(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/42 20060101AFI20230511BHJP
C03B 5/43 20060101ALI20230511BHJP
C03B 5/167 20060101ALI20230511BHJP
C03B 5/225 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C03B5/42
C03B5/43
C03B5/167
C03B5/225
(21)【出願番号】P 2020540218
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031261
(87)【国際公開番号】W WO2020045016
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018161110
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】天山 和幸
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】野田 光晴
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/013228(WO,A1)
【文献】特開平01-212235(JP,A)
【文献】特開2015-187081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00- 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを移送すべく白金材料製で長尺状に構成される移送容器と、前記移送容器を支持するように前記移送容器の長手方向に並設される複数の第一支持レンガと、前記第一支持レンガを支持する第二支持レンガと、を備えるガラス物品の製造装置であって、
前記第二支持レンガの熱膨張率が、前記第一支持レンガの熱膨張率よりも大き
くなっており、
前記第二支持レンガの熱膨張に伴って前記第一支持レンガを前記移送容器の前記長手方向に沿って移動させることが可能な状態で前記第一支持レンガ及び前記第二支持レンガが載置されることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項2】
前記第一支持レンガは、前記第二支持レンガの上面に載置される請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項3】
前記複数の第一支持レンガにおいて、隣り合う二つの前記第一支持レンガのうち、一方の前記第一支持レンガは、他方の前記第一支持レンガを押圧する押圧部材を備え、
前記押圧部材の熱膨張率は、前記第一支持レンガの前記熱膨張率よりも大きい請求項1又は2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項4】
前記他方の第一支持レンガは、前記押圧部材に接触する押圧補助部材を備え、
前記押圧補助部材の熱膨張率は、前記第一支持レンガの前記熱膨張率よりも大きい請求項3に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項5】
前記第一支持レンガは、相互に対向する第一構成部材及び第二構成部材を備え、
前記押圧部材及び前記押圧補助部材は、前記第一構成部材及び/又は前記第二構成部材の外面に配置される請求項4に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項6】
前記第一支持レンガは、高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物又は溶融シリカ系耐火物であり、
前記第二支持レンガは、高アルミナ系耐火物である請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項7】
前記第二支持レンガを加熱するヒーターを備える請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造装置によってガラス物品を製造する方法であって、
前記移送容器を加熱して昇温する予熱工程と、
前記予熱工程後に前記移送容器によって前記溶融ガラスを移送する溶融ガラス供給工程と、を備え、
前記予熱工程では、前記移送容器の昇温に伴って前記第二支持レンガを熱膨張させることにより、前記第一支持レンガを前記移送容器の前記長手方向に沿って移動させることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスを成形してガラス物品を製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、板ガラスが使用される。
【0003】
特許文献1には、板ガラスを製造するための装置が開示されている。板ガラス製造装置は、溶融ガラスの供給源となる溶解槽と、溶解槽の下流側に設けられた清澄槽と、清澄槽の下流側に設けられた攪拌槽と、攪拌槽の下流側に設けられた成形装置とを備える。溶解槽、清澄槽、攪拌槽、及び成形装置は、それぞれ連絡流路によって接続されている。
【0004】
