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特許7276204情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20230511BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230511BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230511BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20230511BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20230511BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20230511BHJP
【FI】
G06F30/18
G05B23/02 301T
G06F30/10
G06F30/12
G06F30/13
G06Q50/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020039177
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140595
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】石 建信
(72)【発明者】
【氏名】江間 伸明
(72)【発明者】
【氏名】安念 正人
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-309754(JP,A)
【文献】特開平7-141405(JP,A)
【文献】特開2011-134168(JP,A)
【文献】特開2019-121114(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103853734(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
G05B 23/02
G06F 30/10
G06F 30/12
G06F 30/13
G06Q 50/04
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する情報処理装置であって、制御部を備え、前記制御部は、
前記プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なると判定すると、前記第1図面の形式及び前記第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成し、
生成された前記中間モデルに基づいて前記第1図面と前記第2図面との間に差異があるか否かを判定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、第1形式に基づいて定められる前記第1図面に示すべき前記要素が、第2形式に基づいて定められる前記第2図面においては不要な前記要素を含むとき、前記第2図面においては不要な前記要素を前記第1図面から削除することで前記第1図面に対して前記中間モデルを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1図面及び前記第2図面のそれぞれを、前記要素を示す要素情報と前記要素同士の接続関係を示す接続情報とによって表現した抽象化モデルに変換し、
前記第1図面に基づく一の前記抽象化モデルを情報レベル合わせが施された前記中間モデルとして生成し、
前記中間モデルと前記第2図面に基づく他の前記抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記抽象化モデルは、前記制御部による処理用の第1抽象化モデルと、前記第1抽象化モデルを変換した、前記ユーザへの表示用の第2抽象化モデルと、を含み、
前記制御部は、前記第1図面及び前記第2図面のそれぞれに含まれる直列的に配置された前記要素を、前記第1抽象化モデル及び前記第2抽象化モデルにおいて直列的に配置された前記要素情報に変換する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルと他の前記第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した前記要素情報を、前記第2抽象化モデルにおいて、前記要素情報の配列方向における位置が互いに同一となるようにそれぞれ配置する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルと他の前記第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した前記要素情報を、前記第2抽象化モデルにおいて、所定の間隔で前記配列方向に互いに離間する複数のグリッド線のうちの一の前記グリッド線上で互いに対向するようにそれぞれ配置する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、一の前記第1抽象化モデル及び他の前記第1抽象化モデルのいずれかにおける対応する前記要素情報が欠落していると、一の前記第2抽象化モデルと他の前記第2抽象化モデルとを、対向する前記要素情報が存在しない状態で表示させる、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1図面及び前記第2図面のそれぞれに含まれる並列的に配置された前記要素を、前記第1抽象化モデル及び前記第2抽象化モデルにおいて並列的に配置された前記要素情報に変換する、
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルと他の前記第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した前記要素情報を、前記第2抽象化モデルにおいて、各前記第2抽象化モデルにおける配置関係が同一であり、かつ前記第2抽象化モデルの一方向における位置が互いに同一となるようにそれぞれ配置する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルにおける一の前記要素情報に関連付けられた前記接続情報が、他の前記第1抽象化モデルにおいて一の前記要素情報と同一であると決定された前記要素情報に関連付けられた前記接続情報と異なると、一の前記第2抽象化モデルと他の前記第2抽象化モデルとを、前記接続情報が異なる状態で表示させる、
請求項8又は9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
前記プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なるか否かを判定するステップと、
前記第1図面及び前記第2図面の形式が互いに異なると判定すると、前記第1図面の形式及び前記第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成するステップと、
生成された前記中間モデルに基づいて前記第1図面と前記第2図面との間に差異があるか否かを判定するステップと、
を含む、
情報処理方法。
【請求項12】
プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する情報処理装置に、
前記プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なるか否かを判定するステップと、
前記第1図面及び前記第2図面の形式が互いに異なると判定すると、前記第1図面の形式及び前記第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成するステップと、
生成された前記中間モデルに基づいて前記第1図面と前記第2図面との間に差異があるか否かを判定するステップと、
を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプラントの建設及び保守において、ユーザは、同一設備を対象とする大量の図面を取り扱う必要がある。このようなプラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラント設計に際し、設計情報の漏れ及び転記ミス等を効率的に発見できるプラント設計支援装置及びプラント設計支援プログラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6228681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にプラント設備は大規模であり、多数の観点に基づく多数の作業が必要となる。例えばプラントの各種設計、建設・改造、及び保守において、同一設備を対象とする大量の図面を取り扱うユーザの作業量は膨大である。したがって、例えば、このような大量の図面を作成した後、図面間の差異を確認するときの作業の効率化が要求される。
【0006】
本開示は、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る情報処理装置は、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する情報処理装置であって、制御部を備え、前記制御部は、前記プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なると判定すると、前記第1図面の形式及び前記第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成し、生成された前記中間モデルに基づいて前記第1図面と前記第2図面との間に差異があるか否かを判定する。これにより、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する。情報処理装置は、第1図面及び第2図面に共通する要素だけで構成される中間モデルを用いて、それぞれの情報レベルを合わせた状態で、第1図面及び第2図面の比較が可能になる。したがって、情報処理装置による比較の精度が向上する。加えて、情報処理装置及び端末装置の少なくとも一方が、情報レベルを合わせた中間モデルを第2抽象化モデルとして表示することで、ユーザは、図面の形式が互いに異なる第1図面及び第2図面に対しても、複数図面内容の目視による比較及び差異部分等の確認を正確に行える。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0008】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、第1形式に基づいて定められる前記第1図面に示すべき前記要素が、第2形式に基づいて定められる前記第2図面においては不要な前記要素を含むとき、前記第2図面においては不要な前記要素を前記第1図面から削除することで前記第1図面に対して前記中間モデルを生成してもよい。これにより、情報処理装置は、第1形式に基づく第1図面の情報レベルと第2形式に基づく第2図面の情報レベルとを合わせて、両者を比較できる。
【0009】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、前記第1図面及び前記第2図面のそれぞれを、前記要素を示す要素情報と前記要素同士の接続関係を示す接続情報とによって表現した抽象化モデルに変換し、前記第1図面に基づく一の前記抽象化モデルを情報レベル合わせが施された前記中間モデルとして生成し、前記中間モデルと前記第2図面に基づく他の前記抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成してもよい。これにより、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する。ユーザは、表示情報として表示された抽象化モデルにおいて、複数図面内容の目視による比較及び差異部分等の確認を迅速かつ正確に行える。
