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特許7276368抵抗測定装置、抵抗測定システム、抵抗測定方法及びそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】抵抗測定装置、抵抗測定システム、抵抗測定方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20230511BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230511BHJP
【FI】
G01R27/02 R
G01R31/389
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021026255
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127986
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒形 将吾
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広規
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇一
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-174492(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171688(WO,A1)
【文献】特開2019-160775(JP,A)
【文献】特開2022-065323(JP,A)
【文献】特開2011-072096(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109632227(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110514893(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 27/00-27/32、
31/36-31/44、
H01M 10/42-10/48、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流を取得し、取得した応答電流から蓄電デバイスの抵抗を求める制御部、を備え
前記制御部は、前記蓄電デバイスに機械的な振動を加えた際に該蓄電デバイスから出力される応答電流の強度を取得する、抵抗測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、周波数が1Hz以上10kHz以下の範囲の交流電圧を印加した際の前記応答電流を取得する、請求項1に記載の抵抗測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、周波数が5Hz以上400Hz以下の範囲の機械的な振動を加えた際の前記応答電流を取得する、請求項1又は2に記載の抵抗測定装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の抵抗測定装置であって、
蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流の強度と該蓄電デバイスの抵抗値とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部、を備え、
前記制御部は、蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流の強度を取得し、取得した応答電流の強度に対応する抵抗値を前記対応情報を用いて求める、抵抗測定装置。
【請求項5】
前記蓄電デバイスは、
リチウムイオンを吸蔵放出する正極活物質を有する正極と、
リチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間でリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたリチウムイオン二次電池である、請求項1~のいずれか1項に記載の抵抗測定装置。
【請求項6】
蓄電デバイスの抵抗を測定する抵抗測定システムであって、
請求項1~のいずれか1項に記載の抵抗測定装置と、
前記蓄電デバイスに機械的な振動を加える加振装置と、
前記蓄電デバイスに交流電圧を印加する印加装置と、
前記蓄電デバイスに接続し前記応答電流を検出する検出装置と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電デバイスに機械的振動を加えるよう前記加振装置を制御すると共に交流電圧を印加するように前記印加装置を制御し、前記検出装置から前記応答電流を取得する、抵抗測定システム。