清澄槽、攪拌槽、及びこれらを接続する連絡流路は、白金材料(白金又は白金合金)により構成される容器である。これらの白金材料容器は、その外表面に乾燥被膜が形成されており、耐火物材料からなる保持部材によって被覆されている。乾燥被膜と保持部材との間には、アルミナキャスタブルが充填される。アルミナキャスタブルは、適当量の水が添加されて水性スラリーとされ、乾燥被膜と保持部材との間に充填される。アルミナキャスタブルは、乾燥によって固化することで白金材料容器を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、板ガラス製造装置は、操業前に、溶解槽、清澄槽、攪拌槽、成形装置、連絡流路の各構成要素を個別に分離した状態で予備加熱される(以下「予熱工程」という)。予熱工程では、白金材料容器が温度上昇によって膨張する。白金材料容器が十分に膨張した後に、各構成要素を接続することで、板ガラス製造装置が組み立てられる。その後、溶解槽で生成された溶融ガラスが、清澄槽、攪拌槽、連絡流路を通じて成形装置に供給され、板ガラスとして成形される。
【0007】
上記の予熱工程では、白金材料容器が膨張するが、特許文献1に記載の製造装置では、固化したアルミナキャスタブルによって当該白金材料容器が耐火レンガ等の保持部材に固定されている。このため、白金材料容器の膨張が阻害され、当該容器に大きな熱応力が作用し、破損や変形の要因となるおそれがあった。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、予熱工程において白金材料容器を好適に膨張させることが可能なガラス物品の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、溶融ガラスを移送すべく白金材料製で長尺状に構成される移送容器と、前記移送容器を支持するように前記移送容器の長手方向に並設される複数の第一支持レンガと、前記第一支持レンガを支持する第二支持レンガと、を備えるガラス物品の製造装置であって、前記第二支持レンガの熱膨張率が、前記第一支持レンガの熱膨張率よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、第一支持レンガよりも熱膨張率の大きな第二支持レンガを予熱工程において熱膨張させると、第二支持レンガが第一支持レンガを支持していることから、第一支持レンガを移送容器の長手方向に沿って移動させることができる。このように、第一支持レンガを移送容器の長手方向に沿って移動させると、第一支持レンガが移送容器を支持していることから、予熱工程における移送容器の長手方向への膨張を補助し、もって当該移送容器の好適な膨張を実現できる。
【0011】
上記の製造装置において、前記第一支持レンガは、前記第二支持レンガの上面に載置されてもよい。これにより、第二支持レンガに対する複数の第一支持レンガの設置作業を容易に行うことができる。また、第二支持レンガの熱膨張に応じて第一支持レンガを移送容器の長手方向に沿って、より確実に移動させることができる。
【0012】
前記複数の前記第一支持レンガにおいて、隣り合う二つの前記第一支持レンガのうち、一方の前記第一支持レンガは、他方の前記第一支持レンガを押圧する押圧部材を備え、前記押圧部材の熱膨張率は、前記第一支持レンガの前記熱膨張率よりも大きいことが望ましい。
【0013】
かかる構成によれば、予熱工程における第二支持レンガの膨張に加え、押圧部材の熱膨張によって第一支持レンガを押圧することで、当該第一支持レンガを移送容器の長手方向に沿って、より確実に移動させることができる。
【0014】
また、前記他方の第一支持レンガは、前記押圧部材に接触する押圧補助部材を備え、前記押圧補助部材の熱膨張率は、前記第一支持レンガの前記熱膨張率よりも大きいことが望ましい。
【0015】
かかる構成によれば、第一支持レンガよりも熱膨張率の大きな押圧補助部材を押圧部材に接触させることで、予熱工程における押圧部材及び押圧補助部材の熱膨張によって、第一支持レンガをより確実に移動させることができる。
【0016】
前記第一支持レンガは、相互に対向する第一構成部材及び第二構成部材を備え、前記押圧部材及び前記押圧補助部材は、前記第一構成部材及び/又は前記第二構成部材の外面に配置されてもよい。これにより、押圧部材及び押圧補助部材を第一構成部材及び第二構成部材に対して容易に取り付けることができる。
【0017】
前記第一支持レンガは、高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物又は溶融シリカ系耐火物であることが望ましく、前記第二支持レンガは、高アルミナ系耐火物であることが望ましい。このように、第一支持レンガを高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物又は溶融シリカ系耐火物により構成することで、移送容器を効果的に断熱でき、また、熱膨張率が白金材料に近い高アルミナ系耐火物によって第二支持レンガを構成することで、予熱工程における移送容器の膨張による移動量と第一支持レンガの移動量が近くなり、移送容器のより好適な膨張を実現できる。
【0018】
本発明に係るガラス物品の製造装置は、前記第二支持レンガを加熱するヒーターを備え得る。ヒーターによって第二支持レンガを加熱することで、当該第二支持レンガの熱膨張を促進させることができる。これにより、第二支持レンガが支持する第一支持レンガを移送容器の長手方向に沿って好適に移動させることができる。
