(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】配席プログラム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/02 20120101AFI20230511BHJP
【FI】
G06Q10/02
(21)【出願番号】P 2021522578
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2019021786
(87)【国際公開番号】W WO2020240840
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢頭 史朗
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅登
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003259(JP,A)
【文献】特開2005-018369(JP,A)
【文献】特開2002-133237(JP,A)
【文献】特開2008-130014(JP,A)
【文献】特開2019-086922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付け、
指定された前記ゾーン内で予約された座席が分散するように、前記購入依頼に対応する座席を決定す
ることを含む処理をコンピュータに実行させるための
配席プログラムであって、
前記購入依頼が連席のチケットの購入希望の場合であって、指定された前記ゾーン内に前記連席を配席可能な空席群が存在しない場合に、予約済みの座席のうち、前記ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対応して予約された座席の配席を変更して、前記連席の購入依頼に対応する座席を決定する
配席プログラム。
【請求項2】
前記連席を配席可能な空席群が存在しない場合、空席群から最大の連席数を配席可能な座席に隣接する座席であって、前記ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対応して予約された座席の配席を変更する請求項
1に記載の配席プログラム。
【請求項3】
ゾーンの各々を複数のブロックに区分けし、指定された前記ゾーンに含まれるブロックのうち、空席数の多いブロックから順に配席する請求項1
又は請求項
2に記載の配席プログラム。
【請求項4】
前記座席の各々の予約状況を、予約可能であることを示すステータス、前記ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対応して予約された座席であることを示すステータス、及び配席不可であることを示すステータスを少なくとも含む何れかのステータスを付与して管理する請求項1~請求項
3の何れか1項に記載の配席プログラム。
【請求項5】
興行が開催される会場の座席のチケットであって、購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付け、
前記ゾーンに含まれる複数列の座席に対して所定列おきに配席する配席ルールと、予約済みの座席との位置関係とに基づいて、指定された前記ゾーン内で予約された座席が分散するように、前記購入依頼に対応する座席を決定する
ことを含む処理をコンピュータに実行させるための配席プログラム。
【請求項6】
購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付ける受付部と、
指定された前記ゾーン内で予約された座席が分散するように、前記購入依頼に対応する座席を決定する決定部と、
を含み、
前記決定部は、前記購入依頼が連席のチケットの購入希望の場合であって、指定された前記ゾーン内に前記連席を配席可能な空席群が存在しない場合に、予約済みの座席のうち、前記ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対応して予約された座席の配席を変更して、前記連席の購入依頼に対応する座席を決定する
配席装置。
【請求項7】
興行が開催される会場の座席のチケットであって、購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付る受付部と、
前記ゾーンに含まれる複数列の座席に対して所定列おきに配席する配席ルールと、予約済みの座席との位置関係とに基づいて、指定された前記ゾーン内で予約された座席が分散するように、前記購入依頼に対応する座席を決定する決定部と、
を含む配席装置。
【請求項8】
購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付け、
指定された前記ゾーン内で予約された座席が分散するように、前記購入依頼に対応する座席を決定す
ることを含む処理をコンピュータが実行する
配席方法であって、