【請求項7】
蓄電デバイスの抵抗を求める抵抗測定方法であって、
蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流を取得し、取得した応答電流から蓄電デバイスの抵抗を求める抵抗導出ステップ、をみ、
前記抵抗導出ステップでは、前記蓄電デバイスに機械的な振動を加えた際に該蓄電デバイスから出力される応答電流の強度を取得する、抵抗測定方法。
【請求項8】
前記抵抗導出ステップでは、周波数が1Hz以上10kHz以下の範囲の交流電圧を印加した際の前記応答電流を取得する、請求項に記載の抵抗測定方法。
【請求項9】
前記抵抗導出ステップでは、周波数が5Hz以上400Hz以下の範囲で機械的な振動を加えた際の前記応答電流を取得する、請求項又はに記載の抵抗測定方法。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載の抵抗測定方法であって、
前記抵抗導出ステップの前に、蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流の強度と該蓄電デバイスの抵抗値とを対応付けた対応情報を記憶部から読み出す読出ステップ、を含み、
前記抵抗導出ステップでは、蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流の強度を取得し、取得した応答電流の強度に対応する抵抗値を前記対応情報を用いて求める、抵抗測定方法。
【請求項11】
前記蓄電デバイスは、
リチウムイオンを吸蔵放出する正極活物質を有する正極と、
リチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間でリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたリチウムイオン二次電池である、請求項10のいずれか1項に記載の抵抗測定方法。
【請求項12】
請求項11のいずれか1項に記載の抵抗測定方法のステップを1又は複数のコンピュータに実現させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では抵抗測定装置、抵抗測定システム、抵抗測定方法及びそのプログラムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池の内部直流抵抗を測定する抵抗測定装置としては、例えば、測定対象電池の交流インピーダンスを測定し、このインピーダンスの測定結果と選択された等価回路に基づき算出される回路定数と電池直流抵抗測定条件の電流値と開路電圧値(OCV)に基づき測定対象電池の応答電流を算出するとともに内部直流抵抗値を算出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この抵抗測定装置では、大容量の電源を用いることなく、短時間で効率よく測定が行える電池直流抵抗評価装置を提供することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-228216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1では、電気化学インピーダンスの取得には交流電圧を用いる必要があるなど、課題があり、より簡便な装置構成で電池抵抗を求めることが望まれていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、より簡便な構成で蓄電デバイスの抵抗を評価することができる新規な抵抗測定装置、抵抗測定システム、抵抗測定方法及びそのプログラムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、蓄電デバイスに機械的な単振動を加えると共に交流電圧を印加したときの応答電流を計測したところ、電池抵抗を推定することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する抵抗測定装置は、
蓄電デバイスの抵抗を求める抵抗測定装置であって、
蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流を取得し、取得した応答電流から蓄電デバイスの抵抗を求める制御部、
を備えたものである。
【0008】
本明細書で開示する抵抗測定システムは、
上述した抵抗測定装置と、
前記蓄電デバイスに機械的な振動を加える加振装置と、
前記蓄電デバイスに交流電圧を印加する印加装置と、
前記蓄電デバイスに接続し前記応答電流を検出する検出装置と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電デバイスに機械的振動を加えるよう前記加振装置を制御すると共に交流電圧を印加するように前記印加装置を制御し、前記検出装置から前記応答電流を取得するものである。
【0009】
本明細書で開示する抵抗測定方法は、