【0019】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、上記の製造装置によってガラス物品を製造する方法であって、前記移送容器を加熱して昇温する予熱工程と、前記予熱工程後に前記移送容器によって前記溶融ガラスを移送する溶融ガラス供給工程と、を備え、前記予熱工程では、前記移送容器の昇温に伴って前記第二支持レンガを熱膨張させることにより、前記第一支持レンガを前記移送容器の長手方向に移動させることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、第一支持レンガよりも熱膨張率の大きな第二支持レンガを予熱工程において熱膨張させ、この膨張によって複数の第一支持レンガを移送容器の長手方向に移動させることができる。これにより、予熱工程において移送容器を好適に膨張させることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、予熱工程において白金材料容器を好適に膨張させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第一実施形態に係るガラス物品の製造装置を示す側面図である。
【
図4】ガラス物品の製造方法のフローチャートを示す。
【
図5】ガラス物品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図6】ガラス物品の製造方法の一工程を示す側面図である。
【
図7】ガラス物品の製造方法の一工程を示す側面図である。
【
図8】第二実施形態に係るガラス物品の製造装置の一部を示す側面図である。
【
図10】ガラス物品の製造方法の一工程を示す側面図である。
【
図11】第三実施形態に係るガラス物品の製造装置の一部を示す側面図である。
【
図13】ガラス物品の製造方法の一工程を示す側面図である。
【
図14】第四実施形態に係るガラス物品の製造装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係るガラス物品の製造装置及び製造方法の第一実施形態を示す。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るガラス物品の製造装置は、上流側から順に、溶解槽1と、清澄槽2と、均質化槽(攪拌槽)3と、ポット4と、成形体5と、これらの各構成要素1~5を連結するガラス供給路6a~6dとを備える。この他、製造装置は、成形体5により成形された板ガラスGR(ガラス物品)を徐冷する徐冷炉(図示せず)及び徐冷後に板ガラスGRを切断する切断装置(図示せず)を備える。
【0025】
溶解槽1は、投入されたガラス原料を溶解して溶融ガラスGMを得る溶解工程を行うための容器である。溶解槽1は、ガラス供給路6aによって清澄槽2に接続されている。
【0026】
清澄槽2は、溶融ガラスGMを移送しながら清澄剤等の作用により脱泡する清澄工程を行うための容器である。清澄槽2は、ガラス供給路6bによって均質化槽3に接続されている。
【0027】
図2及び
図3に示すように、清澄槽2は、溶融ガラスGMを上流から下流へと移送する中空状かつ長尺状の移送容器7と、移送容器7を被覆する複数の第一支持レンガ8a,8bと、この第一支持レンガ8a,8bを閉塞する蓋体9と、移送容器7と第一支持レンガ8a,8bとの間に介在する接合体10と、第一支持レンガ8a,8bを支持する第二支持レンガ11とを備える。
【0028】
移送容器7は、白金材料(白金又は白金合金)によって管状に構成されるが、この構成に限定されず、内部に溶融ガラスGMが通過する空間を有する構造体であればよい。移送容器7は、管状部13と、当該管状部13の両端部に設けられるフランジ部14とを備える。なお、0℃から1300℃まで昇温した際の白金材料の熱膨張率は、例えば1.3~1.5%である。0℃から1300℃まで昇温した際の熱膨張率Rは、0℃の長さをL0(mm)とし、1300℃の長さをL1(mm)とした場合に、R=(L1-L0)/L0で算出できる。
【0029】
管状部13は、円管状にされるが、この構成に限定されない。管状部13の内径は、100mm以上300mm以下とされることが望ましい。管状部13の肉厚は、0.3mm以上3mm以下とされることが望ましい。管状部13の長さは、300mm以上10000mm以下とされることが望ましい。これらの寸法は、上記の範囲に限定されず、溶融ガラスGMの種別、温度、製造装置の規模等に応じて適宜設定される。
【0030】
なお、管状部13は、必要に応じ、溶融ガラスGM中に発生するガスを排出するためのベント部(通気管)を備えてもよい。また、管状部13は、溶融ガラスGMが流れる方向を変更するための仕切り板(邪魔板)を備えてもよい。
【0031】
フランジ部14は、円形に構成されるが、この形状に限定されない。フランジ部14は、例えば深絞り加工により管状部13と一体的に形成される。フランジ部14は、電源装置(図示なし)に接続される。清澄槽2の移送容器7は、各フランジ部14を介して管状部13に電流を流すことで生じる抵抗加熱(ジュール熱)によって、当該管状部13の内部を流れる溶融ガラスGMを加熱する。
【0032】
