(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】植付作業機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A01C11/02 303Z
A01C11/02 303C
A01C11/02 301C
(21)【出願番号】P 2020129978
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-193745(JP,A)
【文献】特開昭59-132806(JP,A)
【文献】特開平06-007006(JP,A)
【文献】特開2009-089650(JP,A)
【文献】特開2002-300802(JP,A)
【文献】特開2014-135943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00 - 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給部(31)の供給カップ(33)に供給した種球を植付具(28)に受け渡し、該植付具(28)を降下して畝(U)に差し込んで種球を土中に植え付ける植付作業機(10)において、
植付具(28)が供給カップ(33)から種球を受け取ったタイミングで植付具(28)内の種球を検出する種球センサ(1)を設け、該種球センサ(1)が種球を検出しない、または種球の投入姿勢に異常を検出した場合に、警報または走行停止で作業者に知らせる植付不良報知手段を設け、
供給部(31)の側部に供給カップ(33)に向けて下り傾斜させた種球供給台(3)を設け、
供給部(31)の
周回方向を反転可能にするとともに種
球供給台(3)の取付けを供給部(31)の左右に変更可能にしたことを特徴とする植付作業機。
【請求項2】
植付具(28)の内腔を先端に向かって尖らせて、標準径の種球通過内径位置に種球センサ(1)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の植付作業機。
【請求項3】
植付具(28)の上昇動作時に種球センサ(1)が種球を検出すると植付不良報知手段を作動することを特徴とする請求項1に記載の植付作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッキョやニンニク等の種球や里芋を畝に植え付ける、種球等の植付作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗の移植機として、特許文献1に記載の如く、多数の苗を受けて周回する苗供給装置と移植カップが昇降して苗を畝に植え付ける苗植付装置で構成した苗移植機があるが、この苗移植機は移植苗に代えてラッキョやニンニク等の種球や里芋の植付にも使用されるので、種球等の植付作業機として説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
種球等の植付作業機を使用してラッキョやニンニク等の種球や里芋の植付作業を行うと、植付跡が畝に残るが、何らかの原因で種球や里芋が土中に残らず植付に失敗しても気が付くことなく、発芽期間後に芽を出さない植付跡地があって、欠株のある畝が生じて収穫を減らすことになる。
【0005】
本発明は、植付作業中に種球の植付ミスを作業者に知らせて、追加植付を直ちに行えて欠株畝が生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
第1の本発明は、
供給部(31)の供給カップ(33)に供給した種球を植付具(28)に受け渡し、該植付具(28)を降下して畝(U)に差し込んで種球を土中に植え付ける植付作業機(10)において、
植付具(28)が供給カップ(33)から種球を受け取ったタイミングで植付具(28)内の種球を検出する種球センサ(1)を設け、該種球センサ(1)が種球を検出しない、または種球の投入姿勢に異常を検出した場合に、警報または走行停止で作業者に知らせる植付不良報知手段を設け、
供給部(31)の側部に供給カップ(33)に向けて下り傾斜させた種球供給台(3)を設け、
供給部(31)の周回方向を反転可能にすると共に種球供給台(3)の取付を供給部(31)の左右に変更可能にしたことを特徴とする植付作業機である。
第2の本発明は、
植付具(28)の内腔を先端に向かって尖らせて、標準径の種球通過内径位置に種球センサ(1)を設けたことを特徴とする第1の本発明の植付作業機である。
第3の本発明は、
植付具(28)の上昇動作時に種球センサ(1)が種球を検出すると植付不良報知手段を作動することを特徴とする第1の本発明の植付作業機である。