【0010】
一実施形態における情報処理装置では、前記抽象化モデルは、前記制御部による処理用の第1抽象化モデルと、前記第1抽象化モデルを変換した、前記ユーザへの表示用の第2抽象化モデルと、を含み、前記制御部は、前記第1図面及び前記第2図面のそれぞれに含まれる直列的に配置された前記要素を、前記第1抽象化モデル及び前記第2抽象化モデルにおいて直列的に配置された前記要素情報に変換してもよい。これにより、比較対象とする複数の図面間で直列的に接続された要素(直列鎖)同士の比較及び比較結果の確認(ユーザによる視認)が容易となる。直列鎖に基づく第2抽象化モデルの表示は非常に簡潔であるため、ユーザは、変更点を確認しやすい。結果として、作業が効率化し、ユーザによる確認漏れ及び確認ミスが抑制される。これにより、同一設備を対象とする大量の図面を取り扱うユーザの作業が短時間で正確なものとなり、大規模なプラントの設計、建設、及び保守においても、作業ミス及びプラントにおける致命的な欠陥の発生が抑制される。処理用の第1抽象化モデルと表示用の第2抽象化モデルとは互いに同一でも、異なる形式でもよい。処理専用の第1抽象化モデルが設けられた場合、当該モデルの表示の可否は問わない。
【0011】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルと他の前記第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した前記要素情報を、前記第2抽象化モデルにおいて、前記要素情報の配列方向における位置が互いに同一となるようにそれぞれ配置してもよい。これにより、要素情報の配列がより整頓される。結果として、ユーザによる第2抽象化モデルの視認性が向上する。
【0012】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルと他の前記第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した前記要素情報を、前記第2抽象化モデルにおいて、所定の間隔で前記配列方向に互いに離間する複数のグリッド線のうちの一の前記グリッド線上で互いに対向するようにそれぞれ配置してもよい。これにより、ユーザは、互いに同一である要素情報を一見して把握することが可能である。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0013】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、一の前記第1抽象化モデル及び他の前記第1抽象化モデルのいずれかにおける対応する前記要素情報が欠落していると、一の前記第2抽象化モデルと他の前記第2抽象化モデルとを、対向する前記要素情報が存在しない状態で表示させてもよい。これにより、ユーザは、一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとの間の差異部分を容易に抽出できる。
【0014】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、前記第1図面及び前記第2図面のそれぞれに含まれる並列的に配置された前記要素を、前記第1抽象化モデル及び前記第2抽象化モデルにおいて並列的に配置された前記要素情報に変換してもよい。これにより、比較対象とする複数の図面間で並列的に配置された要素の群同士の比較及び比較結果の確認が容易となる。このような要素の群に基づく第2抽象化モデルの表示は簡潔であるため、ユーザは、変更点を確認しやすい。結果として、作業が効率化し、ユーザによる確認漏れ及び確認ミスが抑制される。これにより、同一設備を対象とする大量の図面を取り扱うユーザの作業が短時間で正確なものとなり、大規模なプラントの設計、建設、及び保守においても、作業ミス及びプラントにおける致命的な欠陥の発生が抑制される。
【0015】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルと他の前記第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した前記要素情報を、前記第2抽象化モデルにおいて、各前記第2抽象化モデルにおける配置関係が同一であり、かつ前記第2抽象化モデルの一方向における位置が互いに同一となるようにそれぞれ配置してもよい。これにより、ユーザは、互いに同一である要素情報を一見して把握することが可能である。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0016】
一実施形態における情報処理装置では、前記制御部は、一の前記第1抽象化モデルにおける一の前記要素情報に関連付けられた前記接続情報が、他の前記第1抽象化モデルにおいて一の前記要素情報と同一であると決定された前記要素情報に関連付けられた前記接続情報と異なると、一の前記第2抽象化モデルと他の前記第2抽象化モデルとを、前記接続情報が異なる状態で表示させてもよい。このような表示によって、ユーザは、一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとの間で接続情報が異なっていることを容易に認識可能である。例えば、ユーザは、第2抽象化モデルの比較を行うにあたり、各分岐ノードの分岐数変化、並びにライン及び端点ノードの数の変化等に注目すればよい。したがって、ユーザによる見落とし等が低減するとともに、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0017】
幾つかの実施形態に係る情報処理方法は、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、前記プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なるか否かを判定するステップと、前記第1図面及び前記第2図面の形式が互いに異なると判定すると、前記第1図面の形式及び前記第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成するステップと、生成された前記中間モデルに基づいて前記第1図面と前記第2図面との間に差異があるか否かを判定するステップと、を含む。これにより、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する。情報処理装置は、第1図面及び第2図面に共通する要素だけで構成される中間モデルを用いて、それぞれの情報レベルを合わせた状態で、第1図面及び第2図面の比較が可能になる。したがって、情報処理装置による比較の精度が向上する。加えて、情報処理装置及び端末装置の少なくとも一方が、情報レベルを合わせた中間モデルを第2抽象化モデルとして表示することで、ユーザは、図面の形式が互いに異なる第1図面及び第2図面に対しても、複数図面内容の目視による比較及び差異部分等の確認を正確に行える。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0018】
幾つかの実施形態に係るプログラムは、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する情報処理装置に、前記プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なるか否かを判定するステップと、前記第1図面及び前記第2図面の形式が互いに異なると判定すると、前記第1図面の形式及び前記第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成するステップと、生成された前記中間モデルに基づいて前記第1図面と前記第2図面との間に差異があるか否かを判定するステップと、を実行させる。これにより、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する。情報処理装置は、第1図面及び第2図面に共通する要素だけで構成される中間モデルを用いて、それぞれの情報レベルを合わせた状態で、第1図面及び第2図面の比較が可能になる。したがって、情報処理装置による比較の精度が向上する。加えて、情報処理装置及び端末装置の少なくとも一方が、情報レベルを合わせた中間モデルを第2抽象化モデルとして表示することで、ユーザは、図面の形式が互いに異なる第1図面及び第2図面に対しても、複数図面内容の目視による比較及び差異部分等の確認を正確に行える。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一実施形態に係る情報処理装置を含む情報処理システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1の制御部の各機能を示す機能部に基づいて制御部を詳細に示した機能ブロック図である。
図3A】プラントを構成する要素を含む変更前の図面の一例を示す模式図である。
図3B】プラントを構成する要素を含む変更後の図面の一例を示す模式図である。
図4】第2抽象化モデルにおける要素情報及び接続情報の表示の一例を示す模式図である。
図5】動作の第1例を具体的に説明するための模式図である。
図6】動作の第1例に基づくフローチャートである。
図7】動作の第1例において制御部の要素抽出部により実行される直列鎖の抽出制御に関する変形例を示す模式図である。
図8A】プラントを構成する要素を含む変更後の図面の一例を示す図3Bに対応する模式図である。
図8B図8Aにおける直列鎖をより見やすく配置した図8Aに対応する模式図である。
図8C図8Bに基づいて制御部の要素抽出部により生成された第1抽象化モデルを示す模式図である。
図8D図8Cをさらに簡略化した第2抽象化モデルを示す模式図である。
図9A図3Aの図面が変換された第2抽象化モデルの一例を示す模式図である。
図9B図3Bの図面が変換された第2抽象化モデルの一例を示す模式図である。
図9C図9A及び図9Bの第2抽象化モデルを上下方向に配列させた模式図である。
図9D図9A及び図9Bの第2抽象化モデルを左右方向に配列させた模式図である。
図10】動作の第2例に基づくフローチャートである。
図11A】第1形式に基づく第1図面の一例を示す模式図である。
図11B】第2形式に基づく第2図面の一例を示す模式図である。
図11C】制御部によって図11Aの第1図面に対して生成された中間モデルの一例を示す模式図である。
図12】動作の第3例に基づくフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(概要)
初めに、本開示の一実施形態に係る情報処理装置の概要について説明する。
【0022】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる設計等の作業を支援する。より具体的には、本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、例えばプラントの建設、改修、又は保守に使用する図面の変更箇所の特定等を容易にする。
【0023】
本明細書において、「プラント」は、例えば、化学等の工業プラントの他、ガス田及び油田を含む井戸元、並びにその周辺を管理制御するプラントを含む。その他にも、プラントは、例えば、水力発電、火力発電、及び原子力発電を含む発電を管理制御するプラント、太陽光発電及び風力発電を含む環境発電を管理制御するプラント、並びに上下水及びダム等を管理制御するプラントを含んでもよい。
【0024】