第一支持レンガ8a,8bは、高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物又は溶融シリカ系耐火物により構成されるが、この材質に限定されない。なお、高ジルコニア系耐火物とは、質量%で80~100%のZrO2を含むものをいう。0℃から1300℃まで昇温した際の高ジルコニア系耐火物の熱膨張率は、例えば0.1~0.3%である。高ジルコニア系耐火物は1100℃~1200℃において収縮を示し、0℃から1100℃まで昇温した際の熱膨張率は例えば0.6~0.8%、0℃から1200℃まで昇温した際の熱膨張率は例えば0.0~0.3%である。0℃から1300℃まで昇温した際のジルコン系耐火物の熱膨張率は、例えば0.5~0.7%であり、溶融シリカ系耐火物の熱膨張率は、例えば0.03~0.1%である。
【0033】
複数の第一支持レンガ8a,8bは、移送容器7の長手方向に沿って並設されている。
図2及び
図3に示すように、各第一支持レンガ8a,8bは、上下方向において相互に対向する第一構成部材8a及び第二構成部材8bを有する。第一構成部材8aと第二構成部材8bは同じ形状を有する。
【0034】
第一構成部材8a及び第二構成部材8bは、移送容器7の管状部13を上下に挟むようにして、当該管状部13の全周を被覆する。すなわち、第一構成部材8aは、管状部13を下側から支持する。第二構成部材8bは、管状部13の上部を被覆する。
図3に示すように、第一構成部材8aと第二構成部材8bとで管状部13を挟んだ状態において、第一支持レンガ8a,8bの外面は、断面視四角形を構成する。
【0035】
第一構成部材8aの外面は、四角形の一辺を構成する下面15aと、第二構成部材8bと共に四角形の他の二辺を構成する一対の側面15bとを有する。第二構成部材8bの外面は、四角形の一辺を構成する上面16aと、第一構成部材8aの側面15bと共に四角形の他の二辺を構成する側面16bとを有する。第一構成部材8aと第二構成部材8bとが組み合わせられた状態では、第一構成部材8aの側面15bと第二構成部材8bの側面16bとは、相互に面一となって四角形の二辺を構成する(
図3参照)。
【0036】
図3に示すように、第一構成部材8a及び第二構成部材8bは、管状部13の外周面13aを被覆するための面(以下「被覆面」という)17a,18aと、互いに当接する面(以下「当接面」という)17b,18bと、を有する。なお、被覆面17a,18aは、管状部13の外周面13aを保持する機能も有する。
【0037】
被覆面17a,18aは、管状部13の外周面13aを被覆すべく、断面視において円弧状の曲面により構成される。被覆面17a,18aの曲率半径は、管状部13の外周面13aとの間に隙間(接合体10の収容空間)が形成されるように、当該外周面13aの半径よりも大きく設定される。被覆面17a,18aと管状部13の外周面13aとの間隔(外周面13aの半径と被覆面17a,18aの曲率半径との差)は、3mm以上が好ましく、より好ましくは7.5mm以上に設定される。管状部13のクリープ変形防止の観点から、この間隔は、50mm以下に設定されることが好ましく、20mm以下に設定されることがより好ましい。
【0038】
第一構成部材8aの当接面17bと第二構成部材8bとの当接面18bとを接触させた状態では、各第一支持レンガ8a,8bの被覆面17a,18aによって、管状部13を被覆する円筒面が構成される(
図3参照)。
【0039】
蓋体9は、第一支持レンガ8a,8bと同様に、例えば高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物又は溶融シリカ系耐火物により構成されるが、この材質に限定されない。蓋体9は、複数に分割されており、各分割体を組み合わせることによって、円板状(円環状)に構成される。蓋体9は、厚さ方向における一方の面が第一支持レンガ8a,8bに当接することで、第一支持レンガ8a,8bと移送容器7の管状部13との間の隙間を閉塞する。
【0040】
接合体10は、原料となる粉末P(後述の
図5参照)を、移送容器7の管状部13と第一支持レンガ8a,8bとの間に充填した後に、加熱によって拡散接合させることにより構成される。拡散接合とは、粉末同士を接触させ、接触面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法をいう。
【0041】
粉末Pとしては、例えば、アルミナ粉末とシリカ粉末とを混合したものを使用できる。この場合、融点が高いアルミナ粉末を主成分することが望ましい。上記の構成に限らず、アルミナ粉末、シリカ粉末の他、ジルコニア粉末、イットリア粉末その他の各材料粉末を単体で使用し、或いは複数種の粉末を混合することにより構成され得る。
【0042】
粉末Pの平均粒径は、例えば0.01~5mmとすることができる。予熱工程での粉末Pの潤滑作用を向上させる観点から、粉末Pは、平均粒径が0.8mm以上である骨材を含むことが好ましい。骨材の平均粒径は、例えば5mm以下とすることができる。粉末Pが骨材を含む場合、粉末Pに対する骨材の含有量は、例えば25質量%~75質量%とすればよく、骨材を除いた粉末Pの平均粒径は、例えば0.01~0.6mmとすればよい。例えば、粉末Pがアルミナ粉末とシリカ粉末からなる場合、アルミナ粉末の一部を骨材とすればよい。
【0043】
本発明において、「平均粒径」は、レーザー回折法で測定した値を指し、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒径を表す。
【0044】