前記購入依頼が連席のチケットの購入希望の場合であって、指定された前記ゾーン内に前記連席を配席可能な空席群が存在しない場合に、予約済みの座席のうち、前記ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対応して予約された座席の配席を変更して、前記連席の購入依頼に対応する座席を決定する
配席方法。
【請求項9】
興行が開催される会場の座席のチケットであって、購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付け、
前記ゾーンに含まれる複数列の座席に対して所定列おきに配席する配席ルールと、予約済みの座席との位置関係とに基づいて、指定された前記ゾーン内で予約された座席が分散するように、前記購入依頼に対応する座席を決定する
ことを含む処理をコンピュータが実行する配席方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、配席プログラム、配席装置、及び配席方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツやコンサート等の興行や交通機関のチケット販売において、チケットの購入者に購入希望数の座席を割り当てる配席処理をシステムで実行することが行われている。
【0003】
例えば、予約客の要望や便宜に配慮して座席割当を行う座席割当システムが提案されている。このシステムは、交通機関の座席割当について、座席予約時点では座席位置を詳細には決定せず、最低限目的の交通機関を利用できる程度に座席位置を大まかに決め、その交通機関利用直前まで座席割当の最適化を行う。そして、このシステムは、発車直前に座席位置を確定し、各予約客に連絡を行う。
【0004】
また、残りの空席の中からより良い位置の座席を迅速かつ正確にユーザに提供するための方法が提案されている。この方法では、サーバがクライアントによりアップロードされた現在の場所における座席を予約する要求を受信し、事前設定された座席情報データベースに問い合わせ、現在の場所における残りの座席に対応する優先度情報を決定する。また、この方法では、座席情報データベースは座席が選択される度に、座席選択の過去の記録にある各座席の選択順序情報に従って構築され、現在の場所における各座席の情報及び対応する優先度情報は座席情報データベースに記憶される。また、この方法では、残りの座席に対応する優先度情報に従って、現在の場所における残りの座席から推奨座席の情報を決定し、推奨座席の情報をクライアントに返送する。
【0005】
また、2人連れ以上の顧客が連続した席を購入できる機会を増やして顧客の要望を満たすと共に、効率的な配席を実現することにより事業者の要望を満たす座席割当装置が提案されている。この装置は、対面式の座席券発行装置において、オペレータ側にオペレータ側画像表示装置及びタッチパネル装置を備え発券処理を行い、顧客側に空席情報を表示する顧客側画像表示装置及びタッチパネル装置を備え希望席の入力を行う。座席情報加工処理装置は、座席データベースの空席情報を希望席数に応じて、所定の空席を販売できない非空席とした表示用空席情報を生成し、顧客側画像表示装置に表示用空席情報を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-76352号公報
【文献】特表2018-504696号公報
【文献】特開2008-129963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チケットの販売において、チケットの購入者により指定された座席のチケットを販売する方法がある。しかしながら、チケットを販売する興行主等には、その興行がテレビ放映される場合などを考慮して、チケットを販売したいというニーズが存在する。
【0008】
一つの側面として、開示の技術は、予約された座席が分散するように配席を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様として、開示の技術は、購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付け、指定された前記ゾーン内で予約された座席が分散するように、前記購入依頼に対応する座席を決定する。
【発明の効果】
【0010】
一つの側面として、予約された座席が分散するように配席を決定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る配席装置の機能ブロック図である。
【
図3】ゾーン及びブロックを説明するための図である。
【
図8】配席ルールにしたがった配席について説明するための図である。
【
図9】移動可の予約済み座席を移動させて配席する処理について説明するための図である。
【
図10】移動可の予約済み座席を移動させて配席する処理について説明するための図である。
【
図11】移動可の予約済み座席を移動させて配席する処理について説明するための図である。
【