以上のようなプラントの設備は大規模であり、主要計装、バルブ、及び配管等を含むプラントを構成する要素ごとにユーザの作業時の視点及び切り口が異なる。したがって、図面の作成及び修正等の作業において複数の組織又は個人のそれぞれが関与し、必要な作業が分担される。このとき、例えばプラントの建設、改修、及び保守等において用いられる、同一設備を対象とする図面は、目的に応じて多種多様な形式のものが存在する。本明細書において、「図面の形式」は、例えば、PFD(Process Flow Diagram)、P&ID(Piping and Instrumentation Diagram)、及び3D配管図等を含む。
【0025】
例えばプラントの新設又は改修の設計等を行う作業者としてのユーザの作業量は膨大であり、効率化及びコストの低減が要求される。そのため、すでに作成された既存の図面が再利用されることが一般的である。このとき、同一設備の同一箇所に関する変更であっても、一の図面には変更内容が反映され、他の図面には変更内容が反映されていないようなケースも発生し得る。複数の図面において、同種図面(例えばP&ID同士)でも、異なる担当者が作成したり、作成時期が異なるものには差異がある。また、異種図面でいうと、PFDの担当者が行った修正が、P&IDには反映されていなかったりする。同一設備を対象とする複数の図面間におけるこのような不整合は早期に検出及び解消されることが望ましい。
【0026】
例えば、上記の特許文献1には、設計情報のP&IDへの集約時に慎重な確認作業が求められることを課題としており、設計エラーの発生を抑制するための技術が開示されている。特許文献1に記載のプラント設計支援装置及びプラント設計支援プログラムは、一の図面上で、指定したピックアップ条件を満たす制御ユニットを所定の色で識別表示するものである。しかしながら、それらの場所がわかっても、複数の図面を目視で比較するユーザの作業負担は非常に大きい。したがって、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率も低下していた。
【0027】
加えて、比較する対象となる図面同士で図面の形式が異なる場合、図面を構成する要素(どのような機器及び情報を含むか)の内容及び書式等が図面間で異なり、機械的に比較することが困難である。仮に比較を実行できたとしても、ユーザは、比較する対象となる図面同士の差異部分が、例えば図面の形式の違いに基づいて一方にのみ要素が示されていることに起因するのか、実際にプラントの設備として要素の追加若しくは除去が行われたことに起因するのか、又は人為的ミス等の他の理由により一方の図面において要素が正しく示されていないことに起因するのか、を把握することが困難である。このような差異部分の内容を確認するユーザの作業負担は非常に大きい。結果として、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率も低下してしまう。
【0028】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する情報処理装置を提供することを目的とする。
【0029】
このような目的を達成するために、本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、プラントを構成する設備及び機器等の要素を含む複雑な図面を、要素を示す要素情報と要素同士の接続関係を示す接続情報とによって簡潔に表現した抽象化モデルに変換する。
【0030】
本明細書において、「要素情報」は、例えば、要素図形、当該要素図形に付され、対応する要素を示す要素種別、プラントを構成する要素を区別するための識別情報、及び当該要素が有する属性情報等を含む。「識別情報」は、例えば、各機器及び設備等に固有のタグ番号及びID(Identification)等を含む。「属性情報」は、例えば、プロパティ及びパラメータ等を含む。例えば、要素がタンクである場合、属性情報は、密閉式、二重壁式、及びドーム式等のタンクのタイプ、並びに材質、容量、及びこれらの上限・下限値等のパラメータといった詳細な情報を含む。本明細書において、「抽象化モデル」は、例えば、後述する制御部15による処理用の第1抽象化モデルと、第1抽象化モデルを変換した、ユーザへの表示用の第2抽象化モデルと、を含む。抽象化モデルは、例えばエクセル等の表形式によって表現されてもよいし、HTML(Hyper Text Markup Language)及びXML(Extensible Markup Language)を含むマークアップ言語によって表現されてもよい。第1抽象化モデルと第2抽象化モデルとは互いに同一形式でも、異なる形式でもよい。同一形式の場合、変換は1回であってもよい。元の図面を比較し、比較結果を、視認性の高い抽象化モデルとして表示できれば、画像比較等を含めた多様な比較方法が取られてよい。
【0031】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、一の図面に基づく一の抽象化モデルと他の図面に基づく他の抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、差異部分を、差異が存在せず一致している他の部分(以下、単に「他の部分」と記載する。)と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。本明細書において、「表示情報」は、例えば、表示色、表示形状、表示線種、付加的な表示記号、及び付加的な表示文字の少なくとも1つに基づいて差異部分を強調表示させるための強調表示情報をさらに含む。例えば、表示色の場合、強調表示情報は、他の部分における要素情報の第1表示色と、差異部分における要素情報の第1表示色とは異なる第2表示色と、を含む。
【0032】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なると判定すると、第1図面の形式及び第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成する。当該情報処理装置は、生成された中間モデルに基づいて第1図面と第2図面との間に差異があるか否かを判定する。本明細書において、「中間モデル」は、例えば、抽象化モデルの一形態を含む。例えば、中間モデルは、図面から要素が抽出される際に、不要な要素が除外されて比較対象とする図面のそれぞれが第1抽象化モデルに変換されることで生成される。これに限定されず、中間モデルは、図面から要素が抽出される際に、不要な要素が除外されて比較対象とする図面のそれぞれが第2抽象化モデルに直接変換されることで生成されてもよい。
【0033】
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態に係る情報処理装置の構成及び動作について主に説明する。
【0034】
(構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る情報処理装置10を含む情報処理システム1の概略構成を示すブロック図である。図1を参照しながら、本開示の一実施形態に係る情報処理装置10を含む情報処理システム1の構成について主に説明する。情報処理システム1は、情報処理装置10に加えて、端末装置20を含む。情報処理装置10及び端末装置20は、任意の通信技術によって互いに通信可能に接続されている。図1では説明の簡便のため、情報処理装置10及び端末装置20について、それぞれ1つずつ図示しているが、情報処理システム1に含まれる情報処理装置10及び端末装置20の数はそれぞれ2つ以上であってもよい。
【0035】
情報処理装置10は、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業を支援する。例えば、情報処理装置10は、プラント全体の大量の図面を管理する。情報処理装置10は、1つ又は互いに通信可能な複数のサーバ装置である。情報処理装置10は、これらに限定されず、PC(Personal Computer)等の任意の汎用の電子機器であってもよいし、情報処理システム1に専用の他の電子機器であってもよい。
【0036】
端末装置20は、例えばPC又はスマートフォン等の汎用の電子機器である。端末装置20は、例えば、プラントの設計又は保守に携わる作業者としてのユーザが使用する電子機器である。例えば、端末装置20は、特定種類の図面等を担当するユーザの担当者用端末である。端末装置20は、これらに限定されず、情報処理システム1に専用の電子機器であってもよい。
【0037】
図1に示すように、情報処理装置10は、通信部11、記憶部12、入力部13、出力部14、及び制御部15を有する。
【0038】
通信部11は、任意の通信技術によって端末装置20と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部11は、さらに、端末装置20との通信を制御するための通信制御モジュール、及び端末装置20との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。一実施形態において、情報処理装置10は、通信部11を介して端末装置20と通信可能に接続されている。
【0039】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部12は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、情報処理装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部12は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信部11によって受信された各種情報等を記憶してもよい。記憶部12は、情報処理装置10に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続されている外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0040】
記憶部12は、例えば、上述した図面の形式に基づいてプラントを構成する要素を含む図面のデータを複数記憶する。記憶部12は、例えば、プラントを構成する要素を含む図面を抽象化した、制御部15による処理に用いられる第1抽象化モデル並びに情報処理装置10及び端末装置20の少なくとも一方に表示するための第2抽象化モデルのデータを複数記憶する。記憶部12は、例えば、第1図面の形式を第2図面の形式に合わせた中間モデルのデータを複数記憶する。記憶部12は、例えば、上述した図面の形式ごとに定められる後述の図面ルールの情報を記憶する。本明細書において、「図面ルール」は、例えば、各図面に記載されるべきプラントの要素を図面の形式ごとに関連付けた要素テーブルを含む。
【0041】
その他にも、記憶部12は、例えば、履歴情報及び関係者情報を記憶してもよい。本明細書において、「履歴情報」は、例えば、制御部15により実行された複数の図面の比較結果、情報処理装置10への図面登録の経緯、関係者への通知履歴、及び入力部13を用いたユーザによる指定内容の履歴等を含む。本明細書において、「関係者情報」は、例えば、端末装置20の識別情報、プラントの設計又は保守に携わる関係者としてのユーザのEメールアドレス、及び当該ユーザの担当業務等を、図面の比較結果の提示及び確認依頼の際等の送付先情報として含む。
【0042】
入力部13は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部13は、物理キー、静電容量キー、出力部14のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイク等であるが、これらに限定されない。
【0043】