本発明に関連する第1の発明は、供給部(31)の供給カップ(33)に供給した種球を植付具(28)に受け渡し、該植付具(28)を降下して畝(U)に差し込んで種球を土中に植え付ける植付作業機において、植付具(28)が供給カップ(33)から種球を受け取ったタイミングで植付具(28)内の種球を検出する種球センサ(1)を設け、該種球センサ(1)が種球を検出しない、または種球の投入姿勢に異常を検出した場合に、警報または走行停止で作業者に知らせる植付不良報知手段を設けたことを特徴とする植付作業機とする。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、植付具(28)の内腔を先端に向かって尖らせて、標準径の種球通過内径位置に種球センサ(1)を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の植付作業機とする。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、植付具(28)の上昇動作時に種球センサ(1)が種球を検出すると植付不良報知手段を作動することを特徴とする本発明に関連する第1の発明の植付作業機とする。
【0010】
本発明に関連する第4の発明は、供給部(31)の側部に供給カップ(33)に向けて下り傾斜させた種球供給台(3)を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の植付作業機とする。
【0011】
本発明に関連する第5の発明は、種球供給台(3)に標準種球ゲージ(4)を設けたことを特徴とする本発明に関連する第4の発明の植付作業機とする。
【0012】
本発明に関連する第6の発明は、供給部(31)の周回方向を反転可能にすると共に種球供給台(3)の取付を供給部(31)の左右に変更可能にしたことを特徴とする本発明に関連する第4の発明の植付作業機とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、供給カップ(33)に供給された種球は植付具(28)に供給されてこの植付具(28)の降下動作で畝の土中に差し込まれて植え付けられるが、植付具(28)が種球を受け取ったタイミングで種球センサ(1)が種球を検出しないときは、種球の植付具28への供給が失敗しているので、植付不良報知手段で作業者に報知することで、その場で植付跡地に種球の植付を行って修正することができ、植付終了後の芽出し時期まで欠株に気が付かないことが無い。また、作業者は種球供給台(3)上の種球を供給カップ(33)に滑り落とすことで供給が行えるので、種球の供給作業が容易に行える。さらに、種球供給台(3)を供給部(31)の左側にすれば作業者が左手で種球の供給作業を行え、種球供給台(3)を供給部(31)の右側にすれば作業者が右手で種球の供給作業を行え、作業者の利き手に合わせて作業がしやすい供給作業を選択出来る。
本発明に関連する第1の発明で、供給カップ(33)に供給された種球は植付具(28)に供給されてこの植付具(28)の降下動作で畝の土中に差し込まれて植え付けられるが、植付具(28)が種球を受け取ったタイミングで種球センサ(1)が種球を検出しないときは、種球の植付具28への供給が失敗しているので、植付不良報知手段で作業者に報知することで、その場で植付跡地に種球の植付を行って修正することができ、植付終了後の芽出し時期まで欠株に気が付かないことが無い。
【0014】
また、植付具(28)に種球が入り込んでいても、入り込む位置や入り込んだ際の姿勢、あるいは複数の種球が同時に誤って投入されていると、種球が植付具(28)から出てこずに植付が行われないことや、複数の種球が同じ場所に植え付けられて余分に消費されてしまうが、こうした植付不良を発生させ得る種球の投入を種球センサ(1)が検出すると植付不良報知手段が作動して作業者に報知することで、植付不良が発生したおそれのある植付穴をその場で調べ、植付不良が発生していれば植え直し作業を即座に行えるので、種球の植付が適切に行われ、収穫物の収量や品質の維持が図られる。
【0015】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、供給カップ(33)から植付具(28)に供給される種球は、植付具(28)の大径の入口から小径となる先端側に移動するが、標準径の種球通過内径位置で種球センサ(1)が種球を検出しないと、種球が植付具(28)に供給されていない、あるいは植付具(28)の入口側に詰まって落下しない状態となっている可能性があるので、これを植付不良報知手段で作業者に報知することにより、植付不良の発生をその場で確認でき、速やかに問題の有無の確認、及び対応が可能となる。