蓄電デバイスの抵抗を求める抵抗測定方法であって、
蓄電デバイスに機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に該蓄電デバイスから出力される応答電流を取得し、取得した応答電流から蓄電デバイスの抵抗を求める抵抗導出ステップ、
を含むものである。
【0010】
本明細書で開示するプログラムは、上述した抵抗測定方法の各ステップを1又は複数のコンピュータに実現させるものである。このプログラムはコンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示では、より簡便な構成で蓄電デバイスの抵抗を評価することができる新規な抵抗測定装置、抵抗測定システム、抵抗測定方法及びそのプログラムを提供することができる。本開示がこのような効果を奏する理由は、以下のように推察される。例えば、蓄電デバイス(セル)に機械的な振動を加えた際にセル内の部材の共振周波数周辺では、部分共振の発生により電極間に加わる圧力の変動が起こる。この圧力の変動により、電極間の距離が振動する。電極間距離の振動は正負極間で発生する電圧勾配、すなわち、電場を振動させるため電場の振動に合わせて電極間のイオンの移動が起こり、正負極間にわずかな電圧の偏りを生じさせる。この電圧の偏りに誘起されて電極近傍で電気化学反応が起こり、電池電圧が変化する。その反応のトリガーとなる電極間のイオンの易動度は電池の抵抗と相関があるためセル電圧の振幅が発生し、その電圧の発生に誘起されて電流が発生する。電流には抵抗の情報が含まれているため電流値から抵抗が推定できるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】抵抗測定システム10の一例を示す説明図。
図2】対応情報32の一例を示す説明図。
図3】対応情報設定処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
図4】抵抗測定処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
図5】解析に用いた等価回路の説明図。
図6】電池抵抗と応答電流振幅との対応関係の一例を示す測定結果。
図7】振動周波数と応答電流振幅との対応関係の一例を示す測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(抵抗測定装置)
本明細書で開示する抵抗測定装置の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、抵抗測定システム10の一例を示す概略説明図である。抵抗測定システム10は、蓄電デバイス40の電池抵抗を推定するシステムである。抵抗測定システム10は、蓄電デバイス40に機械的な振動を加えると共に交流電圧を印加した際に、この蓄電デバイス40から出力される応答電流を取得し、取得した応答電流から蓄電デバイス40の抵抗を求める処理を行う。この抵抗測定システム10は、加振装置14と、印加装置15と、検出装置16と、抵抗測定装置20とを備えている。抵抗測定システム10は、抵抗測定装置20がLANやインターネットなどを含む回線12を介して加振装置14や検出装置16との間で情報をやりとりする。
【0014】
蓄電デバイス40は、例えば、ハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムやナトリウムのアルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池、空気電池などが挙げられる。このうち、蓄電デバイス40としては、リチウム二次電池、特にリチウムイオン二次電池が好ましい。ここでは、蓄電デバイス40がリチウムイオン二次電池であるものとして主として説明する。蓄電デバイス40は、例えば、リチウムイオンを吸蔵放出する正極活物質を有する正極43と、リチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質を有する負極46と、正極43及び負極46の間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体48と、を備えるものとしてもよい。この蓄電デバイス40は、正極43と負極46との間にセパレータ47を配置してもよい。正極43は、集電体41の表面に形成された正極合材42を備えるものとしてもよい。正極合材42には、正極活物質のほか、導電材や結着材などが含まれるものとしてもよい。正極活物質としては、例えば、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などが挙げられる。正極活物質は、例えば、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物などを用いることができる。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。