粉末Pは、1300℃以上で接合体10の形成によって清澄槽2の移送容器7を第一支持レンガ8a,8bに固定するように調合され、換言すると、1300℃以上で粉末P同士の拡散接合が活性化するように調合される。例えば粉末Pが、アルミナ粉末とシリカ粉末との混合粉末である場合、当該粉末Pの拡散接合が活性化する温度は、その混合比を調整することにより適宜設定できる。アルミナ粉末とシリカ粉末との混合比は、例えばアルミナ粉末が90wt%、シリカ粉末が10wt%とされるが、これに限定されない。
【0045】
第二支持レンガ11は、高アルミナ系耐火物により板状又はブロック状に構成されるが、この材質及び形状に限定されるものではない。なお、高アルミナ系耐火物とは、質量%で、90~100%のAl2O3を含むものをいう。第二支持レンガ11の熱膨張率は、第一支持レンガ8a,8bの熱膨張率よりも大きく、例えば0.8~1.2%とすることができる。第二支持レンガ11の熱膨張率A(%)は、白金材料の熱膨張率B(%)に近いことが好ましく、具体的にはA/Bが0.6~1.0であることが好ましい。なお、本段落において、熱膨張率は、いずれも、0℃から1300℃まで昇温した際の熱膨張率である。
【0046】
本実施形態の第二支持レンガ11は、1個の長尺のレンガで構成されるが、移送容器7の長手方向に沿って並べて配置された複数の短尺のレンガで構成されてもよい。
【0047】
第二支持レンガ11には、第一支持レンガ8a,8bの第一構成部材8aが載置されている。すなわち、第一構成部材8aの下面15aは、第二支持レンガ11の上面11aに接触している。本実施形態では、第二支持レンガ11が床面に載置されているが、第二支持レンガ11が別の支持レンガを介して床面に載置されてもよい。
【0048】
均質化槽3は、清澄された溶融ガラスGMを攪拌し、均一化する工程(均質化工程)を行うための白金材料製の移送容器である。均質化槽3の移送容器は、底付きの管状容器であり、その外周面は耐火レンガ(図示なし)で被覆される。均質化槽3は、攪拌翼を有するスターラ3aを備える。均質化槽3は、ガラス供給路6cによってポット4に接続されている。
【0049】
ポット4は、溶融ガラスGMを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器である。ポット4は、溶融ガラスGMの粘度調整及び流量調整のための容積部として例示される。ポット4は、ガラス供給路6dによって成形体5に接続されている。
【0050】
成形体5は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGMを板状に成形する。詳細には、成形体5は、断面形状(
図1の紙面と直交する断面形状)が略楔形状を成しており、この成形体5の上部には、オーバーフロー溝(図示せず)が形成されている。
【0051】
成形体5は、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝から溢れ出させて、成形体5の両側の側壁面(紙面の表裏面側に位置する側面)に沿って流下させる。成形体5は、流下させた溶融ガラスGMを側壁面の下頂部で融合させる。これにより、帯状の板ガラスGRが成形される。帯状の板ガラスGRは、後述の徐冷工程S7及び切断工程S8に供され、所望寸法の板ガラスとされる。
【0052】
このようにして得られた板ガラスは、例えば、厚みが0.01~10mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。成形体5は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。本発明に係るガラス物品は、板ガラスGRに限定されず、ガラス管その他の各種形状を有するものを含む。例えば、ガラス管を形成する場合には、成形体5に代えてダンナー法を利用する成形装置が配備される。
【0053】
板ガラスの組成としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0054】
各ガラス供給路6a~6dは、溶解槽1、清澄槽2、均質化槽(攪拌槽)3、ポット4及び成形体5をその順に連結する。各ガラス供給路6a~6dは、白金材料製の移送容器を備える。
【0055】
以下、上記構成の製造装置によってガラス物品(板ガラスGR)を製造する方法について説明する。
図4に示すように、本方法は、充填工程S1、予熱工程S2、組立工程S3、溶解工程S4、溶融ガラス供給工程S5、成形工程S6、徐冷工程S7、及び切断工程S8を備える。
【0056】
充填工程S1では、
図5に示すように、清澄槽2に粉末Pを充填する。具体的には、第一構成部材8aの被覆面17aと、移送容器7の管状部13の外周面13aとの間に粉末Pを充填する。その後、第二構成部材8bの当接面18bを第一構成部材8aの当接面17bに当接させる。そして、外周面13aの上側の部分と、第二構成部材8bの被覆面18aとの間の空間に、粉末Pを充填する。その後、第一支持レンガ8a,8bを蓋体9により閉塞する。
【0057】
予熱工程S2では、製造装置の構成要素1~5,6a~6dを個別に分離した状態で、これらを昇温する。以下では、
図6及び
図7を参照しつつ、清澄槽2を昇温する場合を例として説明する。
【0058】
予熱工程S2では、清澄槽2の移送容器7を昇温するため、フランジ部14を介して管状部13に電流を流す。これによって各移送容器7が加熱されて昇温し、各管状部13は、その軸心方向(長手方向)及び半径方向に膨張する。このとき、各第一支持レンガ8a,8bと管状部13との間に充填された粉末Pは、粉末状態を維持しており、管状部13と第一支持レンガ8a,8bとの間の空間において、流動(移動)可能である。このような粉末Pが潤滑材として作用することにより、各管状部13は、熱応力を発生させることなく膨張できる。