【0016】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、種球を土中に放出して植付具(28)が上昇する際に種球センサ(1)が種球を検出すると、種球が植付具(28)から土中に移動しておらず、種球を連れ出している可能性があるので、これを植付不良報知手段で作業者に報知することにより、作業者はその場で種球が植え付けられていない位置が発生し得ること、及び複数の種球が同時に植え付けられる位置が発生し得ることを認識でき、速やかに問題の有無の確認、及び問題への対応が可能になる。
【0017】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、作業者は種球供給台(3)上の種球を供給カップ(33)に滑り落とすことで供給が行えるので、種球の供給作業が容易に行える。
【0018】
本発明に関連する第5の発明で、本発明に関連する第4の発明の効果に加え、作業者が種球供給台(3)上の種球を供給カップ(33)に導く際に種球のサイズを標準種球ゲージ(4)で比較して大きすぎるものや小さすぎるものを取り除くことで、植付不良の発生を抑制できる。
【0019】
本発明に関連する第6の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、種球供給台(3)を供給部(31)の左側にすれば作業者が左手で種球の供給作業を行え、種球供給台(3)を供給部(31)の右側にすれば作業者が右手で種球の供給作業を行え、作業者の利き手に合わせて作業がしやすい供給作業を選択出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明における実施の形態の種球等の植付作業機の右側面図である。
【
図2】本発明における実施の形態の種球等の植付作業機の平面図である。
【
図3】本発明における実施の形態の植付作業機の供給部の底面図である。
【
図4】本発明における実施の形態の植付作業機の植付具の側断面図である。
【
図5】(a)種球の投入を検出している状態を示す植付具の側断面図である。(b)複数の種球の投入を検出している状態を示す植付具の側断面図である。(c)植付具の上部側でのみ種球を検出している状態を示す植付具の側断面図である。(d)種球が投入されず検出できない状態を示す植付具の側断面図である。
【
図6】制御に関する各装置のつながりを示すブロック図である。
【
図7】種球の投入の異常の有無による植付不良検出手段の作動制御を示すフローチャートである。
【
図8】種球の投入の異常の有無による植付不良検出手段の別構成例の作動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
【0022】
図1は本発明の植付作業機の一例としてラッキョ種球を移植する植付作業機10を示す側面図であり、
図2は植付作業機10の平面図である。
【0023】
図1に示すように、この植付作業機10は、前部にエンジン11および主伝動ケース12と、走行車輪としての左右一対の前輪13および後輪14と、後部に植付装置19、供給部31、鎮圧輪15および操縦ハンドル16とを備えて構成されている。なお、エンジン11が搭載されている側が植付作業機の前方で、操縦ハンドル16が装備されている側が後方で、操縦ハンドル16から前方を見て左側を機体左方で、右側を機体右方と謂う。
【0024】
この植付作業機10は、走行機体が圃場内の畝Uを跨ぐように、前輪13および後輪14が畝間を走行し、畝Uの上面の左右幅方向における中央位置に植付装置19により苗を植付けていくようになっている。
【0025】
また、
図2に示すように、主伝動ケース12の左右端には該主伝動ケース12に対して回動可能な走行エクステンションケース40を左右それぞれ設け、左右の走行エクステンションケース40のそれぞれの端部に走行チェーンケース20を取り付けている。したがって、エンジン11から入力される主伝動ケース12内の動力を走行チェーンケース20内に伝動する構成となっている。
【0026】
走行チェーンケース20の回動先端部の左右外側には、走行車輪である左右一対の後輪14をそれぞれ取り付け、この左右一対の後輪14の駆動により機体が走行するようになっている。したがって、主伝動ケース12は、走行車輪としての後輪14に伝動する伝動装置となっている。
【0027】
一方、エンジン載置台の下部には左右方向に延びる前輪支持フレーム41を前後方向のローリング軸18(
図1参照)回りに回動可能に設け、この前輪支持フレーム41の左右両端部に前輪13を取り付けた構成としている。
【0028】
また、