出力部14は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部14は、情報を画像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。なお、上述の入力部13及び出力部14の少なくとも一方は、情報処理装置10と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0044】
制御部15は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部15は、情報処理装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、情報処理装置10全体の動作を制御する。
【0045】
図1に示すように、端末装置20は、通信部21、記憶部22、入力部23、出力部24、及び制御部25を有する。
【0046】
通信部21は、任意の通信技術によって情報処理装置10と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部21は、さらに、情報処理装置10との通信を制御するための通信制御モジュール、及び情報処理装置10との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。一実施形態において、端末装置20は、通信部21を介して情報処理装置10と通信可能に接続されている。
【0047】
記憶部22は、HDD、SSD、EEPROM、ROM、及びRAMを含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部22は、端末装置20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部22は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信部21によって受信された各種情報等を記憶してもよい。記憶部22は、端末装置20に内蔵されているものに限定されず、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続されている外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0048】
入力部23は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部23は、物理キー、静電容量キー、出力部24のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイク等であるが、これらに限定されない。
【0049】
出力部24は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部24は、情報を画像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。なお、上述の入力部23及び出力部24の少なくとも一方は、端末装置20と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0050】
制御部25は、1つ以上のプロセッサを含む。制御部25は、端末装置20を構成する各構成部と通信可能に接続され、端末装置20全体の動作を制御する。
【0051】
(動作の概要)
図2は、図1の制御部15の各機能を示す機能部に基づいて制御部15を詳細に示した機能ブロック図である。図2を参照しながら、制御部15の機能によって実現される情報処理システム1の動作の概要について主に説明する。
【0052】
制御部15は、その機能として、図面指定部151、図面形式判定部152、要素抽出部153、比較・判定部154、変換部155、及び表示制御部156を有する。
【0053】
図面指定部151は、記憶部12を参照しながら、比較対象とする複数の図面、又は中間モデルを生成するための図面を指定する。図面指定部151は、指定した図面において、比較対象とする範囲をさらに指定してもよい。図面指定部151は、これらの指定処理を自動的に実行してもよいし、情報処理装置10の入力部13及び端末装置20の入力部23の少なくとも一方から取得したユーザからの入力情報に基づいて実行してもよい。
【0054】
図面形式判定部152は、形式が互いに異なる第1図面及び第2図面に対して、第1図面及び第2図面同士の比較を中間モデルに基づいて実現するために、比較対象となる第1図面及び第2図面の形式を識別する。図面形式判定部152は、図面ファイル名及び図面に示されている図名記入欄等から図面名を抽出して拡張子等に基づき図面の形式を識別してもよいし、図面に示されている要素と後述の図面ルールとを対比して図面の形式を識別してもよい。これらに限定されず、図面形式判定部152は、情報処理装置10の入力部13及び端末装置20の入力部23の少なくとも一方から取得したユーザからの入力情報に基づいて図面の形式を識別してもよい。
【0055】
要素抽出部153は、図面指定部151により指定された比較対象とする複数の図面のそれぞれから必要な要素を抽出する。要素抽出部153は、図面指定部151により指定された比較対象とする第1図面に基づいて、図面の形式を第2図面の形式に合わせるために必要な要素及び削除する要素を抽出する。
【0056】
比較・判定部154は、比較対象となる複数の図面のそれぞれに対して生成された第1抽象化モデル同士を比較する。同様に、比較対象図面の形式が異なる場合には、比較・判定部154は、比較対象となる第1図面に対して生成された第1抽象化モデル(中間モデル)と第2図面に基づく第1抽象化モデルとを比較する。比較・判定部154は、第1抽象化モデル同士(図面形式が異なる場合には一方が中間モデル化されたもの)の比較の結果に基づいて、差分の有無を判定する。比較・判定部154は、差分があると判定すると、差分に対応する箇所を具体的に特定する。
【0057】
変換部155は、要素抽出部153によって抽出された必要な要素を、要素情報及び接続情報を含む第1抽象化モデルに変換する。変換部155は、要素抽出部153によって抽出された必要な要素のみに基づいて第1抽象化モデルとしての中間モデルを生成する。変換部155は、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に表示させるために、第1抽象化モデル(中間モデル)を第2抽象化モデルに変換する。なお、処理用(比較用)の第1抽象化モデルと表示用の第2抽象化モデルとが共通の場合、変換は不要である。
【0058】
表示制御部156は、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に対して複数の第2抽象化モデルを表示させるために、複数の第2抽象化モデルに含まれる、互いに合致する要素情報(各図面間で同じものを示す要素)の表示位置を合わせたり、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成したりする等の調整及び編集処理を実行する。表示制御部156は、必要に応じて、情報処理装置10の入力部13及び端末装置20の入力部23の少なくとも一方から取得したユーザからの入力情報に基づいて表示の調整及び編集処理を実行してもよい。
【0059】
(動作の第1例)
以下では、制御部15の機能によって実現される情報処理システム1の動作の第1例について主に説明する。図3Aは、プラントを構成する要素を含む変更前の図面の一例を示す模式図である。図3Bは、プラントを構成する要素を含む変更後の図面の一例を示す模式図である。図3A及び図3Bでは、所定の図面の形式に基づいて、プラントを構成する複数の要素及びそれらの接続関係が示されている。
【0060】
図3A及び図3Bでは、図面の変更前後において、入力にストレーナが追加され、塔頂部の温度制御部が削除されている。このように、プラントを構成する要素を含む図面に基づいて直接的に新旧図面を比較すると、熟練したユーザであっても、目視により一見して差異を見つけることが容易ではない。
【0061】
そこで、制御部15の要素抽出部153は、プラントを構成する要素を含む図面から要素を抽出する。制御部15の変換部155は、図面を抽象化モデルに、あるいは抽象化モデルを他の形式の抽象化モデルに変換する。図4は、第2抽象化モデルにおける要素情報及び接続情報の表示の一例を示す模式図である。第2抽象化モデルは、情報量が多く複雑な図面から比較に必要な要素が抽出され、要素同士の接続関係が線分で接続する表現で簡潔に表現されたものである。第2抽象化モデルは、図面に含まれている要素は何か、それがどのような接続関係で接続されているかを示しており、どの図面に対しても共通する形式となる。したがって、図面間の比較が可能となる。線分は、各図面でどの要素とどの要素とが接続されているか、すなわち要素の並び順及び接続関係を示す。
【0062】
図4を参照すると、第2抽象化モデルは、図面を抽象化して表現される。第2抽象化モデルでは、プラントを構成する要素は、例えば、要素情報としてのノードにより表される。例えば、プラントを構成する配管も1つのノードである。また、要素同士の接続関係は、例えば、接続情報としてのエッジにより表される。
【0063】
ノードは、例えば3種類に分類される。1つは、エッジを1つのみ有する端点ノードである。1つは、エッジを2つ有する一端子対ノードである。1つは、エッジを3つ以上有する動作の第2例で後述する分岐ノードである。
【0064】
図4では、一例として、端点ノード及び一端子対ノードによって表される第2抽象化モデルの4つの例が示されている。図4に示すとおり、ノードの種類によってその表示形態が変更されてもよい。例えば、端点ノードは、4つの角が丸みを帯びた枠としての要素図形の中に要素種別が付された状態で表示されてもよい。例えば、一端子対ノードは、四角の枠としての要素図形の中に要素種別が付された状態で表示されてもよい。
【0065】
最上段の例では、4つの一端子対ノードとしてのノードA、B、C、及びDが直列的に配置されている。ノードAとノードBとはエッジE1によって接続されている。ノードBとノードCとはエッジE2によって接続されている。ノードCとノードDとはエッジE3によって接続されている。
【0066】
上から2段目の例では、1つの端点ノードとしてのノードZ、並びに3つの一端子対ノードとしてのノードA、B、及びCが直列的に配置されている。ノードZとノードAとはエッジE1によって接続されている。ノードAとノードBとはエッジE2によって接続されている。ノードBとノードCとはエッジE3によって接続されている。
【0067】
上から3段目の例では、2つの端点ノードとしてのノードZ及びY、並びに2つの一端子対ノードとしてのノードA及びBが直列的に配置されている。ノードZとノードAとはエッジE1によって接続されている。ノードAとノードBとはエッジE2によって接続されている。ノードBとノードYとはエッジE3によって接続されている。
【0068】
最下段の例では、2つの端点ノードとしてのノードZ及びYのみが直列的に配置されている。ノードZとノードYとはエッジE1によって接続されている。
【0069】
制御部15の比較・判定部154は、一の図面に基づく一の第1抽象化モデルと他の図面に基づく他の第1抽象化モデルとの間に差異があるか否かを判定する。制御部15の比較・判定部154が、一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、制御部15の表示制御部156は、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。
【0070】