負極46は、集電体44の表面に形成された負極合材45を備えるものとしてもよい。負極合材45には、負極活物質のほか、導電材や結着材などが含まれるものとしてもよい。負極活物質としては、例えば、リチウム、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素材料としては、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。イオン伝導媒体48は、例えば、支持塩を溶解した電解液とすることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6やLiBF4、などのリチウム塩が挙がられる。電解液の溶媒は、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類等が挙げられる。また、イオン伝導媒体は、固体のイオン伝導性ポリマーや、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。集電体41,44としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、銅、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのうち1以上を用いることができる。セパレータ47としては、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜などが挙げられる。
【0015】
加振装置14は、蓄電デバイス40に機械的な振動を加える装置である。加振装置14は、蓄電デバイス40に対し、単振動を加えるものとしてもよい。この加振装置14は、蓄電デバイス40に対し、周波数が5Hz以上400Hz以下の範囲の機械的振動を印加することができることが好ましく、より好ましくは10Hz以上200Hz以下の範囲であり、更に好ましくは30Hz以上150Hz以下の範囲である。このような周波数の範囲では、例えば、ノイズレベルよりも優位な差を有する応答電流を得ることができ、蓄電デバイス40の抵抗を求めやすい。
【0016】
印加装置15は、蓄電デバイス40に交流電圧を印加する装置である。印加装置15は、蓄電デバイス40に電気的に接続される検出装置16に配設されているものとしてもよい。この印加装置15は、蓄電デバイス40に対し、周波数が1Hz以上10kHz以下の範囲の交流電圧を印加することができることが好ましく、より好ましくは10Hz以上であり、更に好ましくは100Hz以上である。このような周波数の範囲では、例えば、ノイズレベルよりも優位な差を有する応答電流を得ることができ、蓄電デバイス40の抵抗を求めやすい。特に、交流電圧の周波数が1kHz近傍では、電池特性を測定する規格上、測定器が多数存在しており、好ましい。この印加装置15が印加する電圧は、例えば、0.1mV以上1V以下の範囲が好ましく、1mV以上20mV以下の範囲としてもよいし、2mV以上10mV以下の範囲としてもよい。
【0017】
検出装置16は、蓄電デバイス40に電気的に接続し、蓄電デバイス40に機械的な振動を加え、且つ交流電圧を印加した際に出力される応答電流を検出する装置である。検出装置16は、蓄電デバイス40から検出された応答電流の強度を抵抗測定装置20へ送信するものとしてもよい。この応答電流の強度とは、例えば、応答電流の振幅に基づく値としてもよい。検出装置16は、周期的に蓄電デバイス40を機械的振動した際の機械的振動の周波数と同じ周波数帯での応答電流の振幅を計測するものとしてもよい。機械的振動に基づいて蓄電デバイス40から出力される応答電流は、一定値を示すものではなく、特定の振幅を有する。検出装置16は、得られた測定結果のうち応答電流として安定した振幅を示す範囲(例えば所定時間内など)を選択し、その範囲における応答電流の極大値と極小値との差を各振幅に対して求め、これを平均した値を応答電流の強度とするものとしてもよい。また、この検出装置16は、シグナルノイズを除去する回路を有し、シグナルノイズを除去した信号を抵抗測定装置20へ出力するものとしてもよい。また、検出装置16は、増幅回路を有し、増幅した信号を抵抗測定装置20へ出力するものとしてもよい。この検出装置16は、例えば、電気化学測定装置(ポテンショスタット)などを利用することができる。
【0018】
抵抗測定装置20は、蓄電デバイス40に機械的振動を加え且つ交流電圧を印加して得られた応答電流振幅を取得することにより、間接的に蓄電デバイス40の抵抗を測定する装置である。抵抗測定装置20は、記憶部21と、制御部22と、入力装置27と、表示装置28と、を備える。入力装置27は、各種入力を行うマウスやキーボードなどを含む。表示装置28は、画面を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイである。
【0019】