図2に示すように、主伝動ケース12の後端には左右方向に延びる後フレーム21を固着して設け、後フレーム21の後端面の右端部には、機体の右寄りの位置で前後方向に延びる主フレーム22を設けている。主フレーム22の後端部には操縦ハンドル16を設け、この操縦ハンドル16が主フレーム22および後フレーム21を介して主伝動ケース12に支持された構成となっている。後フレーム21の左右一方寄り(右寄り)の位置の上面には、植付伝動ケース26の前下端部を載せて該植付伝動ケース26を固着して設けている。
【0029】
また、主伝動ケース12の後部で左右方向の中央には、油圧昇降シリンダ23を設けている。この油圧昇降シリンダ23は、主伝動ケース12に取り付けられた油圧切替バルブ部24(
図1参照)に固着して設けられ、主伝動ケース12に取り付けられた油圧ポンプからの油路を油圧切替バルブ部24で切り替えることにより作動する。
【0030】
また、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッドの後端には左右に延びる横杆43を設け、この横杆43の左右端部にそれぞれロッドとなる左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45を連結し、左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45の他端をそれぞれの走行エクステンションケース40に取り付けられた上側アーム40aに枢着して、横杆43と走行エクステンションケース40とが連結された構成となっている。
【0031】
従って、油圧昇降シリンダ23の伸縮により横杆43、左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45を介して主伝動ケース12の左右の出力軸回りに走行チェーンケース20を回動し、該走行チェーンケース20の回動により後輪14が上下して走行機体が昇降する構成となっている。なお、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッド、横杆43、左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45は、シリンダロッドの進出位置によっては、機体側面視で後述する昇降リンク機構29の下方に位置する構成となっており、スペースを有効利用して機体のコンパクト化を図っている。
【0032】
また、機体中央部の下方位置で植付装置19の植付具28がラッキョ等の種球を畝Uに植え付ける位置の直前の位置には、周知の畝U上面に接当して畝U上面の高さを検出する左右の接地位置検出体36、37が設けられており、該接地位置検出体36、37の畝U検出により油圧切替バルブ部24に備えられた昇降制御用切替バルブを介して油圧昇降シリンダ23を作動させて左右の後輪14を昇降制御して、走行機体を畝Uに対する所定の高さに制御して植付具28が苗を畝Uに植え付ける深さが一定になるようにしている。
【0033】
また、左側の後輪昇降ロッド44が伸縮するように該左側の後輪昇降ロッド44の中途部に油圧ポンプからの油圧により作動する左右傾斜用油圧シリンダ25を設けており、該左右傾斜用油圧シリンダ25の伸縮により右側の後輪14の上下位置に対して左側の後輪14を上下させて、走行機体を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。
【0034】
なお、主伝動ケース12の右側には振り子式の左右傾斜センサ42が設けられて、この左右傾斜センサ42の検出により油圧切替バルブ部24に備えられた左右傾斜用切替バルブを介して左右傾斜用油圧シリンダ25を作動させ、走行機体を水平姿勢に制御する構成となっている。
【0035】
本実施の形態1の植付装置19は、ラッキョ種球を1個ずつ圃場の畝に植付けるべく、主伝動ケース12内からの動力が主伝動ケース12の後側に設けた植付伝動ケース26と、その植付伝動ケース26に取り付けられた植付装置駆動ケース27を介して伝達され作動するようになっている。
【0036】
植付装置19は、内腔が先端に向かって小径に尖らせられている、先端が尖ったカップ状の植付具28と該植付具28を昇降させるべく作動する昇降リンク機構29とで構成される。植付具28の先端は、植付具28の昇降動作によって、
図1に示すように、前側で下降し後側で上昇するとともに、前後方向の幅が上部よりも下部の方が大きい形状の軌跡17を描いて図中の矢印方向に繰り返し作動する。
【0037】
植付具28は、
図4に示す如く、前受片28Aと後受片28Bを先端が前後に開閉するように上端を枢支して構成し、土中に差し込んだ後に開いて種球を残して上昇しながら閉じるようにしている。植付具28の前受片28Aには後受片28Bに向けて、レーザー光や超音波等の検出手段を放射する種球センサ1を、植付具28の上下方向を長手方向として配置し、植付具28内への種球の進入の有無、及び植付具28の上下方向におけるどの位置に種球があるかを検出する。