動作の第1例では、制御部15の要素抽出部153は、比較対象となる複数の図面のそれぞれから、要素が直列に接続された部分、すなわち直列鎖を抽出する。本明細書において、「直列鎖」は、例えば、図面に含まれる直列的に配置された要素の群を含む。制御部15の変換部155は、直列鎖を、第1抽象化モデル及び第2抽象化モデルにおいて直列的に配置された要素情報に変換する。制御部15の表示制御部156は、一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した要素情報を、第2抽象化モデルにおいて、要素情報の配列方向における位置が互いに同一となるようにそれぞれ配置する。すなわち、表示制御部156は、第2抽象化モデルにおいて、要素情報を位置合わせして揃え、配列方向における位置が互いに一致するようにそれぞれ配置する。例えば、表示制御部156は、比較対象図面の同一箇所を示す直列鎖を、第2抽象化モデルにおいて、各図面で同一の機器等を示す要素にそれぞれ対応する要素情報同士を位置合わせして並列に配置する。これにより、対応する要素同士の位置が合わされること等により生成された簡潔な第2抽象化モデルが表示されることで、ユーザによる対比確認が容易になる。
【0071】
図5は、動作の第1例を具体的に説明するための模式図である。図5は、図3A及び図3Bにおける入力部分の要素の変更箇所を制御部15の表示制御部156が変更前後で比較表示する様子を示している。図5を参照しながら、動作の第1例についてより具体的に説明する。
【0072】
例えば、図3Aにおける入力部分では、変更前の要素として、入力端子とポンプとが直列的に配置されている。制御部15の要素抽出部153は、このような直列的配置の部分(入力端子とポンプとを含む直列鎖)を図3Aから抽出する。制御部15の変換部155は、抽出されたこのような直列鎖を、入力端子に基づく端点ノードTとポンプに基づく一端子対ノードPとをエッジE1によって接続し簡潔に表現した直列鎖の第1抽象化モデルに変換する。制御部15の変換部155は、生成された直列鎖の第1抽象化モデルを第2抽象化モデルに変換する。
【0073】
例えば、図3Bにおける入力部分では、変更後の要素として、入力端子と、ストレーナと、ポンプとが直列的に配置されている。制御部15の要素抽出部153は、このような直列的配置の部分(入力端子、ストレーナ、及びポンプを含む直列鎖)を図3Bから抽出する。制御部15の変換部155は、抽出されたこのような直列鎖を、入力端子に基づく端点ノードT、ストレーナに基づく一端子対ノードS、及びポンプに基づく一端子対ノードPを対応するエッジE1及びE2によって接続した直列鎖の第1抽象化モデルに変換する。制御部15の変換部155は、生成された直列鎖の第1抽象化モデルを第2抽象化モデルに変換する。
【0074】
制御部15の比較・判定部154は、ノードに含まれる識別情報及び属性情報の少なくとも一方に基づいて、一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で所定の要素情報が互いに同一であると決定する。例えば、比較・判定部154は、変更前の第1抽象化モデルにおける端点ノードTが変更後の第1抽象化モデルにおける端点ノードTと同一であると決定する。例えば、比較・判定部154は、変更前の第1抽象化モデルにおける一端子対ノードPが変更後の第1抽象化モデルにおける一端子対ノードPと同一であると決定する。
【0075】
制御部15の表示制御部156は、比較・判定部154により一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定された要素情報を、第2抽象化モデルにおいて、所定の間隔で一方向、例えば要素情報の配列方向に互いに離間する複数のグリッド線のうちの一のグリッド線上で互いに対向するようにそれぞれ配置する。例えば、表示制御部156は、変更前の第1抽象化モデルにおける端点ノードTと変更後の第1抽象化モデルにおける端点ノードTとを、第2抽象化モデルにおける同一のグリッド線上にそれぞれ配置する。例えば、表示制御部156は、変更前の第1抽象化モデルにおける一端子対ノードPと変更後の第1抽象化モデルにおける一端子対ノードPとを、第2抽象化モデルにおける同一のグリッド線上にそれぞれ配置する。
【0076】
制御部15の比較・判定部154は、一の第1抽象化モデル及び他の第1抽象化モデルのいずれかにおける対応する要素情報が欠落していると、一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定する。例えば、比較・判定部154は、変更前の第1抽象化モデルにおいて、変更後の第1抽象化モデルにおける一端子対ノードSに対応するノードが欠落していることにより、変更前の第1抽象化モデルと変更後の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定する。このとき、制御部15の表示制御部156は、一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとを、対向する要素情報が存在しない状態で表示させる。
【0077】
制御部15の表示制御部156は、比較・判定部154が一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。例えば、表示制御部156は、第2抽象化モデルにおいて、差異部分である変更後の一端子対ノードSを他の部分とは異なる表示色により強調表示させる強調表示情報を生成する。表示制御部156は、生成された表示情報に基づいて、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に、当該差異部分を含めた変更前後の第2抽象化モデルを比較表示させる。
【0078】
図6は、動作の第1例に基づくフローチャートである。図6を参照しながら、動作の第1例に基づく情報処理装置10の動作の一例について主に説明する。
【0079】
ステップS101では、制御部15の図面指定部151は、比較対象とする複数の図面を指定する。図面指定部151は、指定した図面において、比較対象とする範囲をさらに指定してもよい。
【0080】
ステップS102では、制御部15の要素抽出部153は、ステップS101において指定された図面から必要な要素、例えば各要素が直列に接続された部分を抽出する。
【0081】
ステップS103では、制御部15の変換部155は、ステップS102において抽出された要素群に基づいて第1抽象化モデルを生成する。
【0082】
ステップS102における要素抽出部153による処理及びステップS103における変換部155による処理は、上記の順番に限定されない。例えば、制御部15は、ステップS103の処理を先に実行してから、ステップS102の処理を実行してもよい。
【0083】
ステップS104では、制御部15の比較・判定部154は、比較対象となる複数の図面のそれぞれに対してステップS103において生成された第1抽象化モデル同士を比較して、第1抽象化モデル間に差異があるか否か等を判定する。より具体的には、比較・判定部154は、一の第1抽象化モデル及び他の第1抽象化モデルのいずれかにおける対応する要素情報が欠落しているか否かを判定する。制御部15は、第1抽象化モデル間に差異があると判定すると、ステップS105の処理を実行する。制御部15は、第1抽象化モデル間に差異がないと判定すると、処理を終了する。
【0084】
ステップS105では、制御部15の変換部155は、ステップS104において第1抽象化モデル間に差異があると判定されると、ステップS103において生成された第1抽象化モデルを第2抽象化モデルに変換する。同様に制御部15の表示制御部156は、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に、差異部分を含めた一の第2抽象化モデル及び他の第2抽象化モデルを比較表示させる。このとき、表示制御部156は、比較・判定部154により一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定された要素情報を、第2抽象化モデルにおける同一のグリッド線上にそれぞれ配置する。加えて、表示制御部156は、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。
【0085】
制御部15の表示制御部156は、ステップS105において生成された表示情報を必要に応じて反映させながら、変換された第2抽象化モデルを情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に表示させる。このように、表示制御部156は、比較対象とする第1抽象化モデル間に差異がある場合にのみ、第2抽象化モデルを表示させてユーザに確認を促す。これに限定されず、表示制御部156は、比較対象とする第1抽象化モデル間に差異がない場合であっても、第2抽象化モデルをそのまま表示させてユーザに両図面(またはその部分)が一致していることを提示してもよい。例えば、表示制御部156は、差異がない場合であっても、比較対象図面同士が一致していることを文字情報及び第2抽象化モデル等を用いた表示によって提示してもよい。
【0086】
動作の第1例では、制御部15の表示制御部156によって実行される表示制御について、様々な変形例が考えらえる。以下では、そのような変形例について主に説明する。
【0087】
上記動作の第1例では、端点ノードは、4つの角が丸みを帯びた枠の中に要素種別が付された状態で表示され、一端子対ノードは、四角の枠の中に要素種別が付された状態で表示されると説明したが、これに限定されない。ノードは、任意の形状の要素図形で表示されてもよい。例えば、方向性のあるノードは、三角形及び台形等を含むような形状で表示されてもよい。また、ノードは、図3A及び図3Bに示すような目視認識しやすい要素の図面シンボルによりそのまま表示されてもよい。
【0088】
上記動作の第1例では、ノードは、要素種別として1つの文字が付された状態で表示されると説明したが、これに限定されない。ノードは、任意の文字列、記号、及び要素の図面シンボルの少なくとも1つが任意の態様で付された状態で表示されてもよい。
【0089】
ノードは、横方向の直列鎖の場合、上下方向に対して中央揃えとしてもよい。ノードは、縦方向の直列鎖の場合、左右方向に対して中央揃えとしてもよい。このように簡潔なノードの配列として直列鎖を表示することで視認性が向上する。ノードは、互いに同一の幅で表示されてもよいし、互いに異なる幅で表示されてもよい。例えば、全てのノードの幅と共に全てのエッジの幅を互いに同一とすることで、ノードの配置が正確に行われるので、グリッド線が表示されなくてもよい。
【0090】
グリッド線の間隔は、等間隔であってもよいし、ノードの幅等に合わせて等間隔でなくてもよい。グリッド線の表示態様は、ノードに差異がある差異部分と他の部分との間で異なっていてもよい。例えば、グリッド線は、差異部分と他の部分との間で、色、線種、及び太さの少なくとも1つが異なるように表示されてもよい。
【0091】
上記動作の第1例では、エッジは線により表示されると説明したが、これに限定されない。エッジは、任意の図形により表示されてもよい。エッジは、方向を明確にするために、矢印により表示されてもよい。
【0092】
図5では、図面の入力端子も直列鎖に含まれているが、入力端子は、直列鎖に含まれずに、第2抽象化モデルにおいて単なる端点ノードとして表示されてもよい。
【0093】
制御部15の表示制御部156は、直列鎖に基づいて直列的に配置されるノードの群に対してライン名等を付与した状態でこのようなノードの群を表示及び管理してもよい。
【0094】
例えば、識別情報のみに基づいて互いに同一であると同定され、同一のグリッド線上に配置されたノードであっても、それらに含まれる属性情報が異なる場合がある。このような場合、制御部15の表示制御部156は、ノード間で表示色及び線種の少なくとも一方を変更したりすることで属性情報に差異があることを表現してもよい。
【0095】