記憶部21は、例えば、HDDなど、大容量の記憶装置として構成されており応答電流測定結果30や、対応情報32、抵抗推定プログラム34、対応情報設定プログラム36などが記憶されている。応答電流測定結果30は、蓄電デバイス40に機械的振動を加え且つ交流電圧を印加して得られた応答電流振幅の測定結果を含む。対応情報32は、蓄電デバイス40に機械的な振動を加え且つ交流電圧を印加した際にこの蓄電デバイス40から出力される応答電流の強度とこの蓄電デバイス40の抵抗値とを対応付けた情報である。対応情報32は、抵抗値が既知である複数の蓄電デバイス40に機械的な振動を加え且つ交流電圧を印加して出力された応答電流の強度と、その抵抗値とを対応付けることで得ることができる。図2は、記憶部21に記憶される対応情報32の一例を示す説明図である。対応情報32では、所定の機械的な振動周波数X(Hz)及び交流電圧周波数Y(Hz)における、応答電流の振幅(強度)と蓄電デバイス40の抵抗値とが一対一で対応付けられている。なお、図2では、応答電流の強度と抵抗値との対応関係がリニアであるものを示したが、曲線状を示すものであってもよい。また、対応情報32には、2以上の機械的な振動周波数に対応する、応答電流の強度と抵抗値との対応関係が含まれているものとしてもよい。抵抗推定プログラム34は、抵抗が未知の蓄電デバイス40に機械的振動を加え且つ交流電圧を印加して、得られた応答電流の強度からその抵抗値を推定するプログラムである。対応情報設定プログラム36は、抵抗が既知の蓄電デバイス40に機械的振動を加え且つ交流電圧を印加し、得られた応答電流の強度と、既知抵抗値との対応関係を含む対応情報32を設定するプログラムである。
【0020】
制御部22は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、装置全体を制御する。制御部22は、加振装置14に対して駆動信号を出力し、印加装置15に電圧を印加させると共に、検出装置16から応答電流を入力する。この制御部22は、抵抗推定プログラム34を実行することによって、蓄電デバイス40に機械的な振動を加え且つ交流電圧を印加した際にこの蓄電デバイス40から出力される応答電流を取得し、取得した応答電流から対応情報32を用いて蓄電デバイス40の抵抗を間接的に求める処理を行う。制御部22は、周波数が5Hz以上400Hz以下の範囲で機械的な振動を加えた際の応答電流を取得することが好ましい。また、制御部22は、周波数が1Hz以上10kHz以下の範囲で交流電圧を印加した際の応答電流を取得することが好ましい。また、制御部22は、蓄電デバイス40に機械的な単振動を加えた際出力される応答電流の強度を取得することが好ましい。
【0021】
(抵抗測定方法)
次に、こうして構成された本実施形態の抵抗測定装置20の動作、特に、抵抗測定装置20が実行する抵抗測定方法について説明する。この抵抗測定方法は、例えば、抵抗が既知の蓄電デバイス40から対応情報32を設定する設定ステップと、対応情報32を読み出す読出ステップと、蓄電デバイス40の抵抗を求める抵抗導出ステップと、を含むものとしてもよい。なお、この抵抗測定方法において、既に設定された対応情報32を用いて、上記設定ステップを省略してもよい。
【0022】
(設定ステップ)
ここでは、まず、対応情報32を設定する処理について説明する。この設定処理では、使用者は、抵抗値が既知の複数の蓄電デバイス40を用意し、抵抗測定システム10によって、機械的振動を加え且つ交流電圧を印加した際に出力される応答電流を取得し、対応情報32を設定する。図3は、制御部22により実行される対応情報設定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、記憶部21に記憶され、使用者の指示に応じて実行される。使用者は、検出装置16に蓄電デバイス40を接続し、入力装置27を操作してこのルーチンを実行させる。このルーチンを実行すると、制御部22は、まず、抵抗値が既知の蓄電デバイス40に所定の周波数の機械的な振動を加える処理を加振装置14に実行させる(S100)。機械的な振動の周波数は、5Hz以上400Hz以下の範囲で設定可能としてもよい。この周波数は、測定条件として使用者が目的の周波数を入力するものとしてもよいし、抵抗測定システム10が最適な値を検索して設定するものとしてもよい。
【0023】
次に、制御部22は、上記機械的振動を加えながら、抵抗値が既知の蓄電デバイス40に所定の周波数の交流電圧を印加する処理を印加装置15に実行させる(S110)。交流電圧の周波数は、1Hz以上10kHz以下の範囲で設定可能としてもよい。この周波数は、測定条件として使用者が目的の周波数を入力するものとしてもよいし、抵抗測定システム10が最適な値を検索して設定するものとしてもよい。
【0024】