【0038】
図4に示すとおり、該種球センサ1は、検出手段を放射する検出放射体1a,1b,1c,1d,1eを上下方向の所定間隔毎に配置して構成し、作動中は後受片28Bの内壁面に向けて各々が検出手段を放射するものとする。そして、放射された検出手段が反射されて検出放射体1a,1b,1c,1d,1eに戻ってくるまでの時間により、種球の有無、及び種球の投入された位置を判断する。なお、各検出放射体1a,1b,1c,1d,1eは、各々自身の放射した検出手段のみを検出するべく、少なくとも検出手段同士が干渉し合わない上下方向の所定間隔が各々空けられるものとする。
【0039】
種球センサ1が種球を検出しない、あるいは異常と判断し得る位置に種球を検出したときは、ブザーやランプなどで構成する植付不良報知手段を作動させて、作業者に先ほどの植付動作では種球が植え付けられていないおそれがあることや、複数の種球が同じ位置に植え付けられているおそれがあることを報知する。
【0040】
なお、正常である場合でもブザーやランプが一定パターンで作動し、異常であるときには別パターンで作動するものとしてもよい。例えば、正常であるときはランプが緑色で点灯し、異常が検出されると赤色で点灯するものや、正常であるときは「ピッ」という短音を1回または複数回発音させ、異常が検出されると「ピッ」という短音を複数回に亘って正常時よりも短い間隔で発音させたり、「ピー」という長音を発音させ続けるものが考えられる。
【0041】
以下、供給カップ33から植付具28内に種球が投入された際の、正常と異常の判定について、
図5(a)~(d)により説明する。
【0042】
図5(a)に示すとおり、複数の前記検出放射体1a,1b,1c,1d,1eのうち、種球センサ1の下部側に位置する第5検出放射体1e、第5検出放射体1eと第4検出放射体1d、または第5検出放射体1eと第4検出放射体1dと上下中央部に位置する第3検出放射体1cとが種球を検出すると、種球は植付具28の下端部付近にまで落下移動しており、植付具28が土中に嵌入して開くと正常に一つの種球が植え付けられ得る状態である、即ち「正常」であると判断されるので、植付不良報知手段は作動しないか、あるいは「正常」であることを作業者に報知する。
【0043】
なお、植え付ける種球の品種等により、「正常」と看做せる上下の範囲は異なるので、何番目の検出放射体までの検出で「正常」と「異常」を区別するかを変更可能に構成することが望ましい。
【0044】
一方、
図5(d)に示すとおり、複数の前記検出放射体1a,1b,1c,1d,1eのうち、いずれも非検出状態が継続されるときは、供給カップ33にそもそも種球が投入されていない、供給カップ33内に種球が張り付いている、植付具28から離れた位置に種球が落下した等の理由で、種球の供給が行われなかった状態、即ち「異常」であると判断されるので、植付不良報知手段を作動させる。
【0045】
また、
図5(b)に示すとおり、複数の前記検出放射体1a,1b,1c,1d,1eのうち、第5検出放射体1e、第4検出放射体1d、及び上下中央部に位置する第3検出放射体1cに加えて、第2検出放射体1b乃至第1検出放射体1aが種球を検出しているときは、複数の種球が投入されて積み重なっている、あるいは異常に上下に長い種球が投入されている状態、即ち「異常」であると判断されるので、植付不良報知手段を作動させる。
【0046】
なお、上記の場合、第1検出放射体1aは非検出状態であっても「異常」と判断させるものとすると、サイズの小さい種球の積み重なりを検知しやすい。一方、第1検出放射体1aまで全て検出されたときに「異常」と判断させるものとすると、サイズの大きな種球であっても積み重ならない限り「異常」が誤検出されることが防止できる。
【0047】
そして、
図5(c)に示すとおり、種球センサ1の上部側に位置する第1検出放射体1aまたは第2検出放射体1b、あるいは第1検出放射体1aと第2検出放射体1bの両方が検出状態で、且つ第3検出放射体1cから下側の検出放射体が種球を検出していないときには、種球が大きく植付具28の上部側に詰まった、あるいは土や粘液により張り付いた状態、即ち「異常」であると判断されるので、植付不良報知手段を作動させる。
【0048】
なお、上記の例では第4検出放射体1d、及び第5検出放射体1eが非検出であることを条件としたが、第1検出放射体1a、及び第2検出放射体1bが検出状態で、且つ第3検出放射体1cから第5検出放射体1eのうち、いずれかが種球を検出していないときにも種球が植付具28の上部側に詰まるか張り付いていて、植付具28が土中に嵌入して開いても土中に落下しない、あるいは落下中に植付具28が上昇に伴い閉じてしまい、土中に植え付けられずに連れ戻される可能性があるので、植付不良報知手段を作動させる必要がある。