図12】移動可の予約済み座席を移動させて配席する処理について説明するための図である。
【
図13】本実施形態に係る配席装置として機能するコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【
図14】事前処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】配席処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】変動配席処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、開示の技術に係る実施形態の一例を説明する。
【0013】
図1に示すように、配席装置10は、機能的には、管理部12と、受付部14と、決定部16とを含む。また、所定の記憶領域には、座席DB(Database)22と、予約DB24と、配席ルールDB26とが記憶される。なお、配席装置10は、開示の技術の情報処理装置の一例である。
【0014】
座席DB22には、座席毎の管理情報が記憶される。
図2に、座席DB22の一例を示す。
図2の例では、座席DB22の各行(各レコード)が座席毎の管理情報に相当する。座席の管理情報には、その座席の配置を一意に特定する「座席番号」、「ゾーン」、「ブロック」、「座席ステータス」、「予約ID」等の情報が含まれる。
【0015】
ここで、ゾーン及びブロックについて説明する。本実施形態では、
図3に示すように、チケット販売対象の興行が開催される会場の座席エリア全体70を複数のゾーン72(
図3中の破線の矩形)に区分けし、さらに、各ゾーン72を複数のブロック74(
図3中の一点鎖線の矩形)に区分けする。したがって、各座席76(
図3中の丸印)は、いずれかのゾーン72のいずれかのブロック74に属することになる。
【0016】
また、上記の座席DB22の「ゾーン」及び「ブロック」には、各座席が属するゾーン及びブロックの識別情報が記憶される。
【0017】
なお、ゾーン72の区分けは、例えば、舞台などのSS席、A席、B席等や、野球観戦のチケットの外野、内野等、座席の種別に基づく区分けとすることができる。また、ブロック74の区分けは、前方、後方、端、中央等、ゾーン内での大まかな位置や、段差が少ない、トイレが近い等の条件が同一とみなせる一塊の座席群とすることができる。また、ゾーン72内の通路によりブロック74を区切ってもよい。本実施形態では、詳細は後述するが、配席処理をブロック単位で行う。これにより、座席エリア全体70に対して配席処理を行う場合よりも処理負荷を軽減することができる。
【0018】
「座席ステータス」は、各座席の予約状況を示す情報である。座席ステータスには、「空席」、「確定」、「移動可」、及び「配席不可」の各ステータスが含まれる。「空席」は、該当の座席が予約可能であることを示す。「確定」は、座席を指定した購入依頼により予約された座席であることを示す。「移動可」は、ゾーンを指定した購入依頼により予約された座席であることを示す。「配席不可」は、会場レイアウトや興行主の都合により売り止めにする座席、販売を外部委託する座席、招待や団体用に確保している座席等、チケット販売の対象としない座席であることを示す。なお、「確定」及び「配席不可」は、開示の技術の「配席不可であることを示すステータス」の一例である。また、「配席不可」のステータスは、配席不可となる要因等に応じて、それぞれ異なるステータスで管理してもよい。
【0019】
「予約ID」は、その座席を予約する元となった購入依頼の識別情報である。1つの購入依頼に対して1つの予約IDが付与されるため、複数の座席を連席で購入することを希望する購入依頼により予約された複数の座席の各々には、同一の予約IDが付与される。
【0020】
予約DB24には、購入依頼毎の管理情報が記憶される。
図4に、予約DB24の一例を示す。
図4の例では、予約DB24の各行(各レコード)が購入依頼毎の管理情報に相当する。購入依頼の管理情報には、「予約ID」、その購入依頼を行ったユーザ(購入者)の識別情報である「ユーザID」、購入するチケットの枚数、すなわち連席数を示す「予約数」、「予約ステータス」等の情報が含まれる。
【0021】
「予約ステータス」は、購入依頼毎の予約状況を示す情報である。予約ステータスには、購入依頼に対応した座席が確保された状態であることを示す「予約済み」、予約済みの座席のチケット代金の支払いが完了した状態を示す「支払い済み」、購入依頼がキャンセルされた状態を示す「キャンセル」等が含まれる。また、購入依頼の処理中において、座席を仮押さえした状態を示す「仮予約」等のステータスを設けてもよい。
【0022】
配席ルールDB26には、ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対して、どのような順番で購入依頼に対応した座席を配席するかを示す配席ルールが記憶される。本実施形態では、詳細は後述するが、指定されたゾーン内で予約された座席が分散するように配席する。このような配席を実現するための配席ルールとして、例えば、