制御部15の表示制御部156は、第2抽象化モデルの表示と併せて、表示結果をユーザが確認したか否かを示す確認済チェックマーク等を付加的に表示させてもよい。
【0096】
図7は、動作の第1例において制御部15の要素抽出部153により実行される直列鎖の抽出制御に関する変形例を示す模式図である。
【0097】
例えば、図3A及び図3Bの破線によって示すとおり、P&ID等の図面では、制御のための論理信号線が示される場合がある。これらの論理信号線は、電気配線である場合が多いが、接続方法は有線ではなく無線の場合もあり得る。プラントにおける配管設備等の比較確認を実施するという目的に限れば、制御部15の要素抽出部153は、直列的な接続要素を抽出するときに、これらの論理信号線をフィルタリングにより除外してもよい。
【0098】
制御部15の要素抽出部153が論理信号線をフィルタリングして直列鎖を抽出すると、図7に示すとおり、例えば、図3Bにおける入力部分について、変更後の要素として、入力端子と、ストレーナと、ポンプと、フローコントローラと、制御バルブと、が直列的に配置されている。制御部15の要素抽出部153は、このような入力端子、ストレーナ、ポンプ、フローコントローラ、及び制御バルブを含む直列鎖を図3Bから抽出する。制御部15の変換部155は、抽出されたこのような直列鎖を、入力端子に基づく端点ノードT、ストレーナに基づく一端子対ノードS、ポンプに基づく一端子対ノードP、フローコントローラに基づく一端子対ノードSF、及び制御バルブに基づく一端子対ノードVを
対応するエッジE1、E2、E3、及びE4によって接続した第1抽象化モデルに変換する。変換部155は、図面及びモデルの表記ルールに従い、変換時に必要な処理又は置換を行ってもよい。図7及び以降の図面においてFC(Flow Control)がSF(Flow Sensor)となっていたり、TCがSTとなっていたりするのはそのためである。情報処理装置10は、記憶部12等に図面及びモデルの表記ルールを保持して利用してよい。制御部15の変換部155は、第1抽象化モデルを第2抽象化モデルに変換する。制御部15の表示制御部156は、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に、変換された第2抽象化モデルを表示させる。
【0099】
上記動作の第1例では、制御部15の変換部155によって図面が処理用の第1抽象化モデルに変換されてから、表示用の第2抽象化モデルに変換されると説明したが、これに限定されない。変換部155は、図面を、第1抽象化モデルを経ずに第2抽象化モデルに直接変換してもよい。このとき、比較・判定部154は、上述した一の抽象化モデルと他の抽象化モデルとの間の差異の判定処理にあたり、第1抽象化モデルではなく第2抽象化モデルを用いてもよい。
【0100】
(動作の第2例)
以下では、制御部15の機能によって実現される情報処理システム1の動作の第2例について主に説明する。図8Aは、プラントを構成する要素を含む変更後の図面の一例を示す図3Bに対応する模式図である。図8Aは、図3Bの破線によって示される制御のための論理信号線がフィルタリングにより除外されている点で図3Bと相違する。図8Bは、図8Aにおける直列鎖をより見やすく配置した図8Aに対応する模式図である。図8Cは、図8Bに基づいて制御部15の変換部155により生成された第1抽象化モデルを示す模式図である。図8B及び図8Cは、制御部15による図8Aから図8Dへの変換処理の途中段階で生成される図面及び第1抽象化モデルをそれぞれ示しており、情報処理装置10の出力部14等に実際に表示されなくてもよい。図8Dは、図8Cをさらに簡略化した第2抽象化モデルを示す模式図である。
【0101】
動作の第2例では、制御部15の要素抽出部153は、動作の第1例のような直列鎖に加えて、図面に含まれる並列的に配置された要素の群も、比較対象となる複数の図面のそれぞれから抽出する。制御部15の要素抽出部153は、図面に含まれる並列的に配置された要素を、第1抽象化モデル及び第2抽象化モデルにおいて並列的に配置された要素情報に変換する。
【0102】
例えば、図8Bにおける入力部分には、変更後の要素として、入力端子と、ストレーナと、ポンプと、フローコントローラと、制御バルブと、を含む直列鎖が配置されている。このような直列鎖に対して充填塔が接続されており、当該充填塔に対してさらに複数の要素が互いに並列的に接続されている。制御部15の要素抽出部153は、このような直列鎖及び並列的に配置された要素の群を図8Bから抽出する。制御部15の変換部155は、抽出されたこのような直列鎖及び並列的に配置された要素の群に基づいて、図8Cに示すような第1抽象化モデルを生成する。
【0103】
図8Cでは、図8Bにおける入力部分の直列鎖に対応する、端点ノードTから一端子対ノードVまでの直列的に配置された複数のノードに続いて、分岐ノードCが配置されてい
る。分岐ノードCは、入力側のエッジも含めて、6つのエッジを有する。図8Cでは、入力部分の直列鎖に対応する、端点ノードTから一端子対ノードVまでの直列的に配置され
たノード群に加えて、直列的に配置された同様のノード群が他に4つ存在している。制御部15は、数千、数万の要素を含む大規模なプラントも、端点ノード、直列的に配置されたノード群、及び分岐ノードを含む第1抽象化モデルにより表現できる。
【0104】
制御部15の表示制御部156は、図8Dに示すとおり、図8Cにおいて直列的に配置された複数のノード群をそれぞれモジュール化(省略化)してラインL1、L2、L3、L4、及びL5として表示させる。この実体は直列鎖の抽象化モデルであるから、必要に応じ、ユーザがこの省略化部分をクリックすると、その詳細である直列鎖が表示されるようにしてもよい。ユーザは、全体を確認したい場合等、不要時には折りたたんで(直列鎖を表示せず省略化して)情報を抑制しつつ、必要時には呼び出して部分的な詳細を確認する。このように、制御部15の表示制御部156は、直列的に配置された複数のノード群をラインによって簡略化して、端点ノード、ライン、及び分岐ノードに基づいて第2抽象化モデルをさらに簡潔に表現する。
【0105】
あるいは、表示制御部156は、図8Dで表示されている第2抽象化モデルと併せて、「省略」「詳細」切替ボタンを表示させてもよい。表示制御部156は、省略モードの選択時には、図8Dのように直列鎖部分を省略した形式で第2抽象化モデルを表示させてもよい。これにより、ユーザによる第2抽象化モデルの全体像の把握等に有用である。表示制御部156は、詳細モードの選択時には、省略部分を展開して図8Cのように詳細な表示態様で第2抽象化モデルを表示させてもよい。その際は、表示制御部156は、ひと塊として省略可能な直列鎖の要素群を破線で囲んだり、他の直列鎖ではない要素とは色分けする等の方法により識別表示させてもよい。
【0106】
図9Aは、図3Aの図面が変換された第2抽象化モデルの一例を示す模式図である。図9Bは、図3Bの図面が変換された第2抽象化モデルの一例を示す模式図である。図9Cは、図9A及び図9Bの第2抽象化モデルを上下方向に配列させた模式図である。図9Dは、図9A及び図9Bの第2抽象化モデルを左右方向に配列させた模式図である。制御部15の表示制御部156は、直列鎖及び並列的に配置された要素の群を含む比較対象となる図面のそれぞれが変換された図9A及び図9Bに示すような第2抽象化モデルを、図9C及び図9Dに示すように並列させて比較表示を実行する。なお、図示している実線及び破線を含むガイドラインの有無は問わない。抽象化モデルにおいて、要素情報の配置及び間隔等が統一されているので、端部及び中央等を位置合わせすれば、各要素情報の配置関係が揃い、ユーザによる比較及び確認は容易である。
【0107】
制御部15の比較・判定部154は、ノードに含まれる識別情報及び属性情報の少なくとも一方に基づいて、一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で所定の要素情報が互いに同一であると決定する。例えば、比較・判定部154は、変更前の第1抽象化モデルにおける分岐ノードCが変更後の第1抽象化モデルにおける分岐ノードCと同一であると決定する。例えば、比較・判定部154は、変更前の第1抽象化モデルにおける分岐ノードSPが変更後の第1抽象化モデルにおける分岐ノードSPと同一であると決定する。
【0108】
制御部15の表示制御部156は、比較・判定部154により一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定された要素情報(複数の要素情報をまとめた直列鎖を含み得る)を、第2抽象化モデルにおいて、各第2抽象化モデルにおける配置関係が同一であり、かつ第2抽象化モデルの一方向における位置が互いに同一となるようにそれぞれ配置する。例えば、図9Cのような上下方向の配列の場合、要素情報の直列配置の方向の位置が揃うように配置された各要素情報が表示される。例えば、図9Dのような左右方向の配列の場合、要素情報の並列方向、すなわち高さ方向の位置が揃うように配置された各要素情報が表示される。例えば、図9C及び図9Dに示すとおり、表示制御部156は、変更前の第2抽象化モデルにおける分岐ノードCの配置関係と変更後の第2抽象化モデルにおける分岐ノードCの配置関係とが互いに同一になるようにそれぞれを配置する。例えば、表示制御部156は、変更前の第2抽象化モデルにおける分岐ノードSPの配置関係と変更後の第2抽象化モデルにおける分岐ノードSPの配置関係とが互いに同一になるようにそれぞれを配置する。
【0109】
例えば、表示制御部156は、複数の第2抽象化モデル間で、同じ要素を示すものとして互いに対応する要素情報及び接続情報の横方向又は縦方向の位置を一致させて表示させる。より具体的には、表示制御部156は、図9Cに示すとおり、図9A図9Bとを上下に並列して表示させる場合には、横並びのラインL1、分岐ノードC、ラインL3、分岐ノードP、及びラインL4等の要素情報の横方向の位置が両者で揃うように調整する。同様に、表示制御部156は、図9Dに示すとおり、図9A図9Bとを左右に並列して表示させる場合には、縦並びのラインL2、ラインL4、及びラインL5等の要素情報の縦方向の位置が両者で揃うように調整する。このように、表示制御部156が形状及び対応する縦方向又は横方向の位置を合わせて要素情報を表示させることで、ユーザに対する視認性が高まり、対比が容易となる。
【0110】
制御部15の比較・判定部154は、一の第1抽象化モデルにおける一の要素情報に関連付けられた接続情報が、他の第1抽象化モデルにおいて一の要素情報と同一であると決定された要素情報に関連付けられた接続情報と異なると、一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定する。例えば、比較・判定部154は、変更前の第1抽象化モデルにおいて分岐ノードCに関連付けられたエッジの数が、変更後の第1抽象化モデルにおいて分岐ノードCに関連付けられたエッジの数と異なるので、変更前の第1抽象化モデルと変更後の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定する。このとき、制御部15の表示制御部156は、一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとを、接続情報が異なる状態で表示させる。
【0111】
制御部15の表示制御部156は、一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。例えば、表示制御部156は、第2抽象化モデルにおいて、変更後に除去された差異部分である変更前の端点ノードSTを他の部分とは異なる表示色により強調表示させる強調表示情報を生成する。例えば、表示制御部156は、動作の第1例にも基づき、第2抽象化モデルにおいて、変更後にストレーナが追加されている差異部分である変更前後のラインL1を他の部分とは異なる表示色により強調表示させる強調表示情報を生成する。表示制御部156は、生成された表示情報に基づいて、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に、当該差異部分を含めた変更前後の第2抽象化モデルを比較表示させる。