次に、蓄電デバイス40から出力される応答電流を検出装置16が検出し、制御部22は、この検出結果を応答電流の強度として取得する(S120)。続いて、制御部22は、抵抗が既知の全ての蓄電デバイス40の測定結果を取得したか否かを判定し(S130)、全ての測定結果を取得していないときには、S100以降の処理を繰り返し実行する。このとき、使用者は、検出装置16において蓄電デバイス40を取り替え、抵抗測定システム10は、取り替えられた次の蓄電デバイス40の測定を実行する。蓄電デバイス40の既知の抵抗値は、他の測定、例えば、電気化学インピーダンス法などによって求められたものとしてもよい。また、この抵抗値は、使用者が入力装置27を操作して入力するものとしてもよい。一方、S130で全ての測定結果を取得したときには、測定条件の周波数と、得られた応答電流の強度と既知抵抗値との対応関係を対応情報32として記憶部21に記憶させ(S140)、このルーチンを終了する。このように、対応情報32を設定することができる。
【0025】
(読出ステップ、抵抗導出ステップ)
次に、未知である蓄電デバイス40の抵抗を求める処理について説明する。読出ステップでは、記憶部21に記憶された対応情報32を読み出す処理を行う。抵抗導出ステップでは、読み出した対応情報32を用いて、蓄電デバイス40の抵抗を求める処理を実行する。図4は、制御部22により実行される抵抗測定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、記憶部21に記憶され、使用者の指示に応じて実行される。使用者は、抵抗未知の蓄電デバイス40を検出装置16に接続し、入力装置27を操作してこのルーチンを実行させる。このルーチンを実行すると、制御部22は、まず、測定条件に設定されている所定の周波数で蓄電デバイス40を加振するよう加振装置14を制御する(S200)。次に、制御部22は、上記機械的振動を加えながら、抵抗未知の蓄電デバイス40に所定の周波数の交流電圧を印加する処理を印加装置15に実行させる(S210)。機械的な振動周波数や交流電圧の周波数は、上記対応関係32を設定したときに良好である値を適宜用いるものとしてもよい。
【0026】
次に、蓄電デバイス40から出力される応答電流を検出装置16が検出し、制御部22は、この検出結果を応答電流の強度として取得する(S220)。続いて、制御部22は、記憶部21から読み出した対応情報32を用い、応答電流の強度に対応する抵抗値を求め、この抵抗値を表示装置28へ表示出力し(S230)、このルーチンを終了する。なお、制御部22は、得られた抵抗値を応答電流測定結果30に記憶するものとしてもよい。対応情報32には、測定条件の周波数における、応答電流の強度と既知抵抗値との対応関係が含まれており(図2参照)、応答電流の強度が得られれば、それに対応する抵抗値を一義的に求めることができる。このように、抵抗測定装置20では、蓄電デバイス40に機械的振動を加え且つ交流電圧を印加することによって、蓄電デバイス40の抵抗を間接的に測定することができる。
【0027】
以上説明した本実施形態の抵抗測定システム10では、蓄電デバイス40に機械的振動を加え且つ交流電圧を印加するという、より簡便な構成で蓄電デバイス40の抵抗を評価することができる。抵抗測定システム10がこのような効果を奏する理由は、以下のように推察される。例えば、蓄電デバイス40に機械的な振動を加えた際に、セル内の部材の共振周波数周辺では、部分共振の発生により電極間に加わる圧力の変動が起こる。この圧力の変動により、電極間の距離が振動する。電極間距離の振動は正負極間で発生する電圧勾配、すなわち、電場を振動させるため電場の振動に合わせて電極間のイオンの移動が起こり、正負極間にわずかな電圧の偏りを生じさせる。この電圧の偏りに誘起されて電極近傍で電気化学反応が起こり、電池電圧が変化する。その反応のトリガーとなる電極間のイオンの易動度は電池の抵抗と相関があるためセル電圧の振幅が発生し、その電圧の発生に誘起されて電流が発生する。電流には抵抗の情報が含まれているため電流値から抵抗が推定できるものと推察される。
【0028】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、抵抗測定システム10は、加振装置14と印加装置15と検出装置16とを備えるものとしたが、特にこれに限定されず、応答電流の強度を外部から取得するものとして加振装置14や印加装置15、検出装置16を省略してもよい。この抵抗測定装置20においても、蓄電デバイス40に機械的振動を加え交流電圧を印加するという、より簡便な構成で蓄電デバイス40の抵抗を評価することができる。
【0030】
上述した実施形態では、本開示を抵抗測定システム10や抵抗測定装置20、抵抗測定方法として説明したが、例えば、抵抗測定方法を実行するためのプログラムとしてもよい。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した抵抗測定方法の各ステップが実行されるため、この抵抗測定方法と同様の作用効果が得られる。
【0031】