図5に示すように、ブロック毎に、どの列から配席するかを示す配席列順と、列毎に、列内においてどの順番で配席するかを示す配席方向とを定めておくことができる。
【0023】
配席列順は、上述したように、ゾーン内で予約された座席が分散するように、所定列おきに配席するように定めておくことができる。
図5の例では、1列おきに配列するように配席列順が定められている。
【0024】
配席方向としては、起点から単一の方向に順番に配席していく単方向と、起点から左右2つの方向に交互に配席していく双方向とを定めておくことができる。例えば、単方向として、
図5に示す3列目のように、左端から右端へ向かう単方向、
図5に示す4列目のように、右端から左端へ向かう単方向を定めておくことができる。また、双方向として、
図5に示す1列目のように、所定の座席から外側に向かう双方向、
図5に示す2列目のように、両端の座席から内側に向かう双方向を定めておくことができる。
【0025】
図6に、配席ルールDB26の一例を示す。
図6の例では、配席ルールDB26には、配席列順を定める単位である「ブロック」、そのブロック内の「列番号」、「配席列順」、及び「配席方向」が記憶されている。このように配席ルールを予め定めておくことで、チケット販売の運用者が、チケットの販売状況を監視しながら座席の売り止め及び解除を、予約された座席が分散するように手動で制御する場合に比べ、運用負荷が軽減される。
【0026】
管理部12は、座席マスタの入力を受け付け、座席DB22に記憶する。座席マスタとは、座席番号を含む会場のレイアウト、ゾーン及びブロックの区分け、配席不可となる座席の情報等である。管理部12は、受け付けた座席マスタに基づいて、座席毎に、座席DB22の「座席番号」、「ゾーン」、及び「ブロック」を記憶する。また、管理部12は、配席不可の座席については、「座席ステータス」を「配席不可」に設定し、それ以外の座席については、初期値として、「座席ステータス」を「空席」に設定する。
【0027】
また、管理部12は、配席ルールの入力を受け付け、配席ルールDB26に記憶する。
【0028】
受付部14は、チケットの購入者からの購入依頼を受け付け、受け付けた購入依頼に予約IDを付与し、予約DB24に記憶すると共に、決定部16へ受け渡す。
【0029】
購入依頼は、例えば、チケット販売サイト等を介して、購入者が利用する情報処理装置から配席装置10へ送信される。購入依頼には、ユーザID、座席又はゾーンの指定、及び購入枚数の情報が含まれる。座席の指定は、例えば、予約可能な座席、すなわち空席を選択可能な状態で会場全体の座席マップを購入者が利用する情報処理装置のディスプレイに表示させ、購入者に空席から所望の座席を選択させることで行われる。ゾーンの指定は、例えば、いずれかのゾーンを選択可能な、会場全体のゾーンマップやゾーンのリストから購入者に選択させることで行われる。
【0030】
決定部16は、受付部14から受け渡された購入依頼が、座席を指定した購入依頼の場合、座席DB22において、指定された座席の座席ステータスを「確定」に変更すると共に、予約DB24の予約ステータスを「予約済み」に変更する。
【0031】
また、決定部16は、ゾーンを指定した購入依頼の場合、指定されたゾーンに含まれるブロックのうち、優先度の高い順にブロックを選択して、選択したブロック内で購入依頼に対応した座席を決定する。例えば、
図7に示すように、ブロック内での空席数(残席数)が多いほど、そのブロックの優先度を高くすることができる。これにより、ゾーン内で予約済みの席が分散するように配席できる。また、残席数が多いブロックを選択することで、購入依頼に対応する座席を確保できる可能性が高まるため、効率良く配席を行うことができる。
【0032】
決定部16は、選択したブロック内で、配席ルールDB26に記憶された配席ルールと、予約済みの座席との位置関係とに基づいて、購入依頼に対応する座席を決定する。上述したように、本実施形態では、所定列おきに配席する配席ルールを定めているため、指定されたゾーン内で予約された座席が分散するように、購入依頼に対応する座席を決定することができる。
【0033】
例えば、
図8に示すように配席列順が定められている場合において、購入枚数2枚の購入依頼が受け付けられたとする。この場合、決定部16は、配席列順が1の1列目から2連席分の空席を探索する。
図8の例では、1列目には2連席分の空席がないため、決定部16は、次の列から空席を探索する。決定部16は、2連席分の空席が存在する2列目ではなく、配席列順が2の3列目から空席を探索する。3列目には、2連席分の空席が存在し、その配席のパターンには複数の選択肢があるため、決定部16は、配席ルールに定められている配席方向の順に従って配席する。ここでは、3列目について、配席方向が左から右の単方向と定められているとすると、決定部16は、
図8に示す破線で囲まれた座席を、購入依頼に対応した座席として決定する。
【0034】