【0112】
図10は、動作の第2例に基づくフローチャートである。図10を参照しながら、動作の第2例に基づく情報処理装置10の動作の一例について主に説明する。
【0113】
ステップS201では、制御部15の図面指定部151は、比較対象とする複数の図面を指定する。図面指定部151は、指定した図面において、比較対象とする範囲をさらに指定してもよい。
【0114】
ステップS202では、制御部15の要素抽出部153は、ステップS201において指定された図面から直列鎖及び並列的に配置された要素の群を抽出する。
【0115】
ステップS203では、制御部15の変換部155は、ステップS202において抽出された直列鎖及び並列的に配置された要素の群に基づいて第1抽象化モデルを生成する。
【0116】
ステップS202における要素抽出部153による処理及びステップS203における変換部155による処理は、上記の順番に限定されない。例えば、制御部15は、ステップS203の処理を先に実行してから、ステップS202の処理を実行してもよい。
【0117】
ステップS204では、制御部15の比較・判定部154は、比較対象となる複数の図面のそれぞれに対してステップS203において生成された第1抽象化モデル同士を比較して、第1抽象化モデル間に差異があるか否か等を判定する。より具体的には、比較・判定部154は、一の第1抽象化モデルにおける一の要素情報に関連付けられた接続情報が、他の第1抽象化モデルにおいて一の要素情報と同一であると決定された要素情報に関連付けられた接続情報と異なるか否かを判定する。制御部15は、第1抽象化モデル間に差異があると判定すると、ステップS205の処理を実行する。制御部15は、第1抽象化モデル間に差異がないと判定すると、処理を終了する。
【0118】
ステップS205では、制御部15の変換部155は、ステップS204において第1抽象化モデル間に差異があると判定されると、ステップS203において生成された第1抽象化モデルを第2抽象化モデルに変換する。同様に制御部15の表示制御部156は、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に、一の第2抽象化モデル及び他の第2抽象化モデルを比較表示させる。このとき、表示制御部156は、直列的に配置された複数のノード群をモジュール化(省略化)することによって情報量を抑制し、端点ノード、ライン、及び分岐ノードに基づいて第2抽象化モデルを簡潔に表現する。加えて、表示制御部156は、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。
【0119】
制御部15の表示制御部156は、ステップS205において生成された表示情報を必要に応じて反映させながら、変換された第2抽象化モデルを情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に表示させる。このように、表示制御部156は、比較対象とする第1抽象化モデル間に差異がある場合にのみ、第2抽象化モデルを表示させてユーザに確認を促す。これに限定されず、表示制御部156は、比較対象とする第1抽象化モデル間に差異がない場合であっても、第2抽象化モデルをそのまま表示させてユーザに両図面(またはその部分)が一致していることを提示してもよい。例えば、表示制御部156は、差異がない場合であっても、比較対象図面同士が一致していることを文字情報及び第2抽象化モデル等を用いた表示によって提示してもよい。
【0120】
動作の第1例で説明した上述の様々な変形例については、動作の第2例においても同様に当てはまる。
【0121】
(動作の第3例)
以下では、制御部15の機能によって実現される情報処理システム1の動作の第3例について主に説明する。例えば、形式が互いに異なる図面を比較する場合には、それぞれの図面に示す対象となるプラントの要素の種類及び情報レベルが大幅に異なる。したがって、これらの図面同士を機械的に比較することは容易ではない。そこで、動作の第3例では、制御部15は、比較対象とする第1図面及び第2図面の情報レベルを互いに合わせる。
【0122】
例えば、記憶部12は、以下の表1に表されるような、図面の形式ごとに定められる図面ルールの情報を記憶する。制御部15は、記憶部12に格納されている図面ルールの情報を必要に応じて参照する。このような図面ルールは、プラントに関する技術分野において一般的に用いられている共通のルールを含んでもよいし、ユーザによって任意に定められた独自のルールを含んでもよい。
【表1】
【0123】
図面の形式が異なると、図面に示す必要があるプラントの要素の種類が異なる。情報レベルに鑑みると、例えばPFD、P&ID、及び3D配管図の順に情報レベルが高くなる。例えば、PFDの情報レベルが最も低く、P&IDにおいて示される要素であっても、PFDの図面にはそもそも示されていない(PFDには必要とされない)要素も存在する。
【0124】
例えば、P&IDの図面においてマニュアルバルブが追加されたとする。これは、そもそもPFDには記載されない要素である。したがって、PFDの図面とP&IDの図面とを比較するときに、P&IDの図面のマニュアルバルブも含めて比較すると、制御部15は、当該マニュアルバルブを誤って差異部分、すなわちPFDに追加すべきものとして検出してしまう。このように、そもそもPFDには不要である要素を制御部15が逐一検出してユーザに提示することは無駄である。例えば、ユーザに余計な判断を強いることとなり、混乱を招く可能性がある。そこで、制御部15は、マニュアルバルブ等、そもそもPFDが持ち得ない情報を事前に削除する等、比較対象となる第1図面及び第2図面間で必要に応じて情報レベル合わせを行った上で、第1図面及び第2図面の比較を実行する。
【0125】
例えば、制御部15の図面形式判定部152は、プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なるか否かを判定する。第1図面及び第2図面の形式が互いに異なると判定されると、制御部15の要素抽出部153は、例えば、第1図面に含まれる要素のうち、比較に際して不要となる要素がある場合にはこれを除外する。そして、制御部15の変換部155は、第1図面の形式を第2図面の形式に合わせた中間モデルを第1図面に対して生成する。すなわち、要素抽出部153は、図面指定部151により指定された比較対象とする第1図面に基づいて、図面の形式を第2図面の形式に合わせるために必要な要素及び削除する要素を抽出する。そして、変換部155は、必要な要素のみに基づいて第1抽象化モデルとしての中間モデルを生成する。
【0126】
このとき、変換部155は、第1形式に基づいて定められる第1図面に示すべき要素が、第2形式に基づいて定められる第2図面においては不要な要素を含むとき、第2図面においては不要な要素を第1図面から削除することで、両者の構成要素レベルを合わせ、統一した条件での比較を可能とする第1図面に対しての中間モデル(レベルが統一された第1抽象化モデル)を生成する。
【0127】
より具体的には、変換部155は、第1図面及び第2図面のそれぞれを、要素情報と接続情報とによって表現した第1抽象化モデルに変換し、第1図面に基づく一の第1抽象化モデルを情報レベル合わせが施された中間モデルとして生成する。例えば、変換部155は、第1図面を第1抽象化モデルへ変換する際に、不要な要素を除外した形で変換を行い、条件を統一した第1抽象化モデル(中間モデル)を生成する。何も処理を行わずに第1図面の第1抽象化モデルと第2図面の第1抽象化モデルとを比較した場合、前者は第2図面にとって記載不要な要素を含んでいるため適切な比較が困難である。したがって、要素抽出部153が、第2図面にとって記載不要な要素を第1図面から除外して、変換部155が、条件を統一した第1抽象化モデルを第1図面に対して生成し、構成要素のレベルを合わせる。
【0128】
図11Aは、第1形式に基づく第1図面の一例を示す模式図である。図11Bは、第2形式に基づく第2図面の一例を示す模式図である。図11Cは、制御部15によって図11Aの第1図面に対して生成された中間モデルの一例を示す模式図である。
【0129】
例えば、第1形式がP&IDである場合、図11Aに示すとおり、第1図面においてマニュアルバルブがプラントを構成する要素として示されている。加えて、第1図面では、入力部分にストレーナもプラントを構成する要素として追加されている。
【0130】
例えば、第2形式がPFDである場合、図11Bに示すとおり、マニュアルバルブは、例えばプラントを構成する要素として実際にプラントに組み込まれていたとしても、第2図面において示されない。加えて、ストレーナがプラントを構成する要素として入力部分に組み込まれておらず、第2図面ではストレーナが示されていない。
【0131】
このとき、制御部15の図面形式判定部152が、第1図面及び第2図面の形式が互いに異なると判定すると、制御部15の要素抽出部153及び変換部155は、P&IDをPFDに合わせた第1図面に基づく要素を抽出して中間モデルを生成する。より具体的には、制御部15は、P&IDとPFDとの間で共通しないマニュアルバルブを第1図面から削除して、共通する要素のみを第1図面から抽出することで図11Cに示すような第1抽象化モデルとしての中間モデルを生成する。
【0132】
例えば、要素抽出部153及び変換部155は、入力端子に基づく端点ノードT、ストレーナに基づく一端子対ノードS、ポンプに基づく一端子対ノードP、及びフローコントローラに基づく一端子対ノードSFを対応するエッジE1、E2、及びE3によって接続した第1抽象化モデルとしての中間モデルに第1図面を変換する。
【0133】
制御部15の比較・判定部154は、比較対象となる第1図面に対して生成された中間モデルに基づいて、第1図面と第2図面との間に差異があるか否かを判定する。このように、制御部15の比較・判定部154は、第1図面及び第2図面の間で要素に関する条件が合わせられた状態で、第1図面と第2図面との間の差異を比較する。
【0134】
例えば、比較・判定部154は、第1図面に対して生成された図11Cに示すような中間モデルと図11Bに示すような第2図面に基づく他の第1抽象化モデルとを比較する。このとき、比較・判定部154は、第1図面に対して生成された中間モデルの入力部分にはストレーナが追加されている一方で、第2図面に基づく他の第1抽象化モデルの入力部分にはストレーナが追加されていないことから、第1図面と第2図面との間に差異があると判定する。このように、情報処理装置10は、マニュアルバルブを除外して比較しているので、本来検出すべき差分であるストレーナだけを検出できる。
【0135】
図12は、動作の第3例に基づくフローチャートである。図12を参照しながら、動作の第3例に基づく情報処理装置10の動作の一例について主に説明する。
【0136】
ステップS301では、制御部15の図面指定部151は、比較対象とする第1図面及び第2図面を指定する。図面指定部151は、指定した図面において、比較対象とする範囲をさらに指定してもよい。
【0137】
ステップS302では、制御部15の図面形式判定部152は、プラントを構成する要素を含む第1図面及び第2図面の形式が互いに異なるか否かを判定する。制御部15は、第1図面及び第2図面の形式が互いに異なると判定すると、ステップS303の処理を実行する。制御部15は、第1図面及び第2図面の形式が互いに同一であると判定すると、ステップS304の処理を実行する。
【0138】