【0059】
加えて、第二支持レンガ11を熱膨張させることにより、第一支持レンガ8a,8bを移送容器7の長手方向に移動させる。すなわち、移送容器7を加熱することによって、第一支持レンガ8a,8b及び第二支持レンガ11が昇温する。この場合において、第二支持レンガ11は、前述の通り熱膨張率が大きいことから、第一支持レンガ8a,8bよりも大きく熱膨張する。したがって、第二支持レンガ11によって支持されている第一支持レンガ8a,8bは、当該第二支持レンガ11の膨張に伴って、移送容器7の長手方向に沿って移動する。この移動により、並設される第一支持レンガ8a,8bの間には、若干の隙間Sが生じる(
図7参照)。例えば第一支持レンガ8a,8bの長さL2を100mmとした場合、1300℃における隙間Sは、例えば0.2~1.0mmとされる。その際、移送容器7の管状部13の外周面13aのうちで隙間Sに位置する領域は、露出することなく、粉末Pで覆われている。粉末Pの骨材について、隙間Sより大きな平均粒径の骨材を使用することで隙間への粉末Pの脱落は抑制される。
【0060】
管状部13が所定の温度(例えば1200℃以上かつ粉末Pの拡散接合が活性化する温度未満)にまで到達すると、予熱工程S2が終了し、組立工程S3が実行される。
【0061】
組立工程S3では、溶解槽1、清澄槽2、均質化槽3、ポット4、成形体5、及びガラス供給路6a~6dを接続することで、製造装置が組み立てられる。
【0062】
溶解工程S4では、溶解槽1内に供給されたガラス原料が加熱され、溶融ガラスGMが生成される。なお、立ち上げ期間の短縮のため、組立工程S3以前に溶解槽1内で予め溶融ガラスGMを生成してもよい。
【0063】
溶融ガラス供給工程S5では、溶解槽1の溶融ガラスGMを、各ガラス供給路6a~6dを介して、清澄槽2、均質化槽3、ポット4、そして成形体5へと順次移送する。
【0064】
組立工程S3直後の溶融ガラス供給工程S5(製造装置の立ち上げ時)において、清澄槽2(移送容器7)は、管状部13への通電によって昇温し続ける。さらに、清澄槽2は、高温の溶融ガラスGMが管状部13を通過することによっても昇温する。この昇温に伴い、清澄槽2に充填された粉末Pも昇温する。
【0065】
この昇温によって、粉末Pの拡散接合を活性化させる。この際の粉末Pの温度は、例えば1400℃以上1700℃以下とすればよい。
【0066】
本実施形態では、粉末P中のアルミナ粉末同士、及びアルミナ粉末とシリカ粉末との間で、拡散接合が発生する。また、アルミナ粉末とシリカ粉末とによりムライトが発生する。ムライトは、アルミナ粉末同士を強固に接合する。時間の経過とともに拡散接合が進行し、最終的に、粉末Pは一個又は複数個の接合体10となる。接合体10は、管状部13及び第一支持レンガ8a,8bと密着することから、第一支持レンガ8a,8bに対する管状部13の移動を阻害する。このため、管状部13は、第一支持レンガ8a,8bに固定される。接合体10は、板ガラスGRの製造が終了するまでの間、第一支持レンガ8a,8bとともに管状部13を支持し続ける。なお、粉末Pが全て接合体10となるまでに要する時間は、二十四時間以内であることが望ましいが、この範囲に限定されない。
【0067】
加えて、溶融ガラス供給工程S5において、溶融ガラスGMが清澄槽2の移送容器7内を流通する際、ガラス原料には清澄剤が配合されていることから、この清澄剤の作用により溶融ガラスGMからガス(泡)が除去される。また、均質化槽3において、溶融ガラスGMは、攪拌されて均質化される。溶融ガラスGMがポット4、ガラス供給路6dを通過する際には、その状態(例えば粘度や流量)が調整される。
【0068】
成形工程S6では、溶融ガラス供給工程S5を経て溶融ガラスGMが成形体5に供給される。成形体5は、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝から溢れ出させ、その側壁面に沿って流下させる。成形体5は、流下させた溶融ガラスGMを下頂部で融合させることで、板ガラスGRを成形する。
【0069】
その後、板ガラスGRは、徐冷炉による徐冷工程S7、切断装置による切断工程S8を経て、所定寸法に形成される。或いは、切断工程S8で板ガラスGRの幅方向の両端を除去した後に、帯状の板ガラスGRをロール状に巻き取ってもよい(巻取工程)。以上により、ガラス物品(板ガラスGR)が完成する。
【0070】
以上説明した本実施形態に係るガラス物品の製造方法によれば、予熱工程S2では、第二支持レンガ11が熱膨張することで、その上面11aに載置される第一支持レンガ8a,8bを移送容器7の長手方向に移動させる。すなわち、移送容器7を支持する第一支持レンガ8a,8bを、移送容器7の膨張を補助するように移動させる。これにより、予熱工程S2において、移送容器7をその長手方向に沿って好適に膨張させることができる。
【0071】
前述の通り、高ジルコニア系耐火物は1100℃~1200℃において収縮を示す。第一支持レンガ8a,8bとして高ジルコニア系耐火物を用いた場合、1100℃~1200℃において、第一支持レンガ8a,8bが移送容器7の長手方向に収縮することで、移送容器7には粉末Pを介してその膨張を阻害する摩擦力が作用することになる。加えて、移送容器7は昇温によって降伏点が低下するため、高温に加熱された場合に、より膨張し難くなる。このような場合であっても、第二支持レンガ11の膨張によって第一支持レンガ8a,8bを移動させることで、移送容器7は、第一支持レンガ8a,8bの収縮によって阻害されることなく、予熱工程S2にて所期の長さに膨張することが可能になる。
