの曲がりが生じ難いといえる。
【0055】
(評価例2)
実施例1の自動車のうち、ドアのアウターパネルとアウターミラーのミラーベースとのクリアランスが最も小さいもの(以下、建付け最小品という。)と、ドアのアウターパネルとアウターミラーのミラーベースとのクリアランスが設計通りのもの(以下、建付け中央品という。)について、ドアの開閉を行い、異音の有無を確認した。
比較例1の自動車についても同様の試験を行った。
以上の結果を評価例1の結果と共に表1に示す。
【0056】
【0057】
実施例1の自動車においては、リブの形状変化が最も生じやすいと考えられる建付け最小品、及び、建付け中央品のいずれであっても、異音が発生しなかった。他方、比較例1の自動車においては、建付け最小品及び建付け中央品のそれぞれから異音が発生した。
【0058】
本発明のリブが異音の発生を抑制することが、実機において確認された。本発明の技術的意義がコンピューターによる計算結果及び実機を使用した実験結果の両者にて裏付けられたといえる。
【符号の説明】
【0059】
1 アウターミラー
2 ミラー本体
3 ミラーベース
4 ガスケット
5 締結部材
6 位置合わせ部
7 仮保持部
8 コード
10 ドアパネル
11 貫通孔
12 中央孔
20 リインフォース
21 貫通孔
22 貫通孔
23 貫通孔
40 一般面
41 シール部
42 リブ
43 先端面
44 基部断面
45 線(重心線)