決定部16は、ゾーンを指定した購入依頼に対応した座席を決定すると、座席DB22において、決定した座席の座席ステータスを「移動可」に変更すると共に、予約DB24の予約ステータスを「予約済み」に変更する。
【0035】
購入枚数が複数の連席のチケットを購入希望の購入依頼の場合であって、指定されたゾーンから選択したブロック内に、購入枚数分の連席数を配席可能な空席群が存在しない場合、決定部16は、配席ルールにしたがった配席を行うことができない。この場合、決定部16は、予約済みの他の座席の配席を変更して、連席の購入依頼に対応する座席を配席可能か否かを判別する。配席を変更可能な座席は、予約済みの座席のうち、座席ステータスが「移動可」の座席、すなわち、ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対応して予約された座席である。
【0036】
5連席分の購入依頼の場合を例に、具体的に説明する。
図9に示すように、5連席分の空席がない場合、決定部16は、空席の連席数が最大の列(
図9の破線部で囲まれた列)を選択する。空席の連席数が多いほど、購入依頼に対応する座席を確保できる可能性が高まるため、空席の連席数が最大の列を選択することで、効率良く配席を行うことができる。
【0037】
決定部16は、選択した列の空席群に隣接する座席の座席ステータスが「移動可」か否かを、座席DB22を参照して判定する。「移動可」の場合、決定部16は、選択した列の空席群に隣接する座席の予約IDを座席DB22から取得し、予約DB24において、取得した予約IDに対応する「予約数」を取得する。そして、決定部16は、選択した列の空席群の数と、取得した予約数とを合わせて、購入依頼の連席数分の座席(ここでは、5連席分)を確保可能か否かを判定する。確保できる場合、決定部16は、選択した列の空席群に隣接する座席及びその座席と予約IDが同一の座席群(
図9の例では、3席とする)を移動対象座席として決定する。
【0038】
なお、選択した列の空席群の両隣に座席ステータスが「移動可」の座席が隣接し、いずれの場合も購入依頼の連席数分の座席を確保可能な場合も想定される。その場合、決定部16は、例えば連席数が少ない座席群を移動対象座席として選択する等の所定のルールにしたがって、いずれかを移動対象座席に決定すればよい。また、両隣の座席群を合せることにより、購入依頼の連席数分の座席を確保可能な場合には、隣接する座席群のいずれも移動対象座席として決定すればよい。
【0039】
決定部16は、移動対象座席の移動先として、移動対象座席の連席数分の空席群を探索する。
図10に示すように、3連席の移動対象座席の移動先の候補となる空席群(
図10中の一点鎖線で囲まれた座席群)が複数存在する場合、決定部16は、配席ルールにしたがって移動先の候補から移動先を決定する。
図10の例の場合、1列目と3列目に移動先の候補が存在するため、決定部16は、配席ルールにしたがって、
図11に示すように、1列目の空席群を移動先と決定し、移動対象座席を移動させる。
【0040】
具体的には、決定部16は、座席DB22において、移動対象座席の座席ステータスを「空席」に変更すると共に、「予約ID」欄をクリアする。また、決定部16は、座席DB22において、移動先の座席群の座席ステータスを「移動可」に変更すると共に、移動対象座席の「予約ID」欄に記憶されていた予約IDを移動先の「予約ID」欄に記憶する。これにより、
図12の破線部で囲まれた空席群を、購入依頼に対応した座席として配席することができる。
【0041】
配席装置10は、例えば
図13に示すコンピュータ40で実現することができる。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、一時記憶領域としてのメモリ42と、不揮発性の記憶部43とを備える。また、コンピュータ40は、入力部、表示部等の入出力装置44と、記憶媒体49に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するR/W(Read/Write)部45とを備える。また、コンピュータ40は、インターネット等のネットワークに接続される通信I/F(Interface)46を備える。CPU41、メモリ42、記憶部43、入出力装置44、R/W部45、及び通信I/F46は、バス47を介して互いに接続される。
【0042】
記憶部43は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部43には、コンピュータ40を、配席装置10として機能させるための配席プログラム50が記憶される。配席プログラム50は、管理プロセス52と、受付プロセス54と、決定プロセス56とを有する。また、記憶部43は、座席DB22、予約DB24、及び配席ルールDB26の各々を構成する情報が記憶される情報記憶領域60を有する。
【0043】
CPU41は、配席プログラム50を記憶部43から読み出してメモリ42に展開し、配席プログラム50が有するプロセスを順次実行する。CPU41は、管理プロセス52を実行することで、