【0072】
また、溶融ガラス供給工程S5中は、粉末Pが拡散接合によって接合体10として構成されることで、当該接合体10と第一支持レンガ8a,8bとによって、各管状部13を移動しないように確実に固定できる。
【0073】
図8乃至
図10は、本発明に係るガラス物品の製造装置(清澄槽)及び製造方法の第二実施形態を示す。
図8及び
図9は充填工程直後の清澄槽を示す。
図10は、予熱工程における清澄槽を示す。
図8に示すように、本実施形態に係る清澄槽2は、移送容器7の長手方向に沿って並設される複数の第一支持レンガ8A,8Bを有する。
【0074】
複数の第一支持レンガ8A,8Bにおいて、隣り合う二つの第一支持レンガ8A,8Bのうち、一方の第一支持レンガ8Aは、高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物又は溶融シリカ系耐火物により構成される第一構成部材8a及び第二構成部材8bと、他方の第一支持レンガ8Bを押圧する押圧部材19とを備える。また、他方の第一支持レンガ8Bは、高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物又は溶融シリカ系耐火物により構成される第一構成部材8a及び第二構成部材8bと、押圧部材19に接触する押圧補助部材20とを備える。
【0075】
押圧部材19及び押圧補助部材20は、高アルミナ系耐火物によりブロック状に構成される。押圧部材19及び押圧補助部材20の熱膨張率は、各構成部材8a,8bの熱膨張率よりも大きい。押圧部材19及び押圧補助部材20は、各構成部材8a,8bの外面に設けられている。
【0076】
押圧部材19は、一方の第一支持レンガ8Aの第一構成部材8a及び第二構成部材8bにおける角部21に設けられている。一方の第一支持レンガ8Aを構成する第一構成部材8a及び第二構成部材8bは、当該押圧部材19を収容し、支持する凹部22a,22b(又は切り欠き部)を有する。押圧部材19は、第一支持レンガ8Aに係る第一構成部材8a及び第二構成部材8bの下面15a、上面16a及び側面15b,16bと面一となる外面23と、凹部22a,22bに接触する内面24と、他方の第一支持レンガ8Bを押圧する端面25とを有する。押圧部材19の端面25は、押圧補助部材20と、他方の第一支持レンガ8Bの各構成部材8a,8bとに接触し得る。
【0077】
図8に示す複数の第一支持レンガ8Aのうち、移送容器7の各フランジ部14寄りに位置する第一支持レンガ8Aの凹部22aと、移送容器7の中途部を被覆する第一支持レンガ8Aの凹部22bとでは、その構造が異なる。
【0078】
すなわち、フランジ部14寄りに位置する第一支持レンガ8Aの凹部22aは、移送容器7の長手方向に沿って各構成部材8a,8bを貫通していない。この構成により、凹部22aが形成される第一構成部材8a及び第二構成部材8bには、押圧部材19に接触すする係止部8cが形成される。一方、移送容器7の中途部を被覆する第一支持レンガ8Aの凹部22bは、移送容器7の長手方向沿って、第一構成部材8a及び第二構成部材8bを貫通するように形成されている。このため、凹部22bが形成される第一構成部材8a及び第二構成部材8bには、係止部8cが形成されていない。
【0079】
押圧補助部材20は、他方の第一支持レンガ8Bの第一構成部材8a及び第二構成部材8bにおける角部26に設けられている。第一支持レンガ8Bの第一構成部材8a及び第二構成部材8bは、押圧補助部材20を支持する凹部27を有する。押圧補助部材20は、第一支持レンガ8Bに係る第一構成部材8a及び第二構成部材8bの下面15a、上面16a及び側面15b,16bと面一となる外面28と、凹部27に接触する内面29と、押圧部材19の端面25に接触する端面30とを備える。
【0080】
本実施形態に係る清澄槽2では、予熱工程S2において、第二支持レンガ11の膨張に加え、押圧部材19及び押圧補助部材20を熱膨張させることで、
図10に示すように、各第一支持レンガ8A,8Bを移送容器7の長手方向に移動させることができる。
【0081】
図11乃至
図13は、本発明に係るガラス物品の製造装置(清澄槽)及び製造方法の第三実施形態を示す。
図11及び
図12は充填工程直後の清澄槽を示す。
図13は、予熱工程における清澄槽を示す。
【0082】
図11及び
図12に示すように、押圧部材19及び押圧補助部材20は、第一支持レンガ8A,8Bの各構成部材8a,8bの内部に配されている。押圧部材19及び押圧補助部材20は、円柱状に構成されるが、この形状に限定されない。押圧部材19の直径は、押圧補助部材20の直径よりも大きい。
【0083】
複数の第一支持レンガ8A,8Bのうち、一方の第一支持レンガ8Aの各構成部材8a,8bは、押圧部材19を収容する収容部31a,31bを有する。移送容器7の各フランジ部14寄りに位置する第一支持レンガ8Aの収容部31aは、各構成部材8a,8bを貫通しない断面視円形の凹部である。この構成により、収容部31aが形成される第一構成部材8a及び第二構成部材8bには、押圧部材19に接触する係止部8cが形成される。移送容器7の長手方向中途部を被覆する第一支持レンガ8Aの収容部31bは、移送容器7の長手方向に沿って各構成部材8a,8bを貫通する断面視円形の孔である。このため、収容部31bが形成される第一構成部材8a及び第二構成部材8bには、係止部8cが形成されていない。