【0049】
また、種球が植付具28内に入り込んで下部側に移動する際、最終的に「正常」と判断される状態になる場合でも、落下途中では上部側に位置する第1,第2検出放射体1a,1bのみが種球を検出して「異常」と判断し得る状態になるが、この時一旦「異常」が報知され、その後「正常」になると作業者に故障や誤検出の発生を誤認させかねない。したがって、種球センサ1を構成する複数の検出放射体1a,1b,1c,1d,1eは、所定時間(例:1~2秒)以上連続して種球を検出したときに初めて信号を発信するものとし、これらの信号を制御装置で受信し、「正常」か「異常」かを判定するものとする。
【0050】
上記により、植付不良報知手段の報知の有無、あるいは報知パターンにより、作業者は種球の投入作業をしながらでも供給カップ33から植付具28に種球が正常に引き継がれたかどうかを、植付具28が土中に植え付けるまでの間に知ることができる。これにより、植付不良が生じた可能性があるときにはその場で作業を中断し、植付具28が地面に形成した植付穴の内部を調べて、種球の有無、及び個数を確認できる。
【0051】
種球が無い、または2個以上ある、といった「異常」がある場所では、作業者は種球をその場に手作業で植え付ける、あるいは1つになるよう他の種球を回収することができるので、圃場全体の植付作業終了後に植付穴一つ一つを確認する必要が無く、余分な時間と労力が軽減されると共に、作物が生えてこず収量が減少することや、複数の種球が同時に成長して養分を取り合い、収穫物が品質の低いものとなることが防止される。
【0052】
なお、里芋等の種球は、土中に置かれた状態から発芽、発根するので、植付穴から種球を取り出しても埋め直しさえすれば生育に問題は無い。
【0053】
上記の種球センサ1は、植付具28が種球を土中に植え付けてから、次の種球を供給カップ33から受け取るまでの区間、即ち植付具28の下死点付近から上死点付近までは、検出対象が無く、そのままでは種球の無い「異常」と判断して植付不良報知手段を作動させ続けることになるが、種球が無いことが正常な区間で異常が検出されつづけることは、作業者にとって混乱の元となると共に、周辺環境に騒音を発生させることになりかねない。
【0054】
これを防止すべく、植付具28を植付軌跡を描かせつつ上下動させると共に、土中への嵌入の前後で開閉させる昇降リンク機構29には、昇降位置を検知するリンクセンサ50を設ける。このリンクセンサ50は制御装置に接続される、例えばポテンショメータであり、現在の昇降リンク機構29の回動位置を送信している。
【0055】
そして、制御装置は、このリンクセンサ50の検知する昇降リンク機構29の回動位置が、植付具28が供給カップ33から種球を受け取る上死点、乃至上死点付近に位置すると判断すると、種球センサ1、さらに言えば種球センサ1を構成する複数の検出放射体1a,1b,1c,1d,1eを作動させ、植付具28内への種球の進入の有無、及び種球の位置を検出し、「正常」か「異常」かを判断させる。
【0056】
これにより、種球を土中に植え付けて植付具28内に種球が無い状態となっても、次に種球を供給カップ33から引き継ぐ上死点、上死点付近の位置までは植付不良報知手段が作動しないので、作業者に精神的な負担が生じにくく、また、騒音の発生を防止できる。
【0057】
また、植付具28が種球を引き継いで下降している間は種球センサ1が作動し続けるので、植付具28の下降移動により種球が植付具28の上部位置から下部位置に落下し「異常」から「正常」に切り替わることがあると、植付不良報知手段を停止、あるいは作動パターンを変えて「正常」な植付が行われる状態であることを作業者に報知できるので、作業を中断する頻度が減少し、作業能率が向上する。
【0058】
上記の例では、種球は植え付けられるまでに植付具28内の「正常」と判断される位置にあれば、確実に植え付けられることが前提となる。しかしながら、種球が里芋等の粘液を漏出させる性質のものであるときや、土中の石の存在などの条件によっては、種球が植付具28内に留まることがある。このとき、リンクセンサ50は昇降リンク機構29が上昇中の角度を取っていると判定し、種球センサ1を制御装置が停止させるので、少なくとも作業者は次の種球を引き継いで植付具28が下降し、複数の種球が植付具28内にある「異常」が検出されて植付不良報知手段が作動するまでは、種球が植え付けられてない箇所があることに気付かない。
【0059】
これを防止すべく、制御装置は、植付具28が種球を土中に植え付けて上昇し始める下死点、乃至下死点付近位置で種球センサ1を停止させず、リンクセンサ50が検出する昇降リンク機構29の上方回動角度が所定値以上になると種球センサ1を停止させる構成とするとよい。