上述した実施形態では、蓄電デバイス40をリチウムイオン二次電池として説明したが、特にこれに限定されず、例えば、ハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムやナトリウムなどの金属系の負極活物質を有するアルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池、空気電池などとしてもよい。キャパシタの場合、正極活物質及び/又は負極活物質は、炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極や負極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
【実施例
【0032】
以下には、本開示の抵抗測定方法及び抵抗測定装置を具体的に検討した例を実験例として説明する。なお、実験例1~22が本開示の実施例に相当し、実験例23~26が参考例に相当する。
【0033】
(試験用電池作製)
正極活物質には LiNi1/3Co1/3Mn1/32を用いた。上記正極活物質を92質量%、導電材としてカーボンブラックを5質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量%混合し、分散材としてN-メチル-2-ピロリドンを適量添加、分散して正極スラリーとした。正極スラリーを15μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に塗布、乾燥させたあと、ロールプレスで高密度化し正極シートとした。なお、正極活物質の付着量は片面当り20mg/cm2とした。負極活物質として非晶質コート黒鉛を用いた。上記負極活物質を98質量%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムを1質量%、結着剤としてスチレンブタジエンゴムを1質量%混合し、適量の水を加えて負極スラリーとした。負極スラリーを10μm厚の銅箔集電体の両面に塗布、乾燥させたあと、ロールプレスで高密度化し負極シートとした。なお、負極活物質の付着量は片面当り12mg/cm2とした。各電極は電池として約30mAhとなるように所定の長さにカットした。作製した正極及び負極の間に、厚さ20μmのポリエチレン製の微多孔膜セパレータを挟み、シート状電極体を作製した。続いて、得られた電極体を、アルミラミネートフィルム内に挿入した。電解液をアルミラミネートフィルム内に含浸させ、ラミネートフィルムを熱溶着で密閉し、拘束治具で荷重を加えながら拘束し、ラミネート型の30mAh級リチウムイオン二次電池を得た。電解液は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比でEC:DMC:EMC=30:40:30の割合となるように混合した非水溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように加えたものを用いた。このリチウムイオン二次電池を2つ作製し(N=2)、それぞれ測定を行った。
【0034】
(活性化、容量確認)
作製した電池は、注液から1時間以上経過させたのち、20℃で上限電圧4.1V、下限電圧3.0V、0.1Cの充放電レートでCCCV充放電を2サイクル行った。2サイクル目の放電容量を電池容量とした。
【0035】
(残容量SOC調整)
作製した電池の放電容量の半分の容量を0.1Cの充電レートで充電し、SOC50%の電池を得た。
【0036】
(電気化学インピーダンス測定)
作製した電池を25℃の環境で15分以上静置したあと、100kHzから0.1Hzまでの5mVの交流電圧を印可し、インピーダンスを取得した。図5は、解析に用いた等価回路の説明図である。図5の等価回路を用いて上記測定したインピーダンスをフィッティングし、抵抗Rc、R1、R2の和を電池抵抗とした。
【0037】
(電池振動試験:実験例1)
作製した電池を振動試験機(エミック社製9514-AN/SD)に固定したのち、25℃の環境で、電圧振幅5mVの1kHzの交流電圧を印加しながら、機械振動を50Hzで加速度振幅10m/s2で振動させた。振動による電流の振動応答はポテンショスタットの電流チャンネルを分岐しBNCコネクタでオシロスコープに取り込んだデータをフーリエ変換することで得た。この際得られた信号の絶対値は1kHzの応答電流振幅とインピーダンス測定で求めた1kHzの抵抗の絶対値から補正をして決定した。また、取得するデータは1秒間で25万点とした。この条件での測定を実験例1とした。
【0038】
(実験例2~5)
電池振動試験において、振動周波数をそれぞれ70Hz、100Hz、150Hz、200Hzにした以外は実験例1と同様の条件で計測したものを実験例2~5とした。
【0039】
(実験例6~10)
電池作製工程で正極、負極間のセパレータの数を2枚にして電池抵抗を変化させ、試験用電池を作製した以外は、実験例1~5と同じ条件で計測をしたものをそれぞれ実験例6~10とした。