図1に示す管理部12として動作する。また、CPU41は、受付プロセス54を実行することで、
図1に示す受付部14として動作する。また、CPU41は、決定プロセス56を実行することで、
図1に示す決定部16として動作する。また、CPU41は、情報記憶領域60から情報を読み出して、座席DB22、予約DB24、及び配席ルールDB26の各々をメモリ42に展開する。これにより、配席プログラム50を実行したコンピュータ40が、配席装置10として機能することになる。なお、プログラムを実行するCPU41はハードウェアである。
【0044】
なお、配席プログラム50により実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。
【0045】
次に、本実施形態に係る配席装置10の作用について説明する。まず、配席装置10に座席マスタ及び配席ルールが入力されると、配席装置10において、
図14に示す事前処理が実行される。そして、配席装置10に購入依頼が入力されると、配席装置10において、
図15に示す配席処理が実行される。なお、配席処理は、開示の技術の配席方法の一例である。
【0046】
【0047】
ステップS12で、管理部12が、入力された座席マスタを受け付け、受け付けた座席マスタに基づいて、座席毎に、座席DB22に「座席番号」を記憶する。
【0048】
次に、ステップS14で、管理部12が、座席マスタに基づいて、座席DB22の「座席番号」に対応する「ゾーン」及び「ブロック」欄に、各座席が属するゾーン及びブロックの識別情報を記憶する。
【0049】
次に、ステップS16で、管理部12が、座席マスタに含まれる配席不可の座席の情報に基づいて、座席DB22において、該当の座席の「座席ステータス」を「配席不可」に設定する。
【0050】
次に、ステップS18で、管理部12が、上記ステップS16で「座席ステータス」を設定した座席以外の残りの座席について、「座席ステータス」を「空席」に設定する。
【0051】
次に、ステップS20で、管理部12が、入力された配席ルールを受け付け、配席ルールDB26に記憶し、事前処理は終了する。
【0052】
【0053】
ステップS32で、受付部14が、チケットの購入者からの購入依頼を受け付け、受け付けた購入依頼に予約IDを付与し、予約DB24に記憶すると共に、決定部16へ受け渡す。そして、決定部16が、受け渡された購入依頼が、座席を指定した購入依頼か、ゾーンを指定した購入依頼かを判定する。座席を指定した購入依頼の場合には、処理はステップS34へ移行し、ゾーンを指定した購入依頼の場合には、処理はステップS36へ移行する。
【0054】
ステップS34では、決定部16が、座席DB22において、購入依頼により指定された座席の座席ステータスを「確定」に変更すると共に、予約DB24の予約ステータスを「予約済み」に変更し、配席処理は終了する。
【0055】
一方、ステップS36では、決定部16が、購入依頼で指定されたゾーンに含まれるブロックのうち、優先度の高いブロックとして、ブロック内での空席数(残席数)が多い順にブロックを選択する。
【0056】
次に、ステップS38で、決定部16が、購入依頼で指定された購入枚数分の連席数を配席可能な空席群を探索する。
【0057】
次に、ステップS40で、決定部16が、上記ステップS38において、空席群が探索できたか否かにより、購入依頼に対応した座席を配席可能か否かを判定する。配席可能な場合には、処理はステップS42へ移行し、配席できない場合には、処理はステップS50へ移行する。
【0058】
ステップS42では、決定部16が、探索された空席群を購入依頼に対応した座席として決定する。探索された空席群が複数存在する場合には、決定部16は、配席ルールDB26に記憶された配席ルールに基づいて、指定されたゾーン内で予約された座席が分散するように、購入依頼に対応する座席を決定する。
【0059】
次に、ステップS44で、決定部16が、座席DB22において、上記ステップS42で決定した座席の座席ステータスを「移動可」に変更すると共に、予約DB24の予約ステータスを「予約済み」に変更し、配席処理は終了する。
【0060】
ステップS50では、
図16に示す変動配席処理が実行される。
【0061】
ステップS52で、決定部16が、上記ステップS36で選択したブロックにおいて、空席の連席数が最大の列を選択する。
【0062】
次に、ステップS54で、決定部16が、選択した列の空席群に隣接する座席の座席ステータスが「移動可」で、かつ、その隣接する座席の「予約数(連席数)」と、選択した列の空席群の数とを合わせて、購入依頼の連席数分の座席を確保可能か否かを判定する。確保可能な場合には、処理はステップS56へ移行し、確保できない場合には、処理はステップS64へ移行する。
【0063】
ステップS56では、決定部16が、隣接する座席及びその座席と予約IDが同一の座席群を移動対象座席として決定し、移動対象座席の移動先として、移動対象座席の連席数分の空席群を探索する。