ステップS303では、制御部15の要素抽出部153は、ステップS302において第1図面及び第2図面の形式が互いに異なると判定されると、例えば第1図面の形式を第2図面の形式に合わせた中間モデルを第1図面に対して生成するために、不要な要素は除外し、必要な要素を第1図面から抽出する。
【0139】
ステップS304では、制御部15は、動作の第1例又は動作の第2例において説明した上記の処理内容を実行する。より具体的には、制御部15は、図6のステップS102乃至ステップS105又は図10のステップS202乃至ステップS205の処理を実行する。
【0140】
例えば、ステップS304では、制御部15の比較・判定部154は、ステップS303での処理に基づいてステップS304において生成された第1図面に基づく第1抽象化モデルとしての中間モデルと第2図面に基づく他の第1抽象化モデルとの間に差異があるか否かを判定する。これにより、比較・判定部154は、第1図面と第2図面との間に差異があるか否かを判定する。制御部15は、一の第1抽象化モデル(中間モデル)と他の第1抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。ステップS304における処理内容については、上記の動作の第1例又は動作の第2例における対応する説明が当てはまる。
【0141】
上記動作の第3例では、制御部15の変換部155によって図面が処理用の第1抽象化モデルとしての中間モデルに変換されてから、表示用の第2抽象化モデルに変換されると説明したが、これに限定されない。変換部155は、図面を、第1抽象化モデルを経ずに第2抽象化モデルとしての中間モデルに直接変換してもよい。このとき、比較・判定部154は、上述した第1図面と第2図面との間の差異の判定処理にあたり、第1抽象化モデルではなく第2抽象化モデルを用いてもよい。
【0142】
上記動作の第3例では、制御部15の要素抽出部153及び変換部155は、図面に基づく抽象化モデルを中間モデルとして生成すると説明したが、これに限定されない。制御部15は、図面から不要な要素を削除して必要な要素のみを抽出した図面を中間モデルとして生成してもよい。例えば、要素抽出部153及び変換部155は、P&IDとPFDとの間で共通しないマニュアルバルブを図11Aに示す第1図面から削除した図面を中間モデルとして生成してもよい。このとき、比較・判定部154は、第1図面を変換した中間モデルとしての図面と第2図面とを用いて、第1図面と第2図面との間の差異を判定してもよい。
【0143】
(効果)
以上のような一実施形態に係る情報処理装置10によれば、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する。例えば、制御部15は、一の図面に基づく一の抽象化モデルと他の図面に基づく他の抽象化モデルとの間に差異があると判定すると、差異部分を他の部分と異なる態様で表示させる表示情報を生成する。これにより、ユーザは、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方に表示情報として表示された抽象化モデルにおいて、複数図面内容の目視による比較及び差異部分等の確認を迅速かつ正確に行える。
【0144】
制御部15が、図面に含まれる直列的に配置された要素を、直列鎖の第1抽象化モデル及び第2抽象化モデルに変換することで、比較対象とする複数の図面間の比較及び比較結果の確認が容易となる。第2抽象化モデルの表示は非常に簡潔であるため、ユーザは、誤記、漏れ、及び変更点等を確認しやすい。結果として、作業が効率化し、作業時間が短縮され、精度も向上する。したがって、ユーザによる確認漏れ及び確認ミスが抑制される。これにより、同一設備を対象とする大量の図面を取り扱うユーザの作業が短時間で正確なものとなり、大規模なプラントの設計、建設、及び保守においても、作業ミス及びプラントにおける致命的な欠陥の発生が抑制される。
【0145】
制御部15が第2抽象化モデルにおいて対応する要素の位置が互いに位置合わせされ揃うように要素情報をそれぞれ配置することで、要素情報の配列がより整頓される。これにより、ユーザによる第2抽象化モデルの視認性が向上する。
【0146】
制御部15が一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した要素情報を同一のグリッド線上にそれぞれ配置することで、ユーザは、互いに同一である要素情報を一見して把握することが可能である。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0147】
情報処理装置10が、一の第1抽象化モデル及び他の第1抽象化モデルのいずれかにおける対応する要素情報が欠落していると、一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとを、対向する前記要素情報が存在しない状態で表示させることで、ユーザは、一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとの間の差異部分を容易に認識できる。
【0148】
制御部15が、図面に含まれる並列的に配置された要素を、第1抽象化モデル及び第2抽象化モデルにおいて並列的に配置された要素情報に変換することで、比較対象とする複数の図面間で並列的に配置された要素の群同士の比較及び比較結果の確認が容易となる。このような要素の群に基づく第2抽象化モデルの表示は簡潔であるため、ユーザは、変更点を確認しやすい。結果として、作業が効率化し、ユーザによる確認漏れ及び確認ミスが抑制される。これにより、同一設備を対象とする大量の図面を取り扱うユーザの作業が短時間で正確なものとなり、大規模なプラントの設計、建設、及び保守においても、作業ミス及びプラントにおける致命的な欠陥の発生が抑制される。
【0149】
制御部15が直列的に配置されたノード群をモジュール化してラインとして表示させることで、並列的に配置された要素の群を含む第2抽象化モデルの表示がさらに簡潔になる。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0150】
制御部15が一の第1抽象化モデルと他の第1抽象化モデルとの間で互いに同一であると決定した要素情報を各第2抽象化モデルにおける配置関係が同一であり、かつ第2抽象化モデルの一方向における位置が互いに同一となるようにそれぞれ配置することで、ユーザは、互いに同一である要素情報を一見して把握することが可能である。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0151】
制御部15が一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとを接続情報が異なる状態で表示させることで、ユーザは、一の第2抽象化モデルと他の第2抽象化モデルとの間で接続情報が異なっていることを容易に認識可能である。例えば、ユーザは、第2抽象化モデルの比較を行うにあたり、各分岐ノードの分岐数変化、並びにライン及び端点ノードの数の変化等に注目すればよい。したがって、ユーザによる見落とし等が低減するとともに、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0152】
識別情報に基づいて要素情報が互いに同一であると制御部15が決定することで、情報処理装置10は、互いに同一である要素情報を容易に特定できる。識別情報に加えて、又は代えて属性情報に基づいて要素情報が互いに同一であると制御部15が決定することで、情報処理装置10は、識別情報のみでは要素情報が互いに同一であるか否かを決定できないような場合であっても、互いに同一である要素情報をより精度良く特定できる。
【0153】
表示情報が、表示色、表示形状、表示線種、付加的な表示記号、及び付加的な表示文字の少なくとも1つに基づいて差異部分を強調表示させるための強調表示情報を含むことで、ユーザは、強調表示情報と共に表示された第2抽象化モデルにおいて、複数図面内容の目視による比較及び差異部分等の確認を迅速かつ正確に行える。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0154】
以上のような一実施形態に係る情報処理装置10によれば、プラントを対象とする図面を用いたユーザによる作業の効率が向上する。例えば、制御部15は、第1図面の形式及び第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成し、生成された中間モデルに基づいて第1図面と第2図面との間に差異があるか否かを判定する。これにより、情報処理装置10は、第1図面及び第2図面に共通する要素だけで構成される中間モデルを用いて、それぞれの情報レベルを合わせた状態で、第1図面及び第2図面の比較が可能になる。これにより、情報処理装置10による比較の精度が向上する。加えて、情報処理装置10の出力部14及び端末装置20の出力部24の少なくとも一方が、情報レベルを合わせた中間モデルを第2抽象化モデルとして表示することで、ユーザは、図面の形式が互いに異なる第1図面及び第2図面に対しても、複数図面内容の目視による比較及び差異部分等の確認を正確に行える。したがって、ユーザによる作業の効率及び正確性が向上する。
【0155】
制御部15は、第1形式と第2形式との間で共通する要素のみを第1図面から抽出することで第1図面に対して中間モデルを生成する。これにより、情報処理装置10は、第1形式に基づく第1図面の情報レベルと第2形式に基づく第2図面の情報レベルとを合わせて、両者を比較できる。例えば、情報処理装置10は、比較対象のPFDにおいては不要な要素を含んでいるP&IDの図面を、PFDの図面に合わせて、つまり両図面のレベルを合わせた上で両者を比較できる。
【0156】
(変形例)
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0157】
例えば、本開示は、上述した情報処理システム1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0158】
上記実施形態では、プラントの設備に変更を加えたときの、変更前後の図面が比較対象であると主に説明したが、これに限定されない。比較対象となる図面は、プラントの同一設備に対して同一の時期に異なるユーザによって作成された任意の図面を含んでもよい。
【0159】
上記実施形態では、制御部15の変換部155は、第1図面に対してのみ中間モデルを生成すると説明したが、これに限定されない。変換部155は、第1図面の形式及び第2図面の形式を互いに合わせた中間モデルを少なくとも一方に対して生成してもよい。例えば、制御部15は、第1形式及び第2形式に共通する要素のみを第1図面及び第2図面のそれぞれから抽出することで、第1図面及び第2図面のそれぞれに対して第1抽象化モデルとしての中間モデルを生成してもよい。比較・判定部154は、第1図面に対して生成された第1中間モデルと第2図面に対して生成された第2中間モデルとを比較してもよい。
【0160】
例えば、上述した実施形態において情報処理装置10により実行される少なくとも一部の処理動作が端末装置20において実行されてもよい。端末装置20により実行される少なくとも一部の処理動作が情報処理装置10において実行されてもよい。
【符号の説明】
【0161】
1 情報処理システム
10 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 入力部
14 出力部
15 制御部
151 図面指定部
152 図面形式判定部
153 要素抽出部
154 判定部
155 変換部
156 表示制御部
20 端末装置
21 通信部
22 記憶部
23 入力部
24 出力部
25 制御部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B
図11C
図12