【0060】
但し、種球は植付具28の下部側付近に位置する可能性が高く、上述の判定条件では「正常」と判断されてしまうので、リンクセンサ50が植付具28が下死点、乃至下死点付近に位置すると看做す設定角度を検出し、その後昇降リンク機構29の所定の上方回動角度を検出するまでは、複数の検出放射体(1a~1e)のいずれか一つでも種球を検出すると、植付具28が種球を持ち帰っている「異常」と判断し、植付不良報知手段を作動させるものとする。
【0061】
これにより、その場で種球が植え付けられなかったことを作業者に報知できるので、作業を中断して種球を手作業で植え付けることができる。これに加えて、次の植付位置に複数の種球が植え付けられることを防止できるので、種球の植え直しに要する時間と労力が軽減される。
【0062】
なお、この状況では植付具28が持ち帰った種球を取り出すことは構造上難しく、無理に取り出すと種球の傷付きや植付具28が傷付く可能性があるので、次に種球を落下供給する供給カップ33から種球を取り出し、複数の種球が投入されることなく持ち帰った種球を植え付けさせることが望ましい。粘液により種球が張り付いている可能性があるときは、水を植付具28内に注いでおくとよい。
【0063】
上記の制御に関する装置の関係性は
図6に示しており、制御手順に関しては
図7及び
図8に示している。
【0064】
なお、植付具28のサイズは、植え付ける種球の種類によって変更する必要があり、里芋は、植付具28の上部に留まることが多く、移植作業を注意して行う必要がある。
【0065】
植付具28の前下部には、植付具28によって苗を植え付ける際に、植え付けた苗の周囲に浅い凹み状の穴を圃場に形成する作穴体110を備えている。作穴体110を一端に支持する作穴支持フレーム111が、作穴体110が上下に移動可能なように、他端が主フレーム22に回動自在に取り付けられている。
【0066】
また、作穴支持フレーム111の途中部分には、作穴支持軸112が連結されており、作穴支持軸112が上下に移動することにより、作穴支持フレーム111が上下動され、作穴体110の上下動が制御されるようになっている。
【0067】
図3は、苗供給部である供給部31を下から見た底面図である。
【0068】
図2に示すように、供給部31には、植付伝動ケース26からの動力により作動し、作業者が手で苗を一個ずつ供給するための供給カップ33が、供給回転台32上に円形のループ状で所定間隔毎に配置されている。尚、供給部31は、植付伝動ケース26に基部が固定された苗供給支持フレームFに支持されている。
【0069】
そして、
図3に示すように、各供給カップ33の底部には、上下方向に可動する開閉蓋34が、それぞれ1つずつ設けられている。
【0070】
また、
図3に示すように、各供給カップ33の下方には、供給回転台32の矢印A方向への回転により供給カップ33が、植付具28の上方の位置である所定位置Pに来たときにのみ供給カップ33の底部の開閉蓋34が開くべく、環状の一部を切り欠いた略C字型の供給カップ開閉ガイド35が、走行機体側に固定されている。なお、供給カップ開閉ガイド35は、前記所定位置P以外の位置で、開閉蓋34を下側から接触して支えて開閉蓋34が開くのを規制する。
【0071】
植付作業機10の供給部31前側には種球ケース2aを載せるケース台2を設け、供給部31の左側には種球供給台3を設けている。
【0072】
種球供給台3は供給部31より高い位置に設け、供給部31に向けて狭めた傾斜面として載せた種球が供給部31に向けて転げ落ち易くしている。また、種球供給台3には標準種球のサイズを示す凹みや図形からなる標準種球ゲージ4を設けている。
【0073】
なお、種球供給台3は供給部31の左側から右側に取り換えて取り付け可能にしている。右側に種球供給台3を取り付けた際には、供給部31を逆回転として作業者が右手での種球の供給作業を行い易くする。
【0074】
本実施の植付作業機10では、その機体の走行と共に歩行する作業者が、種球載置台30にある種球を一つずつ手でつかんで、機体の走行にあわせて矢印A方向に回転している供給カップ33に、それぞれ入れていく。
【0075】
供給カップ33の開閉蓋34が、前記所定位置Pで開くと、供給カップ33内の種球が下方の植付具28に供給される。植付具28は、
図1に示す作動の軌跡17の下死点に来たに土中に所定深さまで突入するとともに鳥の嘴の如く左右に開いて、内部に保持されて
いたラッキョ種球を落下して植え付ける。
【符号の説明】
【0076】
U 畝
1 種球センサ
3 種球供給台
4 標準種球ゲージ
10 植付作業機
28 植付具
31 供給部
33 供給カップ