【0064】
次に、ステップS58で、決定部16が、上記ステップS56の探索の結果、移動対象座席を移動可能な空席群が存在するか否かを判定する。存在する場合には、処理はステップS60へ移行し、存在しない場合には、ステップS64へ移行する。
【0065】
ステップS60では、決定部16が、移動対象座席の移動先の候補が複数存在する場合、配席ルールにしたがって移動先の候補から移動先を決定する。そして、決定部16が、座席DB22において、移動対象座席の座席ステータスを「空席」に変更すると共に、「予約ID」欄をクリアする。また、決定部16は、座席DB22において、移動先の座席群の座席ステータスを「移動可」に変更すると共に、移動対象座席の「予約ID」欄に記憶されていた予約IDを移動先の座席の「予約ID」欄に記憶する。これにより、決定部16は、移動対象候補を移動先へ移動させる。
【0066】
次に、ステップS62で、決定部16が、移動対象座席を移動させることにより、上記ステップS52で選択した列にできた空席群から、購入依頼に対応した座席を決定し、処理は
図15に示す配席処理にリターンする。
【0067】
一方、ステップS64では、決定部16が、上記ステップS36で選択したブロックにおいて、次に選択可能な列がまだ存在するか否かを判定する。次の列が存在する場合には、ステップS52に戻り、選択可能な列のうち、空席の連席数が最大の列を選択し、ステップS54以降の処理を繰り返す。選択可能な列が存在しない場合には、処理はステップS66へ移行する。
【0068】
ステップS66では、決定部16が、購入依頼で指定されたゾーンに、次に選択可能なブロックがまだ存在するか否かを判定する。次のブロックが存在する場合には、
図15のステップS36に戻り、選択可能なブロックのうち、優先度が最も高い(残席数が最も多い)ブロックを選択し、ステップS38以降の処理を繰り返す。選択可能なブロックが存在しない場合には、処理はステップS68へ移行する。
【0069】
ステップS68では、決定部16が、購入依頼で指定されたゾーンでは、座席を確保することができず、チケットが購入できない旨のメッセージを、購入依頼の送信元に返し、変動配席処理及び配席処理は終了する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る配席装置は、購入希望の座席が属するゾーンを指定したチケットの購入依頼を受け付けた場合、指定されたゾーン内で予約された座席が分散するような配席ルールにしたがって、購入依頼に対応する座席を決定する。これにより、本実施形態に係る配席装置によれば、特定の座席群がまとまって空席になるような状態を避け、座席の埋まり具合の見栄えが良くなるように配席を決定することができる。例えば、メディア対策などで、席が埋まっているように見せることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る配席装置は、上記のような配席ルールで連席の購入依頼に対する配席ができない場合、ゾーンを指定したチケットの購入依頼に対応して予約された座席の配席を変更して、連席の購入依頼に対応する座席を配席する。これにより、柔軟な配席が実現でき、連席の購入依頼に対して配席できない場合を低減し、チケット販売率の向上を図ることができる。また、ピンポイントで座席を指定しなくとも、所望のゾーンの座席が確保できればよいと考える購入者側にとっても、所望のゾーンのチケットが確保できる確率が向上し、顧客満足度の向上が図れる。
【0072】
なお、上記実施形態では、配席ルールにしたがった配席が行えない場合に、座席ステータスが「移動可」の座席を移動させて配席を行う場合について説明した。この場合において、移動対象座席の移動先となる空席群が確保できない場合に、更に、移動対象座席の移動先を確保するために、座席ステータスが「移動可」の座席を移動させるようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、座席ステータス及び予約ステータスに加え、チケットの状態を示すチケットステータスも管理するようにしてもよい。例えば、チケットが発券されていない状態を示す「未発券」、座席が確定し発券された状態を示す「発券済み」、チケットによる入場を行った状態を示す「着券済み」等のステータスを用いることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、配席プログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。開示の技術に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 配席装置
12 管理部
14 受付部
16 決定部
22 座席DB
24 予約DB
26 配席ルールDB
40 コンピュータ
41 CPU
42 メモリ
43 記憶部
49 記憶媒体
50 配席プログラム
70 座席エリア全体
72 ゾーン
74 ブロック
76 座席