【0040】
(実験例11~15)
電池作製工程で正極、負極間のセパレータの数を3枚にして電池抵抗を変化させ、試験用電池を作製した以外は、実験例1~5と同じ条件で計測をしたものをそれぞれ実験例11~15とした。
【0041】
(実験例16~18)
電池振動試験で振動周波数を30Hzにした以外は実験例1と同様の条件で計測したものを実験例16とした。電池振動試験で振動周波数を30Hzにした以外は実験例6と同様の条件で計測したものを実験例17とした。電池振動試験で振動周波数を30Hzにした以外は実験例11と同様の条件で計測したものを実験例18とした。
【0042】
(実験例19~22)
電池振動試験で10kHzの交流電圧を印加した以外は実験例2と同様の条件で計測したものを実験例19とした。電池振動試験で100Hzの交流電圧を印加した以外は実験例2と同様の条件で計測したものを実験例20とした。電池振動試験で10Hzの交流電圧を印加した以外は実験例2と同様の条件で計測したものを実験例21とした。電池振動試験で1Hzの交流電圧を印加し、データ取得時間を10秒とした以外は実験例2と同様の条件で計測したものを実験例22とした。
【0043】
(実験例23~25)
電池振動試験で振動周波数を500Hzにした以外は実験例1と同様の条件で計測したものを実験例23とした。電池振動試験で振動周波数を500Hzにした以外は実験例6と同様の条件で計測したものを実験例24とした。電池振動試験で振動周波数を500Hzにした以外は実験例11と同様の条件で計測したものを実験例25とした。
【0044】
(実験例26)
電池振動試験で0.1Hzの交流電圧を印加し、データ取得時間を100秒とした以外は実験例2と同様の条件で計測したものを実験例26とした。
【0045】
(結果と考察)
表1に、実験例1~18、23~25の電池に与えた機械的な振動周波数(Hz)と、交流電圧周波数(Hz)と、相関係数R2をまとめた。図6は、実験例1、6、11の電池抵抗(Ω)と応答電流振幅(A)との対応関係の一例を示す測定結果である。図6に示すように、実験例1、6、11では、相関係数R2が0.9422と1により近く、ほぼ電池抵抗と応答電流とは比例関係にあり、この対応関係を用いて、応答電流を測定すれば電池抵抗を一義的に求められることがわかった。また、表1に示すように、振動周波数が、30Hz以上、特に50Hz~200Hzの範囲では、相関係数R2が高く、電池抵抗を推定するのには好ましいと推察された。
【0046】
表2に、実験例1~5、16、23の電池に与えた機械的な振動周波数(Hz)と、交流電圧周波数(Hz)と、応答電流振幅(μA)の対応関係をまとめた。図7は、実験例1~5、16、23の振動周波数(Hz)と応答電流振幅(μA)との対応関係の一例を示す測定結果である。図7に示すように、振動周波数が5Hz~400Hzの範囲では応答電流が60μA以上と比較的高く、特に10Hz~200Hzの範囲では応答電流が100μA以上と高く、S/N比が良好で誤検出などをより抑制し、検出しやすいものと推察された。
【0047】
表3に、実験例2、19~22、26の電池に与えた交流電圧周波数(Hz)と、機械的な振動周波数(Hz)と、応答電流振幅(μA)の対応関係をまとめた。表3に示すように、交流電圧の周波数は、1Hz以上で良好な応答電流を得ることができ、1Hz~10kHzの範囲が良好であることがわかった。特に、電池特性の測定器が一般にあることから、1kHz近傍で測定を行うことが好ましいと推察された。このように、抵抗値が未知である蓄電デバイスに対して機械的振動を加えると共に交流電圧を印加して応答電流振幅を測定すれば、図6などの対応関係を対応情報として用いることによって、応答電流振幅に対応する電池抵抗を一義的に求めることができることが明らかとなった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
なお、本明細書で開示した抵抗測定装置、抵抗測定システム、抵抗測定方法及びそのプログラムは、上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本明細書で開示した抵抗測定装置、抵抗測定システム、抵抗測定方法及びそのプログラムは、蓄電デバイスの抵抗を測定する技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 抵抗測定システム、12 回線、14 加振装置、15 印加装置、16 検出装置、20 抵抗測定装置、21 記憶部、22 制御部、27 入力装置、28 表示装置、30 応答電流測定結果、32 対応情報、34 抵抗推定プログラム、36 対応情報設定プログラム、40 蓄電デバイス、41 集電体、42 正極合材、43 正極、44 集電体、45 負極合材、46 負極、47 セパレータ、48 イオン伝導媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7