【0084】
他方の第一支持レンガ8Bは、押圧補助部材20を収容する収容部32を有する。収容部32は、移送容器7の長手方向に沿って各構成部材8a,8bを貫通する断面視円形の孔である。
【0085】
本実施形態に係る清澄槽2では、予熱工程S2において、第二支持レンガ11の膨張に加え、押圧部材19及び押圧補助部材20を熱膨張させることで、
図13に示すように、各第一支持レンガ8A,8Bを移送容器7の長手方向に移動させることができる。
【0086】
図14及び
図15は、本発明に係るガラス物品の製造装置(清澄槽)及び製造方法の第四実施形態を示す。本実施形態における清澄槽2は、第一実施形態と同様な第一支持レンガ8a,8b、第二支持レンガ11の他、第二支持レンガ11を支持する第三支持レンガ33と、第二支持レンガ11を加熱するヒーター34とを備える。
【0087】
第三支持レンガ33は、第二支持レンガ11と同様に、高アルミナ系耐火物により板状又はブロック状に構成されるが、この材質及び形状に限定されるものではない。第三支持レンガ33の熱膨張率は、第二支持レンガ11と同程度にされることが好ましい。
図15に示すように、第三支持レンガ33は、所定の間隔をおいて離間される一対のレンガにより構成される。一対の第三支持レンガ33の間には、ヒーター34を収容する空間が形成されている。
【0088】
ヒーター34は、移送容器7の長手方向に沿って配置される長尺状(棒状)のヒーターにより構成される。本実施形態では、一対の第三支持レンガ33の間に配置される二本のヒーター34を例示するが、ヒーター34の数及び形状は、本実施形態に限定されない。ヒーター34は、一本又は三本以上であってもよい。ヒーター34は、本実施形態の長さよりも短い複数のヒーターを移送容器7の長手方向に間隔をおいて配置することにより構成してもよい。ヒーター34は、抵抗加熱式のものが使用されるが、この形態に限定されない。ヒーター34は、例えばSiCにより構成されるが、この材質に限定されない。
【0089】
本実施形態に係る製造装置によってガラス物品を製造する場合、予熱工程S2において、ヒーター34により第二支持レンガ11を加熱することで、移送容器7の熱膨張を促進させることが可能である。ヒーター34の加熱温度は、例えば、移送容器7の加熱温度と同程度となるように設定することができる。また、ヒーター34の加熱温度は、第二支持レンガ11の温度と移送容器7の加熱温度とが同程度となるように設定することもできる。さらに、ヒーター34の加熱温度は、移送容器7の理論膨張量と第二支持レンガ11の膨張量が同程度となるように設定することもできる。これらのようにヒーター34によって第二支持レンガ11を加熱することで、移送容器7をより好適に熱膨張させることができる。
【0090】
また、第三支持レンガ33は、ヒーター34によって加熱されることで、第二支持レンガ11と同程度の熱膨張を生じる。したがって、予熱工程S2において、第三支持レンガ33はその膨張により、第二支持レンガ11の膨張を阻害することなく当該第二支持レンガ11を支持できる。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0092】
上記の実施形態では、粉末Pの移動(流動)によって移送容器7の膨張を促進する例を示したが、本発明はこの態様に限定されない。粉末Pに代え、移送容器7の外周面と接触する耐火物繊維層と、耐火物繊維層の外側に配置される不定形耐火物層とを配置してもよい。この場合、移送容器7と不定形耐火物層の間に介在する耐火物繊維層によって移送容器7の膨張を促進できる。移送容器7の膨張をより促進する観点では、上記の実施形態のような粉末Pを用いることが好ましい。
【0093】
上記の実施形態では、清澄槽2が備える移送容器7に本発明を適用したが、ガラス供給路6a~6dに本発明を適用してもよい。また、清澄槽2及びガラス供給路6a~6dは、複数の移送容器7を備え、各移送容器7を突き合わせて接続することによって所望の長さの移送容器を構成してもよい。
【0094】
上記の第二実施形態では、第一支持レンガ8A,8Bの角部21,26に押圧部材19及び押圧補助部材20を配置した例を示したが、本発明は、この構成に限定されない。各第一構成部材8a及び第二構成部材8bの下面15a、上面16a、側面15b,16bの一部に凹部を形成し、押圧部材19及び押圧補助部材20は、この凹部に配置されてもよい。
【0095】
上記の第二実施形態では、押圧部材19と押圧補助部材20とによって第一支持レンガ8A,8Bの移動を補助する構成を示したが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、他方の第一支持レンガ8Bに押圧補助部材20を設けずに、一方の第一支持レンガ8Aに設けた押圧部材19によって、他方の第一支持レンガ8Bを押圧してもよい。
【符号の説明】
【0096】
7 移送容器
8a 第一支持レンガ(第一構成部材)
8b 第一支持レンガ(第二構成部材)
8A 一方の第一支持レンガ
8B 他方の第一支持レンガ
11 第二支持レンガ
11a 第二支持レンガの上面
19 押圧部材
20 押圧補助部材
34 ヒーター
GM 溶融ガラス
S2 予熱工程
S5 溶融ガラス供給工程